特許第6891717号(P6891717)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6891717
(24)【登録日】2021年5月31日
(45)【発行日】2021年6月18日
(54)【発明の名称】ラテックス組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 13/02 20060101AFI20210607BHJP
   C08L 9/04 20060101ALI20210607BHJP
   C08K 3/24 20060101ALI20210607BHJP
   B29C 41/14 20060101ALI20210607BHJP
【FI】
   C08L13/02
   C08L9/04
   C08K3/24
   B29C41/14
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-155043(P2017-155043)
(22)【出願日】2017年8月10日
(65)【公開番号】特開2019-34982(P2019-34982A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2020年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 徹也
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−177091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 9/02−13/02
B29C 41/14
C08K 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと、次亜塩素酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩とを含有するラテックス組成物。
【請求項2】
前記カルボキシル基含有ニトリルゴム100重量部に対する、前記次亜塩素酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の含有割合が、0.1〜2.5重量部である請求項1に記載のラテックス組成物。
【請求項3】
pHが8.5〜13.0である請求項1または2に記載のラテックス組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のラテックス組成物からなる膜成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラテックス組成物に関し、さらに詳しくは、引張強度が高く、耐久性に優れたディップ成形体などの膜成形体を与えることができるラテックス組成物、ならびに、該ラテックス組成物を用いた膜成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天然ゴムのラテックスを含有するラテックス組成物を膜状に成形して得られる膜成形体が知られている。たとえば、膜成形体としては、天然ゴムのラテックスを含有するラテックス組成物をディップ成形して得られ、乳首、風船、手袋、バルーン、サック等の人体と接触して使用されるディップ成形体が知られている。しかしながら、天然ゴムのラテックスは、人体に即時型アレルギー(Type I)の症状を引き起こすような蛋白質を含有するため、生体粘膜又は臓器と直接接触するディップ成形体としては問題がある場合があった。そのため、天然ゴムのラテックスではなく、合成ゴムのラテックスを用いる検討がされてきている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、ディップ成形用組成物として、合成ゴムである合成ポリイソプレンのラテックスに、酸化亜鉛、硫黄および加硫促進剤を配合してなるラテックス組成物が開示されている。しかしながら、この特許文献1の技術では、天然ゴムに由来する蛋白質による即時型アレルギー(Type I)の発生を防止できる一方で、ディップ成形体とした場合に、ディップ成形体に含まれる加硫促進剤が原因で、人体に触れた際に、遅延型アレルギー(Type IV)のアレルギー症状を発生させることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2014/129547号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、即時型アレルギー(Type I)に加えて遅延型アレルギー(Type IV)の症状の発生を抑制可能であり、しかも、引張強度が高く、耐久性に優れたディップ成形体などの膜成形体を与えることができるラテックス組成物、および該ラテックス組成物を用いた膜成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスに、次亜塩素酸塩を配合したラテックス組成物により、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと、次亜塩素酸塩とを含有するラテックス組成物が提供される。
【0008】
本発明のラテックス組成物においては、前記カルボキシル基含有ニトリルゴム100重量部に対する、前記次亜塩素酸塩の含有割合が、0.1〜2.5重量部であることが好ましい。
本発明のラテックス組成物は、pHが8.5〜13.0であることが好ましい。
【0009】
また、本発明によれば、上記のラテックス組成物からなる膜成形体が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、即時型アレルギー(Type I)に加えて遅延型アレルギー(Type IV)の症状の発生を抑制可能であり、しかも、引張強度が高く、耐久性に優れたディップ成形体などの膜成形体を与えることができるラテックス組成物、および該ラテックス組成物を用いた膜成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のラテックス組成物は、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと、次亜塩素酸塩とを含有する。
【0012】
本発明で用いるカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスは、共役ジエン単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、および必要に応じて用いられる、これらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体を共重合してなるニトリルゴムのラテックスである。
【0013】
共役ジエン単量体としては、たとえば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンおよびクロロプレンなどが挙げられる。これらのなかでも、1,3−ブタジエンおよびイソプレンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。これらの共役ジエン単量体は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。共役ジエン単量体の使用量は、重合に用いる全単量体100重量部に対して、好ましくは30〜89重量部、より好ましくは40〜84重量部、さらに好ましくは50〜78重量部である。また、カルボキシル基含有ニトリルゴム中における、共役ジエン単量体単位の含有割合は、好ましくは30〜89重量%、より好ましくは40〜84重量%、さらに好ましくは50〜78重量%である。共役ジエン単量体の使用量(共役ジエン単量体単位の含有割合)を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体について、より風合いに優れ、かつ、より引張強度が高いものとすることができる。
【0014】
エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−シアノエチルアクリロニトリルなどが挙げられる。なかでも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。これらのエチレン性不飽和ニトリル単量体は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。エチレン性不飽和ニトリル単量体の使用量は、重合に用いる全単量体100重量部に対して、好ましくは10〜50重量部、より好ましくは15〜45重量部、さらに好ましくは20〜40重量部である。また、カルボキシル基含有ニトリルゴム中における、エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは15〜45重量%、さらに好ましくは20〜40重量%である。エチレン性不飽和ニトリル単量体の使用量(エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合)を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体などの膜成形体を、引張強度を十分なものとしながら、風合いおよび伸びにより優れたものとすることができる。
【0015】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸単量体;フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ−2−ヒドロキシプロピル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸部分エステル単量体;の他、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸無水物などの加水分解によりカルボキシル基を生成する単量体;などが挙げられる。これらのなかでも、エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体が好ましく、炭素数3〜10のエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体がより好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。これらのエチレン性不飽和カルボン酸単量体は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。エチレン性不飽和カルボン酸単量体の使用量は、重合に用いる全単量体100重量部に対して、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは1〜15重量部、さらに好ましくは2〜10重量部である。また、カルボキシル基含有ニトリルゴム中における、エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の含有割合は、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは1〜15重量%、さらに好ましくは2〜10重量%である。エチレン性不飽和カルボン酸単量体の使用量(エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の含有割合)を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体などの膜成形体を、引張強度を十分なものとしながら、風合いおよび伸びにより優れたものとすることができる。
【0016】
共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体としては、たとえば、スチレン、アルキルスチレン、ビニルナフタレン等のビニル芳香族単量体;フルオロエチルビニルエーテル等のフルオロアルキルビニルエーテル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド等のエチレン性不飽和アミド単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸−2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸−1−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸−2−エチル−6−シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸−3−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体;ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート等の架橋性単量体;などを挙げることができる。これらの共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体の使用量は、重合に用いる全単量体100重量部に対して、好ましくは20重量部以下、より好ましくは15重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。また、カルボキシル基含有ニトリルゴム中における、共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体の含有割合は、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体の使用量(共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体の含有割合)を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体を、より風合いに優れるものとすることができる。
【0018】
本発明で用いるカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスは、上述した単量体を含有してなる単量体混合物を共重合することにより得られるが、乳化重合により共重合する方法が好ましい。乳化重合方法としては、従来公知の方法を採用することができる。
【0019】
上述した単量体を含有してなる単量体混合物を乳化重合する際には、通常用いられる、乳化剤、重合開始剤、分子量調整剤等の重合副資材を使用することができる。これら重合副資材の添加方法は特に限定されず、初期一括添加法、分割添加法、連続添加法などいずれの方法でもよい。
【0020】
乳化剤としては、特に限定されないが、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性乳化剤;ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライド等のカチオン性乳化剤;α,β−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性乳化剤などを挙げることができる。なかでも、アニオン性乳化剤が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩がより好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウムおよびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。これらの乳化剤は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。乳化剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0021】
重合開始剤としては、特に限定されないが、たとえば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−α−クミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;などを挙げることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
なお、過酸化物開始剤は、ラテックスを安定して製造することができ、しかも、より機械的強度が高く、より風合いが柔らかなディップ成形体が得られるので好ましく用いられる。重合開始剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.01〜2重量部である。
【0022】
また、過酸化物開始剤は還元剤との組み合わせで、レドックス系重合開始剤として使用することができる。この還元剤としては、特に限定されないが、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;などが挙げられる。これらの還元剤は単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。還元剤の使用量は、過酸化物100重量部に対して3〜1000重量部であることが好ましい。
【0023】
乳化重合する際に使用する水の量は、使用する全単量体100重量部に対して、80〜600重量部が好ましく、100〜200重量部が特に好ましい。
【0024】
単量体の添加方法としては、たとえば、反応容器に使用する単量体を一括して添加する方法、重合の進行に従って連続的または断続的に添加する方法、単量体の一部を添加して特定の転化率まで反応させ、その後、残りの単量体を連続的または断続的に添加して重合する方法等が挙げられ、いずれの方法を採用してもよい。単量体を混合して連続的または断続的に添加する場合、混合物の組成は、一定としても、あるいは変化させてもよい。また、各単量体は、使用する各種単量体を予め混合してから反応容器に添加しても、あるいは別々に反応容器に添加してもよい。
【0025】
さらに、必要に応じて、キレート剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤、粒子径調整剤等の重合副資材を用いることができ、これらは種類、使用量とも特に限定されない。
【0026】
乳化重合を行う際の重合温度は、特に限定されないが、通常、5〜95℃、好ましくは30〜70℃である。重合時間は5〜40時間程度である。
【0027】
以上のように単量体混合物を乳化重合し、所定の重合転化率に達した時点で、重合系を冷却したり、重合停止剤を添加したりして、重合反応を停止する。重合反応を停止する際の重合転化率は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは93重量%以上である。
【0028】
重合停止剤としては、特に限定されないが、たとえば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ハイドロキノン誘導体、カテコール誘導体、ならびに、ヒドロキシジメチルベンゼンチオカルボン酸、ヒドロキシジエチルベンゼンジチオカルボン酸、ヒドロキシジブチルベンゼンジチオカルボン酸などの芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸およびこれらのアルカリ金属塩などが挙げられる。重合停止剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.05〜2重量部である。
【0029】
重合反応を停止した後、所望により、未反応の単量体を除去し、固形分濃度やpHを調整することで、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスを得ることができる。
【0030】
また、本発明で用いるカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスには、必要に応じて、老化防止剤、防腐剤、抗菌剤、分散剤などを適宜添加してもよい。
【0031】
本発明で用いるカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスの固形分濃度は、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜45重量%である。固形分濃度を上記範囲とすることにより、ラテックスの粘度が適度なものとなり、ラテックスの配管での移送や調合タンク内での撹拌をより容易に行うことができるようになるとともに、このラテックスを用いて得られる膜成形体の膜厚を適度なものとすることができ、膜成形体の引張強度をより高いものとすることができる。
【0032】
本発明で用いるカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスの数平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは60〜300nm、より好ましくは80〜150nmである。粒子径は、乳化剤および重合開始剤の使用量を調節するなどの方法により、所望の値に調整することができる。
【0033】
次亜塩素酸塩
また、本発明のラテックス組成物は、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスに加えて、次亜塩素酸塩を含有する。
【0034】
本発明で用いる次亜塩素酸塩は、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスを構成するカルボキシル基含有ニトリルゴムのカルボキシル基と反応することにより、架橋構造を形成することができるものであり、このような次亜塩素酸塩をカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスに配合することにより、得られるラテックス組成物を用いて製造される膜成形体を、引張強度が高く、耐久性に優れたものとすることが可能となる。本発明によれば、酸化亜鉛、硫黄および加硫促進剤を使用することなく、特に、遅延型アレルギー(Type IV)の症状の発生原因となる加硫促進剤(たとえば、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤など)を使用することなく、次亜塩素酸塩を用いて架橋構造を形成し、ディップ成形体などの膜成形体を製造することによって、得られる膜成形体について、引張強度および耐久性を十分なものとしながら、遅延型アレルギー(Type IV)の症状の発生を抑制することが可能となる。しかも、本発明のラテックス組成物においては、天然ゴムではなく、合成ゴムであるカルボキシル基含有ニトリルゴムを使用しているため、得られる膜成形体について、天然ゴムに含まれる蛋白質に起因する即時型アレルギー(Type I)の症状の発生をも抑制することができる。
【0035】
次亜塩素酸塩としては、次亜塩素酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が挙げられ、たとえば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸リチウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸マグネシウム、次亜塩素酸バリウムなどが挙げられ、これらのなかでも、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウムが好ましく、次亜塩素酸ナトリウムがより好ましい。これらの次亜塩素酸塩は単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
【0036】
本発明のラテックス組成物中における、次亜塩素酸塩の含有割合は、ラテックスに含まれるカルボキシル基含有ニトリルゴム100重量部に対して、好ましくは0.1〜2.5重量部、より好ましくは0.5〜2.0重量部、さらに好ましくは0.8〜1.7重量部である。次亜塩素酸塩の含有割合を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体などの膜成形体について、遅延型アレルギー(Type IV)の症状の発生を抑制しながら、引張強度および耐久性をより向上させることができる。
【0037】
本発明のラテックス組成物においては、次亜塩素酸塩の配合方法は、最終的にカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと次亜塩素酸塩とが混合した状態となる方法であればよく、特に限定されないが、たとえば、上述したカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスを得た後、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスに次亜塩素酸塩を配合する方法などが挙げられる。
【0038】
ラテックス組成物
本発明のラテックス組成物は、上述したカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと、次亜塩素酸塩とを含有するものである。
【0039】
本発明のラテックス組成物は、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス、および次亜塩素酸塩を含有するものであればよいが、さらに硫黄系加硫剤を含有してもよい。
硫黄系加硫剤としては、たとえば、粉末硫黄、硫黄華、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等の硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリン・ジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、カプロラクタムジスルフィド(N,N’−ジチオ−ビス(ヘキサヒドロ−2H−アゼピノン−2))、含りんポリスルフィド、高分子多硫化物、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等の硫黄含有化合物が挙げられる。これらのなかでも、硫黄が好ましく使用できる。架橋剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
硫黄系加硫剤の含有量は、特に限定されないが、カルボキシル基含有ニトリルゴム100重量部に対して、好ましくは3.0重量部以下、より好ましくは1.5重量部以下である。硫黄系加硫剤の含有量を上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体などの膜成形体において、遅延型アレルギー(Type IV)の症状の発生を抑制しながら、引張強度をより高めることができる。
【0041】
また、本発明のラテックス組成物は、得られるディップ成形体などの膜成形体において、遅延型アレルギー(Type IV)の症状の発生を抑制可能な範囲であれば、さらに架橋促進剤を含有してもよい。
架橋促進剤としては、ディップ成形において通常用いられるものが使用でき、たとえば、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸などのジチオカルバミン酸類およびそれらの亜鉛塩;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、2−メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジエチルチオ・カルバイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(2,6−ジメチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2−(4′−モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、4−モルホニリル−2−ベンゾチアジル・ジスルフィド、1,3−ビス(2−ベンゾチアジル・メルカプトメチル)ユリアなどが挙げられるが、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、2ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛が好ましい。架橋促進剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
本発明のラテックス組成物には、さらに、pH調整剤;老化防止剤;分散剤;カーボンブラック、シリカ、タルク等の補強剤;炭酸カルシウム、クレー等の充填剤;紫外線吸収剤;可塑剤;等の添加剤を必要に応じて配合することができる。
【0043】
pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;アンモニア;トリメチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン化合物;等が挙げられるが、アルカリ金属の水酸化物が好ましい。
【0044】
老化防止剤としては、2,6−ジ−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、スチレン化フェノール、2,2’−メチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、アルキル化ビスフェノール、p−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、などの硫黄原子を含有しないフェノール系老化防止剤;2,2’−チオビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−o−クレゾール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノールなどのチオビスフェノール系老化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコール・ジホスファイトなどの亜燐酸エステル系老化防止剤;チオジプロピオン酸ジラウリルなどの硫黄エステル系老化防止剤;フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)−ジフェニルアミン、4,4’―(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物などのアミン系老化防止剤;6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどのキノリン系老化防止剤;2,5−ジ−(t−アミル)ハイドロキノンなどのハイドロキノン系老化防止剤;などが挙げられる。これらの老化防止剤は、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0045】
老化防止剤の含有量は、カルボキシル基含有ニトリルゴム100重量部に対して、好ましくは0.05〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0046】
本発明のラテックス組成物に各種配合剤を混合する方法としては、特に限定されないが、たとえば、上述したようにしてカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス、および次亜塩素酸塩を含有するラテックス組成物を得た後、ボールミル、ニーダー、ディスパー等の分散機を用いて、ラテックス組成物に、必要に応じて配合される各種配合剤を混合する方法や、上記の分散機を用いて、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス以外の配合成分の水性分散液を調製した後、該水性分散液を、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスに混合する方法などが挙げられる。
【0047】
なお、本発明のラテックス組成物のpHは、好ましくは8.5〜13.0、より好ましくは9.0〜13.0、さらに好ましくは9.5〜13.0である。ラテックス組成物のpHを上記範囲とすることにより、得られるディップ成形体について、引張強度および耐久性をより向上させることができる。
【0048】
特に、ラテックス組成物のpHは、得られるディップ成形体の引張強度および耐久性をさらに向上させることができるという観点より、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスを構成するカルボキシル基含有ニトリルゴムにおけるエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の含有割合に応じて、適宜調整することが好ましい。たとえば、(1)カルボキシル基含有ニトリルゴムにおけるエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の含有割合が2.0〜4.5重量%である場合には、ラテックス組成物のpHを、10.0〜13.0に調整することが好ましく、11.0〜13.0に調整することがより好ましい。また、(2)カルボキシル基含有ニトリルゴムにおけるエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の含有割合が4.6〜7.0重量%である場合には、ラテックス組成物のpHを、9.0〜13.0に調整することが好ましく、10.0〜12.5に調整することがより好ましい。さらに、(3)カルボキシル基含有ニトリルゴムにおけるエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の含有割合が7.1〜10.0重量%である場合には、ラテックス組成物のpHを、8.5〜11.0に調整することが好ましく、9.5〜11.0に調整することがより好ましい。
【0049】
また、本発明のラテックス組成物の固形分濃度は、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは10〜55重量%である。
【0050】
本発明のラテックス組成物は、硫黄系加硫剤を含有する場合には、得られるディップ成形体などの膜成形体の機械的特性をより高めるという観点より、ディップ成形に供する前に、熟成(前架橋)させることが好ましい。前架橋する時間は、特に限定されず、前架橋の温度にも依存するが、好ましくは1〜14日間であり、より好ましくは1〜7日間である。なお、前架橋の温度は、好ましくは20〜40℃である。
そして、前架橋した後、ディップ成形に供されるまで、好ましくは10〜30℃の温度で貯蔵することが好ましい。高温のまま貯蔵すると、得られるディップ成形体などの膜成形体の引張強度が低下する場合がある。
【0051】
膜成形体
本発明の膜成形体は、本発明のラテックス組成物からなる膜状の成形体である。本発明の膜成形体の膜厚は、好ましくは0.03〜0.50mm、より好ましくは0.05〜0.40mm、特に好ましくは0.08〜0.30mmである。
【0052】
本発明の膜成形体としては、特に限定されないが、本発明のラテックス組成物をディップ成形して得られるディップ成形体であることが好適である。ディップ成形は、ラテックス組成物に型を浸漬し、型の表面に当該組成物を沈着させ、次に型を当該組成物から引き上げ、その後、型の表面に沈着した当該組成物を乾燥させる方法である。なお、ラテックス組成物に浸漬される前の型は予熱しておいてもよい。また、型をラテックス組成物に浸漬する前、または、型をラテックス組成物から引き上げた後、必要に応じて凝固剤を使用できる。
【0053】
凝固剤の使用方法の具体例としては、ラテックス組成物に浸漬する前の型を凝固剤の溶液に浸漬して型に凝固剤を付着させる方法(アノード凝着浸漬法)、ラテックス組成物を沈着させた型を凝固剤溶液に浸漬する方法(ティーグ凝着浸漬法)などがあるが、厚みムラの少ないディップ成形体が得られる点で、アノード凝着浸漬法が好ましい。
【0054】
凝固剤の具体例としては、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウムなどのハロゲン化金属;硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛などの硝酸塩;酢酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛など酢酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウムなどの硫酸塩;などの水溶性多価金属塩である。なかでも、カルシウム塩が好ましく、硝酸カルシウムがより好ましい。これらの水溶性多価金属塩は、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0055】
凝固剤は、通常、水、アルコール、またはそれらの混合物の溶液として使用することができ、好ましくは水溶液の状態で使用する。この水溶液は、さらにメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒やノニオン性界面活性剤を含有していてもよい。凝固剤の濃度は、水溶性多価金属塩の種類によっても異なるが、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%である。
【0056】
型をラテックス組成物から引き上げた後、通常、加熱して型上に形成された沈着物を乾燥させる。乾燥条件は適宜選択すればよい。
【0057】
ラテックス組成物が架橋剤を含有する場合には、得られたディップ成形層に対し、通常、加熱処理を施し架橋する。加熱処理を施す前に、水、好ましくは30〜70℃の温水に、1〜60分程度浸漬し、水溶性不純物(たとえば、余剰の乳化剤や凝固剤等)を除去してもよい。水溶性不純物の除去操作は、ディップ成形層を加熱処理した後に行なってもよいが、より効率的に水溶性不純物を除去できる点から、加熱処理前に行なうことが好ましい。
【0058】
ディップ成形層の架橋(すなわち、カルボキシル基含有ニトリルゴムのカルボキシル基と次亜塩素酸塩との反応による架橋構造の形成)は、温度を、好ましくは100〜140℃、より好ましくは110〜130℃、加熱時間を、好ましくは5〜80分、より好ましくは10〜40分として加熱処理を施すことが好ましい。加熱の方法としては、赤外線や加熱空気による外部加熱または高周波による内部加熱による方法が採用できる。なかでも、加熱空気による外部加熱が好ましい。
【0059】
そして、ディップ成形層をディップ成形用型から脱着することによって、ディップ成形体が、膜状の膜成形体として得られる。脱着方法としては、手で成形用型から剥したり、水圧や圧縮空気の圧力により剥したりする方法を採用することができる。なお、脱着後、更に60〜120℃の温度で、10〜120分の加熱処理を行なってもよい。
なお、本発明の膜成形体は、上述した本発明のラテックス組成物を、ディップ成形する方法以外にも、上述した本発明のラテックス組成物を、膜状に成形できる方法(たとえば、塗布法等)であれば、いずれの方法で得られるものであってもよい。
【0060】
本発明のディップ成形体を含む本発明の膜成形体は、上述した本発明のラテックス組成物を用いて得られるものであるため、引張強度が高く、耐久性に優れるものであり、たとえば、手袋として特に好適に用いることができる。膜成形体が手袋である場合、膜成形体同士の接触面における密着を防止し、着脱の際の滑りをよくするために、タルク、炭酸カルシウムなどの無機微粒子または澱粉粒子などの有機微粒子を手袋表面に散布したり、微粒子を含有するエラストマー層を手袋表面に形成したり、手袋の表面層を塩素化したりしてもよい。
【0061】
また、本発明のディップ成形体を含む本発明の膜成形体は、上記手袋の他にも、哺乳瓶用乳首、スポイト、チューブ、水枕、バルーンサック、カテーテル、コンドームなどの医療用品;風船、人形、ボールなどの玩具;加圧成形用バック、ガス貯蔵用バックなどの工業用品;指サックなどにも用いることができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明が詳細に説明されるが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、以下の「部」は、特に断りのない限り、重量基準である。なお、各種の物性は以下のように測定された。
【0063】
固形分濃度
アルミ皿(重量:X1)に試料2gを精秤し(重量:X2)、これを105℃の熱風乾燥器内で2時間乾燥させた。次いで、デシケーター内で冷却した後、アルミ皿ごと重量を測定し(重量:X3)、下記の計算式にしたがって、固形分濃度を算出した。
固形分濃度(重量%)=(X3−X1)×100/X2
【0064】
1,3−ブタジエン単位の含有割合測定
1,3−ブタジエン単位の含有割合は、共役ジエン系共重合体のヨウ素価(JIS K 6235による)を測定することにより算出した。
【0065】
アクリロニトリル単位の含有割合測定
アクリロニトリル単位の含有割合は、JIS K6384に従い、ケルダール法により、共役ジエン系共重合体中の窒素含量を測定することにより算出した。
【0066】
メタクリル酸単位の含有割合測定
2mm角の共役ジエン系共重合体0.2gに、2−ブタノン100mlを加えて16時間攪拌した後、エタノール20mlおよび水10mlを加え、攪拌しながら水酸化カリウムの0.02N含水エタノール溶液を用いて、室温でチモールフタレインを指示薬とする滴定により、共役ジエン系共重合体100gに対するカルボキシル基のモル数として求め(単位:ephr)、求めたカルボキシル基のモル数をメタクリル酸単位の量に換算することにより、共役ジエン系共重合体におけるメタクリル酸単位の含有割合を算出した。
【0067】
ディップ成形体の引張強度
ASTM D412に基づいて、膜厚が約0.2mmのフィルム状のディップ成形体を、ダンベル(商品名「スーパーダンベル(型式:SDMK−100C)」、ダンベル社製)で打ち抜き、引張強度測定用試験片を作製した。当該試験片をテンシロン万能試験機(商品名「RTG−1210」、オリエンテック社製)で引張速度500mm/minで引っ張り、破断直前の引張強度(単位:MPa)を測定した。
【0068】
装着耐久時間
得られたディップ成形体(ゴム手袋)を、被験者10人が着用し、キーボード入力操作の軽作業を行なった。作業を開始して10分経過する毎に、ゴム手袋の指の股部分を観察し、微小亀裂の発生の有無を確認した。各試験においてゴム手袋に微小亀裂が発生するまでの時間を測定した後、最短および最長の時間を除いた8つのデータ(8人のデータ)を算術平均することで、装着耐久時間を求めた。なお、装着耐久時間の評価は、最大240分まで行なった。この装着耐久時間が長い程、ディップ成形体は装着耐久性に優れていると判断できる。
【0069】
パッチテスト
得られたディップ成形体を、10×10mmのサイズに切断して得た試験片を、被検者10人の腕にそれぞれ貼付した。その後、180分後に貼付部分を観察することで、即時型アレルギー(Type I)のアレルギー症状の発生有無を確認し、さらに48時間後に貼付部分を観察することで、遅延型アレルギー(Type IV)のアレルギー症状の発生有無を確認し、以下の基準で評価した。
○:全ての被検者について、貼付から180分後および48時間後のいずれにおいてもアレルギー症状がみられなかった。
×:全ての被検者について、貼付から180分後にはアレルギー症状がみられなかったが、一部の被検者については、貼付から48時間後にアレルギー症状がみられた。
【0070】
製造例1
カルボキシル基含有ニトリルゴム(A−1)のラテックスの製造
耐圧重合反応器に、アクリロニトリル27.0部、メタクリル酸5.5部、分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン0.5部、脱イオン水150部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.5部を仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン67.5部を仕込んだ。次いで、過硫酸カリウム0.2部およびエチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.1部を仕込んだ後、系内温度を39℃にして重合反応を開始した。重合転化率が97%になるまで重合反応を継続し、その後、ジエチルヒドロキシルアミン0.1部を添加して重合反応を停止した。そして、得られた共重合体ラテックスから、未反応単量体を減圧にして留去した後、固形分濃度とpHを調整し、固形分濃度45%、pH8.5のカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−1)のラテックスを得た。得られたラテックス中に含まれるカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−1)について、上記方法にしたがって、1,3−ブタジエン単位、アクリロニトリル単位、およびメタクリル酸単位の含有割合を測定したところ、各単量体単位の含有割合は、各単量体の使用量(耐圧重合反応器に仕込んだ量)とほぼ同程度であった(後述する製造例2のカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−2)、製造例3のカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−3)、製造例4のニトリルゴム(A’−4)についても同様。)。
【0071】
製造例2
カルボキシル基含有ニトリルゴム(A−2)のラテックスの製造
アクリロニトリルの使用量を27.0部から22.0部に、メタクリル酸の使用量を5.5部から4.0部に、1,3−ブタジエンの使用量を67.5部から74.0部にそれぞれ変更した以外は、製造例1と同様にして、固形分濃度45%、pH8.5のカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−2)のラテックスを得た。
【0072】
製造例3
カルボキシル基含有ニトリルゴム(A−3)のラテックスの製造
アクリロニトリルの使用量を27.0部から31.0部に、メタクリル酸の使用量を5.5部から8.0部に、1,3−ブタジエンの使用量を67.5部から61.0部にそれぞれ変更した以外は、製造例1と同様にして、固形分濃度45%、pH8.5のカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−3)のラテックスを得た。
【0073】
製造例4
ニトリルゴム(A’−4)のラテックスの製造
アクリロニトリルの使用量を27.0部から40.0部に、1,3−ブタジエンの使用量を67.5部から60.0部にそれぞれ変更し、メタクリル酸は使用しなかった以外は、製造例1と同様にして、固形分濃度45%、pH8.5のニトリルゴム(A’−4)のラテックスを得た。
【0074】
製造例5
カルボキシ変性合成ポリイソプレン(A’−5)のラテックスの製造
重量平均分子量が1,300,000である合成ポリイソプレン(商品名「NIPOL IR2200L」、日本ゼオン社製、イソプレンの単独重合体、シス結合単位量98%)をシクロヘキサンと混合し、攪拌しながら温度を60℃に昇温して溶解し、B形粘度計で測定した粘度が12,000mPa・sの合成ポリイソプレンのシクロヘキサン溶液(a)を調整した(固形分濃度8重量%)。
【0075】
一方、ロジン酸ナトリウム20部を水に添加し、温度を60℃に昇温して溶解し、濃度1.5重量%のアニオン性界面活性剤水溶液(b)を調整した。
【0076】
次に、上記シクロヘキサン溶液(a)と、上記アニオン性界面活性剤水溶液(b)とを、重量比で1:1.5となるように、ミキサー(商品名「マルチラインミキサーMS26−MMR−5.5L」、佐竹化学機械工業社製)を用いて混合し、続いて、乳化装置(商品名「マイルダーMDN310」、太平洋機工社製)を用いて、回転数4100rpmで混合及び乳化して、乳化液(c)を得た。なお、その際、シクロヘキサン溶液(a)とアニオン性界面活性剤水溶液(b)の合計のフィード流速は2,000kg/hr、温度は60℃、背圧(ゲージ圧)は0.5MPaとした。
【0077】
次いで、乳化液(c)を、−0.01〜−0.09MPa(ゲージ圧)の減圧下で80℃に加温し、シクロヘキサンを留去し、合成ポリイソプレンの水分散液(d)を得た。その際、消泡剤(商品名「SM5515」、東レ・ダウコーニング社製)を、乳化液(c)中の合成ポリイソプレンに対して300重量ppmの量になるよう、噴霧しながら連続添加した。なお、シクロヘキサンを留去する際には、乳化液(c)がタンクの容積の70体積%以下になるように調整し、かつ、攪拌翼として3段の傾斜パドル翼を用い、60rpmでゆっくり攪拌を実施した。
【0078】
そして、シクロヘキサンの留去が完了した後、得られた合成ポリイソプレンの水分散液(d)を、連続遠心分離機(商品名「SRG510」、アルファラバル社製)を用いて、4,000〜5,000Gで遠心分離し、軽液としての固形分濃度56重量%の合成ポリイソプレンのラテックス(e)を得た。なお、遠心分離の条件は、遠心分離前の水分散液(d)の固形分濃度10重量%、連続遠心分離時の流速は1300kg/hr、遠心分離機の背圧(ゲージ圧)は1.5MPaとした。得られた合成ポリイソプレンのラテックス(e)は、固形分濃度が60重量%であった。
【0079】
次いで、得られた合成ポリイソプレンのラテックス(e)中の合成ポリイソプレン100部に対して、蒸留水850部を添加して希釈した。この希釈したラテックスを窒素置換された攪拌機付き重合反応容器に仕込み、撹拌しながら温度を30℃にまで加温した。また、別の容器を用い、メタクリル酸5.0部と蒸留水16部を混合してメタクリル酸希釈液を調製した。このメタクリル酸希釈液を、30℃にまで加温した重合反応容器内に、30分間かけて添加した。
【0080】
さらに、別の容器を用い、蒸留水7部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(商品名「SFS」、三菱ガス化学社製)0.32部、硫酸第一鉄(商品名「フロストFe」、中部キレスト社製)0.01部からなる溶液(f)を調製した。この溶液(f)を重合反応容器内に添加した後、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド(商品名「パーオクタH」、日本油脂社製)0.5部を添加して30℃で1時間反応を行い、さらに70℃で2時間反応させることで、合成ポリイソプレンにメタクリル酸をグラフト重合させた。グラフト重合の転化率は、99重量%であった。
【0081】
次いで、水酸化ナトリウムを添加してpHを10に調整した後、これを連続遠心分離機(商品名「SRG510」、アルファラバル社製)を用いて、4,000〜5,000Gで遠心分離(流速は1700kg/hr、遠心分離機の背圧(ゲージ圧)は0.08MPa)を行い、固形分濃度が55重量%であるカルボキシ変性合成ポリイソプレン(A’−5)のラテックスを得た。得られたラテックス中に含まれるカルボキシ変性合成ポリイソプレン(A’−5)における、合成ポリイソプレンに対する、カルボキシ変性の割合は、1.7部であった。
【0082】
実施例1
ラテックス組成物の調製
製造例1で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−1)のラテックス222.2部(カルボキシル基含有ニトリルゴム(A−1)換算で100部)に、固形分換算で、次亜塩素酸ナトリウム0.8部、水酸化カリウム2.3部となるように、各配合剤の水溶液を添加して、pHを12.0に調整したディップ成形用組成物(固形分濃度:19重量%)を得た。そして、得られたラテックス組成物について、30℃に調整された恒温水槽で48時間熟成した。
【0083】
ディップ成形体の製造
市販のセラミック製手型(シンコー社製)を洗浄し、70℃のオーブン内で予備加熱した後、18重量%の硝酸カルシウムおよび0.05重量%のポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名「エマルゲン109P」、花王社製)を含有する凝固剤水溶液に5秒間浸漬し、凝固剤水溶液から取り出した。次いで、手型を70℃のオーブン内で30分以上乾燥させることで、手型に凝固剤を付着させて、手型を凝固剤により被覆した。
【0084】
その後、凝固剤で被覆された手型を、オーブンから取り出し、上述した熟成後のラテックス組成物に10秒間浸漬した。次いで、この手型を、室温で10分間風乾してから、60℃の温水中に5分間浸漬して水溶性不純物を溶出させて、手型にディップ成形層を形成した。その後、手型に形成したディップ成形層を、オーブンにより温度130℃、30分間の条件で加熱することにより架橋させた後、室温まで冷却し、タルクを散布してから手型から剥離して、ディップ成形体(ゴム手袋)を得た。そして、得られたディップ成形体(ゴム手袋)について、上記方法にしたがって、引張強度および装着耐久時間の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
実施例2
ラテックス組成物を調製する際に、次亜塩素酸ナトリウムの配合量を0.8部から1.5部に変更し、水酸化カリウムに代えて水酸化ナトリウム0.7部を使用した以外は、実施例1と同様にして、pH10.0のラテックス組成物、およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
実施例3
ラテックス組成物を調製する際に、次亜塩素酸ナトリウムの配合量を0.8部から1.5部に、水酸化カリウムの配合量を2.3部から2.0部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、pH12.0のラテックス組成物、およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0087】
実施例4
ラテックス組成物を調製する際に、次亜塩素酸ナトリウムの配合量を0.8部から1.5部に、水酸化カリウムの配合量を2.3部から2.5部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、pH12.5のラテックス組成物、およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
実施例5
ラテックス組成物を調製する際に、次亜塩素酸ナトリウムの配合量を0.8部から1.5部に変更し、水酸化カリウムに代えて水酸化ナトリウム1.8部を使用した以外は、実施例1と同様にして、pH12.5のラテックス組成物、およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
実施例6
ラテックス組成物を調製する際に、製造例1で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−1)のラテックスに代えて、製造例2で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−2)のラテックス(カルボキシル基含有ニトリルゴム(A−2)換算で100部)を使用し、さらに、次亜塩素酸ナトリウムの配合量を0.8部から1.5部に、水酸化カリウムの配合量を2.3部から1.5部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、pH11.0のラテックス組成物、およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
実施例7
ラテックス組成物を調製する際に、水酸化カリウムの配合量を1.5部から2.0部に変更した以外は、実施例6と同様にして、pH12.0のラテックス組成物、およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0091】
実施例8
ラテックス組成物を調製する際に、水酸化カリウムに代えて水酸化ナトリウム2.0部を使用した以外は、実施例6と同様にして、pH13.0のラテックス組成物、およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0092】
実施例9
ラテックス組成物を調製する際に、製造例1で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−1)のラテックスに代えて、製造例3で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−3)のラテックス(カルボキシル基含有ニトリルゴム(A−3)換算で100部)を使用し、さらに、次亜塩素酸ナトリウムの配合量を0.8部から1.0部に変更し、水酸化カリウムを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、pH9.5のラテックス組成物、およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
実施例10
ラテックス組成物を調製する際に、次亜塩素酸ナトリウムの配合量を1.0部から1.5部に変更した以外は、実施例9と同様にして、pH10.0のラテックス組成物、およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0094】
実施例11
ラテックス組成物を調製する際に、次亜塩素酸ナトリウムの配合量を1.0部から1.7部に変更し、さらに、水酸化カリウム1.7部を配合した以外は、実施例9と同様にして、pH11.0のラテックス組成物、およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0095】
比較例1
ラテックス組成物を調製する際に、次亜塩素酸ナトリウムに代えて、コロイド硫黄1.0部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛0.5部、および酸化亜鉛1.5部を使用し、水酸化カリウムの配合量を2.3部から1.3部に変更した以外は、実施例1と同様にして、pH10.0のラテックス組成物、およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
比較例2
ラテックス組成物を調製する際に、次亜塩素酸ナトリウムを配合せず、水酸化カリウムの配合量を2.3部から3.0部に変更した以外は、実施例1と同様にして、pH12.0のラテックス組成物、およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
比較例3
ラテックス組成物を調製する際に、製造例1で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−1)のラテックスに代えて、製造例4で得られたニトリルゴム(A’−4)のラテックス(ニトリルゴム(A’−4)換算で100部)を使用し、さらに、次亜塩素酸ナトリウムの配合量を0.8部から1.5部に、水酸化カリウムの配合量を2.3部から0.2部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、pH12.0のラテックス組成物、およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
比較例4
ラテックス組成物を調製する際に、製造例1で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴム(A−1)のラテックスに代えて、製造例5で得られたカルボキシ変性合成ポリイソプレン(A’−5)のラテックス(カルボキシ変性合成ポリイソプレン(A’−5)換算で100部)を使用し、さらに、次亜塩素酸ナトリウムの配合量を0.8部から1.0部に変更し、水酸化カリウムを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、pH12.0のラテックス組成物、およびディップ成形体(ゴム手袋)を製造し、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
表1より、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと、次亜塩素酸塩とを含有するラテックス組成物を用いて製造されたディップ成形体は、引張強度に優れ、装着耐久時間が長いことから装着耐久性にも優れたものであった(実施例1〜11)。さらに、実施例1〜11のラテックス組成物は、遅延型アレルギー(Type IV)の症状の発生原因となる加硫促進剤を含有しないことから、実施例1〜11のラテックス組成物を用いて製造されたディップ成形体は、遅延型アレルギー(Type IV)の症状の発生を良好に抑制することができるものであると考えられる。
【0101】
一方、次亜塩素酸塩に代えて、コロイド硫黄およびジブチルジチオカルバミン酸亜鉛を配合して得られたラテックス組成物を用いた場合には、製造されたディップ成形体は、引張強度および装着耐久性は良好であるものの、加硫促進剤であるジブチルジチオカルバミン酸亜鉛が含まれていることから、遅延型アレルギー(Type IV)の症状を発生させてしまうものであると考えられる(比較例1)。
また、次亜塩素酸塩を配合せず、コロイド硫黄およびジブチルジチオカルバミン酸亜鉛も配合しなかったラテックス組成物を用いた場合には、製造されたディップ成形体は、装着耐久時間が短いことから装着耐久性に劣るものであった(比較例2)。
また、カルボキシル基を含有しないニトリルゴムを使用して得られたラテックス組成物を用いた場合には、製造されたディップ成形体は、引張強度が低く、しかも、装着耐久時間が短いことから装着耐久性にも劣るものであった(比較例3)。
また、カルボキシル基を含有していても、ニトリルゴムではなくポリイソプレンを使用して得られたラテックス組成物を用いた場合には、製造されたディップ成形体は、引張強度が低く、しかも、装着耐久時間が短いことから装着耐久性にも劣るものであった(比較例4)。