特許第6866602号(P6866602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6866602
(24)【登録日】2021年4月12日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】粉末材料、立体造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/153 20170101AFI20210419BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20210419BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20210419BHJP
【FI】
   B29C64/153
   B33Y70/00
   B33Y10/00
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-195797(P2016-195797)
(22)【出願日】2016年10月3日
(65)【公開番号】特開2018-58235(P2018-58235A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155620
【弁理士】
【氏名又は名称】木曽 孝
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 一史
(72)【発明者】
【氏名】白石 雅晴
(72)【発明者】
【氏名】磯部 和也
【審査官】 正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/121013(WO,A1)
【文献】 特表2005−533877(JP,A)
【文献】 特表2008−505243(JP,A)
【文献】 特開2016−040121(JP,A)
【文献】 特表2010−514877(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/100243(WO,A1)
【文献】 特表2016−521767(JP,A)
【文献】 特開平05−132614(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/119624(WO,A1)
【文献】 特表2017−517414(JP,A)
【文献】 特表2017−534496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
B33Y 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粒子を含む粉末材料の薄層にレーザ光を選択的に照射して、前記樹脂粒子が焼結または溶融結合してなる造形物層を形成し、前記造形物層を積層することによる立体造形物の製造に使用される粉末材料であって、
前記樹脂粒子は、ポリアミド樹脂を主成分とするコア部と、カルボニル基を有する熱可塑性樹脂を主成分とするシェル部と、を有するコアシェル型の粒子であり、
粉末材料中の前記熱可塑性樹脂の含有量は、粉末材料中の前記ポリアミド樹脂の全質量に対して1.0質量%以上30質量%以下である、
粉末材料。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂は、多価カルボン酸に由来する構成単位と多価アルコールに由来する構成単位とを有するポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、およびポリアリレート樹脂からなる群から選択される1または複数の樹脂を含む、請求項1に記載の粉末材料。
【請求項3】
前記樹脂粒子が含有する前記ポリアミド樹脂は、末端アミノ基濃度が10μeq/g以上100μeq/g以下である、請求項1または2に記載の粉末材料。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TS(6.5)は、前記ポリアミド樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TC(6.5)よりも高い、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉末材料。
【請求項5】
前記樹脂粒子の体積平均粒子径は1μm以上100μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉末材料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の粉末材料の薄層を形成する工程と、
前記形成された薄層にレーザ光を選択的に照射して、前記粉末材料に含まれる樹脂粒子が焼結または溶融結合してなる造形物層を形成する工程と、
前記薄層を形成する工程と、前記造形物層を形成する工程と、をこの順に複数回繰り返し、前記造形物層を積層する工程と、
を含む立体造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末材料、立体造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複雑な形状の立体造形物を比較的容易に製造できる様々な方法が開発されている。立体造形物を製造する方法の一つとして、粉末床溶融結合法が知られている。粉末床溶融結合法は、造形精度が高く、かつ、積層された層間の接着強度が高いという特徴を有する。そのため、粉末床溶融結合法は、最終製品の形状または性質を確認するための試作品の製造のみならず、最終製品の製造にも用いることが可能である。
【0003】
粉末床溶融結合法では、樹脂材料または金属材料を含む粒子を含む粉末材料を平らに敷き詰めて薄膜を形成し、薄膜上の所望の位置にレーザを照射して、粉末材料に含まれる粒子を選択的に焼結または溶融させて結合させる(以下、焼結または溶融によって粒子が結合することを単に「溶融結合」ともいう。)ことで、立体造形物を厚さ方向に微分割した層(以下、単に「造形物層」ともいう。)のひとつを形成する。こうして形成された層の上に、さらに粉末材料を敷き詰め、レーザを照射して粉末材料に含まれる粒子を選択的に溶融結合させることで、次の造形物層を形成する。この手順を繰り返して、造形物層を積み上げていくことで、所望の形状の立体造形物が製造される。
【0004】
上記粉末材料に含まれる粒子には、取り扱いの容易さや応用される対象の広さなどの観点から、ポリアミドなどの樹脂材料が用いられることがある。
【0005】
ポリアミド樹脂に関して、特許文献1には、ポリアミド樹脂とポリアリレート樹脂とを溶融混練して得られる組成物から射出成型した成形品は、衝撃強度などの機械的強度が高いことが記載されている。特許文献1は、上記組成物ではポリアミド樹脂のアミノ基がポリアリレート樹脂と何らかの化学反応を起こしており、これによって衝撃強度が高まることを示唆している。
【0006】
特許文献2には、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂と、上記熱可塑性樹脂と反応する官能基を有する化合物と、を含む組成物が記載されている。特許文献2は、上記組成物を、溶融混練する前後の圧力差を一定とした条件で溶融混練することで、耐熱性および耐衝撃性がいずれも良好な成形物が得られると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−132614号公報
【特許文献2】国際公開第2009/119624号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
立体造形が普及するにつれて、立体造形物に求められる性能も高くなっており、たとえば、ポリアミド樹脂を用いて耐衝撃性がより高い立体造形物を製造したいという要望も存在する。
【0009】
ここで、特許文献1や特許文献2に記載のように、ポリアミド樹脂と他の樹脂とを反応させることで、得られる立体造形物の耐衝撃性も高まることが期待される。しかし、特許文献1および特許文献2に記載されているのは射出成型や押出成型などで成形品を製造するための組成物であり、同様の構成が粉末床溶融結合法による立体造形用の樹脂粒子に応用可能なのか、また応用する場合にどのような条件が必要となるのか、については何ら触れられていない。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ポリアミド樹脂を含有する樹脂粒子を含む粉末床溶融結合法用の粉末材料であって、ポリアミド樹脂のみからなる樹脂粒子から製造した立体造形物よりも耐衝撃性が高い立体造形物を製造できる粉末材料を提供することをその目的とする。本発明はさらに、そのような粉末材料を用いた立体造形物の製造方法、およびそのような粉末材料を用いて立体造形物を製造することができる立体造形装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の粉末材料、粉末材料の製造方法および立体造形物の製造方法に関する。
[1]樹脂粒子を含む粉末材料の薄層にレーザ光を選択的に照射して、前記樹脂粒子が焼結または溶融結合してなる造形物層を形成し、前記造形物層を積層することによる立体造形物の製造に使用される粉末材料であって、前記樹脂粒子は、ポリアミド樹脂を主成分とするコア部と、カルボニル基を有する熱可塑性樹脂を主成分とするシェル部と、を有するコアシェル型の粒子であり、粉末材料中の前記熱可塑性樹脂の含有量は、粉末材料中の前記ポリアミド樹脂の全質量に対して1.0質量%以上30質量%以下である、粉末材料
[2]前記熱可塑性樹脂は、多価カルボン酸に由来する構成単位と多価アルコールに由来する構成単位とを有するポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂、およびポリアリレート樹脂からなる群から選択される1または複数の樹脂を含む、[1]に記載の粉末材料。
]前記樹脂粒子が含有する前記ポリアミド樹脂は、末端アミノ基濃度が10μeq/g以上100μeq/g以下である、[1]または[2]に記載の粉末材料。
]前記熱可塑性樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TS(6.5)は、前記ポリアミド樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TC(6.5)よりも高い、[1]〜[]のいずれかに記載の粉末材料。
]前記樹脂粒子の体積平均粒子径は1μm以上100μm以下である、[1]〜[]のいずれかに記載の粉末材料。
][1]〜[]のいずれかに記載の粉末材料の薄層を形成する工程と、前記形成された薄層にレーザ光を選択的に照射して、前記粉末材料に含まれる樹脂粒子が焼結または溶融結合してなる造形物層を形成する工程と、前記薄層を形成する工程と、前記造形物層を形成する工程と、をこの順に複数回繰り返し、前記造形物層を積層する工程と、を含む立体造形物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポリアミド樹脂を含有する樹脂粒子を含む粉末床溶融結合法用の粉末材料であって、ポリアミド樹脂のみからなる樹脂粒子から製造した立体造形物よりも耐衝撃性が高い立体造形物を製造できる粉末材料、そのような粉末材料を用いた立体造形物の製造方法、およびそのような粉末材料を用いて立体造形物を製造することができる立体造形装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本発明の一実施形態における立体造形装置の構成を概略的に示す側面図である。
図2図2は本発明の一実施形態における立体造形装置の制御系の主要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
前述の課題を解決すべく、本発明者らは粉末床溶融結合法による立体造形物の製造が可能な粉末材料に含ませることができるポリアミドを含む樹脂粒子について鋭意検討および実験を行った。その結果、本発明者らは、上記樹脂粒子が、ポリアミド樹脂を主成分とするコア部と、アミド基と反応する官能基(以下、単に「反応性官能基」ともいう。)を有する熱可塑性樹脂(以下、単に「反応性樹脂」ともいう。)を主成分とするシェル部と、を有するコアシェル型の粒子であり、かつ、粉末材料中の上記熱可塑性樹脂の含有量が、粉末材料中の上記ポリアミド樹脂の全質量に対して1.0質量%以上30質量%以下であるときに、耐衝撃性が向上した立体造形物を製造し得ることを見出した。
【0015】
樹脂粒子が、ポリアミド樹脂を主成分とするコア部と反応性樹脂を主成分とするシェル部とを有するコアシェル型の粒子であると、レーザが照射されたときに、溶融したポリアミド樹脂中に微小な反応性樹脂が微分散して、ポリアミド樹脂が有する末端アミン基と反応性樹脂が有する反応性官能基との反応場が多く生じる。そのため、上記樹脂粒子を含む粉末材料から粉末床溶融結合方式で立体造形物を製造すると、それぞれの反応性樹脂に複数のポリアミド樹脂が結合した構造が複雑に絡み合ってなる、ランダムなネットワーク構造が立体造形物内に形成される。上記ランダムなネットワーク構造が形成されると、立体造形物に付与された応力によるクラックが上記造形物中で伝播しにくくなるため、上記粉末粒子から製造される立体造形物は、衝撃を受けても亀裂が生じにくく(耐衝撃性が高く)なると考えられる。
【0016】
また、粉末材料中の反応性樹脂の含有量が、ポリアミド樹脂の全質量に対して0.1質量%以上であると、十分な量の上記ネットワーク構造が形成され、応力が十分に分散されるため、耐衝撃性が高まると考えられる。一方で、粉末材料中の反応性樹脂の含有量が、ポリアミド樹脂の全質量に対して30質量%以下であると、反応性樹脂に対するポリアミド樹脂の量が過剰にならず、それぞれの反応性樹脂が複数のポリアミド樹脂が反応できるため、上記ネットワーク構造が十分に形成され、応力が十分に分散されるため、耐衝撃性が高まると考えられる。
【0017】
なお、特許文献1や特許文献2に記載のように2種類の樹脂を溶融混練して互いに反応させようとすると、樹脂間の界面をなくして十分に反応させるために、融点が高い方の樹脂の融点よりも高い温度で、比較的長時間の混練を行うことが必要となる。このとき、たとえ不活性ガス環境下などで混練を行ったとしても、ランダムな熱分解やランダムな架橋化が生じて、かえって成形物の耐衝撃性が低下し、特にはのび性が低下することがある。しかし、ポリアミド樹脂を主成分とするコア部と反応性樹脂を主成分とするシェル部とを有するコアシェル型の樹脂粒子を含む粉末材料にレーザを照射すると、上記溶融したポリアミド樹脂中に微小な反応性樹脂が微分散した状態を、短時間のレーザ照射でも形成できる。そのため、本発明に関する粉末材料にレーザを照射して立体造形物を製造すると、上記ランダムな熱分解やランダムな架橋化が生じにくく、伸び性を低下させずに、製造した立体造形物の耐衝撃性を十分に高めることができる。
【0018】
特に、粒子がコアシェル型であると、後述するように、ポリアミド樹脂が有する末端アミン基と反応性樹脂が有する反応性官能基とが未反応の状態の粒子を製造することができる。そのため、レーザが照射されたときに、溶融したポリアミド樹脂中に微小な反応性樹脂が微分散した構造が形成されやすくなり、上述したランダムなネットワーク構造が立体造形物内に形成されやすくなると考えられる。
【0019】
以下、本発明の代表的な実施形態を詳細に説明する。
【0020】
1.粉末材料
本実施形態は、樹脂粒子を含む粉末材料の薄層にレーザ光を選択的に照射して、上記樹脂粒子が溶融結合してなる造形物層を形成し、上記造形物層を積層することによる立体造形物の製造に使用される粉末材料(以下、単に「粉末材料」ともいう。)に係る。上記樹脂粒子は、ポリアミド樹脂を主成分とするコア部と反応性樹脂を主成分とするシェル部とを有するコアシェル型の粒子である。また、粉末材料中の上記反応性樹脂の含有量は、粉末材料中の上記ポリアミド樹脂の全質量に対して1.0質量%以上30質量%以下である。上記粉末材料は、レーザ照射による溶融結合および薄層を形成するときの樹脂粒子の密な充填を顕著に妨げず、立体造形物の精度を顕著に低下させない範囲において、レーザ吸収剤やフローエージェントなどの、樹脂粒子以外の材料をさらに含んでもよい。
【0021】
1−1.樹脂粒子
上記樹脂粒子は、ポリアミド樹脂を主成分とするコア部と反応性樹脂を主成分とするシェル部とを有するコアシェル型の粒子である。
【0022】
樹脂粒子がポリアミド樹脂と反応性樹脂とを含むことは、トルエンなどの反応性樹脂を可溶な溶媒で反応性樹脂を溶出し、残渣線分と溶出成分の赤外吸収スペクトル(IRスペクトル)を、フーリエ変換赤外分光光度計(たとえば、Thermo Fisher Scientific社製 Nicolet380)を用いて、全反射(attenuated total reflection:ATR) 法で測定して確認することができる。このとき、赤外透過プリズムにはGeを用い、入射角は60°とし、反射回数は1回とすることができる。
【0023】
1−1−1.ポリアミド樹脂
上記ポリアミド樹脂は、主鎖を構成する構成単位がアミド結合で結合されたポリマーであればよい。樹脂粒子は、一種類のポリアミド樹脂のみを含んでもよいし、二種類以上のポリアミド樹脂を組み合わせて含んでもよい。また、粉末材料は、構成するポリアミド樹脂が同一である単種類の樹脂粒子のみを含んでいてよいし、構成するポリアミド樹脂の種類が異なる二種類以上の樹脂粒子を組み合わせて含んでもよい。
【0024】
ポリアミド樹脂の例には、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプラミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリウンデカミド(ナイロン11)、ポリカプラミド/ポリウンデカミドコポリマー(ナイロン6/11)、ポリドデカミド(ナイロン12)、ポリカプラミド/ポリドデカミドコポリマー(ナイロン6/12)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロン6T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリカプラミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリカプラミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ナイロンTMDT)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ナイロンジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン10T)、およびポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ナイロン11T)ならびにこれらの共重合体などが含まれる。これらのうち、入手が容易で用途が広いことから、ナイロン6およびナイロン66が好ましい。
【0025】
なお、通常、ポリアミド樹脂は、上記ポリアミド樹脂と反応性樹脂との反応に寄与する末端アミド基を分子鎖あたり1個または数個程度しか有さない。一方で、反応性樹脂は、上記反応に寄与する反応性官能基を、主鎖などに多数有することができる。そのため、上記反応を十分に生じさせて、ランダムなネットワーク構造をより形成させやすくする観点からは、粉末材料中のアミド基の濃度は高いことが好ましい。一方で、粉末材料中のアミド基の濃度を高めすぎると、ポリアミド樹脂が分岐構造を多数有したり、ポリアミド樹脂の分子量が小さくなったりするため、製造される立体造形物の内部の組成が不均一になりやすく、かえって耐衝撃性などの機械的強度を低下させるおそれがある。このような観点から、上記ポリアミド樹脂の末端アミド基濃度は10μeq/g以上100μeq/g以下であることが好ましい。
【0026】
ポリアミド樹脂の末端アミノ基濃度は、H−NMRまたは中和滴定法などの公知の方法で測定することができる。たとえば、中和滴定法での末端アミノ基濃度の測定は、 0.5gの試料(ポリアミド樹脂)を30mLのフェノール/エタノール=4/1(体積比)の混合溶液に溶解させ、5mLのメタノールを加え、0.05Nの塩酸で中和滴定して測定することができる。
【0027】
ポリアミド樹脂の数平均分子量は、特に限定されないものの、500以上70000以下であることが好ましく、3000以上50000以下であることが好ましい。ポリアミド樹脂の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などの公知の方法で測定することができる。
【0028】
1−1−2.反応性樹脂
上記反応性樹脂は、反応性官能基を有する樹脂であればよい。樹脂粒子は、一種類の反応性樹脂のみを含んでもよいし、二種類以上の反応性樹脂を組み合わせて含んでもよい。また、粉末材料は、構成する反応性樹脂が同一である単種類の樹脂粒子のみを含んでいてよいし、構成する反応性樹脂の種類が異なる二種類以上の樹脂粒子を組み合わせて含んでもよい。
【0029】
反応性樹脂は、反応性官能基を主鎖に有してもよいし、側鎖に有してもよい。これらのうち、より十分な量の反応性官能基をより均一に反応性樹脂内に分布させて、より緻密なネットワーク構造を形成させる観点からは、反応性樹脂は反応性官能基を主鎖に有することが好ましい。
【0030】
上記反応性官能基は、アミド基と反応して共有結合を形成可能な官能基である。反応性官能基の例には、カルボニル基などが含まれる。カルボニル基は、汎用的な高分子が有する官能基であって、使用できる樹脂の種類が多いため好ましい。
【0031】
反応性官能基として主鎖にカルボニル基を有する反応性樹脂の例には、多価カルボン酸に由来する構成単位と多価アルコールに由来する構成単位とを有するポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ乳酸樹脂およびポリアリレート樹脂が含まれる。これらのうち、耐熱性が高く、かつ、溶剤に可溶であり加工が容易であるため、ポリカーボネート樹脂およびポリアリレート樹脂が好ましい。
【0032】
上記ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸に由来する構成単位の例には、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、およびダイマー酸などを含む脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などを含む脂環族ジカルボン酸、ならびにフタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸などを含む芳香族ジカルボン酸、ならびにこれらのエステル誘導体などに由来する構成単位が含まれる。
【0033】
上記ポリエステル樹脂を構成する多価アルコールに由来する構成単位の例には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、およびダイマージオールなどの炭素数2〜20の脂肪族グリコール、ならびに分子量200〜100,000のポリエチレングリコール、ポリ1,3−プロピレングリコール、ポリ1,2−プロピレングリコール、およびポリテトラメチレングリコールなどの長鎖グリコールなどに由来する構成単位が含まれる。
【0034】
上記ポリエステル樹脂は、入手が容易で用途が広いことから、ポリエチレンテレフタラート(PET)樹脂およびポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂が好ましい。
【0035】
また、反応性樹脂の数平均分子量は、特に限定されないものの、反応性樹脂の種類にもよるが、500以上70000以下であることが好ましく、3000以上50000以下であることが好ましい。反応性樹脂の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)などの公知の方法で測定することができる。
【0036】
1−1−3.ポリアミド樹脂と反応性樹脂との組み合わせ
ポリアミド樹脂および反応性樹脂は、任意の組み合わせとすることができる。
【0037】
なお、上記反応性樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TS(6.5)は、前記ポリアミド樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TC(6.5)よりも高いことが好ましい。なお、樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度とは、その樹脂が加熱されて軟化しはじめる温度である。
【0038】
このような構成とすることで、粉末材料は、レーザ照射前の待機中の、粉末材料によって形成された薄層の表面の温度(以下、単に「待機温度」ともいう。)が、コア部を構成するポリアミド樹脂の貯蔵弾性率G’が1×106.5Paになる温度TC(6.5)付近またはそれより高い温度になるように予備加熱されることができる。このとき、シェル部を構成する反応性樹脂の貯蔵弾性率G’が1×106.5Paになる温度TS(6.5)はより高いため、上記待機温度付近において、シェル樹脂を構成する材料の貯蔵弾性率G’は1×106.5Paよりも高い。そのため、このような構成を有する粉末材料は、待機温度をこのような高い温度にしても、シェル樹脂が形成する外膜が硬さを保つため、上の層に積層した樹脂粒子の重みによる下の層に含まれる樹脂粒子の変形が生じにくく、レーザ照射前の樹脂粒子の変形による立体造形物の精度の低下が生じにくいと考えられる。一方で、予備加熱によって、樹脂粒子は、コア部を構成するポリアミド樹脂の貯蔵弾性率G’が1×106.5Pa付近になる温度TC(6.5)付近またはそれより高い温度にまで加熱されているため、より少ない量のエネルギー照射でポリアミド樹脂が溶融する温度まで加熱することができ、立体造形物の製造をより短時間で行うことが可能となる。さらには、コア部を構成するポリアミド樹脂は上記比較的高い温度まで加熱されているため、レーザの照射によって樹脂粒子が融着する温度まで加熱されても、コア部を構成するポリアミド樹脂の比容積はさほど変化せず、レーザ照射時の体積変化による樹脂粒子の変形も生じにくいと考えられる。
【0039】
上記貯蔵弾性率G’が1×106.5Paになる温度は、公知の方法で測定して得た値とすることができる。本明細書では、貯蔵弾性率測定装置(ティー・エイ・インスツルメント社製、ARES−G2レオメータ)を用いて以下の方法で測定して得られた値を上記貯蔵弾性率G’とする。
【0040】
(試料の調製)
コア部を構成するポリアミド樹脂およびシェル部を構成する反応性樹脂のいずれか一方のみを溶解する溶剤で、樹脂粒子を構成するポリアミド樹脂または反応性樹脂を分離および抽出し、乾燥させて粉末状にする。加圧成型機(エヌピーエーシステム株式会社製、NT−100H)を用いて、得られた粉末を常温で30kNに1分間加圧して、直径約8mm、高さ約2mmの円柱状の試料に成型する。
【0041】
(測定手順)
上記装置が有するパラレルプレートの温度を150℃に温調して、上記成型した円柱状の試料を加熱溶融させた後、axial forceが10(g重)を超えないように垂直方向に荷重をかけて、パラレルプレートに上記試料を固着させる。この状態でパラレルプレートおよび該円柱状試料を測定開始温度250℃まで加熱し、徐冷しながら粘弾性データを測定する。測定されたデータは、Microsoft社製Windows7(「Windows」は同社の登録商標)を搭載したコンピュータに転送し、上記コンピュータ上で動作する制御、データ収集および解析ソフト(TRIOS)を通じてデータ転送し、各温度における貯蔵弾性率G’(Pa)の値を読み取る。
【0042】
(測定条件)
測定周波数 :6.28ラジアン/秒。
測定歪みの設定 :初期値を0.1%に設定し、自動測定モードにて測定を行う。
試料の伸長補正 :自動測定モードにて調整する。
測定温度 :250℃から100℃まで毎分5℃の割合で徐冷する。
測定間隔 :1℃ごとに粘弾性データを測定する。
【0043】
樹脂粒子の体積平均粒子径は、1μm以上100μm以下であることが好ましい。上記体積平均粒子径が1μm以上であると、粉末材料の流動性が十分に高まり、立体造形物を製造する際の粉末材料の取り扱いが容易になる。また、上記体積平均粒子径が1μm以上であると、樹脂粒子の作製が容易であり、粉末材料の製造コストが高くならない。上記体積平均粒子径が100μm以下であると、比較的高精細な立体造形物を製造することが可能となる。粉末材料の取り扱いをより容易にし、樹脂粒子の製造をより容易にし、かつ、立体造形物の精度をより高くする観点からは、樹脂粒子の平均粒子径は、5μm以上70μm以下であることがより好ましく、20μm以上60μm以下であることがさらに好ましい。立体造形物の精度をさらに高くする観点からは、樹脂粒子の平均粒子径の上限は50μmであることが好ましく、40μmであることがより好ましく、30μmであることがさらに好ましい。
【0044】
本明細書において、粒子の体積平均粒子径は、たとえば湿式分散機を備えたレーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクロトラックMT3000II(「 MICROTRAC」は同社の登録商標))により測定することができる。また、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)により撮像した樹脂の顕微鏡画像中から任意に選択した100個の粒子の粒子径を測定し、その平均値を粒子の体積平均粒子径と推測してもよい。
【0045】
樹脂粒子は、実質的に上記ポリアミド樹脂と上記反応性樹脂のみを含有することが好ましいが、立体造形物が所望の特性を有しうる程度であれば、樹脂粒子を製造する際に用いられる成分の残渣などの、上記ポリアミド樹脂または上記反応性樹脂以外の成分を含んでいてもよい。
【0046】
1−1−4.ポリアミド樹脂および反応性樹脂の量
粉末材料中の上記反応性樹脂の含有量は、粉末材料中の前記ポリアミド樹脂の全質量に対して1.0質量%以上30質量%以下である。上記含有量が上記範囲であると、粉末材料から製造する立体造形物の耐衝撃性を、ポリアミド樹脂のみからなる立体造形物の耐衝撃性よりも高めることができる。立体造形物の耐衝撃性をより高める観点からは、粉末材料中の上記反応性樹脂の含有量は、粉末材料中の前記ポリアミド樹脂の全質量に対して1.5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以上15質量%以下であることがさらに好ましい。
【0047】
粉末材料中のポリアミド樹脂の量および上記反応性樹脂の量は、トルエンなどの反応性樹脂を可溶な溶媒で反応性樹脂を溶出し、残渣線分と溶出成分をそれぞれ加熱減圧乾固して重量測定して、求めることができる。
【0048】
1−1−5.樹脂粒子の形態
樹脂粒子は、上記ポリアミド樹脂を主成分とするコア部の表面のうち少なくとも一部を上記反応性樹脂を主成分とするシェル部で被覆したコアシェル型の粒子である。
【0049】
シェル部は、コア部の表面のうち90%以上100%以下を被覆することが好ましく、95%以上100%以下を被覆することがより好ましく、100%を被覆することがさらに好ましい。本明細書において、コアシェル型の粒子における上記被覆率は、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)により撮像した粉末材料の顕微鏡画像中から任意に選択した100個の樹脂粒子について、コア部の外周長さのうち、シェル部で被覆されている長さの割合を測定し、これらの測定値を平均して求めることができる。
【0050】
1−2.その他の材料
1−2−1.レーザ吸収剤
レーザの光エネルギーをより効率的に熱エネルギーに変換する観点から、粉末材料は、レーザ吸収剤をさらに含んでもよい。レーザ吸収剤は、使用する波長のレーザを吸収して熱を発する材料であればよい。このようなレーザ吸収剤の例には、カーボン粉末、ナイロン樹脂粉末、顔料および染料が含まれる。これらのレーザ吸収剤は、一種類のみ用いても、二種類を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
レーザ吸収剤の量は、樹脂粒子の溶融および結合が容易になる範囲で適宜設定することができ、たとえば、粉末材料の全質量に対して、0質量%より多く3質量%未満とすることができる。
【0052】
1−2−2.フローエージェント
粉末材料の流動性をより向上させ、立体造形物の製造時における粉末材料の取り扱いを容易にする観点から、粉末材料は、フローエージェントをさらに含んでもよい。フローエージェントは、摩擦係数が小さく、自己潤滑性を有する材料であればよい。このようなフローエージェントの例には、二酸化ケイ素および窒化ホウ素が含まれる。これらのフローエージェントは、一種類のみ用いても、二種類を組み合わせて用いてもよい。上記粉末材料は、フローエージェントによって流動性が高まっても、樹脂粒子が帯電しにくく、薄膜を形成するときに樹脂粒子をさらに密に充填させることができる。
【0053】
フローエージェントの量は、粉末材料の流動性がより向上し、かつ、樹脂粒子の溶融結合が十分に生じる範囲で適宜設定することができ、たとえば、粉末材料の全質量に対して、0質量%より多く2質量%未満とすることができる。
【0054】
2.粉末材料の製造方法
前記粉末材料は、前記樹脂粒子を製造し、必要に応じて樹脂粒子以外の材料と撹拌および混合して、製造することができる。
【0055】
上記樹脂粒子は、樹脂を主成分とする粒子を製造するための公知の方法で製造することができる。
【0056】
また、上記樹脂粒子は、コアシェル型の粒子である場合、複数種類の樹脂材料からコアシェル構造を有する粒子を製造するための公知の方法を利用して製造することができる。
【0057】
上記方法の例には、シェル部を構成する反応性樹脂を溶解した塗布液を用いる湿式コート法、およびコアを構成するポリアミド樹脂とシェル部を構成する反応性樹脂とを撹拌混合して機械的衝撃により結合させる乾式コート法、ならびにこれらの組み合わせなどによって行うことができる。湿式コート法を採用する場合、ポリアミド樹脂の表面に上記塗布液をスプレー塗布してもよいし、ポリアミド樹脂を上記塗布液の中に浸漬してもよい。湿式コート法によれば、シート状の反応性樹脂が粒子状のポリアミド樹脂を一様に被覆した樹脂粒子が得られる。乾式コート法によれば、粒子状の反応性樹脂が粒子状のポリアミド樹脂を被覆した樹脂粒子が得られる。湿式コート法は、均一な厚みのシェル部を形成しやすく、乾式コート法は乾燥工程が不要で製造工程を簡素化できる。
【0058】
また、上述の方法で製造されるコアシェル型の粒子は、製造中にポリアミド樹脂と反応性樹脂が共存する状態で加熱されることがないため、ポリアミド樹脂が有する末端アミン基と反応性樹脂が有する反応性官能基とは未反応のまま残されやすい。そのため、レーザを照射されたときに、溶融したポリアミド樹脂中に微小な反応性樹脂が微分散した構造が形成され、上述したランダムなネットワーク構造が立体造形物内に形成されやすくなる。
【0059】
ポリアミド樹脂および反応性樹脂は、市販のものを用いてもよいし、いずれか一方または双方の樹脂を、適当なモノマーやプレポリマーなどから合成してもよい。
【0060】
3.立体造形物の製造方法
本実施形態は、前記粉末材料を用いる、立体造形物の製造方法に係る。本実施形態に係る方法は、前記粉末材料を用いるほかは、通常の粉末床溶融結合法と同様に行い得る。具体的には、本実施形態に係る方法は、(1)上記粉末材料の薄層を形成する工程と、(2)予備加熱された薄層にレーザ光を選択的に照射して、上記粉末材料に含まれる樹脂粒子が溶融結合してなる造形物層を形成する工程と、(3)工程(1)および工程(2)をこの順に複数回繰り返し、上記造形物層を積層する工程、とを含む。工程(2)により、立体造形物を構成する造形物層のひとつが形成され、さらに工程(3)で工程(1)および工程(2)を繰り返し行うことで、立体造形物の次の層が積層されていき、最終的な立体造形物が製造される。本実施形態に係る製造方法は、(4)形成された粉末材料の薄層を予備加熱する工程を、少なくとも工程(2)よりも以前にさらに含んでいてもよい。
【0061】
3−1.粉末材料からなる薄層を形成する工程(工程(1))
本工程では、上記粉末材料の薄層を形成する。 たとえば、粉末供給部から供給された上記粉末材料を、リコータによって造形ステージ上に平らに敷き詰める。薄層は、造形ステージ上に直接形成してもよいし、すでに敷き詰められている粉末材料またはすでに形成されている造形物層の上に接するように形成してもよい。
【0062】
薄層の厚さは、造形物層の厚さに準じて設定できる。薄層の厚さは、製造しようとする立体造形物の精度に応じて任意に設定することができるが、通常、0.01mm以上0.30mm以下である。薄層の厚さを0.01mm以上とすることで、次の層を形成するためのレーザ照射によって下の層の樹脂粒子が溶融結合したり、下の層の造形層が再溶融したりすることを防ぐことができる。薄層の厚さを0.30mm以下とすることで、レーザのエネルギーを薄層の下部まで伝導させて、薄層を構成する粉末材料に含まれる樹脂粒子を、厚み方向の全体にわたって十分に溶融結合させることができる。上記観点からは、薄層の厚さは0.01mm以上0.10mm以下であることがより好ましい。また、薄層の厚み方向の全体にわたってより十分に樹脂粒子を溶融結合させ、積層間の割れをより生じにくくする観点からは、薄層の厚さは、後述するレーザのビームスポット径との差が0.10mm以内になるよう設定することが好ましい。
【0063】
3−2.樹脂粒子が溶融結合してなる造形物層を形成する工程(工程(2))
本工程では、形成された薄層のうち、造形物層を形成すべき位置にレーザを選択的に照射し、照射された位置の樹脂粒子を溶融結合させる。これにより、隣接する樹脂粒子が溶融し合って溶融結合体を形成し、造形物層となる。このとき、レーザのエネルギーを受け取った樹脂粒子は、すでに形成された層とも溶融結合するため、隣り合う層間の接着も生じる。
【0064】
樹脂粒子は、レーザを照射されたときに、シェル部を構成する反応性樹脂が分解してポリアミド樹脂中に微分散すると考えられる。これにより、ポリアミド樹脂が有する末端アミン基と反応性樹脂が有する反応性官能基との反応場が多く生じて、それぞれの反応性樹脂に複数のポリアミド樹脂が結合した構造が複雑に絡み合ってなる、ランダムなネットワーク構造が立体造形物内に形成されると考えられる。上記ランダムなネットワーク構造は、立体造形物に付与された応力によるクラックの上記造形物中での伝播を妨げるため、このようにして製造される立体造形物は、衝撃を受けても亀裂が生じにくく(耐衝撃性が高く)なると考えられる。また、レーザの照射によって反応性樹脂は容易に微分散するため、上記反応は短時間のレーザ照射でも生じ得る。そのため、樹脂を長時間加熱することによるランダムな熱分解やランダムな架橋化が生じにくく、伸び性を低下させずに、製造した立体造形物の耐衝撃性を十分に高めることができる。
【0065】
レーザの波長は、上記ポリアミド樹脂が吸収する範囲内で設定すればよい。このとき、レーザの波長と、ポリアミド樹脂の吸収率が最も高くなる波長との差が小さくなるようにすることが好ましいが、樹脂は様々な波長域の光を吸収し得るので、COレーザ等の波長帯域の広いレーザを用いることが好ましい。たとえば、レーザの波長は、0.8μm以上12μm以下であることが好ましい。
【0066】
たとえば、レーザの出力時のパワーは、後述するレーザの走査速度において、上記ポリアミド樹脂が十分に溶融結合する範囲内で設定すればよく、具体的には、5.0W以上60W以下とすることができる。レーザのエネルギーを低くして、製造コストを低くし、かつ、製造装置の構成を簡易なものにする観点からは、レーザの出力時のパワーは30W以下であることが好ましく、20W以下であることがより好ましい。
【0067】
レーザの走査速度は、製造コストを高めず、かつ、装置構成を過剰に複雑にしない範囲内で設定すればよい。具体的には、1mm/秒以上100mm/秒以下とすることが好ましく、1mm/秒以上80mm/秒以下とすることがより好ましく、2mm/秒以上80mm/秒以下とすることがさらに好ましく、3mm/秒以上80mm/秒以下とすることがさらに好ましく、3mm/秒以上50mm/秒以下とすることがさらに好ましい。
【0068】
レーザのビーム径は、製造しようとする立体造形物の精度に応じて適宜設定することができる。
【0069】
3−3.形成された粉末材料の薄層を予備加熱する工程(工程(3))
本工程では、工程(1)および工程(2)を繰り返して、工程(2)によって形成される造形物層を積層する。造形物層を積層していくことで、所望の立体造形物が製造される。
【0070】
3−4.形成された粉末材料の薄層を予備加熱する工程(工程(4))
本工程では、工程(2)よりも以前に、粉末材料による薄層を予備加熱する。たとえば、ヒータ等により、薄層の表面の温度(待機温度)をポリアミド樹脂の融点よりも15℃以下、好ましくは5℃以下に加熱することができる。
【0071】
なお、待機温度は、シェル部を構成する反応性樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TS(6.5)よりも15℃以下、好ましくは5℃以下にすることができる。特に、上記反応性樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TS(6.5)が前記ポリアミド樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TC(6.5)よりも高いときは、上記待機温度は、前記ポリアミド樹脂の貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TC(6.5)の付近またはそれよりも高い温度となり得る。そのため、このような樹脂粒子含む粉末材料を用いるときに、待機温度を上記温度にすることで、より少ない量のエネルギー照射で樹脂粒子が溶融結合する温度まで加熱することができ、立体造形物の製造をより短時間で行うことが可能となるほか、レーザ照射時の体積変化による樹脂粒子の変形も生じにくくできると考えられる。
【0072】
3−5.その他
溶融結合中の樹脂粒子の酸化等による、立体造形物の強度の低下を防ぐ観点からは、少なくとも工程(2)は減圧下または不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。減圧するときの圧力は10−2Pa以下であることが好ましく、10−3Pa以下であることがより好ましい。本実施形態で使用することができる不活性ガスの例には、窒素ガスおよび希ガスが含まれる。これらの不活性ガスのうち、入手の容易さの観点からは、窒素(N)ガス、ヘリウム(He)ガスまたはアルゴン(Ar)ガスが好ましい。製造工程を簡略化する観点からは、工程(1)〜工程(3)のすべて(工程(4)を含むときは、工程(1)〜工程(4)のすべて)を減圧下または不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
【0073】
4.立体造形装置
本実施形態は、上記粉末材料を用いて、立体造形物を製造する装置に係る。本実施形態に係る装置は、上記粉末材料を用いるほかは、粉末床溶融結合法による立体造形物の製造を行う公知の装置と同様の構成とし得る。具体的には、本実施形態に係る立体造形装置100は、その構成を概略的に示す側面図である図1に記載のように、開口内に位置する造形ステージ110、樹脂粒子を含む粉末材料の薄膜を上記造形ステージ上に形成する薄膜形成部120、薄膜にレーザを照射して、上記樹脂粒子が溶融結合してなる造形物層を形成するレーザ照射部130、および鉛直方向の位置を可変に造形ステージ110を支持するステージ支持部140、上記各部を支持するベース145を備える。
【0074】
立体造形装置100は、その制御系の主要部を示す図2に記載のように、薄膜形成部120、レーザ照射部130およびステージ支持部140を制御して、上記造形物層を繰り返し形成させて積層させる制御部150、各種情報を表示するための表示部160、ユーザーからの指示を受け付けるためのポインティングデバイス等を含む操作部170、制御部150が実行する制御プログラムを含む各種の情報を記憶する記憶部180、ならびに外部機器との間で立体造形データ等の各種情報を送受信するためのインターフェース等を含むデータ入力部190を備えてもよい。立体造形装置100には、立体造形用のデータを生成するためのコンピュータ装置200が接続されてもよい。
【0075】
造形ステージ110には、薄膜形成部120による薄層の形成およびレーザ照射部130によるレーザの照射によって造形材層が形成され、この造形材層が積層されることにより、立体造形物が造形される。
【0076】
薄膜形成部120は、たとえば、造形ステージ110が昇降する開口の縁部と水平方向にほぼ同一平面上にその縁部がある開口、開口から鉛直方向下方に延在する粉末材料収納部、および粉末材料収納部の底部に設けられ開口内を昇降する供給ピストンを備える粉末供給部121、ならびに供給された粉末材料を造形ステージ110上に平らに敷き詰めて、粉末材料の薄層を形成するリコータ122aを備えた構成とすることができる。
【0077】
なお、粉末供給部121は、造形ステージ110に対して鉛直方向上方に設けられた粉末材料収納部、およびノズルを備えて、上記造形ステージと水平方向に同一の平面上に、粉末材料を吐出する構成としてもよい。
【0078】
レーザ照射部130は、レーザ光源131およびガルバノミラー132aを含む。レーザ照射部130は、レーザの焦点距離を薄層の表面にあわせるためのレンズ(不図示)を備えていてもよい。 レーザ光源131は、上記波長のレーザを、上記出力で出射する光源であればよい。レーザ光源131の例には、YAGレーザ光源、ファイバレーザ光源およびCOレーザ光源が含まれる。ガルバノミラー132aは、レーザ光源131から出射されたレーザを反射してレーザをX方向に走査するXミラーおよびY方向に走査するYミラーから構成されてもよい。
【0079】
ステージ支持部140は、造形ステージ110を、その鉛直方向の位置を可変に支持する。すなわち、造形ステージ110は、ステージ支持部140によって鉛直方向に精密に移動可能に構成されている。ステージ支持部140としては種々の構成を採用できるが、例えば、造形ステージ110を保持する保持部材と、この保持部材を鉛直方向に案内するガイド部材と、ガイド部材に設けられたねじ孔に係合するボールねじ等で構成することができる。
【0080】
制御部150は、立体造形物の造形動作中、立体造形装置100全体の動作を制御する。
【0081】
また、制御部150は、中央処理装置等のハードウェアプロセッサを含んでおり、たとえばデータ入力部190がコンピュータ装置200から取得した立体造形データを、造形材層の積層方向について薄く切った複数のスライスデータに変換するよう構成されてもよい。スライスデータは、立体造形物を造形するための各造形材層の造形データである。スライスデータの厚み、すなわち造形材層の厚みは、造形材層の一層分の厚さに応じた距離(積層ピッチ)と一致する。
【0082】
表示部160は、たとえば液晶ディスプレイ、モニタとすることができる。
【0083】
操作部170は、たとえばキーボードやマウスなどのポインティングデバイスを含むものとすることができ、テンキー、実行キー、スタートキー等の各種操作キーを備えてもよい。
【0084】
記憶部180は、たとえばROM、RAM、磁気ディスク、HDD、SSD等の各種の記憶媒体を含むものとすることができる。
【0085】
立体造形装置100は、制御部150の制御を受けて、装置内を減圧する、減圧ポンプなどの減圧部(不図示)、または、制御部150の制御を受けて、不活性ガスを装置内に供給する、不活性ガス供給部(不図示)を備えていてもよい。また、立体造形装置100は、制御部150の制御を受けて、装置内、特には粉末材料による薄層の上面を加熱するヒータ(不図示)を備えていてもよい。
【0086】
4−1.立体造形装置100を用いた立体造形の例
制御部150は、データ入力部190がコンピュータ装置200から取得した立体造形データを、造形材層の積層方向について薄く切った複数のスライスデータに変換する。その後、制御部150は、立体造形装置100における以下の動作の制御を行う。
【0087】
粉末供給部121は、制御部150から出力された供給情報に従って、モーターおよび駆動機構(いずれも不図示)を駆動し、供給ピストンを鉛直方向上方(図中矢印方向)に移動させ、上記造形ステージと水平方向同一平面上に、粉末材料を押し出す。
【0088】
その後、リコータ駆動部122は、制御部150から出力された薄膜形成情報に従って水平方向(図中矢印方向)にリコータ122aを移動して、粉末材料を造形ステージ110に運搬し、かつ、薄層の厚さが造形物層の1層分の厚さとなるように粉末材料を押圧する。
【0089】
その後、レーザ照射部130は、制御部150から出力されたレーザ照射情報に従って、薄膜上の、各スライスデータにおける立体造形物を構成する領域に適合して、レーザ光源131からレーザを出射し、ガルバノミラー駆動部132によりガルバノミラー132aを駆動してレーザを走査する。レーザの照射によって粉末材料に含まれる樹脂粒子が溶融結合し、造形物層が形成される。
【0090】
その後、ステージ支持部140は、制御部150から出力された位置制御情報に従って、モーターおよび駆動機構(いずれも不図示)を駆動し、造形ステージ110を、積層ピッチだけ鉛直方向下方(図中矢印方向)に移動する。
【0091】
表示部160は、必要に応じて、制御部150の制御を受けて、ユーザーに認識させるべき各種の情報やメッセージを表示する。操作部170は、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、その入力操作に応じた操作信号を制御部150に出力する。たとえば、形成される仮想の立体造形物を表示部160に表示して所望の形状が形成されるか否かを確認し、所望の形状が形成されない場合は、操作部170から修正を加えてもよい。
【0092】
制御部150は、必要に応じて、記憶部180へのデータの格納または記憶部180からのデータの引き出しを行う。
【0093】
これらの動作を繰り返すことで、造形物層が積層され、立体造形物が製造される。
【実施例】
【0094】
以下において、本発明の具体的な実施例を説明する。なお、これらの実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
【0095】
1.粉末材料の作製
以下の手順で、樹脂粒子を含む粉末材料を作製した。
【0096】
1−1.粉末材料1
100質量部のトルエンに、1質量部のポリカーボネート(三菱ガス化学株式会社製、PCZ‐200)および2質量部の乳化剤(阪本薬品工業株式会社製、SYグリスター CRS−75)を溶解させ、さらに10質量部のナイロン12(アルケマ社製、ORGASOL 2003) を分散させて、第1の樹脂分散液を得た。第1の樹脂分散液を、200質量部の水に10質量部の非イオン性界面活性剤(花王株式会社製、エマノーンC−25(「エマノーン」は同社の登録商標))を溶解させた液体中に注入して、10分の超音波処理を行い、第2の樹脂分散液を得た。第2の樹脂分散液をエバポレーターに投入して、減圧してトルエンを除去し、樹脂分散溶液を得た。その後、得られた樹脂分散溶液を減圧濾過し、ナイロン12がポリカーボネートで被覆されたコアシェル型の樹脂粒子からなる粉末材料1を得た。
【0097】
1−2.粉末材料2
100質量部のトルエンに、0.5質量部のポリカーボネート(三菱ガス化学株式会社製、PCZ‐200)および2質量部の乳化剤(阪本薬品工業株式会社製、SYグリスター CRS−75)を溶解させ、さらに10質量部のナイロン12(アルケマ社製、ORGASOL 2003) を分散させて、第1の樹脂分散液を得た。第1の樹脂分散液を、200質量部の水に10質量部の非イオン性界面活性剤(花王株式会社製、エマノーンC−25)を溶解させた液体中に注入して、10分の超音波処理を行い、第2の樹脂分散液を得た。第2の樹脂分散液をエバポレーターに投入して、減圧してトルエンを除去し、樹脂分散溶液を得た。その後、得られた樹脂分散溶液を減圧濾過し、ナイロン12がポリカーボネートで被覆されたコアシェル型の樹脂粒子からなる粉末材料2を得た。
【0098】
1−3.粉末材料3
ナイロン6(東レ株式会社製、アミランCM1001(ガラスファイバーでの強化なし(以下のアミランCM1001も同様)、「アミラン」は同社の登録商標)を機械的粉砕法で平均粒子径50μmに粉砕し、粒子状のナイロン6を得た。
【0099】
100質量部のトルエンに、0.5質量部の特開平9−136946号公報に記載される手順に準じて合成したポリアリレートと2質量部の乳化剤(阪本薬品工業株式会社製、CRS−75)を溶解させ、さらに10質量部の上記粒子状のナイロン6を分散させて、第1の樹脂分散液を得た。樹脂分散液1を、200質量部の水に10質量部の非イオン性界面活性剤(花王株式会社製、エマノーンC−25)を溶解させた液体中に注入して、10分の超音波処理を行い、第2の樹脂分散液を得た。第2の樹脂分散液をエバポレーターに投入して、減圧してトルエンを除去し、樹脂分散溶液を得た。その後、得られた樹脂分散溶液を減圧濾過し、ナイロン6がポリアリレートで被覆されたコアシェル型の樹脂粒子からなる粉末材料3を得た。
【0100】
1−4.粉末材料4
ナイロン12(アルケマ社製、ORGASOL 2003)をそのまま用いて、粉末材料4とした。
【0101】
1−5.粉末材料5
ナイロン6(東レ株式会社製、アミランCM1001)を機械的粉砕法で平均粒子径50μmに粉砕し、得られたナイロン6を含む粒子を、粉末材料5とした。
【0102】
1−6.粉末材料6
100質量部のナイロン12(アルケマ社製、ORGASOL 2003)を機械的粉砕法で平均粒子径42μmに粉砕した粒子と、10質量部のポリカーボネート(住化スタイロンポリカーボネート株式会社製、カリバー301−4(「カリバー」はトリンセオ社の登録商標))を混合して機械的粉砕法で平均粒子径50μmに粉砕した粒子との混合物を、粉末材料6とした。
【0103】
1−7.粉末材料7
100質量部のナイロン6(東レ株式会社製、アミランCM1001)を機械的粉砕法で平均粒子径50μmに粉砕した粒子と、5質量部の特開平9−136946号公報に記載される手順に準じて合成したポリアリレートを機械的粉砕法で平均粒子径50μmに粉砕した粒子との混合物を、粉末材料7とした。
【0104】
1−8.粉末材料8
100質量部のトルエンに、3.5質量部のポリカーボネート(三菱ガス化学株式会社製、PCZ‐200)および2質量部の乳化剤(阪本薬品工業株式会社製、SYグリスター CRS−75)を溶解させ、さらに10質量部のナイロン12(アルケマ社製、ORGASOL 2003) を分散させて、第1の樹脂分散液を得た。第1の樹脂分散液を、200質量部の水に10質量部の非イオン性界面活性剤(花王株式会社製、エマノーンC−25)を溶解させた液体中に注入して、10分の超音波処理を行い、第2の樹脂分散液を得た。第2の樹脂分散液をエバポレーターに投入して、減圧してトルエンを除去し、樹脂分散溶液を得た。その後、得られた樹脂分散溶液を減圧濾過し、ナイロン12がポリカーボネートで被覆されたコアシェル型の樹脂粒子からなる粉末材料8を得た。
【0105】
粉末材料1〜8の作製に用いた樹脂の種類およびその量、粉末材料1〜8に含まれる樹脂粒子の形態、およびレーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、マイクロトラックMT3000II)を用いて測定した。粉末材料1〜8の体積平均粒子径を、表1に示す。表1において、「形態」の欄には、粉末材料が樹脂1からなるコア部を樹脂2からなるシェル部が被覆してなる樹脂粒子を含むときは「コアシェル」、粉末材料が樹脂1からなる粒子と樹脂2からなる粒子との混合物であるときは「混合物」、と記載している。また、「粒子径」の欄には、粉末材料がコアシェル型の樹脂粒子を含む場合、(樹脂1の平均粒子径)/(樹脂2の平均粒子径)を記載している。
【0106】
なお、粉末材料の作製に用いたナイロン12の、加熱時に貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TC(6.5)は168℃であり、粉末材料の作製に用いたナイロン6の、加熱時に貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TC(6.5)は220℃だった。また、粉末材料の作製に用いたポリカーボネートの、加熱時に貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TS(6.5)は190℃であり、粉末材料の作製に用いたポリカーボネートの、加熱時に貯蔵弾性率G’が106.5Paになる温度TS(6.5)は280℃だった。
【0107】
【表1】
【0108】
2.評価
2−1.カルボニル基量の変化
粉末材料1〜8の赤外吸収スペクトル(IRスペクトル)を、フーリエ変換赤外分光光度計(Thermo Fisher Scientific社製 Nicolet380)を用いて、全反射 (attenuated total reflection:ATR) 法で測定した。赤外透過プリズムにはGeを用い、入射角は60°とし、反射回数は1回とした。
【0109】
その後、粉末材料1〜8を、図1に示す基本構成を備える粉末床溶融結合法による立体造形装置の造形ステージ上に敷き詰めて、厚さ0.1mmの薄層を形成した。この薄層に、以下の条件で、YAG波長用ガルバノメータスキャナを搭載した50Wファイバレーザ(SPI Lasers社製)から縦15mm×横20mmの範囲にレーザを照射して、単層の造形物1〜8をそれぞれ作製した。
【0110】
[レーザの出射条件]
レーザ出力 :20W
レーザの波長 :1.07μm
ビーム径 :薄層表面で170μm
【0111】
[レーザの走査条件]
走査速度 :3.0mm/sec
走査間隔 :0.2mm
【0112】
[周囲雰囲気]
温度 :常温
ガス :アルゴン(Ar) 100%
【0113】
上記造形物1〜8のIRスペクトルを、粉末材料1〜8と同様に測定した。
【0114】
上記樹脂2を溶解除去する前の粉末材料1〜8のIRスペクトルと樹脂2を溶解除去する前の造形物1〜8のIRスペクトルとをそれぞれ比較して、カルボニル基に対応するピークの強度に変化があったか否かを評価した。なお、粉末材料4および粉末材料5、ならびに造形物4および造形物5から測定したIRスペクトルからは、カルボニル基に対応するピークは検出されなかった。
【0115】
また、粉末材料2に含まれる樹脂2であるポリアリレートを可溶な溶媒であるトルエンで、粉末材料2に含まれるポリアリレートを溶解除去し、上記除去後の粉末材料2および除去液に含まれる樹脂についても、同様にIRスペクトルを測定した。
【0116】
除去前の粉末材料2および除去後の除去液では、カルボニル基に対応する波数にピークが見られたが、除去後の粉末材料2では、カルボニル基に対応する波数にピークが見られなかった。
【0117】
さらに、造形物2に含まれるポリアリレートをトルエンで溶解除去し、上記除去後の造形物2および除去液に含まれる樹脂についても、同様にIRスペクトルを測定した。
【0118】
除去前の粉末材料2では、カルボニル基に対応する波数にピークが見られず、粉末材料2に含まれるポリアリレートが有するカルボニル基がナイロン6の末端アミド基と反応したと推測された。一方で、除去後の除去液では、カルボニル基に対応する波数にピークが見られ、ポリアリレートの一部はナイロン6とは反応しなかったことが推測された。なお、除去後の造形物2では、カルボニル基に対応する波数にピークが見られなかった。
【0119】
2−2.引張強度
上記「カルボニル基量の変化」と同様の作製条件で、粉末材料1〜8から、JIS K 7181−2に記載の1A形の形状を有する試験片1〜8を作製した。JIS K 7181−2に準じてこの試験片1〜8の引張強さをそれぞれ求めた。
【0120】
樹脂1を単独で用いて試験片を作製した場合(粉末材料4または粉末材料5から作製した試験片4または試験片5)と比較したときの、試験片1〜3および試験片6〜8の上記引張強度が高くなっているか低くなっているかを調べて、高くなっているときはその粉末材料の引張強度を「○」と評価し、低くなっているときはその粉末材料の引張強度を「×」と評価した。
【0121】
2−3.造形物の欠損
上記「カルボニル基量の変化」と同様の作製条件で作製した造形物1〜8を目視で観察し、造形物に樹脂粒子の大きさ(約0.1mm)より大きい欠損(造形物が形成されず、空隙となった部分)があるかを確認した。上記欠損の数が1個以上10個以下であるときは、造形物の欠損を「○」と評価し、上記欠損の数が11個以上であるときは、造形物の欠損を「×」と評価した。
【0122】
粉末材料1〜8についての、上記カルボニル基量の変化、引張強度および造形物の欠損の評価結果を、表2に示す。
【0123】
【表2】
【0124】
ポリアミド樹脂を主成分とするコア部と、アミド基と反応する官能基を有する熱可塑性樹脂を主成分とするシェル部と、を有するコアシェル型の樹脂粒子からなる粉末材料であって、粉末材料中の上記熱可塑性樹脂の含有量が、粉末材料中の上記ポリアミド樹脂の全質量に対して1.0質量%以上30質量%以下である、粉末材料1〜3は、造形物を作製するときに樹脂2のカルボニル基が樹脂1の末端アミド基と反応しており、造形物の引張強度がポリアミド樹脂のみから作製した造形物(造形物4および造形物5)よりも高くなっており、かつ、造形物の欠損も生じにくかった。
【0125】
また、ポリアミド樹脂と、アミド基と反応する官能基を有する熱可塑性樹脂とを単に混合したのみである粉末材料6および粉末材料7から造形物を製造しても、造形物の引張強度はポリアミド樹脂のみから作製した造形物(造形物4および造形物5)よりもかえって低くなり、かつ、造形物の欠損も生じやすかった。これは、樹脂1が有する末端アミン基と樹脂2が有するカルボニル基との間の反応場がさほど生じず、ネットワーク構造が十分に形成されなかったためと考えられる。
【0126】
また、粉末材料中の上記熱可塑性樹脂の含有量が、粉末材料中の上記ポリアミド樹脂の全質量に対して30質量%より多い粉末材料8は、樹脂2のカルボニル基が樹脂1の末端アミド基と反応せず、造形物の引張強度はポリアミド樹脂のみから作製した造形物(造形物4および造形物5)よりもかえって低くなり、かつ、造形物の欠損も生じやすかった。これは、樹脂1の末端アミド基と樹脂2のカルボニル基とは反応するものの、それぞれの樹脂2に対して反応する樹脂1の量が少なく、ネットワーク構造が十分に形成されなかったためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明に係る粉末材料によれば、粉末床溶融結合法によって、ポリアミド樹脂から製造した立体造形物よりも耐衝撃性の高い立体造形物を製造することが可能となる。そのため、本発明は、粉末床溶融結合法が利用できる分野を拡大し、粉末床溶融結合法による立体造形のさらなる普及に寄与し得る。
【符号の説明】
【0128】
100 立体造形装置
110 造形ステージ
120 薄膜形成部
121 粉末供給部
122 リコータ駆動部
122a リコータ
130 レーザ照射部
131 レーザ光源
132 ガルバノミラー駆動部
132a ガルバノミラー
140 ステージ支持部
145 ベース
150 制御部
160 表示部
170 操作部
180 記憶部
190 データ入力部
200 コンピュータ装置
図1
図2