(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一般式[1]で表されるモノマーに由来する構造単位は、メトキシポリエチレングリコールアクリレート又はメトキシポリエチレングリコールメタクリレートである、請求項1に記載の細胞収容チップ。
前記メトキシポリエチレングリコールアクリレート及び/又はメトキシポリエチレングリコールメタクリレートのエチレングリコール残基の平均繰り返し数が3〜100である、請求項2に記載の細胞収容チップ。
前記一般式[2]で表されるモノマーに由来する構造単位に含まれる活性エステル基が、p−ニトロフェニル活性エステル基又はN−ヒドロキシスクシンイミド活性エステル基である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞収容チップ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
(スクリーニング装置の構成)
図1は、本実施形態に係る細胞収容チップを用いるスクリーニング装置の構成を概略的に示す側面図であり、
図2は、
図1のスクリーニング装置の斜視図である。
図1及び
図2のスクリーニング装置は、その一例を示すものであり、スクリーニング装置の実施形態は、
図1及び
図2のものに限られない。なお、説明の便宜上、
図1の紙面垂直方向をX方向、左右方向をY方向、Z方向を、X方向とY方向に対して垂直な方向とする。
【0020】
図1及び
図2において、スクリーニング装置1は、細胞収容チップ60内の複数の微細粒子(例えば生体の細胞など)が発する光情報に基づいて目的検体となる所定の細胞を探索し、回収条件を満たした細胞が収容されたウェル内の細胞を選択的に吸引、取得して、収容プレート50に回収する装置である。
【0021】
具体的には、スクリーニング装置1は、ベース11と、支持部12(
図2参照)と、回収部13と、計測部14と、画像解析部15と、移動部16とを備え、
図2に示すように、外部からの光や異物の進入を防止するために、上記の各部がカバー19により覆われている。
【0022】
ベース11は、スクリーニング装置1の各要素を保持するための本体フレームである。このベース11は、略水平に配されたプレート部材111,112,113を有しており、これらプレート材を介して、回収部13と、計測部14と、移動部16とを保持している。プレート部材111,112は、複数の垂直部材114により平行に固定されており、プレート部材112,113は、複数の垂直部材115により平行に固定されている。この垂直部材114は、振動を遮断する材質からなり、高さ調整可能に構成されている。
【0023】
上記複数のプレート材のうち最上に位置するプレート部材113の上には、支持部12と支持台30が固定されている。支持部12は、プレート部材113の上においてZ方向に沿って垂直に延出して配置されている。支持台30は、脚部30aと支持板30bを有している。プレート部材111,112,113及び支持板30bは、Z方向に関して相互に所定間隔をおいて配置されている。
【0024】
支持台30の支持板30b上には、移動部16が載置固定されている。移動部16上には、搭載用テーブル40、収容プレート50および細胞収容チップ60が搭載されている。移動部16は、搭載用テーブル40、すなわち該搭載用テーブル40に搭載された収容プレート50及び細胞収容チップ60を、X方向および/又はY方向に沿って移動して位置決めすることが可能となっている。
【0025】
図3は、
図2における移動部16と搭載用テーブル40の詳細を示す斜視図である。
【0026】
図3に示すように、移動部16は、テーブル161と、該テーブル上に配置されたテーブル162を有している。テーブル161は、支持台30に固定されており、テーブル162をX方向に沿って移動して位置決め可能に搭載している。テーブル162は、搭載用テーブル40をY方向に沿って移動して位置決め可能に搭載している。
【0027】
テーブル161の上面には、ガイドレール163,163とモータ164が設けられている。テーブル162の下面には、断面U字型の係合部材165,165とナット166が設けられている。係合部材165,165は、それぞれガイドレール163,163と移動可能に係合している。モータ164の送りねじ167は、ナット166と螺合している。
【0028】
モータ164は、制御部100と電気的に接続されており、制御部100からの指令に応じてモータ164を作動して送りねじ167を回転すると、テーブル162がX方向に沿って移動して位置決めされる。
【0029】
テーブル162の上面には、ガイドレール168,168とモータ169が設けられている。搭載用テーブル40の下面には、断面U字型の係合部材170,170とナット171が設けられている。係合部材170,170は、それぞれガイドレール168,168と移動可能に係合している。また、モータ169の送りねじ172は、ナット171と螺合している。
【0030】
モータ164は制御部100と電気的に接続されており、制御部100からの指令に応じてモータ164を作動して送りねじ172を回転することで、搭載用テーブル40がY方向に沿って移動して位置決めされる。
【0031】
また、テーブル161は開口部173を、テーブル162は開口部174をそれぞれ有しており、さらに搭載用テーブル40は開口部175を有している。これら開口部173,174,175は、テーブル162がX方向に移動し、搭載用テーブル40がY方向に移動しても常に重なるような大きさを有している。これら開口部173,174,175を介して、計測部14の対物レンズ110側からの光Lが、搭載用テーブル40上の細胞収容チップ60の細胞に照射される。
【0032】
また、テーブル162がX方向に移動しかつ搭載用テーブル40がY方向に移動した場合にも、対物レンズ110側からの光Lは、開口部173,174,175を通過して、搭載用テーブル40上の細胞収容チップ60の細胞に照射される。すなわち、テーブル161,162および搭載用テーブル40がいずれの相対位置にあった場合でも、細胞及び/又は細胞を収容するウェルから蛍光を発生させることが可能となっている。
【0033】
図4は、
図3の搭載用テーブル40上の収容プレート50と細胞収容チップ60の構成を示す斜視図である。
【0034】
搭載用テーブル40は、例えば長方形状の板状部材であり、この搭載用テーブル40の搭載面40a上に、収容プレート50と細胞収容チップ60がそれぞれ着脱可能にY方向に並べて搭載されている。
【0035】
収容プレート50は、板状部材であり、収容プレート50には多数のウェル51がX方向とY方向に沿って等間隔でマトリックス状に配列されている。これらのウェル51は、目的検体である細胞が吸引・吐出キャピラリ140から順次排出されてくるときに、当該細胞を別々に回収して格納することができる回収格納部となっている。収容プレート50のウェル51は、例えば鉛直方向断面略U字型の凹部、あるいはカップ型の凹部である。
【0036】
細胞収容チップ60は、固定部材120により搭載用テーブル40の搭載面40a上に固定されており、この固定部材120は、搭載用テーブル40の所定位置に位置決めして固定されている。
【0037】
図5は、細胞収容チップ60と固定部材120との構成を示す拡大断面図である。同図に示すように、固定部材120は、細胞収容チップ60を搭載用テーブル40の搭載面40aに対して一定の高さの基準面CLの位置で固定して保持できるように構成されている。具体的には、固定部材120は、細胞収容チップ60の端部を囲うように配置された枠体121,122を有しており、これら部材によって細胞収容チップ60を協働して保持する。
【0038】
細胞収容チップ60は、Z方向に関して枠体121,122の間に配置されており、枠体121,122に挟持されることで、枠体121,122とそれぞれ圧接している。これにより、細胞収容チップ60と枠体121の間のシール性が確保される。
【0039】
そして、細胞収容チップ60と枠体121が圧接した状態で、細胞収容チップ60の上面60bが枠体122を介して基準面CLに位置決めされる。これにより、細胞収容チップ60の上面60bと、計測部14の対物レンズ110および収容プレート50とのZ方向に関する距離を正確に管理することが可能となっている。換言すれば、細胞収容チップ60のウェル61内の細胞Mの位置と、計測部14の対物レンズ110と収容プレート50との距離を正確に管理することが可能となっている。
【0040】
また、枠体121は、その平面方向中央部かつ細胞収容チップ60の上方に設けられ、液体Aを保持する液体保持部129を有しており、培地、試薬液、反応液等の各種液体を保持することが可能に構成されている。すなわち液体保持部129は、枠体121の内部空間に形成されている。なお枠体121は、枠体122に対して例えば不図示のヒンジ機構部を用いて開閉することができ、これにより、固定部材120内の細胞収容チップ60を取り出して、新たな細胞収容チップと交換することができる。細胞収容チップ60は、複数の細胞Mを収容する板状部材である。細胞収容チップ60の詳細構成については後述する。
【0041】
回収部13は、識別された細胞Mを目的検体として分取する吸引・吐出キャピラリ140を備えている。吸引・吐出キャピラリ140は、Z2方向(下方向)に沿って縮径する先細り状の中空部材であり、その内部には管路141が形成されている。
【0042】
図1に戻り、計測部14は、細胞収容チップ60の複数のウェル61が含まれる領域に対して光Lを照射することで、その領域内の細胞M及び/又は細胞を収容するウェル61或いはその近傍から蛍光を発生させて、その蛍光を受光する。受光した細胞M及び/又は細胞を収容するウェル61或いはその近傍からの蛍光は、画像解析部15により画像解析される。
【0043】
具体的には、計測部14は、細胞収容チップ60および細胞収容チップ60に収容された細胞Mに少なくとも1つ以上の光源より導かれる光を照射することによって、透過光、反射光もしくは蛍光による形状および位置情報、並びに蛍光・化学発光等の輝度情報を個々の微細粒子の平均サイズより細かい分解能で取得すると共に、細胞収容チップ60自体の形状や、細胞収容チップ60上に配置されたウェル61の位置座標や大きさ等の情報を取得する。
【0044】
また、計測部14は、対物レンズ110を有しており、対物レンズ110は細胞収容チップ60に対して光を導く。対物レンズ110は、細胞収容チップ60と移動部16の下方に配置されており、吸引・吐出キャピラリ140は、細胞収容チップ60と移動部16の上方に配置されている。すなわち、細胞収容チップ60及び移動部16が、Z方向に関して対物レンズ110と吸引・吐出キャピラリ140の間に配置される。
【0045】
また、計測部14は、光源としての励起光源181と、励起光源181より照射される光のうち所望の励起波長帯域のみを選択するための光学フィルタ(励起フィルタ)184と、細胞収容チップ60からの光情報の所望の波長帯域のみを選択するための光学フィルタ(蛍光フィルタ)185と、励起光と光情報との波長帯域の差によって光路を切り替えるためのダイクロイックミラー186から構成される蛍光フィルタユニット183と、励起光源181から出射された光を細胞収容チップ60に導くとともに細胞収容チップ60から得られる光情報を収集するための対物レンズ110と、対物レンズ110を光軸方向に可動させるオートフォーカス機能を持つフォーカスユニット187と、計測対象からの光情報を検出するための光検出部としての受光部188とを有している。蛍光フィルタユニット183と受光部188は、蛍光落射ユニット190に固定されている。
【0046】
励起光源181は、例えばレーザ光源や水銀ランプで構成される。シャッターユニット182は、励起光源181と蛍光フィルタユニット183の間に配置されており、シャッターユニット182は細胞収容チップ60の細胞Mに対して光Lを照射しない場合には、励起光源181の発生する光Lを蛍光フィルタユニット183の手前で遮断することが可能となっている。
【0047】
さらに、計測部14は不図示のハーフミラーを有しており、ハーフミラーと蛍光フィルタユニット183とを切り替えることで、励起光源181からの光の一部を観察対象に照射すると同時に、観察対象からの反射光の一部を受光部188に導くことによって、細胞収容チップ60の上面60bおよび該上面に形成されたウェル61の形状および位置情報を計測することができる。
【0048】
また、この計測部14では、複数の対物レンズ110a,110b・・・が、例えばレボルバー式で回転することで、必要な倍率の対物レンズを細胞収容チップ60の下方位置に位置決めすることができる。フォーカスユニット187は、例えば制御部100からの指令によりモータ189を作動することで、細胞収容チップ60の下方位置に配置された例えば対物レンズ110をZ方向に沿って移動して位置決めすることで、細胞収容チップ60の微細粒子Mに対する対物レンズ110のフォーカス調整を行うことができる。
【0049】
画像解析部15は、各ウェル61内の複数の細胞M及び/又は細胞を収容するウェル61内或いはその近傍の、少なくとも最大強度の蛍光を発する細胞M及び/又は細胞を収容するウェル61或いはその近傍の蛍光輝度を算出する。
【0050】
具体的には、画像解析部15は、計測された形状情報および光情報を解析することで、少なくとも各ウェル61内に、測定者によって設定できる輝度条件を満たす細胞Mが存在することを確認するためのデータを取得する。そして、画像解析部15は、透過光もしくは反射光によるウェル61の位置座標情報と蛍光・化学発光の光情報とを合わせ照合することにより細胞M及び/又は細胞を収容するウェル61内或いはその近傍からの光情報を抽出する。また、計測部14はオートフォーカス機能を有しており、所定位置で合焦した状態で計測を行なうとともに、吸引・吐出キャピラリ140の先端部と細胞収容チップ60上面との位置関係を、両者に対するオートフォーカスの実施により判断することができる。
【0051】
制御部100は、X−Y平面内において、回収条件を満たした輝度の蛍光を発するウェル61の位置を検知する。そして制御部100は、
図3のモータ164,169に対して制御駆動信号を与えることで、移動部16上の細胞収容チップ60のウェル61を、吸引・吐出キャピラリ140の真下に位置させることができる。すなわち、吸引・吐出キャピラリ140は、特定のウェルをターゲットとして、当該ウェル内の細胞を吸引することが可能に構成されている。また、吸引・吐出キャピラリ140は、複数のウェルの内の選択されたウェル、すなわち所定の回収条件を満たした細胞の入っているウェル内から一又は複数の細胞を吸引することが可能となっている。さらに、吸引・吐出キャピラリ140は、上記吸引された一又は複数の細胞を、収容プレート50の所定のウェル51に吐出することが可能となっている。
【0052】
(細胞収容チップの構成)
図6は、
図5の細胞収容チップ60の詳細構成を示す部分断面図である。同図に示すように、細胞収容チップ60は、光透過性材料からなる基体60aと、該基体の上面60b(少なくとも一方の主面)に設けられ、複数の細胞Mを一対一で収容可能な複数のウェル61,61,・・・とを有する。
【0053】
細胞収容チップ60は、該複数のウェル61,61,・・・を構成する各ウェルの内表面61a及び基体60aの上面60b(細胞収容チップの表面)に形成された被覆層62を有する。被覆層62は、ウェル61の内表面61aのみに形成されてもよいし、ウェル61の内表面61a及び基体60aの上面60bの双方に形成されてもよい。つまり、
図6では、被覆層62は、内表面61aと上面60bとを全面的に被覆しているように描かれているが、本発明の効果を奏する限りにおいて、被覆層62は必ずしも内表面61aと上面60bとを全面的に被覆していなくてもよい。
【0054】
細胞収容チップ60は、例えばガラス、プラスチック、或いはこれらのいずれかを主成分とする材料からなり、その上面60bには、多数のウェル61が例えばマトリックス状に配列されている。各ウェル61は、例えば鉛直方向断面略台形、あるいは略カップ型の凹部であり、ウェル61の水平方向断面形状は、好ましくは略円形である。ウェル61は、細胞収容チップ60上に細胞Mが分注もしくは一括注入されたとき、1つの細胞Mの収容に相当する大きさを有しており、例えば、ウェル61の水平方向断面形状が円形である場合、細胞Mの直径が15μmであるとき、ウェルの内径及び深さは、細胞の直径よりも若干大きい20μm程度が好ましい。また、ウェル61は、1つの細胞Mに相当する大きさを有するのが好ましく、1つの細胞Mのみが入る大きさを有することがより好ましい。
【0055】
被覆層62は、架橋構造を有し、上述の一般式[1]で表されるモノマーに由来する構造単位と、上述の一般式[2]で表されるモノマーに由来する構造単位と、上述の一般式[3]で表されるモノマーに由来する構造単位とを含むポリマーからなる(以下、このポリマーを、単に「ポリマー」とも表記する)。ここで、架橋構造は、典型的には、一般式[3]で表されるモノマーに由来する構造単位が関与して形成される。これについてより詳しくは後述する。
【0056】
上述の一般式[1]において、「アルキレングリコール残基」とは、アルキレングリコール(HO−R−OH、ここでRはアルキレン基)の片側端末又は両端末の水酸基が他の化合物と縮合反応した後に残る「アルキレンオキシ基」(−R−O−、ここでRはアルキレン基)を意味する。例えば、メチレングリコール(HO−CH
2−OH)の「アルキレングリコール残基」はメチレンオキシ基(−CH
2−O−)であり、エチレングリコール(HO−CH
2−CH
2−OH)の「アルキレングリコール残基」はエチレンオキシ基(−CH
2−CH
2−O−)である。
【0057】
一般式[1]において、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
2は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基である。また、アルキレングリコール残基Xの炭素数は1〜10であり、より好ましくは1〜6であり、更に好ましくは2〜4であり、より更に好ましくは2〜3であり、最も好ましくは2である。アルキレングリコール残基の繰り返し数pは、1〜100の整数であり、好ましくは2〜100の整数であり、より好ましくは3〜100の整数であり、更に好ましくは2〜95の整数であり、最も好ましくは20〜90の整数である。繰り返し数pが2以上100以下の場合は、鎖中で繰り返されるアルキレングリコール残基Xの炭素数は同一であっても、異なっていてもよい。
【0058】
一般式[1]で表されるモノマーとしては、例えば、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基の一置換エステルの(メタ)アクリレート類;グリセロールモノ(メタ)アクリレート;ポリプロピレングリコールを側鎖とする(メタ)アクリレート;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート;2−エトキシエチル(メタ)アクリレート;メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート;エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート;エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられるが、入手性からメトキシポリエチレングリコールメタクリレートが好ましい。「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート又はアクリレートを意味する。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
ポリマー中、一般式[1]で表されるモノマーに由来する構造単位の比率は、ポリマーの全構成単位を基準として、通常30〜98mol%、好ましくは50〜97mol%、より好ましくは60〜97mol%である。
【0060】
前述の一般式[2]において、R
3は水素原子またはメチル基であり、アルキレングリコール残基Yの炭素数は1〜10であり、より好ましくは1〜6であり、更に好ましくは2〜4であり、より更に好ましくは2〜3であり、最も好ましくは2である。アルキレングリコール残基Yの繰り返し数qは1〜20の整数であり、より好ましくは2〜18の整数であり、更に好ましくは3〜16の整数であり、最も好ましくは4〜14の整数である。繰り返し数qが2以上20以下の場合は、鎖中繰り返されるアルキレングリコール残基の炭素数は同一であっても、異なっていてもよい。
【0061】
「活性エステル基」は、エステル基の片方の置換基に酸性度の高い電子求引性基を有して求核反応に対して活性化されたエステル群、すなわち反応活性の高いエステル基を意味するものとして、各種の化学合成、たとえば高分子化学、ペプチド合成等の分野で慣用されているものである。実際的には、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等がアルキルエステル等に比べてはるかに高い活性を有する活性エステル基として知られている。
【0062】
このような活性エステル基としては、たとえばp−ニトロフェニル活性エステル基、N−ヒドロキシスクシンイミド活性エステル基、コハク酸イミド活性エステル基、フタル酸イミド活性エステル基、5−ノルボルネン−2、3−ジカルボキシイミド活性エステル基等が挙げられるが、p−ニトロフェニル活性エステル基又はN−ヒドロキシスクシンイミド活性エステル基が好ましく、p−ニトロフェニル活性エステル基が最も好ましい。
【0063】
ポリマー中、一般式[2]で表されるモノマーに由来する構造単位の比率は、ポリマーの全構成単位を基準として、通常1〜50mol%、好ましくは1〜30mol%、最も好ましくは1〜20mol%である。また、一般式[2]で表されるモノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
一般式[3]において、R
4は水素原子またはメチル基であり、Zは炭素数1〜20のアルキル基である。また、A
1、A
2、A
3の内、少なくとも1個は加水分解可能なアルコキシ基であり、その他はアルキル基である。加水分解によりシラノール基を生成する官能基とは、水と接触すると容易に加水分解を受けシラノール基を生成する基であり、例えば、ハロゲン化シリル基、アルコキシシリル基、フェノキシシリル基、アセトキシシリル基等を挙げることができる。中でも、ハロゲンを含まないことからアルコキシシリル基、フェノキシシリル基、アセトキシシリル基が好ましく、中でもシラノール基を生成し易い点からアルコキシシリル基が最も好ましい。
【0065】
一般式[3]で表されるモノマーとしては、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロペニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、8−(メタ)アクリロキシオクタニルトリメトキシシラン、11−(メタ)アクリロキシウンデニルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルシラン化合物等を挙げることができる。中でも3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン或いは3−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシランが、アルキレングリコール残基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーとの共重合性が優れている点、入手が容易である点等から好ましい。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
ポリマー中、一般式[3]で表されるモノマーに由来する構造単位の比率は、ポリマーの全構成単位を基準として、通常1〜20mol%、好ましくは2〜15mol%、より好ましくは2〜10mol%である。
【0067】
ポリマーは、上述の一般式[1]〜[3]のモノマーに由来する構造単位以外の構造単位を含んでいてもよい。例えば、アルキル基を有するエチレン系不飽和重合性モノマー(d)に由来する構造単位が共重合されていてもよい。このようなモノマー(d)の具体例としては、n―ブチルメタクリレート、n−ドデシルメタクリレート又はn−オクチルメタクリレートが好ましく挙げられる。ポリマーが、モノマー(d)に由来する構造単位を含む場合、その含有量は、通常0〜60mol%、好ましくは0〜50mol%、より好ましくは0〜40mol%である。
【0068】
ポリマーの合成方法は、特に限定されない。例えば、前述の一般式[1]〜[3]で表される構造のモノマーを含む混合物を、重合開始剤存在下、溶媒中でラジカル重合することが好ましい。
【0069】
溶媒としてはそれぞれのエチレン系不飽和重合性モノマーが溶解するものであればよく、例えば、メタノール、エタノール、t−ブチルアルコール、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独または2種以上の組み合わせで用いられる。プラスチック基材に該高分子化合物を塗布する場合は、エタノール、メタノールが基材を変性させないため好ましい。
【0070】
重合開始剤としては通常のラジカル開始剤ならいずれでもよく、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下「AIBN」という)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル等の有機過酸化物等を挙げることができる。
【0071】
ポリマーの化学構造は、上述の一般式[1]〜[3]で表されるモノマーに由来する構造単位を含む限り、ランダム、ブロック、グラフト等いずれの形態をなしていてもよい。また、本実施形態のポリマーの数平均分子量は、ポリマーと未反応モノマーの分離精製が容易になることから、5000以上が好ましく、10000以上がより好ましい。
【0072】
ポリマーは、内表面61aと上面60bとを被覆することにより、生理活性物質の非特異的吸着を抑制する性質、特定の生理活性物質を固定化する性質を容易に付与することが可能である。さらに、ポリマーは架橋構造を有している(つまり、ポリマー鎖同士が架橋している)から、不溶性であり、細胞収容チップ60の洗浄や滅菌処理による信号低下を低減することができる。
【0073】
内表面61aおよび上面60bへのポリマーの被覆は、例えば、(i)有機溶剤にポリマーを0.05〜10重量%濃度になるように溶解した溶液を調製し、(ii)その溶液を浸漬、吹き付け等の公知の方法で内表面61aおよび上面60bに塗布した後、(iii)塗布した溶液を室温下または加温下にて乾燥させることにより行われる。なお、(i)の溶液の調製において、溶液は、ポリマーと有機溶剤以外の成分を含んでいてもよい。例えば、均一に塗布するための界面活性剤、密着性をさらに高めるための密着助剤、等を含んでいてもよい。
【0074】
その後、適当な方法でポリマー同士を架橋させる。特に本実施形態においては、ポリマーが、加水分解によりシラノール基を生成する官能基を有しているため、有機溶剤中に水を含有させた混合溶液を用いることが一法である。すなわち、含有される水により、加水分解によりシラノール基を生成する官能基が加水分解し、ポリマー中にシラノール基が生成する。その後、加熱等により、シラノール基同士、またはシラノール基と他の官能基とが脱水反応し、ポリマー同士が結合する。結果、ポリマーが不溶になる。溶液の調製の容易さを考えると、含水量は0.01〜15重量%程度とすることが好ましい。
【0075】
有機溶剤としては、エタノール、メタノール、t−ブチルアルコール、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、メチルエチルケトン等の単独溶媒またはこれらの混合溶剤が使用される。中でも、エタノール、メタノールは、細胞収容チップ60を変性させず、乾燥させやすいため好ましい。また、エタノール、メタノールは、ポリマーを加水分解させる場合にも、水と任意の割合で混ざるので好ましい。
【0076】
本実施形態のポリマーを溶解した溶液を、内表面61aおよび上面60bに塗布した後、乾燥させる工程において、あるポリマー中のシラノール基は、別のポリマー中のシラノール基、水酸基、アミノ基等と脱水縮合して架橋を形成する。さらに内表面61aおよび/または上面60bに水酸基、カルボニル基、アミノ基などがある場合も同様に脱水縮合し、基材表面と化学的に結合することができる。シラノール基の脱水縮合により形成される共有結合は加水分解されにくい性質があるので、基材表面に被覆されたポリマー(被覆層62)は容易に溶解したり剥がれたりすることはない。シラノール基の脱水縮合は加熱処理により促進される。ポリマーが熱により変成されない温度範囲内、例えば、60〜120℃で5分間〜24時間加熱処理するのが好ましい。
【0077】
本実施形態に係る細胞収容チップ60の素材は、ガラス、プラスチック、金属その他を用いることができるが、表面処理の容易性、量産性の観点から、プラスチックが好ましく、熱可塑性樹脂がより好ましい。
【0078】
熱可塑性樹脂としては、特に限定はされないが、透明性を確保するために、ポリエチレン、ポリプロピレン等の直鎖状ポリオレフィン;ポリスチレン;環状ポリオレフィン;含フッ素樹脂等を用いることが好ましい。
【0079】
被覆されたポリマー(被覆層62)と、内表面61aおよび上面60bとの密着性を高めるために、内表面61aおよび/または上面60bを活性化することが好ましい。活性化する手段としては、酸素雰囲気下、アルゴン雰囲気下、窒素雰囲気下、空気雰囲気下などの条件下でプラズマ処理する方法、ArF、KrFなどのエキシマレーザーで処理する方法がある。これらの中では、酸素雰囲気下でプラズマ処理する方法が好ましい。
【0080】
ポリマーを内表面61aおよび/または上面60bに塗布することで、容易に生理活性物質の非特異的吸着が抑制されたバイオチップ基板を作製できる。さらに、ポリマーが架橋構造を有することで、被覆層62を不溶性とすることができる。
【0081】
本実施形態に係る細胞収容チップを使用すると、各種の生理活性物質を固定化することができる。固定化する生理活性物質は核酸、アプタマー、蛋白質、オリゴペプチド、糖鎖、糖蛋白質などがある。例えば核酸を固定化する場合は、活性エステル基との反応性を高めるため、アミノ基を導入することが好ましい。アミノ基の導入位置はポリマー鎖末端あるいは側鎖(「ブランチ」ともいう)であってもよいが、分子鎖末端にアミノ基が導入されていることが好ましい。
【0082】
本実施形態において生理活性物質をバイオチップ基板上に固定化する際には、生理活性物質を溶解又は分散した液体を点着する方法が好ましい。
【0083】
点着後、静置することにより、生理活性物質が表面に固定化される。例えばアミノ化された核酸を用いた場合は、室温から80℃において1時間静置することにより、アミノ化された核酸の固定化が可能である。処理温度は高いほうが好ましい。生理活性物質を溶解または分散させる液体としてはアルカリ性であることが好ましい。
【0084】
洗浄後は生理活性物質を固定化した部分以外の基板表面の部分の官能基を不活性化処理する。活性エステルやアルデヒド基の場合はアルカリ化合物、あるいは一級アミノ基を有する化合物で行うことが好ましい。
【0085】
アルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸ナトリウム、水酸化リチウム、リン酸カリウムなどを好ましく用いることができる。
【0086】
一級アミノ基を有する化合物としては、メチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、グリシン、9−アミノアクアジン、アミノブタノール、4−アミノ酪酸、アミノカプリル酸、アミノエタノール、5−アミノ2,3−ジヒドロー1,4−ペンタノール、アミノエタンチオール塩酸塩、アミノエタンチオール硫酸、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、リン酸二水素2−アミノエチル、硫酸水素アミノエチル、4−(2−アミノエチル)モルホリン、5−アミノフルオレセイン、6−アミノヘキサン酸、アミノヘキシルセルロース、p−アミノ馬尿酸、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、5−アミノイソフタル酸、アミノメタン、アミノフェノール、2−アミノオクタン、2−アミノオクタン酸、1−アミノ2−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、3−アミノプロペン、3−アミノプロピオニトリル、アミノピリジン、11−アミノウンデカン酸、アミノサリチル酸、アミノキノリン、4−アミノフタロニトリル、3−アミノフタルイミド、p−アミノプロピオフェノン、アミノフェニル酢酸、アミノナフタレンなどを好ましく用いることができ、アミノエタノール、グリシンが最も好ましい。
【0087】
(細胞収容チップの使用方法)
図7(a)〜(e)は、上記のように構成される細胞収容チップ60の使用方法を説明するための模式図である。
【0088】
先ず、ウェル61の内表面61aに形成された被覆層62において(
図8(a))、該被覆層に含有される官能基含有材料の所定官能基62a、例えば活性エステル基を、一次抗体などの特異的結合材料81と結合する(
図8(b))。このとき、所定官能基62aとウェル61に収容される細胞Mが産生する被産生物質mとを結合する特異的結合材料81を含有する固定液を用い、該固定液を細胞収容チップ60上に導入することで、所定官能基62aと特異的結合材料81とが結合される。
【0089】
所定官能基62aとして活性エステル又はその誘導体を使用した場合、上記固定液は、アルカリ性が好ましく、具体的にはpH7〜10であることが好ましい。上記のような固定液を使用することにより、緩衝作用による自然状態を保持することができ、特異的結合材料81(タンパクなど)の変質等によるダメージを防止し、所定官能基62aと被産生物質mとの良好な結合を得ることができる。
【0090】
また、特異的結合材料81は、被産生物質と特異的に結合する結合性物質である。この特異的結合材料81は、一次抗体に限らず、抗原であってもよく、また、タンパク以外の物質でもよい。本発明で使用される特異的結合材料81は、例えば、サイトカイン、免疫グロブリン、抗免疫グロブリン、ホルモンを含むタンパクの様な化学物資である。
【0091】
ウェル61内を洗浄後、細胞Mを含む培養液をウェル61に収容し、細胞Mをウェル61内で培養する(
図7(c))。本培養により、細胞Mが被産生抗体などの被産生物質mを産生し、被産生物質mがウェル61内で特異的結合材料81と結合する(
図7(d))。その結果、所定官能基62aが、特異的結合材料81を介して被産生物質mと結合する。本発明は全細胞種の識別に適用することができ、細胞種は、例えばB細胞、T細胞、樹状細胞等の免疫細胞系、CTC細胞等の癌細胞系、iPS細胞、ES細胞などの幹細胞系、ハイブリドーマ、CHO細胞、酵母細胞等であり、被産生物質は、サイトカイン、免疫グロブリン、抗免疫グロブリン、ホルモンを含むタンパクや、ビタミンの様な化学物資である。
【0092】
そして、ウェル61内を洗浄後、被産生物質mまたは特異的結合材料81に特異的に結合する蛍光分子(例えば蛍光付き二次抗体)などの光情報保有物質83を結合する(
図7(e))。このように、細胞Mが産生する被産生物質mを当該細胞Mが収容されたウェル61内の被覆層62上に結合させた特異的結合材料81に結合し、また、被産生物質m又は特異的結合材料81に光情報保有物質83を結合して、その光情報保有物質83の光情報を検出することで、湿潤状態のウェル61内に細胞M及び被産生物質mを保持したまま、当該ウェル61を標識として、目的検体の正確な識別を行うことが可能となっている。
【0093】
(スクリーニング方法)
上記のように構成されるスクリーニング装置1は、上記の細胞収容チップ60を用いて、以下のように目的検体を回収する。
図8は、
図7の細胞収容チップ60を用いたスクリーニング方法を示すフローチャートであり、
図9(a)〜(d)は、
図8の各ステップを説明するための模式図である。
【0094】
図8に示すように、上記のように構成される細胞収容チップ60を準備して(ステップS1)、被覆層62に含まれる所定官能基62a(
図7参照)と、ウェル61に収容される細胞が産生する被産生物質mとの結合性を有する特異的結合材料81を結合する(ステップS2)(
図9(a))。例えば、ウェル61内の被覆層62上に一次抗体含有固定液を滴下或いは塗布し、一次抗体を結合させる。
【0095】
その後、細胞収容チップ60上及びウェル61内を洗浄して、被覆層62と結合しなかった特異的結合材料を除去する。洗浄後、細胞収容チップ60をスクリーニング装置1の固定部材120に装着する(ステップS3)。また、ステップS3を上記ステップS1とステップS2の間に実行してもよい。
【0096】
次に、複数の細胞Mを含む液体(例えば、培養液)を細胞収容チップ60上のウェル61に導入し、複数の細胞Mを細胞単位で複数のウェル61に収容する(ステップS4)(
図9(b))。このとき、液体導入後に所定時間放置して、各細胞が沈降して1つずつ各ウェル内に入るのを待つ。そして、ウェル61に収容されなかった細胞Mを洗浄して除去する。
【0097】
洗浄後、ウェル61に収容された細胞Mを培養して被産生物質mの産生を促し、細胞Mから産生した被産生物質mと特異的結合材料81を結合する(ステップS5)。細胞培養条件(温度、ガス種、濃度等)は、細胞種や用途等に応じて選択し得る。このとき、必要に応じて、ウェル61に収容された細胞Mの培養時間を変更することができる。その後、被産生物質mと、特異的に結合する蛍光分子などの光情報を有する光情報保有物質83を結合する(ステップS6)(
図9(c))。例えば、蛍光付き二次抗体含有溶液を細胞収容チップ60上に滴下し、この蛍光付き二次抗体を被産生物質mに結合する。光情報保有物質83は、上記蛍光付き二次抗体の他に、官能基付蛍光色素、ビオチン化抗体+アビジン化蛍光色素、蛍光ビーズ付二次抗体などであってもよい。また、ステップS6の処理は、ステップS5の処理と同時に行ってもよい。その後、細胞収容チップ60上及びウェル61内を洗浄して、被産生物質m又は特異的結合材料81と結合しなかった光情報保有物質83を除去する。
【0098】
次に、細胞収容チップ60の配置情報として、該細胞収容チップの基準位置の情報や補正パラメータ等を取得し(ステップS7)、画像解析を行って各ウェルの中心位置座標情報を取得する(ステップS8)。
その後、細胞収容チップ60に光を照射し、光情報保有物質83の光情報を取得して、輝度解析を行う(ステップS9)。このとき、ステップS9における光照射に基づいて蛍光する光情報保有物質83の光情報を取得してもよいし、予め蛍光した光情報保有物質83の光情報を取得してもよい。輝度解析としては、光情報保有物質83から得られる蛍光情報の時間変化を測定してもよい。
【0099】
次いで、取得された輝度情報に基づいて、ユーザが所望する微細粒子の回収条件、例えばある蛍光の輝度が所定の閾値を超えたもの、あるいは、複数の蛍光(例えば、蛍光の色が異なる)を使用した場合に、少なくとも一つの蛍光の輝度が所定の閾値を越えたものや、これらの任意の組み合わせを回収条件とする。また、任意の蛍光の輝度につき、回収から除外したもの(閾値より低いもの)を組み合わせてもよい。このようにして決定された幾つかの条件を入力し(ステップS10)、上記回収条件に基づいて細胞Mを目的検体として特定する(ステップS11)。例えば、上記回収条件を満たした輝度の光を放っているウェル61に収容されている細胞Mを目的検体として特定する。
【0100】
その後、吸引・吐出キャピラリ140の中心位置を画像解析等により取得し、その中心位置あるいは該中心位置に対して所定距離ずらした位置を、細胞回収の際の各ウェルの中心位置(位置情報)として設定する(ステップS12)。そして目的検体が収容されたウェル61の中心位置を、ステップS12で設定されたウェルの中心位置に合わせるように移動し、ステップS11で特定された目的検体を順次回収する(ステップS13)(
図9(d))。回収された目的検体は、ユーザが予め設定した収容プレート50上の所定のウェル51に収容される。
【0101】
(細胞収容チップの親水性の評価)
図10は、種々の細胞収容チップと蒸留水との接触角を測定、比較した結果を示すグラフである。
本評価では、発明例サンプル1として、親水性及びタンパク低吸着性の双方を有する第1材料と、官能基含有材料である第2材料と、架橋成分である第3材料とを含む被覆層(
図7a)参照)を用いた。また、比較例サンプル1として官能基含有材料のみを含む被覆層、比較例サンプル2として親水性材料のみを含む被覆層、及び比較例サンプル3として被覆層を有さない未処理の細胞収容チップを用いた。また、全てのサンプルにおける基体の材質及び形状、並びに基体の製法を同一とした。以下に、発明例サンプルについて具体的に記載する。
【0102】
(発明例サンプルに用いた高分子化合物の合成例)
第1材料としてポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMA、数平均分子量Mn=468、新中村化学株式会社製)、第2材料としてp−ニトロフェニルオキシカルボニル−ポリエチレングリコールメタクリレート(MEONP、株式会社ナード研究所製)、第3材料として3−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン(MPDMS、GELEST,INC.製)をそれぞれ順に0.90mol/L、0.05mol/L、0.05mol/L、になるように脱水エタノールに溶解させ、モノマー混合溶液を作製した。そこにさらに0.002mol/Lになるように2,2−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、和光純薬工業株式会社製)を添加し、均一になるまで該モノマー混合溶液を撹拌した。その後、アルゴンガス雰囲気下、60℃で4時間反応させた後、反応溶液をジエチルエーテル中に滴下し、沈殿を収集した。得られた高分子化合物を重エタノール溶媒中1H―NMRで測定し、0.7ppm付近に現れるMPDMSのSiに結合したメチレンに帰属されるピーク、3.4ppm付近に現れるPEGMAの末端メトキシ基に帰属されるピーク、7.4ppmおよび8.3ppm付近に現れるMEONPのベンゼン環に帰属されるピーク、それぞれの積分値より、この高分子化合物の組成比を算出した。表1に結果を示す。
【0104】
(発明例サンプルの作製方法)
基体に対し、酸素雰囲気下のプラズマ処理によって基体表面に酸化処理を施した。この基体を高分子化合物の合成例にて得られた高分子化合物の0.3重量%エタノール溶液に浸漬した後に、60℃にて18時間加熱乾燥することにより、基体表面にアルキレングリコール残基を有するエチレン系不飽和重合性モノマー、活性エステル基を有するエチレン系不飽和重合性モノマー及び架橋可能な官能基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーからなる高分子化合物を含む層を導入した。
【0105】
接触角の測定は、JIS R3257に準拠し、以下に示すような静的法で算出した。1μLの蒸留水を細胞収容チップ上に滴下した際の、半径r(mm)及び高さh(mm)から接触角θ(°)を求めた。ここで、半径rは、水滴のチップ表面に接している面の半径、高さhは、チップ表面から水滴の頂点までの高さである。そして、1試料につき6点測定した際の平均値を算出した。
【0106】
図10に示すように、被覆層が官能基含有材料のみを含む場合(比較例サンプル1)、被覆層と蒸留水との接触角は69°〜75°で平均値が72°である。これに対し、本実施形態の被覆層(発明例サンプル1)は、親水性及びタンパク低吸着性の双方を有する材料と官能基含有材料を含んでおり、接触角が57°〜59°で平均値が59°であり、親水性が大きく改善されていることが分かる。被覆層が親水性材料のみを含む場合には(比較例サンプル2)、細胞収容チップと細胞を含む液体との接触角は14°〜17°で平均値が15°であるが、被産生物質と結合性を有する特異的結合材料を結合することが困難であり、かつ、ウェル内に収容された細胞や被産生物質等のタンパクが被覆層に吸着する懸念がある。また、未処理の細胞収容チップの場合(比較例サンプル3)、接触角が78°〜86°で平均値が83°であり、明らかに濡れ性が悪い。これらの測定結果から、本実施形態の被覆層は、被産生物質と結合性を有する特異的結合材料を結合可能としつつ、タンパクの吸着を抑制し、良好な親水性を実現できることが分かる。
【0107】
(ウェルの気泡率に基づく親水性の評価)
細胞収容チップに形成されたウェルは微細であるため、ウェルを含む細胞収容チップの親水性は、細胞を含む液体のウェル内への流入に大きな影響を及ぼす。そこで、親水性の指標である細胞収容チップの接触角が、ウェルに発生する気泡率に与える影響を確認、評価するため、以下のような試験を行った。
【0108】
先ず、各細胞収容チップを固定部材にセットし、該細胞収容チップ上に、常温のPBS(リン酸緩衝生理食塩水)を導入し、チップ上の任意の500ウェル中、内部に気泡が入っているウェルの個数の割合を気泡率として求めた。気泡率は、緩衝液の導入直後(気泡率(1))、緩衝液の導入から時間t(t=5分)経過後(気泡率(2))、及び緩衝液の導入から時間2t(10分)経過後(気泡率(3))、のそれぞれについて求めた。本評価では、上記親水性の評価と同じ発明例サンプル及び比較例サンプルを用いた。結果を表2に示す。
【0110】
表2の結果から、本実施形態の被覆層(発明例サンプル1)の場合、ウェルの気泡率(1)〜(3)はそれぞれ100%、0%、0%であり、PBS導入直後に多くのウェル内に気泡が発見されたものの、速やかに気泡が抜け、一定時間後にはほぼ全てのウェルから気泡が抜けていることが分かる。一方、官能基含有材料のみを含む被覆層の場合(比較例サンプル1)、ウェルの気泡率(1)〜(3)は、それぞれ100%、100%、96%であり、PBS導入直後にほぼ全てのウェルに気泡が入り、一定時間経過後でもほぼ全てのウェルに気泡が残留した。また、親水性材料のみを含む被覆層の場合(比較例サンプル2)、ウェルの気泡率(1)〜(3)はいずれも0%であり、PBS導入直後及び一定時間経過後のいずれでも、気泡が入っているウェルは発見されなかった。また、未処理の細胞収容チップの場合(比較例サンプル3)、ウェルの気泡率(1)〜(3)は、それぞれ100%であり、PBS導入直後に全てのウェルに気泡が入り、一定時間経過後でも全てのウェルに気泡が残留した。
【0111】
細胞をウェルに収容する場合、細胞を含む液体(細胞懸濁液ともいう)を細胞収容チップ上に導入し、静置することで、細胞が液体中でゆっくりと沈降し、ウェル内に収容される。しかし、細胞収容チップの表面やウェルの表面の濡れ性が悪いと、ウェル内に気泡が発生し、細胞が沈降する際にウェル内の気泡によってその進行が妨げられ、ウェル内に細胞を収容することができない。よって、細胞が液体中で沈降する前にウェル内の気泡が抜けるだけの親水性が細胞収容チップの表面に必要である。本実施形態によれば、細胞収容チップの表面の接触角が60°以下であれば、ウェル内での気泡の発生を防止するのに十分な親水性を有しており、微細なウェル内に細胞を確実に収容できることが確認された。
【0112】
(細胞収容チップの細胞低接着性の評価)
次に、
図10に示す評価で使用したサンプルと同様の被覆層に対する細胞の接着率を測定、比較した。
細胞の接着率の測定と評価には、以下のように実施した。まず
図8に示すように、各細胞収容チップ上に一次抗体含有固定液を滴下し、一次抗体を結合させた。その後、該細胞収容チップ表面を洗浄して、結合しなかった一次抗体及び固定液の成分を除去した。洗浄後、各細胞収容チップを固定部材にセットし、複数の293T細胞を含む培養液を該細胞収容チップ上に導入し、複数の該細胞を細胞単位で複数のウェルに収容した。その後、ウェルに収容されなかった該細胞を洗浄して除去した。洗浄後、該細胞収容チップとウェルに収容された該細胞を60分培養し、回収機構を含む細胞のスクリーニング装置で、該細胞収容チップ上のウェルに格納された該細胞を48個回収しようとした際に、該細胞収容チップ表面に接着して回収できなかった該細胞の割合を接着率とした。測定点数n=48とした。
【0113】
本評価では、上記親水性の評価と同じ発明例サンプル1及び比較例サンプル1、2を用いた。結果を表3に示す。
【0115】
表3に示すように、本実施形態の被覆層(発明例サンプル1)の場合、293T細胞の接着率は約8%(4個)であり、大半の293T細胞が被覆層に接着していないことが分かる。一方、官能基含有材料のみを含む被覆層の場合(比較例サンプル1)、293T細胞の接着率は約96%(46個)であり、ほぼ全ての細胞が被覆層に接着したことが分かる。また、親水性材料のみを含む被覆層の場合(比較例サンプル2)、接着率は約83%(40個)であり、ほぼ全ての細胞が被覆層に接着したことが分かる。この結果から、本実施形態の被覆層によれば、被覆層に対する細胞の接着率が格段に低く、ウェル内の被覆層が当該ウェルに収容される細胞と接着し難く、良好な細胞低接着性を実現できることが分かった。
【0116】
(特異的結合材料に対する結合性評価)
細胞が産生する被産生物質との結合性を有する特異的結合材料に対する活性エステル基の結合性を評価する為に、基体表面に固定化したビオチンと、アビジンとの相互作用解析を行った。発明例サンプル2として、上記「(発明例サンプルに用いた高分子化合物の合成例)」で合成した高分子からなる被覆層を有する環状ポリオレフィン基板を作製した。比較例サンプル4として、被覆層を有さない環状ポリオレフィン基板を用いた。
【0117】
(ビオチンの固定化とアビジンとの相互作用)
発明例サンプル2、比較例サンプル4に対し、pH9.0の炭酸バッファーで1mMに調製したビオチンヒドラジド溶液を点着し、37℃で1時間静置する事で、基板表面にビオチン分子を固定化した。基板を純水で洗浄後、0.1% Tween20を含むPBSで2μg/mLに調製したCy3標識Streptavidin溶液に基板を浸漬し、室温で1時間反応させる事で、ビオチンとアビジンとを結合させた。
【0118】
(ビオチンとアビジンとの相互作用解析)
0.1% Tween20を含むPBSで基板を洗浄後、市販のマイクロアレイ用スキャナで、ビオチンヒドラジド溶液を点着した部分のCy3色素の蛍光シグナル(S)と、点着しなかった部分のCy3色素の蛍光シグナル(N)を検出し、S/N比として記載した結果を表4に示す。発明例サンプル2と比較例サンプル4とのS/N比の比較により、細胞が産生する被産生物質に見立てたアビジン分子との結合性を有するビオチン分子を、活性エステル基を有する発明例サンプル2を用いることで簡便に基板表面に固定化することが可能であることが示された。
【0120】
(架橋による効果の確認)
次に、ポリマーの架橋が洗浄によるシグナル低減を防止する効果を示す目的で、エタノールによる洗浄前後でのタンパク質の吸着量変化を確認した。発明例サンプル3として、上記「(発明例サンプルに用いた高分子化合物の合成例)」で合成した高分子からなる被覆層を有するポリスチレン基板を作製した。比較例5として、親水性及びタンパク低吸着性の双方を有する第1材料と、官能基含有材料である第2材料のみで構成された被覆層を有するポリスチレン基板を作製した。比較例サンプル6として、被覆層を有さないポリスチレン基板を用いた。ポリスチレン基板として、96ウェルプレートを用いた。
【0121】
(タンパク質の吸着)
発明例サンプル3、比較例サンプル5、比較例サンプル6の一部のウェルにエタノールを分注して30分静置した後、エタノールを除いて室温で風乾した。PBSで0.5μg/mLに調製したペルオキシダーゼ標識アビジン溶液を各サンプルに分注し、室温で1時間静置し、基板表面にアビジンを吸着させた。0.1% Tween20を含むPBSで基板を洗浄後、市販のHRP用発色液(住友ベークライト社製)を用いて各ウェルを発色させ、市販のプレートリーダーで450nmの吸光度を測定する事で、アビジンの吸着量を測定した。
【0122】
(タンパク質の吸着量変化の測定)
発明例サンプル3、比較例サンプル5、比較例サンプル6について、エタノールで洗浄したウェルと洗浄しなかったウェルとの吸光度を表5に示す。吸光度は、波長670nmの吸光度をリファレンスとし、波長450nmの吸光度との差を求めた。発明例サンプル3では洗浄前後で吸光度に大きな変化はないが、比較例サンプル5では洗浄後に吸光度の上昇が見られた。このことから、発明例サンプル3の架橋構造の効果により、エタノール洗浄による被覆層への影響を回避できたことが分かる。また被覆層を持たない比較例サンプル6では、洗浄前後に関係なく高い吸光度が観測されており、発明例サンプル3との比較において第1材料による低吸着性が確認できる。
【0124】
上述したように、本実施形態によれば、複数のウェル61内の被覆層62の表面が、細胞低接着性を有すると共に、ウェル61に収容される細胞Mが産生する被産生物質mとの結合性を有する特異的結合材料81に対して結合性を有する。この被覆層62の親水性材料により、細胞Mを含む液体が微細なウェル61内に入り易く、各ウェルに単一細胞を収容する精度を高めることができ、目的検体を識別・分取する精度や効率を向上することができる。また、従来のチップでは、被産生物質との結合性を有する物質(Ig抗体など)をチップ上に予め結合させた構成であるため、当該チップの長期間の保存が難しく、乾燥等により精度が低下する可能性がある。一方、本実施形態によれば、被覆層62の表面が特異的結合材料81との結合性を有することにより、被産生物質mとの結合性を有する特異的結合材料81を細胞収容チップ60上に予め結合させる必要が無く、乾燥等による精度低下を防止することができる。また、被覆層62の親水性によってウェル61内が従来よりも乾燥し難くなるため、特異的結合材料81の結合後もウェル61内を湿潤状態で保持することができ、特異的結合材料81の乾燥等による精度の低下を防止することができる。また、被覆層62表面の特異的結合材料81との結合性により、特異的結合材料81が所定官能基62aと結合し、また、被覆層62のウェル61内の細胞Mから産生される被産生物質mが特異的結合材料81と結合するため、当該ウェル61自体を目的検体識別の際の標識部位とすることができ、細胞Mにダメージを与えること無く目的検体を識別することができる。更に、被覆層62の表面が細胞低接着性を有することにより、ウェル内の細胞Mがウェル61の内表面や基体60aの上面60bに接着するのを防止することができ、ブロッキング剤等を用いたコーティング処理を要すること無く、目的検体である細胞Mを高効率で回収でき、更に細胞回収時に当該細胞Mにダメージを与えること無く回収することができる。また、被覆層62がタンパク低吸着性材料を有するため、被産生物質mがタンパクである場合、細胞収容チップ表面への被産生物質mの非特異的な吸着を防止し、ブロッキング剤等を用いたコーティング処理を要すること無く良好な検出感度を維持することができる。
【0125】
また、本実施形態によれば、細胞低接着性及びウェル61に収容される細胞Mが産生する被産生物質mとの結合性を有する特異的結合材料81に対して結合性を持つ表面を有する被覆層62を備えた細胞収容チップ60を準備し、被覆層62の表面に特異的結合材料81を結合し、複数の細胞Mを含む液体を細胞収容チップ60に導入して、複数の細胞Mを細胞単位で複数のウェル61に収容し、ウェル61に収容された細胞Mからの被産生物質mと、上記特異的結合材料81を結合し、被産生物質m又は特異的結合材料81と、光情報を有する光情報保有物質83を結合するので、目的検体を高精度且つ高効率で識別・分取することができる。また、取扱が簡単で、細胞回収時に細胞Mにダメージを与えること無く容易な回収を実現することができる。
【0126】
以上、本実施形態に係る細胞収容チップ、及び該細胞収容チップを用いたスクリーニング方法について述べたが、本発明は記述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0127】
例えば、
図8、9では、上記回収条件を満たした輝度の光を放っているウェル61に収容されている細胞Mを目的検体として特定している(ステップS11)。すなわち、
図8、9では、細胞Mから分泌される被産生物質m(
図9の白色のY)と特異的に結合する光情報保有物質83を用いており、細胞Mから産生される被産生物質mは、当該細胞Mが収容されたウェル61に結合する。よって、上述のように、光情報保有物質83を特異的結合材料81に結合させるタイミング(ステップS6)は、ステップS5の後か、或いはステップS5と同時に行うことができる。
【0128】
これに対し、上記回収条件で用いた閾値以上の輝度の光を放っているウェル以外のウェル61に収容されている細胞Mを、目的検体として特定するスクリーニング方法を用いてもよい。以下、
図8のフローチャートと同一の部分については説明を省略し、異なる部分を説明する。
【0129】
図11に示すように、先ず、複数の細胞Mを細胞単位で複数のウェル61に収容した後(ステップS4)、各細胞を培養して被産生物質mの産生を促し、細胞Mから産生した被産生物質mとウェル61内の特異的結合材料81を結合する(ステップS5)。これにより、目的検体となる細胞Mが収容されたウェル61内の特異的結合材料81が被産生物質mによって覆われ、目的検体となる細胞Mが収容されていないウェル61内の特異的結合材料81は被産生物質mによって覆われない。そして本変形例では、被産生物質mと特異的に結合せず、特異的結合材料81と特異的に結合する他の光情報保有物質を用い、当該他の光情報保有物質を特異的結合材料81と結合させる(ステップS6’)。これにより、被産生物質mを産生した細胞Mが収容されたウェル61は光を放たず、被産生物質mを産生していない細胞Mが収容されたウェル61が光を放つ。よって本方法では、ステップS5とステップS6’を同時に行わず、ステップS5の後にステップS6’を行う。
【0130】
その後、光情報保有物質83の光情報を取得して、輝度解析を行い(ステップS9)。取得された輝度情報に基づいて、ユーザが所望する微細粒子の回収条件を入力し(ステップS10)、上記回収条件に基づいて細胞Mを目的検体として特定する(ステップS11)。このとき、光を放っていないこと、或いは輝度が所定の閾値以下であることを回収条件とし、該回収条件を満たしたウェル61に収容されている細胞Mを目的検体として特定する。本方法によっても、所望の目的検体を回収することができる。
【0131】
この出願は、2016年3月31日に出願された特願2016−070969号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。