(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6888943
(24)【登録日】2021年5月24日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス表示装置
(51)【国際特許分類】
H01L 51/50 20060101AFI20210607BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20210607BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20210607BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20210607BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
H05B33/14 A
H05B33/12 B
H05B33/22 Z
H05B33/22 D
H05B33/22 B
H01L27/32
G09F9/30 365
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-223989(P2016-223989)
(22)【出願日】2016年11月17日
(65)【公開番号】特開2018-82076(P2018-82076A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2019年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】高城 淳
【審査官】
池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−209607(JP,A)
【文献】
特開2016−119355(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0105843(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
H05B 33/12
H05B 33/22
H01L 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の画素電極と、
前記第1の画素電極と同層に設けられた第2の画素電極と、
前記第1及び前記第2の画素電極上に設けられた対向電極と、
前記第1の画素電極と前記対向電極との間に設けられ、第1波長の光を出射する第1の有機発光層と、
前記第2の画素電極と前記対向電極との間に設けられ、第2波長の光を出射する第2の有機発光層と、を有し、
前記第1の有機発光層は、ホスト材料、第1のドーパント材料、及び第1のアシストドーパント材料を含み、
前記第2の有機発光層は、前記ホスト材料、第2のドーパント材料、及び第2のアシストドーパント材料を含み、
前記ホスト材料のT1準位は、2.8eV以上、かつ前記第1及び第2のアシストドーパント材料のS1準位+0.4eV以上であることを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項2】
前記第1及び第2のアシストドーパント材料のS1準位はそれぞれ、2.4eV以上3.0eV以下であり、
前記第1及び第2のアシストドーパント材料におけるΔESTはそれぞれ、0eV以上0.2eV以下であることを特徴とする、請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の画素電極と同層に設けられた第3の画素電極と、
前記第3の画素電極と前記対向電極との間に設けられ、第3波長の光を出射する第3の有機発光層と、をさらに有し、
前記第3の有機発光層は、前記ホスト材料、第3のドーパント材料、及び第3のアシストドーパント材料を含むことを特徴とする、請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項4】
前記第3のアシストドーパント材料のS1準位は2.4eV以上3.0eV以下であり、
前記第3のアシストドーパント材料におけるΔESTはそれぞれ、0eV以上0.2eV以下であることを特徴とする、請求項3記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項5】
前記第1の画素電極と前記第1の有機発光層との間、及び前記第2の画素電極と前記第2の有機発光層との間に、電子ブロッキング層をさらに有し、
前記第1の有機発光層と前記対向電極との間、及び前記第2の有機発光層と前記対向電極との間に、ホールブロッキング層をさらに有することを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一記載の有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、有機EL表示装置)に関する。特に、発光層の製造工程を簡素化し、生産性を向上させた有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネセンス素子(以下、「有機EL素子」ともいう。)は、有機エレクトロルミネセンス材料(以下、「有機EL材料」ともいう。)を含む薄膜を一対の電極で挟んだ構造を有している。有機EL素子は、ホールと電子が発光層のホスト分子で再結合することにより生じる一重項励起子が、発光ドーパントである蛍光分子へエネルギー移動することにより、蛍光分子が発光する。有機EL素子は、印加する電圧又は素子に流れる電流量によって発光強度を制御することができるため、この特性を利用して画素を形成し、表示画面を構成した表示装置が開発されている。
【0003】
有機EL素子を用いた表示装置は、個々の画素の発光を個別に制御して画像を表示することが可能である。そのため、透過型の液晶表示装置で必要とされているバックライトが不要となり、表示装置の薄型化を可能としている。一方で、有機EL表示装置は、発光させる色毎に発光層を構成するドーパント材料と、ドーパント材料に応じたホスト材料の組合せを選択する必要があり、発光させる色毎に発光層を形成する、所謂、塗り分けが必要となる。例えば、RGBの3色の画素を形成する場合、3種類のドーパント材料と、各ドーパント材料に応じた3種類のホスト材料を準備して、3色の画素をそれぞれ形成する必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、ホスト材料と、発光色の互いに異なる少なくとも3種類の発光材料を含む単一の混合層を表示領域に亘って広がった連続膜として形成し、各発光色に対応する画素毎に電磁波を照射して、発光色に寄与しない発光材料の発光能を喪失させることが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、各発光層に発光極大波長が415nm以下である同一のホスト材料と、ドーパントとしてイリジウム錯体を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−111023号公報
【特許文献2】特許第4281308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一重項励起子のみにより発光を得る有機EL表示装置では、発光層でホールと電子が再結合することにより生じる一重項励起子は25%であり、残りの75%は三重項励起子となり、熱失活して発光に寄与できなかった。一方で、三重項励起子のみにより発光を得る有機EL表示装置では、25%の重項励起子が熱失活して発光に寄与できなかった。近年、三重項励起子を一重項励起子に変換することにより、蛍光分子へ一重項励起子をエネルギー移動可能なアシストドーパントを、発光ドーパントと共に発光層へドープする技術が報告されている。アシストドーパントを用いて三重項励起子を一重項励起子へ理論上ほぼ変換可能であるため、高効率の有機EL表示装置の実現が期待される。
【0008】
アシストドーパントを用いて三重項励起子を一重項励起子へ理論上ほぼ変換可能であるが、発光層にアシストドーパント材料を添加するため、ドーパント材料及びアシストドーパント材料に応じたホスト材料を発光色毎に検討して、発光色毎に画素を形成する必要があり、製造工程が複雑化して、生産性の低下と製造コストの上昇を招くこととなる。
【0009】
このような問題に鑑み、本発明は、発光層の製造工程を簡素化し、生産性を向上させた有機EL表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、第1の画素電極と、前記第1の画素電極と同層に設けられた第2の画素電極と、前記第1及び前記第2の画素電極上に設けられた対向電極と、前記第1の画素電極と前記対向電極との間に設けられ、第1波長の光を出射する第1の有機発光層と、前記第2の画素電極と前記対向電極との間に設けられ、第2波長の光を出射する第2の有機発光層と、を有し、前記第1の有機発光層は、ホスト材料、第1のドーパント材料、及び第1のアシストドーパント材料を含み、前記第2の有機発光層は、前記ホスト材料、第2のドーパント材料、及び第2のアシストドーパント材料を含むことを特徴とする、有機EL表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る表示装置の上面図および断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る表示装置の断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0013】
本明細書において、ある部材又は領域が、他の部材又は領域の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限り、これは他の部材又は領域の直上(又は直下)にある場合のみでなく、他の部材又は領域の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の部材又は領域の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
【0014】
<有機EL表示装置の構成>
以下に、本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置の構成を
図1(A)及び(B)に示す。
図1(A)は有機EL表示装置100の平面図を示し、図中に示すA−B線に対応する断面構造を
図1(B)に示す。
【0015】
有機EL表示装置100は、第1の画素電極と、第1の画素電極と同層に設けられた第2の画素電極と、第1及び第2の画素電極上に設けられた対向電極と、を備える。また、有機EL表示装置100は、第1の画素電極と対向電極との間に設けられ、第1波長の光を出射する第1の有機発光層と、第2の画素電極と対向電極との間に設けられ、第2波長の光を出射する第2の有機発光層と、を有する。
【0016】
有機EL表示装置100において、第1の有機発光層は、ホスト材料、第1のドーパント材料、及び第1のアシストドーパント材料を含み、第2の有機発光層は、ホスト材料、第2のドーパント材料、及び第2のアシストドーパント材料を含む。第1の有機発光層と第2の有機発光層に含まれるホスト材料は、同じホスト材料である。
【0017】
図1を参照すると、有機EL表示装置100は、複数の画素が二次元的に配列された画素部106を有している。画素部106は第1基板102に設けられている。第1基板102には、走査線駆動回路162、映像信号線駆動回路164、入力端子部166などが設けられていてもよい。第2基板104は第1基板102に対向し、画素部106を封止するように設けられている。
【0018】
第2基板104と第1基板102とはシール材160により固定されている。第2基板104と第1基板102とは数マイクロメートルから数十マイクロメートルの間隙をもって固定されており、当該間隙部には充填材142が設けられている。充填材142としては樹脂材料が好適に用いられる。第2基板104と第1基板102の間に画素部106を挟み込み、充填材142を封入する構成は固体封止とも呼ばれている。第2基板104と第1基板102とは、シール材160を用いることなく、充填材142によって固定されても良い。また、充填材142のみによって好適に表示領域106の保護が出来る場合は、第2基板104を設けなくても良い。
【0019】
画素部106における各画素には有機EL素子が設けられている。有機EL素子の有機発光層には、有機EL材料として画素に共通したホスト材料と、発光色に応じたドーパント材料及びアシストドーパント材料とが用いられる。画素部106における各画素は、画素回路により発光が個別に制御される。各画素の発光を制御する信号は、走査線駆動回路162及び映像信号線駆動回路164から与えられる。
【0020】
図1で示す有機EL表示装置100は、画素部106の発光が第2基板104側に射出されるトップエミッション型の構成を有している。
【0021】
なお、トップエミッション型の場合、第2基板104は透光性を有する必要があるため、ガラス又は樹脂材料が用いられる。透光性の優れた樹脂材料としては、例えば、ポリベンゾオキサゾール、脂環式構造を有するポリアミドイミド、脂環式構造を有するポリイミド、ポリアミド及びポリ(p−キシリレン)から選択される樹脂材料を含むものが好ましく、これらの樹脂材料を単独で含んでいてもよいし、複数種が組み合わされていてもよい。例えば、第2基板104をポリイミド樹脂で形成する場合には、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸(一部がイミド化されたポリアミック酸を含む、)又は、可溶性ポリイミドを含む溶液を支持基板152に塗布し、焼成することで形成することができる。
【0022】
画素部106の構成を、
図2及び
図3を参照して説明する。
図2は、画素部106における有機EL素子122の構成を断面図で示す。
図3は、画素部106における画素120の構成を断面図で示す。第1の有機EL素子122a〜第3の有機EL素子122c(以下、特に区別をしない場合は「有機EL素子122」ともいう。)は、同層に設けられた第1の画素電極124a〜第3の画素電極124c(以下、特に区別をしない場合は「画素電極124」ともいう。)上に有機EL層125及び対向電極126が積層された構成を有している。有機EL層125は、低分子系又は高分子系の有機材料を用いて形成することができる。有機EL層125は、画素に共通したホスト材料と、発光色に応じたドーパント材料及びアシストドーパント材料とを含む第1の有機発光層114a〜第3の有機発光層114c(以下、特に区別をしない場合は「有機発光層114」ともいう。)に加え、当該有機発光層114を挟むようにホール輸送層111や電子輸送層116等のキャリア輸送層が設けられている。また、ホール輸送層111と有機発光層114との間に電子ブロッキング層112を配置し、電子輸送層116と有機発光層114との間にホールブロッキング層115を配置してもよい。
【0023】
第1の有機発光層114a〜第3の有機発光層114cは、それぞれ異なる第1波長〜第3波長の光を出射する。例えば、有機EL層125は、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色を発光するものであってもよいし、他の色を発光するものであってもよい。第1の有機発光層114a〜第3の有機発光層114cを形成するにあたっては、ホスト材料、発光ドーパント及びアシストドーパントをそれぞれ蒸着源とした坩堝を用意し、色毎に順次共蒸着する。本発明においては、第1の有機発光層114a〜第3の有機発光層114cにおいて、ホスト材料を共通とし、発光ドーパント及びアシストドーパントを各色に合わせて用意することになるため、必要な坩堝の数は、ホスト材料1個、発光ドーパント3個、アシストドーパント3個の合計7個となる。全ての色で個別にホスト材料用の坩堝を用意する場合と比較して、坩堝を2個減ずることができる。
【0024】
また、一実施形態において、有機EL層125には、画素電極124とホール輸送層111との間にホール注入層を配置し、対向電極126と電子輸送層116との間に電子注入層を配置してもよい。
【0025】
なお、本実施形態において、ホール輸送層111、電子ブロッキング層112、有機発光層114、ホールブロッキング層115、電子輸送層116、ホール注入層及び電子注入層を構成する材料として、公知の材料を用いることができる。
【0026】
ホール輸送層111及びホール注入層に用いるホール輸送性材料としては、例えばベンジジン又はその誘導体、スチリルアミン又はその誘導体、トリフェニルメタン又はその誘導体をはじめ、ポルフィリン又はその誘導体、トリアゾール又はその誘導体、イミダゾール又はその誘導体、オキサジアゾール又はその誘導体、ポリアリールアルカン又はその誘導体、フェニレンジアミン又はその誘導体、アリールアミン又はその誘導体、オキサゾール又はその誘導体、アントラセン又はその誘導体、フルオレノン又はその誘導体、ヒドラゾン又はその誘導体、スチルベン又はその誘導体、フタロシアニンまたはその誘導体、ポリシラン系化合物、ビニルカルバゾール系化合物、チオフェン系化合物、アニリン系化合物等の複素環式共役系のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が挙げられる。
【0027】
このようなホール輸送性材料の具体的な例としては、α−ナフチルフェニルジアミン(αNPD)、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリン、金属ナフタロシアニン、4,4’,4”−トリメチルトリフェニルアミン、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、N,N,N’,N’−テトラキス(p−トリル)p−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル、N−フェニルカルバゾール、4−ジ−p−トリルアミノスチルベン、ポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリ(2,2’−チエニルピロール)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
電子ブロッキング層112に用いる材料としては、例えば、関東化学株式会社製のHTEB02やHTEB04を使用することができる。
【0029】
電子輸送層116及び電子注入層に用いる電子輸送性材料として使用可能な材料としては、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)、8−ヒドロキシメチルキノリンアルミニウム、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、ブタジエン、クマリン、アクリジン、スチルベン、又はこれらの誘導体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
ホールブロッキング層115に用いる材料としては、例えば、4,4’−N、N’−ジカルボゾール―ビフェニル(CBP:4,4’−N,N’−dicarbozole−biphenyl)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP:2,9−dimethyl−4,7−diphenyl−1,10−phenanthroline)を使用することができる。
【0031】
有機発光層114は、全ての発光色に共通したホスト材料と、各発光色に応じたドーパント材料及びアシストドーパント材料とにより構成される。従来の有機EL表示装置では、ドーパント材料及びアシストドーパント材料に応じたホスト材料を選択して、発光色に対応した画素毎にホスト材料を準備する必要があった。このため、ドーパント材料及びアシストドーパント材料とホスト材料との組合せを検討する必要があった。また、有機発光層114を蒸着により形成する場合には、ホスト材料毎に坩堝を準備するとともに、ホスト材料毎に蒸着の工程を行うため、製造工程が増加し、製造性が低下するとともに、製造コストの上昇を招いていた。
【0032】
本発明に係る有機EL表示装置100においては、ホスト材料を共通化し、発光色に応じてドーパント材料及びアシストドーパント材料を選択して共蒸着させるため、坩堝の数を減らして製造工程を簡素化し、製造性を向上させるとともに、製造コストを低減することができる。
【0033】
画素電極124に適用可能な材料としては、例えば、ニッケル、銀、金、白金、パラジウム、セレン、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、レニウム、タングステン、モリブデン、クロム、タンタル、ニオブやこれらの合金、あるいは酸化錫(SnO2)、酸化インジウム錫(ITO:Indium tin oxide)、酸化亜鉛、酸化チタン等があるが、これらに限定されるものではない。また、対向電極126に適用可能な材料としては、例えば、Li、Mg、Ca等の活性な金属とAg、Al、In等の金属との合金、或いはこれらを積層した構造があるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
図3を参照して、画素部106における画素120の構成をさらに説明する。画素120には有機EL素子122とトランジスタ132が含まれている。画素電極124の周縁部はバンク層130によって覆われており、有機EL層125は画素電極124の上面からバンク層130にかけて設けられている。各色の画素電極124上に位置する有機EL層125には、個別に形成された有機発光層114が含まれている。また、有機EL素子122の上面側には、封止膜128が設けられていてもよい。封止膜128は、画素部106の略前面を覆うように設けられている。
【0035】
本実施形態では、トップエミッション型の画素構成を有するため、有機EL素子122の構成は、対向電極126が透光性であり、画素電極124には光反射面が設けられていることが好ましい。有機EL層125の発光は、立体角で表せば4πの全方向に放射されるため、第2基板104側に放射される光は、少なくとも、有機EL層125から直接放射される光の成分と、画素電極124で反射して第2基板104側へ放射される光の成分が混在している。いずれにしても、有機EL層125で発光した光は、さまざまな角度で第2基板104に入射することとなる。
【0036】
対向電極126は複数の画素に共通の電位が印加され、有機EL素子122に流れる電流値はトランジスタ132によって制御される。トランジスタ132を介して有機EL素子122に流れる電流値は映像信号によって異なり、その電流値によって、対向電極126と画素電極124との電位差が決まる。
【0037】
トランジスタ132は、半導体層134とゲート電極138がゲート絶縁層136によって絶縁された電界効果トランジスタである。具体的には、薄膜の半導体層134にチャネルが形成される薄膜トランジスタの形態を有している。トランジスタ132と有機EL素子122の間には層間絶縁層144が設けられていることが好ましく、画素電極124はこの層間絶縁層144上に設けられており、コンタクトホールを介してソース・ドレイン電極140と接続されている。
【0038】
本実施形態の有機EL表示装置100は、画素部106からの光射出面側(表示画面側)に封止用の基板と一体化された光学素子108を設けることにより、薄型化を図りつつ、光の取り出し効率を高めることを可能としている。
【0039】
<ホスト材料>
本発明に係る有機EL表示装置100に用いるホスト材料は、各発光色に対して決められた発光ドーパント及びアシストドーパントと密接に関連した特性が求められる。ここで重要視されるパラメータとしては、主に励起状態におけるエネルギー準位が挙げられる。本発明においては、ホスト材料はT1(三重項励起状態)準位が2.8eV以上、かつ、後述するアシストドーパントのS1(一重項励起状態)準位の値に対して、+0.4eV以上であることが求められる。
【0040】
<ドーパント>
本発明に係る有機EL表示装置100に用いるドーパントに求められる特性としては、各発光色において、S1準位はそれぞれ2.6eV以上3.0eV以下であることが求められる。一実施形態において、本発明に係る有機EL表示装置100に用いるドーパントとしては、例えば、化学式(1)で示される2,5,8,11-Tetra-tert-butylperylene(TBPe)を用いることができる。
【化1】
【0041】
<アシストドーパント>
また、本発明に係る有機EL表示装置100に用いるアシストドーパントに求められる特性としては、各発光色において、S1準位がそれぞれ2.4eV以上3.0eV以下、かつ、ΔEST(一重項励起状態と三重項励起状態との準位ギャップ)がそれぞれ0eV以上0.2eV以下であることが求められる。一実施形態において、本発明に係る有機EL表示装置100に用いるアシストドーパントとしては、例えば、化学式(2)で示されるACRSA又は(3)で示される2CzPNを用いることができる。
【化2】
【0042】
また、本発明に係る有機EL表示装置100に用いるドーパントとアシストドーパントは、結合した形態であってもよい。例えば、TBPeとACRSAが結合した化学式(4)で示される化合物、又は、TBPeと2CzPNが結合した化学式(5)で示される化合物を用いることができる。
【0043】
化学式(1)の化合物(TBPe)と化学式(2)の化合物(ACRSA)との結合様式は、例えば、単結合により連結する場合、化学式(4)で示されるが、これに限定されるものではない。
【化3】
【0044】
化学式(1)の化合物(TBPe)と化学式(3)の化合物(2CzON)との結合様式は、例えば、単結合により連結する場合、化学式(5)で示されるが、これに限定されるものではない。
【化4】
【0045】
本発明に係る有機EL表示装置においては、ホスト材料を共通化し、発光色に応じてドーパント材料及びアシストドーパント材料を選択して共蒸着させるため、坩堝の数を減らして製造工程を簡素化し、製造性を向上させるとともに、製造コストを低減することができる。
【0046】
(製造方法)
本発明の一実施形態に係る有機EL表示装置用材料の製造方法の概要を説明する。有機EL表示装置用材料の製造工程には、公知の製造工程を用いることができる。
【0047】
まず、第1基板102に画素回路を形成する。このとき、必要に応じて走査線駆動回路や映像信号線駆動回路、入力端子部なども形成する。画素回路を構成するトランジスタ132やキャパシタなどの各素子は、半導体、絶縁体、金属による薄膜の積層とフォトリソグラフィー法によるパターニングを繰り返して作製される。
【0048】
画素回路などが形成された回路素子層158の上に有機EL素子を形成する。各画素120の有機EL素子122を形成するために、画素回路と電気的に接続される画素電極124を形成する。画素電極124はトランジスタ132を埋設する層間絶縁層144の上に形成する。次いで、画素電極124の周縁部を覆うバンク層130を形成する。画素電極124は、画素120ごとに形成され、周縁部をバンク層130で囲まれることにより、各画素の領域が画定されることになる。
【0049】
画素電極124上にホール輸送層111、電子ブロッキング層112、有機発光層114、ホールブロッキング層115及び電子輸送層116を形成する。各層の形成は、例えば、蒸着法やインクジェットを用いた印刷法を用いることができる。また、一実施形態において、画素電極124とホール輸送層111との間にホール注入層を形成し、対向電極126と電子輸送層116との間に電子注入層を形成してもよい。このように、有機EL層125を形成することができる。
【0050】
有機発光層114は、上述した本発明に係るホスト材料と、画素の配置に応じて、ドーパント及びアシストドーパントとを3元蒸着することにより形成することができる。また、インクジェットを用いた印刷法を用いて、画素毎に材料を塗り分けて形成してもよい。
【0051】
さらに対向電極126を形成する。対向電極126の上層には窒化シリコン膜などで封止膜128を形成する。このように画素回路及び画素部106を形成することができる。
【符号の説明】
【0052】
100・・・有機EL表示装置、102・・・第1基板、104・・・第2基板、106・・・画素部、108・・・光学素子、111・・・ホール輸送層、112・・・電子ブロッキング層、114・・・有機発光層、115・・・ホールブロッキング層、116・・・電子輸送層、120・・・画素、122・・・有機EL素子、124・・・画素電極、125・・・有機EL層、126・・・対向電極、128・・・封止膜、130・・・バンク層、132・・・トランジスタ、134・・・半導体層、136・・・ゲート絶縁層、138・・・ゲート電極、140・・・ソース・ドレイン電極、142・・・充填材、144・・・層間絶縁層、146・・・遮光層、150・・・オーバーコート層、158・・・回路素子層、160・・・シール材、162・・・走査線駆動回路、164・・・映像信号線駆動回路、166・・・入力端子部。