(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
風車部を上下方向に並べて設置したマルチロータ式風力発電装置では、上段の風車部と、下段の風車部とでは、設置高度が異なる。風は、地表の凹凸による摩擦で減速するので、地表から離れた上空を吹く風は、摩擦の影響が抑制され、速度が速くなることから、設置高度が異なる上段の風車部と、下段の風車部とでは導入される風の風速が異なる。
ところで、マルチロータ式風力発電装置は、出力の増大等の目的から、近年、大型化が進んでいる。風車部を上下方向に並べて設置したマルチロータ式風力発電装置では、大型化するに従い、上段の風車部と、下段の風車部の高度の差がより大きくなる。これに伴い、上段の風車部に導入される風の風速と、下段の風車部に導入される風の風速の差も大きくなる。
【0007】
特許文献1のマルチロータ式風力発電装置では、上下方向に並べて設置した風車部のロータ直径が同一となっている。このような風力発電装置では、導入される風の風速の違いから、風を受けた際に、上側に配置された風車部の方が、下側に配置された風車部よりも大きいスラスト力が発生することとなる。これにより、風車部を支持するタワー部の基部に大きなモーメントが発生し、タワー部の基部に過大な荷重が作用し、タワー部に作用する応力が増大してしまう可能性がある。風力発電装置が大型化すると、その傾向はより顕著なものとなる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、タワー部に作用する応力の増大を抑制することができる風力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の風力発電装置は以下の手段を採用する。
本発明の一態様に係る風力発電装置は、タワー部と、ロータ軸と、前記ロータ軸に設けられた翼と、前記ロータ軸の回転力によって発電する発電機とをそれぞれ有する複数の風車部と、前記タワー部と接続され、前記風車部を支持する支持部材と、を備える風力発電装置であって、複数の前記風車部は、第1風車部と、該第1風車部よりも下方に位置する第2風車部とを有し、前記第1風車部のロータ直径は、前記第2風車部のロータ直径よりも短い。
【0010】
風は、地表の凹凸による摩擦で減速する。そのため、地表から離れた上空を吹く風は、摩擦の影響が抑制され、速度が速くなる。
上記構成では、上方に位置する第1風車部のロータ直径が、第2風車部のロータ直径よりも小さい。このように、速度が速い風を受ける第1風車部のロータ直径が第2風車部のロータ直径よりも小さいので、第1風車部のロータ直径を第2風車部のロータ直径に合わせた長さとした構成と比較して、第1風車部に作用するスラスト力が低減する。上方に位置する第1風車部に作用するスラスト力が低減することで、タワー部の基部(すなわち、タワーの下端部)において生じるモーメントが小さくなり、タワー部の基部に作用する荷重が低減する。したがって、タワー部に作用する応力の増大を抑制することができる。また、タワー部に作用する応力の増大を抑制することができるので、タワー部の構造を簡素化し、コスト(COE:Cost of Energy)を低減することができる。
【0011】
また、本発明の一態様に係る風力発電装置は、前記第1風車部のロータ直径及び前記第2風車部のロータ直径は、各前記風車部が所定の風速の風を受けた際に、前記第1風車部の前記発電機の回転数である第1回転数と、前記第2風車部の前記発電機の回転数である第2回転数とが略同一となるように設定され、前記第1回転数及び前記第2回転数は定格回転数であってもよい。
【0012】
上記構成では、風力発電装置に所定の風速の風が吹いた場合に、第1風車部の発電機の回転数と、第2風車部の前記発電機の回転数とが略同一となる。すなわち、第1風車部の発電機の出力と、第2風車部の発電機との出力とが略同一となる。これにより、第1風車部及び第2風車部間において、発電機及び発電機の後流側の装置を共通化することができる。したがって、第1風車部と第2風車部とにおいて異なった種類の発電機等を採用する場合と比較して、イニシャルコストを低減することができる。また、装置等の共通化を図ることによって、メンテナンス性を向上させることができるので、ランニングコストも低減することができる。
なお、所定の風速とは、風速の高度分布に基づいて決定してもよい。
また、上記構成では、第1風車部の発電機及び第2風車部の発電機が、定格回転数で回転するので、各風車部の発電機の能力を最大限引き出すことができる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る風力発電装置は、前記第1風車部のロータ直径及び前記第2風車部のロータ直径は、各前記風車部が所定の風速の風を受けた際に、前記第1風車部に作用するスラスト力と、前記第2風車部に作用するスラスト力とが略同一となるように設定されてもよい。
【0014】
上記構成では、風力発電装置に所定の風速の風が吹いた場合に、第1風車部に作用するスラスト力と、前記第2風車部に作用するスラスト力とが略同一となる。このように、第1風車部と第2風車部とに作用するスラスト力が略同一である場合には、第1風車部及び第2風車部を支持する支持構造を同様のものとすることができる。これにより、第1風車部及び第2風車部間で、支持構造を共通化することができるので、第1風車部と第2風車部とにおいて異なった支持構造を採用する場合と比較して、イニシャルコストを低減することができる。また、支持構造の共通化を図ることによって、メンテナンス性を向上させることができるので、ランニングコストも低減することができる。
なお、所定の風速とは、風速の高度分布に基づいて決定してもよい。
また、第1風車部と第2風車部とに作用するスラスト力を略同一とすることで、支持構造のメンテナンス時期や寿命を比較的近くすることができるので、よりメンテナンス性を向上させることができる。
【0015】
また、本発明の一態様に係る風力発電装置は、前記第1風車部のロータ直径及び前記第2風車部のロータ直径は、各々、導入される風の所定の風速に基づいて、前記第1風車部の周速と、前記第2風車部の周速とが略同一となるように設定されてもよい。
【0016】
また、本発明の一態様に係る風力発電装置は、前記第1風車部のロータ直径及び前記第2風車部のロータ直径は、各々、導入される風の所定の風速に基づいて、前記第1風車部の出力と、前記第2風車部の出力とが略同一となるように設定されてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、タワー部に作用する応力の増大を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係る風力発電装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る風力発電装置1は、1つのタワー部2と、タワー部2に接続された複数の支持部材3と、各支持部材3に設置された風車部4などを備える。風力発電装置1は、発生した電力を電力系統へ送電するために系統連系されており、陸上又は洋上に設置される。
【0020】
タワー部2は、一方向に長い構造を有し、軸方向が設置面に対して垂直方向となるようにタワー部2の基礎部(基部)5が設置面に設けられる。タワー部2は、複数の長尺状部材等が組み合わされて構成される。タワー部2の詳細については後述する。
【0021】
支持部材3は、例えば一方向に長い部材であり、一端側である基部がタワー部2と接続され、他端側である先端側において風車部4を支持する。1本の支持部材3に、1台の風車部4が設置される場合、風車部4と同数の支持部材3がタワー部2に接続される。支持部材3は、円柱状等の長尺状部材でもよいし、複数の部材が組み合わされたトラス構造を有する部材でもよい。また、支持部材3は、圧縮力を主に負担する長尺状部材3aと、引張力を負担するワイヤ部材3bなどから構成されてもよく、必要な剛性、強度を有すれば形状はこれらに限らない。本実施形態では、長尺状部材3aとワイヤ部材3bとを有する構成となっている。
【0022】
各支持部材3に設置された風車部4は、ナセル6と、ロータ軸7と、ナセル6に収容される発電機と、ロータ軸7の先端に設置されたハブ9に設けられた複数枚(例えば3枚)の翼8などを有する。ロータ軸7と、ハブ9と、複数枚の翼8とで、ロータ11を構成している。また、本実施形態に係る風力発電装置1は、翼8がタワー部2やナセル6の風上側に配置されるいわゆるアップウィンド式の風力発電装置である。
【0023】
ナセル6は、支持部材3の上部又は下部に設置され、内部に増速機(図示省略)、発電機(図示省略)などを備える。ナセル6の一端側には、ハブ9が設けられる。ロータ軸7は、ほぼ水平な軸線周りに回転可能である。ロータ軸7の一端側には、ハブ9が設けられる。ロータ軸7の他端側は、例えば直接的に発電機に接続され、又は、増速機若しくは油圧ポンプ・油圧モータを介して発電機に接続される。発電機は、ロータ軸7が軸周りに回転することによって生じる回転力によって駆動し発電する。
【0024】
翼8は、ハブ9において、放射状に複数枚取り付けられる。複数枚の翼8は、風を受けることによって、ロータ軸7を中心にして回転する。翼8は、ピッチ制御用の旋回輪軸受を介してハブ9に接続され、翼長方向に延在する翼軸周りに回動可能である。これにより、翼8のピッチ角が調整される。
【0025】
ナセル6は、支持部材3に対して略水平面上で旋回して、ハブ9の方向を風向きに合わせ、翼8の回転面を風向きに正対させる。ナセル6が略水平面上で旋回することをヨー(yaw)旋回という。ナセル6は、ナセル6と支持部材3に接続されたヨー旋回輪軸受を介して旋回する(第1ヨー旋回)。
【0026】
支持部材3には、タワー部2と接続される接続部10が設けられる。接続部10は、タワー部2の周囲に設けられ、例えばリング形状を有する。支持部材3は、支持部材3の接続部10を介してタワー部2と接続される。タワー部2は、接続部10を介してのみ支持部材3から伝達される荷重を受け、他の部分では、支持部材3から伝達される荷重を受けない。また、接続部10は、軸受構造などを備えて、略水平面内においてタワー部2の周囲にて回動可能な構成を有している。
【0027】
これにより、接続部10は、略水平面内においてタワー部2の周囲にて回動可能であるため、接続部10と接続された支持部材3に支持された各風車部4も、水平面内においてタワー部2の周囲にて回動し、風車部4はヨー(yaw)旋回が可能である(第2ヨー旋回)。
【0028】
本実施形態に係る風力発電装置1は、4つの風車部4を有している。4つの風車部4は、2つの下段風車部(第2風車部)4Bと、下段風車部4Bよりも上方に位置する2つの上段風車部(第1風車部)4Aとで構成されている。
【0029】
2つの下段風車部4Bは、水平方向に並んで配置されている。また、下段風車部4Bは、地面から高さh2の位置に設けられ、下段風車部4Bのロータ11Bのロータ直径は、D2に設定されている。
2つの上段風車部4Aは、水平方向に並んで配置されている。また、上段風車部4Aは、地面から高さh1の位置に設けられ、上段風車部4Aのロータ11Aのロータ直径は、D1に設定されている。
なお、ロータ直径とは、風車部4の翼8がロータ軸7を中心として回転した際の、翼8の外端部の回転軌跡の直径を意味している。
図1では、各風車部4の翼8の外端部の回転軌跡を1点鎖線で示している。また、風車部4の高さとは、地表面13から風車部4のハブ9の中心までの最短距離を意味している。
【0030】
上段風車部4Aのロータ直径D1は、下段風車部4Bのロータ直径D2よりも小さく設定されている。換言すれば、上段風車部4Aの翼8Aの翼長が、下段風車部4Bの翼8Bの翼長よりも短く設定され、上段風車部4Aの受風面積が下段風車部4Bの受風面積よりも小さく設定されている。
また、上段風車部4Aと下段風車部4Bとは、ロータ11のみが異なっており、その他の装置(ナセル6や発電機等)は、同じ装置が設けられおり、上段風車部4Aと下段風車部4B間で共通化されている。
【0031】
次に、上段風車部4Aのロータ直径D1及び下段風車部4Bのロータ直径D2の設定方法について説明する。
【0032】
上段風車部4Aのロータ直径D1及び下段風車部4Bのロータ直径D2は、各風車部4に導入される風の所定の風速に基づいて設定される。すなわち、本実施形態では、各風車部4毎に、導入される風速を応じて、ロータ直径D1,D2を設定している。
図2に示すように、一般に、風は地表の凹凸(地表面の粗度)による摩擦で減速するため、地表から離れると(すなわち、高度が上がると)風速が速くなる。このため、本実施形態に係る風力発電装置1では、各風車部4のロータ直径D1,D2を設定する際に考慮する所定の風速は、風速の高度分布に基づいて決定する。
具体的には、下段風車部4Bの高度はh2であるので(
図1参照)、高度分布から下段風車部4Bのロータ直径D2は、風速V2に基づいて設定される。また、上段風車部4Aの高度はh1であるので、高度分布から上段風車部4Aのロータ直径D1は、風速V1に基づいて設定される。なお、
図2からもわかるように、V1>V2の関係にある。
すなわち、風力発電装置1に対して風が吹いた場合に、風速の高度分布により、上段風車部4Aに導入される風の風速が下段風車部4Bに導入される風の風速より速くなる。
【0033】
また、上段風車部4Aのロータ直径D1及び下段風車部4Bのロータ直径D2は、各風車部4が所定の風速の風を受けた際の、上段風車部4Aの発電機の回転数(第1回転数)と、下段風車部4Bの発電機の回転数(第2回転数)とが略同一となるように設定される。換言すれば、上段風車部4Aのロータ直径D1及び下段風車部4Bのロータ直径D2は、所定の風速の風を受けた際の、出力特性が略同一となるように設定される。
すなわち、各風車部4のロータ直径D1,D2は、上段風車部4Aが風速V1の風を受けた際に、上段風車部4Aの発電機が回転する回転数と、下段風車部4Bが風速V2の風を受けた際に下段風車部4Bの発電機が回転する回転数とが略同一となるように設定されている。
一般に、風車部4が受ける風の風速が速いほど発電機の回転数は上昇し、また、風車部4のロータ直径が大きいほど発電機の回転数は上昇する。したがって、V1>V2の関係にある本実施形態の場合には、D1<D2となる。
【0034】
また、上段風車部4Aのロータ直径D1及び下段風車部4Bのロータ直径D2を設定する際に用いられるこの回転数は、上段風車部4A及び下段風車部4Bに設けられた発電機の定格回転数となっている。
【0035】
以上のように、上段風車部4Aのロータ直径D1及び下段風車部4Bのロータ直径D2を設定することで、本実施形態に係る風力発電装置1では、上段風車部4Aに対して風速V1の風が導入されると、上段風車部4Aの発電機は定格回転数で回転し、下段風車部4Bに対して風速V2の風が導入されると、下段風車部4Bの発電機は定格回転数で回転する。
【0036】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
上述のように、風は、地表の凹凸による摩擦で減速する。そのため、地表から離れた上空を吹く風は、摩擦の影響が抑制され、速度が速くなる(
図2参照)。
本実施形態では、上方に位置する上段風車部4Aのロータ直径D1が、下段風車部4Bのロータ直径D2よりも小さい。このように、速度が速い風を受ける上段風車部4Aのロータ直径D1が下段風車部4Bのロータ直径D2よりも小さいので、上段風車部4A及び下段風車部4Bのロータ直径をともにD2とした構成と比較して、上段風車部4Aに作用するスラスト力が低減する。上方に位置する上段風車部4Aに作用するスラスト力が低減することで、タワー部2の基礎部5において生じるモーメントが小さくなり、タワー部2の基礎部5に作用する荷重が低減する。したがって、タワー部2に作用する応力の増大を抑制することができる。また、タワー部2に作用する応力の増大を抑制することができるので、タワー部2の構造を簡素化し、コスト(COE:Cost of Energy)を低減することができる。
【0037】
また、本実施形態では、風力発電装置1に所定の風速の風が吹いた場合に、上段風車部4Aの発電機の回転数と、下段風車部4Bの発電機の回転数とが略同一となる。すなわち、上段風車部4Aの発電機の出力と、下段風車部4Bの発電機との出力とが略同一となる。これにより、上段風車部4A及び下段風車部4B間において、発電機及び発電機の後流側の装置を共通化することができる。したがって、上段風車部4Aと下段風車部4Bとで、異なった種類の発電機等を採用する場合と比較して、イニシャルコストを低減することができる。また、装置等の共通化を図ることによって、メンテナンス性を向上させることができるので、ランニングコストも低減することができる。
【0038】
また、本実施形態では、所定の風速の風を受けた場合に、上段風車部4Aの発電機及び下段風車部4Bの発電機が定格回転数で回転する。
上段の風車部及び下段の風車部のロータ直径を同一とした場合、導入される風の風速の差により、上段の風車部の発電機の回転数と、下段の風車部の発電機の回転数とが異なる。したがって、同一の発電機等を用いた場合、両方の風車部の発電機の回転数を定格回転数とすることができない。仮に、上段の風車部及び下段の風車部のロータ直径を、上段の風車部の発電機の回転数が定格回転数となるように設定した場合、上段の風車部よりも風速の遅い風が導入される下段の風車部の発電機では、定格回転数よりも低い回転数で発電機が回転する。したがって、下段の風車部での発電効率が低下する。また、仮に、上段の風車部及び下段の風車部のロータ直径を、下段の風車部の発電機の回転数が定格回転数となるように設定した場合、下段の風車部よりも風速の速い風が導入される上段の風車部には、定格回転数で回転する風速よりも早い風速の風が導入されることとなる。これにより、下段の風車部では、エネルギーのロスが発生してしまう。
一方、本実施形態では、上段風車部4Aのロータ直径D1と下段風車部4Bのロータ直径D2とを異なる直径として、所定の風速の風を受けた場合に、上段風車部4Aの発電機及び下段風車部4Bの発電機が定格回転数で回転するので、発電効率の低下を抑制しつつ、エネルギーのロスの発生も抑制することができる。
【0039】
また、一般に、風力発電装置に用いるロータには、ロータ直径に基づいて規格化された4種類(クラスI、クラスII等)のロータがある。規格化された4種類のロータの中には、定格風速(発電機を定格で回転させる風速)が10%程度異なるロータ直径のものがある(例えば、クラスIの定格風速は、クラスIIの定格風速よりも10%程度速くなっている)。
風力発電装置1として、風車部4を4つ備え、それぞれの風車部4の定格出力を4MWとした場合には、例えば、下段風車部4Bの高さh2は略80mとなり、上段風車部4Aの高さh1は略200mとなる。このとき、風速の高度分布(
図2参照)から、高度200mでの風速は、高度80mでの風速よりも、略10%程度速くなっている。
これにより、上段風車部4AにクラスIのロータを用いるとともに、下段風車部4BにクラスIIのロータを用いることで、上段風車部4A及び下段風車部4Bの発電機の回転数(すなわち、出力特性)が同一となる。
したがって、このような場合には、上段風車部4A及び下段風車部4Bに対して、規格化されたロータを採用することができる。規格化されたロータを採用することができる場合には、新たにロータの設計等を行う必要がないため、コストを低減することができる。
【0040】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。
【0041】
例えば、上記実施形態では、上段風車部4Aの発電機の回転数と、下段風車部4Bの発電機の回転数とが略同一となるように、上段風車部4Aのロータ直径D1及び下段風車部4Bのロータ直径D2を設定していたが、各風車部4のロータ直径の設定基準はこれに限定されない。
例えば、上段風車部4Aのロータ直径D1及び下段風車部4Bのロータ直径D2は、各々、導入される風の所定の風速に基づいて、上段風車部4Aに作用するスラスト力と、下段風車部4Bに作用するスラスト力とが略同一となるように設定してもよい。
【0042】
このような構成とすることで、風力発電装置1に所定の風速の風が吹いた場合に、上段風車部4Aに作用するスラスト力と、下段風車部4Bに作用するスラスト力とが略同一となる。このように、上段風車部4Aと下段風車部4Bとに作用するスラスト力が略同一である場合には、上段風車部4A及び下段風車部4Bを支持する支持構造(支持部材3等)を同様のものとすることができる。これにより、上段風車部4A及び下段風車部4B間で、支持構造を共通化することができるので、上段風車部4Aと下段風車部4Bとにおいて異なった支持構造を採用する場合と比較して、イニシャルコストを低減することができる。また、支持構造の共通化を図ることによって、メンテナンス性を向上させることができるので、ランニングコストも低減することができる。
また、上段風車部4Aと下段風車部4Bとに作用するスラスト力を略同一とすることで、支持構造のメンテナンス時期や寿命を比較的近くすることができるので、よりメンテナンス性を向上させることができる。
【0043】
また、上段風車部4Aのロータ直径D1及び下段風車部4Bのロータ直径D2は、各々、導入される風の所定の風速に基づいて、上段風車部4Aの周速と、下段風車部4Bの周速とが略同一となるように設定されてもよい。ここでいう周速とは、各風車部4の翼8の外周端部(先端部)の回転(移動)速度を意味している。
また、上段風車部4Aのロータ直径D1及び下段風車部4Bのロータ直径D2は、各々、導入される風の所定の風速に基づいて、上段風車部4Aの出力と、下段風車部4Bの出力とが略同一となるように設定されてもよい。
【0044】
また、本実施形態では、上段風車部4Aと下段風車部4Bの2段構成の風力発電装置1について説明したが、
図3に示すように、風力発電装置1’の風車部4を3段以上としてもよい。3段以上とした場合には、例えば、
図3に示すように、上段の風車部4ほどロータ直径を小さく設定してもよい。この時、最上段の風車部4Cにおける翼8Cの翼長及びロータ11Cのロータ直径D3は、設置高度h3に応じた風速の風が導入された際の発電機の回転数が、他の風車部4の発電機の回転数と略同一となるように設定される。
なお、3段以上の風車部4を有する構成とした場合、必ずしも
図3で示すように、上段の風車部4ほどロータ直径を小さく設定する必要はない。
【0045】
また、本実施形態では、アップウィンド式の風力発電装置1について説明したが、本発明は、翼8がタワー部2やナセル6の風下側に配置されるいわゆるダウンウィンド式の風力発電装置にも適用可能である。