特許第6897856号(P6897856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6897856
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、硬化物及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20210628BHJP
   C08L 51/08 20060101ALI20210628BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20210628BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20210628BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20210628BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20210628BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20210628BHJP
   C08J 5/16 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   C08F293/00
   C08L51/08
   C08L53/00
   C08L63/00 A
   B32B27/34
   B32B27/26
   C08J5/18
   C08J5/16
【請求項の数】10
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2020-212798(P2020-212798)
(22)【出願日】2020年12月22日
【審査請求日】2021年1月15日
(31)【優先権主張番号】特願2020-73976(P2020-73976)
(32)【優先日】2020年4月17日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】方田 大遥
(72)【発明者】
【氏名】大宅 徹
【審査官】 岸 智之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/191954(WO,A1)
【文献】 国際公開第2019/130807(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 265/10
B32B 27/26
B32B 27/34
C08F 293/00
C08J 5/16
C08J 5/18
C08L 51/08
C08L 53/00
C08L 63/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドユニット(A)と、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)とが 分子内に1つのアミノ基と1つのスルファニル基を含有する連鎖移動剤残基により連結したブロックポリマー(C)、及び架橋剤(D)を含有し、
前記エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)が、分子内に水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、イソシアネート基及びそのブロック体から選択される架橋基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(b1)に由来する構成単位を有する、硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記分子内に架橋基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(b1)が、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体を含む、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記架橋剤(D)が、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物を含む、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ブロックポリマー(C)は、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)を、ブロックポリマー(C)の全質量を基準として、10〜50質量%の範囲で含む、請求項1〜いずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)を構成するエチレン性不飽和単量体は、分子内に架橋基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(b1)を、該単量体の全質量を基準として、5〜50質量%の量で含む、請求項1〜いずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリイミドユニット(A)を構成するジアミンが、ダイマージアミンと芳香環を有するジアミンとの組み合わせ、又は、ジアミノポリシロキサン類と芳香環を有するジアミンとの組み合わせである、請求項1〜いずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜いずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項8】
ポリイミドユニット(A)と、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)とが、分子内に1つのアミノ基と1つのスルファニル基を含有する連鎖移動剤残基により連結したブロックポリマー(C)を含む樹脂膜であって、
前記エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)の含有量が、ポリイミドユニット(A)及びエチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)の総質量を基準として10〜50質量%の範囲であり、ヘイズ値が50未満である、樹脂膜。
【請求項9】
請求項に記載の樹脂膜を硬化してなる硬化物。
【請求項10】
基材上に、請求項又はに記載の硬化物からなる層を有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着強度と柔軟性に優れ、高温環境下においても十分な耐熱性を有する、パワーデバイス、自動車、建材、船舶、航空機等の分野における接合材として有用な、硬化性樹脂組成物、その硬化物及び硬化物からなる層を備える積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の車体構造やパワーデバイス等の半導体分野で、効率化、小型化、軽量化の観点から接着接合が注目されており、これらの分野では使用環境における熱的負荷が大きいことから、さらなる耐熱向上が求められている。
このような課題に対し、例えば、特許文献1には、耐熱性に優れる接着剤としてエポキシ系接着剤が記載されている。しかしながら、エポキシ系接着剤は、耐熱性に優れるが柔軟性に乏しく、さらに高温環境下で長期間晒されると劣化して固脆くなるため、温度環境の変化が著しい用途に用いた場合、基材間又は基材との線膨張係数差で発生する内部応力により接着剤層にクラックが生じ、接着力が低下するという課題がある。
また、例えば、特許文献2には、耐熱性と柔軟性の高い樹脂としてシリコーン系接着剤が記載されている。しかしながら、このようなシリコーン系接着剤は、発生する内部応力を緩和することで長期的な接着力に優れるものの、エポキシ系接着剤と比較すると接着強度が十分ではなく、使用可能な用途が限られるという課題がある。
したがって、高い接着強度と柔軟性とを有し、且つ、耐熱性をも満足する、接合材として有用な接着剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−292568号公報
【特許文献2】特開2005−320461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高い接着強度と柔軟性とを有し、高温環境下においても優れた耐熱性を発揮する、硬化性樹脂組成物、その硬化物、及び硬化物からなる層を備える積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す実施形態により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の実施形態は、ポリイミドユニット(A)と、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)とが連鎖移動剤残基により連結したブロックポリマー(C)、及び架橋剤(D)を含有する硬化性樹脂組成物であって、前記エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)が、分子内に架橋基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(b1)に由来する構成単位を有する、硬化性樹脂組成物に関する。
【0007】
本発明の他の実施形態は、前記分子内に架橋基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(b1)が、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体を含む、上記硬化性樹脂組成物に関する。
【0008】
本発明の他の実施形態は、前記架橋剤(D)が、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物を含む、上記硬化性樹脂組成物に関する。
【0009】
本発明の他の実施形態は、前記連鎖移動剤残基が、アミノ基を有する連鎖移動剤に由来する基である、上記硬化性樹脂組成物に関する。
【0010】
本発明の他の実施形態は、前記ブロックポリマー(C)は、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)を、ブロックポリマー(C)の全質量を基準として、10〜50質量%の範囲で含む、上記硬化性樹脂組成物に関する。
【0011】
本発明の他の実施形態は、前記エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)を構成するエチレン性不飽和単量体は、分子内に架橋基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(b1)を、該単量体の全質量を基準として、5〜50質量%の量で含む、上記硬化性樹脂組成物に関する。
【0012】
本発明の他の実施形態は、前記ポリイミドユニット(A)を構成するジアミンが、ダイマージアミンと芳香環を有するジアミンとの組み合わせ、又は、ジアミノポリシロキサン類と芳香環を有するジアミンとの組み合わせである、上記硬化性樹脂組成物に関する。
【0013】
本発明の他の実施形態は、上記硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化物に関する。
【0014】
本発明の他の実施形態は、ポリイミドユニット(A)と、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)とを含む樹脂膜であって、前記エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)の含有量が、ポリイミドユニット(A)及びエチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)の総質量を基準として10〜50質量%の範囲であり、ヘイズ値が50未満である、樹脂膜に関する。
【0015】
本発明の他の実施形態は、上記樹脂膜を硬化してなる硬化物に関する。
【0016】
本発明の他の実施形態は、基材上に、上記硬化物からなる層を有する積層体に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、高い接着強度と柔軟性とを有し、高温環境下においても優れた耐熱性を発揮する、硬化性樹脂組成物、その硬化物、及び硬化物からなる層を備える積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の硬化性樹脂組成物は、ポリイミドユニット(A)と、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)とが連鎖移動剤残基により連結したブロックポリマー(C)、及び架橋剤(D)を含有し、前記エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)が、分子内に架橋基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(b1)に由来する構成単位を有することを特徴とする。ブロックポリマー(C)が、柔軟なポリイミドユニット(A)と、架橋基を有し且つ耐熱性に優れるエチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)とを備えることで、得られる硬化性樹脂組成物は、高い接着強度、柔軟性だけでなく、耐熱性をも達成することができる。
また、ポリイミドユニット(A)と、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)とが連結された構造を有していることで、各々を単独で混合する場合と比べて、ユニット同士の相溶性に優れ、透明性の高い樹脂膜が得られる。このような樹脂膜を硬化して得られる硬化物は、優れた接着強度、柔軟性、耐熱性を達成することができる。
以下に本発明について詳細に説明する。
【0019】
<ブロックポリマー(C)>
本発明のブロックポリマー(C)は、ポリイミドユニット(A)とエチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)とが連鎖移動剤残基により連結した構造を有していればよく、その製造方法は制限されないが、好ましくは下記の方法で製造することができる。 まず、ジアミンと過剰の酸二無水物とを溶剤中で反応させてポリアミック酸を形成し、さらに高温に熱して脱水環化しイミド化させ、両末端に酸無水物を有するポリイミドユニット(A)を形成する(以下、工程1)。
次いで、連鎖移動剤を添加し、ポリイミドユニット(A)の両末端に連鎖移動剤残基を有するプレポリマーを合成する(以下、工程2)。
その後、得られたプレポリマーが有する連鎖移動剤残基を用いて、分子内に架橋基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(b1)を含むエチレン性不飽和単量体を、重合開始剤存在下に連鎖移動重合して、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)を形成する(以下、工程3)。
このようにして、ポリイミドユニット(A)と、分子内に架橋基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(b1)に由来する構成単位を有するエチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)とが、連鎖移動剤残基により連結したブロックポリマー(C)を得ることができる。
【0020】
<ポリイミドユニット(A)>
本発明におけるブロックポリマー(C)は、ポリイミドユニット(A)と、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)と、が連鎖移動剤残基により連結した構造を有しており、前記ポリイミドユニット(A)は、ジアミンと過剰の酸二無水物とを溶剤中で反応させてポリアミック酸を形成し、さらに高温に熱して脱水環化しイミド化させることで形成することができる。
【0021】
<ジアミン>
ポリイミドユニットを構成するジアミンとしては、例えば、
ジアミノシクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジメチル−ジアミノジシクロヘキシルメタン、テトラメチル−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3(4),8(9)−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式ジアミン;
2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等のビスアミノフェノキシフェニルプロパン類;
3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等のジアミノジフェニルエーテル類;
p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン類;
3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド等のジアミノジフェニルスルフィド類;
3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等のジアミノジフェニルスルホン類;
3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン等のジアミノベンゾフェノン類;
3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン等のジアミノジフェニルメタン類;
2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン等のジアミノフェニルプロパン類;
2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のジアミノフェニルヘキサフルオロプロパン類;
1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン等のジアミノフェニルフェニルエタン類;
1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等のビスアミノフェノキシベンゼン類;
1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン等のビスアミノベンゾイルベンゼン類;
1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン等のビスアミノジメチルベンゼン類;
1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン等のビスアミノジトリフルオロメチルベンジルベンゼン類;
2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル等のアミノフェノキシビフェニル類;
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン等のアミノフェノキシフェニルケトン類;
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド等のアミノフェノキシフェニルスルフィド類;
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン等のアミノフェノキシフェニルスルホン類;
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル等のアミノフェノキシフェニルエーテル類;
2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のアミノフェノキシフェニルプロパン類;
その他のジアミンとして、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)3,3,3,’3,’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)3,3,3,’3,’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エ−テル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロポキシ)エチル]エーテル、1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコ−ルビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコ−ルビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコ−ルビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカンが挙げられる。
【0022】
また、上記ジアミンとして、オレイン酸等の不飽和脂肪酸の二量体であるダイマー酸から誘導されるダイマージアミンを用いることができる。ダイマージアミンの市販品としては、例えば、バーサミン551(BASFジャパン社製)、バーサミン552(コグニクスジャパン社製;バーサミン551の水添物)、PRIAMINE 1075、PRIAMINE 1074(クローダジャパン社製)が挙げられる。
【0023】
また、上記ジアミンとして、α,ω−ビス(2−アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(5−アミノペンチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス[3−(2−アミノフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス[3−(4−アミノフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン等のジアミノポリシロキサン類を用いることができる。ジアミノポリシロキサンの市販品としては、例えば、KF−8010、X−22−161A、X−22−161B(信越化学工業社製)が挙げられる。
【0024】
また、上記ジアミンとして、ポリオキシプロピレンジアミンを用いることができる。ポリオキシプロピレンジアミンの市販品としては、例えば、ジェファーミンD−230、ジェファーミンD−400、ジェファーミンD−2000、ジェファーミンD−4000(いずれもHUNTSMAN社製)が挙げられる。
【0025】
これらジアミンは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明におけるジアミンとして、好ましくは、ダイマージアミン、芳香環を有するジアミン、ジアミノポリシロキサン類からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは、ダイマージアミンと芳香環を有するジアミンとの組み合わせ、又はジアミノポリシロキサン類と芳香環を有するジアミンとの組み合わせであり、さらに好ましくは、ジアミノポリシロキサン類と芳香環を有するジアミンとの組み合わせである。
【0026】
<酸二無水物>
酸二無水物としては、特に制限されず、例えば、
ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、9,9’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物類;
1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシ−2−シクロペンタン酢酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−ノルボルナン酢酸二無水物等の脂環式テトラカルボン酸二無水物類;
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物類が挙げられる。
【0027】
これら酸二無水物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明における酸二無水物として、好ましくは、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物であり、より好ましくは4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物である。
【0028】
上記ジアミンと酸二無水物とを、−20〜150℃、好ましくは−5〜100℃の任意の温度で混合することで、容易にポリアミック酸を形成することができる。
ポリアミック酸を脱水環化しイミド化する方法としては、公知の熱的イミド化法や化学的イミド化法を利用できる。熱的イミド化法では、例えば、150〜250℃の高温で脱水しながら加熱処理することで容易にイミド化することができる。化学的イミド化法では、例えば、ピリジン又はトリエチルアミン等の塩基と無水酢酸を、原料のジアミンに対して各々2〜10モル当量を加え0〜50℃で環化反応を行うことでイミド化することができる。
【0029】
<ポリイミドユニット(A)の数平均分子量>
ポリイミドユニット(A)の数平均分子量は、好ましくは20,000〜200,000の範囲である。20,000以上であると、得られる硬化物の破断強度に優れ、200,000以下であると粘度の調整が容易であるため好ましい。
【0030】
<連鎖移動剤>
上述で得られたポリイミドユニット(A)の両末端の酸無水物基と、連鎖移動剤を反応させることで、両末端に連鎖移動剤残基を有するプレポリマーを得ることができる。連鎖移動剤は、特に制限されないが、酸無水物基と反応しうる官能基とスルファニル基とを有するものが好ましい。当該連鎖移動剤を用いると、ポリイミドユニット(A)における末端酸無水物基と、連鎖移動剤における酸無水物基と反応しうる官能基とが反応し、両末端にスルファニル基を有するプレポリマーが形成することができる。ポリイミドユニットと、連鎖移動剤との反応は、20〜120℃の任意の温度で混合することで容易に進行し、連鎖移動剤は、公知の連鎖移動剤から単独又は2種以上を併用して用いることができる。
【0031】
上記酸無水物基と反応しうる官能基としては、アミノ基又は水酸基等が挙げられ、アミノ基の水素原子は、アルキル基やアリール基等の有機残基で置換されていてもよい。このような置換アミノ基としては、例えば、N−アルキルアミノ基、N−アリールアミノ基のようなモノ置換アミノ基が挙げられる。水酸基としては、一級水酸基、二級水酸基又は三級水酸基が挙げられる。
酸無水物基と反応しうる官能基は、酸無水物基との反応性が良好であることから、好ましくはアミノ基である。アミノ基とスルファニル基とを有する連鎖移動剤を用いることで、プレポリマーの末端に効率的にスルファニル基を導入することができるため好ましい。
【0032】
このような分子内に1つのアミノ基と1つのスルファニル基を含有する連鎖移動剤としては、例えば、2−アミノエタンチオール、3−アミノプロピル−1−チオール、1−アミノプロピル−2−チオール、4−アミノ−1−ブタンチオール等のアミノアルカンチオール類;2−アミノチオフェノール、3−アミノチオフェノール、4−アミノチオフェノール等のアミノベンゼンチオール類;が挙げられる。中でも、好ましくはアミノアルカンチオール類であり、より好ましくは2−アミノエタンチオールである。
【0033】
<エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)>
エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)は、分子内に架橋基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(b1)に由来する構成単位を有するものであり、分子内に架橋基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(b1)を含むエチレン性不飽和単量体を、重合開始剤の存在下に重合させて得られる構造体である。
具体的には、工程2で得られた両末端に連鎖移動剤残基を有するプレポリマーと、分子内に架橋基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(b1)を含むエチレン性不飽和単量体と、を重合開始剤の存在下に重合させることで、ポリイミドユニット(A)と、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)とが、連鎖移動剤残基により連結したブロックポリマー(C)を得ることができる。
【0034】
(分子内に架橋基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(b1))
分子内に架橋基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(b1)の架橋基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、イソシアネート基及びそのブロック体が挙げられ、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸ダイマー、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、α−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、ω−カルボキシポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、p−ビニル安息香酸が挙げられる。
【0036】
水酸基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート又はこれらモノマーのカプロラクトン付加物(付加モル数は1〜5)、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0037】
エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシルジエーテル、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、3−エチル−3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、4−メチル−4,5−エポキシペンチル(メタ)アクリレート、5−メチル−5,6−エポキシヘキシル(メタ)アクリレート、α−エチルアクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、クロトニルグリシジルエーテル、(イソ)クロトン酸グリシジルエーテル、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、N−(3,5−ジメチル−4−グリシジル)ベンジルアクリルアミド、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、α−メチル−p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、2,3−ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,4−ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,5−ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,6−ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,3,4−トリグリシジルオキシメチルスチレン、2,3,5−トリグリシジルオキシメチルスチレン、2,3,6−トリグリシジルオキシメチルスチレン、3,4,5−トリグリシジルオキシメチルスチレン、2,4,6−トリグリシジルオキシメチルスチレンが挙げられる。
【0038】
イソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体及びそのブロック体としては、例えば、(メタ)アクリロイルイソシアネート、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート、1,1−(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、m−(メタ)アクリロイルフェニルイソシアネート、α,α‐ジメチル‐4‐イソプロペニルベンジルイソシアネートが挙げられる。
【0039】
中でも、分子内に架橋基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(b1)として好ましくは、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体である。カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体を用いると、後述する架橋剤(D)と反応した際に、より耐熱性と柔軟性に優れる硬化物が得られるため好ましい。
【0040】
分子内に架橋基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(b1)の含有量は、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)を構成するエチレン性不飽和単量体の全質量を基準として、5〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜30質量%である。5〜50質量%の範囲であると、耐熱性と柔軟性に優れるため好ましい。
【0041】
(その他のエチレン性不飽和単量体)
エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)を構成するエチレン性不飽和単量体は、分子内に架橋基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(b1)以外に、その他のエチレン性不飽和単量体を含んでいてもよい。
その他のエチレン性不飽和単量体としては、特に制限されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャリブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート類;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、又はノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリレート類;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、n−ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルキルエーテル基を有する(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ペントキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジベンジルアクリルアミド、メタクリルホルムアミド、N−メチルN−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、桂皮酸アミド等のアミド基含有エチレン性不飽和単量体類;スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、等のビニル類;エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、又はイソブチルビニルエーテル等のエーテル基を有するビニルエーテル類;が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)の含有量は、ブロックポリマー(C)の全質量を基準として、10〜50質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜40質量%の範囲である。10〜50質量%の範囲であると、耐熱性と柔軟性に優れるため好ましい。
【0043】
<重合開始剤>
重合開始剤としては、公知のアゾ系化合物や有機過酸化物を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アゾ系化合物としては、特に制限されず、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカーボキシレート)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、又は2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]が挙げられる。
有機過酸化物としては、特に制限されず、例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサエート、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシドが挙げられる。
【0044】
重合開始剤の配合量は、エチレン性不飽和単量体全量を基準として、好ましくは、0.001〜15質量%である。0.001〜15質量%の範囲であると、効果的に連鎖移動重合が進行するため好ましい。
【0045】
<エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)の数平均分子量>
エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)の数平均分子量は、好ましくは2,000〜200,000の範囲である。2,000以上であると、得られる硬化物の破断強度に優れ、200,000以下であると粘度の調整が容易であるため好ましい。
【0046】
<ブロックポリマー(C)の数平均分子量>
ブロックポリマー(C)の数平均分子量は、好ましくは、5,000〜300,000の範囲である。5,000以上であると、得られる硬化物の破断強度に優れ、300,000以下であると粘度の調整が容易であるため好ましい。
【0047】
<樹脂膜のヘイズ値>
樹脂膜のヘイズ値は、好ましくは50未満であり、より好ましくは30未満である。50未満であると、樹脂膜を硬化して得られる硬化物の接着強度、柔軟性、耐熱性に優れる。
【0048】
<溶剤>
ブロックポリマー(C)を製造する際に使用できる溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、トルエン、キシレン、アニソール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、m−クレゾール、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンが挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
ポリイミドユニット(A)の合成に使用できる溶剤として、好ましくは高沸点溶剤であり、かつアミノ基とスルファニル基とを有する連鎖移動剤と反応しない溶剤である。このような溶剤としては、例えば、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、m−クレゾール、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンが挙げられる。
【0050】
<架橋剤(D)>
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに架橋剤(D)を含む。ブロックポリマー(C)が有する、エチレン性不飽和単量体(b1)由来の架橋基と、架橋剤とが反応し硬化することで、耐熱性、柔軟性、接着性に優れる硬化物を得ることができる。したがって、架橋剤(D)は、エチレン性不飽和単量体(b1)由来の架橋基と反応し得る官能基を2つ以上有するものが好ましく、例えば、エポキシ基、酸無水物、フェノール基、イソシアネート基、カルボキシル基、アミノ基、水酸基を有する化合物が挙げられる。
このような架橋剤(D)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
エポキシ基を有する架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N'
,N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1、3−ビス(N、N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'−テトラグリシジルアミノフェニルメタン、イソシアヌル酸トリグリシジルが挙げられる。
【0052】
酸無水物を有する架橋剤としては、ポリイミドユニット(A)を構成する酸二無水物の他に、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸等の公知の化合物を用いることができる。
【0053】
フェノール基を有する架橋剤は、モノマー化合物であってよく、ポリマー化合物であってもよい。ポリマー化合物であるフェノール基を有する架橋剤は、単一のモノマーの重合体(ホモポリマー)であってよく、複数種のモノマーの共重合体(コポリマー)であってもよい。また、フェノール基を有する架橋剤は、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0054】
フェノール基を有する架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン、ナフタレンジオール、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、カリックスアレーン、ノボラック型フェノール樹脂(例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ビスフェノールSノボラック樹脂、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、並びに、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物))、アラルキル型フェノール樹脂(例えば、ザイロック樹脂等のフェノールアラルキル樹脂及びナフトールアラルキル樹脂)、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミン等でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)のような多価フェノール化合物が挙げられる。
【0055】
ノボラック型フェノール樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「フェノライトTD−2131」、「フェノライトTD−2090」(商品名)等が挙げられる。アラルキル型フェノール樹脂の具体例としては、日本化薬(株)製のGPH−65(商品名)等が挙げられる。
【0056】
イソシアネート基を有する架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートのような分子内にイソシアネート基を2つ以上有する化合物、及びこれらのビウレット体、ヌレート体、アダクト体、その他縮合体等が挙げられる。
【0057】
ビウレット体としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(製品名「スミジュールN−75」、住化バイエルウレタン社製;製品名「デュラネート24A−100」、旭化成ケミカルズ社製)が挙げられる。
【0058】
ヌレート体としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体(製品名「スミジュールN−3300」、住化バイエルウレタン社製)、イソホロンジイソシアネートのヌレート体(製品名「デスモジュールZ−4370」、住化バイエルウレタン社製)、トリレンジイソシアネートのヌレート体(製品名「コロネート2030」、日本ポリウレタン社製)が挙げられる。
【0059】
アダクト体としては、例えば、トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネートアダクト体(製品名「タケネートD−160N」、三井化学社製)、トリメチロールプロパンのイソホロンジイソシアネートアダクト体(製品名「タケネートD−140N」、三井化学社製)、トルエンジイソシアネートのアダクト体(製品名「デスモジュールL75」、住化コベストロウレタン社製)が挙げられる。
【0060】
その他の縮合体としては、イソシアネート基含有化合物の多官能体、カルボジイミド変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体が挙げられ、例えば、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(製品名「PAPI27」、ダウ社製)、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(製品名「タケネートD−165N」、三井化学社製)、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(製品名「Isonate143L」、ダウ社製)が挙げられる。
【0061】
アミノ基を有する架橋剤としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン、p−フェニレンジアミン等のジアミン類;2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシピロピルチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン類;ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、トリエチレンテトラミン、N−(3−アミノプロピル)ブタン−1,4−ジアミン、6,6−イミノジヘキシルアミン、3,7−ジアザノナン−1,9−ジアミン、N,N’−ビス(3‐アミノプロピル)エチレンジアミン、製品名でJEFFAMINE D−230、D−400、D−2000、T−403、T−3000(以上、HUNTSMAN社製)等の3官能以上の多官能アミン類;が挙げられる。
【0062】
カルボキシ基を有する架橋剤としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、メチルフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、メチルシクロヘキサンジカルボン酸、メチルノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸が挙げられる。
【0063】
水酸基を有する架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、メチルプロパンジオール、ペンタンジオール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,
4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ヒドロキシピバリン酸-ネオペンチルグリコールエステル、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブ
タン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、グリセリン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
【0064】
中でも架橋剤(D)として好ましくは、分子内にエポキシ基及び酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を2つ以上有する化合物であり、より好ましくは、分子内にエポキシ基を2つ以上有する化合物である。特に、分子内に架橋基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(b1)がカルボキシ基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体を含み、且つ、架橋剤(D)が分子内にエポキシ基を2つ以上有する化合物を含むと、耐熱性と柔軟性に特に優れる硬化物が得られるため好ましい。
【0065】
架橋剤(D)中の官能基と、ブロックポリマー(C)中の架橋基とのモル比(架橋剤(D)中の官能基のモル数/ブロックポリマー(C)中の架橋基のモル数)は、好ましくは0.2〜5.0であり、より好ましくは0.5〜3.0である。0.2〜5.0であると耐熱性及び柔軟性に優れるため好ましい。また、接着性の観点から、好ましくは0.2〜20.0の範囲であり、より好ましくは0.5〜16.0の範囲である。
【0066】
<その他成分>
硬化性樹脂組成物は、さらに、シランカップリング剤、充填剤、噴射剤、可塑剤、超可塑剤、湿潤剤、難燃剤、粘度調整剤、保存剤、安定剤及び着色剤等の公知の添加剤を含むことができる。このような添加剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するトリアルコキシシラン;3―メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するトリアルコキシシラン;が挙げられる。
シランカップリング剤の配合量は、硬化性樹脂組成物中のブロックポリマー(C)の質量を基準として、好ましくは0.05〜10質量%である。
【0068】
<硬化物、積層体>
本発明の硬化物は、上述の硬化性樹脂組成物を硬化してなるものであり、粘接着剤、粘接着シート、コーティング剤、フィルム基材、エラストマー、医療材料、光学材料等の分野において有用である。中でも、高い接着強度と柔軟性とを有し、且つ耐熱性に優れる観点から、接着シートとして好適に用いられる。
硬化物の形成方法は特に制限されず、例えば、溶剤等を用いて塗布方法に適した粘度に調整した硬化性樹脂組成物を、基材上に塗布した後、例えば50℃〜200℃の温度に加熱して溶剤を除去し、次いで20℃〜200℃の温度で硬化させることにより得ることができる。
【0069】
本発明の積層体は、基材上に、上述の硬化物からなる層を備えるものである。積層体の製造方法は特に制限されず、例えば、硬化性樹脂組成物を第1の基材上に塗布した後、溶剤等の揮発分をオーブンで乾燥させて未硬化の樹脂層を形成し、該樹脂層に第2の基材を重ね、必要に応じて熱圧着等を行い軟化させて密着させつつ樹脂層を硬化させて製造することができる。また、本発明の積層体は、あらかじめシート状に成型した、硬化性樹脂組成物を乾燥させてなる未硬化の樹脂層を、2つの基材の間に挟み、熱圧着等により軟化させて密着させつつ硬化させて製造することができる。硬化後の層の厚みは、好ましくは0.1μm〜300mmである。
【0070】
基材としては、特に制限されず、例えば、アルミニウムや銅等の金属、ポリエチレン、ポリロピレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート及びそれらのコポリマー等の熱可塑性ポリマー、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、加硫ゴム等の熱硬化性ポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメタクリルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、液晶ポリマー(LCP)、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン等の耐熱ポリマー、炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック及びその他の繊維強化プラスチックの他、ガラス、木材等が挙げられる。
これらの基材形状は特に制限されず、構造体、金属箔、フィルム状、シート状、発泡体、不織布等の多孔質体、およびこれらの複合体等を適宜選択して用いることが出来る。
本発明の積層体が、2つ以上の基材を備える場合、複数の基材は同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0071】
本発明の積層体は、優れた接着力、柔軟性、及び耐熱性を有しており、パワーデバイス、自動車、建材、船舶、航空機等の分野の構造部材として有用である。
【実施例】
【0072】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、特に断りのない限り実施例における「部」及び「%」は、各々「質量部」及び「質量%」を表す。
【0073】
<固形分濃度>
樹脂の固形分濃度は、JISK5601−1−2に準拠し、加熱温度150℃、加熱時間20分で測定した時の加熱残分を用いた。
【0074】
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)>
樹脂の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により測定した分子量が既知のポリスチレンによる換算値を用いた。測定は、GPC装置としてGPC−8020(東ソー社製)、溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとしてTSKgelSuperHM−M(東ソー社製)を3本直列に連結し、流速0.6ml/分、注入量10μl、カラム温度40℃の条件で行った。
【0075】
<酸価>
酸価の測定は以下の手順で行った。まず、樹脂溶液1gをトルエン40mLに溶解させた後、メターノール20mL、イオン交換水1mLを加え、酸価測定用サンプルを調製した。次いで、京都電子工業社製自動滴定装置「AT−510」にビュレットとして同社製「APB−510−20B」を接続したものを使用し、滴定試薬としては0.02mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液を用いて電位差滴定を行い、樹脂の固形分濃度から固形樹脂1gあたりのKOHのmg数を算出した。
【0076】
本明細書における略称を以下に示す。
BPADA:4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物DSDA:3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物
BAPP:2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
BAPS:ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン
プリアミン1075:水添ダイマージアミン、製品名「PRIAMINE 1075」、クローダジャパン社製
KF−8010:ジアミノポリシロキサン、製品名「KF−8010」、信越化学工業社製
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
AIBN:2,2’−アゾビスイソブチロニトリル
MMA:メチルメタクリレート
St:スチレン
MAA:メタクリル酸
AA:アクリル酸
GMA:グリシジルメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
TETRAD−X:N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、三菱ガス化学社製
デスモジュールL75:TDIアダクト、住化コベストロウレタン社製
jER828:ビスフェノールA型エポキシ樹脂 、三菱ケミカル社製
【0077】
<ブロックポリマーの製造>
(製造例1)ブロックポリマー(C−1)溶液
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、BPADA100部,BAPP17.4部、プリアミン1075(クローダジャパン社製)を78.5部、DMF457部を仕込み、窒素ガスで置換した。撹拌しながら反応容器を150℃に加熱し、酸価が2mgKOH/g未満になるまで反応させて、ポリイミドユニットを得た。
次いで、80℃まで冷却し、2−アミノエタンチオールを0.89部加え、80℃で5時間反応させることで、ポリイミドプレポリマーを得た。
次いで、室温に戻した上記ポリイミドユニットにMMA75.9部、MAA8.4部、DMF199部を加え均一に攪拌した後、窒素雰囲気下で75℃に昇温した。そこに重合開始剤としてAIBN0.1部を30分ごとに13回分割して加え、重合開始剤添加後にさらに2時間反応させてエチレン性不飽和単量体の重合体ユニットを形成し、固形分濃度が30%となるようにDMFを加え、ブロックポリマー(C−1)溶液を得た。ブロックポリマー(C−1)の数平均分子量(Mn)は49,000、重量平均分子量(Mw)、は97,000であった。
【0078】
(製造例2〜42)ブロックポリマー(C−2)〜(C−42)溶液
表1又は表2に示す配合組成に変更した以外は、製造例1と同様の操作を行い、ブロックポリマー(C−2)〜(C−42)溶液を得た。
【0079】
(比較製造例1)比較用樹脂(H−1)溶液
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、BPADA100部,BAPP17.4部、プリアミン1075を78.5部、DMF457部を仕込み、窒素ガスで置換した。撹拌しながら反応容器を150℃に加熱し、酸価が2mgKOH/g未満になるまで反応させた。固形分濃度が30%となるようにDMFを加え、比較用樹脂(H−1)溶液を得た。
【0080】
(比較製造例2)比較用樹脂(H−2)溶液
表3に示す配合組成に変更した以外は、比較製造例1と同様の操作を行い、比較用樹脂(H−2)溶液を得た。
【0081】
(比較製造例3)比較用樹脂(H−3)溶液
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、MMA90部、MAA10部、DMF233部を加え均一に攪拌した後、窒素雰囲気下で75℃に昇温した。そこに重合開始剤としてAIBN0.1部を30分ごとに13回分割して加え、重合開始剤添加後にさらに2時間反応させた。固形分濃度が30%となるようにDMFを加え、比較用樹脂(H−3)溶液を得た。
【0082】
(比較製造例4、5)比較用樹脂(H−4)〜(H−5)溶液
表3に示す配合組成に変更した以外は、比較製造例3と同様の操作を行い、比較用樹脂(H−4)及び(H−5)溶液を得た。
【0083】
(比較製造例6)比較用ブロックポリマー(H−6)溶液
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、BPADA100部,BAPP17.4部、プリアミン1075を78.5部、DMF457部を仕込み、窒素ガスで置換した。撹拌しながら反応容器を150℃に加熱し、赤外吸収スペクトル測定により酸無水物に由来する1850cm−1の吸収の消失と、イミド基に由来する1780cm−1の吸収の出現を確認して反応を終了した。次に、80℃まで冷却し、2−アミノエタンチオールを0.89部加え、80℃で5時間反応させることで、ポリイミドユニットを得た。
次いで、室温に戻した上記ポリイミドユニットにMMA84.3部、DMF199部を加え均一に攪拌した後、窒素雰囲気下で75℃に昇温した。そこに重合開始剤としてAIBN0.1部を30分ごとに13回分割して加え、重合開始剤添加後にさらに2時間反応させて、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニットを形成し、比較用ブロックポリマー(H−6)溶液を得た。
【0084】
(比較製造例7)比較用ブロックポリマー(H−7)溶液
表3に示す配合組成に変更した以外は、比較製造例6と同様の操作を行い、比較用ブロックポリマー(H−7)溶液を得た。
【0085】
得られたブロックポリマー及び比較用樹脂の詳細を表1〜表3に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
<硬化性樹脂組成物の製造>
[実施例1]
ブロックポリマー(C−1)30部、架橋剤(D)としてTETRAD−Xを0.37部加え、室温で攪拌混合し、硬化性樹脂組成物を得た。
【0090】
[実施例2〜42、85〜94、比較例1〜10]
表4〜表6及び表8に示す配合組成に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2〜42、85〜94、比較例1〜10の硬化性樹脂組成物を得た。
【0091】
<硬化性樹脂組成物の評価>
得られた硬化性樹脂組成物を用いて、以下の評価を行った。結果を表4〜表6及び表8に示す。
【0092】
[破断応力・破断伸び]
硬化後の厚みが2mmとなるように硬化性樹脂組成物をシリコーン製の型枠に入れ、溶剤を乾燥させた後、架橋剤に応じた以下の硬化条件に従って硬化させた。次いで、硬化膜をダンベル型枠で打ち抜き、ダンベル型硬化膜を作成した。得られた硬化膜を温度23℃、相対湿度50%の条件下で、引張試験機を用いて引張速度50mm/分で引っ張り、破断応力(MPa)と破断伸び(%)を測定し、以下の基準で判定した。破断応力及び破断伸びの数値が大きいものほど優れており、実用レベルはB以上である。
≪硬化条件≫
・架橋剤がTETRAD−Xである場合:150℃で3時間
・架橋剤がBPADAである場合:100℃で10分静置後、220℃1時間
・架橋剤がデスモジュールL75である場合:100℃で3時間
【0093】
(破断応力の評価基準)
SS:破断応力が30MPa以上
S:破断応力が25MPa以上、30MPa未満
A:破断応力が20MPa以上、25MPa未満
B:破断応力が15MPa以上、20MPa未満
C:破断応力が15MPa未満(使用不可)
【0094】
(破断伸びの評価基準)
SS:破断伸びが200%以上
S:破断伸びが150%以上、200%未満
A:破断伸びが100%以上、150%未満
B:破断伸びが50%以上、100%未満
C:破断伸びが50%未満(使用不可)
【0095】
[接着強度]
硬化性樹脂組成物を剥離フィルム(PET−38 GS、リンテック社製)上に、乾燥後の厚みが50μmとなるようにドクターブレードを用いて塗布し、100℃減圧下で乾燥し、剥離フィルムを剥がして接着シートを得た。接着シートを12.5mm×25.0mmのサイズに切り出し、切り出した接着シートを2枚の銅基材(寸法:2.0mm×25mm×100mm)の間に挟み、プレス機を用いて下記プレス温度条件で1時間プレスして接着させた。接着させた試験片を温度23℃、相対湿度50%の条件下、引張試験機を使用して引っ張り、せん断接着力(MPa)を測定し、以下の基準で判定した。せん断接着力の数値が大きいものほど優れており、実用レベルはB以上である。
≪プレス温度条件≫
・架橋剤がTETRAD−Xである場合:160℃
・架橋剤がBPADAである場合:230℃
・架橋剤がデスモジュールL75である場合:160℃
【0096】
(接着強度の評価基準)
SS:せん断接着力が12.5MPa以上
S:せん断接着力が10.0MPa以上、12.5MPa未満
A:せん断接着力が7.5MPa以上、10.0MPa未満
B:せん断接着力が5.0MPa以上、7.5MPa未満
C:せん断接着力が5.0MPa未満(使用不可)
【0097】
[耐熱性]
接着強度試験用サンプルの作製と同様の手法で、厚み約50μmの硬化膜を作製した。硬化膜を5mm幅の短冊状に切り取って試験片とし、150℃のオーブンに1000時間静置した。150℃1000時間の耐熱性試験前後の試験片について、DVA−200/L2(アイティー計測制御株式会社)を用いて、動的粘弾性を測定した。200℃における貯蔵弾性率の値を用いて、下記式により変化率Cを算出し、以下の基準で評価した。変化率の数値が小さいものほど優れており、実用レベルはB以上である。
≪動的粘弾性の測定条件≫
測定モード: 引張モード
周波数:10Hz
温度範囲:−80℃〜測定限界まで
昇温条件:10℃/min
≪貯蔵弾性率の変化率≫
耐熱性試験前の200℃における貯蔵弾性率をX(Pa)、耐熱性試験後の200℃における貯蔵弾性率をY(Pa)としたとき、貯蔵弾性率の変化率Zは以下の式で表される。
X≧Yの場合:Z=X/Y
Y>Xの場合:Z=Y/X
【0098】
(耐熱性の評価基準)
S:変化率Zが5未満
A:変化率Zが5以上、10未満
B:変化率Zが10以上、100未満
C:変化率Zが100以上(使用不可)
【0099】
【表4】
【0100】
【表5】
【0101】
【表6】
【0102】
【表8】
【0103】
<樹脂膜の製造>
[実施例43〜84、比較例11〜20]
表7に示す実施例1〜42、比較例1〜10で用いたブロックポリマー溶液、比較用樹脂溶液、及び比較用樹脂の混合物溶液を、剥離フィルム(PET−38 GS、リンテック社製)上に、乾燥後の厚みが50μmとなるようにドクターブレードを用いて塗布し、100℃減圧下で乾燥後に剥離フィルムを剥がして、樹脂膜を得た。
【0104】
<樹脂膜の評価>
得られた樹脂膜について、以下の評価を行った、結果を表7に示す。
【0105】
[ヘイズ値]
得られた樹脂膜について、ヘイズメーター(日本電色社製「NDH−5000」)を用いてヘイズ値を測定し、以下の基準で判定した。ヘイズ値の数値が小さいものほど優れており、実用レベルはB以上である。
(ヘイズ値の評価基準)
A:ヘイズ値が30未満
B:ヘイズ値が30以上、50未満
C:ヘイズ値が50以上、80未満(使用不可)
D:ヘイズ値が80以上(不良)
【0106】
【表7】
【0107】
表4〜表6及び表8の評価結果によれば、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物は、良好な破断応力、破断伸び、接着強度及び耐熱性を示した。特に、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)を、ブロックポリマー(C)の全質量を基準として20〜40質量%の範囲で含み、且つ分子内に架橋基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(b1)を、該単量体の全質量を基準として5〜30質量%の範囲で含む場合に、破断応力、破断伸び、接着強度及び耐熱性に優れていた。
また、表7の評価結果によれば、本発明の樹脂膜は、ヘイズ値が低く透明性に優れていた。
【要約】
【課題】高い接着強度と柔軟性とを有し、高温環境下においても優れた耐熱性を発揮する、硬化性樹脂組成物、その硬化物、及び硬化物からなる層を備える積層体の提供。
ることを目的とする。
【解決手段】上記課題は、ポリイミドユニット(A)と、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)とが連鎖移動剤残基により連結したブロックポリマー(C)、及び架橋剤(D)を含有し、前記エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)が、分子内に架橋基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(b1)に由来する構成単位を有する、硬化性樹脂組成物、その硬化物、及び硬化物からなる層を備える積層体に関する。
【選択図】なし