特許第6884541号(P6884541)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6884541
(24)【登録日】2021年5月14日
(45)【発行日】2021年6月9日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/47 20060101AFI20210531BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20210531BHJP
   A61F 13/475 20060101ALI20210531BHJP
【FI】
   A61F13/47 300
   A61F13/533 100
   A61F13/475 200
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-192768(P2016-192768)
(22)【出願日】2016年9月30日
(65)【公開番号】特開2018-51110(P2018-51110A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】奥田 誉士
【審査官】 住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/020690(WO,A1)
【文献】 特開2017−118984(JP,A)
【文献】 特開2016−028785(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0176734(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15−13/84
A61L15/16−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
吸収性物品の後方に、吸収性物品の長手方向に延びる左右対の長手方向圧搾溝が形成されるとともに、前記長手方向圧搾溝の後側に離間して、幅方向外側に向かって前側に傾斜する左右対の傾斜状圧搾溝が吸収性物品の長手方向に間隔をあけて複数形成され、
前記長手方向圧搾溝及び傾斜状圧搾溝はそれぞれ、吸収性物品の幅方向中央部で左右に離間しており、前記傾斜状圧搾溝は、吸収性物品の長手方向に対し5〜20mmの間隔で配置されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記傾斜状圧搾溝の両端部を結ぶ線と吸収性物品の長手方向線との成す角度として定義される傾斜状圧搾溝の傾斜角は、30〜80°である請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記傾斜状圧搾溝の長手方向前側の端縁が、前側に隣接する傾斜状圧搾溝の長手方向後側の端縁より、吸収性物品の長手方向の前側に位置している請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記傾斜状圧搾溝の長手方向後側の端縁は、前記長手方向圧搾溝の長手方向後側の端縁と比較して、吸収性物品の幅方向に対する位置が同等かそれより外側である請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記長手方向圧搾溝の後側部分が後側に行くに従って漸次幅方向内側に傾斜して形成され、
前記傾斜状圧搾溝の傾斜角が、前記長手方向圧搾溝の後側端縁の傾斜角より大きく形成されている請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主には生理用ナプキン、おりものシート、失禁パッド、トイレタリー等に使用される吸収性物品であって、詳しくは装着時に吸収性物品の後方に発生するシワを分散させる複数の傾斜状圧搾溝を設けることにより、吸収性物品の後方部分を身体に沿って変形しやすくした吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、図5に示されるように、パンティライナー、生理用ナプキン、失禁パッドなどの吸収性物品50として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シート51と、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シート52との間に綿状パルプ等からなる吸収体53を介在するとともに、前記透液性表面シート52の面に外面側からの圧搾により前記不透液性裏面シート51側に窪ませた圧搾溝54を形成したものが知られている。
【0003】
前記圧搾溝54は、排血口部から臀部溝にかけての領域に配置された肌側に増厚された吸収体の中高部を囲うように形成されるのが一般的であり、吸収性物品の後方において、前記圧搾溝54は、吸収性物品の幅方向中央部で左右の長手方向に延びる線分同士が連結するように形成されている。
【0004】
前記吸収性物品50を下着に装着するにあたっては、図5に示されるように、下着の股間部内面に固定するとともに、両側部に突出したウイング状フラップ55、55を下着のクロッチ部分を巻き込むように外面側に折り返している。この装着状態では、脚の付け根の内側部分によって幅方向両側から内側に向けた圧力(脚圧)を受けることによって、或いは身体の前後方向の丸みに沿って吸収性物品50の長手方向に対し前後端部が肌側に突出する湾曲形状に変形することによって、前記圧搾溝54の後端の幅方向中央部で左右の長手方向に延びる線分同士が連結した部分を基点として、吸収性物品の幅方向のほぼ全長に亘って吸収体の折れ曲がりに伴う折れジワ56が1箇所に集中して形成されやすくなっていた。この折れジワ56は、吸収性物品50の表面(透液性表面シート52)が肌面から離間するように非肌側に窪むように形成されるため、この折れジワ56において、吸収性物品50の表面と肌面との間に隙間が生じ、この隙間を通じて体液の伝い漏れが発生しやすくなっていた。
【0005】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、体液漏れを防止するとともに、装着時に身体の形状に沿って吸収性物品を変形しやすくする等のため、肌当接面側から非肌側に向けて窪ませた圧搾溝を種々の形態で形成する技術が存在する(例えば下記特許文献1、2など)。
【0006】
下記特許文献1には、後方部における表面シート側に圧搾溝が一対形成されており、その圧搾溝対を構成する一方の圧搾溝と他方の圧搾溝とは、縦中心線を基準として対称に形成され且つ横方向において互いに離間しており、前記圧搾溝は、平面視において縦方向後方に向かって凸に湾曲する凸形状を有し、該凸の頂部を形成する曲線部と内側線分と外側線分とを含んで構成され、該内側線分及び外側線分は、それぞれが連結される曲線部の端部における接線に沿って延びており、一方の内側線分と他方の内側線分との間隔が前方に向かって漸次減少しているとともに、一方の外側線分と他方の外側線分との間隔が前方に向かって漸次増加しており、外側線分側の縦方向長さは内側線分側の縦方向長さに比して長い吸収性物品が開示されている。
【0007】
また、下記特許文献2には、長手方向の後方部に後方圧縮溝が設けられ、前記後方圧縮溝は、吸収性物品の幅方向に延び、互いに離間する一対の横圧縮溝部を有し、一対の横圧縮溝部は縦中心線を対称軸として略線対称に形成される吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015−167773号公報
【特許文献2】特開2009−77927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1記載の吸収性物品では、圧搾溝対がそれぞれ、後方に向かって凸に湾曲する凸形状を有しているため、吸収性物品の装着時にこの凸の頂部を基点とした幅方向に沿う折れジワが1箇所に集中して発生しやすくなっていた。また、上記特許文献2記載の吸収性物品では、幅方向に延びる一対の横圧縮溝部を有しているが、この一対の横圧縮溝部を基点とした1箇所に集中した幅方向に沿う折れジワが生じやすい。
【0010】
このように、吸収性物品の装着時の外力や変形に伴う折れジワが1箇所に集中して形成されると、折れジワのシワの深さが深くなるとともに、シワの幅も大きくなり、折れジワ部分の肌面との密着性が著しく低下し、体液の伝い漏れの原因となっていた。
【0011】
そこで本発明の主たる課題は、装着時に吸収性物品の後方に発生するシワを分散させるとともに、臀部溝に対するフィット性を向上させ、体液の漏れを防止した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸収体が介在された吸収性物品において、
吸収性物品の後方に、吸収性物品の長手方向に延びる左右対の長手方向圧搾溝が形成されるとともに、前記長手方向圧搾溝の後側に離間して、幅方向外側に向かって前側に傾斜する左右対の傾斜状圧搾溝が吸収性物品の長手方向に間隔をあけて複数形成され、
前記長手方向圧搾溝及び傾斜状圧搾溝はそれぞれ、吸収性物品の幅方向中央部で左右に離間しており、前記傾斜状圧搾溝は、吸収性物品の長手方向に対し5〜20mmの間隔で配置されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0013】
上記請求項1記載の発明では、前記長手方向圧搾溝及び傾斜状圧搾溝がそれぞれ、吸収性物品の幅方向中央部で左右に離間しているため、幅方向中央部で連結した部分を基点とした折れジワが形成されることがない。また、幅方向中央部で左右に離間した部分には圧搾溝が形成されていないため、吸収性物品の装着時にこの部分が臀部溝に入り込むように変形しやすくなり、臀部溝に対するフィット性が向上できる。
【0014】
また、本吸収性物品では、前記長手方向圧搾溝の後側に離間して、幅方向外側に向かって前側に傾斜する左右対の傾斜状圧搾溝が吸収性物品の長手方向に5〜20mmの間隔をあけて複数形成されているため、吸収性物品の後方において、折れジワが1箇所に集中せず分散して形成されるようになっている。具体的には、左右対の傾斜状圧搾溝が吸収性物品の長手方向に間隔をあけて複数形成されているため、これらの傾斜状圧搾溝に沿って複数の小さな折れジワが分散して形成されるようになる。吸収性物品装着時の変形や脚圧などの外力によって生じるひずみを1箇所に集中させず、数箇所に分散させることによって、吸収性物品の折れジワが分散して形成され、1箇所に集中して形成された折れジワに比べて、個々の折れジワの深さや幅が小さくなり、肌面との密着性が低下するのが抑えられ、体液の漏れが防止できるようになる。
【0015】
また、吸収性物品の装着時には、ウイング状フラップを下着のクロッチ部分を巻き込むように外面側に折り返すことにより、吸収性物品の幅方向外縁部にはウイング状フラップに向けた引張力が作用するとともに、ウイング状フラップが形成された部分を中心とした幅方向外側から内側に向けた脚圧によって、吸収性物品の幅方向外縁部にはウイング状フラップに向けた引張力が作用しており、これらの引張力によって、吸収性物品の幅方向に沿って形成される折れジワは、幅方向外側に向かって前側に傾斜するように形成される(図5参照)。従って、傾斜状圧搾溝をこの折れジワが形成されやすい方向に沿って設けることにより、装着時に発生する折れジワが更に分散して形成されやすくなる。
【0016】
請求項に係る本発明として、前記傾斜状圧搾溝の両端部を結ぶ線と吸収性物品の長手方向線との成す角度として定義される傾斜状圧搾溝の傾斜角は、30〜80°である請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項記載の発明では、前述の通り、ウイング状フラップを折り返したときの引張力によって吸収性物品の後方に発生する折れジワが幅方向外側に向かって前側に傾斜して形成されるため、この折れジワに沿うように傾斜状圧搾溝を所定の傾斜角で形成している。
【0018】
請求項に係る本発明として、前記傾斜状圧搾溝の長手方向前側の端縁が、前側に隣接する傾斜状圧搾溝の長手方向後側の端縁より、吸収性物品の長手方向の前側に位置している請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項記載の発明では、傾斜状圧搾溝の長手方向前側の端縁を、前側に隣接する傾斜状圧搾溝の長手方向後側の端縁より、吸収性物品の長手方向前側に位置させることによって、吸収性物品の幅方向に対して圧搾溝が形成されない低剛性の部分が形成されなくなり、傾斜状圧搾溝によって剛性が高められるため、装着に伴うシワが確実に複数の傾斜状圧搾溝に沿って分散して形成されるようになる。
【0020】
請求項に係る本発明として、前記傾斜状圧搾溝の長手方向後側の端縁は、前記長手方向圧搾溝の長手方向後側の端縁と比較して、吸収性物品の幅方向に対する位置が同等かそれより外側である請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0021】
上記請求項記載の発明では、傾斜状圧搾溝の長手方向後側の端縁が、長手方向圧搾溝の長手方向後側の端縁と比較して、吸収性物品の幅方向に対する位置が同等かそれより外側とすることによって、長手方向圧搾溝の後側端縁を基点とした折れジワより、傾斜状圧搾溝の後側端縁を基点とした折れジワを形成しやすくしている。これとは逆に、長手方向圧搾溝の長手方向後側の端縁が、傾斜状圧搾溝の長手方向後側の端縁より、吸収性物品の幅方向外側に位置する場合には、この幅方向外側に位置する長手方向圧搾溝の後側の端縁を基点とした折れジワが1箇所に集中して形成されやすくなる。
【0022】
請求項に係る本発明として、前記長手方向圧搾溝の後側部分が後側に行くに従って漸次幅方向内側に傾斜して形成され、
前記傾斜状圧搾溝の傾斜角が、前記長手方向圧搾溝の後側端縁の傾斜角より大きく形成されている請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0023】
上記請求項記載の発明では、傾斜状圧搾溝の傾斜角を、長手方向圧搾溝の後側端縁の傾斜角より大きく形成している。これにより、傾斜角が大きい傾斜状圧搾溝の方が、折れの力の作用点(左右対で形成された圧搾溝後端の延長線の幅方向中央部における交点)が圧搾溝に近くなり、折れジワが形成されやすくなる。
【発明の効果】
【0024】
以上詳説のとおり本発明によれば、装着時に吸収性物品の後方に発生するシワを分散させることができるとともに、臀部溝に対するフィット性が向上し、体液の漏れが防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
図2図1のII−II線矢視図である。
図3図1のIII−III線矢視図である。
図4】生理用ナプキン1の後方に形成される圧搾溝の拡大平面図である。
図5】従来の吸収性物品50を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0027】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、図1図3に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなど(以下、まとめて体液ともいう。)を速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、肌当接面側の両側部に長手方向に沿ってほぼ全長に亘って設けられたサイド不織布7とを備え、かつ前記吸収体4の周囲においては、その上下端縁部では前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイド不織布7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合されることにより、吸収体が介在しないフラップ部が形成されたものである。なお、図示例では、前記吸収体4の形状保持および拡散性向上のために、前記吸収体4をクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5で囲繞しているが、この被包シート5は設けなくてもよい。また、図示しないが、前記透液性表面シート3の非肌側に隣接して、前記透液性表面シート3とほぼ同形状の親水性の不織布などからなるセカンドシートを配設してもよい。
【0028】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、蒸れ防止の観点から透湿性を有するものを用いるのが望ましい。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記不透液性裏面シート2の非肌側面(外面)にはナプキン長手方向に沿って1または複数条の粘着剤層(図示せず)が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着に固定するようになっている。前記不透液性裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。
【0029】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記透液性表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0030】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえば綿状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。前記吸収体4の目付は、250〜650g/m、好ましくは300〜400g/mとするのがよい。
【0031】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0032】
前記吸収体4の肌側面には、肌側に増厚された吸収体の中高部6を形成するのが好ましい。前記吸収体4及び中高部6は、それぞれ別個に製造した後、組立工程で積層してもよいし、吸収体を立体的に積繊することによって一体的に形成してもよい。また、吸収体4の上段に中高部6を積繊する二段積繊構造としてもよい。この中高部6については後段で詳細に説明する。
【0033】
前記透液性表面シート3の幅寸法は、図示例では、図2及び図3の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4を覆うだけに止まり、それより外方側は前記透液性表面シート3とは別のサイド不織布7、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されたサイド不織布7が配設されている。かかるサイド不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13〜23g/mとして作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0034】
前記サイド不織布7は、図2及び図3に示されるように、幅方向中間部より外側部分を所定の内側位置から不透液性裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着し、これら前記サイド不織布7と不透液性裏面シート2との積層シート部分により吸収体4の両側部に吸収体4が介在しないフラップ部が形成されている。このフラップ部は、ほぼ体液排出部Hに相当する吸収体側部位置に左右一対のウイング状フラップW、Wを形成するとともに、これより臀部側(後部側)位置にヒップホールド用フラップW、Wを形成してもよい。これらウイング状フラップW、Wおよびヒップホールド用フラップW、Wの外面側にはそれぞれ粘着剤層(図示せず)が備えられ、ショーツに対する装着時に、前記ウイング状フラップW、Wを基端部の折返し線RL位置にて反対側に折り返し、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着するとともに、前記ヒップホールド用フラップWをショーツの内面に止着するようになっている。
【0035】
一方、前記サイド不織布7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に、その高さ方向中間部に両端または長手方向の適宜の位置が固定された1又は複数本の、図示例では3本の糸状弾性伸縮部材9、9…が両端または長手方向の適宜の位置が固定された状態で配設されている。この二重シート部分は前後端部では図3に示されるように、外側に1回折り返して積層された状態で吸収体4側に接着されることによって、図2に示されるように、外側に傾斜しながら表面側に起立する直線状の立体ギャザーBS、BSが左右対で形成されている。
【0036】
〔中高部〕
本生理用ナプキン1では、図1及び図2に示されるように、前記吸収体4の少なくとも体液排出部Hから臀裂部にかけた範囲に、肌側に増厚した吸収体の中高部6を設けるのが好ましい。前記中高部6は、吸収体4の肌側面に隣接するとともに、吸収体4の幅方向中央部に配置され、吸収体4より幅寸法及び長手寸法が小さく形成されている。前記中高部6の厚みは、厚すぎると剛性が上がり身体への密着性が低下するし、薄すぎると体液排出部Hとの密着性が低下するため3〜25mm、好ましくは5〜18mmとするのがよい。また、前記中高部6が配置された部分の中高部6と吸収体4との合計目付は、400〜900g/m、特に600〜800g/mとするのがよい。
【0037】
前記中高部6は、着用者の体液排出部Hを含む領域のみに設けたり、排液排出部Hを含む領域及び臀部溝を含む領域にそれぞれ設けたり、体液排出部Hから臀部溝にかけての領域に連続して設けたりすることができる。一例を挙げると、図1に示されるように、着用者の体液排出部Hを含む領域に設けられた中高前方部6Aと、着用者の臀部溝を含む領域に設けられた中高後方部6Bと、前記中高前方部6Aと中高後方部6Bとをナプキン前後方向に繋ぐ領域に設けられるとともに、両側縁が内方に括れている中高括れ部6Cとから構成することができる。
【0038】
前記中高前方部6Aは、着用者の体液排出部Hを含む領域、具体的には体液排出部Hより前側及び後側に若干長い領域に形成されている。前記中高前方部6Aは、ナプキン前後方向に長い縦長に形成され、両側縁がナプキン前後方向に延びる直線で形成されている。また、前端縁は、ナプキン前方に向けて膨出する弧状曲線で形成されている。
【0039】
前記中高後方部6Bは、着用者の臀部溝を含む領域に形成されている。具体的には、着用者の股下側に臀部溝が開始する位置から後方に、臀部溝を越えた位置、臀部溝の終点位置又は臀部溝の中間位置までの領域に設けられている。
【0040】
前記中高後方部6Bは、後方部分がナプキン後方に向けて漸次幅を狭めた先細形状に形成するのが好ましい。これにより、中高後方部6Bが臀部溝の奥まで入り込みやすくなり、臀部溝を伝う体液の漏れが防止できるようになる。この先細形状は、図示例では、中高後方部6Bの前端(中高括れ部6Cとの境界)から開始するようにしているが、中高後方部6Bの前端から所定の長さだけ両側縁をナプキン前後方向に延びる直線で形成した後、そこから先細形状が開始するようにしてもよい。
【0041】
前記中高括れ部6Cは、前記中高前方部6Aと中高後方部6Bとをナプキン前後方向に繋ぐ領域に設けられ、中高括れ部6Cの前端は中高前方部6Aの後端に連続し、中高括れ部6Cの後端は中高後方部6Bの前端に連続している。前記中高括れ部6Cは、両側の外形線が幅方向内側に膨出する湾曲形状で形成するのが好ましい。これにより、着用者の体液排出部Hの後端から臀部溝の開始位置にかけての肌面に形成される細かな凹凸にもフィットしやすくなり、肌面との密着性が向上できる。
【0042】
前記中高部6は、少なくともパルプ繊維と合成繊維とを含むとともに、前記パルプ繊維:合成繊維の比率を重量換算で80〜20:20〜80、好ましくは40〜60:60〜40で混合したものが望ましい。また、前記中高部6は吸水性ポリマーを含有することができる。前記吸水性ポリマーとしては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する吸水性ポリマーは製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。配合量は中高部6が吸収体4側への浸透を促進する必要上、配合量を多くすると所謂ゲルブロッキング現象が起きるため、パルプ繊維及び合成繊維の合計重量に対して重量換算で1〜10%の割合で配合するのが望ましい。なお、吸水性ポリマー含有率が50%を超える場合にはパルプ繊維間の絡み合いが無くなり、シート強度が低下し破れや割れ等が発生し易くなるため望ましくない。
【0043】
〔圧搾溝〕
本生理用ナプキン1では、前記中高部6の近傍外側部位置に、肌当接面側(透液性表面シート3の外面側)から非肌側(不透液性裏面シート2側)に向けて窪ませた圧搾溝10が形成されている。前記圧搾溝10は、少なくとも体液排出部Hに対応する部位を含む領域から臀部溝に対応する部位を含む領域にかけての両側部にそれぞれ形成されている。体液排出部Hに対応する部位を含む領域とは、生理用ナプキン1の装着時に着用者の体液排出部Hが当接する部位を全て含む幅方向中央領域であり、そのナプキン長手方向の範囲は、両側にウイング状フラップWが備えられたものでは、概ねこのウイング状フラップWの長手範囲に相当する。また、臀部溝に対応する部位を含む領域とは、生理用ナプキン1の装着時に着用者の臀部溝の少なくとも一部を含む幅方向中央領域であり、股下側の臀部溝の開始位置から後方に臀部溝の中間位置までの範囲である。
【0044】
図1に示される生理用ナプキン1において、前記圧搾溝10は、体液排出部Hに対応する部位を含む領域から臀部溝に対応する部位を含む領域にかけての両側部にそれぞれ、ナプキン1のほぼ長手方向に沿って連続して形成された左右対の前側長手方向圧搾溝11、11と、この前側長手方向圧搾溝11の後側に離間して配置されるとともに、臀部溝に対応する部位の両側部にそれぞれ、ナプキン1のほぼ長手方向に沿って連続して形成された左右対の後側長手方向圧搾溝12、12と、前記前側長手方向圧搾溝11、11の前側に離間して配置されるとともに、ナプキン1の長手方向中心線を幅方向に横断し、ナプキン1のほぼ幅方向に沿って形成された三日月形状からなる前端三日月形圧搾溝13と、前記後側長手方向圧搾溝12、12の後側に離間して配置されるとともに、幅方向外側に向かって前側に傾斜し、且つナプキン長手方向に間隔をあけて複数形成された左右対の傾斜状圧搾溝14、14…とから構成されている。図示例では、前記前側長手方向圧搾溝11と後側長手方向圧搾溝12とは長手方向に離間して配置されているが、前記前側長手方向圧搾溝11と後側長手方向圧搾溝12とを連続させた、体液排出部Hに対応する部位を含む領域から臀部溝に対応する部位まで連続する長手方向圧搾溝としてもよい。
【0045】
前記前側長手方向圧搾溝11は、図1に示されるように、少なくとも前記中高前方部6A及び中高括れ部6Cの両側に配置されるとともに、後端部が前記中高後方部6Bに若干かかる位置まで延在している。
【0046】
また、前記後側長手方向圧搾溝12は、図1に示されるように、前記中高後方部6Bの両側にそれぞれ左右対で配置されている。前記後側長手方向圧搾溝12は、中高後方部6Bのナプキン長手方向長さより短い範囲に配置されている。つまり、後側長手方向圧搾溝12の前端より中高後方部6Bの前端が前側に位置し、後側長手方向圧搾溝12の後端より中高後方部6Bの後端が後側に位置している。
【0047】
前記後側長手方向圧搾溝12は、詳細には図4に示されるように、後端が左右に離間する離間部15を有している。また、前記後側長手方向圧搾溝12の後端より前記中高部6の後端がナプキン長手方向の後方に位置している。すなわち、左右の後側長手方向圧搾溝12、12の後端の離間部15から中高部6の後端部が後方に突出するように配置されている。前記後側長手方向圧搾溝12の後側部分は、後側に行くに従って漸次幅方向内側に傾斜するように形成するのが好ましい。つまり、左右の後側長手方向圧搾溝12、12の離間幅が、後側に行くに従って漸次小さくなるように形成するのが好ましい。
【0048】
前記後側長手方向圧搾溝12の後側部分は、ナプキン長手方向に沿う直線又は後側に行くに従って漸次幅方向外側に傾斜する傾斜線などでもよいが、後側に行くに従って漸次幅方向内側に傾斜する傾斜線で形成するのが好ましい。
【0049】
図4に示されるように、後側長手方向圧搾溝12の後側部分を、後側に行くに従って漸次幅方向内側に傾斜する傾斜線で形成した場合、後側長手方向圧搾溝12の後端の接線方向と生理用ナプキン1の長手方向線Sとの成す角(傾斜角α)は、後段で詳述するように傾斜状圧搾溝14の傾斜角βより小さくするのが好ましい。
【0050】
前記後側長手方向圧搾溝12の後側に離間して、幅方向外側に向かって前側に傾斜する左右対の傾斜状圧搾溝14、14…がナプキン長手方向に間隔をあけて複数形成されている。前記傾斜状圧搾溝14は、生理用ナプキン1の長手方向中心線CLを基準として左右対称に形成され、少なくとも長手方向中心線CL上のナプキン幅方向中央部で左右に離間する離間部16を有している。
【0051】
このため、本生理用ナプキン1では、後側長手方向圧搾溝12及び傾斜状圧搾溝14がそれぞれ、生理用ナプキン1の幅方向中央部で左右に離間しているため、幅方向中央部で連結した部分を基点として折れジワが発生することがない。また、幅方向中央部で左右に離間した部分に圧搾溝が形成されないため、生理用ナプキン1の装着時に幅方向両側から内側に向けた脚圧が作用したときに、この部分が臀部溝に入り込むように変形しやすくなり、臀部溝に対するフィット性が向上する。
【0052】
また、本生理用ナプキン1では、後側長手方向圧搾溝12の後側に離間して、幅方向外側に向かって前側に傾斜する左右対の傾斜状圧搾溝14を生理用ナプキン1の長手方向に間隔をあけて複数形成してあるため、生理用ナプキン1の後方において、折れジワが1箇所に集中せず、分散して形成されるようにしている。具体的には、左右対の傾斜状圧搾溝14が生理用ナプキン1の長手方向に間隔をあけて複数形成されているため、これらの傾斜状圧搾溝14を軸として複数の折れジワが分散して形成されるようになる。折れジワが複数に分散して形成されることによって、1箇所に集中して折れジワが形成された場合に比べて、個々の折れジワの深さや幅が小さくなり、肌面との密着性が低下するのが抑えられ、体液の漏れが防止できるようになる。
【0053】
前記傾斜状圧搾溝14は、生理用ナプキン1の幅方向外側に向かって前側に傾斜して形成されている。これは、生理用ナプキン1の装着時に形成される折れジワの方向に沿う方向である。生理用ナプキン1の装着時には、前述の通り、ウイング状フラップW、Wが基端部の折返し線RL位置にて不透液性裏面シート2側に折り返され、ショーツのクロッチ部分に巻き付けて止着されるため、生理用ナプキン1の幅方向外側端部には、ウイング状フラップWに向けた引張力が作用している。また、ウイング状フラップW、Wの形成位置を中心とした幅方向両側から内側に向けた脚圧によって、生理用ナプキンの幅方向外縁部にはウイング状フラップWに向けた引張力も作用している。これらの引張力によって、生理用ナプキン1の後方において幅方向に沿って形成される折れジワは、幅方向外側に向かうに従って徐々に前側に傾斜する傾斜状に形成されるようになる(図5参照)。従って、前記傾斜状圧搾溝14を生理用ナプキン1の幅方向外側に向かって前側に傾斜して形成することにより、前記傾斜状圧搾溝14の傾斜方向が装着時の折れジワに沿って形成されるようになる。
【0054】
前記傾斜状圧搾溝14を設けるナプキン長手方向の範囲は、着用者が脚を伸ばした仰向け寝の状態で、股下側の臀部が接地する開始位置を中心とした前後範囲とするのが好ましい。この範囲は、仰向け寝の状態で生理用ナプキン1の長手方向に対する変形が急激に変化する部分であるので、装着時に折れジワが生じやすく、本発明の効果が発揮されやすい部分である。
【0055】
前記傾斜状圧搾溝14は、図4に示されるように、生理用ナプキン1の長手方向の間隔(ピッチP)が5〜20mm、好ましくは10〜15mmとするのがよい。これにより、各傾斜状圧搾溝14に沿って折れジワが細かく分散して形成されるようになる。前記ピッチPが5mm未満では、ナプキンが変形しにくくなり、ナプキンの後方が臀部溝や臀部の丸みに沿って湾曲しにくくなる。また、20mmより大きいと、各傾斜状圧搾溝14に沿った細かな折れジワが形成しにくくなる。前記ピッチPは、一定である必要はなく、上記の範囲内であれば、徐々に変化させたり、部位によって任意に設定したりすることが可能である。
【0056】
前記傾斜状圧搾溝14は、生理用ナプキン1の長手方向に対し、2対以上の複数対で形成されている。好ましくは3〜8対、より好ましくは3〜5対である。左右対の傾斜状圧搾溝14を長手方向に離間して複数形成することにより、傾斜状圧搾溝14に沿った折れジワがナプキン長手方向に対して数箇所に分散して形成されるようになり、個々の折れジワが細かく小さなものとなる。
【0057】
図4に示されるように、前記傾斜状圧搾溝14の傾斜角βは、生理用ナプキン1の長手方向線Sとの成す角が30〜80°、好ましくは45〜65°であるのが好ましい。この角度範囲とすることにより、装着時の折れジワの方向にほぼ沿って傾斜状圧搾溝14が形成されるようになる。傾斜角βが30°より小さいと、傾斜状圧搾溝14が前側に配置される後側長手方向圧搾溝12と重なるおそれがあり、圧搾溝12、14同士が近接し過ぎて極端に剛性が高くなり、フィット性が低下するおそれがある。また、80°より大きくすると、ナプキン幅方向に対して傾斜状圧搾溝14が形成されない低剛性の部分が存在するようになり、この低剛性部分に沿って折れジワが生じるようになる。
【0058】
前記傾斜状圧搾溝14の平面形状は、図示例のように、形成される折れジワとほぼ同じ略直線状とするのが好ましいが、ナプキン長手方向の前側又は後側に突出する曲線状又は折れ線状に形成してもよい。ただし、曲線状又は折れ線状に形成した場合には、突出部が折れ基点となるのを防止するため、突出部の頂部が傾斜状圧搾溝14の両端部よりナプキン長手方向の外側に突出しないようにするのが好ましい。曲線状又は折れ線状に形成した場合の傾斜角βは、傾斜状圧搾溝14の両端部を結ぶ線と長手方向線Sとの成す角をとればよい。
【0059】
左右対の傾斜状圧搾溝14、14は、生理用ナプキン1の幅方向中央部の離間幅Bが20〜40mm、好ましくは27〜33mmとするのがよい。20mmより小さいと、左右対の傾斜状圧搾溝14、14が幅方向中央部で連結されているのと同様に、太い折れジワが幅方向に亘って形成されやすく、40mmより大きいと圧搾領域が狭くなり、傾斜状圧搾溝14を設けた効果が十分に発揮されないおそれがある。
【0060】
図4に示されるように、前記傾斜状圧搾溝14の長手方向前側の端縁14bは、前側に隣接する傾斜状圧搾溝14の長手方向後側の端縁14aより、生理用ナプキン1の長手方向の前側に位置するように配置するのが好ましい。換言すると、前後に隣接する傾斜状圧搾溝14、14同士は、生理用ナプキン1の幅方向に対し重なり代を有するように配置するのが好ましい。これにより、生理用ナプキン1の幅方向に対し、傾斜状圧搾溝14で補強されない低剛性の部分が形成されなくなるため、装着に伴うシワが確実に複数の傾斜状圧搾溝14に沿って分散して形成されるようになる。
【0061】
上述の前後に離間する傾斜状圧搾溝14、14同士の配置と同様に、前記傾斜状圧搾溝14、14…のうち最も前側に位置する傾斜状圧搾溝14の長手方向前側の端縁14bは、前記後側長手方向圧搾溝12の後側の端縁12aより、生理用ナプキン1の長手方向前側に位置するように配置するのが好ましい。
【0062】
前記傾斜状圧搾溝14の長手方向後側の端縁14aは、前記後側長手方向圧搾溝12の長手方向後側の端縁12aと比較して、生理用ナプキン1の幅方向に対する位置が同等かそれより外側であるのが好ましい。生理用ナプキン1の幅方向外側に延びる折れジワは、幅方向外側に位置するものを基点として形成されやすく、傾斜状圧搾溝14の長手方向後側(幅方向内側)の端縁14aを後側長手方向圧搾溝12の長手方向後側の端縁12aと同等以上の幅方向外側に配置することによって、各傾斜状圧搾溝14に沿って細かく分散された折れジワが確実に形成されやすくなるとともに、傾斜状圧搾溝14の形成範囲の幅方向中央部を肌側に隆起させやすくなり、臀部溝とのフィット性が向上するようになる。ここで、前記傾斜状圧搾溝14の長手方向後側の端縁14aと、後側長手方向圧搾溝12の長手方向後側の端縁12aとの生理用ナプキン1の幅方向の位置ズレ量Cは、0〜10mm、好ましくは0〜3mmとするのがよい。
【0063】
前記傾斜状圧搾溝14の傾斜角βと、後側長手方向圧搾溝12の後側端縁12aの傾斜角αとは、β>αの関係を有するように形成するのが好ましい。圧搾溝の傾斜角を大きくした方が、折れの力の作用点(左右対で形成された圧搾溝の後端を延長した延長線T(曲線からなる圧搾溝の場合は後端の接線)がそれぞれ長手方向中心線CL上で交差する交点)が圧搾溝の近くに位置するようになり、この作用点を基点として圧搾溝に沿った折れジワが形成されやすくなる。従って、相対的に傾斜角を大きくした複数の傾斜状圧搾溝14、14…に沿って、細かく分散された折れジワが形成されやすくなる。
【符号の説明】
【0064】
1…生理用ナプキン、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート、4…吸収体、5…被包シート、6…中高部、7…サイド不織布、9…糸状弾性伸縮部材、10…圧搾溝、11…前側長手方向圧搾溝、12…後側長手方向圧搾溝、13…前端三日月形圧搾溝、14…傾斜状圧搾溝、15・16…離間部
図1
図2
図3
図4
図5