(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記クロロプレン系ゴムが、クロロプレン単一ポリマー、又は、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、アクリロニトリル、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、及びスチレンから選ばれる少なくとも一種以上とクロロプレンとの共重合体である、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
前記リン酸系化合物が、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスファイトから選ばれる少なくとも一種以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
前記ベンズイミダゾール系化合物が、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩から選ばれる少なくとも一種以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に記載される技術だけでは、耐オゾン性や機械的強度、加工安定性などのいずれかが劣るという問題点がある。例えば、クロロプレンゴムに天然ゴムをブレンドすると機械的強度は改善されるが、耐オゾン性が悪化する場合がある。また、クロロプレンゴムに有機過酸化物を使用すると圧縮永久歪みは改善されるが、加工安定性が著しく悪化する。このため、機械的強度と加工安定性が良好で、かつ圧縮永久歪みにも優れたゴム組成物が求められていた。
【0006】
そこで、本発明は、クロロプレン系ゴム分野において、機械的強度と高温条件下での圧縮永久歪みが良好で、かつ加工安定性にも優れたゴム組成物、その加硫物及び成形体を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、前記課題を解決するために、クロロプレン系ゴムと併用する成分について、鋭意研究を行った結果、可塑剤であるリン酸系化合物が、機械的強度及び高温条件下での圧縮永久歪みを改善させることを見出した。しかし、その反面で、加工安定性が低下してしまうことが分かった。そして更に研究を重ねた結果、加硫速度を調整する化合物の中で、特定量のベンズイミダゾール系化合物及びN−シクロヘキシルチオフタルイミドの少なくとも一方を併用し、かつ、リン酸系化合物の配合量も特定の範囲とすることで、機械的強度及び高温条件下での圧縮永久歪みを改善させつつ、加工安定性も向上させることに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明では、まず、クロロプレン系ゴム100質量部に対して、
リン酸系化合物を、0.5〜15.0質量部と、
ベンズイミダゾール系化合物及びN−シクロヘキシルチオフタルイミドの少なくとも一方を、それぞれ0.05〜3.0質量部と、
を含有するゴム組成物を提供する。
また、本発明では、クロロプレン系ゴム100質量部に対して、
リン酸系化合物を、0.5〜15.0質量部と、
ベンズイミダゾール系化合物を0.05〜3.0質量部と、
N−シクロヘキシルチオフタルイミドを0.05〜3.0質量部と、
を含有するゴム組成物を提供する。
本発明に係るゴム組成物において、前記クロロプレン系ゴムとしては、クロロプレン単一ポリマー、又は、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、アクリロニトリル、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、及びスチレンから選ばれる少なくとも一種以上とクロロプレンとの共重合体を用いることができる。
本発明に係るゴム組成物において、前記リン酸系化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスファイトから選ばれる少なくとも一種以上を用いることができる。
本発明に係るゴム組成物において、前記ベンズイミダゾール系化合物としては、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩から選ばれる少なくとも一種以上を用いることができる。
【0009】
本発明では、次に、前述した本発明に係るゴム組成物を加硫させた加硫物、及び、前述した本発明に係るゴム組成物を成形後又は成形時に加硫して得た加硫成形体を提供する。
本発明に係る加硫成形体は、伝動ベルト、空気バネ、シール、パッキン、防振材、又はホースとして用いることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クロロプレン系ゴム分野において、機械的強度と高温条件下での圧縮永久歪みが良好で、かつ加工安定性にも優れたゴム組成物、その加硫物及び成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0012】
<ゴム組成物>(第1の実施形態)
本実施形態のゴム組成物は、ゴム成分がクロロプレン系ゴムであり、特定量のリン酸系化合物と、特定量のベンズイミダゾール系化合物及び特定量のN−シクロヘキシルチオフタルイミドの少なくとも一方、又は両方を含有する。また、本実施形態のゴム組成物には、前述した各成分に加えて、老化防止剤、カーボンブラック、軟化剤及び充填剤などを配合することもできる。以下、各成分について詳細に説明する。
【0013】
[クロロプレン系ゴム]
ゴム成分を構成するクロロプレン系ゴムは、クロロプレンを主成分とする原料単量体を重合した後、必要に応じて洗浄や乾燥を行うことにより得られ、重合反応の生成物である。クロロプレン単独重合体又はクロロプレンと他の単量体との共重合体の他に、重合時に添加された乳化剤、分散剤、触媒、触媒活性化剤、連鎖移動剤及び重合禁止剤などが含まれている場合がある。
【0014】
クロロプレンと共重合可能な単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル類、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート及び2−エチルヘキシルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ(メタ)アクリレート類、並びに2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、エチレン、スチレン、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド及びアクリロニトリルなどが挙げられる。これらの中でも、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、アクリロニトリル、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、スチレンがより好ましい。
【0015】
なお、クロロプレンと共重合する単量体は、1種類に限定されるものではなく、例えばクロロプレンを含む2種以上の単量体を共重合したものを使用することもできる。また、クロロプレン共重合体のポリマー構造は、特に限定されるものではなく、ブロック共重合体あるいは、統計的共重合体でもよい。
【0016】
例えば、アクリロニトリルとクロロプレンとの統計的共重合体は、重合反応開始後にクロロプレンを連続添加又は10回以上間欠分添することにより製造される。その際、重合反応開始時の時刻をt(0)、nを1以上の整数として、時刻t(n−1)と時刻t(n)との間の時間dt(n)におけるクロロプレンとアクリロニトリルの重合転換量の総量に基づいて、時刻t(n)と時刻t(n+1)との間の時間dt(n+1)におけるクロロプレンの添加量を決定し、未反応のクロロプレンとアクリロニトリルとの比を一定に保つことを特徴とする。
【0017】
なお、上述の「統計的共重合体」は、J.C.Randall 「POLYMER SEQUENCE DETERMINATION, Carbon−13 NMR Method」 Academic Press, New York, 1977, 71−78ページに記述されているように、ベルヌーイの統計モデルにより、又は一次又は二次のマルコフの統計モデルにより、記述できる共重合体であることを意味する。アクリロニトリルとクロロプレンとの統計的共重合体は、2元系の単量体から構成される場合、下記Mayo−Lewis式(I)において、重合開始時のクロロプレン単量体とクロロプレン単量体以外のアクリロニトリル単量体との比をd[M1]/d[M2]とし、及び、クロロプレン単量体を下記Mayo−Lewis式(I)において定義されたM1とした時の反応性比r1、r2について、r1は0.3〜3000の範囲、r2は10
−5〜3.0の範囲をとることが、統計学的共重合体を得るのに好ましい。
【0019】
また、アクリル酸エステルとクロロプレンとのブロック共重合体は、アクリル酸エステル重合体のブロックと、クロロプレン重合体のブロックと、をそれぞれ1つ以上含み、下記化学式(1)又は(2)で表される構造の官能基を有する。
【0020】
【化1】
(化学式(1)中、R
1は、水素、塩素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を示す。)
【0022】
製造方法は、下記化学式(3)又は(4)で表される化合物の存在下で、アクリル酸エステル単独、又はアクリル酸エステルと他の単量体とをリビングラジカル乳化重合し、アクリル酸エステル重合体のブロックを合成した後、クロロプレン単独、又はクロロプレンと他の単量体とを混合してリビングラジカル乳化重合し、クロロプレン重合体のブロックを合成する方法と、下記化学式(3)又は(4)で表される化合物の存在下で、クロロプレン単独、又はクロロプレンと他の単量体とを分添してリビングラジカル乳化重合し、クロロプレン重合体のブロックを合成した後、アクリル酸エステル単独、又はアクリル酸エステルと他の単量体とを混合してリビングラジカル乳化重合し、アクリル酸エステル重合体のブロックを合成する方法に大別される。
【0024】
【化4】
(化学式(3)中、R
2は、水素、塩素、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロシクリル基を示す。化学式(3)及び(4)中、R
3〜R
5はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換の飽和、不飽和もしくは芳香族の炭素環、置換もしくは無置換の飽和、不飽和もしくは芳香族の複素環、有機金属種、又は任意の重合体鎖を示す。)
【0025】
一方、クロロプレンゴムは、硫黄変性クロロプレンゴムと非硫黄変性クロロプレンゴムに大別され、非硫黄変性のものは、分子量調整剤の種類によって、更に、メルカプタン変性クロロプレンゴムとキサントゲン変性クロロプレンゴムとに分類される。硫黄変性クロロプレンゴムは、クロロプレンを主成分とする原料単量体と硫黄を共重合し、得られた共重合体をチウラムジスルフィドで可塑化して、所定のムーニー粘度に調整したものである。
【0026】
一方、メルカプタン変性クロロプレンゴムは、分子量調整剤に、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン及びオクチルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン類を使用することにより得られる。また、キサントゲン変性クロロプレンゴムは、分子量調整剤に、アルキルキサントゲン化合物を使用することにより得られる。そして、本実施形態のゴム組成物に配合されるクロロプレン系ゴムは、前述した各種クロロプレン系ゴムのいずれでもよいが、特にメルカプタン変性クロロプレンゴムやキサントゲン変性クロロプレンゴムが好適である。
【0027】
更に、クロロプレンゴムは、その結晶化速度に基づいて、例えば、結晶化速度が遅いタイプ、結晶化速度が中庸であるタイプ及び結晶化速度が速いタイプなどに分類することもできる。そして、本実施形態のゴム組成物は、前述した各タイプのクロロプレンゴムのいずれを用いてもよく、用途などに応じて適宜選択して使用することができる。
【0028】
クロロプレンゴムを製造する方法は、特に限定するものではないが、原料単量体を、乳化剤、重合開始剤及び分子量調整剤などの存在下で、一般に用いられる乳化重合法により重合させればよい。その際、乳化剤には、例えば炭素数が6〜22の飽和又は不飽和の脂肪族のアルカリ金属塩、ロジン酸又は不均化ロジン酸のアルカリ金属塩及びβ−ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物のアルカリ金属塩など、一般にクロロプレンの乳化重合に使用される乳化剤を用いることができる。
【0029】
また、重合開始剤は、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素及びtert−ブチルハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物類のように、一般にクロロプレンの乳化重合に使用される公知の重合開始剤を用いることができる。
【0030】
なお、乳化重合する際の重合温度は、特に限定されるものではないが、生産性及び重合安定性の観点から、0〜50℃であることが好ましく、20〜50℃であることがより好ましい。また、単量体の最終転化率も、特に限定されるものはないが、生産性の観点から、60〜90%の範囲とすることが好ましい。
【0031】
そして、最終転化率が所定の範囲に達した時点で、重合液に重合禁止剤を少量添加して重合反応を停止させるが、その際、重合禁止剤としては、例えば、チオジフェニルアミン、4−tert−ブチルカテコール及び2,2−メチレンビス−4−メチル−6−tert−ブチルフェノールなど、通常用いられるものを用いることができる。また、重合反応後は、例えば、スチームストリッピング法などによって未反応の単量体を除去した後、ラテックスのpHを調整し、常法の凍結凝固、水洗及び熱風乾燥などの方法により、重合体を単離することができる。
【0032】
[リン酸系化合物:ゴム成分100質量部に対して0.5〜15.0質量部]
リン酸系化合物は、可塑剤や老化防止剤としての効果があり、後述する加硫物や成形加硫物の機械的強度を向上させ、高温圧縮永久歪みを改善させる。しかしながら、リン酸系化合物の添加量が、ゴム成分100質量部あたり0.5質量部未満の場合、高温圧縮永久歪みを改善させるのに十分な効果が得られない。一方、リン酸系化合物の添加量が、ゴム成分100質量部あたり15.0質量部を超えると、ゴムの硬度が低くなり、高温圧縮永久歪みが大きくなり、機械的強度が低下する。よって、リン酸系化合物の添加量は、ゴム成分100質量部あたり、0.5〜15.0質量部とする。特に、後述する加硫物や成形加硫物の機械的強度を更に向上させ、高温圧縮永久歪みを更に改善させるためには、ゴム成分100質量部あたり、0.5〜12.0質量部であるのが好ましく、1.0〜10.0質量部であるのがより好ましい。
【0033】
ここで、リン酸系化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。なお、これらは2種類以上併用することもできる。
【0034】
[ベンズイミダゾール系化合物:ゴム成分100質量部に対して0.05〜3.0質量部]
ベンズイミダゾール系化合物は、加硫促進剤としての効果があり、クロロプレン系ゴムの加硫速度を調節して、成型時における加工安定性を向上させる。しかしながら、後述するN−シクロヘキシルチオフタルイミドを用いない場合に、ベンズイミダゾール系化合物の添加量が、ゴム成分100質量部あたり0.05質量部未満の場合には、加工安定性を向上させるのに十分な効果が得られない。一方、ベンズイミダゾール系化合物の添加量が、ゴム成分100質量部あたり3.0質量部を超えると、加硫速度が速くなり、加工安定性等が低下する。ここで、加工安定性とは、スコーチタイムにより評価される。加工安定性は、不良発生率に大きく影響し、例えばスコーチタイムが短いと、高温での成形中に未加硫配合物が加硫されて成形不良が発生する頻度が高くなる。よって、ベンズイミダゾール系化合物の添加量は、ゴム成分100質量部あたり、0.05〜3.0質量部とする。特に、成型時における加工安定性を更に向上させるためには、ゴム成分100質量部あたり、0.1〜2.0質量部であるのが好ましく、特に0.1〜1.0質量部であるのがより好ましい。
【0035】
ここで、ベンズイミダゾール系化合物としては、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩などが挙げられる。なお、これらは2種類以上併用することもできる。
【0036】
[N−シクロヘキシルチオフタルイミド:ゴム成分100質量部に対して0.05〜3.0質量部]
N−シクロヘキシルチオフタルイミドは、スコーチ防止剤としての効果があり、クロロプレン系ゴムの加硫速度を調節して、成型時における加工安定性を向上させる。しかしながら、前記ベンズイミダゾール系化合物を用いない場合に、N−シクロヘキシルチオフタルイミドの添加量が、ゴム成分100質量部あたり0.05質量部未満の場合には、加工安定性を向上させるのに十分な効果が得られない。一方、N−シクロヘキシルチオフタルイミドの添加量が、ゴム成分100質量部あたり3.0質量部を超えると、加硫速度が遅くなりすぎて架橋密度が低下し、機械的強度や高温圧縮永久歪みが低下する。よって、N−シクロヘキシルチオフタルイミドの添加量は、ゴム成分100質量部あたり、0.05〜3.0質量部とする。特に、成型時における加工安定性を更に向上させるためには、ゴム成分100質量部あたり、0.1〜2.0質量部であるのが好ましく、特に0.1〜1.0質量部であるのがより好ましい。
【0037】
[その他]
更に、本実施形態のゴム組成物には、前述した効果が損なわれない範囲で、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば、充填剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤、スコーチ防止剤、加工助剤などを配合することができる。
【0038】
添加可能な加硫剤としては、クロロプレン系ゴムの加硫に一般に用いられる硫黄、チオウレア系、グアニジン系、チウラム系、チアゾール系の有機加硫剤が使用できるが、チオウレア系のものが好ましい。チオウレア系の加硫剤としては、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア、トリメチルチオウレア、トリエチルチオウレア、N,N’−ジフェニルチオウレア等が挙げられ、特にトリメチルチオウレア、エチレンチオウレアが好ましい。また、3−メチルチアゾリジンチオン−2−チアゾールとフェニレンジマレイミドとの混合物、ジメチルアンモニウムハイドロジエンイソフタレートあるいは1,2−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール誘導体等の加硫剤も使用することができる。これらの加硫剤は、上記に挙げたものを2種以上併用してもよい。また、ベリリウム、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、バリウム、ゲルマニウム、チタニウム、錫、ジルコニウム、アンチモン、バナジウム、ビスマス、モリブデン、タングステン、テルル、セレン、鉄、ニッケル、コバルト、オスミウムなどの金属単体、及びこれら金属の酸化物や水酸化物を加硫剤として使用することができる。これら添加可能な加硫剤のなかでも、特に、酸化カルシウムや酸化亜鉛、二酸化アンチモン、三酸化アンチモン、酸化マグネシウムは、加硫効果が高いため好ましい。また、これらの加硫剤は2種以上を併用してもよい。なお、加硫剤は、ゴム成分100質量部に対して合計で0.1質量部以上15質量部以下の範囲で添加することが好ましい。
【0039】
充填剤又は補強剤は、ゴムの硬さを調整したり機械強度を向上させるために添加するものであり、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウムが挙げられる。その他の無機充填剤としても、特に限定されないが、γ−アルミナ及びα−アルミナなどのアルミナ(Al
2O
3)、ベーマイト及びダイアスポアなどのアルミナ一水和物(Al
2O
3・H
2O)、ギブサイト及びバイヤライトなどの水酸化アルミニウム[Al(OH)
3]、炭酸アルミニウム[Al
2(CO
3)
2]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)
2]、炭酸マグネシウム(MgCO
3)、タルク(3MgO・4SiO
2・H
2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO
2・9H
2O)、チタン白(TiO
2)、チタン黒(TiO
2n−1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)
2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al
2O
3)、クレー(Al
2O
3・2SiO
2)、カオリン(Al
2O
3・2SiO
2・2H
2O)、パイロフィライト(Al
2O
3・4SiO
2・H
2O)、ベントナイト(Al
2O
3・4SiO
2・2H
2O)、ケイ酸アルミニウム(Al
2SiO
5、Al
4・3SiO
4・5H
2Oなど)、ケイ酸マグネシウム(Mg
2SiO
4、MgSiO
3など)、ケイ酸カルシウム(Ca
2SiO
4など)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al
2O
3・CaO・2SiO
2など)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO
4)、炭酸カルシウム(CaCO
3)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)
2・nH
2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO
3)
2]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩などを使用してもよい。充填剤及び補強剤は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。これら充填剤及び補強剤の配合量は、要求される本実施形態のゴム組成物やその加硫成形体の物性に応じて調整すればよく、特に限定するものではないが、本実施形態のゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して通常は合計で15質量部以上200質量部以下の範囲で添加することができる。
【0040】
可塑剤は、ゴムと相溶性のある可塑剤であれば特に制限はないが、例えば、菜種油、アマニ油、ヒマシ油、ヤシ油などの植物油、フタレート系可塑剤、DUP(フタル酸ジウンデシル)、DOS(セバシン酸ジオクチル)、DOA(アジピン酸ジオクチル)、エステル系可塑剤、エーテルエステル系可塑剤、チオエーテル系可塑剤、アロマ系オイル、ナフテン系オイル、潤滑油、プロセスオイル、パラフィン、流動パラフィン、ワセリン、石油アスファルトなどの石油系可塑剤などがあり、本実施形態のゴム組成物や該組成物の加硫成形体に要求される特性に合わせて1種もしくは複数を使用することができる。可塑剤の配合量には特に限定はないが、本実施形態のゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して通常は合計で3質量部以上50質量部以下の範囲で配合することができる。
【0041】
ゴム組成物を混練したり加硫成形したりする際に、ロールや成形金型、押出機のスクリューなどから剥離しやすくなるようにするなど、加工特性や表面滑性を向上させるために添加する加工助剤や滑剤としては、ステアリン酸などの脂肪酸あるいはポリエチレンなどのパラフィン系加工助剤、脂肪酸アミドなどを挙げることができる。加工助剤及び滑剤は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。その添加量も特に限定されないが、通常は本実施形態のゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して合計で0.5質量部以上5質量部以下である。
【0042】
耐熱性を向上させる老化防止剤として、通常のゴム用途に使用されている、ラジカルを捕捉して自動酸化を防止する一次老化防止剤と、ハイドロパーオキサイドを無害化する二次老化防止剤を添加することができる。それらの老化防止剤はゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、それぞれ0.1質量部以上10質量部以下の割合で添加することができ、好ましくは2質量部以上5質量部以下の範囲である。これらの老化防止剤は単独使用のみならず2種以上を併用することも可能である。なお、一次老化防止剤の例としては、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、アクリレート系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、カルバミン酸金属塩、ワックスを挙げることができ、また、二次老化防止剤として、リン系老化防止剤、硫黄系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤などを挙げることができる。老化防止剤の例として特に限定するものではないが、N−フェニル−1−ナフチルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、7−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)−ヒドロシンナアミド、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−ホスホネート−ジエチルエステル、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメイト)]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステル及び3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリス(ノニル・フェニル)フォスファイト、トリス(混合モノ−及びジ−ノニルフェニル)フォスファイト、ジフェニル・モノ(2−エチルヘキシル)フォスファイト、ジフェニル・モノトリデシル・フォスファイト、ジフェニル・イソデシル・フォスファイト、ジフェニル・イソオクチル・フォスファイト、ジフェニル・ノニルフェニル・フォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリス(トリデシル)フォスファイト、トリイソデシルフォスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)フォスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコール・ジフォスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラフォスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルフォスファイト−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチル−ジ−トリデシルフォスファイト)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)フルオロフォスファイト、4,4’−イソプロピリデン−ジフェノールアルキル(C12〜C15)フォスファイト、環状ネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニルフォスファイト)、環状ネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−フェニルフォスファイト)、環状ネオペンタンテトライルビス(ノニルフェニルフォスファイト)、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ジブチルハイドロゲンフォスファイト、ジステアリル・ペンタエリスリトール・ジフォスファイト及び水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールフォスファイト・ポリマーなどが挙げられる。
【0043】
上記クロロプレン系ゴム等のゴム成分と充填剤や補強剤との接着性を高め、機械的強度を向上させるために、さらにシランカップリング剤を添加することもできる。シランカップリング剤はゴム組成物を混練する際に加えても、充填剤または補強剤を予め表面処理する形で加えてもどちらでも構わない。シランカップリング剤は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。特に限定するものではないが、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス−(3−トリメトキシンリルプロピル)テトラスルフィド、ビス−(3−メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス−(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス−(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3−ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3−ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3−ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2−ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2−ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリンドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリロイルモノスルフィド、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、フエニルトリメトキシシラン、フエニルトリエトキシシラン、ジフエニルジメトキシシラン、ジフエニルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリッフエニルクロロシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジクロロシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン、トリエチルクロロシランなどが例として挙げられる。
【0044】
なお、本実施形態のゴム組成物は、通常のゴム組成物と同様の方法で製造することができる。具体的には、クロロプレン系ゴム、リン酸系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、N−シクロヘキシルチオフタルイミド及びその他の成分を、ニーダー、バンバリー又はロールなどの混練り機によって、加硫温度以下の温度で混練することにより得られる。
【0045】
以上詳述したように、本実施形態のゴム組成物は、ゴム成分としてクロロプレン系ゴムを用い、特定量のリン酸系化合物と、ベンズイミダゾール系化合物及びN−シクロヘキシルチオフタルイミドの少なくとも一方を特定量配合しているため、機械的強度や加工安定性を低下させることなく、高温圧縮永久歪みなどを向上させることができる。これにより、機械的強度や加工安定性、高温圧縮永久歪みに優れた加硫物が得られるゴム組成物を実現することができる。
【0046】
<加硫物>(第2の実施形態)
本実施形態の加硫物は、前述した第1の実施形態のゴム組成物を、加硫したものである。その際、ゴム組成物の加硫方法は、特に限定されるものではなく、例えば、プレス加硫、インジェクション加硫、直接釜加硫、間接釜加硫、直接蒸気連続加硫、常圧連続加硫又は連続加硫プレスなどの加硫方法により、加硫すればよい。
【0047】
また、加硫温度及び加硫時間などの加硫条件も、特に限定されるものではなく、適宜設定することができるが、生産性及び加工安定性の観点から、加硫温度は130〜200℃とすることが好ましく、140〜190℃とすることがより好ましい。ここで、「加工安定性」とは、スコーチタイムにより評価される加工特性であり、不良発生率に大きく影響する。具体的には、スコーチタイムが短いと、高温での成形中に未加硫ゴム成分が加硫されて成形不良が発生する頻度が高くなる。
【0048】
本実施形態の加硫物は、前述した第1の実施形態のゴム組成物を使用しているため、高温圧縮永久歪みなどが良好で、機械的強度や加工安定性にも優れる。
【0049】
<成形加硫物>(第3の実施形態)
本実施形態の成形加硫物は、前述した第1の実施形態のゴム組成物を、目的に応じた形状に成形加工して、成形時又は成形後に加硫して得たものである。その成形方法は、特に限定されるものではないが、プレス成形、射出成形及び押出成形などを適用することができる。そして、例えば、成形体が伝動ベルト、空気バネ、シール、パッキン、防振材、ホースなどである場合は、プレス成形や射出成形、押出成形により形成することができる。
【0050】
本実施形態の成形加硫物は、前述した第1の実施形態のゴム組成物を使用しているため、高温圧縮永久歪みなどが良好で、機械的強度や加工安定性にも優れる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0052】
本実施例においては、各成分を下記表1及び表2に示す組成で配合した後、8インチロールを用いて混練して、実施例及び比較例のゴム組成物を作製した。そして、実施例及び比較例の各ゴム組成物を加硫して、その性能を評価した。
【0053】
<評価方法>
下記表1及び表2に示す実施例1〜13及び比較例1〜10の各ゴム組成物を、以下に示す方法及び条件で評価した。
【0054】
[加工安定性(スコーチタイム)]
実施例及び比較例の各ゴム組成物について、JIS K 6300に基づいて、L形ロータを用いて125℃におけるスコーチタイムを測定した。なお、スコーチタイムが9分以上のものを合格とした。
【0055】
[機械的強度(引張り強度(TB))]
実施例及び比較例の各ゴム組成物について、JIS K 6250に基づいてテストピースを作製し(加硫条件:170℃×20分間)、JIS K 6251に基づいて引張試験を行い、各加硫物の機械的強度を測定した。なお、引張り強度(TB)が、17MPa以上のものを合格とした。
【0056】
[高温圧縮永久歪み(CS)]
実施例及び比較例の各ゴム組成物について、JIS K 6250に基づいてテストピースを作製し(加硫条件:一次加硫170℃×30分間、二次加硫170℃×2時間)、JIS K 6262に基づいて、130℃、72時間の条件で、各加硫物の圧縮永久歪みを測定した。なお、圧縮永久歪み(CS)が、45%以下のものを合格とした。
【0057】
<結果>
結果を、下記の表1及び表2に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
なお、上記表1及び表2に示す各配合成分は、以下の通りである。
[クロロプレン系ゴム]
・アクリロニトリル共重合クロロプレンゴム(デンカ株式会社製、アクリロニトリル共重
合量9.5%、統計的共重合体、ムーニー粘度58、特開昭55−145715号公報)
・クロロプレン単一ポリマー(デンカ株式会社製 M−40、ムーニー粘度50)
・2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合クロロプレンゴム(デンカ株式会社製 S−40V、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン共重合量10.2%、統計的共重合体、ムーニー粘度52)
【0061】
[可塑剤]
〔リン酸系化合物〕
・トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(大八化学工業株式会社製 TOP)
・トリス(ノニルフェニル)ホスファイト(大内新興化学工業株式会社製 ノクラックTNP)
〔脂肪族二塩基酸エステル〕
・ビス(2−エチルヘキシル)セバケート(大八化学工業株式会社製、DOS)
【0062】
[加硫速度調整剤]
〔ベンズイミダゾール系化合物〕
・2−メルカプトベンズイミダゾール(大内新興化学工業株式会社製 ノクラックMB)
・2−メルカプトメチルベンズイミダゾール(大内新興化学工業株式会社製 ノクラック)
〔N−シクロヘキシルチオフタルイミド〕
・N−シクロヘキシルチオフタルイミド(大内新興化学工業株式会社製 リターダーCTP)
〔チウラム系化合物〕
・テトラメチルチウラムジスルフィド(大内新興化学工業株式会社製、ノクセラーTT−P)
【0063】
[滑剤・加工助剤]
・ステアリン酸(新日本理化株式会社製 ステアリン酸50S)
【0064】
[老化防止剤]
・オクチル化ジフェニルアミン(大内新興化学工業株式会社製 ノクラックAD−F)
【0065】
[カーボンブラック]
・カーボンブラックSRF(旭カーボン株式会社製 旭#50)
【0066】
[金属酸化物]
・MgO(協和化学工業株式会社製 キョーワマグ150)
・ZnO(堺化学工業株式会社製 酸化亜鉛2種)
【0067】
[加硫促進剤]
・トリメチルチオウレア(大内新興化学工業株式会社製 ノクセラーTMU)
【0068】
<考察>
前記表1に示すように、リン酸系化合物を含有しない比較例1及びリン酸系化合物以外の可塑剤である脂肪族二塩基酸エステルを含有した比較例9は、高温圧縮永久歪みが劣っていた。一方、リン酸系化合物を含有していても、その添加量が0.5質量部未満である比較例3は、高温圧縮永久歪みが劣っていた。また、リン酸系化合物の添加量が15.0質量部を超えている比較例4は、ゴムの硬度が低くなり、高温圧縮永久歪みや機械的強度(引張り強度(TB))が劣っていた。
【0069】
また、ベンズイミダゾール系化合物及びN−シクロヘキシルチオフタルイミドのいずれも含有しない比較例2は、加工安定性(スコーチタイム)が劣っていた。一方、ベンズイミダゾール系化合物を含有していても、その添加量がゴム成分100質量部あたり0.05質量部未満である比較例5や、N−シクロヘキシルチオフタルイミドを含有していても、その添加量がゴム成分100質量部あたり0.05質量部未満である比較例6は、加工安定性(スコーチタイム)が劣っていた。また、他の加硫速度調整剤であるチウラム系化合物を含有する比較例10は、高温圧縮永久歪みが劣っていた。
【0070】
また、ベンズイミダゾール系化合物の添加量がゴム成分100質量部あたり3.0質量部を超える比較例7は、加硫速度が速くなりすぎて、高温圧縮永久歪みや加工安定性(スコーチタイム)が劣っており、N−シクロヘキシルチオフタルイミドの添加量がゴム成分100質量部あたり3.0質量部を超える比較例8は、加硫速度が遅くなりすぎて架橋密度が低下し、高温圧縮永久歪みや機械的強度(引張り強度(TB))が劣っていた。
【0071】
これに対して、クロロプレン系ゴム100質量部あたり、リン酸系化合物を0.5〜15.0質量部、ベンズイミダゾール系化合物及びN−シクロヘキシルチオフタルイミドの少なくとも一方を0.05〜3.0質量部配合した、実施例1〜13では、機械的強度や加工安定性を低下させることなく、高温圧縮永久歪みに優れたゴム組成物を得られることが確認された。
【0072】
実施例の中で比較すると、加硫速度調整剤として、ベンズイミダゾール系化合物又はN−シクロヘキシルチオフタルイミドのどちらか一方を用いた実施例1又は実施例2に比べて、ベンズイミダゾール系化合物及びN−シクロヘキシルチオフタルイミドを併用した実施例3及び実施例13の方が、加工安定性(スコーチタイム)が優れていた。