特許第6897881号(P6897881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6897881
(24)【登録日】2021年6月14日
(45)【発行日】2021年7月7日
(54)【発明の名称】耐熱性多層容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/00 20060101AFI20210628BHJP
   B65D 1/28 20060101ALI20210628BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20210628BHJP
【FI】
   B65D1/00 110
   B65D1/28
   B32B27/32 Z
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-541186(P2020-541186)
(86)(22)【出願日】2019年8月30日
(86)【国際出願番号】JP2019034107
(87)【国際公開番号】WO2020050165
(87)【国際公開日】20200312
【審査請求日】2020年11月24日
(31)【優先権主張番号】特願2018-167498(P2018-167498)
(32)【優先日】2018年9月7日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】田代 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】石原 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】大槻 梓
(72)【発明者】
【氏名】市川 健司
(72)【発明者】
【氏名】山田 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成志
(72)【発明者】
【氏名】柴田 幸樹
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−069864(JP,A)
【文献】 特開平10−236453(JP,A)
【文献】 特開2002−193233(JP,A)
【文献】 特開2002−240813(JP,A)
【文献】 特開平07−171936(JP,A)
【文献】 特開平07−304877(JP,A)
【文献】 特開2016−028139(JP,A)
【文献】 特開平09−077132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00−1/48
B32B 27/32
B29C 51/06−51/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトフローレートが2.0〜10.0g/10minであるホモポリプロピレンを主成分とするプロピレン系重合体Aから成る最外層と、
メルトフローレートが5.0g/10分以下であり且つアイソタクティックインデックスが93%以上であるホモポリプロピレンを主成分とするプロピレン系重合体Bが50〜99重量%とエチレン−α−オレフィン共重合体Cが1〜50重量%とから成る内層と
容器全体の5〜20重量%の割合にあるバリア層とを、備えて成る多層容器であって、
容器高さ(L)と口径(D)の比(L/D)が0.5以上であり、且つ121℃30分の熱殺菌前後の体積収縮率が5%以下であることを特徴とする耐熱性多層容器。
【請求項2】
前記プロピレン系重合体A及び/又は前記プロピレン系重合体Bが、各プロピレン系重合体100重量部に対して0.001〜5重量部の結晶核剤を含有する請求項1記載の耐熱性多層容器。
【請求項3】
前記バリア層が、エチレンビニルアルコール共重合体単独、或いはエチレン含有量の異なるエチレン−ビニルアルコール共重合体を2種以上ブレンドして成るブレンド物から成るエチレン−ビニルアルコール共重合から成る請求項1又は2に記載の耐熱性多層容器。
【請求項4】
前記エチレン−α−オレフィン共重合体Cが、炭素数の異なるα−オレフィンから成るエチレン−α−オレフィン共重合体を2種以上ブレンドして成る樹脂組成物である請求項1〜の何れかに記載の耐熱性多層容器。
【請求項5】
前記バリア層が、酸素吸収性バリア層である請求項1〜の何れかに記載の耐熱性多層容器。
【請求項6】
メルトフローレートが2.0〜10.0g/10minであるホモポリプロピレンを主成分とするプロピレン系重合体Aから成る最外層と、メルトフローレートが5.0g/10分以下であり且つアイソタクティックインデックスが93%以上であるホモポリプロピレンを主成分とするプロピレン系重合体Bが50〜99重量%とエチレン−α−オレフィン共重合体Cが1〜50重量%とから成る内層と、容器全体の5〜20重量%の割合にあるバリア層とを、少なくとも備えて成る多層シートを用い、該多層シートを150〜190℃に加熱して、容器高さ(L)と口径(D)の比(L/D)が0.5以上の深絞り形状に熱成形することを特徴する耐熱性多層容器の製造方法。
【請求項7】
前記熱成形が、圧空成形である請求項記載の耐熱性多層容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン系重合体を主原料とする多層容器に関するものであり、より詳細には、光沢性及び耐衝撃性に優れると共に、レトルト殺菌にも対応可能な耐熱性多層容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、外表面に光沢をもたせた容器として、ホモポリプロピレン又はプロピレン系ランダム共重合体から成る外層を有する多層容器が提案されている。
このような光沢性に優れた多層容器において、容器に光沢を付与するために用いられるプロピレン系重合体は、一般に落下衝撃強度が劣っている。このため、多層容器の機械的強度を向上すべく、耐衝撃性に優れたポリエチレン樹脂層を内層に用いることが提案されている(特許文献1)。
【0003】
また下記特許文献2には、MFR(230℃)が0.4〜6.0g/10分、融点が150〜170℃のプロピレン系樹脂(A)70〜99重量%と、MFR(200℃)が0.5〜20.0g/10分、スチレン量が5〜35重量%のスチレン系エラストマー樹脂(B)1〜30重量%を含む表層用材料(X)からなるシートを、内外表層の少なくとも一方に用いて、熱成形してなり、容器側面のヘーズ値が7%以下、グロス値が120%以上および低温耐衝撃性に優れる深さ/口径比が0.5以上の深絞り容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−109340号公報
【特許文献2】特開2016−11164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のように、光沢性に優れたプロピレン系重合体を外層とし、内層としてポリエチレンから成る層を使用した場合には、多層容器の耐衝撃性は向上されるとしても、ポリエチレンはプロピレン系重合体に比して耐熱性に劣ることから、レトルト殺菌等に対応することができないという問題がある。またポリエチレンをプロピレン系重合体とブレンドして使用した場合には、ポリエチレンとプロピレン系重合体の相溶性が悪いために、透明性が低下するという他の問題が生じ、これはプロピレン系重合体と共にポリエチレンを使用した多層容器の容器成形の際に生じるリグラインド樹脂を用いる場合にも問題になる。
また、上記特許文献2に記載された深絞り容器は、透明性及び光沢性に優れていると共に、スチレン系エラストマーを含有する表層用シートを備えることにより、低温での耐衝撃性を改良しているが、耐熱性の点では未だ十分満足するものではなく、レトルト殺菌に対応することは困難であった。
【0006】
従って本発明の目的は、優れた透明性、光沢性及び耐衝撃性を有すると共に、レトルト殺菌等にも対応可能な優れた耐熱性を備えた多層容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、メルトフローレートが2.0〜10.0g/10minであるホモポリプロピレンを主成分とするプロピレン系重合体Aから成る最外層と、メルトフローレートが5.0g/10分以下であり且つアイソタクティックインデックスが93%以上であるホモポリプロピレンを主成分とするプロピレン系重合体Bが50〜99重量%とエチレン−α−オレフィン共重合体Cが1〜50重量%とから成る内層と容器全体の5〜20重量%の割合にあるバリア層とを、備えて成る多層容器であって、容器高さ(L)と口径(D)の比(L/D)が0.5以上であり、且つ121℃30分の熱殺菌前後の体積収縮率が5%以下であることを特徴とする耐熱性多層容器が提供される。
【0008】
本発明の耐熱性多層容器においては、
.前記プロピレン系重合体A及び/又は前記プロピレン系重合体Bが、各プロピレン系重合体100重量部に対して0.001〜5重量部の結晶核剤を含有すること、
.前記バリア層が、エチレンビニルアルコール共重合体単独、或いはエチレン含有量の異なるエチレン−ビニルアルコール共重合体を2種以上ブレンドして成るブレンド物から成るエチレン−ビニルアルコール共重合から成ること、
.前記エチレン−α−オレフィン共重合体Cが、炭素数の異なるα−オレフィンから成るエチレン−α−オレフィン共重合体を2種以上ブレンドして成る樹脂組成物であること、
.前記バリア層が、酸素吸収性バリア層であること、
が好適である。
【0009】
本発明によればまた、メルトフローレートが2.0〜10.0g/10minであるホモポリプロピレンを主成分とするプロピレン系重合体Aから成る最外層と、メルトフローレートが5.0g/10分以下であり且つアイソタクティックインデックスが93%以上であるホモポリプロピレンを主成分とするプロピレン系重合体Bが50〜99重量%とエチレン−α−オレフィン共重合体Cが1〜50重量%とから成る内層と、容器全体の5〜20重量%の割合にあるバリア層とを、少なくとも備えて成る多層シートを用い、該多層シートを150〜190℃に加熱して、容器高さ(L)と口径(D)の比(L/D)が0.5以上の深絞り形状に熱成形することを特徴する耐熱性多層容器の製造方法が提供される。
本発明の耐熱性多層容器の製造方法においては、前記熱成形が、圧空成形であることが好適である。
尚、本明細書において、メルトフローレート(以下、単に「MFR」ということがある)の数値は230℃2.16kg荷重で測定した値(JIS K7210準拠)である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の多層容器においては、内層として、MFRが5.0g/10min以下のホモポリプロピレンを主成分とするプロピレン系重合体Bと、エチレン−α−オレフィン共重合体Cを組み合わせで用いることにより、優れた耐衝撃性を得ることができる。また外層として、MFRが2.0〜10.0g/10minのホモポリプロピレンを主成分とするプロピレン系重合体Aを用いることにより、多層容器の外表面に優れた光沢性を付与することができる。更に本発明の多層容器では、121℃30分の熱殺菌前後の体積収縮率が5%以下と優れた耐熱性を有しており、レトルト殺菌にも対応することが可能である。
また本発明の多層容器の製造方法においては、光沢性、耐衝撃性及び耐熱性を備えた多層容器を成形性良く製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の多層容器の層構成の一例を示す図である。
図2】本発明の多層容器の層構成の他の一例を示す図である。
図3】本発明の多層容器の層構成の他の一例を示す図である。
図4】本発明の多層容器の層構成の他の一例を示す図である。
図5】本発明の多層容器の層構成の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(耐熱性多層容器)
本発明の耐熱性多層容器においては、MFRが2.0〜10.0g/10minであるホモポリプロピレンを主成分とするプロピレン系重合体Aから成る最外層と、MFRが5.0g/10分以下であり且つアイソタクティックインデックスが93%以上であるホモポリプロピレンを主成分とするプロピレン系重合体Bが50〜99重量%とエチレン−α−オレフィン共重合体Cが1〜50重量%とから成る内層と容器全体の5〜20重量%の割合にあるバリア層とを、備えていることが重要な特徴である。
かかる多層容器は、容器高さ(L)と口径(D)の比(L/D)が0.5以上の深絞り容器に成形された場合であっても優れた成形性、耐衝撃性を有していると共に、121℃30分の熱殺菌前後の体積収縮率が5%以下と、優れた耐熱性を有している。
【0013】
[最外層]
本発明の多層容器において、最外層を構成するプロピレン系重合体Aは、MFRが、2.0〜10.0g/10minの範囲にあるホモポリプロピレン(以下、このホモポリプロピレンを「高MFRホモポリプロピレン」ということがある)を主成分、すなわちプロピレン系重合体A中の80重量%以上、特に100重量%の量で含有していることが好適である。
前記ホモポリプロピレンのMFRは、2.0〜10g/10min、特に2.0〜5.0g/10minの範囲にあることが好適であり、上記範囲よりもMFRが小さい場合には、流動性に劣ることから多層容器が所望の表面光沢及び透明性を得ることができず、一方上記範囲よりもMFRが大きいと、ドローダウンが生じて成形性が損なわれるおそれがある。前記ホモポリプロピレンは、特にアイソタクティックインデックスが90%以上、特に95%以上の高結晶性を有することが好適である。
尚、アイソタクティックインデックスとは、同位体炭素による核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を使用して測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクティック分率である。
【0014】
本発明において、プロピレン系重合体A中に含有可能な他のプロピレン系重合体としては、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を例示することができる。かかるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体におけるα−オレフィンとしては、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1等を挙げることができ、特にプロピレンの構造単位を80重量%以上、特に95〜99重量%の割合で含有し、残余の構造単位がα−オレフィン、特にエチレンから成るプロピレン・エチレンランダム共重合体を好適に含有できる。
またプロピレン系重合体A中には、従来公知の樹脂用添加剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤、無機充填剤、着色剤、結晶核剤等を従来公知の処方に従って添加することができる。結晶核剤の添加については後述する。
【0015】
[内層]
本発明の多層容器においては、内層が、MFRが5.0g/10分以下であり且つアイソタクティックインデックスが93%以上であるホモポリプロピレンを主成分とするプロピレン系重合体Bとエチレン−α−オレフィン共重合体Cとを、B:C=50:50〜99:1、特に70:30〜97:3の重量比で含有することが重要である。上記範囲よりもエチレン−α−オレフィン共重合体の含有量が少ない場合には、上記範囲にある場合に比して耐衝撃性が劣るおそれがあり、一方上記範囲よりもエチレン−α−オレフィン共重合体の含有量が多い場合には、上記範囲にある場合に比して耐熱性が劣るおそれがある。
【0016】
<プロピレン系重合体B>
プロピレン系重合体Bは、メルトフローレートが5.0g/10min以下であり且つアイソタクティックインデックスが93%以上であるホモポリプロピレン(以下、このホモポリプロピレンを「低MFRホモポリプロピレン」ということがある)を主成分、すなわちプロピレン系重合体B中の80重量%以上、特に100重量%の量で含有していることが好適である。
前記ホモポリプロピレンのMFRは、5.0g/10min以下、特に0.4〜2.0g/10minの範囲にあることが好適であり、上記範囲よりもMFRが大きい場合には、多層容器が所望の耐衝撃性を有することができず、一方MFRがあまり低い場合には、流動性に劣り、成形性が損なわれるおそれがある。
前記ホモポリプロピレンはアイソタクティックインデックスが93%以上、特に95%以上の高結晶性を有していることも重要である。これにより、内層の機械的強度が向上し、多層容器の耐衝撃性が顕著に向上する。また、高温領域まで溶融せず形状を維持できるため、成形時のドローダウン軽減や耐熱性を付与することもできる。本発明においては、プロピレン系重合体Bを構成する低MFRホモポリプロピレンのアイソタクティックインデックスが上記範囲にあることにより、耐衝撃性、ドローダウン軽減、耐熱性を顕著に向上させることが可能になる。
【0017】
またプロピレン系重合体Bにおいても、プロピレン系重合体Aについて例示したように、他のプロピレン系重合体や、熱安定剤等の従来公知の樹脂用添加剤が含有されていてもよいが、特にプロピレン系重合体A,Bの結晶性を更に高め、成形性や透明性を向上させるために、結晶核剤を添加することが好適である。
結晶核剤は、プロピレン系重合体A,Bに相溶性を示さないものであり、これに限定されないが、安息香酸、マロン酸、コハク酸等の有機カルボン酸の金属塩、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩や、有機リン酸エステル塩等の有機系核剤や、タルク、ミョウバン、シリカ、酸化チタン、酸化カルシウム等の無機系核剤等、従来公知の結晶核剤を例示できるが、特に有機リン酸塩を好適に使用することができる。
結晶核剤は、プロピレン系重合体A,Bのそれぞれ100重量部に対して、0.001〜5重量部、特に0.01〜0.5重量部の量で添加されていることが望ましい。上記範囲よりも結晶核剤の量が少ないと、結晶化度を充分に高めることができず、その一方上記範囲よりも多いと成形性が損なわれるおそれがある。
【0018】
<エチレン−α−オレフィン共重合体>
エチレン−α−オレフィン共重合体Cは、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる1種以上のα−オレフィンとを共重合して得られるものを使用できる。エチレン−α−オレフィン共重合体を上記量で内層に含有させることにより、優れた耐衝撃性を多層容器に付与することができる。特に後述する実施例の結果(比較例1及び4)からも明らかなように、バリア層としてエチレン−ビニルアルコール共重合体から成る層を備える多層容器においては、耐衝撃性が低下しやすいことから、エチレン−α−オレフィン共重合体を配合することにより、耐衝撃性が向上される。市販品としては、例えば、三井化学株式会社製「タフマー」(商標名)、株式会社プライムポリマー製「ウルトゼックス」(商標名)やダウケミカル社製「アフィニティ」(商標名)などがある。
α−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等を例示でき、特に1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンを好適に使用することができる。
【0019】
エチレン−α−オレフィン共重合体において、α−オレフィンの全構造単位に対する含有量は1〜30mol%の範囲にあることが好適である。上記範囲よりもα−オレフィンの含有量が多い場合には耐熱性が損なわれるおそれがあり、一方上記範囲よりもα−オレフィンの含有量が少ない場合には、上記範囲より場合に比して耐衝撃性を充分に改良できないおそれがある。
エチレン−α−オレフィン共重合体のMFRは、0.5〜20g/10分の範囲にあることが好ましく、上記範囲よりもMFRが大きい場合には、所望の耐衝撃性を付与することができないおそれがあり、一方上記範囲よりもMFRが低い場合には、流動性に劣り、成形性が損なわれるおそれがある。
またエチレン−α−オレフィン共重合体は、透明性の観点から密度0.850〜0.930g/cmであることが好適である。
尚、エチレン−α−オレフィン共重合体は、1種単独で使用してもよく、2種以上をブレンドして使用してもよい。特に、α−オレフィンの構造が直鎖状であるものと分岐を有するものをブレンドすることが好適である(実施例8)。
【0020】
<高溶融張力プロピレン系重合体>
本発明の内層には、上述したプロピレン系重合体及びエチレン−α−オレフィン共重合体と共に、高溶融張力プロピレン系重合体を、内層全体の1〜20重量%、特に5〜15重量%の量で含有することが好ましく、上記範囲の量で含有することにより、成形時のドローダウンを防止して成形性が向上すると共に、均一な肉厚の容器を成形できる。
高溶融張力プロピレン系重合体は、プロピレン系重合体の主鎖に長鎖分岐を導入した構造や、架橋させた構造を有しており、溶融時の張力を高めたものであり、その溶融張力(230℃)が100〜500mNの範囲にあることが好適である。
高溶融張力プロピレン系重合体は、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、或いはプロピレン−エチレンブロック共重合体のいずれでも良いが、耐熱性及び透明性の点で、プロピレン単独重合体であることが好ましい。
高溶融張力プロピレン系重合体のMFRは、成形性を向上するという観点から、0.5〜5.0g/10分の範囲にあることが好ましい。
【0021】
[多層構造]
本発明の多層容器には、上述した高MFRホモポリプロピレンから成るプロピレン系重合体Aから成る最外層と、低MFRホモポリプロピレンから成るプロピレン系重合体B及びエチレン−α−オレフィン共重合体から成る内層とを必須の構成とするものであり、この2層から成る多層容器であってもよいが、ガスバリア層、酸素吸収性層、接着剤層、リグラインド層、吸着剤含有層等、従来公知の他の層を有していてもよく、これに限定されないが、以下の層構成を例示することができる。
図1は、本発明の多層容器の層構成の一例を示す図であり、この例では、プロピレン系重合体Aから成る最外層1と、プロピレン系重合体B及びエチレン−α−オレフィン共重合体から成る内層2を有すると共に、中間層としてガスバリア層4が形成されており、外層側から順に、最外層1/外層側接着剤層3a/ガスバリア層4/内層側接着剤層3b/内層2の層構成を有し、多層容器にガスバリア性が付与されている。
【0022】
また図2に示す態様においては、最外層1/プロピレン系重合体Bから成る層5/外層側接着層3a/ガスバリア層4/内層側接着層3b/内層2から成り、図3に示す態様においては、最外層1/外層側接着層3a/ガスバリア層4a/接着層3c/プロピレン系重合体Bをマトリックス樹脂とする酸素吸収性層6/接着層3d/ガスバリア層4b/内層側接着層3b/内層2から成っている。図2及び図3に示すように、プロピレン系重合体Bから成る層を内層以外に有することによって、多層容器の耐衝撃性を更に向上することが可能になり、特に耐衝撃性に劣るプロピレン系重合体Aから成る最外層側においても耐衝撃性を向上することが可能になる。
また図4に示すように、図3の具体例において、最外層1とガスバリア層4aの間(及び/又は、内層2とガスバリア層4bの間)に、容器成形の際に生じるリグラインド樹脂から成るリグラインド層7を形成することもできる。
更に、図5に示す態様においては、最外層1/リグラインド層7/外層側接着剤層3a/ガスバリア層4a/ガスバリア性樹脂をマトリックス樹脂とする酸素吸収性層6/ガスバリア層4b/内層側接着層3b/吸着剤含有層8/内層2から成っており、内層側にゼオライト等の吸着剤を含有する吸着層8を形成することにより、内容物のフレーバー性を向上することもできる。
【0023】
本発明の多層容器においては、各層の層厚みは、多層容器の形態や製造方法等によって異なり、一概に規定できないが、後述するように圧空成形等の熱成形による場合では、多層容器の最薄肉部となる胴部において、最外層の厚みが10〜80μm、特に20〜60μmの範囲にあり、内層の厚みが、390〜320μm、特に380〜340μmの範囲にあることが好ましい。尚、プロピレン系重合体Bから成る層が、内層以外にも形成される場合には、該層と内層の合計厚みが上記範囲にあることが好ましい。
また、プロピレン系重合体Aから成る最外層の容器胴部における厚みは、多層容器の胴部における総厚みの20%以下、特に10%以下であることが望ましい。このように、プロピレン系重合体Aから成る最外層及びプロピレン系重合体B及びエチレン−α−オレフィン共重合体から成る内層(内層以外のプロピレン系重合体Bから成る他の層を含む)の厚みを制御することによって、多層容器の表面光沢を維持しつつ、優れた耐衝撃性をバランスよく具備することが可能になる。
また本発明の多層容器において形成される他の層の厚みは、最外層、内層が上記の厚み範囲にある場合において、ガスバリア層(複数形成する場合は合計厚み)は20〜80μm、特に40〜60μmの範囲にあることが好ましく、酸素吸収性層は、10〜60μm、特に20〜40μmの範囲にあることが好ましい。またリグラインド層を設ける場合には、50〜350μmの範囲で形成することが好ましい。これにより、耐衝撃性や成形性を損なうことなく、ガスバリア性及び酸素吸収性を充分に発揮することが可能になる。更に、吸着剤含有層を設ける場合には、10〜100μmの範囲で形成することが好ましい。
【0024】
[ガスバリア層]
本発明の多層容器において、ガスバリア層は、従来公知のバリア性樹脂を使用することができるが、特にエチレン−ビニルアルコール共重合体から成ることが好適である。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、例えば、エチレン含有量が20〜60mol%、特に25〜50mol%のエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96%以上、特に99mol%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物がガスバリア性の点で好適であるが、本発明においては特に、エチレン含有量が20〜35mol%のエチレン−ビニルアルコール共重合体と、エチレン含有量が36〜50mol%のエチレン−ビニルアルコール共重合体を、90:10〜50:50、特に80:20〜60:40の配合比(重量比)でブレンドして使用することが好ましい。これにより、ガスバリア層が優れたガスバリア性を維持しつつ成形性が改良されるため、外観ムラのない多層容器を成形することが可能になる。
このエチレン−ビニルアルコール共重合体は、フィルムを形成し得るに足る分子量を有するべきであり、一般に、[フェノール/水]の重量比が85/15の混合溶媒中、30℃で測定して0.01dl/g以上、特に0.05dl/g以上の固有粘度を有することが望ましい。
【0025】
また、エチレン−ビニルアルコール共重合体以外のガスバリア性樹脂の例としては、例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6/6・6共重合体、メタキシリレンジアジパミド(MXD6)、ナイロン6・10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン13等のポリアミドを挙げることができる。これらのポリアミドの中でも、炭素数100個当りのアミド基の数が5〜50個、特に6〜20個の範囲にあるものが好適である。これらのポリアミドもフィルムを形成するに足る分子量を有するべきであり、例えば、濃硫酸(濃度1.0g/dl)中、30℃で測定した相対粘度が1.1以上、特に1.5以上であることが望ましい。
尚、ポリアミドはエチレン−ビニルアルコール共重合体にブレンドしてもよく、エチレン−ビニルアルコール共重合体と、ポリアミドの配合比(重量比)が50:50〜99:1が好適である。
また、後述するように酸素吸収性樹脂組成物のマトリックス樹脂として、ポリアミドを使用する場合、末端アミノ基濃度が40eq/10g以上のポリアミド樹脂が、酸素吸収時の酸化劣化がないため望ましい。
【0026】
[酸素吸収性層]
本発明の多層容器において、酸素吸収性層は、上述したプロピレン系重合体、ガスバリア性樹脂、或いはリグラインド樹脂等をマトリックス樹脂として、少なくとも酸化性有機成分及び遷移金属触媒(酸化触媒)を上記マトリックス樹脂に含有させて成る樹脂組成物から成ることができる。
(i)酸化性有機成分
酸化性有機成分としては、エチレン系不飽和基含有重合体を挙げることができる。この重合体は、炭素−炭素二重結合を有しており、この二重結合部分や特に二重結合部に隣接したαメチレンが酸素により容易に酸化され、これにより酸素の捕捉が行われる。
このようなエチレン系不飽和基含有重合体は、例えば、ポリエンを単量体として誘導されたポリエンの単独重合体、或いは上記ポリエンを2種以上組み合わせ若しくは他の単量体と組み合わせてのランダム共重合体、ブロック共重合体等を酸化性重合体として用いることができる。
ポリエンから誘導される重合体の中でも、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、天然ゴム、ニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)等が好適であるが、勿論、これらに限定されない。
【0027】
また、上述したエチレン系不飽和基含有重合体以外にも、それ自体酸化されやすい重合体、例えばポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、或いは末端アミノ基濃度が40eq/10g未満のポリメタキシリレンジアジパミド等も酸化性有機成分として使用することができる。
尚、成形性等の見地から、上述した酸化性重合体やその共重合体の40℃での粘度は1〜200Pa・sの範囲にあることが好適である。
これらのポリエン系重合体は、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、水酸基が導入された酸変性ポリエン重合体であることが好ましい。
これらの酸化性重合体、或いはその共重合体からなる酸化性有機成分は、酸素吸収性樹脂中で0.01〜10重量%の割合で含有されることが好ましい。
【0028】
(ii)遷移金属系触媒
遷移金属系触媒としては、鉄、コバルト、ニッケル等の周期律表第VIII族金属が好適であるが、他に銅、銀等の第I族金属、錫、チタン、ジルコニウム等の第IV族金属、バナジウム等の第V族金属、クロム等の第VI族金属、マンガン等の第VII族金属等であってもよい。
遷移金属触媒は、一般に、上記遷移金属の低価数の無機塩、有機塩或いは錯塩の形で使用される。無機塩としては、塩化物等のハライド、硫酸塩等のイオウのオキシ塩、硝酸塩等の窒素のオキシ酸塩、リン酸塩等のリンオキシ塩、ケイ酸塩等を挙げることができる。有機塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩等を挙げることができる。また、遷移金属の錯体としては、β−ジケトンまたはβ−ケト酸エステルとの錯体が挙げられる。
遷移金属系触媒は酸素吸収性樹脂中で、遷移金属原子の濃度(重量濃度基準)として100〜3000ppmの範囲であることが好ましい。
【0029】
[接着層]
本発明の多層容器においては、各層間に必要により接着層を形成することができ、特にガスバリア層がエチレン−ビニルアルコール共重合体から成る場合には、内外層を形成するプロピレン系重合体との接着性に乏しいことから、接着層を介在させることが好ましい。
接着層に用いる接着性樹脂としては、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸塩、カルボン酸アミド、カルボン酸エステル等に基づくカルボニル(−CO−)基を主鎖又は側鎖に、1〜700ミリイクイバレント(meq)/100g樹脂、特に10〜500(meq)/100g樹脂の濃度で含有する熱可塑性樹脂が挙げられる。
接着性樹脂の適当な例は、エチレン−アクリル酸共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体、無水マレイン酸グラフトポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン、アクリル酸グラフトポリオレフフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体と無水マレイン酸変性オレフィン樹脂とのブレンド物から形成されるもの等を挙げることができ、特に無水マレイン酸変性ポリプロピレンや無水マレイン酸グラフトポリプロピレンを好適に使用できる。接着樹脂は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することもできるし、ポリオレフィン系の樹脂に配合しても良い。
【0030】
[吸着剤含有層]
本発明の多層容器において、必要により形成される吸着剤含有層は、酸素吸収性層よりも内層側に位置することが好ましく、これにより酸素吸収反応により発生する副生成物の容器内への移行を抑制し、内容物のフレーバー性を向上することができる。
吸着剤は、プロピレン系重合体Bやリグラインド樹脂に配合することが好適である。
吸着剤としては、従来公知の吸着剤を使用することができるが、ケイ酸塩を主成分とする多孔性無機物、例えばゼオライトや、モンモリロナイト等のスメクタイト粘土鉱物を酸処理して得られる活性白土の粉末が好適であり、特にNa型のZSM5ゼオライトであるハイシリカゼオライト(シリカ/アルミナ比が100以上)が、プラスチックに特有の臭いを捕捉し且つ上記の酸化分解生成物を捕捉する機能に優れており好適である。
このような吸着剤は、一般に、吸着剤含有層中に0.5〜10重量%の量で配合することが好適である。
【0031】
(多層容器の製造方法)
本発明の多層容器は、従来公知の多層容器の製法により製造することができる。
例えば、押出コート法や、サンドイッチラミネーション、或いは予め形成されたフィルムのドライラミネーションによって多層フィルム或いは多層シートを製造し、この多層シートを真空成形、圧空成形、真空圧空成形、更にこれらにプラグアシストした熱成形の他、塊状の樹脂を押出し圧縮成形することにより、容器高さ(L)と口径(D)の比(L/D)が0.5以上のカップ、トレイ等の形状の多層容器に成形することができる。
また射出成形或いは押出成形により、所定の層構造を有するプリフォームを成形し、次いで、得られたプリフォームをブロー成形等の溶融成形することにより、或いは多層ダイ内で合流させて中間層樹脂が封入するように溶融樹脂を押し出し、中間層樹脂が存在しない部分で切断し、金型内に投入後、コア型で圧縮成形することにより、容器高さ(L)と口径(D)の比(L/D)が0.5以上の多層容器を成形することができる。
【0032】
本発明においては、上記成形方法の中でも、多層シートを用い、これを真空成形、圧空成形、真空圧空成形、更にこれらにプラグアシストした熱成形により成形することが好ましく、特に、圧空成形によることが好ましい。
多層シートは、前述したとおり、メルトフローレートが2.0〜10.0g/10minであるホモポリプロピレンを主成分とするプロピレン系重合体Aから成る最外層と、メルトフローレートが5.0g/10分以下であり且つアイソタクティックインデックスが93%以上であるホモポリプロピレンを主成分とするプロピレン系重合体Bが50〜99重量%とエチレン−α−オレフィン共重合体Cが1〜50重量%とから成る内層と、容器全体の5〜20重量%の割合にあるバリア層とを少なくとも備えた多層シートであることが好適である。多層シートの厚みは、250〜4000μm、特に800〜2000μmの範囲にあることが望ましい。
この多層シートを150〜190℃、特に160〜180℃の温度に加熱して、容器高さ(L)と口径(D)の比(L/D)が0.5以上、特に0.8〜1.5の深絞り形状に熱成形することが特に好ましい。このように成形温度を高温に設定することによって、容器の成形歪が低減されることにより耐熱性を向上することができ、後述する実施例の結果からも明らかなように、耐熱収縮性を3%未満にすることが可能になる。
【実施例】
【0033】
本発明を次の実施例ならびに比較例によりさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
尚、実施例ならびに比較例における各種の測定および評価は以下の方法で行った。
【0034】
(1)アイソタクティックインデックス(I.I.)
プロピレン系重合体のアイソタクティックインデックスは、同位体炭素による核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)測定から、ペンタッド単位のアイソタクティック分率として算出した。13C−NMR測定は核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製)を用い、135℃に加熱しながら行った。得られたチャートから、21.82、21.57、21.31、21.03、20.82、20.64、20.29、20.17、19.88ppmの各ピーク高さの合計に対する21.82ppmのピーク高さの比率を算出し、アイソタクティックインデックスを求めた。
【0035】
(2)メルトフローレート(MFR)
各材料のMFRはメルトインデックサ(株式会社東洋精機製作所製)を用い、JIS K7210に準拠して測定した。測定温度はEVOHを210℃、実施例9で用いたエチレン−α−オレフィン共重合体を190℃で測定した以外は230℃とし、2160gの荷重をかけて測定を行った。
【0036】
(3)密度
各材料の密度はマイクロメリティックス乾式自動密度計アキュピックII 1340(株式会社島津製作所製)を用い測定した。精秤した約1.2gの試料を容積3.5cmのセル内に配置し、室温環境下で測定を行った。ヘリウムガスを使用し、圧力平衡判定値を0.005psig/minに設定し、19.5psigの導入圧力で前処理を10回繰り返した後、19.5psigの導入圧力で測定を10回繰り返し、その平均値を各材料の密度とした。
【0037】
(4)成形性(耐ドローダウン性、容器肉厚分布)
圧空成形した際に、容器のフランジ部を除く肉厚において、最厚肉部と最薄肉部の差が300μm未満である容器を「成形性◎」、300μm以上〜400μm未満である容器を「成形性○」、400μm以上である容器を「成形性△」と評価した。また、ドローダウンが大きく成形時にバーストし成形出来なかった状態を「成形性×」と評価した。
【0038】
(5)耐熱収縮性
作製した容器の耐熱収縮性は、121℃30分の熱殺菌処理前後の満注内容積から算出した収縮率で判断した。このときの収縮率が5%以上であると容器変形により商品価値を損なうことが懸念される傾向にあることから、収縮率が5%以上の容器を「耐熱収縮性×」、5%未満〜3%以上の容器を「耐熱収縮性○」、3%未満の容器を「耐熱収縮性◎」と評価した。
【0039】
(6)耐衝撃性
作製した容器の耐衝撃性は、落下試験を行い判断した。容器に水215gを充填し、アルミ箔積層フィルムで密封した後、121℃30分の殺菌条件でシャワー式等圧レトルト処理を行った。レトルト処理後、5℃環境下で24時間保存したサンプルを用い、容器の底面が床面に当たるように落下させ、容器からの水の漏洩を目視で確認し、破損有無を判断した。高さ50cmからの落下を10回繰り返し、水の漏洩が無く容器が破損しなかったものを「耐衝撃性○」、破損したものを「耐衝撃性×」と評価した。
【0040】
(7)透明性(ヘーズ)
JIS K7136に準拠して、ヘーズメーター(スガ試験機株式会社製)を用い、容器胴部のヘーズを測定した。本実施例では、ヘーズの値が40%以上の容器を「透明性×」、40%未満〜30%以上の容器を「透明性△」、30%未満の容器を「透明性○」、10%未満の容器を「透明性◎」と評価した。
【0041】
(8)酸素バリア性
作製した容器に純水1gを充填し、窒素置換したグローブボックス内にてアルミ箔積層フィルムで密封した後、121℃30分の殺菌条件でシャワー式等圧レトルト処理を行った。レトルト処理後、30℃80%RH環境下で保存し、2週間後の容器内酸素濃度をガスクロマトグラフで測定した。このときの容器内酸素濃度が1%以上であると内容品の品質低下が懸念される傾向にあることから、1%以上の容器を「バリア性×」、1%未満〜0.1%以上の容器を「バリア性○」、0.1%未満の容器を「バリア性◎」、と評価した。
【0042】
(実施例1)
共押出多層シート成形機を用いて、プロピレン系重合体Aから成る最外層/内層/接着樹脂(AD)層/エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)層/AD層/内層の構成の多層シートを作製した。内層は、プロピレン系重合体Bとエチレン−α−オレフィン共重合体Cを90:10の重量比でブレンドして成る樹脂組成物である。
各層に用いた樹脂は、
プロピレン系重合体A:MFR=3.5g/10min、I.I.=98.2%、
プロピレン系重合体B:MFR=2.0g/10min、I.I.=96.7%、
エチレン−α−オレフィン共重合体C:MFR=2.2g/10min、密度=0.899g/cm、α−オレフィンとして1−ブテンを含む、
接着樹脂:MFR=2.0g/10minであり、
EVOH層は、エチレン含有量が27mol%、MFR=4.0g/10min(210℃)であるEVOH(1)とエチレン含有量が44mol%、MFR=3.3g/10min(210℃)であるEVOH(2)を80:20の重量比でブレンドして成る樹脂組成物である。
また、プロピレン系重合体Aおよびプロピレン系重合体Bには、各プロピレン系重合体100重量部に対して0.2重量部の結晶核剤(有機リン酸塩)を含有させている。
続いて、作製した多層シートを遠赤外線ヒーターでシート表面温度が165℃付近になるように加熱し、プラグアシスト圧空成形機を用い、容器高さ(L)と口径(D)の比(L/D)が1.4である容器を成形した。
各種評価結果を表1に示す。
【0043】
(実施例2)
内層として、プロピレン系重合体Bとエチレン−α−オレフィン共重合体Cと高溶融張力プロピレン系重合体Dを80:10:10の重量比でブレンドして成る樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして、多層シートならびに容器成形を行った。高溶融張力プロピレン系重合体DはMFR=1g/10minである。各種評価結果を表1に示す。
実施例1と比較して成形性が向上する理由として、長鎖分岐構造を有する高溶融張力プロピレン系重合体Dを添加することにより、耐ドローダウン性が向上することが挙げられる。
【0044】
(実施例3)
容器成形時に170℃付近まで加熱した以外は実施例2と同様にして、多層シートならびに容器成形を行った。各種評価結果を表1に示す。
実施例2と比較して耐熱収縮性が向上する理由として、より高温で成形することにより成形歪みが残りにくいことが挙げられる。
【0045】
(実施例4)
容器成形時に185℃付近まで加熱した以外は実施例2と同様にして、多層シートならびに容器成形を行った。各種評価結果を表1に示す。
実施例2と比較して耐熱収縮性が向上する理由として、より高温で成形することにより成形歪みが残りにくいことが挙げられる。一方で、高温まで加熱することにより、実施例2に対し、ドローダウンが増加し成形性が劣ること、シート表面の光沢性が損なわれ透明性が劣ることが挙げられる。
【0046】
(実施例5)
プロピレン系重合体Bとして、MFR=0.5g/10min、I.I.=98.3%である樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして、多層シートならびに容器成形を行った。各種評価結果を表1に示す。
【0047】
(実施例6)
プロピレン系重合体Bとエチレン−α−オレフィン共重合体Cの重量比を95:5に変更した以外は実施例5と同様にして、多層シートならびに容器成形を行った。各種評価結果を表1に示す。
【0048】
(実施例7)
エチレン−α−オレフィン共重合体Cとして、MFR=2.0g/10min、密度=0.917g/cm、α−オレフィンとして4−メチル−1−ペンテンを含む樹脂を用いた以外は実施例5と同様にして、多層シートならびに容器成形を行った。各種評価結果を表1に示す。
【0049】
(実施例8)
エチレン−α−オレフィン共重合体Cとして、MFR=2.2g/10min、密度=0.899g/cm、α−オレフィンとして1−ブテンを含む樹脂と、MFR=2.0g/10min、密度=0.917g/cm、α−オレフィンとして4−メチル−1−ペンテンを含む樹脂とを5:5の重量比でブレンドして成る樹脂組成物を用いた以外は実施例5と同様にして、多層シートならびに容器成形を行った。各種評価結果を表1に示す。
この容器は、非常に耐衝撃性が優れる結果であった。プロピレン系共重合体Bと2種のエチレン−α−オレフィン共重合体の相溶性が影響していると考えられる。
【0050】
(実施例9)
エチレン−α−オレフィン共重合体Cとして、MFR=1.0g/10min(190℃)、密度=0.889g/cm、α−オレフィンとして1−オクテンを含む樹脂を用いた以外は実施例5と同様にして、多層シートならびに容器成形を行った。各種評価結果を表1に示す。
【0051】
(実施例10)
プロピレン系重合体Aから成る最外層/内層/AD層/EVOH層/酸素吸収(Sc)層/EVOH層/AD層/吸着剤含有層/内層の構成であり、内層は、プロピレン系重合体Bとエチレン−α−オレフィン共重合体Cを90:10の重量比でブレンドして成る樹脂組成物である、多層シートを作製した以外は実施例5と同様にして容器成形を行った。Sc層は前記二種混合EVOHを主成分として酸化性有機成分及び遷移金属触媒から成るもの、吸着剤含有層はポリプロピレンを主成分として吸着剤を含有するものである。各種評価結果を表1に示す。
Sc層を有するため、実施例5と比較して、バリア性が向上する。
【0052】
(比較例1)
内層をプロピレン系重合体Bの単一層とした以外は実施例1と同様にして、多層シートならびに容器成形を行った。各種評価結果を表1に示す。
エチレン−α−オレフィン共重合体を添加していないため、耐衝撃性が劣る。
【0053】
(比較例2)
容器成形時に145℃付近で加熱した以外は実施例1と同様にして、多層シートならびに容器成形を行った。各種評価結果を表1に示す。
実施例1と比較して、低温で成形することにより成形歪みが残りやすく、耐熱収縮性が劣るため、熱殺菌用途に適さない容器である。
【0054】
(比較例3)
内層をプロピレン系重合体Bの単一層とし、容器成形時に145℃付近で加熱した以外は実施例1と同様にして、多層シートならびに容器成形を行った。各種評価結果を表1に示す。
実施例1と比較して、耐熱収縮性および耐衝撃性が劣るため、熱殺菌用途に適さない容器である。
【0055】
(比較例4)
プロピレン系重合体Aから成る最外層/内層の構成であり、内層をプロピレン系重合体Bの単一層とした以外は実施例1と同様にして、多層シートならびに容器成形を行った。各種評価結果を表1に示す。
EVOH層を有していないため、実施例1と比較して耐衝撃性は向上するが、バリア性が大きく劣る。
【0056】
(比較例5)
プロピレン系重合体AとしてMFR=0.5g/10min、I.I.=98.3%である樹脂を用いた以外は実施例5と同様にして、多層シートならびに容器成形を行った。各種評価結果を表1に示す。
MFR=0.5g/10minであるプロピレン系重合体を最外層に用いたため光沢性が低下し、実施例5と比較して透明性が劣っている。
【0057】
(比較例6)
プロピレン系重合体Bとして、MFR=2.3g/10min、I.I.=92.8%である樹脂を用いた以外は実施例2と同様にして、多層シートならびに容器成形を行った。各種評価結果を表1に示す。
アイソタクティックインデックスが低いプロピレン系重合体を用いたことにより、ドローダウンが大きく成形時にバーストし成形出来ないため、成形性が劣る。
【0058】
(比較例7)
内層をプロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体の単一層とした以外は実施例1と同様にして、多層シートならびに容器成形を行った。前記ランダム共重合体はMFR=1.0g/10minであり、前記ランダム共重合体100重量部に対して0.2重量部の結晶核剤(有機リン酸塩)を添加した。各種評価結果を表1に示す。
融点が低いランダム共重合体を用いたにより、ドローダウンが大きく成形時にバーストし成形出来ないため、成形性が劣る。
【0059】
(比較例8)
内層をプロピレンとα−オレフィンとの共重合ゴム成分を含むブロック共重合体の単一層とした以外は実施例1と同様にして、多層シートならびに容器成形を行った。前記ブロック共重合体はMFR=0.5g/10minであり、前記ブロック共重合体100重量部に対して0.2重量部の結晶核剤(有機リン酸塩)を添加した。各種評価結果を表1に示す。
ブロック共重合体を用いたため、透明性が劣る。
【0060】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の多層容器は、表面光沢性及び耐衝撃性に優れていると共に、レトルト殺菌にも対応可能であり、ガスバリア層及び酸素吸収性層等を更に具備することによって、長期にわたって優れた酸素バリア性を発現でき、しかも酸素吸収反応に伴う酸化分解生成物による内容物のフレーバーの低下も有効に防止できることから、各種飲料や食料品等の種々の内容物、特にレトルト殺菌等の熱殺菌に賦される内容物を収納する容器として有効に利用できる。
収納し得る具体的な内容物としては、これに限定されないが、ビール、ワイン、フルーツジュース、炭酸ソフトドリンク等の飲料や、果物、ナッツ、野菜、肉製品、幼児食品、コーヒー、ジャム、マヨネーズ、ケチャップ、食用油、ドレッシング、ソース類、佃煮類、乳製品、魚類加工品、ベビィフード、ペットフード等の他、医薬品、化粧品、ガソリン等、酸素の存在で劣化を生じる種々の内容物にも好適に使用できる。
【符号の説明】
【0062】
1 最外層、2 内層、3 ガスバリア層、4 接着層、5 プロピレン系重合体Bから成る層、6 酸素吸収性層、7 リグラインド層、8 吸着剤含有層。
図1
図2
図3
図4
図5