特許第6866929号(P6866929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気株式会社の特許一覧
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6866929
(24)【登録日】2021年4月12日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】生体認証装置及び生体認証方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20210419BHJP
【FI】
   G06T7/00 530
   G06T7/00 350B
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-547955(P2019-547955)
(86)(22)【出願日】2018年9月13日
(86)【国際出願番号】JP2018034075
(87)【国際公開番号】WO2019073745
(87)【国際公開日】20190418
【審査請求日】2020年3月3日
(31)【優先権主張番号】特願2017-199167(P2017-199167)
(32)【優先日】2017年10月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(72)【発明者】
【氏名】島原 達也
【審査官】 千葉 久博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−76020(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0287271(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/063708(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/106644(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1生体画像と第2生体画像の正解対及び非正解対を生成する教師データ生成部と、
複数の異なる仮パラメータを用いて、前記第1生体画像及び前記第2生体画像から特徴量を抽出する学習データ生成部と、
前記正解対から抽出された前記特徴量の対の一致度を表す第1のスコアと、前記非正解対から抽出された前記特徴量の対の一致度を表す第2のスコアとに基づいて、前記仮パラメータごとにスコア分離度を算出し、前記スコア分離度の大きさに基づいて前記仮パラメータを判定する最適解判定部と、
を備える生体認証装置。
【請求項2】
前記最適解判定部は、最大となる前記スコア分離度に基づいて前記仮パラメータを判定する
請求項1に記載の生体認証装置。
【請求項3】
前記最適解判定部は、前記第1のスコア及び前記第2のスコアを、前記第1生体画像又は前記第2生体画像ごとに算出し、前記第1のスコアの順位が1位である割合を、前記スコア分離度として算出する
請求項1又は2に記載の生体認証装置。
【請求項4】
前記最適解判定部は、前記第1のスコアが所定値以上である前記正解対を、前記スコア分離度の算出処理から除外する
請求項1から3のいずれか1項に記載の生体認証装置。
【請求項5】
前記第1生体画像及び前記第2生体画像から前記特徴量を抽出するためのパラメータを記録する記録部と、
前記記録部に記録されている前記パラメータを、前記判定された前記仮パラメータによって更新するパラメータ更新部と、
を更に備える請求項1から4のいずれか1項に記載の生体認証装置。
【請求項6】
前記第1生体画像と前記第2生体画像の対は、指紋又は掌紋の採取画像の対であり、
前記特徴量は、指紋又は掌紋の特徴点群である
請求項1から5のいずれか1項に記載の生体認証装置。
【請求項7】
前記第1生体画像と前記第2生体画像の対は、遺留指紋の採取画像と押捺指紋の採取画像の対である
請求項6に記載の生体認証装置。
【請求項8】
前記仮パラメータは、ノイズ除去処理及び強調処理の組み合わせ及び重みを含む
請求項1から7のいずれか1項に記載の生体認証装置。
【請求項9】
第1生体画像と第2生体画像の正解対及び非正解対を生成する教師データ生成ステップと、
複数の異なる仮パラメータを用いて、前記第1生体画像及び前記第2生体画像から特徴量を抽出する学習データ生成ステップと、
前記正解対から抽出された前記特徴量の対の一致度を表す第1のスコアと、前記非正解対から抽出された前記特徴量の対の一致度を表す第2のスコアとに基づいて、前記仮パラメータごとにスコア分離度を算出し、前記スコア分離度の大きさに基づいて前記仮パラメータを判定する最適解判定ステップと、
を有する、生体認証装置の制御演算部において用いられる生体認証方法。
【請求項10】
第1生体画像と第2生体画像の正解対及び非正解対を生成する教師データ生成手段と、
複数の異なる仮パラメータを用いて、前記第1生体画像及び前記第2生体画像から特徴量を抽出する学習データ生成手段と、
前記正解対から抽出された前記特徴量の対の一致度を表す第1のスコアと、前記非正解対から抽出された前記特徴量の対の一致度を表す第2のスコアとに基づいて、前記仮パラメータごとにスコア分離度を算出し、前記スコア分離度の大きさに基づいて前記仮パラメータを判定する最適解判定手段と、
して、コンピュータを機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体認証装置及び生体認証方法に関し、特に、生体画像から特徴量を抽出するために用いるパラメータの自動最適化技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
指や掌の皮膚の隆線が形作る指紋や掌紋は万人不同かつ終生不変という特徴を有している。このため、指紋や掌紋は個人を識別する生体認証手段として犯罪捜査等に利用されている。
【0003】
犯罪捜査用に事前に採取される押捺指紋や、事件現場で採取される遺留指紋等の採取画像は、予めデータベースに登録され、犯罪捜査において読み出されて特徴量が抽出される。特許文献1では、採取画像から特徴量を抽出する際にノイズ除去処理や強調処理を行うことで、指紋の特徴量を鮮明化して指紋の照合精度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−048000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生体画像から特徴量を抽出する際に用いられるノイズ除去処理や強調処理の組み合わせ及び重み等のパラメータは、指紋の採取方法(例えばインク方式では、インクや紙の質)等に応じて最適な値が異なる。このため、生体画像から特徴量を抽出するパラメータは、生体認証装置の運用スタイルに合わせて適切に設定する必要がある。
【0006】
しかし、生体画像から特徴量を抽出するパラメータを運用スタイルごとに設定することは手間を有するだけでなく、最適なパラメータは実際の運用において試行錯誤しながらでないと分からないことも多い。特に、運用スタイルは途中で変更され得ることから、データベースには様々な運用スタイルにおいて採取された生体画像が含まれ得る。このため、生体画像から特徴量を抽出するためのパラメータを最適化して維持することが難しいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、第1生体画像と第2生体画像の正解対及び非正解対を生成する教師データ生成部と、複数の異なる仮パラメータを用いて、第1生体画像及び第2生体画像から特徴量を抽出する学習データ生成部と、正解対から抽出された特徴量の対の一致度を表す第1のスコアと、非正解対から抽出された特徴量の対の一致度を表す第2のスコアとに基づいて、仮パラメータごとにスコア分離度を算出し、スコア分離度の大きさに基づいて仮パラメータを判定する最適解判定部と、を備える生体認証装置が提供される。
【0008】
また、本発明の別観点によれば、第1生体画像と第2生体画像の正解対及び非正解対を生成する教師データ生成ステップと、複数の異なる仮パラメータを用いて、第1生体画像及び第2生体画像から特徴量を抽出する学習データ生成ステップと、正解対から抽出された特徴量の対の一致度を表す第1のスコアと、非正解対から抽出された特徴量の対の一致度を表す第2のスコアとに基づいて、仮パラメータごとにスコア分離度を算出し、スコア分離度の大きさに基づいて仮パラメータを判定する最適解判定ステップと、を有する、生体認証装置の制御演算部において用いられる生体認証方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生体画像から特徴量を抽出するためのパラメータを自動最適化することが可能な生体認証装置及び指紋特徴抽出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る生体認証装置の構成を概略的に示すブロック図である。
図2A】第1実施形態に係る生体認証装置における教師データ生成処理の例を示す図である。
図2B】第1実施形態に係る生体認証装置における教師データ生成処理の例を示す図である。
図3A】第1実施形態に係る生体認証装置における学習データ生成処理の例を示す図である。
図3B】第1実施形態に係る生体認証装置における学習データ生成処理の例を示す図である。
図4A】第1実施形態に係る生体認証装置におけるスコア算出処理の例を示す第1の図である。
図4B】第1実施形態に係る生体認証装置におけるスコア算出処理の例を示す第1の図である。
図5A】第1実施形態に係る生体認証装置におけるスコア算出処理の例を示す第2の図である。
図5B】第1実施形態に係る生体認証装置におけるスコア算出処理の例を示す第2の図である。
図6A】第1実施形態に係る生体認証装置におけるスコア算出処理の例を示す第3の図である。
図6B】第1実施形態に係る生体認証装置におけるスコア算出処理の例を示す第3の図である。
図7】第1実施形態に係る生体認証装置における最適解判定処理の例を示す図である。
図8】第1実施形態に係る生体認証方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。各図において同一、又は相当する機能を有するものは、同一符号を付し、その説明を省略又は簡潔にすることもある。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る生体認証装置の構成を概略的に示すブロック図である。本実施形態の生体認証装置は、制御演算部1、及び記録部2を備えて構成される。
【0013】
制御演算部1は、記録部2に記録されたプログラムを実行し、生体認証装置の制御及び演算を行うためのマイクロプロセッサ及びメモリを備えた半導体ICである。制御演算部1は、生体画像読み出し部11、教師データ生成部12、学習データ生成部13、最適解判定部14、及びパラメータ更新部15を有している。
【0014】
記録部2は、制御演算部1により実行されるプログラムや、プログラムの実行に必要となるデータが保存されるフラッシュメモリやHDD等の記録装置である。記録部2には、犯罪捜査用に事前に採取された押捺指紋や、事件現場で採取された遺留指紋等の生体画像が、データベースとして登録されている。
【0015】
生体画像読み出し部11は、特徴量抽出用のパラメータを自動最適化するための機械学習を行うために、記録部2にデータベースとして登録されている生体画像の中から、複数の生体画像を読み出す。以下で説明するパラメータの自動最適化は、通常の鑑定処理のバックグラウンド処理として、或いは、夜間等に行われるバッチ処理として実行され得る。
【0016】
なお、以下の説明では、犯罪捜査用に予め採取された押捺指紋の採取画像や、事件現場で採取された遺留指紋の採取画像を、生体画像とするが、本実施形態はこれに限定されない。生体画像は掌紋、指の静脈、瞳の虹彩等の採取画像であってもよい。また、生体画像は、生体情報をカメラ等で直接読み取ったものでもよいし、インク等で紙に押捺された生体情報をスキャナで読み取ったものでもよい。
【0017】
教師データ生成部12は、後述の学習データ生成処理おいて教師データとして用いるための第1生体画像と第2生体画像の対を生成する。ここで、本実施形態では、遺留指紋の採取画像を第1生体画像とし、押捺指紋の採取画像を第2生体画像とする。
【0018】
より具体的には、教師データ生成部12は、生体画像読み出し部11により読み出された複数の生体画像から、同一の指に基づくものであると判定した第1生体画像と第2生体画像の対を正解対として選択する。また、教師データ生成部12は、同一の指に基づくものであると判定しなかった第1生体画像と第2生体画像の対を非正解対として選択する。
【0019】
教師データ生成部12は、教師データを生成するための専用の処理である必要はなく、通常の鑑定業務における一処理を、教師データ生成部12における一処理として利用することも可能である。例えば、教師データ生成部12は、生体認証装置の利用者である鑑識官等によって同一の指に基づくものであると予め識別された第1生体画像と第2生体画像の対を、そのまま正解対として選択してもよい。
【0020】
学習データ生成部13は、教師データ生成部12により生成された教師データ用の第1生体画像及び第2生体画像から、複数の異なる仮パラメータを用いて、学習データ用の特徴量を生成する。ここで、本実施形態では、遺留指紋や押捺指紋の採取画像から抽出される特徴点(指紋隆線の端点や分岐点)の群(Group)を、学習データ用の特徴量とする。
【0021】
なお、本実施形態ではパラメータという用語を広い意味で用いる。パラメータは、画像抽出におけるノイズ除去処理、強調処理、及びその他の処理のアルゴリズムの組み合わせ及び重みを含み得る。
【0022】
最適解判定部14は、正解対から抽出された特徴量の対の一致度を表す第1のスコアと、非正解対から抽出された特徴量の対の一致度を表す第2のスコアとに基づいて、仮パラメータごとにスコア分離度を算出する。そして、スコア分離度の大きさに基づいて仮パラメータを最適解として判定する。パラメータ更新部15は、記録部2に記録されているパラメータを、最適解として判定された仮パラメータによって更新する。
【0023】
図2A及び図2Bは、第1実施形態に係る生体認証装置における教師データ生成処理の例を示す図である。教師データ生成部12は、生体画像読み出し部11により読み出された複数の生体画像から、同一の指に基づくものであると判定した第1生体画像と第2生体画像の対を正解対として選択する。また、教師データ生成部12は、同一の指に基づくものであると判定しなかった第1生体画像と第2生体画像の対を非正解対として選択する。
【0024】
なお、図2Aには、教師データ生成部12により生成された遺留指紋Fの採取画像と押捺指紋fの採取画像を同じ図形で表しているが、実際の遺留指紋Fの採取画像は、押捺指紋fの採取画像よりも不鮮明である。以下、教師データ生成部12による正解対及び非正解対の生成方法の一例について説明するが、本実施形態はこの例に限定されるものではない。
【0025】
教師データ生成部12は、生体認証装置の利用者である鑑識官等によって同一の指に基づくものであると予め識別された遺留指紋Fの採取画像と押捺指紋fの採取画像の正解対を、教師データとして生成する。また、教師データ生成部12は、生体認証装置の利用者である鑑識官等によって同一の指に基づくものであると識別されなかった遺留指紋Fの採取画像と押捺指紋fの採取画像の非正解対を、教師データとして生成する。
【0026】
図2Aには、第1生体画像である遺留指紋Fの採取画像の特徴点群{M1、M2、…}と、第2生体画像である押捺指紋fの採取画像の特徴点群{m1、m2、…}を参考用に示している。一般的には、鑑識官は、図2Aに示すような特徴点群{M1、M2、…}及び特徴点群{m1、m2、…}を参照しながら、第1生体画像と第2生体画像の正解対及び非正解対を選択するが、本実施形態はこれに限定されるものではない。
【0027】
図2Bには、教師データ生成部12により生成された複数の正解対F1−f1、F2−f2、F3−f3の例を示している。ここで、正解対F1−f1は、遺留指紋F1の採取画像と押捺指紋f1の採取画像の正解対であり、他の正解対F2−f2、F3−f3についても同様である。なお、図2Bには、3対の正解対を示したが、実際の教師データ生成処理においては更に多くの正解対が生成され得る。
【0028】
図3A及び図3Bは、第1実施形態に係る生体認証装置における学習データ生成処理の例を示す図である。学習データ生成部13は、教師データ生成部12により生成された教師データ用の正解対の第1生体画像及び第2生体画像から、複数の異なる仮パラメータを用いて、学習データ用の特徴量を生成する。ここで、本実施形態では、遺留指紋や押捺指紋の採取画像から抽出される特徴点(指紋隆線の端点や分岐点)の群(Group)を、学習データ用の特徴量とする。図3Bには、図2Bに示した正解対の第1生体画像及び第2生体画像を示している。以下、学習データ生成部13による特徴量の生成方法の一例について説明するが、本実施形態はこの例に限定されるものではない。
【0029】
図3Aに示すように、学習データ生成部13は、仮パラメータを用いて、遺留指紋Fの採取画像から特徴点群G{N1、N2、…}を抽出する。また、学習データ生成部13は、同様に、仮パラメータを用いて、押捺指紋fの採取画像から特徴点群g{n1、n2、…}を抽出する。特徴点の抽出方法としては、例えば特許文献1に記載の周知技術が用いられ得る。
【0030】
図3Bには、教師データ生成部12により生成された正解対の遺留指紋F1、F2、F3、及び押捺指紋f1、f2、f3とともに、学習データ生成部13により生成された特徴点群G1、G2、G3、及び特徴点群g1、g2、g3を示している。ここで、特徴点群G1は、第1生体画像である遺留指紋F1の採取画像から抽出された特徴点の群であり、特徴点群g1は、第2生体画像である押捺指紋f1の採取画像から抽出された特徴点の群である。他の特徴点群G2、G3、g2、g3についても同様である。なお、図3Bには、3対の正解対の第1生体画像及び第2生体画像を示したが、実際の学習データ生成処理においては更に多くの第1生体画像及び第2生体画像から特徴量が生成され得る。
【0031】
図4A及び図4Bは、第1実施形態に係る生体認証装置におけるスコア算出処理の例を示す第1の図である。図4Aには、仮パラメータPaを用いて、学習データ生成部13により遺留指紋F1〜F3からそれぞれ抽出された特徴点群Ga1〜Ga3を示している。また同様に、仮パラメータpaを用いて、学習データ生成部13により押捺指紋f1〜f3からそれぞれ抽出された特徴点群ga1〜ga3を示している。
【0032】
最適解判定部14は、図4Aに示すように、第1生体画像から抽出された特徴点群Gai(iは自然数)と第2生体画像から抽出された特徴点群gaj(jは自然数)の組み合わせごとに、特徴点群の対Gai−gajの一致度を表すスコアSaijを算出する。
【0033】
この際、最適解判定部14は、正解対から抽出された特徴量の対の一致度を表すスコア(以下「第1のスコア」)だけでなく、非正解対から抽出された特徴量の対の一致度を表すスコア(以下「第2のスコア」)も算出する。図4Bには、正解対から抽出された特徴量の対の第1のスコアSaij(i=j)と、非正解対から抽出された特徴量の対の第2のスコアSaij(i≠j)とを、上下に分けて示している。
【0034】
図5A及び図5Bは、第1実施形態に係る生体認証装置におけるスコア算出処理の例を示す第2の図である。図5Aには、仮パラメータPbを用いて、学習データ生成部13により遺留指紋F1〜F3からそれぞれ抽出された特徴点群Gb1〜Gb3を示している。また同様に、仮パラメータpbを用いて、学習データ生成部13により押捺指紋f1〜f3からそれぞれ抽出された特徴点群gb1〜gb3を示している。
【0035】
最適解判定部14は、図4Bと同様にして、特徴点群Gbiと特徴点群gbjの組み合わせごとに、特徴点群の対Gbi−gbjの一致度を表すスコアSbijを算出する。図5Bには、最適解判定部14により算出されたスコアSbijを示している。
【0036】
図6A及び図6Bは、第1実施形態に係る生体認証装置におけるスコア算出処理の例を示す第3の図である。図6Aには、仮パラメータPcを用いて、学習データ生成部13により遺留指紋F1〜F3からそれぞれ抽出された特徴点群Gc1〜Gc3を示している。また同様に、仮パラメータpcを用いて、学習データ生成部13により押捺指紋f1〜f3からそれぞれ抽出された特徴点群gc1〜gc3を示している。
【0037】
最適解判定部14は、図4Bと同様にして、特徴点群Gciと特徴点群gcjの組み合わせごとに、特徴点群の対Gci−gcjの一致度を表すスコアScijを算出する。図6Bには、最適解判定部14により算出されたスコアScijを示している。
【0038】
次に、最適解判定部14は、正解対から抽出された特徴量の対の一致度を表す第1のスコアと、非正解対から抽出された特徴量の対の一致度を表す第2のスコアとの、統計的な分離度を表すスコア分離度を算出する。以下、図7を参照しながら、スコア分離度の算出方法の一例について説明するが、本実施形態のスコア分離度の算出方法はこの例に限定されるものではない。
【0039】
図7は、第1実施形態に係る生体認証装置における最適解判定処理の例を示す図である。最適解判定部14は、仮パラメータPの重み(A、B、C)を異ならせて、下式(1)により、遺留指紋Fiと押捺指紋fjの一致度を表すスコアSijを算出する。ここで、Saij、Sbij、Scijは、図4B図5B及び図6Bに示したスコアであり、A、B、Cは、それぞれスコアSaij、Sbij、Scijの重みを表す。
Sij = A・Saij+B・Sbij+C・Scij+… (1)
【0040】
なお、図7では、3通りの仮パラメータPの重み(1、1、1)、(1、2、1)、(2、1、1)の組み合わせでスコアSijを算出したが、実際の最適解判定処理においては更に多くの仮パラメータPの重み(A、B、C)の組み合わせが用いられ得る。
【0041】
まず、最適解判定部14は、正解対から抽出された特徴量の対の一致度を表す第1のスコアSij(i=j)と、非正解対から抽出された特徴量の対の一致度を表す第2のスコアSij(i≠j)を、遺留指紋Fi(第1生体画像)ごとに算出する。図7には、算出した第1のスコア及び第2のスコアを、遺留指紋Fiごとに分けて示している。なお、第1のスコア及び第2のスコアは、押捺指紋fj(第2生体画像)ごとに算出してもよい。
【0042】
次に、最適解判定部14は、第1のスコアの順位が1位である遺留指紋Fi(第1生体画像)の割合を、仮パラメータP(A、B、C)ごとに、スコア分離度Sとして算出する。なお、第1のスコアの順位が1位である押捺指紋fj(第2生体画像)の割合を、仮パラメータP(A、B、C)ごとに、スコア分離度Sとして算出してもよい。図7には、遺留指紋Fiの第1のスコアの順位を括弧付で示している。
【0043】
最後に、最適解判定部14は、スコア分離度Sが最大となる仮パラメータP(A、B、C)を最適解と判定する。例えば図7に示す例では、スコア分離度Sが最大(=3/3)である仮パラメータP(1、2、1)が、最適解として判定される。
【0044】
その後、パラメータ更新部15は、記録部2に記録されているパラメータを、最適解判定部14により最適解として判定された仮パラメータによって更新する。これにより、記録部2に記録されているパラメータが最適化されるので、生体認証装置を運用しながら、生体画像から特徴量を抽出するためのパラメータを自動最適化することが可能となる。
【0045】
特に、本実施形態では、正解対から抽出された特徴量の対の一致度を表す第1のスコアと、非正解対から抽出された特徴量の対の一致度を表す第2のスコアとに基づいて、スコア分離度Sを算出している。このため、図7に示す仮パラメータ(2、1、1)のように、非正解対から抽出した特徴量の対の一致度を表す第2のスコアを高く算出する仮パラメータを最適解として判定しまうことを避けることができる。なお、スコア分離度の算出方法は、1位の割合による判定に限らない。
【0046】
図8は、第1実施形態に係る生体認証方法のフローチャートを示す図である。以下、図8に示すフローチャートを参照しながら、本実施形態の生体認証方法について説明する。
【0047】
ステップS101において、生体画像読み出し部11は、記録部2にデータベースとして登録された生体画像を読み出す。ステップS102において、教師データ生成部12は、生体画像読み出し部11により読み出された複数の生体画像から、同一の指に基づくものであると判定した生体画像の対を正解対として選択する。ステップS103において、学習データ生成部13は、教師データ生成部12により生成された教師データ用の第1生体画像及び第2生体画像から、複数の異なる仮パラメータを用いて、学習データ用の特徴量を生成する。
【0048】
ステップS104において、最適解判定部14は、正解対から抽出された特徴量の対の一致度を表す第1のスコアと、非正解対から抽出された特徴量の対の一致度を表す第2のスコアとに基づいて、仮パラメータごとにスコア分離度を算出する。ステップS105において、最適解判定部14は、スコア分離度が最大となる仮パラメータを最適解として判定する。ステップS106において、パラメータ更新部15は、記録部2に記録されているパラメータを、最適解として判定された仮パラメータによって更新する。
【0049】
以上のように、本実施形態の生体認証装置は、正解対から抽出された特徴量の対の一致度を表す第1のスコアと、非正解対から抽出された特徴量の対の一致度を表す第2のスコアとに基づいて、仮パラメータごとにスコア分離度を算出する。そして、スコア分離度の大きさに基づいて仮パラメータを判定する。このような構成によれば、生体画像から特徴量を抽出するためのパラメータを自動最適化することが可能な生体認証装置及び指紋特徴抽出方法を提供することができる。
【0050】
(その他の実施形態)
なお、上述の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0051】
例えば、上述の実施形態における正解対F2−f2は、学習用の仮パラメータP(A、B、C)の値に関わらずスコアが高く算出されるため、仮パラメータの優劣を判定するためには殆ど寄与していない。そこで、最適解判定部14は、スコアが所定値(例えば1500)以上である正解対を、スコア分離度の算出処理から除外してもよい。これにより、スコアの大きい正解対が多い場合には、スコア分離度の算出処理における制御演算部1の処理負荷を大きく軽減することができる。
【0052】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記録媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0053】
上述の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0054】
(付記1)
第1生体画像と第2生体画像の正解対及び非正解対を生成する教師データ生成部と、
複数の異なる仮パラメータを用いて、前記第1生体画像及び前記第2生体画像から特徴量を抽出する学習データ生成部と、
前記正解対から抽出された前記特徴量の対の一致度を表す第1のスコアと、前記非正解対から抽出された前記特徴量の対の一致度を表す第2のスコアとに基づいて、前記仮パラメータごとにスコア分離度を算出し、前記スコア分離度の大きさに基づいて前記仮パラメータを判定する最適解判定部と、
を備える生体認証装置。
【0055】
(付記2)
前記最適解判定部は、最大となる前記スコア分離度に基づいて前記仮パラメータを判定する
付記1に記載の生体認証装置。
【0056】
(付記3)
前記最適解判定部は、前記第1のスコア及び前記第2のスコアを、前記第1生体画像又は前記第2生体画像ごとに算出し、前記第1のスコアの順位が1位である割合を、前記スコア分離度として算出する
付記1又は2に記載の生体認証装置。
【0057】
(付記4)
前記最適解判定部は、前記第1のスコアが所定値以上である前記正解対を、前記スコア分離度の算出処理から除外する
付記1から3のいずれか1項に記載の生体認証装置。
【0058】
(付記5)
前記第1生体画像及び前記第2生体画像から前記特徴量を抽出するためのパラメータを記録する記録部と、
前記記録部に記録されている前記パラメータを、前記判定された前記仮パラメータによって更新するパラメータ更新部と、
を更に備える付記1から4のいずれか1項に記載の生体認証装置。
【0059】
(付記6)
前記第1生体画像と前記第2生体画像の対は、指紋又は掌紋の採取画像の対であり、
前記特徴量は、指紋又は掌紋の特徴点群である
付記1から5のいずれか1項に記載の生体認証装置。
【0060】
(付記7)
前記第1生体画像と前記第2生体画像の対は、遺留指紋の採取画像と押捺指紋の採取画像の対である
付記6に記載の生体認証装置。
【0061】
(付記8)
前記仮パラメータは、ノイズ除去処理及び強調処理の組み合わせ及び重みを含む
付記1から7のいずれか1項に記載の生体認証装置。
【0062】
(付記9)
第1生体画像と第2生体画像の正解対及び非正解対を生成する教師データ生成ステップと、
複数の異なる仮パラメータを用いて、前記第1生体画像及び前記第2生体画像から特徴量を抽出する学習データ生成ステップと、
前記正解対から抽出された前記特徴量の対の一致度を表す第1のスコアと、前記非正解対から抽出された前記特徴量の対の一致度を表す第2のスコアとに基づいて、前記仮パラメータごとにスコア分離度を算出し、前記スコア分離度の大きさに基づいて前記仮パラメータを判定する最適解判定ステップと、
を有する、生体認証装置の制御演算部において用いられる生体認証方法。
【0063】
(付記10)
第1生体画像と第2生体画像の正解対及び非正解対を生成する教師データ生成手段と、
複数の異なる仮パラメータを用いて、前記第1生体画像及び前記第2生体画像から特徴量を抽出する学習データ生成手段と、
前記正解対から抽出された前記特徴量の対の一致度を表す第1のスコアと、前記非正解対から抽出された前記特徴量の対の一致度を表す第2のスコアとに基づいて、前記仮パラメータごとにスコア分離度を算出し、前記スコア分離度の大きさに基づいて前記仮パラメータを判定する最適解判定手段と、
して、コンピュータを機能させるプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体。
【0064】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0065】
この出願は、2017年10月13日に出願された日本出願特願2017−199167を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0066】
1 :制御演算部
2 :記録部
11 :生体画像読み出し部
12 :教師データ生成部
13 :学習データ生成部
14 :最適解判定部
15 :パラメータ更新部
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8