(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る作業機1の油圧システムの好適な実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図5は、本発明に係る作業機の側面図を示している。
図5では、作業機の一例として、コンパクトトラックローダを示している。但し、本発明に係る作業機はコンパクトトラックローダに限定されず、例えば、スキッドステアローダ等の他の種類のローダ作業機であってもよい。また、ローダ作業機以外の作業機であってもよい。
【0014】
作業機1は、
図5及び
図6に示すように、作業機1は、機体2と、キャビン3と、作業装置4と、走行装置5とを備えている。本発明の実施形態において、作業機1の運転席8に着座した運転者の前側(
図5の左側)を前方、運転者の後側(
図5の右側)を後方、運転者の左側(
図5の手前側)を左方、運転者の右側(
図5の奥側)を右方として説明する。また、前方向又は後ろ方向の方向に直交する方向である水平方向を機体幅方向として説明する。機体2の中央部から右部或いは左部へ向かう方向を機体外方として説明する。言い換えれば、機体外方とは、機体幅方向であって、機体2から離れる方向である。機体外方とは反対の方向を、機体内方として説明する。言い換えれば、機体内方とは、機体幅方向であって、機体2に近づく方向である。
【0015】
キャビン3は、機体2に搭載されている。このキャビン3には運転席8が設けられている。作業装置4は機体2に装着されている。走行装置5は、機体2の外側に設けられている。機体2内の後部には、原動機32が搭載されている。
作業装置4は、ブーム10と、作業具11と、リフトリンク12と、制御リンク13と、ブームシリンダ14と、バケットシリンダ15とを有している。
【0016】
ブーム10は、キャビン3の右側及び左側に上下揺動自在に設けられている。作業具11は、例えば、バケットであって、当該バケット11は、ブーム10の先端部(前端部)に上下揺動自在に設けられている。リフトリンク12及び制御リンク13は、ブーム10が上下揺動自在となるように、ブーム10の基部(後部)を支持している。ブームシリンダ14は、伸縮することによりブーム10を昇降させる。バケットシリンダ15は、伸縮することによりバケット11を揺動させる。
【0017】
左側及び右側の各ブーム10の前部同士は、異形の連結パイプで連結されている。各ブーム10の基部(後部)同士は、円形の連結パイプで連結されている。
リフトリンク12、制御リンク13及びブームシリンダ14は、左側と右側の各ブーム10に対応して機体2の左側と右側にそれぞれ設けられている。
リフトリンク12は、各ブーム10の基部の後部に、縦向きに設けられている。このリフトリンク12の上部(一端側)は、各ブーム10の基部の後部寄りに枢支軸(第1枢支軸)16を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。また、リフトリンク12の下部(他端側)は、機体2の後部寄りに枢支軸(第2枢支軸)17を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第2枢支軸17は、第1枢支軸16の下方に設けられている。
【0018】
ブームシリンダ14の上部は、枢支軸(第3枢支軸)18を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第3枢支軸18は、各ブーム10の基部であって、当該基部の前部に設けられている。ブームシリンダ14の下部は、枢支軸(第4枢支軸)19を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第4枢支軸19は、機体2の後部の下部寄りであって第3枢支軸18の下方に設けられている。
【0019】
制御リンク13は、リフトリンク12の前方に設けられている。この制御リンク13の一端は、枢支軸(第5枢支軸)20を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第5枢支軸20は、機体2であって、リフトリンク12の前方に対応する位置に設けられている。制御リンク13の他端は、枢支軸(第6枢支軸)21を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第6枢支軸21は、ブーム10であって、第2枢支軸17の前方で且つ第2枢支軸17の上方に設けられている。
【0020】
ブームシリンダ14を伸縮することにより、リフトリンク12及び制御リンク13によって各ブーム10の基部が支持されながら、各ブーム10が第1枢支軸16回りに上下揺動し、各ブーム10の先端部が昇降する。制御リンク13は、各ブーム10の上下揺動に伴って第5枢支軸20回りに上下揺動する。リフトリンク12は、制御リンク13の上下揺動に伴って第2枢支軸17回りに前方向又は後ろ方向揺動する。
【0021】
ブーム10の前部には、バケット11の代わりに別の作業具が装着可能とされている。別の作業具としては、例えば、油圧圧砕機、油圧ブレーカ、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパー、モア、スノウブロア等のアタッチメント(予備アタッチメント)である。
左側のブーム10の前部には、接続部材50が設けられている。接続部材50は、予備アタッチメントに装備された油圧機器と、ブーム10に設けられたパイプ等の第1管材とを接続する装置である。具体的には、接続部材50の一端には、第1管材が接続可能で、他端には、予備アタッチメントの油圧機器に接続された第2管材が接続可能である。これにより、第1管材を流れる作動油は、第2管材を通過して油圧機器に供給される。
【0022】
バケットシリンダ15は、各ブーム10の前部寄りにそれぞれ配置されている。バケットシリンダ15を伸縮することで、バケット11が揺動される。
左側及び右側の各走行装置5は、本実施形態ではクローラ型(セミクローラ型を含む)の走行装置が採用されている。なお、前輪及び後輪を有する車輪型の走行装置を採用してもよい。
【0023】
次に、走行系の油圧システムについて説明する。
図1に示すように、油圧システムは、第1油圧ポンプP1と、左走行モータ装置(第1走行モータ装置)31Lと、右走行モータ装置(第2走行モータ装置)31Rと、原動機32と、走行駆動装置34とを有している。
第1油圧ポンプP1は、タンク22に貯留された作動油を吐出可能である。第1油圧ポンプP1は、原動機32の動力によって駆動ポンプであって、定容量型のギヤポンプによって構成されている。第1油圧ポンプP1は、主に制御に用いる作動油を吐出する。説明の便宜上、作動油を貯留するタンク22のことを作動油タンクということがある。また、第1油圧ポンプP1から吐出した作動油のうち、制御用として用いられる作動油のことをパイロット油、パイロット油の圧力のことをパイロット圧ということがある。第1油圧ポンプP1の吐出側には、作動油(パイロット油)を流す油路(吐出油路)40が設けられている。吐出油路(第1油路)40には、第1走行モータ装置31L及び第2走行モータ装置31Rが設けられている。
【0024】
原動機32は、電動モータ、エンジン等から構成されている。この実施形態では、原動機32はエンジンである。なお、原動機32は、電動モータとエンジンとを有するハイブリッド型であってもよいし、電動モータのみを有するものであってもよい。
走行駆動装置34は、第1走行モータ装置31L及び第2走行モータ装置31Rを駆動する装置であって、第1走行モータ装置31Lの駆動用の駆動回路(左駆動回路)34Lと、第2走行モータ装置31Rの駆動用の駆動回路(右駆動回路)34Rとを有している。
【0025】
左駆動回路34L及び右駆動回路34Rは、それぞれ走行ポンプ(走行油圧ポンプ)53L,53Rと、変速用油路57h,57iと、第2チャージ油路57jと、を有している。変速用油路57h,57iは、走行ポンプ53L,53Rと走行モータ36とを接続する油路である。第2チャージ油路57jは、変速用油路57h,57iに接続され、第1油圧ポンプP1からの作動油を変速用油路57h,57iに補充する油路である。
【0026】
走行ポンプ53L,53Rは、原動機32の動力によって駆動される斜板形可変容量アキシャルポンプである。言い換えれば、走行ポンプ53L,53Rは、作動油によって操作可能な走行用アクチュエータである。走行ポンプ53L,53Rは、パイロット圧が作用する前進用受圧部53aと後進用受圧部53bとを有している。前進用受圧部53a、後進用受圧部53bに作用するパイロット圧によって斜板の角度が変更される。斜版の角度を変更することによって、走行ポンプ53L,53Rの出力(作動油の吐出量)や作動油の吐出方向を変えることができる。
【0027】
第1走行モータ装置31Lは、機体2の左側に設けられた走行装置5の駆動軸に動力を伝達するモータである。第2走行モータ装置31Rは、機体2の右側に設けられた走行装置5の駆動軸に動力を伝達するモータである。
第1走行モータ装置31Lは、走行モータ36と、前方向又は後ろ方向切換弁35と、走行制御弁(油圧切換弁)38とを有している。走行モータ36、前方向又は後ろ方向切換弁35及び走行制御弁38には、作動油が供給可能である。
【0028】
走行モータ36は、カムモータ(ラジアルピストンモータ)である。走行モータ36は、稼動時における容量(モータ容量)の大きさを可変することによって、出力軸の回転やトルクを変更する。
次に、作業系の油圧システムについて説明する。
図2に示すように、油圧システムは、複数の制御弁56と、作業系油圧ポンプ(第2油圧ポンプ)P2を備えている。
【0029】
第2油圧ポンプP2は、第1油圧ポンプP1とは異なる位置に設置されたポンプであって、定容量型のギヤポンプによって構成されている。第2油圧ポンプP2は、タンク22に貯留された作動油を吐出可能である。第2油圧ポンプP2は、主に油圧アクチュエータを作動させる作動油を吐出する。
第2油圧ポンプP2の吐出側には、油路(メイン油路)39が設けられている。このメイン油路39には、複数の制御弁56が接続されている。制御弁56は、パイロット油のパイロット圧によって作動油の流す方向を切換可能な弁である。また、制御弁56は、例えば、ブーム、バケット、油圧圧砕機、油圧ブレーカ、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパー、モア、スノウブロア等の油圧装置を制御(駆動)する。
【0030】
複数の制御弁56は、第1制御弁56A、第2制御弁56B、第3制御弁56Cである。第1制御弁56Aは、ブームを制御する油圧シリンダ(ブームシリンダ)14を制御する弁である。第2制御弁56Bは、バケットを制御する油圧シリンダ(バケットシリンダ)15を制御する弁である。第3制御弁56Cは、油圧圧砕機、油圧ブレーカ、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパー、モア、スノウブロア等の予備アタッチメントに装着された油圧機器(油圧シリンダ、油圧モータ)を制御する弁である。
【0031】
第1制御弁56A、第2制御弁56Bは、それぞれパイロット方式の直動スプール形3位置切換弁である。第1制御弁56A、第2制御弁56Bは、パイロット圧によって、中立位置、中立位置とは異なる第1位置、中立位置及び第1位置とは異なる第2位置に切り換わる。第1制御弁56Aは、第1制御弁56Aの一方側及び他方側の受圧部に作用した作動油の圧力差によって操作可能である。また、第2制御弁56Bは、第2制御弁56Bの一方側及び他方側の受圧部に作用した作動油の圧力差によって操作可能である。第1制御弁56Aには、油路を介してブームシリンダ14が接続され、第2制御弁56Bには、油路を介してバケットシリンダ15が接続されている。
【0032】
第3制御弁56Cには、給排油路83が接続されている。給排油路83の一端は、第3制御弁56Cの給排ポートに接続され、給排油路83の中途部は、接続部材50に接続され、給排油路83の他端部は、予備アタッチメントの油圧機器に接続される。詳しくは、給排油路83は、第3制御弁56Cの第1給排ポートと接続部材50の第1ポートとを接続する第1給排油路83aを含んでいる。また、給排油路83は、第3制御弁56Cの第2給排ポートと接続部材50の第2ポートとを接続する第2給排油路83bとを含んでいる。つまり、第3制御弁56Cを作動させることによって、第3制御弁56Cから第1給排油路83aに向けて作動油を流したり、第3制御弁56Cから第2給排油路83bに向けて作動油を流すことができる。
【0033】
図1及び
図2に示すように、作業機1の走行に関する操作(走行操作)及び作業に関する操作(作業操作)は、運転席8の左に設けられた第1操作装置47と、運転席8の右に設けられた第2操作装置48とによって行う。言い換えれば、第1操作装置47及び第2操作装置48は、走行系の油圧機器(走行モータ36、走行ポンプ53L,53R)、作業系の油圧機器(第1制御弁56A、第2制御弁56B、第3制御弁56C、ブームシリンダ14、バケットシリンダ15、予備アタッチメントに設けた油圧シリンダ、油圧モータ)を操作する操作装置である。
【0034】
次に、第1操作装置47及び第2操作装置48について詳しく説明する。
第1操作装置47は、走行操作と作業操作との両方を行うことが可能な装置であり、第1操作部材54を有している。第1操作部材54は、前方向又は後ろ方向に動かす第1操作と、前方向又は後ろ方向とは異なる左方向又は右方向(機体幅方向)に動かす第2操作とを行うことが可能なレバーである。言い換えれば、第1操作部材54は、一方向(例えば、前、左)と、一方向とは異なる他方向(例えば、後、右)とに動かすことが可能なレバーである。
【0035】
第1操作部材54において、第1操作は走行操作に割り当てられており、第2操作は作業操作に割り当てられている。つまり、第1操作部材54は、走行の操作部材(走行操作部材)と、作業の操作部材(作業操作部材)とを兼用している。なお、第1操作部材54は、少なくとも第1操作と第2操作とを独立して行うことができるものであれば、レバーに限定されない。
【0036】
第1操作部材54の下部には、複数のパイロット弁55が設けられている。複数のパイロット弁55は、第1操作部材54の操作に応じて作動油の圧力を変更可能である。複数のパイロット弁55は、パイロット弁55A、パイロット弁55B、パイロット弁55C及びパイロット弁55Dである。パイロット弁55A、パイロット弁55B、パイロット弁55C及びパイロット弁55Dは、吐出油路40に接続されている。
【0037】
パイロット弁55Aは、第1操作(前方向又は後ろ方向の操作)のうち前操作で作動する弁であって、前操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。パイロット弁55Bは、第1操作(前方向又は後ろ方向の操作)のうち後操作で作動する弁であって、後操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。つまり、パイロット弁55A及びパイロット弁55Bは、第1操作によって作動する弁であり、走行操作に対応する動きをする。
【0038】
パイロット弁55Cは、第2操作(左方向又は右方向の操作)のうち左操作で作動する弁であって、左操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。パイロット弁55Dは、第2操作(左方向又は右方向の操作)のうち右操作で作動する弁であって、右操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。つまり、パイロット弁55C及びパイロット弁55Dは、第2操作によって作動する弁であり、作業操作に対応する動きをする。
【0039】
第2操作装置48は、走行操作と作業操作との両方を行うことが可能な装置であり、第2操作部材58を有している。第2操作部材58は、前方向又は後ろ方向に動かす第1操作と、前方向又は後ろ方向とは異なる左方向又は右方向(機体幅方向)に動かす第2操作とを行うことが可能なレバーである。言い換えれば、第2操作部材58は、一方向(例えば、前、左)と、一方向とは異なる他方向(例えば、後、右)とに動かすことが可能なレバーである。
【0040】
第2操作部材58において、第1操作は走行操作に割り当てられており、第2操作は作業操作に割り当てられている。つまり、第2操作部材58は、走行の操作部材(走行操作部材)と、作業の操作部材(作業操作部材)とを兼用している。なお、第2操作部材58は、少なくとも第1操作と第2操作とを独立して行うことができるものであれば、レバーに限定されない。
【0041】
第2操作部材58の下部には、複数のパイロット弁59が設けられている。複数のパイロット弁59は、第2操作部材58の操作に応じて作動油の圧力を変更可能である。複数のパイロット弁59は、パイロット弁59A、パイロット弁59B、パイロット弁59C及びパイロット弁59Dである。パイロット弁59A、パイロット弁59B、パイロット弁59C及びパイロット弁59Dは、吐出油路40に接続されている。
【0042】
パイロット弁59Aは、第2操作(前方向又は後ろ方向の操作)のうち前操作で作動する弁であって、前操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。パイロット弁59Bは、第1操作(前方向又は後ろ方向の操作)のうち後操作で作動する弁であって、後操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。つまり、パイロット弁59A及びパイロット弁59Bは、第1操作によって作動する弁であり、走行操作に対応する動きをする。
【0043】
パイロット弁59Cは、第1操作(左方向又は右方向の操作)のうち左操作で作動する弁であって、左操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。パイロット弁59Dは、第2操作(左方向又は右方向の操作)のうち右操作で作動する弁であって、右操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。つまり、パイロット弁59C及びパイロット弁59Dは、第2操作によって作動する弁であり、作業操作に対応する動きをする。
【0044】
以上のことから、複数のパイロット弁のうち、パイロット弁55A、パイロット弁55B、パイロット弁59A、パイロット弁59Bは、走行操作に対応して作動し、パイロット弁55C、パイロット弁55D、パイロット弁59C、パイロット弁59Dは、作業操作に対応して作動する。説明の便宜上、パイロット弁55A、パイロット弁55B、パイロット弁59A、パイロット弁59Bのことを、走行パイロット弁ということがある。走行パイロット弁のうち、第1操作部材54の一方向(例えば、前)によって作動するパイロット弁55Aのことを「第1パイロット弁」といい、第1操作部材54の他方向(例えば、後)によって作動するパイロット弁55Bのことを「第2パイロット弁」といい、第2操作部材58の一方向(例えば、前)によって作動するパイロット弁59Aのことを「第3パイロット弁」といい、第2操作部材58の他方向(例えば、後)によって作動するパイロット弁59Bのことを「第4パイロット弁」という。
【0045】
次に、走行パイロット弁、作業パイロット弁、油圧機器との関係について説明する。
図1及び
図2に示す符号「W1」、「W2」、「D1」、「D2」は油路の接続先を示している。
走行パイロット弁と、走行系の油圧機器(走行油圧機器)の1つである走行ポンプ53L,53Rとは、走行油路45によって接続されている。走行油路45は、第1走行油路45a、第2走行油路45b、第3走行油路45c、第4走行油路45dを有している。第1走行油路45aは、第1パイロット弁55Aと走行ポンプ53Lの前進用受圧部53aとを接続する油路である。第2走行油路45bは、第2パイロット弁55Bと走行ポンプ53Lの後進用受圧部53bとを接続する油路である。第3走行油路45cは、第3パイロット弁59Aと走行ポンプ53Rの前進用受圧部53aとを接続する油路である。第4走行油路45dは、第4パイロット弁59Bと走行ポンプ53Rの後進用受圧部53bとを接続する油路である。
【0046】
第1操作部材54を前側に傾動させると、第1パイロット弁55Aが操作されて当該第1パイロット弁55Aからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、走行ポンプ53Lの前進用受圧部53aに作用する。第2操作部材58を前側に傾動させると、第3パイロット弁59Aが操作されて当該第3パイロット弁59Aからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、走行ポンプ53Rの前進用受圧部53aに作用する。
【0047】
第1操作部材54を後側に傾動させると、第2パイロット弁55Bが操作されて当該第2パイロット弁55Bからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、走行ポンプ53Lの後進用受圧部53bに作用する。第2操作部材58を後側に傾動させると、第4パイロット弁59Bが操作されて当該第4パイロット弁59Bからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、走行ポンプ53Rの後進用受圧部53bに作用する。
【0048】
したがって、第1操作部材54と第2操作部材58とを前側に揺動すると、走行モータ(HSTモータ)36は、第1操作部材54及び第2操作部材58の揺動量に比例した速度で正転し、その結果、作業機1が前方に直進する。第1操作部材54と第2操作部材58とを後側に揺動すると、走行モータ36は、第1操作部材54及び第2操作部材58の揺動量に比例した速度で逆転して、その結果、作業機1が後方に直進する。
【0049】
また、第1操作部材54と第2操作部材58とのうち、一方を前側に揺動し、他方を後側に揺動すると、左側の走行モータ36と右側の走行モータ36とが異なる方向に回転して、その結果、作業機1が右又は左に旋回する。
以上、第1操作部材54を前方向又は後ろ方向に動かしたり、第2操作部材58を前方向又は後ろ方向に動かすことによって、作業機1を前進、後進、右旋回、左旋回させる走行操作を行うことができる。
【0050】
また、作業パイロット弁と、作業系の油圧機器(作業油圧機器)の1つである制御弁56とは、作業油路46によって接続されている。作業油路46は、第1作業油路46a、第2作業油路46b、第3作業油路46c、第4作業油路46dを有している。第1作業油路46aは、パイロット弁55Cと第1制御弁56Aの受圧部とを接続する油路である。第2作業油路46bは、パイロット弁55Dと第1制御弁56Aの受圧部とを接続する油路である。第3作業油路46cは、パイロット弁59Cと第2制御弁56Bの受圧部とを接続する油路である。第4作業油路46dは、パイロット弁59Dと第2制御弁56Bの受圧部とを接続する油路である。
【0051】
第1操作部材54を左側に傾動させると、パイロット弁55Cが操作されて当該パイロット弁55Cから出力されるパイロット油のパイロット圧が設定される。このパイロット圧は、第1制御弁56Aの受圧部に作用し、ブームシリンダ14が伸長して、ブーム10は上昇する。第1操作部材54を右側に傾動させると、パイロット弁55Dが操作されて当該パイロット弁55Dから出力されるパイロット油のパイロット圧が設定される。このパイロット圧は、第1制御弁56Aの受圧部に作用し、ブームシリンダ14は収縮して、ブーム10は下降する。第2操作部材58を左側に傾動させると、パイロット弁59Cが操作されて当該パイロット弁59Cから出力されるパイロット油のパイロット圧が設定される。このパイロット圧は、第2制御弁56Bの受圧部に作用し、バケットシリンダ15は収縮して、バケット11がスクイ動作する。第2操作部材58を右側に傾動させると、パイロット弁59Dが操作され当該パイロット弁59Dから出力されるパイロット油のパイロット圧が設定される。このパイロット圧は、第2制御弁56Bの受圧部に作用し、バケットシリンダ15は伸長して、バケット11がダンプ動作する。
【0052】
したがって、第1操作部材54を左方向又は右方向に動かしたり、第2操作部材58を左方向又は右方向に動かすことによって、ブーム10の昇降、バケットのダンプ動作或いはスクイ動作等の作業操作を行うことができる。
さて、作業機1の油圧システムは、圧力供給部60Aを備えている。圧力供給部60Aは、油圧機器である走行ポンプ53L,53Rに作動油(パイロット油)を供給して、走行ポンプ53L,53Rの出力を低下することが可能である。詳しくは、圧力供給部60Aは、操作部材の操作に基づいて第1操作弁が設定した作動油の圧力に抗して、作動油の圧力を作用させる。本実施形態において、圧力供給部60Aは、操作部材である第1操作部材54及び第2操作部材58の操作に基づいて、パイロット弁55A,55B及びパイロット弁59A,59Bのいずれかで設定した作動油の圧力に抗して、作動油の圧力を作用させる。
【0053】
説明の便宜上、走行ポンプ53L、53Rの受圧部53a、53bにおいて、2つの受圧部53a、53bのうち、一方の受圧部のことを「第1受圧部」といい、他方の受圧部のことを「第2受圧部」ということがある。また、第1受圧部に作動油の圧力を付与する操作弁、即ち、パイロット弁55A,59Aのことを「第1操作弁」ということがある。また、第2受圧部に作動油の圧力を付与する操作弁、即ち、パイロット弁55B,59Bのことを「第2操作弁」ということがある。また、第1操作弁で設定した作動油の圧力、即ち、第1受圧部に作用する作動油の圧力のことを「第1操作圧力」ということがある。また、第2操作弁で設定した作動油の圧力、即ち、第2受圧部に作用する作動油の圧力のことを「第2操作圧力」ということがある。また、第1操作弁及び第2操作弁で設定された圧力、即ち、第1受圧部及び第2受圧部に設定された圧力のことを「パイロット圧」という。
【0054】
圧力供給部60Aは、第1操作弁55A,59Aで設定された第1操作圧力(第1受圧部53aに作用するパイロット圧)に抗して、第1対抗圧力を第2受圧部53bに供給(付与)する。例えば、第1操作部材54を操作することによって、走行ポンプ53Lの第1受圧部53aに作用するパイロット圧である第1操作圧力が、第1操作弁55Aによって設定された場合、圧力供給部60Aは、走行ポンプ53Lの第2受圧部53bに、第1対抗圧力であるパイロット圧を付与する。
【0055】
また、第2操作部材58を操作することによって、走行ポンプ53Rの第1受圧部53aに作用するパイロット圧である第1操作圧力が、第1操作弁59Aによって設定された場合、圧力供給部60Aは、走行ポンプ53Rの第2受圧部53bに、第1対抗圧力であるパイロット圧を付与する。
したがって、圧力供給部60Aは、第1操作弁55A,59Aのいずれかによって第1受圧部53aに第1操作圧力が設定された場合には、当該第1操作圧力に対抗する第1対抗圧力を第1受圧部53aの反対側である第2受圧部53bに付与する。
【0056】
また、圧力供給部60Aは、第2操作弁55B,59Bで設定された第2操作圧力(第2受圧部53bに作用するパイロット圧)に抗して、第2対抗圧力を第1受圧部53aに供給(付与)する。例えば、第1操作部材54を操作することによって、走行ポンプ53Lの第2受圧部53bに作用するパイロット圧である第2操作圧力が、第2操作弁55Bによって設定された場合、圧力供給部60Aは、走行ポンプ53Lの第1受圧部53aに、
第2対抗圧力であるパイロット圧を付与する。
【0057】
また、第2操作部材58を操作することによって、走行ポンプ53Rの第2受圧部53bに作用するパイロット圧である第2操作圧力が、第2操作弁59Bによって設定された場合、圧力供給部60Aは、走行ポンプ53Rの第1受圧部53aに、
第2対抗圧力であるパイロット圧を付与する。
したがって、圧力供給部60Aは、第2操作弁55B,59Bのいずれかによって第2受圧部53bに第2操作圧力が設定された場合には、当該第2操作圧力に対抗する第2対抗圧力を第2受圧部53bの反対側である第1受圧部53aに付与する。
【0058】
以下、圧力供給部60Aについて詳しく説明する。
圧力供給部60Aは、第1供給油路と、第2供給油路とを有している。第1供給油路は、パイロット弁55A,59Aと、走行ポンプ53L,53Rの受圧部53aとを接続する油路である。具体的には、第1供給油路は、走行油路45である。第2供給油路は、パイロット弁55B,59Bと、走行ポンプ53L,53Rの受圧部53bとを接続する油路である。
【0059】
また、圧力供給部60Aは、複数の分岐油路64Aと複数の作動弁65Aと有している。複数の分岐油路64Aは、第1油圧ポンプ(油圧ポンプ)P1に接続され、且つ、走行油路45に合流する。複数の作動弁65Aは、分岐油路64Aに設けられ、且つ、分岐油路64Aに作動油の圧力を付与する。
複数の作動弁65Aは、第1作動弁65A1と、第2作動弁65A2である。複数の分岐油路64Aは、第1分岐油路64A1と、第2分岐油路64A2とである。
【0060】
第1分岐油路64A1は、第1油圧ポンプ(油圧ポンプ)P1と接続され、且つ第1走行油路45a及び第3走行油路45cに合流する油路である。第1分岐油路64A1には、第1作動弁65A1が設けられている。第1作動弁65A1は、ソレノイドを励磁することによって開度が変更可能な電磁比例弁(比例弁)である。比例弁65A1によれば、全閉の状態から開度を変更すると、第1走行油路45a及び第3走行油路45cを介して、走行ポンプ53Lの第1受圧部53a及び走行ポンプ53Rの第1受圧部53aにパイロット圧を作用させることができる。
【0061】
具体的には、第1操作部材54の操作によって走行ポンプ53Lの第2受圧部53bに第2操作圧力が作用している場合、第1作動弁65A1は全閉の状態から開度が変更される。その結果、第1作動弁65A1の作動によって、走行ポンプ53Lの第1受圧部53aに、第2操作圧力に抗する第2対抗圧力を付与することができる。
また、第2操作部材58の操作によって走行ポンプ53Rの第2受圧部53bに第2操作圧力が作用している場合、第1作動弁65A1は全閉の状態から開度が変更される。その結果、第1作動弁65A1の作動によって、走行ポンプ53Rの第1受圧部53aに、第2操作圧力に抗する第2対抗圧力を付与することができる。
【0062】
なお、第1作動弁65A1によって設定される第2対抗圧力は、第2操作圧力よりも小さい圧力が設定される。また、走行ポンプ53L、53Rの第2受圧部53bに第2操作圧力が作用していない場合は、第1作動弁65A1は全閉され、第2対抗圧力は付与されない。
以上、第1作動弁65A1によれば、第2操作弁55B,59Bが操作された場合に、当該第2操作弁55B,59Bによって設定される第2操作圧力に抗する第2対抗圧力が、走行ポンプ53L、53Rに付与されるため、パイロット油を排出することなく、走行ポンプ53L、53Rの出力を下げることができる。
【0063】
第2分岐油路64A2は、第1油圧ポンプ(油圧ポンプ)P1と接続され、且つ第2走行油路45b及び第4走行油路45dに合流する油路である。第2分岐油路64A2には、第2作動弁65A2が設けられている。第2作動弁65A2は、ソレノイドを励磁することによって開度が変更可能な電磁比例弁(比例弁)である。比例弁65A2によれば、全閉の状態から開度を変更すれば、第2走行油路45b及び第4走行油路45dを介して、走行ポンプ53Lの第2受圧部53b及び走行ポンプ53Rの第2受圧部53bにパイロット圧を作用させることができる。
【0064】
具体的には、第1操作部材54の操作によって走行ポンプ53Lの第1受圧部53aに第1操作圧力が作用している場合、第2作動弁65A2は全閉の状態から開度が変更される。その結果、第2作動弁65A2の作動によって、走行ポンプ53Lの第2受圧部53bに、第1操作圧力に抗する第1対抗圧力を付与することができる。
また、第2操作部材58の操作によって走行ポンプ53Rの第1受圧部53aに第1操作圧力が作用している場合、第2作動弁65A2は全閉の状態から開度が変更される。その結果、第2作動弁65A2の作動によって、走行ポンプ53Rの第2受圧部53bに、第1操作圧力に抗する第1対抗圧力を付与することができる。
【0065】
なお、第2作動弁65A2によって設定される第1対抗圧力は、第1操作圧力よりも小さい圧力が設定される。また、走行ポンプ53L、53Rの第1受圧部53aに第1操作圧力が作用していない場合は、第2作動弁65A2は全閉され、第1対抗圧力は付与されない。
以上、第2作動弁65A2によれば、第1操作弁55A,59Aが操作された場合に、当該第1操作弁55A,59Aによって設定される第1操作圧力に抗する第1対抗圧力が、走行ポンプ53L、53Rに付与されるため、パイロット油を排出することなく、走行ポンプ53L、53Rの出力を下げることができる。
【0066】
走行油路45は、複数の第1逆止弁71と、複数の第2逆止弁72を有している。複数の第1逆止弁71は、走行油路45と分岐油路64Aとが合流する合流部と、第1操作弁55A,59Aとの間に設けられている。具体的に説明すれば、第1逆止弁71は、第1逆止弁71a,71b,71c,71dである。
第1逆止弁71aは、走行油路45aにおける、走行油路45aと分岐油路64A1とが合流する第1合流部66A1と、第1操作弁55Aとの間に設けられている。第1逆止弁71cは、走行油路45cにおける、走行油路45cと分岐油路64A1とが合流する合流部66A2と、第1操作弁59Aとの間に設けられている。
【0067】
第1逆止弁71bは、走行油路45bにおける、走行油路45bと第2分岐油路64A2とが合流する合流部66A3と、第2操作弁55Bとの間に設けられている。第1逆止弁71dは、走行油路45dにおける、走行油路45dと第2分岐油路64A2とが合流する合流部66A4と、第2操作弁59Bとの間に設けられている。
第1逆止弁71は、操作弁(パイロット弁)55A,55B,59A,59Bから合流部66A1、66A2、66A3、66A4に向かう作動油の流れを許容し、合流部66A1、66A2、66A3、66A4から操作弁55A,55B,59A,59Bに向かう作動油の流れを規制する。
【0068】
また、第2逆止弁72は、分岐油路64Aに設けられている。第2逆止弁72は、第2逆止弁72a,72b,72c,72dである。第2逆止弁72a,72cは、分岐油路64A1に設けられている。第2逆止弁72b,72dは、第2分岐油路64A2に設けられている。
第2逆止弁72は、作動弁65Aから合流部66A1、66A2、66A3、66A4に向かう作動油の流れを許容し、合流部66A1、66A2、66A3、66A4から作動弁65Aに向かう作動油の流れを規制する。
【0069】
また、
図1に示すように、走行油路45は、複数の排出油路78と、複数の絞り79とを有している。排出油路78は、走行油路45の合流部66A1、66A2、66A3、66A4と走行ポンプ53L,53Rとの区間から分岐し、且つ作動油を排出する。排出油路78は、排出油路78a,78b,78c,78dである。複数の絞り79は、作動油の流量を低減する。絞り79は、例えば、78a,78b,78c,78dの一部を他の部分よりも細くすることにより構成されている。言い換えれば、78a,78b,78c,78dにおいて作動油が流れる部分の断面積を他の部分よりも小さくすることにより構成されている。
【0070】
排出油路78aは、第1走行油路45aにおける合流部66A1と受圧部53aとの間から分岐する油路である。排出油路78aの中途部には、絞り79aが設けられている。排出油路78cは、第3走行油路45cにおける合流部66A2と受圧部53aとの間から分岐する油路である。排出油路78cの中途部には、絞り79cが設けられている。排出油路78bは、第2走行油路45bにおける第1合流部66A3と受圧部53bとの間から分岐する油路である。排出油路78bの中途部には、絞り79bが設けられている。排出油路78dは、第4走行油路45dにおける第1合流部66A4と受圧部53bとの間から分岐する油路である。排出油路78dの中途部には、絞り79dが設けられている。つまり、走行油路45を流れる作動油の一部は、排出油路78及び絞り79を介して、タンク22に排出することができる。
【0071】
作動弁65Aの開度の変更は、制御装置90によって行う。制御装置90には、原動機32の負荷を検出する検出装置91が接続されている。検出装置91は、例えば、原動機32の負荷を示す指標としてエンジン回転数が入力される。制御装置90は、エンジン回転数が予め定められた所定以下となった場合に、作動弁65A(第1作動弁65A1、第2作動弁65A2)を開く制御信号を出力する。その結果、作動弁65Aが開くことで上述したように、第1対抗圧力、第2対抗圧力を受圧部53a、53bに付与することによって、走行ポンプ53L,53Rの出力を下げることができる。したがって、作動弁65Aによって、エンジンストールを防止することができる。なお、原動機32の負荷を直接測定して、原動機32の負荷が所定以上となった場合に、作動弁65Aを作動させて、第1対抗圧力、第2対抗圧力を受圧部53a,53bに付与してもよい。
【0072】
制御装置90は、暖機モードを有している。暖機モードは、作業機1の走行装置を動作させず、操作系の油圧回路の暖機を行うモードである。暖機モードについて、詳しく説明すると、暖機モードにおいて、制御装置90は、前進用作動弁65A1を通過して第1走行油路45a及び第2走行油路45bに至る作動油の圧力及び第2作動弁65A2を通過して第3走行油路45c及び第4走行油路45cに至る作動油の圧力を、走行ポンプ53L,53Rが動作する圧力よりも低い圧力に設定する。走行油路(第1供給油路)45を通過した作動油は、排出油路78及び絞り79を介して、タンク22に排出される。供給油路には、走行ポンプ53L,53Rが動作する圧力よりも低い圧力で作動油が流れるため、走行装置は動作をしない。つまり、暖機モードにおいては、作業機1は停止しながら、操作系の油圧回路の暖機を行う。
【0073】
暖機モードへの切換は、制御装置90に接続されたスイッチ92によって行う。スイッチ92は、制御装置90に暖機モードへの切換を指示する部材である。スイッチ92が押圧されると、暖機モードへの切換をするよう制御装置90に信号が出力される。一方、スイッチ92が再度押圧されれば、暖機モードが解除される。スイッチ92は、モーメンタリスイッチやオルタネートスイッチ等の押しボタンスイッチ92である。なお、スイッチ92は、モーメンタリスイッチやオルタネートスイッチの押しボタンスイッチ92に限定されず、制御装置90に信号を出力するスイッチ92であれば何でもよい。これによって、走行ポンプ53L,53Rを作動させることなく、排出油路78から作動油を排出することができる。このため、作業機1の移動又は作業中以外であっても、操作系の油路の暖機を行うことができる。
【0074】
図3は、第1実施形態の変形例を示している。
図3の変形例は、第1分岐油路64A1を、第1走行油路45a及び第2走行油路45bに接続し、第2分岐油路64A2を、第3走行油路45c及び第4走行油路45bに接続した変形例である。第1分岐油路64A1には、第1作動弁65A1が設けられ、第2分岐油路64A2には、第2作動弁65A2が設けられている。
【0075】
圧力供給部60Aは、複数の高圧選択弁(シャトル弁)を有している。複数の高圧選択弁は、少なくとも入力された2つの圧力のうち、高い圧力を伝達する弁である。複数の高圧選択弁は、73a、73b、73c、73dである。高圧選択弁73aは、合流部66A1に設けられ、高圧選択弁73bは、合流部66A2に設けられている。高圧選択弁73cは、合流部66A3に設けられ、高圧選択弁73dは、合流部66A4に設けられている。
【0076】
図3の変形例の場合、第1操作部材54の操作によって走行ポンプ53Lの第2受圧部53bに第2操作圧力が作用している場合、第1作動弁65A1は全閉の状態から開度が変更される。その結果、第1作動弁65A1の作動によって、走行ポンプ53Lの第1受圧部53aに、第2操作圧力に抗する第2対抗圧力を付与することができる。
また、第2操作部材58の操作によって走行ポンプ53Rの第2受圧部53bに第2操作圧力が作用している場合、第2作動弁65A2は全閉の状態から開度が変更される。その結果、第2作動弁65A2の作動によって、走行ポンプ53Rの第1受圧部53aに、第2操作圧力に抗する第2対抗圧力を付与することができる。
【0077】
第1操作部材54の操作によって走行ポンプ53Lの第1受圧部53aに第1操作圧力が作用している場合、第1作動弁65A1は全閉の状態から開度が変更される。その結果、第1作動弁65A1の作動によって、走行ポンプ53Lの第2受圧部53bに、第1操作圧力に抗する第1対抗圧力を付与することができる。
また、第2操作部材58の操作によって走行ポンプ53Rの第1受圧部53aに第1操作圧力が作用している場合、第2作動弁65A2は全閉の状態から開度が変更される。その結果、第2作動弁65A2の作動によって、走行ポンプ53Rの第2受圧部53bに、第1操作圧力に抗する第1対抗圧力を付与することができる。
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態に係る油圧システムを示している。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、その説明は省略する。第2実施形態における油圧システムは、作業系の油圧機器、例えば、第2制御弁56Bが受圧するパイロット圧に抗して、他のパイロット圧を供給するシステムである。なお、第2制御弁56は、作業系の油圧機器の一例であり限定されない。
【0078】
第2制御弁56Bは、第1受圧部76aと、第2受圧部76bとを有している。第1受圧部76aは、第3作業油路(第1供給油路)46cが接続されている。第2受圧部76bは、第4作業油路(第2供給油路)46dが接続されている。つまり、第2制御弁56Bは、第1受圧部76a及び第2受圧部76bに供給された作動油のパイロット圧によって、中立位置、中立位置とは異なる第1位置、中立位置及び第1位置とは異なる第2位置に切り換わる。
【0079】
説明の便宜上、第2制御弁56の第1受圧部76aに作動油の圧力を付与する操作弁、即ち、パイロット弁59Cのことを「第1操作弁」ということがある。また、第2制御弁56の第2受圧部76bに作動油の圧力を付与する操作弁、即ち、パイロット弁59Dのことを「第2操作弁」ということがある。
圧力供給部60Bは、第1供給油路と、第2供給油路とを有している。第1供給油路は、第1操作弁59Cと第1受圧部76aとを接続する油路である。第2供給油路は、第2操作弁59Dと第2受圧部76bとを接続する油路である。第1供給油路は、第3作業油路46cであり、第2供給油路は、第4作業油路46dである。
【0080】
圧力供給部60Bは、分岐油路64Bと、作動弁65Bとを有している。分岐油路64Bは、油圧ポンプP1と、第3作業油路46c及び第4作業油路46dとを接続する油路である。分岐油路64Bは、油圧ポンプP1に接続され、且つ、作業油路に合流する。分岐油路64Bには、作動弁65Bが設けられている。作動弁65Bは、ソレノイドを励磁することによって開度が変更可能な電磁比例弁(比例弁)65Bである。
【0081】
作業機1の油圧システムは、第1高圧選択弁(第1シャトル弁)81と、第2高圧選択弁(第2シャトル弁)82とを備えている。
第1シャトル弁81は、第3作業油路46cと、分岐油路64Bとが合流する第1合流部66Bに設けられている。第1シャトル弁81は、第1操作弁59Cから供給される作動油の圧力が、作動弁65Bから供給される作動油の圧力よりも大きい場合、第1操作弁59Cから供給される作動油が第1受圧部76aに供給される。一方、作動弁65Bから供給される作動油の圧力が、第1操作弁59Cから供給される作動油の圧力よりも大きい場合、作動弁65Bから供給される作動油が第1受圧部76aに供給される。
【0082】
第2シャトル弁82は、第4作業油路46dと、分岐油路64Bとが合流する第2合流部66Cに設けられている。第2シャトル弁82は、第2操作弁59Dから供給される作動油の圧力が、作動弁65Bから供給される作動油の圧力よりも大きい場合、第2操作弁59Dから供給される作動油が第2受圧部76bに供給される。一方、作動弁65Bから供給される作動油の圧力が、第2操作弁59Dから供給される作動油の圧力よりも大きい場合、作動弁65Bから供給される作動油が第2受圧部76bに供給される。
【0083】
上述したように、第2操作部材58を左側に傾動させると、第1操作弁59Cが操作されて当該第1操作弁59Cによって第1操作圧力が第1受圧部76aに作用する。この場合、作動弁65Bが全閉の状態から開度が変更される。その結果、作動弁65Bの作動によって、第2制御弁56Bの第2受圧部76bに、第1操作圧力に抗する第1対抗圧力を付与することができる。
【0084】
一方、第2操作部材58を右側に傾動させると、第2操作弁59Dが操作されて当該第2操作弁59Dによって第2操作圧力が第2受圧部76bに作用する。この場合、作動弁65Bが全閉の状態から開度が変更される。その結果、作動弁65Bの作動によって、第2制御弁56Bの第1受圧部76aに、第2操作圧力に抗する第2対抗圧力を付与することができる。
【0085】
なお、作動弁65Bの制御は、制御装置90が行うことが好ましい。上述したように、第2操作部材58を左側に傾動させた場合、制御装置90は、作動弁65Bによって設定される圧力は、第1操作弁59Cで設定される圧力に設定する。また、第2操作部材58を右側に傾動させた場合も、制御装置90は、作動弁65Bによって設定される圧力は、第2操作弁59Dで設定される圧力に設定する。
【0086】
したがって、第2実施形態では、第2制御弁59Bの第1受圧部76a、第2受圧部76bに、作動弁65Bから付与されたパイロット圧(第1対抗圧力、第2対抗圧力)を付与することができる。そのため、第2制御弁56Bの出力を低下させることができる。HSTチャージ流量や他の第2制御弁56Bに供給する作動油を十分に確保することができる。
【0087】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。