特許第6886595号(P6886595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6886595-接着剤層の膜厚の測定方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6886595
(24)【登録日】2021年5月19日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】接着剤層の膜厚の測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/06 20060101AFI20210603BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20210603BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
   G01B11/06 Z
   C09J11/06
   C09J175/04
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-8487(P2017-8487)
(22)【出願日】2017年1月20日
(65)【公開番号】特開2018-116018(P2018-116018A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2019年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】小川 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 茂和
【審査官】 眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−161205(JP,U)
【文献】 特開2016−121270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00−11/30
C09J 11/06
C09J 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2液硬化型ポリウレタン樹脂接着剤が基材に塗布されて得られる接着剤層の膜厚の測定方法であって、
前記接着剤が、当該接着剤を構成するための反応には関与せず、赤外線の特定波長に吸収する官能基としてカルボニル基を有し、吸収強度が増減することにより膜厚の判定が可能となる化合物(A)を含有し、前記接着剤層に赤外線を照射することにより膜厚を判定することを特徴とする接着剤層の膜厚の測定方法。
【請求項2】
前記化合物(A)が、トリアセチン、プロピレンカーボネート、又はアセチルクエン酸トリブチルである請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記接着剤が、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物により構成されるポリウレタンを含有するものである請求項1又は2に記載の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着剤層の膜厚の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ドライラミネート法やノンソルラミネート法にて接着剤を基材に塗工した際に、製造ラインを止めずに目的の接着剤塗布量が塗布されているか確認する方法として、製造ラインに赤外分光光度計の原理を利用したオンライン塗布量計を設置してモニタリングする方法が行われている。例えば食品軟包装の分野で汎用される2液硬化型ポリウレタン樹脂接着剤を使用する際は、オンライン塗布量計で、塗工されたポリウレタン樹脂接着剤に赤外線を照射し、イソシアナート成分の塗布量の増減により変化する特定波長の反射率を演算し塗布量を算出している。
【0003】
このように、赤外線を用いた塗布量測定方法は公知の方法である(例えば特許文献1,2,3参照)。しかしながら該方法は、非反応性のポリウレタン樹脂接着剤のように、塗布量と特定波長の官能基由来の吸光度が比例関係にある接着剤では塗布量測定が可能であるが、2液硬化型ポリウレタン樹脂接着剤は、ポリオール成分とイソシアナート成分を混合した状態でフィルム等に塗布するため、測定中に反応が進行し塗布量精度に影響がでる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−164251号公報
【特許文献2】特開平06−129817号公報
【特許文献3】特開昭54−119948号公報
【特許文献4】特開昭52−77757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、2液硬化型ポリウレタン樹脂接着剤を赤外線により、より精度よく塗布量測定できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、塗布量の増減により吸光度が変化するが、接着剤を構成するための反応には関与せず、赤外線の特定波長に吸収する官能基を有し、吸収強度が増減することにより膜厚の判定が可能となる化合物(A)を、接着剤中に添加することで、前記課題を解決した。
【0007】
すなわち本発明は、接着剤が基材に塗布されて得られる接着剤層の膜厚の測定方法であって、接着剤を構成するための反応には関与せず、赤外線の特定波長に吸収する官能基を有し、吸収強度が増減することにより膜厚の判定が可能となる化合物(A)を含有し、接着剤層に赤外線を照射することにより膜厚を判定することを特徴とする接着剤層の膜厚の測定方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、塗布量が正確に測定できるので、品質の高い食品軟包装を安定して供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(化合物(A))
本発明の接着剤層の膜厚の測定方法は、膜厚を測定すべき接着剤層にあらかじめ接着剤を構成するための反応には関与せず、赤外線の特定波長に吸収する官能基を有し吸収強度が増減することにより膜厚の判定が可能となる化合物(A)を含有させておく。化合物(A)が有する赤外線の特定波長に吸収する官能基とは具体的にはカルボニル基である。カルボニル基は赤外線の1750cm−1で吸収し、膜厚が厚くなるほど吸収強度は強くなる。
カルボニル基を有する化合物(A)として具体的には、トリアセチン、プロピレンカーボネート、又はアセチルクエン酸トリブチルが挙げられる。中でも接着剤の可塑剤としても使用できる観点からトリアセチンが好ましい。
【0010】
前記化合物(A)は、接着剤層に5〜15質量%の範囲で含有されていることが好ましく、より好ましくは7.5〜12.5質量%の範囲である。この範囲で含有されていることで、汎用の赤外分光光度計で問題なく計測することが可能となる。なお本発明においては、日本分光株式会社製のFT/IR−6600の赤外分光光度計を使用した。なお本発明において使用する日本分光株式会社製の赤外分光光度計において、通常赤外線照射量は1750cm−1ある。
【0011】
(接着剤層の膜厚の測定方法)
前記化合物(A)を含む膜厚の測定方法は、通常以下のように測定される。
即ち、予め所定の塗布量で基材上に塗布した接着剤層に赤外線を照射し、測定されたカルボニル基(赤外線の1750cm−1)の吸光度と塗布量とから、検量線を作成する。該検量線を用いることで、実際の接着剤層の膜厚を測定する。
【0012】
本発明で使用する基材は、カルボニル基を含まない樹脂フィルムであることがこのましい。例えば、紙、オレフィン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリ塩化ビニリデンコートOPP(KOP)、ナイロン(NY)、ポリ塩化ビニリデンコートナイロン、ポリビニルアルコール、二軸延伸ポリスチレン(OPS)、銅箔、アルミニウム箔の様な金属箔等を挙げることが出来る。
【0013】
本発明において、前記接着剤層の膜厚の測定方法で使用する接着剤としては、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物により構成されるポリウレタン系接着剤が好ましく使用できる。以下、ポリウレタン系接着剤組成物について詳細に述べる。
【0014】
<ポリオール化合物>
本発明で使用するポリオール化合物は、特に限定はないが、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステル(ポリウレタン)ポリオール、ポリエーテル(ポリウレタン)ポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシルアルカン、ポリウレタンポリオール、ひまし油又はそれらの混合物から選ばれるポリマーポリオールを挙げることができる。
【0015】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のグリコール類若しくはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステルポリオール或いはポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0016】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分量ポリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。 ポリエーテルエステルポリオールとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と、上記ポリエーテルポリオールを反応させて得られるポリエーテルエステルポリオールが挙げられる。
【0017】
ポリエーテル(ポリウレタン)ポリオールとしては、1分子中にウレタン結合を有するポリオールであり、例えば、数平均分子量200〜20,000のポリエーテルポリオールと有機ポリイソシアネートとの反応物で、NCO/OHが1未満が好ましく、より好ましくは0.9以下のものを挙げることができる。
【0018】
ポリエステル(ポリウレタン)ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等と有機ポリイソシアネートとの反応物で、NCO/OHが1未満が好ましく、より好ましくは0.9以下のものを挙げることができる。
【0019】
ポリエステルアミドポリオールとしては、上記エステル化反応に際し、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアミノ基を有する脂肪族ジアミンを原料としてあわせて使用することによって得られる。
アクリルポリオールの例としては、1分子中に1個以上の水酸基を含むアクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロプル、アクリルヒドロキシブチル等、或いはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等と、例えばアクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルとを共重合することによって得られる。
【0020】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,8−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールAの中から選ばれた1種又は2種以上のグリコールをジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等との反応によって得られたものが挙げられる。
【0021】
ポリヒドロキシアルカンとしては、ブタジエン、又はブタジエンとアクリルアミド等と共重合して得られる液状ゴムが挙げられる。
中でも、ポリエーテル(ポリウレタン)ポリオールが特に好ましい。
【0022】
<ポリイソシアネート化合物>
本発明で使用するポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を分子内に少なくとも2つ有する有機化合物が挙げられる。
有機ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどのポリイソシアネート;これらのポリイソシアネートのアダクト体、これらのポリイソシアネートのビュレット体、または、これらのポリイソシアネートのイソシアヌレート体などのポリイソシアネートの誘導体(変性物)などが挙げられる。
【0023】
本発明で使用するポリイソシアネート化合物は、硬化剤として作用し適宜選択して用いることができるが、芳香族系であっても脂肪族系であってもよい。本発明で好ましく用いられるポリイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等のポリイソシアネート、を挙げることができる。
硬化剤は、ポリイソシアネート化合物(B)のみでも性能を発現するが、ポリイソシアネート化合物と後述するエポキシ樹脂とを積極的に併用することより、硬化塗膜により高度な耐加水分解性を付与することも出来る。
【0024】
また、本発明で使用するポリオール化合物として、ポリイソシアネートとビス(ヒドロキシアルキル)アミンの反応物であって末端にウレア結合基を有するものも好ましく用いることができる。
【0025】
前記ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との配合割合は、一般に、ポリオール化合物の固形分水酸基当量(a)とポリイソシアネート化合物の固形分イソシアネート当量(b)の当量比〔(a)/(b)〕が1.0〜5.0、より好ましくは2.0〜3.0である。製造の詳細は、実施例に記載した。
【0026】
本発明で使用する接着剤組成物には、必要であれば、前記以外のその他の添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、フィルムやコーティング膜などを形成する樹脂組成物に一般に使用されている添加剤などが挙げられる。添加剤としては、例えば、コロイド状シリカ;アルミナゾルなどの無機微粒子;ポリメチルメタクリレート系の有機微粒子;消泡剤;タレ性防止剤;シランカップリング剤;粘性調整剤;紫外線吸収剤;金属不活性化剤;過酸化物分解剤;難燃剤;補強剤;可塑剤;潤滑剤;防錆剤;蛍光性増白剤;無機系熱線吸収剤;防炎剤;帯電防止剤;脱水剤;などが挙げられる。
【0027】
本発明で使用する接着剤組成物は、通常、硬化剤であるポリイソシアネート化合物以外の各成分をあらかじめ配合した主剤プレミックスを調製しておき、これとポリイソシアネート化合物とを混合して調製することが出来る。
【0028】
また、本発明で使用する接着剤組成物を塗布した積層体は、作製後エージングを行うことが好ましい。エージング条件は、室温〜100℃で、12〜240時間の間であり、この間に硬化反応が進行する。
【0029】
更に、接着性及び硬化を促進する目的でエポキシ基含有化合物を配合されている場合もあり、エポキシ基含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アクリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノールグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルメタクリレート、ブチルグリシジルエーテル等の化合物や、エポキシ基を含有した分子量が数百から数千のオリゴマーや重量平均分子量が数千から数十万のポリマーを配合されているケースもある。
【0030】
<触媒>
本発明では、ウレタン化反応を促進するための触媒を用いることができ、例えば、例えば、金属系、アミン系、DBU系、又は脂肪族環状アミド化合物・チタンキレート錯体等の触媒を用いることができる。
【0031】
<その他の添加剤>
本発明では、その他の添加剤として、公知慣用の熱可塑性エラストマー、粘着付与剤、燐酸化合物,メラミン樹脂、又は反応性エラストマーを用いることができる。これらの添加剤の含有量は、本発明の接着剤の機能を損なわない範囲内で適宜調整して用いることができる。
【0032】
<フィルム>
本発明で使用するフィルムとしては、前述の通りカルボニル基を含まないフィルムであり、例えば、紙、オレフィン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリ塩化ビニリデンコートOPP(KOP)、ナイロン(NY)、ポリ塩化ビニリデンコートナイロン、ポリビニルアルコール、二軸延伸ポリスチレン(OPS)、銅箔、アルミニウム箔の様な金属箔等を挙げることが出来る。
【0033】
フィルムと硬化塗膜との密着性を向上させるために、フィルムの硬化塗膜を形成する方の面に表面処理を行ってもよい。この表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、火炎処理、放射線処理等が挙げられる。
【0034】
本発明で使用する接着剤組成物は、例えば、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族系炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素等の、本発明で使用するポリイソシアネート(A)やポリオール(C)を溶解することの可能な溶解性の高い有機溶剤または分散剤に任意の割合で溶解/分散させて、ダイコート、リップコート、グラビアコート、ダイレクトリバースグラビアコート、キスリバースグラビアコート、ノンソルコート、ロールコート、リバースコート、ナイフコート、ドクターコート、エクストルージョンコート、スライドコート、ワイヤーバーコート、押出コート等の公知の塗布方式を用いて接着層を形成することができる。
また、本発明で使用する接着剤組成物は、イソシアネート基と水酸基との化学反応によって硬化する接着剤であり、本発明で使用するポリイソシアネート(A)やポリオール(C)を溶解することの可能な溶解性の高い有機溶剤を含まない無溶剤型の接着剤として使用することができる。
【0035】
前記フィルムへの塗布量は、特に制限されるものではないが、例えば、0.5〜20g/m、中でも1〜10g/mの範囲から選択することが、少量で優れた耐候性等が付与できる点で好ましい。
本発明では、塗布重量が、0.5g/mを下回ると連続均一塗布性に難点が生じ、一方、20.0g/mを越えると塗布後における溶剤離脱性も低下し、作業性が著しく低下する上に残留溶剤の問題が生じる。
【0036】
本発明で使用する接着剤組成物を塗工後、プラスチック層を重ねてドライラミネーション(乾式積層法)により貼り合わせることで、積層体が得られる。ラミネートロールの温度は室温〜120℃程度、圧力は、3〜300kg/cm程度が好ましい。
また前記積層体は、作製後エージングを行うことが好ましい。エージング条件は、好ましい温度は25〜80℃、時間は12〜240時間であり、この間に接着強度が生じる。また前記積層体は、例えば包装用積層層体として用いることができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により、具体的に本発明を説明する。
【0038】
(接着剤組成物Aの製造方法)
芳香族系ポリエーテルイソシアネート2K−SF−380A(DIC株式会社製)とPPG―4000(三井化学ポリウレタン株式会社製:数平均分子量4,000のポリプロピレングリコール)を10:7で配合した接着剤に、接着剤中10質量%になるようにトリアセチン(株式会社ダイセル製)を配合し、接着剤組成物Aを得た。
【0039】
(比較例用接着剤組成物Hの製造方法)
接着剤組成物Aの製造方法において、トリアセチン(株式会社ダイセル製)を配合しない以外は接着剤組成物Aと同様にして、比較例用接着剤組成物Hを得た。
【0040】
(検量線の作成方法)
基材としてCPPフィルム(無軸延伸ポリプロピレン 膜厚20μm)上に、所定の塗布量となるように前記接着剤用組成物Aを塗布した検量線用フィルムを、赤外分光光度計にて1750cm−1付近のピークの吸光度を測定し、検量線を作成した(図1参照)。また、比較例用接着剤組成物Hも同様に基材としてCPPフィルム(無軸延伸ポリプロピレン 膜厚20μm)上に、所定の塗布量となるように塗布した検量線用フィルムを、赤外分光光度計にて2250cm−1付近のイソシアナート基由来ピークの吸光度を測定し、検量線を作成した。
【0041】
それぞれのピークから得られる検量線データを用いて、接着剤配合後の経時での塗布量の測定精度の評価結果を表1に示した。
【0042】
(判定方法)
CPPフィルム(無軸延伸ポリプロピレン 膜厚20μm)上に接着剤を実測値1.5g/mを塗布したフィルムを室温で3時間後、12時間放置後に赤外分光光度計で得られた検量線を用いて塗布量を判断した。実測値と、検量線による塗布量との誤差の数値により、◎〜△で評価した。
評価◎:塗布量実測値(1.5g/m)と比較して、検量線判断の塗布量が1.5g/m±0.1以内である。
評価○:塗布量実測値(1.5g/m)と比較して、検量線判断の塗布量が1.5g/m±0.2以内である。
評価△:塗布量実測値(1.5g/m)と比較して、検量線判断の塗布量が1.5g/m±0.5以内である。
【0043】
【表1】
【0044】
この結果、実施例の接着剤組成物Aは、比較例の接着剤組成物Hと比較し接着剤の反応に寄与せず、塗布後時間が経過した後の測定であっても、実測値に近い値の塗布量を測定することができることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】実施例で得た接着剤組成物Aの検量線である。
図1