(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記高さ調節部が、第1筒体の周面及び第2筒体の周面の一方に設けられた突出部と、第1筒体の周面及び第2筒体の周面の他方に設けられた案内溝であって、第1筒体又は第2筒体の軸方向に沿って略直線状の第1部分及び第1部分と接続し、前記第1筒体又は第2筒体の周方向に延びる第2部分とを有する案内溝とを備える請求項2に記載のスリーブ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、スリーブに具現化した本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1には、本発明の第1実施形態の建築物の床又は壁に区画貫通孔を形成するためのスリーブ1が示されている。スリーブ1はコンクリートの打設前に配置される。スリーブ1は、第1筒体10と、第2筒体20とを備えている。なお明細書において、「建築物」には一戸建住宅、集合住宅、高層住宅、高層ビル、商業施設、公共施設等の建材;客船、輸送船、連絡船等の船舶;車両;等の構造物が含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
図1及び
図2(B)に示すように、第1筒体10は、中空略円筒形の本体部11と、本体部11と段差部15を介して連続する中空略円筒形の拡径部16とを備えている。本実施形態では、本体部11、段差部15、及び拡径部16は同じ非熱膨張性の材料から連続的に形成されており、第1筒体10は上端12から下端18まで連続している。非熱膨張性材料としては、鋼、銅、ステンレス等の金属であってもよいし、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル等の非熱膨張性の耐火樹脂材料であってもよい。
【0023】
第1筒体10の外周面には、第1筒体10の軸10Aの方向に沿って目盛り部40が設けられている。本実施形態では、目盛り部40は第1筒体10の上端12から下端18まで設けられている。目盛り部40は突起、凹み、シール、塗料等、目盛りを構成可能な任意の部材から構成することができる。また、
図2(C)に示すように、第1筒体10の拡径部16の内周面19には高さ調節部としての略直線状の溝43が中心角90度の等間隔で4箇所に設けられている。溝43の長さは、第2筒体20の軸20Aの方向の長さ又はそれより小さい長さである。
【0024】
図1及び
図3(B)に示すように、第2筒体20は、第1筒体10の拡径部16内に嵌合可能な熱膨張性の中空略円筒形の本体部21を備え、本体部21の外周面からは、環状突部26は本体部21の下端から離間した上方の位置で環状突部26が突出している。 第1筒体10の拡径部16に第2筒体20の本体部21の上端部を挿入した場合、第1筒体10の拡径部16が第2筒体20の環状突部26に当接するか、または環状突部26よりも上方で停止する。また、
図3(C)に示すように、第2筒体20の外周面には高さ調節部としての略直線状の一対のレール44が中心角90度の等間隔で4箇所に設けられている。第2筒体20のレール44は、第2筒体20の上端部を第1筒体10の拡径部16に挿入したときに、対応する第1筒体10の一対の溝43の間の溝に案内される。レール44の長さは第2筒体20の軸20Aの方向の長さ又はそれより小さい長さである。
【0025】
環状突部26は本体部21と同じ熱膨張性の耐火樹脂材料から形成されてもよいし、鋼等の金属、硬質塩化ビニル等の非熱膨張性の耐火樹脂材料から形成されてもよいが、本実施形態では本体部21と同じ材料から一体に形成されている。
【0026】
第2筒体20は、筒体20の下端28から第2筒体20の軸20Aに対し垂直外方に延びる1つ又は複数の取付部27(図では4つ)を備えている。取付部27はそれぞれスリーブ1の軸9に関して約90°離間した4つの取付部で示され、各取付部27は床下地3に対して第2筒体20を固定するための孔27aを有する。取付部27は本体部21と同じ熱膨張性の耐火樹脂材料から形成されてもよいし、鋼等の金属、硬質塩化ビニル等の非熱膨張性の耐火樹脂材料から形成されてもよいが、本実施形態では本体部21と同じ材料から一体に形成されている。
【0027】
つまり、本実施形態では、本体部21、環状突部26及び取付部27が熱膨張性の耐火樹脂材料から一体成形されている。
【0028】
第2筒体20の外周面には、第2筒体20の軸20Aの方向に沿って目盛り部41が設けられている。本実施形態では、目盛り部41は第2筒体20の上端25から下端28まで設けられている。目盛り部41は突起、凹み、シール、塗料等、目盛りを構成可能な任意の部材から構成することができる。
【0029】
通常は有底矩形である型枠4は、コンクリート5(
図5(B)参照)を収容するためのものであり、型枠4内にはコンクリート5の補強用の鉄筋Rが収容される。コンクリート5及び鉄筋Rは床下地3を構成し、床下地3は床を構成する。
【0030】
孔27aには第2筒体20を型枠4、鉄筋R、又はコンクリート5等に固定するために針金等の金属線、ボルト、ビス、釘等の固定用部材を通すことができ、例えば固定用部材である金属線の両端を鉄筋Rに結び付けたり、ボルト、ビス、釘等を孔27aに通してその周囲にコンクリート5を流し込むことにより、第2筒体20が鉄筋Rに対して固定される。
【0031】
第2筒体20の本体部21、環状突部26及び取付部27を形成する熱膨張性の耐火樹脂材料について説明する。熱膨張性の耐火樹脂材料は、樹脂成分に熱膨張性層状無機物とを含む樹脂組成物である。本体部21を含む第2筒体20の耐火樹脂材料からなる部材は、樹脂組成物の各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等公知の装置を用いて混練し、公知の成形方法で成形することにより得ることができる。
【0032】
樹脂成分としては、公知の樹脂成分を広く使用でき、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム物質、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0033】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1−)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
【0034】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。
【0035】
ゴム物質としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。
【0036】
これらの合成樹脂及び/又はゴム物質は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0037】
これらの合成樹脂及び/又はゴム物質の中でも、耐寒性、耐熱性、耐油性等の特性を柔軟に調整できる性質を有しているものが好ましい。より柔軟特性で扱い易い樹脂組成物を得るためには、塩ビ系樹脂に可塑剤を加えたものが好適に用いられる。代わりに、樹脂自体の難燃性を上げて防火性能を向上させるという観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
【0038】
熱膨張性層状無機物は加熱時に膨張するものである。かかる熱膨張性層状無機物に特に限定はなく、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等を挙げることができる。熱膨張性黒鉛とは、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等でさらに中和してもよい。熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、東ソー社製「GREP−EG」、ADT社製「ADT−351」「ADT−501」、GRAFTECH社製「GRAFGUARD」等が挙げられる。
【0039】
前記樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂成分100重量部に対し、前記熱膨張性層状無機物を10〜350重量部の範囲で含むことが好ましい。
【0040】
熱膨張性耐火材を構成する樹脂組成物は、さらに無機充填剤を含んでもよい。無機充填剤は、膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制するとともに、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させる。無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト等の金属酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の含水無機物;塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩等が挙げられる。また、無機充填剤としては、これらの他に、硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩;シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらの無機充填剤は単独で用いることができるし、2種以上を併用することもできる。
【0041】
無機充填剤のうち、水酸化アルミニウムの具体例としては、粒径18μmの「ハイジライトH−31」(昭和電工社製)、粒径25μmの「B325」(ALCOA社製)、炭酸カルシウムでは、粒径1.8μmの「ホワイトンSB赤」(備北粉化工業社製)、粒径8μmの「BF300」(備北粉化工業社製)等が挙げられる。
【0042】
前記樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂成分100重量部に対し、無機充填材を30〜400重量部の範囲で含むものが好ましい。
【0043】
また、前記熱膨張性層状無機物及び前記無機充填材の合計は、樹脂成分100重量部に対し、50〜600重量部の範囲が好ましい。
【0044】
さらに、熱膨張性耐火材を構成する樹脂組成物は、膨張断熱層の強度を増加させ防火性能を向上させるために、前記の各成分に加えて、さらにリン化合物を含んでもよい。リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム;下記化学式(1)で表される化合物等が挙げられる。これらのうち、防火性能の観点から、赤リン、ポリリン酸アンモニウム、及び、下記化学式(1)で表される化合物が好ましく、性能、安全性、コスト等の点においてポリリン酸アンモニウムがより好ましい。
【0046】
化学式(1)中、R
1及びR
3は、水素、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、又は、炭素数6〜16のアリール基を表す。R
2は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状あるいは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
【0047】
赤リンとしては、市販の赤リンを用いることができるが、耐湿性、混練時に自然発火しない等の安全性の点から、赤リン粒子の表面を樹脂でコーティングしたもの等が好適に用いられる。ポリリン酸アンモニウムとしては特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、取り扱い性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。市販品としては、例えば、クラリアント社製「AP422」、「AP462」、Budenheim Iberica社製「FR CROS 484」、「FR CROS 487」等が挙げられる。
【0048】
化学式(1)で表される化合物としては特に限定されず、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、n−プロピルホスホン酸、n−ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。前記のリン化合物は、単独で用いることもできるし、2種以上を併用することもできる。
【0049】
かかる樹脂組成物は加熱によって膨張し耐火断熱層を形成する。この配合によれば、前記熱膨張性耐火材は火災等の加熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に燃焼残渣を形成することもでき、安定した耐火性能を達成することができる。
【0050】
さらに前記樹脂組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂、成型補助材等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
【0051】
熱膨張性の耐火樹脂材料は市販品として入手可能であり、例えば、住友スリーエム社製のファイアバリア(クロロプレンゴムとバーミキュライトとを含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:3倍、熱伝導率:0.20kcal/m・h・℃)、三井金属塗料社のメジヒカット(ポリウレタン樹脂と熱膨張性黒鉛とを含有する樹脂組成物からなる熱膨張性耐火材、膨張率:4倍、熱伝導率:0.21kcal/m・h・℃)、積水化学工業社製フィブロック等の熱膨張性耐火材等も挙げられる。
【0052】
前記熱膨張性耐火材は、火災時などの高温にさらされた際にその膨張層により断熱し、かつその膨張層の強度があるものであれば特に限定されない。50kW/m
2の加熱条件下で30分間加熱した後の体積膨張率が3〜50倍のものであれば好ましい。前記体積膨張率が3倍以上であると、膨張体積が前記樹脂成分の焼失部分を十分に埋めることができ、また50倍以下であると、膨張層の強度が維持され、火炎の貫通を防止する効果が保たれる。
【0053】
図4に示すように、第2筒体20を第1筒体10に嵌合した状態において、第1筒体10と第2筒体20はスリーブ1の軸9の方向(及び第1筒体10の軸10Aと第2筒体20の軸20Aの方向)に沿って整列される。このとき、第2筒体20の一対のレール44は、対応する第1筒体10の溝43に案内され、嵌合されている。第1筒体10と第2筒体20とがスリーブ1の軸9の方向において互いに重なり合う部分は、オーバーラップ部46を構成する。
【0054】
第1筒体10の溝43及び第2筒体20のレール44により、第1筒体10及び第2レール20が互いに接触及び嵌合して互いに固定される。第1筒体10と第2筒体20とはオーバーラップ部46において互いに固定される。第1筒体10の溝43及び第2筒体20のレール44は少なくとも全長の一部が互いに嵌合していればよく、全長がオーバーラップ部46内で互いに嵌合していてもよいが、全長が互いに嵌合していなくてもよい。このとき、第2筒体20を第1筒体10に嵌合した状態において、第2筒体20の本体部21の外周面の一部が露出している。
【0055】
また、第1筒体10及び第2筒体20の少なくとも一方に、互いに近づく方向又は互いに離れる方向に向かって、第1筒体10及び第2レール20が互いに固定された状態から変位させるのに十分な大きさの外力を加え、スリーブ1の軸9の方向(及び第1筒体10の軸10Aと第2筒体20の軸20Aの方向)に沿って移動させることで、スリーブ1の全長すなわち高さを調節することができる。
【0056】
第2筒体20の本体部21を熱膨張性の耐火樹脂材料から形成することにより、第2筒体20とコンクリートの密着性が向上し、第2筒体20の燃焼残渣のコンクリートとの密着性が向上し、断熱層が崩壊しにくくなる。また、熱膨張性の耐火樹脂材料の出代が多いとスリーブ1が外部衝撃に対して変形しやすくなるが、第1筒体10を非熱膨張性材料で形成することにより、外部衝撃に対する強度を増大させることができる。また膨張材使用量を必要最小限に抑えることができ、低コストで貫通スリーブを提供できる。このように、非熱膨張性の第1筒体10と、熱膨張性の本体部を有する第2筒体20とを組み合わせてスリーブ1を構成することで、区画貫通構造に耐火性を付与し、さらには外部衝撃に対する強度とコンクリートに対する密着性とを兼ね備え、適正な価格で提供することができる。
【0057】
また、第1筒体10の溝43及び第2筒体20のレール44により、第1筒体10及び第2レール20が互いに固定されるため、第1筒体10及び第2筒体20は軸方向に沿って自立的に積み重なった状態を維持することができる。なお、「自立的に」とは、他の部材による作用を受けない意味である。
【0058】
第1筒体10の拡径部16の内周面19及び第2筒体20の本体部21の外周面24が接触している面積Sは、0<S<(第2筒体20の外周面全体の面積)である。このため、第2筒体20の全体が第1筒体10に挿入されることなく、スリーブ1は厚みのある床又は壁に対応することができる。
【0059】
また、第1筒体10の本体部11の内径A(
図2(B))は、第2筒体20の本体部21の内径B(
図3(B))よりも大きくてもよいし、等しくてもよいし、小さくてもよいが、好ましくは内径Bと等しいか小さい。この構成により、第2筒体20の第1筒体10内への移動(
図4にて上方向への移動)は段差部15の周面、すなわち内周面15aにて規制される。また、第2筒体20を第1筒体10に嵌合した状態で第2筒体20が加熱により膨張したとき、第2筒体20の本体部21の上端22が膨張して段差部15の内周面15aに接することにより第2筒体20の上方向への膨張が規制される。その結果、第2筒体20の露出部における第2筒体20の軸方向に対して垂直な方向、特に軸方向に対して垂直かつ第2筒体20の内方への膨張が促進され、区画貫通孔7をより効果的に閉塞することができる。
【0060】
また、第2筒体20の本体部21の外径C(
図3(B))は第1筒体10の本体部11の内径Aよりも大きい。この構成により、第2筒体20の上端22が第1筒体10の段差部15に当接するため、第2筒体20の第1筒体10内への移動(
図4にて上方向への移動)は段差部15にてより確実に規制される。また、第2筒体20を第1筒体10に嵌合した状態で第2筒体20が加熱により膨張したとき、第2筒体20の上端22が膨張して段差部15に当接することにより第2筒体20の上方向への膨張が規制される。その結果、第2筒体20の露出部における第2筒体20の軸方向に対して垂直な方向、特に軸方向に対して垂直かつ第2筒体20の内方への膨張が促進され、区画貫通孔7をより効果的に閉塞することができる。
【0061】
好ましくは、第2筒体20を第1筒体10に嵌合した状態で、第1筒体10の拡径部16の内周面19と第2筒体20の本体部21の外周面24が接触する。この構成により、火災時の第1筒体10と第2筒体20の密着性が高められ、第1筒体10と第2筒体20の間の火の侵入が抑制され、耐火性が向上する。
【0062】
また、第1筒体10の拡径部16の内周面19もしくは第2筒体20の本体部21の外周面24の少なくとも一方に環状突部26を形成しておくとより好ましい。その結果、第1筒体10の拡径部16の内周面19と第2筒体20の本体部21の外周面24の接触抵抗が上がり、第2筒体20の脱落防止につながる。
【0063】
スリーブ1の内周面、つまり第1筒体10の本体部11の内周面14と第2筒体20の内周面25が開口部6(
図4参照)を形成し、区画貫通孔7(
図5(B)参照)として作用する。開口部6の大きさは配管又は配線8の外径よりも大きく、配管又は配線8を挿通できる寸法である。配管には、水道管、冷媒管、熱媒管、ガス管、吸排気管等の各種配管が含まれる。配線には、電力用ケーブル、通信用ケーブル等の各種ケーブルが含まれる。
【0064】
図1,2(A),2(B)に示すように、第1筒体10の上端12には、複数の配管又は配線8の周囲を覆い、かつ区画貫通孔7を塞ぐように、任意選択で蓋部材30を装着してもよい。蓋部材30には配管又は配線8を挿通するための孔31が設けられている。蓋部材30は第1筒体10と配管又は配線8との間のクリアランスを埋める固定枠の役割を果たす。好ましくは蓋部材30は、蓋部材30の孔31に配管又は配線8を通した状態で第1筒体10に装着した場合に、上記クリアランスの10〜100体積%を埋める。蓋部材30は金属から形成されてもよいし、非耐火性又は耐火性の樹脂組成物の成形体であってもよい。例えば、蓋部材30は可塑剤を含むか又は含まない塩化ビニル樹脂か、又はゴム等の樹脂組成物から形成されてもよいし、弾性を有するブチルゴム等の樹脂成分を含む耐火性樹脂組成物から形成されてもよい。美観を与えるために着色されていてもよい。また蓋部材30には、美観を与えるようにコーティング等の仕上層、着色がさらに施されてもよい。
【0065】
次に、
図5(A)〜(D)を参照しながら、スリーブ1を用いた区画貫通構造の施工方法について説明する。
【0066】
図5(A)に示すように、スリーブ1を床下地3に固定する。スリーブ1の床下地3への固定は、例えばボルト34を第2筒体20の下端23の取付部27の孔27aを通って床下地3の中までねじ込むことによりなされる。型枠4の底部のスリーブ1に対応する位置には、配管又は配線8(
図5(C)参照)を挿通するための穴を空けておく。次に、
図5(B)に示すように、コンクリート5を床下地3へ流し込む。この図ではコンクリート5の厚みすなわち高さHは、第1筒体10の上端12から第2筒体20の下端23までの距離に等しい。このようにして、スリーブ1の内側の開口部6を残し、スリーブ1の外側周囲にコンクリート5が打設され、区画貫通構造50が完成する。スリーブ10の開口部6は区画貫通孔7として作用する。
【0067】
次に、
図5(C)に示すように、コンクリート5を貫通するように、区画貫通孔7を通って1又は複数の配管又は配線8を施す。ここで、任意選択で、スリーブ1の上端12に、複数の配管又は配線8の周囲を覆い、かつ区画貫通孔7を塞ぐように、蓋部材30を装着してもよい。蓋部材30は区画貫通孔7のより多くの隙間を塞いでいることが好ましい。蓋部材30が、配管又は配線8の外周面に接し、かつスリーブ10と配管又は配線8との間の隙間の間を閉塞しているため、区画貫通構造50に耐火性をさらに付与する。また、
図5(C)の区画貫通構造50を上から見たときに、蓋部材30がスリーブ1の上をカバーして配管又は配線8の周囲でスリーブ1と配管又は配線8との間の隙間を塞いでいるため、目隠しの役割を果たし、区画貫通孔7の中が見えず、視覚的にも美観が保たれる。
【0068】
次に、
図5(C)において、区画貫通構造50の階下において矢印の方向から火災が発生した場合、
図5(D)に示すように、第2筒体20が火災の熱により膨張し、コンクリート5と配管又は配線8との間の隙間を埋め、火の進路を塞ぐ。このようにして、スリーブ1は、コンクリート5の打設を容易にするのみならず、耐火性を発揮し、区画貫通構造50に耐火性を付与する。このように、スリーブ1の設置と同時に耐火材が設置されていることを確認できる。
【0069】
上記の第1実施形態は、以下のように変更可能である。
・第1筒体10に略直線状のレール44が設けられ、第2筒体20に略直線状の溝43が設けられてもよい。
・一対のレール44の本数は、2本以外に、1本又は3本以上であってもよい。
・溝43及びレール44の数は、第1筒体10及び第2筒体20の周方向に等間隔に4つに限定されず、1つ、2つ、3つ、又は5つ以上であってもよい。
・溝43が省略されてもよい。レール44のみでもスリーブ1の高さは調節可能である。
【0070】
次に、本発明の第2実施形態の建築物の床又は壁に区画貫通孔を形成するためのスリーブ1を
図6を参照して説明する。
図6において、第1実施形態と同じ部材についての説明は省略する。なお、以下の第2〜5実施形態のスリーブ1は第1実施形態と同様に目盛り40,41を有するが、説明を簡単にするため図示していない。
【0071】
図6に示されるように、第2実施形態のスリーブ1は、第1実施形態のスリーブの溝43とレール44の代わりに、第1筒体10の拡径部16の内周面19(
図2(B)参照)に設けられた拡径部16の周方向に延びる1又は複数の(図では4本)レール51と、第2筒体20の本体部21の外周面24に設けられた第2筒体20の本体部21の周方向に延びる1又は複数の溝52とを有する。溝52はレール51に対応する形状及び数だけ設けられる。レール51及び52は拡径部16及び本体部21の全周に設けられている必要はなく、周の一部に設けられていればよい。周の一部に設けられる場合、1箇所でもよいが、バランス良く高さを調節するため、周方向に等間隔に間を開けて複数個設けられることが好ましい。レール51及び溝52はスリーブ1の高さを調節するための高さ調節部として機能する。本実施形態では、第2筒体20を第1筒体10の拡径部16内に挿入すると、まず一番下のレール51が一番上の溝52に嵌合し、第2筒体20を第1筒体10の拡径部16内に深く挿入すべくさらに力を加えると、下から二番目のレール51が一番上の溝52に嵌合すると共に、一番下のレール51が上から二番目の溝52に嵌合する。第2筒体20を第1筒体10の拡径部16内に深く挿入すべくさらに力を加えると、すべてのレール51が対応する溝52に嵌合する。
【0072】
このような構成により、スリーブ1の高さを調節することができる。
【0073】
上記の第2実施形態は、以下のように変更可能である。
・第1筒体10の拡径部16の内周面19に溝52が、第2筒体20の本体部21の外周面24にレール51が設けられていてもよい。
・レール51が設けられていれば、圧力嵌めによるスリーブ1の高さ調節は可能であるため、溝52が省略されてもよい。
【0074】
次に、本発明の第3実施形態の建築物の床又は壁に区画貫通孔を形成するためのスリーブ1を
図7を参照して説明する。
図7において、第1実施形態と同じ部材についての説明は省略する。
【0075】
図7に示されるように、第3実施形態のスリーブ1は、第1実施形態のスリーブの溝43とレール44の代わりに、第1筒体10の拡径部16の内周面19(
図2(B)参照)に設けられた突起部53と、第2筒体20の本体部21の外周面24に設けられた案内溝54とを有する。突起部53は第1筒体10の軸10A(
図1参照)に向かって突出する柱状の部材である。案内溝54は第2筒体20の本体部21の上端22に開口し、第2筒体20の軸20A(
図1参照)に沿って略直線状に延びる第1部分54aと、第1部分54aと接続し、第2筒体20の本体部21の周方向に延びる1又は複数(図では3つ)の第2部分54bとを備えている。案内溝54の第2部分54bは本体部21の周の一部の長さにわたって設けられていればよい。突起部53及び案内溝54はスリーブ1の高さを調節するための高さ調節部として機能する。本実施形態では、第2筒体20を第1筒体10の拡径部16内に挿入すると、まず突起部53が案内溝54の第1部分54aに沿って下降していき、第1部分54aと第2部分54bの交差点においてスリーブの使用者1が第1筒体10に対し周方向の力を加えると突起部53が第2部分54b内に案内され、第1筒体10は第2筒体20に対しスリーブ1の軸方向(図の上下方向)に固定される。スリーブ1の高さを変えたいときは、第1筒体10を周方向に、突起部53を第1部分54aと第2部分54bの交差点まで戻るよう移動させてから、突起部53を第1部分54aに沿って下方に移動させ、より下方の第2部分54bに突起部53を移動させることで、スリーブ1の高さを小さくすることができる。
【0076】
このような構成により、スリーブ1の高さを調節することができる。
【0077】
上記の第3実施形態は、以下のように変更可能である。
・第1筒体10の拡径部16の内周面19に案内溝54が、第2筒体20の本体部21の外周面24に突起部53が設けられていてもよい。
・突起部53及び案内溝54は第1筒体10及び第2筒体20の周方向の複数箇所に設けられていてもよい。
・突起部53が設けられていれば、圧力嵌めによるスリーブ1の高さ調節は可能であるため、案内溝54が省略されてもよい。
【0078】
次に、本発明の第4実施形態の建築物の床又は壁に区画貫通孔を形成するためのスリーブ1を
図8を参照して説明する。
図8において、第1実施形態と同じ部材についての説明は省略する。
【0079】
図8に示されるように、第4実施形態のスリーブ1は、第1実施形態のスリーブの溝43とレール44の代わりに、第1筒体10の拡径部16の内周面19(
図2(B)参照)に設けられた突起部55と、第2筒体20の本体部21の外周面24に設けられた孔56とを有する。突起部55は第1筒体10の軸10A(
図1参照)に向かって突出する柱状の部材である。突起部55は第1筒体10の軸10A方向に沿って1又は複数(図では3つ)設けられ、拡径部16の周方向に等間隔に間を空けて複数設けられている。拡径部16の周方向には、2個、3個、4個、6個、8個又はそれ以上の突起部55を周方向に等間隔に間を空けて設けることが好ましい。孔56は突起部55と嵌合する形状であり、第2筒体20の軸20A(
図1参照)に沿って複数(図では3つ)設けられ、本体部22の周方向には突起部55と対応する数だけ周方向に等間隔に間を空けて設けられる。突起部55及び孔56はスリーブ1の高さを調節するための高さ調節部として機能する。本実施形態では、第2筒体20を第1筒体10の拡径部16内に挿入すると、突起部55が孔56に嵌り込み、第1筒体10が第2筒体20に対しスリーブ1の軸方向(図の上下方向)に固定される。スリーブ1の高さを変えたいときは、第1筒体10を第2筒体20に対して相対的に上又は下に移動させることで突起部55が別の上又は下の孔56と嵌合し、スリーブ1の高さを変更することができる。
【0080】
このような構成により、スリーブ1の高さを調節することができる。
【0081】
上記の第4実施形態は、以下のように変更可能である。
・第1筒体10の拡径部16の内周面19に孔56が、第2筒体20の本体部21の外周面24に突起部55が設けられていてもよい。
・突起部55が設けられていれば、圧力嵌めによるスリーブ1の高さ調節は可能であるため、孔56が省略されてもよい。
【0082】
次に、本発明の第5実施形態の建築物の床又は壁に区画貫通孔を形成するためのスリーブ1を
図9を参照して説明する。
図9において、第1実施形態と同じ部材についての説明は省略する。
【0083】
図9に示されるように、第5実施形態のスリーブ1は、第1実施形態のスリーブの溝43とレール44の代わりに、第1筒体10の拡径部16の内周面19(
図2(B)参照)の下端部において拡径部16の全周に設けられたねじ部57と、第2筒体20の本体部21の外周面24の上端部において本体部21の全周に設けられたねじ部58とを有する。ねじ部57及び58はスリーブ1の高さを調節するための高さ調節部として機能する。
【0084】
本実施形態では、第1筒体10を第2筒体20に対して相対的に回転させることにより、第1筒体10が第2筒体20と螺合して、第1筒体10が第2筒体20に対しスリーブ1の軸方向(図の上下方向)に固定されると共に、スリーブ1の高さを調節することができる。
【0085】
ここまで本発明の第1〜第5実施形態を説明してきたが、第1〜第5実施形態は、以下のように変更可能である。
・上記の第1〜第5実施形態では、第1筒体10が、中空略円筒形の本体部11と、本体部11と段差部15を介して連続する中空略円筒形の拡径部16とを備えていたが、
図11に示すように、中空略円筒形の本体部11と、本体部11と段差部15を介して連続する中空略円筒形の縮径部17とを備えていてもよい。この構成では、第1筒体10の縮径部17が第2筒体20内に挿入される。第1筒体10の縮径部17の外周面17aと第2筒体20の内周面29とが互いに固定され、第1筒体10の縮径部17の外周面17a及び第2筒体20の内周面29が接触している面積Sが、0<S<(第2筒体の外周面全体の面積)である。
図11に示した実施形態では、第1筒体10の段差部15が第2筒体20の上端22と当接しているが、第1筒体10の段差部15と第2筒体20の上端22が離間していてもよい。この例でも、第1〜第5実施形態と同様に、第1筒体10の縮径部17の外周面17aと第2筒体20の内周面29の少なくとも一方に、第1〜第5実施形態に関して説明したスリーブ1の高さを調節するための高さ調節部を設けることができる。
・上記の第1〜第5実施形態では第1筒体10が拡径部16を備え、
図11の実施形態では第1筒体10が縮径部17を備えていたが、
図12に示すように、第1筒体10は拡径部16又は縮径部17を備えず、端から端まで長さが一定であってもよい。この例では、第1筒体10が全長にわたって径が一定の本体部11から成り、第1筒体10の内部に第2筒体20が挿入されている。第1筒体10の内周面14と第2筒体20の外周面24とが互いに固定され、第1筒体10の内周面14及び第2筒体20の外周面24が接触している面積Sが、0<S<(第2筒体の外周面全体の面積)である。第1筒体10(及び本体部11)の下端18が第2筒体20の環状突部26に当接しているが、第1筒体10の下端18と第2筒体20の環状突部26は離間していてもよい。この例でも、第1〜第5実施形態と同様に、第1筒体10の内周面14と第2筒体20の外周面24の少なくとも一方に、第1〜第5実施形態に関して説明したスリーブ1の高さを調節するための高さ調節部を設けることができる。
・
図12の別例はさらに、第1筒体10が、第2筒体20の内部に挿入されてもよい。このような場合も、第1筒体10の外周面と第2筒体20の内周面とが互いに固定され、第1筒体10の外周面及び第2筒体20の内周面24が接触している面積Sが、0<S<(第2筒体の外周面全体の面積)である。また、第1〜第5実施形態に関して説明したスリーブ1の高さを調節するための高さ調節部を設けることができる。
・スリーブ1は、第1筒体10と第2筒体20に加えて、第1筒体10及び/又は第2筒体20に嵌合される、本体部37を備えた環状の(特には略円筒形)第3筒体36を備えていてもよい。
図10(A)に示すように、第3筒体36は第1筒体10の上に嵌合されてもよい。この場合、第3筒体36の内周面が第1筒体10の外周面と接触するか、又は第3筒体36の外周面が第1筒体10の拡径部16の内周面19と接触し、第1筒体10及び第3筒体36が互いに固定される。また、
図10(B)に示すように、第3筒体36は第2筒体20の下に嵌合されてもよい。この場合、第3筒体36の内周面が第2筒体20の本体部21の外周面24と接触するか、又は第3筒体36の外周面が第2筒体20の内周面と接触し、第2筒体20及び第3筒体36が互いに固定される。第3筒体36の構成は第1筒体10又は第2筒体20と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
図10(B)の構成は、熱膨張性の第2筒体20が非膨張性の第1筒体10と第3筒体30に挟まれているため、熱が加わると効率的に第2筒体20の内側に膨張できると共に、スリーブ1を床に配置したときに第2筒体20が燃焼して残渣が落下するのを第3筒体30の存在により抑制又は低減することができる点で有利である。
・目盛り40,41は、スリーブ1の全長に設けられなくてもよいし、省略されてもよい。
・環状突部26が第1筒体10に設けられてもよい。
・環状突部26が省略されてもよい。この場合も、第1筒体10の本体部11の内径Aが第2筒体20の本体部21の内径Bと等しいかそれより小さければ、第2筒体20を第1筒体10に嵌入すると、第2筒体20の上端22が第1筒体10の段差部15の内周面15aに当接し、第2筒体20の第1筒体10内への移動は規制される。
・第1筒体10の本体部11、段差部15、及び拡径部16のうちの少なくとも一つが、熱膨張性の材料から形成されてもよい。特に、第1筒体10の本体部11が、第2筒体20の本体部21よりも加熱時の膨張倍率が低い材料から形成されてもよい。つまり、第1筒体の本体部11と第2筒体20の本体部21膨張倍率の比が、
0≦(第1筒体10の膨張倍率/第2筒体20の膨張倍率)<1
である。
・スリーブ1及び蓋部材30以外にも、耐火性を向上させるために、本発明の区画貫通構造には、任意の公知の耐火性充填材、耐火性樹脂組成物、耐火性シート、又は耐火性金属板等をさらに用いてもよい。
【0086】
・上記実施形態では、区画貫通孔7の断面が円形である場合を想定し、スリーブ1ならびに蓋部材30が断面略円形である環状突部である実施形態を示しているが、スリーブ1の形状は区画貫通孔7の形状に適合させればよく、区画貫通孔7が断面略楕円形の場合、スリーブ1及び蓋部材30は、断面略楕円形の環状突部としてもよいし、区画貫通孔7が断面略矩形の場合、スリーブ1及び蓋部材30は断面矩形の環状突部となるよう形成してもよい。
【0087】
・耐火性能をはじめ、遮音性、漏水等実用耐久性に問題がないことが確認できれば、蓋部材30は省略することができる。また、蓋部材として蓋部材30以外の蓋部材、カバー部材、又はキャップを用いてもよい 。
・上記実施形態では、スリーブ10を床上から施工する例を説明したが、本発明のスリーブ10は床下から施工することも可能である 。
・本発明のスリーブは、床(相対的にコンクリート打設の床材となる階下の床のみならず、天井床も含む)のみならず、側壁などの壁体にも適用可能である。