特許第6904175号(P6904175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6904175
(24)【登録日】2021年6月28日
(45)【発行日】2021年7月14日
(54)【発明の名称】車両の制動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/18 20060101AFI20210701BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20210701BHJP
   B60T 13/122 20060101ALI20210701BHJP
   B60T 13/18 20060101ALI20210701BHJP
   B60T 13/20 20060101ALI20210701BHJP
   B60T 13/68 20060101ALI20210701BHJP
【FI】
   B60T17/18
   B60T8/17 B
   B60T13/122 B
   B60T13/18
   B60T13/20
   B60T13/68
【請求項の数】2
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-166849(P2017-166849)
(22)【出願日】2017年8月31日
(65)【公開番号】特開2019-43278(P2019-43278A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(72)【発明者】
【氏名】丸山 将来
(72)【発明者】
【氏名】児玉 博之
【審査官】 的場 眞夢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−207662(JP,A)
【文献】 特開平09−207753(JP,A)
【文献】 特開平11−301435(JP,A)
【文献】 特開2000−025592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12−8/1769
8/32−8/96
13/00−17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体路、及び、第2流体路の2系統流体路を有し、車両の制動操作部材の操作に応じて車輪の制動力を調整する車両の制動制御装置であって、
メインコイル、及び、サブコイルを有し、前記第1流体路内の第1調整液圧、及び、前記第2流体路内の第2調整液圧を増加するための駆動源である電気モータと、
前記第1流体路、及び、前記第2流体路の夫々に設けられ、マスタシリンダとホイールシリンダとを連通状態にする開位置と、前記マスタシリンダと前記ホイールシリンダとを非連通状態にする閉位置とを選択的に実現する第1遮断弁、及び、第2遮断弁と、
前記第2流体路において前記マスタシリンダと前記第2遮断弁との間に設けられ、前記制動操作部材に操作力を付与するシミュレータと、
前記第1流体路に設けられ、前記電気モータによって発生された液圧を調節する第1メイン調圧弁、及び、第1サブ調圧弁と、
前記第2流体路に設けられ、前記電気モータによって発生された液圧を調節する第2メイン調圧弁、及び、第2サブ調圧弁と、
「前記メインコイルに通電し、前記第1メイン調圧弁、前記第2メイン調圧弁、及び、前記第1遮断弁を駆動するメイン制御部」、及び、「前記サブコイルに通電し、前記第1サブ調圧弁、前記第2サブ調圧弁、及び、前記第2遮断弁を駆動するサブ制御部」を有するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記メイン制御部、及び、前記サブ制御部が共に正常である通常状態の場合には、前記第1遮断弁、及び、前記第2遮断弁を閉位置にし、前記制動操作部材の操作特性を前記シミュレータによって通常操作特性に設定し、
前記メイン制御部が正常、且つ、前記サブ制御部が不調であるサブ側不調状態の場合には、前記第1遮断弁を閉位置にするとともに前記第2遮断弁を開位置にし、前記操作特性が前記通常操作特性に近づくよう前記第2メイン調圧弁を調整し、
前記メイン制御部が不調、且つ、前記サブ制御部が正常であるメイン側不調状態の場合には、前記第1遮断弁を開位置にするとともに前記第2遮断弁を閉位置にし、前記操作特性が前記通常操作特性に近づくよう前記第1サブ調圧弁を調整する、車両の制動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の制動制御装置において、
前記コントローラは、
前記サブ側不調状態の場合には、前記車両の減速度が前記通常状態における前記車両の減速度に近づくよう前記第1メイン調圧弁を調整し、
前記メイン側不調状態の場合には、前記車両の減速度が前記通常状態における前記車両の減速度に近づくよう前記第2サブ調圧弁を調整する、車両の制動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「コストアップを抑制した液圧制御装置及びブレーキシステムを提供すること」を目的に、「ハウジング内部に設けられ、油路を介して車輪に設けられた液圧発生部に対し作動液圧を発生させる液圧源と、ハウジングに一体的に設けられ、ハウジングとは別に設けられた運転者のブレーキペダル操作反力を生成するストロークシミュレータ内へのブレーキ液の流入を許可するための切換電磁弁と、ハウジングに一体的に設けられ、液圧源及び切換電磁弁を駆動するためのコントロールユニットと、を備えた液圧制御装置」について記載されている。
【0003】
更に、特許文献1には、モータMが不調時には、「第2ユニット1b内の遮断弁21が開方向に制御された状態で、かつ、ストロークシミュレータイン弁31が閉方向、ストロークシミュレータアウト弁32が閉方向に制御されているときは、マスタシリンダ5の第1,第2液室51P,51Sとホイールシリンダ8とを接続するブレーキ系統(第1油路11)は、ペダル踏力を用いて発生させたマスタシリンダ圧によりホイールシリンダ液圧を創生し、踏力ブレーキ(非倍力制御)を実現する」旨が記載されている。
【0004】
ところで、ブレーキ・バイ・ワイヤ構成の制動制御装置では、一部の構成要素が不調になった場合に、直ちに踏力ブレーキ(「マニュアル制動」ともいう)にされると、制動操作部材の操作特性(操作力と操作変位との関係)が変化されるとともに、車両減速状態も変化し、運転者が違和に感じる場合がある。このため、装置全体の信頼度が向上され、運転者への違和感が低減され得るものが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−144952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ブレーキ・バイ・ワイヤ構成の車両の制動制御装置において、その信頼度が向上され、運転者への違和感が低減され得るものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両の制動制御装置は、第1流体路(H1)、及び、第2流体路(H2)の2系統流体路を有し、車両の制動操作部材(BP)の操作に応じて車輪(WH)の制動力を調整するものであり、メインコイル(KA)、及び、サブコイル(KB)を有し、前記第1流体路(H1)内の第1調整液圧(Pu1)、及び、前記第2流体路(H2)内の第2調整液圧(Pu2)を増加するための駆動源である電気モータ(MU)と、前記第1流体路(H1)、及び、前記第2流体路(H2)の夫々に設けられ、マスタシリンダ(CM)とホイールシリンダ(CW)とを連通状態にする開位置と、前記マスタシリンダ(CM)と前記ホイールシリンダ(CW)とを非連通状態にする閉位置とを選択的に実現する第1遮断弁(VM1)、及び、第2遮断弁(VM2)と、前記第2流体路(H2)において前記マスタシリンダ(CM)と前記第2遮断弁(VM2)との間に設けられ、前記制動操作部材(BP)に操作力(Fp)を付与するシミュレータ(SS)と、前記第1流体路(H1)に設けられ、前記電気モータ(MU)によって発生された液圧を調節する第1メイン調圧弁(UA1)、及び、第1サブ調圧弁(UB1)と、前記第2流体路(H2)に設けられ、前記電気モータ(MU)によって発生された液圧を調節する第2メイン調圧弁(UA2)、及び、第2サブ調圧弁(UB2)と、「前記メインコイル(KA)に通電し、前記第1メイン調圧弁(UA1)、前記第2メイン調圧弁(UA2)、及び、前記第1遮断弁(VM1)を駆動するメイン制御部(EA)」、及び、「前記サブコイル(KB)に通電し、前記第1サブ調圧弁(UB1)、前記第2サブ調圧弁(UB2)、及び、前記第2遮断弁(VM2)を駆動するサブ制御部(EB)」を有するコントローラ(ECU)と、を備える。
【0008】
本発明に係る車両の制動制御装置では、前記コントローラ(ECU)は、前記メイン制御部(EA)、及び、前記サブ制御部(EB)が共に正常である通常状態の場合(ステップS200)には、前記第1遮断弁(VM1)、及び、前記第2遮断弁(VM2)を閉位置にし、前記制動操作部材(BP)の操作特性(Cp)を前記シミュレータ(SS)によって通常操作特性(Cs)に設定し、前記メイン制御部(EA)が正常、且つ、前記サブ制御部(EB)が不調であるサブ側不調状態の場合(S300)には、前記第1遮断弁(VM1)を閉位置にするとともに前記第2遮断弁(VM2)を開位置にし、前記操作特性(Cp)が前記通常操作特性(Cs)に近づくよう前記第2メイン調圧弁(UA2)を調整し、前記メイン制御部(EA)が不調、且つ、前記サブ制御部(EB)が正常であるメイン側不調状態の場合(S400)には、前記第1遮断弁(VM1)を開位置にするとともに前記第2遮断弁(VM2)を閉位置にし、前記操作特性(Cp)が前記通常操作特性(Cs)に近づくよう前記第1サブ調圧弁(UB1)を調整する。
【0009】
更に、本発明に係る車両の制動制御装置では、前記コントローラ(ECU)は、前記サブ側不調状態の場合(S300)には、前記車両の減速度(Gx)が前記通常状態における前記車両の減速度(Go)に近づくよう前記第1メイン調圧弁(UA1)を調整し、前記メイン側不調状態の場合(S400)には、前記車両の減速度(Gx)が前記通常状態における前記車両の減速度(Go)に近づくよう前記第2サブ調圧弁(UB2)を調整する。
【0010】
上記構成によれば、2つの制動系統のうちの一方側が適正に作動し、他方側が不調に陥った場合、適正作動の一方側によって、制御制動が実行される。つまり、冗長構成によって、適正作動の側で、制御制動が継続されるため、制動制御装置の信頼度が向上され得る。
【0011】
加えて、制動制御装置SCの不調時において、制動操作部材BPの操作特性Cpが通常操作特性Csに近づくよう、第2メイン調圧弁UA2、又は、第1サブ調圧弁UB1が調整される。例えば、サブ側不調状態の場合(S300の処理)には、通常時の第2基準特性Zr2よりも小さい第2サブ側不調時特性Zs2に従って第2メイン調圧弁UA2が調整される。また、メイン側不調状態の場合(S400の処理)には、通常時の第1基準特性Zr1よりも小さい第1メイン側不調時特性Zt1に従って、第1サブ調圧弁UB1が調整される。該構成によって、マスタシリンダCMとホイールシリンダCWとが分離(遮断)されない不調側(上記他方側)の制動系統にて、制動操作特性Cpの変化が抑制され、これに起因する運転者への違和が軽減され得る。
【0012】
更に、制動制御装置SCの不調時において、通常状態における車両の減速度Gxに近づくよう、第1メイン調圧弁UA1、又は、第2サブ調圧弁UB2(即ち、操作特性Cpを調整する調圧弁UA2、UB1とは異なる制動系統の調圧弁)が調整される。例えば、サブ側不調状態の場合(S300)には、第1基準特性Zr1よりも大きい第1サブ側不調時特性Zs1に従って第1メイン調圧弁UA1が調整される。また、メイン側不調状態の場合(S400)には、第2基準特性Zr2よりも大きい第2メイン側不調時特性Zs2に従って、第2サブ調圧弁UB2が調整される。該構成によって、操作特性Cpの変化抑制に伴う制動力の変化(例えば、低下)が補償され、車両の減速度Gxが好適に維持され得る。例えば、制動制御装置SCの一部が不調であっても、実際の減速度Gxが、基準減速度Go(制動制御装置SCが正常である際に発生される車両減速度)に略一致する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】車両の制動制御装置SCの実施形態を説明するための全体構成図である。
図2】コントローラECUの詳細を説明するための概略図である。
図3】調圧制御の演算処理を説明するための制御フロー図である。
図4】調圧制御の通常処理を説明するための制御フロー図である。
図5】調圧制御のサブ側不調処理を説明するための制御フロー図である。
図6】調圧制御のメイン側不調処理を説明するための制御フロー図である。
【0014】
<構成部材等の記号、記号末尾の添字>
以下の説明において、「ECU」等の如く、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。各種記号の末尾に付された添字「i」〜「l」は、それが何れの車輪に関するものであるかを示す包括記号である。具体的には、「i」は右前輪、「j」は左前輪、「k」は右後輪、「l」は左後輪を示す。例えば、4つの各ホイールシリンダにおいて、右前輪ホイールシリンダCWi、左前輪ホイールシリンダCWj、右後輪ホイールシリンダCWk、及び、左後輪ホイールシリンダCWlと表記される。更に、記号末尾の添字「i」〜「l」は省略され得る。添字「i」〜「l」が省略された場合には、各記号は、4つの各車輪の総称を表す。例えば、「WH」は各車輪、「CW」は各ホイールシリンダを表す。
【0015】
各種記号の末尾に付された添字「1」、「2」は、2つの制動系統において、それが何れの系統に関するものであるかを示す包括記号である。具体的には、「1」は第1系統、「2」は第2系統を示す。例えば、2つのマスタシリンダ流体路において、第1マスタシリンダ流体路HM1、及び、第2マスタシリンダ流体路HM2と表記される。更に、記号末尾の添字「1」、「2」は省略され得る。添字「1」、「2」が省略された場合には、各記号は、2つの各制動系統の総称を表す。例えば、「VM」は各制動系統のマスタシリンダ弁を表す。
【0016】
<車両の制動制御装置の実施形態>
図1の全体構成図を参照して、本発明に係る制動制御装置SCの実施形態について説明する。一般的な車両では、2系統の流体路が採用され、冗長性が確保されている。ここで、流体路は、制動制御装置の作動液体である制動液BFを移動するための経路であり、制動配管、流体ユニットの流路、ホース等が該当する。なお、流体路において、リザーバRVに近い側(ホイールシリンダCWから遠い側)が、「上流側」、又は、「上部」と称呼され、ホイールシリンダCWに近い側(リザーバRVから遠い側)が、「下流側」、又は、「下部」と称呼される。
【0017】
2系統の流体路のうちの第1系統(第1マスタシリンダ室Rm1に係る系統)は、右前輪WHiのホイールシリンダCWi、及び、左後輪WHlのホイールシリンダCWlに流体接続される。2系統の流体路のうちの第2系統(第2マスタシリンダ室Rm2に係る系統)は、左前輪WHjのホイールシリンダCWj、及び、右後輪WHkのホイールシリンダCWkに流体接続される。つまり、2系統の流体路として、所謂、ダイアゴナル型(「X型」ともいう)のものが採用されている。なお、2系統流体路として、前後型(「H型」ともいう)のものでもよい。この場合、第1系統には前輪ホイールシリンダCWi、CWjが、第2系統には後輪ホイールシリンダCWk、CWlが、夫々、接続される。
【0018】
車両は、駆動用の電気モータを備えたハイブリッド車両、又は、電気自動車である。制動制御装置SCでは、所謂、回生協調制御(回生ブレーキと摩擦ブレーキとの協調)が実行される。制動制御装置SCを備える車両には、制動操作部材BP、ホイールシリンダCW、リザーバRV、マスタシリンダCM、及び、車輪速度センサVWが備えられる。
【0019】
制動操作部材(例えば、ブレーキペダル)BPは、運転者が車両を減速するために操作する部材である。制動操作部材BPが操作されることによって、車輪WHの制動トルクが調整され、車輪WHに制動力が発生される。具体的には、車両の車輪WHには、回転部材(例えば、ブレーキディスク)KTが固定される。そして、回転部材KTを挟み込むようにブレーキキャリパが配置される。
【0020】
ブレーキキャリパには、ホイールシリンダCWが設けられている。ホイールシリンダCW内の制動液BFの圧力(制動液圧)Pwが増加されることによって、摩擦部材(例えば、ブレーキパッド)が、回転部材KTに押し付けられる。回転部材KTと車輪WHとは、一体的に回転するよう固定されているため、このときに生じる摩擦力によって、車輪WHに制動トルク(摩擦ブレーキ力)が発生される。
【0021】
リザーバ(大気圧リザーバ)RVは、作動液体用のタンクであり、その内部に制動液BFが貯蔵されている。大気圧リザーバRVの内部は、仕切り板SKによって、3つの部位に区画されている。第1マスタリザーバ室Ru1は第1マスタシリンダ室Rm1に、第2マスタリザーバ室Ru2は第2マスタシリンダ室Rm2に、夫々、接続される。また、調圧リザーバ室Rdは、リザーバ流体路HRによって、調圧ユニットYCに流体接続されている。リザーバRV内に制動液BFが満たされた状態では、制動液BFの液面は、仕切り板SKの高さよりも上にある。このため、制動液BFは、仕切り板SKを超えて、第1、第2マスタリザーバ室Ru1、Ru2と調圧リザーバ室Rdとの間を自由に移動することができる。一方、リザーバRV内の制動液BFの量が減少し、制動液BFの液面が仕切り板SKの高さよりも低くなると、第1、第2マスタリザーバ室Ru1、Ru2、及び、調圧リザーバ室Rdは、夫々、独立した液だめとなる。
【0022】
マスタシリンダCMは、制動操作部材BPに、ブレーキロッド等を介して、機械的に接続されている。マスタシリンダCMは、タンデム型であり、制動操作部材BPに連動する第1、第2マスタピストンPS1、PS2によって、その内部が、第1、第2マスタシリンダ室Rm1、Rm2に分けられている。制動操作部材BPが操作されていない場合には、マスタシリンダCMの第1、第2マスタシリンダ室Rm1、Rm2とリザーバRVとは連通状態にある。制動操作部材BPが操作されると、マスタシリンダCM内の第1、第2ピストンPS1、PS2が押され、第1、第2ピストンPS1、PS2は前進する。この前進によって、マスタシリンダCMの内壁と、第1、第2ピストンPS1、PS2とによって形成された、第1、第2マスタシリンダ室Rm1、Rm2は、リザーバRV(特に、第1、第2マスタリザーバ室Ru1、Ru2)から遮断される。制動操作部材BPの操作が増加されると、マスタシリンダ室Rm1、Rm2の体積は減少し、制動液BFは、マスタシリンダCMから、ホイールシリンダCWに向けて圧送される。マスタシリンダCMによって、各ホイールシリンダCWの液圧(制動液圧)Pwが調整(増減)される場合が、「マニュアル制動」と称呼される。
【0023】
ホイールシリンダCWは、マスタシリンダCMに代えて、制動制御装置SCによって加圧される。制動制御装置SCは、所謂、ブレーキ・バイ・ワイヤの構成である。即ち、ホイールシリンダCWは、マスタシリンダCM、及び、制動制御装置SCのうちの何れか1つによって加圧される。制動制御装置SCによって、各ホイールシリンダCWの液圧Pwが調整(増減)される場合が、「制御制動」と称呼される。
【0024】
各車輪WHには、車輪速度Vwを検出するよう、車輪速度センサVWが備えられる。車輪速度Vwの信号は、車輪WHのロック傾向(車輪の過大な減速スリップ)を抑制するアンチスキッド制御等に採用される。車輪速度センサVWによって検出された各車輪速度Vwは、下部コントローラECLに入力される。コントローラECLでは、車輪速度Vwに基づいて、車体速度Vxが演算される。
【0025】
マスタシリンダCM、ホイールシリンダCW、リザーバRV、及び、制動制御装置SCを、夫々、接続する各種流体路について説明する。流体路は、制動液BFを移動するための経路(制動配管、流体ユニットの流路、ホース等)である。
【0026】
第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2の一方側は、マスタシリンダCM(特に、第1、第2マスタシリンダ室Rm1、Rm2)に接続される。また、第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2の他方側は、第1、第2メイン調圧流体路HA1、HA2(又は、第1、第2サブ調圧流体路HB1、HB2)を介して、第1、第2中間流体路HV1、HV2に接続される。第1、第2中間流体路HV1、HV2は、調圧ユニットYCと、4つのホイールシリンダ流体路HWと、を接続する流体路である。第1、第2中間流体路HV1、HV2は、第1、第2分岐部Bw1、Bw2にて、各々のホイールシリンダ流体路HWに分岐される。
【0027】
ホイールシリンダ流体路HWは、ホイールシリンダCWに接続される。リザーバ流体路HRは、リザーバRV(特に、調圧リザーバ室Rd)、調圧ユニットYC(特に、調圧流体ポンプQU、及び、電磁弁VA、VB)に接続される。調圧ユニットYCには、2つの調圧流体路HA、HBが、並列に設けられる。メイン調圧流体路HA、及び、サブ調圧流体路HBは、共通部分(重なる部分)を有する。第1、第2分岐部Bx1、Bx2にて、調圧流体路HA、HBは、第1、第2中間流体路HV1、HV2に接続される。マスタシリンダCM、ホイールシリンダCW、及び、各流体路HM、HV、HW、HR、HA、HBには、制動液BFが満たされている(即ち、制動液BFの液密状態が達成されている)。
【0028】
ここで、第1マスタシリンダ流体路HM1、「第1調圧流体路HA1(メイン側)、HB1(サブ側)」、第1中間流体路HV1、及び、「ホイールシリンダ流体路HWi、HWl」が、「第1流体路H1」と総称される。また、第2マスタシリンダ流体路HM2、「第2調圧流体路HA2(メイン側)、HB2(サブ側)」、第2中間流体路HV2、及び、「ホイールシリンダ流体路HWj、HWk」が、「第2流体路H2」と総称される。つまり、車両は、第1流体路H1、及び、第2流体路H2の2系統の流体路を有する。
【0029】
≪制動制御装置SC≫
制動制御装置SCは、マスタシリンダCMに近い側の上部流体ユニットYU、及び、ホイールシリンダCWに近い側の下部流体ユニットYLにて構成される。上部流体ユニットYUは、上部コントローラECUによって制御され、制動制御装置SCに含まれる流体ユニットである。
【0030】
下部流体ユニットYLは、下部コントローラECLによって制御される。下部コントローラECLには、車輪速度Vw、ヨーレイトYr、操舵角Sa、前後加速度Gx、横加速度Gy、等が入力される。下部流体ユニットYLでは、これらの信号に基づいて、アンチスキッド制御、車両安定化制御等の各輪独立の制動制御が実行される。上部コントローラECUと下部コントローラECLとは、通信バスBSによって通信可能な状態で接続され、センサ信号、演算値が共有されている。
【0031】
制動制御装置SC(特に、上部流体ユニットYU)は、操作量センサBA、操作スイッチST、ストロークシミュレータSS、シミュレータ電磁弁VS、マスタシリンダ電磁弁VM、調圧ユニットYC(電動ポンプDU、メイン調圧弁UA、サブ調圧弁UB、調整液圧センサPU、等)、及び、上部コントローラECUにて構成される。
【0032】
制動操作部材BPには、操作量センサBAが設けられる。操作量センサBAによって、運転者による制動操作部材(ブレーキペダル)BPの操作量Baが検出される。操作量センサBAとして、マスタシリンダCMの第1、第2マスタシリンダ室Rm1、Rm2の液圧Pm1、Pm2を検出するように、第1、第2マスタシリンダ液圧センサPM1、PM2が設けられる。「Pm1=Pm2」であるため、第1マスタシリンダ液圧センサPM1、及び、第2マスタシリンダ液圧センサPM2のうちの一方は、省略可能である。また、操作量センサBAとして、制動操作部材BPの操作変位Spを検出する操作変位センサSP、及び、制動操作部材BPの操作力Fpを検出する操作力センサが設けられる。つまり、制動操作量センサBAとして、第1、第2マスタシリンダ液圧センサPM1、PM2、操作変位センサSP、及び、操作力センサのうちの少なくとも1つが採用される。従って、制動操作量Baとして、マスタシリンダCM内の液圧(マスタシリンダ液圧)Pm、制動操作部材BPの操作変位Sp、及び、制動操作部材BPの操作力Fpのうちの少なくとも1つが検出される。制動操作量Baは、車両減速の指示信号であり、上部コントローラECUに入力される。
【0033】
制動操作部材BPには、操作スイッチSTが設けられる。操作スイッチSTによって、運転者による制動操作部材BPの操作の有無が検出される。制動操作部材BPが操作されていない場合(即ち、非制動時)には、制動操作スイッチSTによって、操作信号Stとしてオフ信号が出力される。一方、制動操作部材BPが操作されている場合(即ち、制動時)には、操作信号Stとしてオン信号が出力される。制動操作信号Stは、コントローラECUに入力される。
【0034】
ストロークシミュレータ(単に、「シミュレータ」ともいう)SSが、第1、第2マスタシリンダ弁VM1、VM2が閉じられた場合(制御制動時)に、制動操作部材BPの操作力Fpを発生させるために設けられる。シミュレータSSの内部には、ピストン、及び、弾性体(例えば、圧縮ばね)が備えられる。マスタシリンダCMから制動液BFがシミュレータSSに移動され、流入する制動液BFによりピストンが押される。ピストンには、弾性体によって制動液BFの流入を阻止する方向に力が加えられる。弾性体によって、制動操作部材BPが操作される場合の操作力Fpが形成される。例えば、シミュレータSSは、第2マスタシリンダ室Rm2の出口で、第2マスタシリンダ室Rm2と第2マスタシリンダ弁VM2との間に設けられる。
【0035】
マスタシリンダCMとシミュレータSSとの間には、シミュレータ弁VSが設けられる。シミュレータ弁VSは、開位置(連通状態)と閉位置(遮断状態)とを有する2位置の電磁弁(「オン・オフ弁」ともいう)である。シミュレータ弁VSは、通電状態Vsに基づいて、上部コントローラECUによって制御される。非制動時、又は、制動制御装置SCの不調時(マニュアル制動時)には、シミュレータ弁VSが閉位置にされ、マスタシリンダCMとシミュレータSSとが遮断状態(非連通状態)となる。この場合、マスタシリンダCMからの制動液BFは、シミュレータSSで消費されない。制御制動時には、シミュレータ弁VSが開位置にされ、マスタシリンダCMとシミュレータSSとは連通状態となる。この場合、制動操作部材BPの操作特性(操作変位Spと操作力Fpとの関係)Cpは、シミュレータSSによって形成される。シミュレータ弁VSには、常閉型の電磁弁が採用される。なお、マスタシリンダ室Rmの容積が十分に大きい場合には、シミュレータ弁VSは省略され得る。
【0036】
第1、第2マスタシリンダ室Rm1、Rm2には、第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2が接続される。第1マスタシリンダ流体路HM1(H1の一部)の途中に、第1マスタシリンダ弁VM1(「第1遮断弁」に相当)が設けられる。第2マスタシリンダ流体路HM2(H2の一部)の途中に、第2マスタシリンダ弁VM2(「第2遮断弁」に相当)が設けられる。マスタシリンダ弁VMは、開位置と閉位置とを有する2位置の電磁弁(オン・オフ弁)である。マスタシリンダ弁VMは、通電状態Vmに基づいて、上部コントローラECUによって制御される。非制動時、又は、マニュアル制動時には、マスタシリンダ弁VMは開位置にされ、マスタシリンダCMとホイールシリンダCWとは連通状態にされる。この場合、制動液圧Pwは、マスタシリンダCMによって調整される。制御制動時には、マスタシリンダ弁VMは閉位置にされ、マスタシリンダCMとホイールシリンダCWとは非連通状態(遮断状態)にされる。この場合、制動液圧Pwは、制動制御装置SCによって制御される。マスタシリンダ弁VMには、常開型の電磁弁が採用される。
【0037】
調圧ユニットYCは、電動ポンプDU、「第1、第2メイン還流路JA1、JA2」、「第1、第2サブ還流路JB1、JB2」、「第1、第2逆止弁GU1、GU2」、「第1、第2メイン調圧弁UA1、UA2」、「第1、第2メインオン・オフ弁VA1、VA2」、「第1、第2サブ調圧弁UB1、UB2」、「第1、第2サブオン・オフ弁VB1、VB2」、及び、「第1、第2調整液圧センサPU1、PU2」を備えている。ここで、「メイン」、及び、「サブ」の表記は主従関係を表すものではなく、同機能を有する2つの構成要素(部材、アルゴリズム等)のうちの「一方」、及び、「他方」を意味する。
【0038】
電動ポンプDUでは、1つの電気モータMUによって、2つの流体ポンプQU1、QU2が回転駆動される。電動ポンプDUでは、電気モータMUと第1、第2流体ポンプQU1、QU2とが一体となって回転するよう、電気モータMUと流体ポンプQUとが固定されている。電動ポンプDU(特に、電気モータMU)は、制御制動時に、調整液圧Pu(最終的には、制動液圧Pw)を調整するための動力源である。なお、流体ポンプQUは、後述する2つの還流路JA、JBの一部である。例えば、流体ポンプQUとしてギヤポンプが採用される。
【0039】
電気モータMUには、2つの巻線組KA、KBが含まれる。メイン巻線組(「メインコイル」ともいう)KAは、コントローラECUのメイン制御部EAによって駆動される。また、サブ巻線組(「サブコイル」ともいう)KBは、コントローラECUのサブ制御部EBによって駆動される。電気モータMUでは、冗長(二重系)の構成が採用されるため、「メインコイルKA、又は、それに係る部材」、及び、「サブコイルKB、又は、それに係る部材」のうちの何れか1つが作動不調になっても、電気モータMUは、作動が可能である。電気モータMUは、所謂、二重化されている。
【0040】
第1、第2調圧流体ポンプQU1、QU2の第1、第2吸込口Qs1、Qs2には、リザーバ流体路HRが接続される。第1、第2流体ポンプQU1、QU2の第1、第2吐出口Qt1、Qt2には、第1、第2メイン調圧流体路HA1(H1の一部)、HA2(H2の一部)が接続されている。また、第1、第2流体ポンプQU1、QU2の第1、第2吐出口Qt1、Qt2には、第1、第2サブ調圧流体路HB1(H1の一部)、HB2(H2の一部)が接続されている。電動ポンプDU(特に、流体ポンプQU)の駆動によって、制動液BFが、リザーバ流体路HRから、第1、第2吸込口Qs1、Qs2を通して吸入され、第1、第2吐出口Qt1、Qt2から調圧流体路HA1、HB1、HA2、HB2に排出される。第1、第2メイン調圧流体路HA1、HA2と、第1、第2サブ調圧流体路HB1、HB2との共通部分には、第1、第2逆止弁(「チェック弁」ともいう)GU1、GU2が設けられる。
【0041】
第1、第2メイン調圧流体路HA1、HA2には、第1、第2メイン調圧弁UA1、UA2、及び、第1、第2メインオン・オフ弁VA1、VA2が、直列に設けられる。第1、第2メイン調圧弁UA1、UA2は、通電状態(例えば、供給電流)Ua1、Ua2に基づいて開弁量(リフト量)が連続的に制御されるリニア型の電磁弁(「比例弁」、又は、「差圧弁」ともいう)である。第1、第2メイン調圧弁UA1、UA2として、常開型電磁弁が採用される。第1、第2メインオン・オフ弁VA1、VA2は、開位置と閉位置とを有する2位置の常閉型電磁弁(「オン・オフ弁」であり、「カット弁」、「遮断弁」ともいう)である。
【0042】
同様に、第1、第2サブ調圧流体路HB1、HB2には、第1、第2サブ調圧弁UB1、UB2、及び、第1、第2サブオン・オフ弁VB1、VB2が、直列に設けられる。第1、第2サブ調圧弁UB1、UB1は、通電状態Ub1、Ub2に基づいて開弁量が連続的に制御されるリニア型電磁弁(比例弁)である。第1、第2サブ調圧弁UB1、UB2として、常開型のものが採用される。第1、第2サブオン・オフ弁VB1、VB2は、開位置と閉位置とを有する2位置の常閉型電磁弁(オン・オフ弁)である。
【0043】
電動ポンプDUが作動している場合には、制動液BFは、実線矢印で示すように、「HR→QU1(Qs1→Qt1)→GU1→UA1→VA1→Qs1」、及び、「HR→QU2(Qs2→Qt2)→GU2→UA2→VA2→Qs2」の順で循環し、再び元の流れに戻る。該流体路が、「メイン還流路JA1、JA2」と称呼される。第1、第2メイン還流路JA1、JA2は、第1、第2流体ポンプQU1、QU2、リザーバ流体路HR(第1、第2メインオン・オフ弁VA1、VA2から第1、第2吸込部Qs1、Qs2まで)、及び、第1、第2メイン調圧流体路HA1、HA2(第1、第2吐出部Qt1、Qt2から第1、第2メインオン・オフ弁VA1、VA2まで)にて形成される。ここで、「還流路」は、制動液BFが、循環して再び元の流れに戻る流体路である。
【0044】
第1、第2メイン還流路JA1、JA2とは並列に、第1、第2サブ還流路JB1、JB2が設けられる。第1、第2サブ還流路JB1、JB2では、制動液BFは、破線矢印で示すように、「HR→QU1(Qs1→Qt1)→GU1→UB1→VB1→Qs1」、及び、「HR→QU2(Qs2→Qt2)→GU2→UB2→VB2→Qs2」の順で制動液BFが流される。第1、第2メイン還流路JA1、JA2と同様に、第1、第2サブ還流路JB1、JB2は、第1、第2流体ポンプQU1、QU2、リザーバ流体路HR(第1、第2サブオン・オフ弁VB1、VB2から第1、第2吸込部Qs1、Qs2まで)、及び、第1、第2サブ調圧流体路HB1、HB2(第1、第2吐出部Qt1、Qt2から第1、第2サブオン・オフ弁VB1、VB2まで)にて形成される。メイン還流路JAとサブ還流路JBとは、共通部分(重なり部)を有している。
【0045】
メイン調圧流体路HA、及び、サブ調圧流体路HBの共通部分には、制動液BFの逆流を防止するよう、逆止弁GU(チェック弁)が設けられる。逆止弁GUによって、制動液BFは、リザーバ流体路HRから調圧流体路HA、HBに向けては移動可能であるが、調圧流体路HA、HBからリザーバ流体路HRに向けての移動(即ち、制動液BFの逆流)が阻止される。電動ポンプDUは、常に、一方向に限って回転される。
【0046】
以上をまとめると、メイン還流路JAには、メイン調圧弁UA(常開型比例弁)、及び、メインオン・オフ弁VA(常閉型遮断弁)が介装される。メイン還流路JA(特に、メイン調圧流体路HA)では、制動液BFの流れに沿って、「QU、GU、UA、VA」の順で並べられている。サブ還流路JBには、サブ調圧弁UB(常開型比例弁)、及び、サブオン・オフ弁VB(常閉型遮断弁)が介装される。サブ還流路JB(特に、サブ調圧流体路HB)では、制動液BFの流れに沿って、「QU、GU、UB、VB」の順で並べられている。
【0047】
オン・オフ電磁弁VA、VBが開位置(通電時)にされ、リニア調圧電磁弁UA、UBが全開状態(非通電時)にされる場合、還流路JA、JB(特に、調圧流体路HA、HB)内の液圧(調整液圧)Puは低く、略「0(大気圧)」である。リニア電磁弁UA、UBへの通電量が増加され、還流路JA、JBが絞られると、調整液圧Puは増加される。第1調圧流体路HA1、HB1の第1調整液圧Pu1を検出するよう、第1調整液圧センサPU1が設けられる。また、第2調圧流体路HA2、HB2の第2調整液圧Pu2を検出するよう、第2調整液圧センサPU2が設けられる。
【0048】
上部コントローラ(「電子制御ユニット」ともいう)ECUには、マイクロプロセッサMP等が実装された電気回路基板と、マイクロプロセッサMPにプログラムされた制御アルゴリズムとが含まれている。上部コントローラECUによって、電気モータMU、及び、複数の電磁弁(VM1等)が制御される。上部コントローラECUは、車載通信バスBSを介して、下部コントローラECL、及び、他システムのコントローラ(電子制御ユニット)とネットワーク接続されている。例えば、回生協調制御を実行するよう、駆動用のコントローラECDから、回生量Rgが、通信バスBSを通して、上部コントローラECUに送信される。各コントローラECU、ECLには、車載の発電機AL、及び、蓄電池BTから電力が供給される。
【0049】
[ECUにおける駆動構成]
図2の概略図を参照して、上部コントローラECUの詳細(特に、電気モータMU、及び、各種電磁弁の駆動構成)について説明する。コントローラECUには、メイン制御部EA、サブ制御部EB、及び、処理部PCが含まれている。
【0050】
電気モータMUには、2つの巻線組(コイル)KA、KBが含まれる。メインコイルKAはコントローラECUのメイン制御部EAによって、サブコイルKBはコントローラECUのサブ制御部EBによって、夫々、通電されて駆動される。電気モータMUは、所謂、二重化されている。電気モータMUは、2つの流体ポンプQU1、QU2に固定されている。
【0051】
例えば、電気モータMUとして、3相ブラシレスモータが採用される。ブラシレスモータMUには、モータのロータ位置(回転角)Kuを検出する回転角センサKUが設けられる。メインコイルKA、及び、サブコイルKBには、3相(U相、V相、W相)のコイル組が、夫々、形成される。回転角(実際値)Kuに基づいて、2つの3相のコイルKA、KBの通電方向(即ち、励磁方向)が、順次切り替えられ、ブラシレスモータMUが回転駆動される。なお、冗長性を確保するため、回転角センサKUにも、2組の検出部が採用され得る。
【0052】
メイン制御部EAによって、メインコイルKAの通電状態Ka、第1、第2メイン電磁弁UA1、UA2の通電状態Ua1、Ua2、第1、第2オン・オフ電磁弁VA1、VA2の通電状態Va1、Va2、及び、第1マスタシリンダ弁VM1の通電状態Vm1が制御される。メイン制御部EAは、メイン演算部PA、メイン駆動部DA、及び、メイン通電量センサIAを含んでいる。
【0053】
メイン処理部PAでは、メイン制御部EAに係る演算処理が実行される。メイン駆動部DAでは、メイン演算部PAの演算結果に基づいて、メインコイルKAの通電状態Kaが調整される。具体的には、メイン駆動部DAには、電気モータMUのメインコイルKAを駆動するよう、スイッチング素子(MOS−FET、IGBT等のパワー半導体デバイス)によってブリッジ回路(駆動回路)が形成されている。各スイッチング素子の通電状態(即ち、メインコイル通電量Ka)が制御され、電気モータMUの出力が制御される。メイン駆動部DAには、実際の通電状態Kaを検出するよう、メイン通電量センサ(例えば、電流センサ)IAが設けられる。
【0054】
また、メイン駆動部DAには、電磁弁UA、VA、VM1を駆動する電気回路が形成されている。メイン処理部PAでの演算結果に応じて、第1、第2リニア調圧電磁弁UA1、UA2の通電状態(即ち、励磁状態)Ua1、Ua2が調整される。また、「第1、第2オン・オフ電磁弁VA1、VA2の通電状態Va1、Va2」、及び、「第1マスタシリンダ電磁弁VM1の通電状態Vm1」が、選択的に実行される(通電、又は、非通電の選択)。メイン通電量センサIAによって、各種電磁弁の通電状態Ua1、Ua2、Va1、Va2、Vm1が検出される。
【0055】
メイン制御部EAと同様に、サブ制御部EBによって、サブコイルKBの通電状態Kb、及び、サブ電磁弁UB1、UB2、VB1、VB2の通電状態Ub1、Ub2、Vb1、Vb2が調整される。また、第2マスタシリンダ電磁弁VM2、シミュレータ電磁弁VSの通電状態Vm2、Vsが選択的に制御(通電、又は、非通電に)される。サブ制御部EBは、サブ演算部PB、サブ駆動部DB、及び、サブ通電量センサIBにて構成される。
【0056】
サブ演算部PBにて、サブ制御部EBに係る演算処理が実行される。該演算結果に基づいて、サブ駆動部DBのモータ用ブリッジ回路にて、上記スイッチング素子の通電状態(つまり、サブコイル通電量Kb)が制御される。サブ駆動部DBの電磁弁用電気回路によって、「第1、第2リニア調圧電磁弁UB1、UB2の通電状態Ub1、Ub2」、「第1、第2オン・オフ電磁弁VB1、Vb2の通電状態Vb1、Vb2」、「第2マスタシリンダ弁VM2の通電状態Vm2」、及び、「シミュレータ弁VSの通電状態Vs」が制御される。また、サブ駆動部DBには、実際の通電状態Kb、Ub1、Ub2、Vb1、Vb2、Vsを検出するよう、サブ通電量センサ(電流センサ)IBが設けられる。
【0057】
処理部PCにて、制動操作量Ba、操作信号St、回生量Rg、及び、調整液圧Puに基づいて、コイルKA、KBの通電量Ka、Kb、及び、各種の電磁弁UA1、UA2、UB1、UB2、VA1、VA2、VB1、VB2、VM1、VM2、Vsに係る通電状態(リニア弁の通電量、及び、オン・オフ弁の通電/非通電の状態)Ua1、Ua2、Ub1、Ub2、Va1、Va2、Vb1、Vb2、Vm1、Vm2、Vsが決定される。ここで、「回生量Rg」は、駆動用モータによって発生される回生ブレーキの大きさを表す信号(状態変数)である。信号Rgは、通信バスBSを介して、駆動用コントローラECDから受信される。
【0058】
処理部PCでは、メイン制御部EA、サブ制御部EB等の作動が監視される。例えば、処理部PCでは、制動制御装置SCへの電力供給状態、電子制御ユニットECUの診断(例えば、メモリ診断)、コイル組KA、KB、駆動部DA、DB(例えば、スイッチング素子等のパワー半導体デバイス)、通電量センサIA、IB、回転角センサKU、各種電磁弁UA、UB、VA、VB、VM、VSについての診断(作動確認)が実行される。具体的には、コントローラ(電子制御ユニット)ECUに供給される電圧が、所定電圧vl0未満の状態から、所定電圧vl0以上の状態に遷移した時点において、初期診断のトリガ信号に基づいて、上記の各構成要素のうちの少なくとも1つの作動診断(イニシャルチェック)が実行される。トリガ信号は、通信バスBSから受信される信号に基づいて決定される。
【0059】
例えば、初期診断(イニシャルチェック)においては、駆動部DA、DBの電気回路、及び、電磁弁UA、UB、VA、VB、VM、VSに向けて、診断用信号が送信される。そして、その結果として、各センサIA、IB、KU、PUの検出結果の変化が受信される。受信結果に基づいて、これらが、正常に作動し得る状態(適正状態)であるか、否(不適状態)かが判断される。
【0060】
初期診断と同様に、装置の作動中においても、処理部PCによって、供給電力、制御部EA、EB(処理部PA、PB+駆動部DA、DB)、コイルKA、KB、電磁弁UA、UB、VA、VB、VM、VSが、適正状態であるか、否かが診断される。診断では、各構成要素の目標値と、その結果(実際値)とが比較され、目標値と実際値との偏差が予め設定された所定値未満の場合には適正状態が判定され、該偏差が所定値以上の場合に不適状態が判定される。
以上、ECUの詳細について説明した。
【0061】
図1に戻り、説明を続ける。
第1、第2マスタシリンダ流体路HM1、HM2は、第1、第2調圧流体路HA1、HB1、HA2、HB2を経由して、第1、第2中間流体路HV1、HV2に接続される。マニュアル制動の場合には、マスタシリンダCMから制動液BFが圧送されるが、常閉型オン・オフ電磁弁VA1、VA2、VB1、VB2の閉位置によって、リザーバ流体路HRへの制動液BFの移動が阻止されるため、制動液BFは、ホイールシリンダCWに向けて移動される。
【0062】
第1中間流体路HV1(H1の一部)は、第1分岐部Bw1にて分岐され、第1ホイールシリンダ流体路HWi、HWl(H1の一部)が接続される。第1ホイールシリンダ流体路HWi、HWlには、インレット弁VIi、VIl(常開型オン・オフ弁)が、直列に設けられる。ホイールシリンダ流体路HWi、HWlは、インレット弁VIi、VIlとホイールシリンダCWi、CWlと間で分岐され、アウトレット弁VOi、VOl(常閉型オン・オフ弁)を介して、リザーバ流体路HRに接続される。
【0063】
制動液圧Pwi、Pwlが減少される場合には、各インレット弁VIi、VIlが閉位置にされ、各アウトレット弁VOi、VOlが開位置にされる。これにより、調圧ユニットYCからの制動液BFの流入が阻止されるとともに、リザーバ流体路HRに制動液BFが移動され、制動液圧Pwi、Pwlが減少される。一方、各制動液圧Pwi、Pwlが増加される場合には、各インレット弁VIi、VIlが開位置にされ、各アウトレット弁VOi、VOlが閉位置にされる。これにより、制動液BFが、調圧ユニットYCから移動されるとともに、制動液BFのリザーバ流体路HRへの移動が阻止され、各制動液圧Pwi、Pwlが増加される。
【0064】
同様に、第2中間流体路HV2(H2の一部)は、第2分岐部Bw2にて分岐され、第2ホイールシリンダ流体路HWj、HWk(H2の一部)が接続される。第2ホイールシリンダ流体路HWj、HWkは、ホイールシリンダCWj、CWkに接続される。ホイールシリンダ流体路HWj、HWkには、インレット弁VIj、VIk(常開型オン・オフ弁)が、直列に配置される。ホイールシリンダ流体路HWj、HWkは、インレット弁VIj、VIkとホイールシリンダCWj、CWkと間で分岐され、アウトレット弁VOj、VOk(常閉型オン・オフ弁)を通して、リザーバ流体路HRに接続される。制動液圧Pwj、Pwkが減少される場合には、インレット弁VIj、VIkが閉位置にされ、アウトレット弁VOj、VOkが開位置にされる。逆に、制動液圧Pwj、Pwkが増加される場合には、インレット弁VIj、VIkが開位置にされ、アウトレット弁VOj、VOkが閉位置にされる。
【0065】
マニュアル制動時には、マスタシリンダ弁VMが開位置にあり、オン・オフ弁VA、VBが閉位置にあるため、ホイールシリンダCWは、マスタシリンダCMに直接接続される。そして、制動液BFが、マスタシリンダCMからホイールシリンダCWに移動されて、制動液圧Pwが増加される。
【0066】
一方、制御制動時(制動制御装置SCによる制動液圧Pwの調圧時)には、制動液圧Pwは、調圧ユニットYCによって増加される。調圧ユニットYCでは、流体ポンプQU、調圧流体路HA、HB、及び、リザーバ流体路HRによって、還流路JA、JBが形成される。メイン還流路JAには、メイン調圧弁UA、及び、メインオン・オフ弁VAが直列に配置される。また、サブ還流路JBには、サブ調圧弁UB、及び、サブオン・オフ弁VBが直列に配置される。還流路JA、JBには、電動ポンプDU(特に、流体ポンプQU)によって、制動液BFの循環する流れ(流量)が発生される。メイン調圧弁UA、及び、サブ調圧弁UBのうちの少なくとも1つによって、制動液BFの流れが絞られ、所謂、オリフィス効果によって調整液圧Puの調節が行われる。
【0067】
メイン制御部EAによってメイン還流路JAのメイン調圧弁UA、メインオン・オフ弁VA、及び、第1マスタシリンダ弁VM1が制御される。サブ制御部EBによってサブ還流路JBのサブ調圧弁UB、サブオン・オフ弁VB、第2マスタシリンダ弁VM2、及び、シミュレータ弁VSが制御される。また、メイン制御部EAによってメインコイルKAに、サブ制御部EBによってサブコイルKBに、夫々、電力供給(通電)が行われる。メイン制御部EAに係る構成要素(UA、VA、VM1等)、及び、サブ制御部EBに係る構成要素(UB、VB、VM2等)が、共に、適正に作動する場合(「通常状態」という)には、第1、第2マスタシリンダ弁VM1、VM2が閉位置にされ、マスタシリンダCMとホイールシリンダCWとが流体的に切り離され、ブレーキ・バイ・ワイヤの状態とされる。そして、オン・オフ電磁弁VA、VBが開位置にされ、リニア電磁弁UA、UBによって、液圧Puが調整される。
【0068】
一方、メイン制御部EAに係る構成要素、及び、サブ制御部EBに係る構成要素のうちで、一方側は適正作動するが、他方側は不調である場合には、他方側への通電が停止され、他方側の還流路が閉じられる。そして、一方側の還流路において、オン・オフ弁が通電されて開状態とされ、調圧弁によって、一部機能が制約された状態で、調整液圧Puが調整される。
【0069】
例えば、メイン制御部EAが不調状態にある場合を想定する。この場合には、第1マスタシリンダ弁VM1は非通電であるため、開位置にされ、第2マスタシリンダ弁VM2には通電が行われて、閉位置にされる。従って、マスタシリンダCMとホイールシリンダCWとは、第1系統では流体的に接続されているが、第2系統では分離されている。メインコイルKAへの通電は停止されるが、サブ制御部EBによって、サブコイルKBへの通電が行われ、電気モータMUが回転される。
【0070】
第1系統では、常開型の第1メイン調圧弁UA1は開位置(非通電)にあるが、常閉型の第1メインオン・オフ弁VA1は閉位置(非通電)にされるため、第1メイン還流路JA1の還流が遮断される。しかし、第1サブ制御部EB1によって、第1サブ還流路JB1において、第1サブオン・オフ弁VB1が駆動されて開位置にされるとともに、第1サブ調圧弁UB1が駆動される。第1マスタシリンダ弁VM1が開位置であるため、第1サブ調圧弁UB1によって、制動操作部材BPの操作特性Cpが適正に維持されるよう、第1調整液圧Pu1が調整される。具体的には、操作特性Cpが、シミュレータSSに基づく操作特性Cs(「通常操作特性」という)に近づくように、第1調整液圧Pu1が調節される。
【0071】
制御制動の場合には、制動操作部材BPの操作特性(操作変位Spに対する操作力Fpの特性)Cpは、シミュレータSSによって、通常操作特性Csに形成(設定)される。一方、マニュアル制動の場合には、該操作特性Cpは、制動装置の剛性(例えば、キャリパの剛性、摩擦材の剛性、制動配管の剛性)に因る。マニュアル制動の操作特性Cpが、「マニュアル操作特性Cm」と称呼される。制御制動からマニュアル制動に切り替えられると、操作特性Cpが、通常操作特性Csからマニュアル操作特性Cmに変化し、運転者が違和を感じる場合がある。制動制御装置SCの不調発生時に、直ちには、通常操作特性Csからマニュアル操作特性Cmに切り替えられないため、運転者の違和感が抑制され得る。
【0072】
更に、マスタシリンダ弁(遮断弁)が閉位置に変更できない制動系統において、制動操作部材BPの操作特性Cpが通常操作特性Csに近づくように調整液圧が制御される。これにより、制動操作部材BPの操作特性Cpが好適に維持され得る。
【0073】
第2系統では、常開型の第2メイン調圧弁UA2は開位置(非通電)にあるが、常閉型の第2メインオン・オフ弁VA2は閉位置(非通電)にされるため、第2メイン還流路JA2の還流が遮断される。しかし、サブ制御部EB2によって、第2サブ還流路JB2において、第2サブオン・オフ弁VB2が駆動されて開位置にされるとともに、第2サブ調圧弁UB2が駆動される。第2サブ調圧弁UB2によって、車両の減速度Gxが適正に維持されるよう、第2調整液圧Pu2が調整される。例えば、車両の減速度Gxが上記通常状態から減少されないよう、第2調整液圧Pu2(結果、第2制動液圧Pw2)の発生が、通常状態での第2調整液圧Pu2よりも大きくなるように調節される。これにより、メイン制御部EA、及び、サブ制御部EBのうちの何れか一方が不調に陥った場合でも、制動制御装置SCでは、操作特性Cpが好適に維持された上で、車両の減速度特性(操作量Baに対する減速度Gxの発生)が、通常状態と略同じに維持される。結果、運転者への違和が軽減され得る。
【0074】
以上で説明したように、コントローラECU(制御部EA、EB)、電気モータMU(コイルKA、KB)、調圧弁UA、UB、及び、遮断弁VA、VBを有する還流路JA、JBが二重化(冗長化)されている。このため、冗長構成のうちの何れか一方側が不調に陥った場合には、正常である他方側によって、制御制動が行われる。制動制御装置SCの不調発生時に、直ちに、マニュアル制動が選択されず、冗長構成のうちの適正作動する側で、制御制動が継続される。
【0075】
<調圧制御の演算処理>
図3の制御フロー図を参照して、調圧制御の処理(特に、制御部EA、EBの適否判定処理)について説明する。「調圧制御」は、液圧Puを調節するための、電気モータMU、及び、電磁弁UA、UB、VA、VB、VM、VSの駆動制御である。該制御のアルゴリズムは、上部コントローラECU内にプログラムされている。
【0076】
ステップS110にて、各種の信号が読み込まれる。具体的には、操作量Ba、操作信号St、調整液圧Pu、回転角Ku、回生量Rg、及び、通電状態Ka、Kb、Ua、Ub、Va、Vb、Vm、Vsが読み込まれる。信号(Pu等)は、制動制御装置SCに備えられたセンサ(PU等)によって検出される。また、信号(Rg等)は、通信バスBSを介して、他のコントローラ(ECD等)から受信される。
【0077】
ステップS120にて、制動操作量Ba、及び、制動操作信号Stのうちの少なくとも1つに基づいて、「制動操作中であるか、否か」が判定される。例えば、操作量Baが、所定値bo以上である場合には、ステップS120は肯定され、処理は、ステップS130に進む。一方、「Ba<bo」である場合には、ステップS120は否定され、処理は、ステップS110に戻される。ここで、所定値boは、制動操作部材BPの遊びに相当する、予め設定された定数である。また、操作信号Stがオンである場合には、ステップS130に進み、操作信号Stがオフである場合には、ステップS110に戻る。
【0078】
ステップS130からステップS150までの処理では、制御部EA、EBの作動状態の適否が判定される。作動状態の適否は、上述したように、処理部PCによって実行される。ステップS130にて、「メイン制御部EAの作動が適正であるか、否か」が判定される。メイン制御部EAが適正に作動する場合には、ステップS140に進む。メイン制御部EAの作動が、不調である場合には、ステップS150に進む。
【0079】
ステップS140にて、「サブ制御部EBの作動が適正であるか、否か」が判定される。サブ制御部EBが適正に作動する場合には、ステップS200に進む。ステップS200では、メイン制御部EA、及び、サブ制御部EBが、共に適正に作動している場合の処理(「通常処理」という)が実行される。つまり、通常処理は、上記通常状態における演算処理である。
【0080】
メイン制御部EAの作動が適正であるが、サブ制御部EBの作動が不調であり、ステップS140が否定される場合には、ステップS300に進む。ステップS300では、メイン制御部EAが正常、且つ、サブ制御部EBが不調の場合の処理(「サブ側不調処理」という)が実行される。ここで、メイン制御部EAが正常、サブ制御部EBが不調の状態が、「サブ側不調状態」と称呼される。
【0081】
ステップS150にて、「サブ制御部EBの作動が適正であるか、否か」が判定される。メイン制御部EAが不調ではあるが、サブ制御部EBが適正に作動し、ステップS150が肯定される場合には、ステップS400に進む。ステップS400では、メイン制御部EAが不調、且つ、サブ制御部EBが正常の場合の処理(「メイン側不調処理」という)が実行される。ここで、メイン制御部EAが不調、サブ制御部EBが正常の状態が、「メイン側不調状態」と称呼される。
【0082】
メイン制御部EA、及び、サブ制御部EBが、共に不調であり、ステップS150が否定される場合には、ステップS500に進む。制御部EA、EBが不調の状態が、「完全不調状態」と称呼される。該完全不調状態の場合には、電気モータMU、及び、電磁弁(VM1等)への通電は停止され、マニュアル制動が行われる。
【0083】
<調圧制御の通常処理>
図4の制御フロー図を参照して、調圧制御の通常処理について説明する。「通常処理」は、上記の通常状態(メイン制御部EA、及び、サブ制御部EBが、共に正常である場合)に対応した、ステップS200での演算処理である。
【0084】
上述したように、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。各種記号末尾の添字「i」〜「l」では、「i」が右前輪、「j」が左前輪、「k」が右後輪、「l」が左後輪を示す。また、記号末尾の添字「i」〜「l」は省略され得る。この場合、各記号は、4つの各車輪の総称を表す。加えて、各種記号末尾の添字「1」、「2」は、2つの制動系統において、「1」が第1系統、「2」が第2系統を示す。また、記号末尾の添字「1」、「2」は省略され得る。この場合、各記号は、2つの各制動系統の総称を表す。「メイン」、「サブ」は従属関係の表現ではなく、同じ機能を有する2つの構成要素のうちの「一方側」、「他方側」を意味する呼称である。
【0085】
ステップS210にて、操作量Baに基づいて、第1、第2要求液圧Pr1、Pr2が演算される。第1、第2要求液圧Pr1、Pr2は、第1、第2調整液圧Pu1、Pu2の目標値であり、車両の減速に対応する値である。第1、第2要求液圧Pr1、Pr2は、第1、第2演算マップZr1、Zr2(「第1、第2基準特性」という)に従って、操作量Baが「0」から所定値boの範囲では、「0」に決定され、操作量Baが所定値bo以上では、操作量Baが増加するに伴い、「0」から単調増加するよう演算される。ここで、2つの演算マップ(第1、第2基準特性)Zr1、Zr2は、同一特性に設定され、線図は重なっている。
【0086】
ステップS220にて、第1、第2要求液圧Pr1、Pr2、及び、回生量Rgに基づいて、第1、第2目標液圧Pt1、Pt2が演算される。「回生量Rg」は、駆動用モータによって発生される回生ブレーキ量である。回生量Rgが、液圧の次元に換算されて、回生液圧Pgが演算される。要求液圧Prは車両減速に対応し、車両減速は回生ブレーキと摩擦ブレーキとによって達成される。このため、第1、第2要求液圧Pr1、Pr2から、回生液圧Pgが減じられて、最終的な液圧の目標値(第1、第2目標液圧)Pt1、Pt2が決定される(Pt=Pr−Pg)。目標液圧Ptは、摩擦ブレーキが達成すべき液圧の目標値である。
【0087】
ステップS230にて、第1、第2目標液圧Pt1、Pt2に基づいて、目標回転数Ntが演算される。目標回転数Ntは、電気モータMUの回転数の目標値である。目標回転数Ntは、演算マップZntに従って、第1、第2目標液圧Pt1、Pt2が増加するに伴い、所定回転数noから単調増加するよう演算される。演算マップZntには、下限値として、所定回転数noが設定される。上述したように、調整液圧Puは、調圧電磁弁UA、UBのオリフィス効果によって発生される。オリフィス効果を得るためには、或る程度の流量が必要となるため、目標回転数Ntは、液圧発生に最低限必要な値(予め設定された定数)noよりも大きく決定される。目標液圧Ptは、操作量Baに基づいて演算されるため、目標回転数Ntが、直接、操作量Baに基づいて演算されてもよい。何れの場合であっても、目標回転数Ntは、制動操作量Baに基づいて決定される。
【0088】
ステップS240にて、第1、第2マスタシリンダ弁VM1、VM2に通電が行われ、第1、第2マスタシリンダ弁VM1、VM2が閉位置にされる。このため、マスタシリンダCMとホイールシリンダCWとが流体的に分離され、ブレーキ・バイ・ワイヤの状態にされる。ステップS250にて、シミュレータ弁VSに通電が行われ、シミュレータ弁VSが開位置にされる。マスタシリンダCM(特に、第2マスタシリンダ室Rm2)とシミュレータSSとが連通状態にされ、制動操作部材BPの操作特性Cpが、シミュレータSSによる通常操作特性Csに設定される。なお、シミュレータ弁VSが省略される場合には、ステップS250は省略される。
【0089】
ステップS260にて、電気モータMUがフィードバック制御される。具体的には、電気モータMUの回転角(検出値)Kuに基づいて、回転速度(単位時間当りの回転数)Nuが演算される。例えば、回転角Kuが時間微分されて、実回転数Nuが演算される。目標回転数Nt、及び、実回転数Nuに基づいて、電気モータMUの回転数フィードバック制御が実行される。該フィードバック制御では、電気モータMUの回転数が制御変数とされて、電気モータMU(巻線KA、KB)への通電量(例えば、供給電流)Ka、Kbが制御される。
【0090】
具体的には、回転数の目標値Ntと実際値Nuとの偏差hN(=Nt−Nu)に基づいて、回転数偏差hNが「0」となるよう(つまり、実際値Nuが目標値Ntに近づくよう)、電気モータMUへの通電量が微調整される。「hN>nx」の場合には、通電量が増加され、電気モータMUが増速される。一方、「hN<−nx」の場合には、通電量が減少され、電気モータMUは減速される。ここで、所定値nxは、予め設定された定数である。
【0091】
ステップS270にて、目標液圧Pt、及び、調整液圧Puに基づいて、調圧電磁弁UA、UBの液圧フィードバック制御が実行される。先ず、オン・オフ弁VA、VBに通電が行われて開位置にされ、還流路JA、JBが開通される。そして、液圧フィードバック制御では、調圧流体路HU内の制動液BFの圧力Puが制御変数とされて、常開・リニア型の電磁弁UA、UBへの通電量Ua、Ubが制御される。具体的には、目標液圧Ptと調整液圧Pu(検出値)との偏差hP(=Pt−Pu)に基づいて、液圧偏差hPが「0」となるよう(つまり、調整液圧Puが目標液圧Ptに近づくよう)、調圧弁UA、UBへの通電量が微調整される。「hP>px」の場合には、通電量が増加され、開弁量が減少される。一方、「hP<−px」の場合には、通電量が減少され、開弁量が増加される。ここで、所定値pxは、予め設定された定数である。
【0092】
<調圧制御のサブ側不調処理>
図5の制御フロー図を参照して、調圧制御のサブ側不調処理について説明する。「サブ側不調処理」は、上記のサブ側不調状態(メイン制御部EAが正常、且つ、サブ制御部EBが不調の場合)に対応した、ステップS300での演算処理である。
【0093】
サブ側不調状態では、サブ制御部EBが不調であるため、シミュレータ弁VSが閉位置、第2マスタシリンダ弁VM2が開位置にされている。サブ側不調処理では、第2要求液圧Pr2(マスタシリンダCMがホイールシリンダCWに繋がっている制動系統の液圧目標値)が調整されることによって、操作特性Cpが、マニュアル操作特性Cmに対して、通常操作特性Csに近づくように調整される。加えて、第1要求液圧Pr1(マスタシリンダCMがホイールシリンダCWには繋がっていない制動系統の液圧目標値)が、第2要求液圧Pr2の変化を補償するように演算されることによって、車両の減速特性が、通常状態と同等に維持される。
【0094】
ステップS310にて、操作量Baに基づいて、第1、第2要求液圧Pr1、Pr2(第1、第2調整液圧Pu1、Pu2の目標値)が演算される。具体的には、サブ側不調時の第1、第2演算マップZs1、Zs2に基づいて、操作量Baの増加に従って、第1、第2要求液圧Pr1、Pr2は増加するよう決定される。通常処理用の第1、第2演算マップ(第1、第2基準特性)Zr1、Zr2は、同一特性であったが、第1、第2サブ側不調時演算マップZs1、Zs2は、異なる特性(即ち、操作量Baの増加に対する第1、第2要求液圧Pr1、Pr2の傾きが異なる)として設定される。
【0095】
例えば、マニュアル操作特性Cmに対して、操作特性Cpを通常操作特性Csに近づけるように、第2サブ側不調時演算マップ(第2サブ側不調時特性)Zs2は、通常時演算マップ(第2基準特性)Zr2よりも小さい特性として設定される。そして、「Zs2<Zr2」に起因した、第2要求液圧Pr2の低下分を補償するよう、第1サブ側不調時演算マップ(サブ側不調時特性)Zs1が、通常時演算マップ(第1基準特性)Zr1よりも大きい特性として設定される。上述したように、制動装置の剛性は既知であるため、第1、第2サブ側不調時特性Zs1、Zs2は、予め設定される。第1、第2サブ側不調時特性(演算マップ)Zs1、Zs2に応じて、サブ側不調処理では、通常処理の場合に対して、第1要求液圧Pr1は相対的に大きく演算され、第2要求液圧Pr2は相対的に小さく演算される。
【0096】
ステップS320にて、第1、第2要求液圧Pr1、Pr2、及び、回生量Rgに基づいて、第1、第2目標液圧Pt1、Pt2が演算される。具体的には、操作特性Cpの調整に利用される第2目標液圧Pt2には、第2要求液圧Pr2がそのまま採用される(Pt2=Pr2)。一方、第1目標液圧Pt1は、第1要求液圧Pr1に、回生液圧Pg(回生量Rgの液圧換算値)が考慮されて決定される(Pt1=Pr1−Pg)。
【0097】
ステップS330にて、ステップS230と同様の方法で、第1、第2目標液圧Pt1、Pt2に基づいて、目標回転数Ntが演算される。つまり、下限回転数noを有する演算マップZntに従って、第1、第2目標液圧Pt1、Pt2の増加に応じて、目標回転数Ntは増加するよう演算される。サブ側不調処理でも、制動操作量Baに基づいて、目標回転数Ntが演算される。
【0098】
ステップS340にて、第1マスタシリンダ弁VM1(第1遮断弁)に通電が行われ、第1マスタシリンダ弁VM1が閉位置にされる。なお、サブ制御部EBが不調であるため、シミュレータ弁VS(省略可能)は閉位置、第2マスタシリンダ弁VM2(第2遮断弁)は開位置のままである(非通電状態)。
【0099】
ステップS360にて、メイン制御部EAによって、電気モータMUが回転数フィードバック制御される。上述したように、回転数の目標値Ntと実際値Nuとの偏差hNに基づいて、メイン制御部EAによって、電気モータMU(巻線KA)への通電量(例えば、供給電流)Kaが制御され、電気モータMUが回転駆動される。
【0100】
ステップS370にて、メイン制御部EAによって、液圧の目標値Pt、及び、実際値(検出値)Puに基づいて、電磁弁UA、VAの制御が実行される。メイン制御部EAにて、メインオン・オフ弁VAに通電が行われて開位置にされ、メイン還流路JAが開通される。目標液圧Ptと調整液圧Puとの偏差hPに基づいて、調整液圧Puが目標液圧Ptに近づくよう、メイン調圧弁UAへの通電量Uaが制御される。なお、サブ制御部EBは不調であるため、サブ電磁弁UB、VBへの通電は停止されている。
【0101】
二重化された構成のうちの一方側(例えば、メイン側)が正常作動し、他方側(例えば、サブ側)が不調である場合(即ち、サブ側不調状態)には、適正に作動する一方側によって、制御制動が実行される。つまり、制動制御装置SCの不調が発生した場合に、制御制動から、直ちに、マニュアル制動に切り替えられるのではなく、二重構成(冗長構成)のうちの適正作動する側で、制御制動が継続される。このため、制動制御装置の信頼度が向上され得る。
【0102】
更に、マスタシリンダCMとホイールシリンダCWとが分離されない他方側の制動系統(例えば、第2系統)においては、操作特性Cpの変化を抑制するよう、調整液圧の目標値(例えば、要求液圧Pr2)が決定される。操作特性Cpの調整が行われない場合には、サブ側不調状態では、他方側の制動系統(例えば、第2系統)に係る制動装置(例えば、車輪WHj、WHkのキャリパ、摩擦材、フレキシブルホース等)の剛性に基づいて操作特性が定まる。操作特性Cpの調整の調整によって、該操作特性に対して、通常操作特性Csに近づくように調整液圧の目標値(例えば、第2目標液圧Pt2(=Pr2))が決定される。そして、調整液圧が、目標値に一致するよう制御されるため、制動操作特性Cpの変化に起因する運転者への違和が軽減され得る。加えて、他方側の制動系統(第2系統)における制動液圧(第2調整液圧Pu2)の低下を補償するよう、通常処理の場合よりも、一方側の制動系統の液圧目標値(第1目標液圧Pt1)が増大するよう演算される。これにより、他方側の1系統が不調であっても、車両減速度Gxが確保され得る。
【0103】
なお、シミュレータ弁VSが省略された構成では、サブ側不調状態の操作特性Cpは、第2系統に係る制動装置の剛性、及び、シミュレータSSの特性に基づいて定まる。この場合であっても、第2目標液圧Pt2に基づいて、制動操作特性Cpが通常操作特性Csに近づくように調整される。また、第1目標液圧Pt1によって、車両減速度Gxが補償され得る。
【0104】
以上、「Zs2<Zr2」である第2サブ側不調時特性Zs2に基づいて操作特性Cpが調整され、「Zs1>Zr1」である第1サブ側不調時特性Zs1に基づいて、車両の減速度Gxが補償される態様について説明した。上述したように、操作特性Cpは、車両に搭載された制動装置(ブレーキキャリパ他)の剛性(ばね定数)に因る。このため、操作特性Cpを通常操作特性Csに近づけるよう、第2サブ側不調時特性Zs2として、第2基準特性Zr2よりも大きい特性が設定され得る。このような車両では、車両減速度Gxが補償されるよう、第1サブ側不調時特性Zs1として、第1基準特性Zr1よりも小さいものが採用される。
【0105】
何れ場合(「Zs2<Zr2」、又は、「Zs2>Zr2」)であっても、サブ側不調状態の場合には、第1マスタシリンダ弁(第1遮断弁)VM1が閉位置にされ、第2マスタシリンダ弁(第2遮断弁)VM2が開位置にされ、第2メイン調圧弁UA2が調整されることによって、制動操作部材BPの操作特性Cpが、通常操作特性Cs(シミュレータSSによって形成される特性)に似る(近寄る)ように調節される。結果、運転者に対する操作違和感が低減され得る。
【0106】
また、操作特性Cpの調整に起因して、車両の減速度Gxが、通常状態(調圧制御の通常処理)における車両減速度Gxから変化する。サブ側不調状態においては、第1メイン調圧弁UA1が調整されることによって、実際に生じる車両の減速度Gxが、通常状態にて発生する減速度(「基準加速度Go」という)に近づく(例えば、一致する)ように調節される。つまり、減速度Gxの変化が抑制され、制動制御装置SCの不調の有無に拘らず、車両の減速特性(制動操作量Baに対する車両減速度Gxの関係)が、常に概同一特性とされ得る。
【0107】
<調圧制御のメイン側不調処理>
図6の制御フロー図を参照して、調圧制御のメイン側不調処理について説明する。「メイン側不調処理」は、上記のメイン側不調状態(メイン制御部EAが不調、且つ、サブ制御部EBが正常の場合)に対応した、ステップS400での演算処理である。メイン側不調処理は、サブ側不調処理に対して、メイン側とサブ側とが入れ替わった構成であるため、簡単に説明する。
【0108】
メイン側不調状態では、サブ制御部EBが不調であるため、第1マスタシリンダ弁VM1が開位置にされている。メイン側不調処理では、操作特性Cpが、マニュアル操作特性Cmに対して、通常操作特性Csに近づくよう、第1要求液圧Pr1が調整される。また、第1要求液圧Pr1の減少を補償し、車両減速が確保されるよう、通常処理よりも、第2要求液圧Pr2が大きく決定される。
【0109】
ステップS410にて、操作量Ba、及び、メイン側不調時の第1、第2演算マップZt1、Zt2に基づいて、第1、第2要求液圧Pr1、Pr2が演算される。例えば、第1メイン側不調時特性Zt1(第1基準特性Zr1よりも小さい特性に設定)に基づき、操作特性Cpが通常操作特性Csに近接するよう、第1要求液圧Pr1が通常状態よりも小さく演算される。更に、第2メイン側不調時特性Zt2(第2基準特性Zr2よりも大きく設定)に応じて、第1要求液圧Pr1の減少を補償するよう、第2要求液圧Pr2が通常状態よりも大きく演算される。つまり、メイン側不調処理では、通常処理の場合に比べ、第1要求液圧Pr1は相対的に小さく演算され、第2要求液圧Pr2は相対的に大きく演算される。
【0110】
ステップS420にて、第1、第2要求液圧Pr1、Pr2、及び、回生量Rgに基づいて、第1、第2目標液圧Pt1、Pt2が演算される。即ち、「Pt1=Pr1、Pt2=Pr2−Pg」にて、第1、第2目標液圧Pt1、Pt2が決定される。ステップS430にて、第1、第2目標液圧Pt1、Pt2に基づいて(制動操作量Baに基づいて)、目標回転数Ntが演算される。
【0111】
ステップS440にて、第2マスタシリンダ弁VM2(第2遮断弁)に通電が行われ、第2マスタシリンダ弁VM2が閉位置にされる。なお、メイン制御部EAの不調により、第1マスタシリンダ弁VM1(第1遮断弁)は開位置のままである(非通電状態)。ステップS450にて、シミュレータ弁VSに通電が行われ、シミュレータ弁VSが開位置にされる。
【0112】
ステップS460にて、サブ制御部EBによって、電気モータMUが回転数フィードバック制御される。ステップS470にて、サブ制御部EBによって、サブオン・オフ弁VBが開位置にされ、サブリニア調圧弁UBが液圧フィードバック制御される。ここで、メイン制御部EAは不調であるため、メイン電磁弁UA、VAへの通電は停止される。
【0113】
サブ側(サブ制御部EB)に不調状態が発生した場合に、適正に作動するメイン側(メイン制御部EA)によって、制御制動が行われるため、制動制御装置の信頼度が向上され得る。メイン側不調状態では、第1系統に係る制動装置(車輪WHi、WHlのキャリパ、摩擦材等)の剛性、及び、シミュレータSSに基づいて操作特性が定まる。該操作特性に対して、操作特性Cpを通常操作特性Csに近づけるよう、第1目標液圧Pt1(=Pr1)が決定されるため、制動操作特性Cpの変化が抑制される。更に、車両減速を補償するよう(つまり、基準減速度Goに近づくよう)、通常処理の場合よりも、正常な制動系統において、実際の第2調整液圧Pu2が大きく調整される。
【0114】
メイン側不調処理では、ステップS450にて、シミュレータ弁VSの非通電状態が維持され、シミュレータ弁VSが閉位置のままでもよい。シミュレータ弁VSが閉位置にされることによって、操作特性Cpの低下を抑制され、操作力Fpが確保され得る。
【0115】
サブ側不調状態の場合と同様に、車両によっては、操作特性Cpの調整のため、「Zt1>Zr1」である第1メイン側不調時特性Zt1が採用され得る。この場合、車両減速度Gxの補償には、「Zt2<Zr2」である第2メイン側不調時特性Zt2が採用される。
【0116】
メイン側不調状態の場合には、第1マスタシリンダ弁(第1遮断弁)VM1が開位置にされ、第2マスタシリンダ弁(第2遮断弁)VM2が閉位置にされ、第1サブ調圧弁UB1が調整されることによって、制動操作部材BPの操作特性Cpが、シミュレータSSによる通常操作特性Csに似る(近寄る)ように調節され、運転者の違和感が抑制される。加えて、第2サブ調圧弁UB2が調整されることによって、実際に発生する車両減速度Gxが、通常状態の基準減速度Goに近づく(一致する)ように調節され、減速度変化が抑制され得る。つまり、制動操作量Baに対する車両減速度Gxが、通常処理のものから変化しないようにされる。
【0117】
<他の実施形態>
以下、他の実施形態について説明する。他の実施形態においても、上記同様の効果(違和感の軽減、車両の減速度変化の抑制、等)を奏する。つまり、2つのマスタシリンダ弁VMを駆動する2つの制御部EA、EBのうちの不調側系統によって操作特性Cpが調整される。更に、2つの制御部EA、EBのうち正常側系統によって、車両の減速度Gxが補償される(通常処理の減速度Goからの変化が抑制される)。
【0118】
上記実施形態では、車両が、駆動用モータを有する電気自動車、又は、ハイブリッド車両とされた。これに代えて、駆動用モータを持たない一般的な内燃機関を有する車両にも、制動制御装置SCが適用され得る。この場合、駆動用モータによる回生ブレーキは発生されないため、制動制御装置SCにおいて、回生協調制御は実行されない。つまり、車両は、制動制御装置SCによる摩擦ブレーキのみによって減速される。なお、調圧制御では、「Pt=Pr(即ち、Rg=0)」として制御が実行される。
【0119】
上記実施形態では、リニア型の調圧電磁弁UA、UBには、通電量に応じて開弁量が調整されるものが採用された。例えば、調圧電磁弁UA、UBは、オン・オフ弁ではあるが、弁の開閉がデューティ比で制御され、液圧が線形に制御されるものでもよい。
【0120】
上記実施形態では、リニア調圧電磁弁UA、UBに、常開型のものが採用された。これに代えて、常閉型のものが採用され得る。この場合、オン・オフ電磁弁VA、VBは、省略され得る。なお、常閉型リニア調圧弁は、ヒステリシスが、常開型のものに比較して大きい。このため、常開型のリニア調圧弁UA、UBの採用が望ましい。
【0121】
上記実施形態では、上部流体ユニットYUと、下部流体ユニットYLとが別体として構成された。上部流体ユニットYUと下部流体ユニットYLとは、一体として構成され得る。この場合、下部コントローラECLは、上部コントローラECUに含まれる。
【0122】
上記実施形態では、ディスク型制動装置(ディスクブレーキ)の構成が例示された。この場合、摩擦部材はブレーキパッドであり、回転部材はブレーキディスクである。ディスク型制動装置に代えて、ドラム型制動装置(ドラムブレーキ)が採用され得る。ドラムブレーキの場合、キャリパに代えて、ブレーキドラムが採用される。また、摩擦部材はブレーキシューであり、回転部材はブレーキドラムである。
【0123】
上記実施形態では、流体ポンプQUの駆動源として、ブラシレスモータが採用された。電気モータMUとして、ブラシレスモータに代えて、ブラシ付モータ(単に、ブラシモータともいう)が採用され得る。この場合、ブリッジ回路として、4つのスイッチング素子(パワートランジスタ)にて形成されるHブリッジ回路が用いられる。ブラシレスモータの場合と同様に、電気モータMUには、回転角Kuを検出するよう、回転角センサKUが設けられる。また、駆動部DA、DBには、通電状態Ka、Kbを検出するよう、通電量センサIA、IBが設けられる。
【0124】
上記実施形態では、制動液BFを介して、4つの車輪WHの全てに制動トルクを付与するものが例示された。これに代えて、電気モータによって駆動される、電動式のものが、後輪WHk、WHl用に採用され得る(ただし、前輪WHi、WHj用は、依然、液圧式である)。電動式装置では、電気モータの回転動力が、直線動力に変換され、これによって、摩擦部材が回転部材KTに押し付けられる。該構成の制動制御装置SCでは、後輪WHk、WHlに係る構成部材(VWを除く)が省略される。
【0125】
上記実施形態では、2系統の流体路として、所謂、ダイアゴナル型(「X型」ともいう)のものが採用された。2系統流体路として、前後型(「H型」ともいう)のものが採用され得る。この場合、第1系統には前輪ホイールシリンダCWi、CWjが、第2系統には後輪ホイールシリンダCWk、CWlが、夫々、接続される。
【符号の説明】
【0126】
BP…制動操作部材、H1…第1流体路(HM1+HA1、HB1+HV1+HWi、HWl)、H2…第2流体路(HM2+HA2、HB2+HV2+HWj、HWk)、CM…マスタシリンダ、CW…ホイールシリンダ、RV…リザーバ、YC…調圧ユニット、JA…メイン還流路、JB…サブ還流路、MU…電気モータ、KA…メインコイル(メイン巻線組)、KB…サブコイル(サブ巻線組)、QU…流体ポンプ、SS…ストロークシミュレータ、VM…マスタシリンダ弁(遮断弁)、UA…メイン調圧弁、UB…サブ調圧弁、VA…メインオン・オフ弁、VB…サブオン・オフ弁、ECU…コントローラ、EA…メイン制御部、EB…サブ制御部、BA…操作量センサ、PU…調整液圧センサ、Cp…操作特性、Cs…通常操作特性、Pu…調整液圧。



図1
図2
図3
図4
図5
図6