(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程b)の前に、該標的核酸の3’末端にヌクレオチドを、そして該アダプター分子の3’末端に相補的ヌクレオチドを、鋳型に無関係な様式で付加し、それにより突出末端を作り出す工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
該標的核酸および該アダプター分子がウラシル塩基を含有し、工程b)の前に該標的核酸および該アダプター分子を、ウラシル−DNA−グリコシラーゼおよびエンドヌクレアーゼVIIIと接触させる工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
標的核酸を配列決定するための組成物であって、2つの鎖を含むアダプターにライゲーションされた該標的核酸からなる二本鎖環状分子を含み、該鎖が少なくとも1つの二重鎖領域および少なくとも1つの非二重鎖領域を形成しており、該非二重鎖領域中のそれぞれの鎖がユニバーサルプライマー結合部位を含有し、該アダプターが、少なくとも1つのステムループ構造に隣接する2つの二重鎖領域を含み、それぞれの構造が二重鎖ステム領域および非二重鎖ループ領域を含むものである、前記組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
定義
[0012] 以下の定義は、本開示の理解を助ける。
【0010】
[0013] 用語“試料”は、標的核酸を含有する、または含有することが推定されるあらゆる組成物を指す。これは、個人から分離された組織または流体の試料、例えば皮膚、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、滑液、尿、涙、血球、器官および腫瘍を含み、個人から採取された細胞から確立されたインビトロ培養物の試料も含み、ホルマリン固定されパラフィン包理された試料(FFPET)およびそれらから単離された核酸も含む。試料は、無細胞材料、例えば無細胞DNA(cfDNA)または循環腫瘍DNA(ctDNA)を含有する無細胞血液画分も含むことができる。
【0011】
[0014] 用語“核酸”は、ヌクレオチド(例えばリボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチド、天然および非天然両方)のポリマーを指し、そのようなポリマーは、DNA、RNAおよびそれらの下位カテゴリー、例えばcDNA、mRNA等である。核酸は、一本鎖であることも二本鎖であることもでき、一般に5’−3’ホスホジエステル結合を含有するであろうが、ある場合には、ヌクレオチド類似体が、他の結合を有し得る。核酸は、天然存在塩基(アデノシン、グアノシン、シトシン、ウラシルおよびチミジン)ならびに非天然塩基を含むことができる。非天然塩基の一部の例は、例えばSeela et al., (1999) Helv. Chim. Acta 82:1640において記載されている非天然塩基を含む。非天然塩基は、特定の機能、例えば二重鎖の安定性の増大、ヌクレアーゼ消化の阻害またはプライマー伸長もしくは鎖重合の遮断を有することができる。
【0012】
[0015] 用語“ポリヌクレオチド”および“オリゴヌクレオチド”は、互換的に用いられている。ポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖核酸である。オリゴヌクレオチドは、より短いポリヌクレオチドを記載するために時々用いられる用語である。オリゴヌクレオチドは、少なくとも6ヌクレオチド、例えば少なくとも約10〜12ヌクレオチド、または約15〜30ヌクレオチドで構成されることができる。オリゴヌクレオチドは、当該技術で既知のあらゆる適切な方法により、例えばNarang et al. (1979) Meth. Enzymol. 68:90-99; Brown et al. (1979) Meth. Enzymol. 68:109-151; Beaucage et al. (1981) Tetrahedron Lett. 22:1859-1862; Matteucci et al. (1981) J. Am. Chem. Soc. 103:3185-3191において記載されているような直接的な化学合成を含む方法により調製される。
【0013】
[0016] 用語“二重鎖”および“二本鎖領域”は、2つの核酸鎖がハイブリダイズしている領域を指すために互換的に用いられている。鎖は、二重鎖を維持するために完全に相補的である必要はない。配列に応じて、2つの核酸鎖は、二重鎖領域および非二重鎖領域を含有する構造を形成することができる。
【0014】
[0017] 用語“プライマー”は、標的核酸中の配列(“プライマー結合部位”)にハイブリダイズして核酸の相補鎖に沿った合成の開始点の役目をそのような合成に適した条件下で果たすことができる一本鎖オリゴヌクレオチドを指す。
【0015】
[0018] 用語“アダプター”は、別の配列にその配列に追加の特性を導入するために付加されることができるヌクレオチド配列を意味する。アダプターは、典型的には一本鎖もしくは二本鎖であることができる、または一本鎖部分および二本鎖部分の両方を有することができるオリゴヌクレオチドである。
【0016】
[0019] 用語“ライゲーション”は、2つの核酸鎖を連結する縮合反応を指し、ここで、一方の分子の5’−ホスフェート基が、別の分子の3’−ヒドロキシル基と反応する。ライゲーションは、典型的にはリガーゼまたはトポイソメラーゼにより触媒される酵素反応である。ライゲーションは、2つの一本鎖を連結して1つの一本鎖分子を作り出すことができる。ライゲーションは、それぞれが二本鎖分子に属する2つの鎖を連結し、そうして2つの二本鎖分子を連結することもできる。ライゲーションは、二本鎖分子の両方の鎖を別の二本鎖分子の両方の鎖に連結し、そうして2つの二本鎖分子を連結することもできる。ライゲーションは、二本鎖分子内の鎖の2つの末端を連結し、そうして二本鎖分子中のニックを修復することもできる。
【0017】
[0020] 用語“バーコード”は、検出および同定されることができる核酸配列を指す。バーコードは、典型的には他の核酸中に組み込まれる。バーコードは、バーコードを組み込んでいる核酸がバーコードに従って識別または分類されることができるように十分に長く、例えば2、5、10ヌクレオチドである。
【0018】
[0021] 用語“多重識別子”または“MID”は、標的核酸の源(例えば、その核酸が由来する試料)を同定するバーコードを指す。同じ試料からの全ての、または実質的に全ての標的核酸は、同じMIDを共有するであろう。異なる源または試料からの標的核酸が、混合され、同時に配列決定されることができる。MIDを用いて、その配列の読みは、その標的核酸が由来する個々の試料に割り当てられることができる。
【0019】
[0022] 用語“ユニーク分子識別子”または“UID”は、それが結合している核酸を同定するバーコードを指す。同じ試料からの全ての、または実質的に全ての標的核酸は、異なるUIDを有するであろう。同じ元の標的核酸に由来する子孫(例えば増幅産物)の全てまたは実質的に全ては、同じUIDを共有するであろう。
【0020】
[0023] 用語“ユニバーサルプライマー”および“ユニバーサルプライミング結合部位”は、プライマーおよび異なる標的核酸中に(典型的には、人工的に付加されることにより)存在するプライマー結合部位を指す。ユニバーサルプライミング部位は、標的核酸に、アダプターまたは5’−フラップ領域を有する標的特異的(非ユニバーサル)プライマー用いて付加される。ユニバーサルプライマーは、ユニバーサルプライミング部位に結合してそこからのプライマー伸長を方向付けることができる。
【0021】
[0024] 用語“突出末端”は、2つの核酸が例えば場合により末端のポリメラーゼ伸長を伴うライゲーションにより連結されることができるように第2二本鎖核酸の末端の一本鎖オーバーハングと二重鎖を形成することができる第1二本鎖核酸の末端の一本鎖オーバーハングを指す。2つの分子の突出末端は、2つの分子が連結されるために完全に相補的である必要はない。
【0022】
[0025] 用語“標的配列”、“標的核酸”または“標的”は、検出または分析されるべき試料中の核酸配列の部分を指す。標的という用語は、標的配列の全てのバリアント、例えば1以上の変異体バリアントおよび野生型バリアントを含む。
【0023】
[0026] 用語“配列決定”は、標的核酸中のヌクレオチドの配列を決定するあらゆる方法を指す。
【0024】
[0027] 本発明は、以下の工程を含む、配列決定のための標的核酸を調製する方法を提供する:
(a)標的核酸を含む試料を提供し;
(b)試料を少なくとも1つの二重鎖領域および少なくとも1つの非二重鎖領域を形成する2つの鎖を含むアダプター分子と接触させ、その非二重鎖領域は、少なくとも1つのユニバーサルプライマー結合部位を含み;そして
(c)アダプター分子を標的核酸にライゲーションして少なくとも1つのユニバーサルプライマー結合部位を有する非二重鎖領域を含む二本鎖環状ジョイント分子を形成する。
その方法は、さらに以下の工程を含むことができる:
(d)ジョイント分子をDNAポリメラーゼ(鎖置換ポリメラーゼであることができる)およびプライマー結合部位に相補的なユニバーサルプライマーと接触させ;そして
(e)合成による配列決定によりユニバーサルプライマーを伸長し、それにより標的核酸の配列を決定する。
【0025】
[0028] アダプターは、2つのハイブリダイズしていない鎖を有する単一の非二重鎖領域に隣接する2つの二重鎖領域を含むことができる。アダプターは、少なくとも1つのステムループ構造に隣接する2つの二重鎖領域を含むこともでき、それぞれの構造は、二重鎖ステム領域および非二重鎖ループ領域を含む。アダプターのそれぞれの鎖は、1つのプライマー結合部位を含むことができる。
【0026】
[0029] ライゲーションは、平滑末端ライゲーションであることができ、または好ましくは突出末端ライゲーションであることができる。この場合、本発明の方法は、工程b)の前に、鋳型に無関係な様式で標的核酸の3’末端にヌクレオチドを、そしてアダプター分子の3’末端に相補的ヌクレオチドを付加し、それにより突出末端を作り出す工程を含むことができる。本発明の方法は、工程b)の前に、標的核酸およびアダプター分子を制限エンドヌクレアーゼで消化して適合する突出末端を生成する工程を含むこともできる。本発明の方法は、工程b)の前に、標的核酸およびアダプター分子の3’末端をエキソヌクレアーゼで消化する工程を含むこともできる。次いで、標的核酸は、少なくとも1個のホスホロチオエートヌクレオチドを含むことができる。標的核酸およびアダプター分子は、ウラシル塩基を含有することができ、方法は、工程b)の前に標的核酸およびアダプター分子をN−グリコシラーゼおよびAP−リアーゼと接触させる工程を含むことができる。それは、ウラシル−DNA−グリコシラーゼおよびエンドヌクレアーゼVIIIであることができる。標的核酸およびアダプター分子は、ウラシル−DNA−グリコシラーゼおよびポリアミン化合物と高温で接触させられることができる。
【0027】
[0030] 試料は、複数の標的核酸を含むことができる。標的核酸は、工程b)の前に断片化され、工程b)の前にDNAポリメラーゼによる末端修復を受けることができる。アダプターは、1以上のバーコードを含むことができ、それは、ユニーク識別子(UID)、多重識別子(MID)またはそれらの組み合わせの1以上を含むことができる。
【0028】
[0031] 本発明は、以下の工程を含む、配列決定のための標的核酸を調製する方法も提供する:
(a)標的核酸を含む試料を提供し;
(b)試料を、二重鎖を形成する2つの鎖を含むアダプター分子と接触させ、ここで、それぞれの鎖は、ユニバーサルプライマー結合部位を含み;そして
(c)アダプター分子を標的核酸にライゲーションして2つのユニバーサルプライマー結合部位を含む二本鎖環状ジョイント分子を形成する。
方法は、さらに以下の工程を含むことができる:
(d)ジョイント分子をDNAポリメラーゼおよびプライマー結合部位に相補的なユニバーサルプライマーと接触させ;そして
(e)合成による配列決定によりユニバーサルプライマーを伸長し、それにより標的核酸の配列を決定する。
【0029】
[0032] それぞれの鎖は、同じまたは異なるプライマー結合部位を有することができる。
【0030】
[0033] 本発明は、さらに、2つの鎖を含むアダプターにライゲーションされた標的核酸からなる二本鎖環状分子を含む、標的核酸を配列決定するための組成物を提供し、ここで、その鎖は、少なくとも1つの二重鎖領域および少なくとも1つの非二重鎖領域を形成しており、非二重鎖領域中のそれぞれの鎖は、ユニバーサルプライマー結合部位を含有する。組成物は、さらにユニバーサルプライマーまたは鎖置換活性を有する核酸ポリメラーゼまたは両方を含むことができる。
【0031】
[0034] ある態様において、本発明は、二本鎖標的核酸を配列決定において有用な環状のロックされた鎖の鋳型に変換する方法である。環状鋳型の使用は、当該技術で既知であり、合成による配列決定の適用においていくつかの利点を有する。米国特許第7,302,146号および第8,153,375号を参照。鎖置換ポリメラーゼが用いられる場合、それは、ローリングサークル複製に従事する(engage)、すなわち新生鎖を連続的に置き換え、多数ラウンドの環状鋳型のコピーを行うであろう。標的を多数回配列決定し(読み通し)、連結されて環状構造になった核酸のワトソンおよびクリック鎖の両方を比較する能力は、エラーのない、または低エラーのコンセンサス配列を生成することを可能にする。
【0032】
[0035] しかし、
図1を参照すると、既存の環状鋳型は、標的核酸102の両端にライゲーションされたアダプター100を有するように設計されており、従って結果として得られる環状分子104は、2つのアダプター配列100を含有する(
図1)。それぞれのアダプターは、配列決定プライマーのための結合部位を有し、それは、2つのプライマーおよび2つのDNAポリメラーゼのそれぞれの環状鋳型への結合を可能にする。一度配列決定反応が開始したら、2つのポリメラーゼは、互いに干渉して合成の失速または終結を引き起こし、配列決定データの読みの長さおよび収率を低下させる可能性を有する。これは、2つのポリメラーゼが互いに比較的近く着陸する(land in)より短い鋳型に関して特に問題となる。
【0033】
[0036] 配列決定のための環状分子を組み立てる1つの方法は、二本鎖標的核酸の2つの鎖のそれぞれを単一のアダプター配列を有する別々の環状分子に変換することであった。米国特許出願公開第20120003675号および米国特許第7,883,849号を参照。このアプローチは、一本鎖が連結されて環になり得るように、アダプターおよび標的核酸の腕の間に相補性を必要とする。このアプローチは、複数の未知の配列の核酸のライブラリーの作製に関しては実用的ではない。
【0034】
[0037] 本発明は、環状分子のライブラリーの形成を可能にする新規の方法であり、それは、配列にかかわらず、配列決定ポリメラーゼのための単一のプライマー結合部位を含む(
図3、4および5)。本発明は、配列決定の質、読み通しおよび効率を増大させることができる新規の方法である。本発明の態様において、それぞれの二本鎖標的核酸は、単一のアダプターにコンジュゲートされる。結果として得られた環状二本鎖分子は、それぞれが、配列決定が開始される予定である単一のプライマー結合部位を有する2つの鎖を含む。
【0035】
[0038] 本発明は、試料中の標的核酸を改変および配列決定することを含む。ある態様において、試料は、対象または患者に由来する。ある態様において、試料は、対象または患者から例えば生検により得られた固形組織または固形腫瘍の断片を含むことができる。試料は、体液(例えば尿、痰、血清、血漿またはリンパ液、唾液、痰、汗、涙、脳脊髄液、羊水、滑液、心膜液、腹腔液、胸水、嚢胞液、胆汁、胃液、腸液および/または糞便試料)を含むこともできる。試料は、腫瘍細胞が存在し得る全血または血液画分を含むことができる。ある態様において、試料、特に液体試料は、無細胞材料、例えば無細胞腫瘍DNAまたは無細胞腫瘍RNAを含む無細胞DNAもしくはRNAを含むことができる。ある態様において、試料は、無細胞試料、例えば無細胞腫瘍DNAまたは無細胞腫瘍RNAが存在する無細胞血液画分である。他の態様において、試料は、感染性因子または感染性因子由来の核酸を含有する、または含有することが疑われる培養された試料、例えば培養物または培養上清である。ある態様において、感染性因子は、細菌、原生動物、ウイルスまたはマイコプラズマである。
【0036】
[0039] 標的核酸は、本明細書で記載された酵素反応が起こることを可能にするために、単離される、すなわち他の組織および細胞構成要素から分離される。単離は、当該技術で既知のあらゆる適切な方法により実施されることができる。
【0037】
[0040] 標的核酸は、試料中に存在し得る対象の核酸である。ある態様において、標的核酸は、遺伝子または遺伝子断片である。他の態様において、標的核酸は、遺伝的バリアント、例えば多型もしくは変異(一塩基多型またはバリアント(SNVのSNP)を含む)または結果として遺伝子融合をもたらす遺伝的再編成を含有する。ある態様において、標的核酸は、バイオマーカー、すなわち疾患または病気と関係する遺伝子または遺伝子バリアントを含む。他の態様において、標的核酸は、特定の生物に特徴的であり(例えば病原性生物の同定を助ける)、または病原性生物の特徴(例えば薬剤感受性または薬剤耐性)である。さらに他の態様において、標的核酸は、ヒトの対象に特徴的であり、例えば対象の特有のHLAまたはKIR遺伝子型を定めるHLAまたはKIR配列である。
【0038】
[0041] 本発明の一態様において、二本鎖標的核酸は、本発明の鋳型構成に変換される。他の態様において、標的核酸は、天然に一本鎖形態で存在する(例えば、mRNA、マイクロRNA、ウイルスRNAを含むRNA;または一本鎖ウイルスDNA)。一本鎖標的核酸は、本明細書で記載された方法の他の工程の開始前に二本鎖形態に変換される。より長い標的核酸は、断片化されることができるが、一部の適用において、より長い標的核酸は、より長い読みを達成することが所望され得る。ある態様において、標的核酸は、自然に断片化されている(例えば、循環無細胞DNA(cfDNA)または化学分解された核酸、例えば化学的に保存された試料(ホルマリン固定されパラフィン包理された組織、FFPET)中で見られる核酸)。
【0039】
[0042] 本発明の態様において、アダプター分子は、標的核酸の分子にライゲーションされている。標的核酸の両端は、単一のアダプターの末端にライゲーションされ、それによりジョイント分子を形成している。反応混合物の組成は、ライゲーション反応の速度論が1つの標的核酸の単一のアダプターへのライゲーションを有利にするような組成である。単一のアダプターのライゲーションは、自己環化および2つのアダプターへのライゲーションよりも有利にされている。ある態様において、試料中の標的核酸の濃度が、推定または定量化され、適切なモル量のアダプターが、添加される。ある態様において、標的対アダプター比は、1/20、1/200または1/400である。当業者は、突出末端ライゲーションが平滑末端ライゲーションと比較してより効率的であり、より小さい濃度のアダプターを必要とするであろうことを、理解するであろう。
【0040】
[0043] ある態様において、アダプターおよび標的核酸またはアダプターのみが、ジョイント分子の形成を可能にするが自己ライゲーション(アダプターの二量体化および標的核酸の自己環化を含む)を防ぐために前処理される。ある態様において、アダプターは、二量体化を防ぐために3’−ホスフェート基で修飾される。他の態様において、標的核酸は、5’−ホスフェート基を除去して自己環化を防ぐためにアルカリホスファターゼで処理される。
【0041】
[0044] ある態様において、ライゲーションは、2工程で行われる:第1工程は、アダプターのライゲーションであり、第2工程は、ライゲーションされたジョイント分子の自己環化である。ある態様において、ライゲーションされていないアダプターは、第1工程後にジョイント分子から分離される。ある態様において、分離は、クロマトグラフィーまたは電気泳動による。ある態様において、ライゲーションされていない標的核酸またはライゲーションされていないアダプターは、最後のライゲーション工程後に例えばエキソヌクレアーゼ消化により除去される。ある態様において、自己環化した標的核酸は、それがプライマー結合部位を含有せず、方法のその後の工程に干渉しないと考えられるため、除去されない。
【0042】
[0045] ライゲーションは、平滑末端ライゲーションまたはより効率的な突出末端ライゲーションであることができる。標的核酸またはアダプターは、鎖を埋めること(strand−filling)、すなわち3’末端をDNAポリメラーゼにより伸長して5’オーバーハングを除去することにより平滑末端状にされることができる。
【0043】
[0046] ある態様において、アダプターおよび標的核酸の末端は、例えばDNAポリメラーゼまたはターミナルトランスフェラーゼによるアダプターの3’末端への一種類のヌクレオチドの付加および標的核酸の3’末端への一種類の相補的ヌクレオチドの付加により、突出状にされることができる。さらに他の態様において、アダプターおよび標的核酸は、制限エンドヌクレアーゼによる消化により突出末端を獲得することができる。後者の選択肢は、制限酵素認識部位を含有することが既知である既知の標的配列に関してより好都合である。ある態様において、標的核酸は、標的核酸の一方または両方の鎖の一方の末端からの1以上のヌクレオチドの除去、従って突出末端の作製に有利な条件下でエキソヌクレアーゼと接触させられることができる。ある態様において、標的核酸の末端のエキソヌクレアーゼ消化は、例えば消化の時間を制御することにより、またはエキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドの組み込みにより、制御されることができる。ある態様において、標的核酸は、1以上のエキソヌクレアーゼ耐性ホスホロチオエートヌクレオチドを含有するプライマーを用いてコピーまたは増幅される。一態様において、突出末端は、標的核酸においてグリコシラーゼおよびAPリアーゼの組み合わせにより作り出される。その態様において、標的核酸は、グリコシラーゼによる塩基除去に適したヌクレオチド(例えば、ウラシル−N−DNAグリコシラーゼによる除去に適したデオキシウリジン塩基)を含有する。ある態様において、塩基除去反応の後、脱塩基部位におけるホスホジエステル骨格の熱的または酵素的破断が行われる。ある態様において、試料は、脱塩基部位のエンドヌクレアーゼによる切断を有利にする条件下でエンドヌクレアーゼVIIIと接触させられる。他の態様において、脱塩基部位を有するDNAは、熱分解を受ける。ある態様において、脱塩基DNAの熱分解の非酵素的増進剤、例えばポリアミン化合物が、添加されることができる(米国特許第8,669,061号を参照)。
【0044】
[0047] 上記の態様のそれぞれにおいて、アダプター分子は、下記でさらに記載されるアダプターオリゴヌクレオチドの設計およびインビトロ合成により、所望の末端(平滑、一塩基伸長または多塩基オーバーハング)を獲得することができる。
【0045】
[0048] ある態様において、他の酵素的工程が、ライゲーションを成し遂げるために必要とされ得る。ある態様において、ポリヌクレオチドキナーゼが、標的核酸分子およびアダプター分子の一方または両方に5’−ホスフェートを付加するために必要である可能性がある。
【0046】
[0049] 本発明は、標的核酸の一方または両方の末端にライゲーションされるためのアダプター分子の使用を含む。ある態様において、アダプターは、二本鎖構造を形成する2つの相補鎖を含む。例えば、
図3を参照して、プラス鎖122aおよびマイナス鎖122bを有する二本鎖DNA断片122は、場合により2つの一本鎖分子(すなわちプラス鎖122aおよびマイナス鎖122b)を提供するために変性させられることができる。その後、二本鎖DNA断片122(またはプラス鎖122aおよびマイナス鎖122bのそれぞれ)は、アダプター124と(例えばライゲーションにより)組み合わせられて二本鎖環状分子126を提供する。一側面において、アダプター124のそれぞれの鎖は、単一のプライマー結合部位128を含むことができ、ここで配列決定が開始される予定である。
【0047】
[0050]
図4に移って、ある態様において、アダプター130は、第1鎖130aおよび第2鎖130bを含む十字架様の構造を有する。鎖130aおよび130bのそれぞれは、少なくとも1つの二本鎖領域134および少なくとも1つの一本鎖領域136を含むステムループ二次構造132をとることができる。二本鎖領域134は、少なくとも部分的に自己相補性のある領域を含み、それは、本明細書で用いられる反応条件下での二次構造の安定性を確実にする。別の側面において、鎖130aおよび130bの末端は、
図4において示されている十字架様の構造を提供するために互いに少なくとも部分的に相補的であることができる。さらに別の側面において、アダプター130のそれぞれの鎖は、単一のプライマー結合部位138を含むことができ、ここで配列決定が開始される予定である。一例において、プライマー結合部位138は、ステムループ構造132の一本鎖領域136内に位置していることができる。アダプター130は、プラス鎖140aおよびマイナス鎖140bを有する二本鎖DNA断片140と組み合わせられて二本鎖分子142を提供することができる。
【0048】
[0051]
図5を参照して、ある態様において、アダプター144は、少なくとも1つの二本鎖領域146を形成する少なくとも1つの実質的に相補的な領域を共有しており;かつ少なくとも1つの一本鎖領域148を形成する少なくとも1つの相補性がほとんどまたは全くない領域を有する2つの鎖144aおよび144bを含む。ある態様において、アダプター144は、一本鎖領域148に隣接する2つの二本鎖領域146からなる構造を形成する2つの鎖からなる。
図4におけるアダプター130の場合のように、
図5におけるアダプター144のそれぞれの鎖は、単一のプライマー結合部位(示されていない)を含むことができ、ここで配列決定が開始される予定である。一例において、プライマー結合部位は、一本鎖領域148内に位置していることができる。アダプター144は、プラス鎖150aおよびマイナス鎖150bを有する二本鎖DNA断片150と組み合わせられて二本鎖分子152を提供することができる。
【0049】
[0052] ある態様において、アダプターの二本鎖領域は、二本鎖または一本鎖標的核酸へのライゲーションのために用いられる。他の態様において、アダプターの一本鎖部分は、二本鎖または一本鎖標的核酸にライゲーションされる。
【0050】
[0053] ある態様において、一本鎖核酸のライゲーションは、スプリントオリゴヌクレオチドを用いて実施される(例えば米国出願公開第20120003657号を参照)。例えば、
図2を参照して、プラス鎖108aおよびマイナス鎖108bを有する二本鎖DNA断片108は、2つの一本鎖分子を提供するために変性させられることができる。その後、プラス鎖108aの末端112に相補的である第1スプリントオリゴ110は、プラス鎖108aとアニーリングされた後、プラス鎖108aの末端の分子内ライゲーションが行われて環化された生成物114を提供することができる。同様に、マイナス鎖108bの末端118に相補的である第2スプリントオリゴ116は、マイナス鎖108bとアニーリングされた後、マイナス鎖108bの末端の分子内ライゲーションが行われて環化された生成物120を提供することができる。他の態様において、一本鎖核酸または部分的に一本鎖の核酸のライゲーションは、5’および3’末端の一本鎖領域(オーバーハング)を用いて実施される(例えば米国出願公開第20140193860号を参照)。
【0051】
[0054] ある態様において、アダプターは、1以上のバーコード:多重試料ID(MID)、ユニークID(UID)またはUIDおよびMIDの組み合わせを含む。ある態様において、単一のバーコードが、UIDおよびMIDの両方として用いられる。
【0052】
[0055] ある態様において、アダプターのそれぞれの鎖は、ユニバーサルプライマー、例えばユニバーサル配列決定プライマーのためのプライマー結合部位を含む。ある態様において、1つのプライマー結合部位が、それぞれの鎖においてアダプター分子の一本鎖部分中に配置されている(
図4、5)。ある態様において、1つのプライマー結合部位が、それぞれの鎖においてアダプター分子の二本鎖部分中に配置されている(
図3)。別々の鎖上に配置された結合部位は、同一ではなく、すなわち、それぞれの鎖は、異なるプライマーに関する結合部位を有する。ある態様において、アダプターの一方の鎖のみが、プライマー結合部位を担持している。
【0053】
[0056] ある態様において、アダプター分子は、インビトロで、2つのインビトロ合成された人工オリゴヌクレオチドを組み合わせることにより組み立てられる。ある態様において、オリゴヌクレオチドは、インビトロ合成された所望の二次構造を有することが既知の天然存在配列である。ある態様において、オリゴヌクレオチドは、単離された天然存在分子または単離された非天然存在分子である。
【0054】
[0057] ある態様において、本発明は、酵素を利用する。酵素は、DNAポリメラーゼ(配列決定ポリメラーゼを含む)、DNAリガーゼ、ポリヌクレオチドキナーゼ、ターミナルトランスフェラーゼ、場合によりウラシル−N−グリコシラーゼ、エキソヌクレアーゼおよびエンドヌクレアーゼ、すなわちAPリアーゼを含む。
【0055】
[0058] ある態様において、標的核酸を含有する環状ジョイント分子が、配列決定される。ユニバーサルプライマーは、配列決定ポリメラーゼにより伸長されてそれにより二本鎖標的核酸の配列を決定することができる。ある態様において、配列決定は、単分子配列決定または核酸もしくは核酸誘導体のあらゆる配列決定を含む合成による配列決定である。配列決定技術は、PacBio(登録商標)RSシステム、ナノポア配列決定システムもしくはトンネル効果認識配列決定システムまたは鋳型の連続的な読みが可能であり所望されるあらゆる配列決定システムを含むことができる。それぞれの鎖は、独立して配列決定される。ある態様において、それぞれの鎖は、一回の読みで、例えばローリングサークル複製により多数回配列決定される。
【0056】
[0059] ある態様において、配列決定データは、アダプター中に存在するバーコードを用いてエラーに関して修正される。ある態様において、ユニーク分子ID(UID)が、UIDにより同定されるような同じ元の分子の一部の(全てではないが)コピー中に存在する配列決定エラーを排除するために用いられる。ある態様において、UIDは、アダプター中に存在する2つのUIDを合わせることにより同定される単一の標的分子の両方の鎖からの配列データを用いてコンセンサス配列を得るために用いられる。
【0057】
[0060] ある態様において、DNAポリメラーゼは、鎖置換活性を有し、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を有しない。ある態様において、Phi29ポリメラーゼおよびその派生物が、用いられる(米国特許第5,001,050号、第5,576,204号、第7,858,747号および第8,921,086号参照)。
【0058】
[0061] ある態様において、本発明は、DNAリガーゼも利用する。ある態様において、T4 DNAリガーゼまたは大腸菌DNAリガーゼが、用いられる。
【0059】
[0062] ある態様において、本発明は、鋳型非依存性DNAポリメラーゼ、例えばターミナルトランスフェラーゼも利用する。ある態様において、本発明は、哺乳類のターミナルトランスフェラーゼを用いる。
【実施例】
【0060】
実施例1(仮想例)。二本鎖アダプターを用いる環状ジョイント分子の調製
[0063] この実験において、二本鎖標的DNAが、得られる。DNAは、インビトロで適切な大きさに断片化されるか、または天然に断片化されている。アダプターは、それぞれの鎖の上にプライマー結合部位を含む二本鎖分子である(
図3)。アダプターおよび標的核酸分子は、単一のアダプターのそれぞれの鋳型へのライゲーションを有利にする200/1の相対濃度で存在する。標的核酸の両方の末端は、核酸ポリメラーゼにより埋められて平滑にされている。場合により、一種類のヌクレオチドが、アダプターの3’末端に付加され、相補的な一種類のヌクレオチドが、標的DNAに付加される。これらの工程は、KAPA HyperPlusキット(Kapa Biosystems、マサチューセッツ州ウィルミントン)を用いて実施される。単一のアダプターが、ジョイント分子を作製するためにそれぞれの標的DNAにライゲーションされる。単一の配列決定プライマーが、アダプターの両方の鎖上の同じプライマー結合部位に相補的であり、または2つの結合部位は、異なっており、それぞれは、2つのプライマーの一方に相補的である。配列決定は、配列決定機器の製造業者により意図されるように進行する。配列決定データは、UIDにより同定されるような同じ元の分子の一部の(全てではないが)コピー中に存在する配列決定バリエーションを排除することにより、エラーに関して修正される。配列決定データは、アダプター中に存在する2つのUIDを合わせることにより同定される単一の標的分子の両方の鎖からの配列データを用いてコンセンサス配列を得ることにより、さらに修正される。
【0061】
実施例2(仮想例)。ステムループアダプターを用いる環状ジョイント分子の調製
[0064] この実験において、二本鎖標的DNAが、得られる。アダプターは、一本鎖領域に隣接する2つの二本鎖領域を有する二本鎖分子であり、ここで、それぞれの鎖は、ステムループ構造を形成している(
図4)。アダプターおよび標的核酸は、実施例1において記載されたように処理およびライゲーションされる。単一のアダプターが、ジョイント分子を作製するためにそれぞれの標的DNAにライゲーションされる。単一の配列決定プライマーが、アダプターの両方の鎖のループ部分中の同じプライマー結合部位に相補的であり、または2つの結合部位は、異なっており、それぞれは、2つのプライマーの一方に相補的である。配列決定は、配列決定機器の製造業者により意図されるように進行する。
【0062】
[0065] 配列決定データは、UIDにより同定されるような同じ元の分子の一部の(全てではないが)コピー中に存在する配列決定バリエーションを排除することにより、エラーに関して修正される。配列決定データは、アダプター中に存在する2つのUIDを合わせることにより同定される単一の標的分子の両方の鎖からの配列データを用いてコンセンサス配列を得ることにより、さらに修正される。
【0063】
実施例3(仮想例)。部分的に一本鎖のアダプターを用いる環状ジョイント分子の調製
[0066] この実験において、二本鎖標的DNAが、得られる。アダプターは、鎖が互いにハイブリダイズしていない一本鎖領域に隣接する2つの二本鎖領域を有する二本鎖分子である(
図5)。アダプターおよび標的核酸は、実施例1において記載されたように処理およびライゲーションされる。単一のアダプターが、ジョイント分子を作製するためにそれぞれの標的DNAにライゲーションされる。単一の配列決定プライマーが、アダプターの両方の鎖のハイブリダイズしていない部分中の同じプライマー結合部位に相補的であり、または2つの結合部位は、異なっており、それぞれは、2つのプライマーの一方に相補的である。配列決定は、配列決定機器の製造業者により意図されるように進行する。
【0064】
[0067] 配列決定データは、UIDにより同定されるような同じ元の分子の一部の(全てではないが)コピー中に存在する配列決定バリエーションを排除することにより、エラーに関して修正される。配列決定データは、アダプター中に存在する2つのUIDを合わせることにより同定される単一の標的分子の両方の鎖からの配列データを用いてコンセンサス配列を得ることにより、さらに修正される。