(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6887507
(24)【登録日】2021年5月20日
(45)【発行日】2021年6月16日
(54)【発明の名称】誘電体キャリアを備えるパワーエレクトロニクスモジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20210603BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20210603BHJP
H01L 25/18 20060101ALI20210603BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H01L25/04 C
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-540655(P2019-540655)
(86)(22)【出願日】2018年1月29日
(65)【公表番号】特表2020-505777(P2020-505777A)
(43)【公表日】2020年2月20日
(86)【国際出願番号】FR2018050197
(87)【国際公開番号】WO2018142053
(87)【国際公開日】20180809
【審査請求日】2019年9月20日
(31)【優先権主張番号】1750774
(32)【優先日】2017年1月31日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517202755
【氏名又は名称】スーパーグリッド インスティテュート
(73)【特許権者】
【識別番号】596096180
【氏名又は名称】ユニベルシテ・クロード・ベルナール・リヨン・プルミエ
(73)【特許権者】
【識別番号】502261956
【氏名又は名称】エコール セントラル ドゥ リヨン
(73)【特許権者】
【識別番号】513023066
【氏名又は名称】アンスティトゥー ナショナル デ サイエンシーズ アプリーク ドゥ リヨン
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ブティ シリル
【審査官】
多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−112967(JP,A)
【文献】
特開2013−069607(JP,A)
【文献】
特開2015−231013(JP,A)
【文献】
特開2001−308237(JP,A)
【文献】
特開2006−196853(JP,A)
【文献】
特開2001−206931(JP,A)
【文献】
特開2005−243824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/34−23/473、25/00−25/18、
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続導体(6、7)に接続された少なくとも1つの半導体(5)を含むパワーエレクトロニクスモジュール(1)であって、
前記接続導体(6)の少なくとも1つが取り付けられる固定層(9)と、可動層(11)の両方を有し、前記固定層(9)及び前記可動層(11)は同様の誘電率を示し、少なくとも1つの前記接続導体(6)に向かい合う少なくとも1つの面に沿って重ねられる誘電体キャリア(10)を含むことを特徴とする、
モジュール。
【請求項2】
前記可動層(11)の誘電率と前記固定層(9)の誘電率との差が、前記固定層(9)の誘電率の50%より小さいことを特徴とする、
請求項1に記載のモジュール。
【請求項3】
前記可動層(11)の誘電率と前記固定層(9)の誘電率との差が、前記固定層(9)の誘電率の20%より小さいことを特徴とする、
請求項2に記載のモジュール。
【請求項4】
前記半導体及び前記接続導体(6、7)の周囲に配置されたフィラーゲル(26)をさらに含み、該フィラーゲル(26)の誘電率は前記固定層(9)の誘電率と類似していることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項5】
前記可動層(11)は、テクスチャー化された接触界面に沿って前記固定層(9)と接触することを特徴とする、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項6】
前記可動層(11)の導電率が前記固定層(9)の導電率と同等であることを特徴とする、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項7】
前記固定層(9)の絶縁耐力及び前記パワーエレクトロニクスモジュール(1)の最大電圧を考慮して、前記固定層(9)の厚さが絶縁の臨界厚さよりも小さいことを特徴とする、
請求項1〜6のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項8】
前記固定層(9)の厚さと前記可動層(11)の厚さとの合計が、絶縁の前記臨界厚さよりも大きいことを特徴とする、
請求項7に記載のモジュール。
【請求項9】
前記固定層(9)は誘電体セラミック基板から構成されることを特徴とする、
請求項1〜8のいずれか1項に記載のモジュール。
【請求項10】
前記可動層(11)が誘電性流体から構成されることを特徴とする、
請求項1〜9のいずれか一項に記載のモジュール。
【請求項11】
前記可動層(11)の誘電性流体は、前記固定層(9)の全領域にわたって広がるチャンバ内に含まれ、前記固定層(9)及び前記可動層(11)は重なり合う同一の面積を有することを特徴とする、
請求項10に記載のモジュール。
【請求項12】
前記可動層(11)の流体は、少なくとも1つの前記接続導体(6)に向かい合う領域のみに広がる少なくとも1つのより小さいチャンバ(25)内に収容され、
前記固定層(9)及び前記可動層(11)は、少なくとも1つの前記接続導体(6)に向かい合う面全体にわたって重ねられることを特徴とする、
請求項10に記載のモジュール。
【請求項13】
前記チャンバは、流体の移動性が対流によって提供される密閉チャンバであることを特徴とする、
請求項11又は12に記載のモジュール。
【請求項14】
前記チャンバは、冷却回路に接続されていることを特徴とする、
請求項11又は12に記載のモジュール。
【請求項15】
前記可動層(11)の流体の沸騰温度は、動作中の前記パワーエレクトロニクスモジュール(1)の温度よりも低く、二相冷却を提供することを特徴とする、
請求項10〜14のいずれか1項に記載のモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーエレクトロニクスの分野に関し、より詳細には、高電圧が放熱及び電気絶縁に関して制約をもたらすスイッチングパワー回路に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧は、具体的には、動作時にパワーコンポーネントによって生成される熱を放散する必要性と、電位の実質的な違いにさらされる要素を電気的に絶縁する必要性の両方に関連する問題につながる。
【0003】
パワーエレクトロニクスの目的は、最大効率で電気エネルギーの表示を変更することである。これは、特に、ACからDCへの変換(整流回路)、DCからACへの変換(インバータ回路)、AC電圧のRMS値の変更(調光回路)、DC電圧の平均値の変更(チョッパー回路)又は、AC電圧の周波数の変更(サイクロコンバータ回路)の形式を取る。
【0004】
この分野では、通常、接続端子が取り付けられ、接続導体によって接続端子に接続される1つ以上のパワー半導体を含む、ハウジングの形状をとるパワーエレクトロニクスモジュールが用いられるのが一般的である。パワー半導体は、高電圧、電流及び/又はスイッチング周波数レベルで動作するため、熱を放出する。結果として生じる加熱は相当なものであり、パワーエレクトロニクスモジュールが正しく安全に動作するように、アクティブ又はパッシブの放熱デバイスを設ける必要がある。さらに、高電圧の場合、接続導体間に実質的な電位差が生じる。このため、電気アークの形成、さらにはモジュールの破壊を防ぐために電気絶縁が必要である。
【0005】
放熱と電気絶縁の問題を解決するために一般的に用いられる解決策は、電気絶縁体であり、十分な熱伝導特性を示す、通常セラミック製のキャリア基板に各半導体とその接続導体を取り付けることである。さらに、セラミックは冷却装置と接触し、放散される熱が、受け取った熱を熱伝達流体(空気、水、又は他の流体)に放散する冷却装置に到達するまでセラミックを通して拡散される。
【0006】
とりわけ、エネルギー源の急増、特に再生可能エネルギーの生産、及びこれらのエネルギーのグリッドへの接続に関して、新たな問題が生じている。風力タービン(交流)又は太陽光パネル(直流)などの異種ソースからのエネルギーの生産には、配電網内で交流を直流に、又はその逆に変換するためのステーションの導入が必要である。さらに、このエネルギーの分配には、例えば、高圧直流送電用のネットワークを提供するなど、グリッド自体の再設計が必要である。これは、特に、新たな目的で、パワーエレクトロニクスモジュールが電気ネットワークに導入されたり、高電圧での絶縁に関するより困難な直流のスイッチングが引き起こされる。これらの新しい制約に加えて、アプリケーションの分野全体に適用される、パワーエレクトロニクスモジュールの寸法を縮小する方向、及び/又は、そこに含まれる半導体の密度を増加させる方向に継続的な傾向がある。
【0007】
これらの新たな問題では、パワーエレクトロニクスモジュールの放熱能力を改善すると同時に、電気絶縁性を改善する必要がある。
【0008】
例えば、アルミニウム又は窒化ホウ素などのキャリア基板を製造するために先行技術で用いられるセラミックは、パワーエレクトロニクス産業と互換性のあるコストで、熱伝導性(放熱用)及び電気絶縁性の点で優れている。導電性と絶縁性の両方の点でこれらのセラミックよりも優れた性能を発揮する材料があるが、これらは、エレクトロニクス用途(ダイヤモンドなど)を除いて法外に高価であるか、これらの用途(酸化ベリリウムなど)を除いて有毒であるか、環境的危険を表す。
【0009】
従って、従来技術のパワーエレクトロニクスモジュールの電気絶縁性を改善するための一般的な解決策は、厳しい条件にさらされる場合のキャリア基板の厚さを増加させることにある。しかし、熱は熱伝達流体によって引き出される前に、まずより厚い基板を通過しなければならないため、この厚さの増加は放熱能力の減少にもつながる。基板材料の熱伝導率は高いものの、理想とはほど遠いものであり、その厚さを再び調整することは、放熱機能と電気絶縁機能のトレードオフになる。一方を促進することは他方を損なうことになる。
【0010】
特許第8432030号明細書は、第2冷却装置によってモジュールの放熱能力を増加させることにより、この問題が軽減される、パワーエレクトロニクスモジュールを開示している。この解決策は、半導体のキャリア基板と相互作用する従来の冷却装置を提案し、さらに半導体の反対面に作用する第2冷却装置を提案する。冷却手段を2倍にすると、数学的に言えば、放熱が向上するが、より複雑で、高価で、コンパクトではない解決策になる。
【0011】
欧州特許第2277365号明細書は、2つの冷却装置が半導体の両側に作用する、前述のものと同様の解決策を実装するパワーエレクトロニクスモジュールを冷却するためのシステムを開示している。また、熱伝達流体として二相流体を用いることにより、放熱能力が向上する。二相流体は沸点が低いため、冷却される要素と接触すると液体状態から気体状態に移行し、相変化により冷却性能が向上する。この解決策も同様に、モジュールの冷却能力を向上させるが、その代償として複雑さが増す。
【0012】
上記のような従来技術の様々な冷却モジュールでは、電気絶縁に関して性能の向上を必要とする厳しい条件は、キャリア基板の厚さの増加をもたらし、その結果、冷却性能の低下をもたらす。この低下は、上記のより複雑な冷却装置によってその後軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第8432030号明細書
【特許文献2】欧州特許第2277365号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、先行技術のパワーエレクトロニクスモジュールを改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的のために、本発明の主題は接続導体に接続された少なくとも1つの半導体を含み、前記接続導体の少なくとも1つが取り付けられる固定層と、可動層の両方を有し、前記固定層及び前記可動層は同様の誘電率を示し、少なくとも1つの前記接続導体に向かい合う少なくとも1つの面に沿って重ねられる誘電体キャリアを含む、パワーエレクトロニクスモジュールである。
【0016】
材料の誘電率は、ボルト及びメートルあたりのクーロン(C.V
−1.m
−1)又はメートルあたりのファラッド(F.m
−1)で表される材料の誘電率により、この材料に対する電界の影響を測定することができる。この誘電率は、「比誘電率」又は「材料の誘電率」と呼ばれる無次元量として表現することもできる。これは、問題の材料の誘電率を得るために真空の誘電率を乗じる係数である。
【0017】
固定層と可動層の誘電率が同じであるという特徴は、固定層の誘電率と可動層の誘電率が、重ね合わせたこれら2つの層によって形成されるアセンブリに十分近い値を取ることを意味し、電界にさらされたときに均一な振る舞いを示すため、電位勾配を誘電体キャリアの厚さ全体に均一に分布させることができる。従って、固定層の誘電率と可動層の誘電率は、この均一な振る舞いを可能にするのに十分であるか、又は等しい。ブレークダウン効果、より一般的には、高電圧下でのモジュールの劣化の影響は、例えば鋭角で形成されるピーク電位の領域で促進される。逆に、電位勾配の均一な分布により、これらの影響を回避できる。
【0018】
1つの好ましい特徴によれば、前記可動層の誘電率と前記固定層の誘電率との差が、前記固定層の誘電率の50%より小さい、さらには20%より小さい場合、キャリアの誘電率の誘電層のそれぞれの誘電率は類似しているといわれる。
【0019】
誘電体キャリアを層状に配置し、誘電率を均一化することにより、誘電体キャリアが電界にさらされたときに電位勾配を最適に分布させることができるため、固定層の厚さに関係なく誘電体キャリアの電気絶縁能力が向上し、この層は熱交換を促進するようにサイズ調整される、すなわち薄くされ得る。
【0020】
本発明は、一方を増やしても他方が損なわれないように、冷却に関する性能と電気絶縁に関する性能の非相関化を提案するため、技術分野における一般的な推論に反する。従来技術のキャリア基板及び冷却装置の機能は、ここでは、同一の誘電体キャリアによって実行され、その2つの層は、一方が固定で、他方が可動であり、それぞれ冷却及び絶縁機能の両方に関与しており、これらの機能が競合することはない。
【0021】
さらに、特に絶縁される電圧が連続的である場合、別の物理的特性が材料の電界分布に役割を果たす。その導電率である。別の特徴によれば、パワーエレクトロニクスモジュールは、同等の導電率を示す固定層と可動層を有してもよい。絶縁体の導電率は大きく異なるため(10
−8〜10
−20S.m
−1)、固定層と可動層の導電率は、それらが10の比率内にある場合、つまり最高の導電率が最低の導電率の10倍低い場合に、同等であると見なされる。
【0022】
パワーエレクトロニクスモジュールには、個別に又は組み合わせて、以下の追加機能が含まれ得る。
−パワーエレクトロニクスモジュールは、半導体及び接続導体の周囲に配置されたフィラーゲルをさらに含み、該フィラーゲルの誘電率は固定層の誘電率と類似している。
−可動層は、テクスチャー化された接触界面に沿って固定層と接触する。
−固定層は誘電体セラミック基板から構成されている。
−可動層は誘電性流体から構成されている。
−可動層の誘電性流体は、固定層の全領域にわたって広がるチャンバ内に含まれ、固定層及び可動層は重なり合う同一の面積を有するか、あるいは、前記可動層の流体は、少なくとも1つの接続導体に向かい合う領域のみに広がる少なくとも1つのより小さいチャンバ内に収容され、固定層及び可動層は、少なくとも1つの接続導体に向かい合う面全体にわたって重ねられる。
−1つ又は複数のチャンバは、流体の流動性が自然対流によって提供される密閉チャンバであるか、又は、代わりに、前記1つ又は複数のチャンバは冷却回路に接続される。
−可動層の流体の沸騰温度は、二相冷却を提供するために、動作中のパワーエレクトロニクスモジュールの温度よりも低い。
【0023】
固定層の材料が何であれ、本発明は、絶縁の必要性が増大した場合でも、その厚さを薄くすることを可能にし、ここで「絶縁体の臨界厚さ」と呼ばれる、そのブレークダウン電圧によって決定される最小厚さを下回るまで、この厚さを減少させることを可能にする。例えば、誘電体キャリアの固定層に使用されるセラミックのブレークダウン電圧が25kV/mm(通常の安全係数を含む)である場合、25kVを対象とするモジュールの絶縁体の臨界厚さは1mmになる。この場合、固定層の厚さが1mm未満になる可能性がある。固定層の絶縁作用は、必要なレベルに到達するために、固体であろうと流体であろうと、材料に関係なく、可動層によって補完される。
【0024】
したがって、固定層の絶縁耐力とパワーエレクトロニクスモジュールの最大電圧、つまり接続導体に印加され得る最大電圧を考慮すると、固定層の厚さは、絶縁体の臨界厚さよりも小さくなり得るが、固定層の厚さと可動層の厚さの合計は、絶縁体の臨界厚さよりも大きい。
【0025】
本発明の1つの好ましい例示的な実施形態を、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明係るパワーエレクトロニクスモジュールの断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のパワーエレクトロニクスモジュールの上面図である。
【
図3】
図3は、ハウジングのない
図1のパワーエレクトロニクスモジュールの上面図である。
【
図4】
図4は、
図1のパワーエレクトロニクスモジュールの底面図である。
【
図5】
図5は、
図1のパワーエレクトロニクスモジュールの伝熱流体回路を概略的に示している。
【
図6】
図6は、
図1のいくつかの要素の部分断面図であり、誘電体キャリア内の電位分布を示している。
【
図7】
図7は、従来技術のパワーエレクトロニクスモジュールの、
図5と同様の図である。
【
図8】
図8は、本発明に係るパワーエレクトロニクスモジュールの一変形実施形態の底面図である。
【
図9】
図9は、
図8の変形例に係るパワーエレクトロニクスモジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1〜4は、本発明によるパワーエレクトロニクスモジュール1を示している。それは、モジュール1を接続するための第1端子3と第2端子4が取り付けられたハウジング2を含む。説明を簡単にするため、パワーエレクトロニクスモジュール1は、2つの端子3、4と、2つのポールを備える、単一の半導体5を含む単純なモジュールである。
【0028】
図2の上面図は、モジュール1を意図する回路に電気的に接続するためにハウジング2の外側からアクセス可能な2つの端子3、4を示している 第1端子3及び第2端子4は、モジュール1内で、それぞれ第1接続導体6及び第2接続導体7に接続されている。本例では2つのポールを有する半導体5は、接続導体6、7のそれぞれに接続される。従って、半導体5は、その面の1つがはんだ付けワイヤ8を介して第1接続導体6に接続されて、その第1極の接合部を形成し、その反対面が第2接続導体7にはんだ付けされて、第2極の接合部を形成する。
【0029】
2つの接続導体6、7は、この例では、ハウジングのないモジュール1の上面図である
図3に示すように2つの銅の長方形である。これら2つの接続導体6、7は、誘電体キャリア10の固定層9上に取り付けられ、誘電体キャリア10は、固定層9の下に可動層11も含む。可動層11は、明瞭にするためにハッチングされている。誘電体キャリア10の固定層9と可動層11は、この例では平行六面体であり、その厚さは
図1で見ることができ、その長さと幅は
図4で見ることができる(ハウジングのないモジュール1を示す
図4の底面図、誘電体キャリア10はハッチング領域を占有する)。
【0030】
固定層9は、半導体5の機械的支持及び取り付けを提供し、また、半導体5から発せられる熱を可動層11に熱伝導する。それは、接続導体6、7間の電気絶縁にも寄与するが、部分的にのみである。
【0031】
従って、固定層9の厚さは、電気絶縁の必要性に左右されることなく、半導体5に機械的強度を提供するのにちょうど十分であり得る。具体的には、以下で説明するように、可動層も絶縁耐力に関与していることを考えると、この厚さは、モジュール1が特定の電圧に接続されたときに必要な絶縁耐力を提供するのに十分ではない場合がある。
【0032】
可動層11は、その一部として、モジュール1内の電気アークを防止する電気絶縁を提供又は補完し、また固定層9から受け取った熱を除去する。
【0033】
可動層11の電気絶縁機能は、固定層9と直接接触するこの層を通して、及びその構成材料の選択を通じて実行され、電場効果への反応におけるその特性は、固定層9のそれらと類似しており、これは、固定層9の誘電率が可動層11の誘電率と類似していることを示している。固定層9と可動層11は、コヒーレント絶縁体を形成し、その総厚は回路に接続されている端子3、4を介してモジュール1に印加される所定の電圧に必要な絶縁耐力に応じて十分なサイズにする。誘電体キャリア10の全体の厚さは、固定層9と可動層11を合わせた厚さに相当する。
【0034】
一変形例(図示せず)によれば、可動層は、テクスチャー化された接触界面に沿って固定層と接触する。従って、固定層は、固定層と可動層の連結を促進するために、フィン状、シケイン状、又は他のパターン化されたテクスチャーを有してもよい。
【0035】
他の変形例によれば、可動層11の材料の導電率は、固定層9の熱伝導率にさらに匹敵し、誘電体キャリア10の厚さ全体にわたる電界の分布も促進する。従って、固定層9及び可動層11の導電率はここでは10倍以内である。
【0036】
本実施例では、可動層11を生成するために選択された材料は、固定層9とハウジング2(
図1を参照)によって画定されるチャンバ内に含まれる誘電性流体である。可動層11は、固定層9の全領域にわたって広がり、固定層9及び可動層11は、同一の面積を有し、この全領域にわたって重ねられている。熱除去機能は、熱の除去を可能にする流体の流れを設定する冷却回路に接続された流体入口12及び流体出口13を介して移動する可動層11によって実行される。
【0037】
そのような冷却回路21が
図5に示されている。可動回路11を形成する流体が流れることにより、パワーエレクトロニクスモジュール1から熱を除去することができる。図示された例では、冷却回路21はタンク22及び必要な数のパワーエレクトロニクスモジュール1を通して流体が流れることを可能にするポンプ23を含む。実際、複数のモジュール1を含む設備に対して単一の冷却回路21を設けることができる。従って、
図5のパワーエレクトロニクスモジュール1A、1B、1C、1D、1E、1Fは、同じ流体を利用して、それぞれの可動層11を形成する。これらのパワーエレクトロニクスモジュール1A、1B、1C、1D、1E、1F間の点線の接続は、流体が直列及び/又は並列に接続されたモジュールを通って流れることを示している。
【0038】
さらに、流体は二相挙動を示すように選択することができ、この場合、冷却回路21は凝縮器24を含む。そのような二相流体の沸騰温度は、パワーエレクトロニクスモジュール1A、1B、1C、1D、1E、1Fで受ける温度よりも低い。従って、流体は、液体状態でポンプ23を出て、パワーエレクトロニクスモジュール1A、1B、1C、1D、1E、1Fで少なくとも部分的に気化され、その後、凝縮器24で液体状態に戻る。この場合、パワーエレクトロニクスモジュール1の可動層11は、流れる液体、気体、又は2つの組み合わせからなる。
【0039】
代替的に、流体は、冷却回路21なしで可動層11を画定するチャンバ内に閉じ込められたままであり、自然対流によって流体の動きが生じ、より高温である固定層9に近接する流体とより低温である固定層9からさらに離れた流体間の動きが生じるようにしてもよい。流体のこの内部運動は、放熱の要件が制限されている場合、すなわち、加熱が少ない半導体5の場合、可動層11を運動させるのに十分である。
【0040】
いずれにしても、冷却は、ハウジング2の放熱フィンなど、放熱を高めるための既知の追加機能によって強化される。
【0041】
1つの代替案(図示せず)によれば、流体可動層11の代わりに、可動層11は、固定層9に対する運動が与えられる材料の可撓性又は剛性ストリップの形態で製造されてもよい 材料のこのストリップが固定層9に対して移動すると、熱が除去される。
【0042】
従って、可動層11は、固体、液体又は気体、剛性又は可撓性材料、又はそれらの組み合わせから構成されてもよい。可動層11の構成が何であれ、それは、誘電体キャリア10が半導体17によって生成された熱を除去することを可能にするように、固定層9に対して移動している。
【0043】
さらに、可動層11の構成材料の誘電率は、固定層9の構成材料の誘電率と同程度である。この例では、固定層9を形成するために選択される材料は窒化アルミニウムであり、比誘電率は これは8.5に等しく、可動層11を形成するために選択された材料はフルオロケトン流体であり、その比誘電率は7に等しい。従って、固定層9と可動層11の誘電率の値の差は、固定層9の誘電率の20%を超えない。あるいは、この差は、固定層9の誘電率の50%に達し得る。従って、誘電体キャリア10は、誘電率に関して均一なセットを形成し、電界の存在下で均一な挙動を示す。
【0044】
パワーエレクトロニクスモジュール1は、半導体5及びその接続部が浸漬される誘電性フィラーゲル26を任意選択で含むことができる(ゲル26は
図1に示されている)。ゲル26の材料は、誘電体キャリア10とゲル26によって形成されるアセンブリが電界の存在下で均一な挙動を示すように、誘電率が固定層11の誘電率と同程度になるように選択され得る。従って、固定層9及び可動層11の誘電率に関してコヒーレントアセンブリを有することの利点は、固定層9、可動層11及びゲル26によって形成されるアセンブリに拡張され得る。上記のように、それらの差が固定層9の誘電率の20%、あるいは50%を超えない場合、ゲル26の誘電率は固定層9の誘電率と同程度であると言われる。
【0045】
図1と同様の
図6の図は、誘電体キャリア10内の電位分布を概略的に示している。この例では、パワーエレクトロニクスモジュール1は、第1端子3、従って第1接続導体6がゼロ電位であり、一方、第2端子4、従って第2接続導体7が高電位、例えば5000V DCであるように、接続されていると仮定する。
【0046】
パワーエレクトロニクスモジュール1の構成材料には、電位が0の要素(
図6にハッチングで示す)と電位が5000Vの要素(
図6にハッチングなしで示す)の間に電位勾配が生じる。誘電体キャリア10の電位勾配は、
図6にグラデーションで示されており、最暗いから最明への遷移は、最高電位(5000V)から最低電位(0V)への遷移を表す。パワーエレクトロニクスモジュール1は、2つの層9、11で生成されるにも拘わらず、誘電率に関して均一なアセンブリを形成し、電位勾配のこのような均一な分布にとって好ましい、誘電体キャリア10の厚さ全体に電位勾配を分布させることで、電位を最適に拡散させる。
【0047】
図7は、
図6と同様の図であるが、代わりに従来技術のパワーエレクトロニクスモジュール14を示している。
図6及び
図7により、本発明及び従来技術に係る電位分布を比較することができる。
図7を参照すると、従来技術のパワーエレクトロニクスモジュール14は、第1接続導体15及び第2接続導体16に接続された半導体17を含む。これらの接続導体15、16は、反対側の面に冷却装置19が設けられた絶縁キャリア基板18に取り付けられている。銅製の熱ブリッジ20は、キャリア基板18を、(
図7に示すように)受動的又は(冷却装置19を通って流れる熱伝達流体により)能動的であり得る冷却装置19に熱的に接続する。
【0048】
上記と同じ条件下(0Vの電位の第1接続導体15及び5000V DCの電位の第2接続導体16)で、電位勾配は、従来技術を示すこの
図7のグラデーションで同様に表される。キャリア基板18は、半導体17と冷却装置19との間で放散される熱を伝導し、接続導体15、16にすべての電気絶縁を提供するという二重の機能を実行する。従って、電位は、キャリア基板18の厚さ全体にのみ分配され得る。キャリア基板18のベースが熱ブリッジ20と接触する正確な位置では、電位は0の値まで低下しているに違いない。
【0049】
従来技術を示すこの
図7は、比較により、
図6に示される本発明により可能になる、厚さ全体にわたる電位の有利な分布を強調することを可能にする。
【0050】
図8及び
図9は、本発明に係るパワーエレクトロニクスモジュールの可動層の一変形実施形態に関する。これらはそれぞれ
図4及び1に類似しており、対応する要素には同じように符号が付されている。
【0051】
この変形実施形態によるパワーモジュール1はまた、第1接続導体6及び第2接続導体7に接続される半導体5を含み、アセンブリ全体は、固定層9及び可動層11からなる誘電体キャリア10に取り付けられる。変形実施形態は、可動層11を特に対象とし、これは、ここでは第1接続導体6に向かい合う面に限定される。
図8は、ハウジング2なしで概略的に示されるパワーエレクトロニクスモジュール1の底面図であり、第1接続導体6及び第2接続導体7の輪郭を破線で示す。エンクロージャ25は、可動層11によって占有されるチャンバを画定し、このチャンバは、第1接続導体6の輪郭に面する領域全体にわたって広がる(
図8参照)。このようにして、固定層9と可動層11は、接続導体6に向かい合って重ね合わされる(
図9参照)。言い換えれば、第1接続導体6によって規定される輪郭の外側では、誘電体キャリア10は固定層9からなる1つの層のみを有し、この輪郭の内側では、誘電体キャリア10は重ね合わせた固定層9及び可動層11からなる。流体入口12及び流体出口13は、流体がエンクロージャ25に導かれるように対応して配置される。
【0052】
図8及び9の変形例に係る誘電体キャリア10の配置は、
図6の例のそれに匹敵する方法での接続が意図されており、すなわち、第2接続導体7が0電位であり、第1接続導体6が高電位である。そして、電位は、
図6に示されているのと同様の方法で、誘電体キャリア10の両方の層9、11にわたって分配される。
【0053】
図8及び9の変形実施形態のように、誘電体キャリアは、単一の拡張固定層と、電位の分配のためのスペースを提供する必要がある、1つ又は複数の接続導体に向かい合って配置された1つ又は複数のより小さな可動層で構成することができる。
【0054】
パワーエレクトロニクスモジュールの他の変形実施形態は、本発明の範囲から逸脱することなく実施され得る。例えば、固定層9及び可動層11の形状は、理解を容易にするためにここで説明した単純な長方形よりも複雑であり、同じことが接続導体6、7にも当てはまる。さらに、ここに示した簡単な例に加えて、パワーエレクトロニクスモジュール1は、複数、又は非常に多くの接続導体6、7及び対応する半導体を含むことができ、これらは、例えばパワートランジスタ、パワーサイリスタ、パワーダイオードレギュレーター、コントローラー、アンプなどであり得る。