特許第6907544号(P6907544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6907544可変断熱素子とその駆動方法及びその形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907544
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】可変断熱素子とその駆動方法及びその形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/82 20060101AFI20210708BHJP
   H01L 37/00 20060101ALI20210708BHJP
   H01L 35/34 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   H01L29/82 Z
   H01L37/00
   H01L35/34
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-4437(P2017-4437)
(22)【出願日】2017年1月13日
(65)【公開番号】特開2018-113413(P2018-113413A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年12月16日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構「ERATO齋藤スピン量子整流プロジェクト/スピンゼーベック効果応用に関する研究」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】石田 真彦
(72)【発明者】
【氏名】桐原 明宏
【審査官】 加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/115056(WO,A1)
【文献】 特開2015−188278(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/047254(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/82
H01L 35/34
H01L 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方向の内部磁化を有する磁性膜を有し、前記磁性膜の一方の面に前記磁性膜と磁気的に結合した第一の伝導膜と、前記磁性膜のもう一方の面に前記磁性膜と磁気的に結合した第二の伝導膜とを備え、
前記第一、第二の伝導膜はいずれも、少なくとも一部にスピン軌道相互作用を有する材料を含み、スピン軌道相互作用の大きさに関係するスピンホール角を有し、前記スピンホール角が互い異なる符号であり、
前記第一の伝導膜、前記第二の伝導膜、電気的コンダクタンスを変化させることができる制御機構、及び電源が直列の閉回路を構成する可変断熱素子。
【請求項2】
前記第一、第二の伝導膜が一端で電気的に接続されている請求項1に記載の可変断熱素子。
【請求項3】
前記第一の伝導、及び第二の伝導を覆う絶縁性の保護膜を有する請求項1または2に記載の可変断熱素子。
【請求項4】
前記絶縁性の保護膜は、少なくとも一方向の内部磁化を有する磁性膜で前記第一の伝導、及び第二の伝導に磁気的に結合している請求項に記載の可変断熱素子。
【請求項5】
前記第一伝導膜、前記磁性膜、前記第二の伝導膜が複数積層している請求項1からのいずれか一項に記載の可変断熱素子。
【請求項6】
請求項1からのいずれか一項に記載の可変断熱素子の制御機構を短絡状態とすることで前記可変断熱素子の熱抵抗が高い状態にするか、または前記制御機構を開放状態とすることで前記の熱抵抗が前記短絡状態よりも低い状態にすることを特徴とする可変断熱素子の駆動方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の可変断熱素子の駆動方法であって、前記電源から前記直列の閉回路に流す電流によって生じた温度勾配の高温側を、放熱したい箇所に接触させる可変断熱素子の駆動方法。
【請求項8】
支持体上に、少なくとも一部にスピン軌道相互作用を有する材料を含み、スピン軌道相互作用の大きさに関係する第1のスピンホール角を有する第一の伝導膜を形成し、前記第一の伝導膜上に、少なくとも一方向の内部磁化を有し、前記第一の伝導膜と磁気的に結合した磁性膜を形成し、前記磁性膜上に少なくとも一部にスピン軌道相互作用を有する材料を含み、スピン軌道相互作用の大きさに関係し、前記第1のスピンホール角とは異なる符号の第2のスピンホール角を有し、前記磁性膜と磁気的に結合した第二の伝導膜を形成し、
前記第一の伝導膜及び前記第二の伝導膜接続
前記第一の伝導膜、前記第二の伝導膜、電気的コンダクタンスを変化させることができる制御機構及び電源を、直列の閉回路を構成するように接続することを特徴とする可変断熱素子の形成方法。
【請求項9】
少なくとも一方向の内部磁化を有する磁性膜を有し、前記磁性膜の一方の面に前記磁性膜と磁気的に結合した第一の伝導膜と、前記磁性膜のもう一方の面に前記磁性膜と磁気的に結合した第二の伝導膜とを備え、
前記第一、第二の伝導膜はいずれも、少なくとも一部にスピン軌道相互作用を有する材料を含み、スピン軌道相互作用の大きさに関係するスピンホール角を有し、前記スピンホール角が互いに異なる符号であり、前記第一の伝導膜、前記第二の伝導膜、電気的コンダクタンスを変化させることができる制御機構と、が閉回路を構成可能であり、
前記第一の伝導膜、及び第二の伝導膜を覆い、少なくとも一方向の内部磁化を有する絶縁性の保護膜を有する可変断熱素子。
【請求項10】
少なくとも一方向の内部磁化を有する磁性膜を有し、前記磁性膜の一方の面に前記磁性膜と磁気的に結合した第一の伝導膜と、前記磁性膜のもう一方の面に前記磁性膜と磁気的に結合した第二の伝導膜とを備え、
前記第一、第二の伝導膜はいずれも、少なくとも一部にスピン軌道相互作用を有する材料を含み、スピン軌道相互作用の大きさに関係するスピンホール角を有し、前記スピンホール角が互いに異なる符号であり、
前記第一の伝導膜、前記第二の伝導膜、電気的コンダクタンスを変化させることができる制御機構及び電源、が直列の閉回路を構成可能とする可変断熱素子の駆動方法であって、
前記電源から前記直列の閉回路に流す電流によって生じた温度勾配の高温側を、放熱したい箇所に接触させる可変断熱素子の駆動方法。
【請求項11】
少なくとも一方向の内部磁化を有する磁性膜を有し、前記磁性膜の一方の面に前記磁性膜と磁気的に結合した第一の伝導膜と、前記磁性膜のもう一方の面に前記磁性膜と磁気的に結合した第二の伝導膜とを備え、
前記第一、第二の伝導膜はいずれも、少なくとも一部にスピン軌道相互作用を有する材料を含み、スピン軌道相互作用の大きさに関係するスピンホール角を有し、前記スピンホール角が互いに異なる符号であり、
前記第一の伝導膜、前記磁性膜、前記第二の伝導膜が複数積層し、
前記第一の伝導膜、前記第二の伝導膜、電気的コンダクタンスを変化させることができる制御機構及び電源、が直列の閉回路を構成可能とする可変断熱素子の駆動方法であって、
前記電源から前記直列の閉回路に流す電流によって生じた温度勾配の高温側を、放熱したい箇所に接触させる可変断熱素子の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンゼーベック効果及びスピンペルチェ効果を用いた可変断熱素子とその駆動方法及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気伝導性を持つ固体材料に電流を流すことで、材料中の一定の方向に熱流を発生するペルチェ効果は、熱を移動する技術、ヒートポンプ技術として広く用いられている。
【0003】
一方、同じ材料に熱流を流す、すなわち材料の両端に温度差を発生させることで、材料中の一定の方向に電流を発生するゼーベック効果が起きることも広く知られている。
【0004】
特許文献1では、これらの効果を組み合わせることで、温度差のある環境で、材料に発生するゼーベック効果から電流を取り出し、その電流によってペルチェ効果を起こすことで、材料の見かけの熱抵抗が変化するエネルギー再利用型の熱制御システムが開示されている。
【0005】
具体的には、特許文献1は、モータと制動を行うブレーキとを備え、少なくともモータの冷却を行う可変熱抵抗を利用した冷却システムである。モータとブレーキとの間で熱の伝達を媒介する熱伝達経路に、通電状態に従って熱抵抗が変化するペルチェ素子が配置されている。ブレーキがモータより高温の場合は、ペルチェ素子の熱抵抗を大きくして、ブレーキからモータに対する熱伝達を遮断してモータの過熱や性能の低下を回避している。逆にモータがブレーキより高温の場合は、ペルチェ素子の熱抵抗を小さくして、モータからブレーキへの熱伝達を促進してモータを冷却し、また、ブレーキの温度をモータの熱で速やかに上昇させてブレーキ性能を確保している。ペルチェ素子はN型半導体とP型半導体を電極によってπ型に接続したものである。
【0006】
また近年では、固体中の電子スピンを利用した熱電効果であるスピンゼーベック効果と、その逆効果であるスピンペルチェ効果が、非特許文献1、非特許文献2でそれぞれ開示されている。非特許文献1には、磁性絶縁体LaYFe12に温度勾配を加えると、スピンゼーベック効果によって熱流がスピン圧に変換され、磁性絶縁体上に形成したPtがスピン圧を電圧に変換することが記載されている。また非特許文献2には、フェリ磁性絶縁体YIG(YFe12)とPtの界面を通して流れるスピン流によって熱流が発生する、スピンペルチェ効果が生じることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−178466号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Uchida et al., “Spin Seebeck insulator”, Nature Materials, 2010,vol.9,p.894.
【非特許文献2】Flipse et al., “Observaion of the Spin Peltier Effect for Magnetic Insulator”, Physical Review Letters, 2014, vol.113, p.027601.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1ではペルチェ素子を用いているため、N型半導体とP型半導体を電極によってπ型に接続する必要があり構造が複雑になる。スピンペルチェ効果を利用するスピンペルチェ素子は、ペルチェ素子と比較して、簡易な構造を持ち、壊れにくく、より安価に作製できるメリットが期待されている。しかし熱電変換の実効効率の点で大きく劣っている。またスピンペルチェ効果の逆効果であるスピンゼーベック効果を発現するスピンゼーベック素子は、ゼーベック効果を発現するゼーベック素子よりも、簡易な構造を持ち、壊れにくく、より安価に作製できるメリットが期待されている。しかし、これも熱電変換の実効効率の点で大きく劣っている。
【0010】
そのためスピンペルチェ効果、スピンゼーベック効果を用いた可変断熱素子は実用化に至っていない。本発明の目的は、この問題を解決し、スピンペルチェ効果、スピンゼーベック効果を用いた可変断熱素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、少なくとも一方向の内部磁化を有する磁性膜を有し、前記磁性膜の一方の面に前記磁性膜と磁気的に結合した第一の伝導膜と、前記磁性膜のもう一方の面に前記磁性膜と磁気的に結合した第二の伝導膜とを備え、
前記第一、第二の伝導膜はいずれも、少なくとも一部にスピン軌道相互作用を有する材料を含み、スピン軌道相互作用の大きさに関係するスピンホール角を有し、前記スピンホール角が互い異なる符号であり、前記第一の伝導膜、前記第二の伝導膜、電気的コンダクタンスを変化させることができる制御機構と、が閉回路を構成可能であることを特徴とする可変断熱素子である。
【0012】
また本発明は、このような可変断熱素子の制御機構を短絡状態とすることで前記可変断熱素子の熱抵抗が高い状態にするか、または前記制御機構を開放状態とすることで前記の熱抵抗が前記短絡状態よりも低い状態にすることを特徴とする可変断熱素子の駆動方法である。
【0013】
また本発明は、支持体上に、少なくとも一部にスピン軌道相互作用を有する材料を含み、スピン軌道相互作用の大きさに関係する第1のスピンホール角を有する第一の伝導膜を形成し、前記第一の伝導膜上に、少なくとも一方向の内部磁化を有し、前記第一の伝導膜と磁気的に結合した磁性膜を形成し、前記磁性膜上に少なくとも一部にスピン軌道相互作用を有する材料を含み、スピン軌道相互作用の大きさに関係し、前記第1のスピンホール角とは異なる符号の第2のスピンホール角を有し、前記磁性膜と磁気的に結合した第二の伝導膜を形成し、
前記第一の伝導膜及び前記第二の伝導膜に接続することを特徴とする可変断熱素子の形成方法、である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、スピンペルチェ効果、スピンゼーベック効果を用いた可変断熱素子を得ることができる。
【0015】
また本発明の可変断熱素子の形成方法では、素子の一部もしくは全てについて、簡便な塗布プロセス等を適用すれば一括生産を行うことが可能で、製作コストを大きく低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る可変断熱素子の構造を概略的に示す断面図である。
図2】本発明の実施例1に係る可変断熱素子の製造手順を概略的に示す上面図である。
図3】本発明の実施例1に係る可変断熱素子の製造手順を概略的に示す上面図である。
図4】本発明の実施例1に係る可変断熱素子の製造手順を概略的に示す上面図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る可変断熱素子の構造を概略的に示す断面図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係る可変断熱素子の構造を概略的に示す断面図である。
図7】本発明の第4の実施形態に係る可変断熱素子の構造を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る可変断熱素子とその製造方法について、図を参照しながら詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。
(第1の実施形態)
<可変断熱素子の構造>
まず、第1の実施形態の可変断熱素子の構造を、図1を参照して説明する。
【0018】
図1は、本実施形態の可変断熱素子の構造を概略的に示す断面図である。本実施形態の可変断熱素子は、一定の保持力と内部磁化を有する磁性膜101を有する。磁性膜101の一方の面(図では上面)には第一の伝導膜102を形成する。また磁性膜101の他方の面(図では下面)には第二の伝導膜103を形成する。第一の伝導膜102、第2の伝導膜103とも平面形状は矩形状である。
【0019】
第一の伝導膜102と第二の伝導膜103の両端には、コンタクト用のパッド104、105、106が、スクリーン印刷などのパターニング手法を用いて形成してある。また、パッド105によって、第一の伝導膜102と第二の伝導膜103は電気的に接続している。さらに、パッド104、106はそれぞれ制御機構107に接続している。
<各要素を構成する材料と機能>
磁性膜101は、スピンゼーベック効果を発現する材料で形成される。すなわち、磁性膜101は、熱流Qの入力に比例して、内部にスピン流JS0、JS1を生じる。
【0020】
磁性膜101は、強磁性やフェリ磁性、反強磁性などの磁性を有し、磁性材料固有のネール温度や、キュリー温度以上となる温度域などの特定の条件を除けば少なくとも一方向の磁化を有する。本実施形態では図1の紙面に垂直な方向に磁化されている。材質は、絶縁体、もしくは絶縁性の高い材料であることが好ましい。
【0021】
例えば、磁性絶縁体であれば、イットリウム鉄ガーネット(YIG,YFe12)、ビスマス(Bi)をドープしたBiYFe12、ランタン(La)を添加したLaYFe12、その他f電子を有する元素RでYの一部を置換したR3−xFe12、また遷移金属元素MでFeの一部を置換したMFe5−x12が挙げられる。また、マグネタイト(Fe)や、組成MFe(Mは金属元素で、Fe、Ni、Zn、Coのいずれか一つ以上を含む)からなるスピネルフェライト材料が挙げられる。
【0022】
また、磁性半導体であれば、組成CuMOやSrMO(Mは金属元素で、Mn、Ni、Co、Feのいずれかを含む)、Feなどの、Fe、Co、Niから選択される少なくとも一つを含む半導体的性質を持つ磁性酸化物(磁性酸化物半導体)が挙げられる。尚、電子による熱伝導を抑えるという観点から言えば、絶縁体や半導体を用いることが望ましい。
【0023】
第一の伝導膜102には、逆スピンホール効果、もしくはスピン軌道相互作用を発現する導電体を用いることが好ましい。逆スピンホール効果の大きさは、スピンホール伝導度/電気伝導度で規定され、実効的には−1〜+1の間を取るスピンホール角と呼ばれる材料固有の値で表すことができる。
【0024】
本実施形態の可変断熱素子では、磁性膜101中の温度勾配に沿って、温度の高い方から低い方へ流れる熱スピン流が発生し、さらにスピン注入と呼ばれる過程を経て、最終的に伝導膜へのスピン角運動量の流入が生じる。
【0025】
スピン注入とは、磁性膜101において伝導膜102の界面近傍で磁化方向を中心に歳差運動するスピンが、伝導膜102中の伝導電子と相互作用し、スピン角運動量を受け渡したり、受け取ったりする現象である。
【0026】
その結果、伝導膜102中のスピン注入界面付近には、スピンを持った伝導電子が移動し純スピン流が生成する。この純スピン流は、アップスピンとダウンスピンを持った伝導電子が互いに逆方向に同量流れる。その結果、電荷移動は存在しないが、両スピンは符号と移動する向きの両方が互いに異なるために加算された結果として、スピン角運動量だけが流れる現象である。
【0027】
そして、この純スピン流が逆スピンホール効果により電流に変換される。
【0028】
本明細書では、このスピン注入現象が起こりうる状態を磁気的に結合していると表現する。このスピン注入現象は、磁性膜101と伝導膜102が直接接触している場合、もしくは直接接触はしていなくても、スピン角運動量が伝達しうる程度に接近している場合に生じるものである。すなわち、磁性膜101と伝導膜102の間に空隙が存在する場合や、中間層が挿入されている場合であっても、スピン注入現象が起こり得る場合は、磁気的な結合があると考える。
【0029】
すなわち、第一の伝導膜102は、磁性膜101に磁気的に結合しており、スピンゼーベック効果により発生したスピン流JS0が界面を超えて伝導体側へ流れ込み、逆スピンホール効果による起電力に相当する熱起電力Eを発生する。
【0030】
スピン流から電流への変換効率は、大きな逆スピンホール効果を持つ材料でより大きくなる。例えば、逆スピンホール効果の比較的大きなAuやPt、Pd、Biなどの遷移金属、d軌道やf軌道を有する遷移金属、またはそれらを含有する合金材料を用いる。また、Cuなどの一般的な金属膜材料に、Feや、Irなどの材料を0.5〜10mol%程度ドープするだけでも、同様の効果を得ることができる。
【0031】
また、伝導膜102として磁性を持つ材料を用いることも効果的である。この場合、異常ネルンスト効果と呼ばれる磁性起因の熱電効果を生じる。異常ネルンスト効果による起電力の向きは、異常ネルンスト係数の符号によって逆スピンホール効果と同一、もしくは反並行となる。
【0032】
通常は両効果の起電力の向きが同一方向となる材料を用いることが好ましい。ただし、両効果の符号が異なっても、結果的に重なり合って現れる熱起電力Eが大きくなる材料を用いることが適切である。
【0033】
さらに伝導膜102は、ITO(Indium Tin Oxide=酸化インジウムスズ)などの酸化物伝導体や、組成CuMOやSrMO(Mは金属元素で、Mn、Ni、Co、Feのいずれかを含む)などの磁性酸化物半導体であってもよい。
【0034】
第二伝導膜103にも、上記の伝導膜102に用いる材料と同様に逆スピンホール効果、もしくはスピン軌道相互作用を発現する導電体を用いることができる。ただし、第一の伝導膜102が持つスピンホール角と異なる符号のスピンホール角を有する導電体材料を用いることが好ましい。第二伝導膜103では、磁性膜101でスピンゼーベック効果により発生するスピン流JS1を補償するように、第二伝導膜103から界面を超えて磁性膜101側へスピン流が流れ出し、結果として逆スピンホール効果による熱起電力Eを発生するためである。
【0035】
例えば、第一の伝導膜102にPtやPd、Niなどの金属を主に含む材料を用いた場合、第二の伝導膜103には、遷移金属の中でもW、Ta、Mo、Nb、Cr、V、Tiを用いると、第一の伝導膜102に用いたPtや、Pd、Ni、これらを含有する合金とは逆符号の電圧を得ることが出来る。すなわち、逆スピンホール効果によって発生する電流の向きが反対になる。
【0036】
また、第一の伝導膜102と同様に、第二の伝導膜103にも母材の金属に不純物を添加した合金材料や、磁性を持つ材料を用いることができる。
【0037】
パッド104、105,106には、電気伝導性が高い材料を用いることができる。さらに、パッド104、105,106は単一の材料で構成しても良いし、複合材料を用いることも可能である。さらに、第一の伝導膜102や、第二の伝導膜103の一部が、パッド104,105、106の機能の一部若しくは全てを担うように設計することも可能である。
【0038】
例えば磁性膜101、第一の伝導膜102、第二の伝導膜103との密着性を高めるため、それぞれの材料との界面には密着性の高い材料を用い、その他は伝導性の高い材料を用いることができる。また、表面の保護のために表面全体を化学的に安定な材料や、耐摩耗性に優れた材料で覆うことができる。
【0039】
制御機構107は、パッド104と106とに接続し、何らかの外部要因を反映して、パッド104と106の間を流れる電流量を制御する機構を有する。
【0040】
例えば、外部からの制御により短絡と開放の切り替えができるスイッチを用いることができる。
【0041】
また、制御機構107として、バイモルフスイッチなどの、環境温度に依存して、開放、短絡を自発的に変化させられる素子を用いることができる。この場合、外部制御無しで閾値として設定する温度付近で解放、短絡が切り替わる素子を実現できる。
【0042】
また、PTC(Positive Temperature Coefficient)サーミスタやNTC(Negative Temperature Coefficient)サーミスタ等などの、環境温度に依存して電気的コンダクタンスを自発的に変化させられる素子を用いることができる。この場合、外部制御無しで基準となる温度付近で温度に依存して断熱の効果が変化する素子を実現できる。
【0043】
また、温度だけでなく、外部の光や音、湿度などの環境条件を計測するセンサを用いることで、外部環境情報を反映して動作する素子を実現することができる。
【0044】
また、電流の整流機能を持つダイオードなどを用いた場合、熱流がある一方向に流れたときのみ可変断熱の効果が得られる素子を実現できる。
【0045】
さらに、制御機構107には、素子全体の状態を把握するための温度センサや電流センサ、電圧センサ、磁気センサなどの計測素子を備え、制御機構の動作にその情報を反映させることができる。また、素子全体の状態に応じて、外部の電流源から電流を取り込む形で、素子を動作させることも可能である。
【0046】
以上の要素から、制御機構107を介して、第一の伝導膜102と、第二の伝導膜103とが直列に接続する閉回路が構成される。
【0047】
制御機構107が短絡した状態を仮定すると、熱流入力Qに比例する熱起電力E+Eが発生する。さらに、制御機構107を含む閉回路全体のインピーダンスZにより決まる電流Iが閉回路に流れる。
【0048】
電流Iは、スピンゼーベック効果の逆効果に当たるスピンペルチェ効果による熱電変換により熱流を発生させる。
【0049】
すなわち、電流Iに起因して第一の伝導膜102ではスピンホール効果によるスピン流が生成し、磁性膜101に流れ込む成分JsAを発生する。さらにJsAは、スピンペルチェ効果によって熱流Qを生む。また、第二の伝導膜103では、磁性膜101から流れ出すスピン流成分JsBを発生し、JsBによる熱流Qを生む。
すなわち、制御機構107の持つインピーダンスがほぼゼロに等しい時、熱流Q、Qはともに最大となり素子の実効的な熱抵抗が大きくなる。逆に制御機構107を開放した状態にするなどしてインピーダンスが無限大に大きい時、Q、Qは消失し、素子は材料本来の熱抵抗を持つ状態となる。素子に加わる温度差を利用した熱電効果によって、素子の熱抵抗を、素子を構成する材料自体の熱抵抗よりも大きくすることができ、断熱性能を高めることができる。断熱性能を抑え放熱を行いたい場合には、熱抵抗の増加を抑制することができる。また、熱抵抗の増減を適切に制御することができる。
【0050】
以上述べたように、本実施形態による可変断熱素子では、既存のスピンゼーベック、スピンペルチェ効果を用いた素子と比較して、伝導膜が磁性膜の両面を覆っているため、片面だけを覆っている場合と比較して、単純計算では約2倍の熱起電力が得られる。従ってスピンペルチェ効果、スピンゼーベック効果を用いた可変断熱素子を提供することができる。また伝導膜が磁性膜の両側を覆うだけであるので構造も簡単である。
【0051】
さらに、本実施形態では符号の異なる熱起電力を発生する二種類の伝導膜を利用するため、それぞれの伝導膜が電気的に接続した素子構造をより簡便に実現でき、製造コストの低減を実現できる。

<可変断熱素の形成方法>
次に、本実施形態の可変断熱素子の形成方法を、図2乃至図4を参照して説明する。
【0052】
本実施形態の可変断熱素子は、支持体200上に成膜される。
【0053】
まず、支持体200上に第一の伝導膜202を図2に示すような、矩形の一部が飛び出た平面形状となるように成膜する。この飛び出た部分がパッド206になる。その成膜方法は、スパッタ法、蒸着法、メッキ法、スクリーン印刷法、インクジェット法、スプレー法及びスピンコート法などのいずれかの方法で成膜する方法が挙げられる。また、ナノコロイド溶液の塗布・焼結などを用いることができる。
【0054】
図2に示す形状を形成する方法には、工業的に用いるパターニング方法を適用することが可能である。例として、ステンシル法、直接描画法、リソグラフィ法、マスクエッチング法などが挙げられる。
【0055】
続いて、上記パターニング方法を用いるなどして、図3に示す平面形状の通り磁性膜201を成膜する。磁性膜201は平面視では第一の伝導膜202と大部分重なるが、第一の伝導膜202の前述の飛び出た部分とその反対側の端の部分は重なっていない。この反対側の端の部分がもう一つのパッドになる。
【0056】
磁性膜201の形成方法としては、スパッタ法、有機金属分解法(MOD(Metal Organic Decomposition)法)、ゾルゲル法、エアロゾルデポジション法(AD(Aerosol Deposition)法)、フェライトめっき法、液相エピタキシー法、固相エピタキシー法、気相エピタキシー法、ディップ法、スプレー法、スピンコート法及び印刷法などのいずれかの方法を用いて成膜する方法が挙げられる。
【0057】
さらに、第二の伝導膜203を、磁性膜201と同様の手法を用いるなどして、図4に示す形状つまり第一の伝導膜202を左右反転した平面形状に成膜する。
【0058】
最後に、伝導膜202と伝導膜203に制御機構207を接続することで可変断熱素子が得られる。
【0059】
本実施形態の方法では、素子の一部もしくは全てについて、簡便な塗布プロセス等を適用すれば一括生産を行うことが可能で、製作コストを大きく低減することができる。また、薄膜シート型の素子を広い面積に渡って適用することも可能で、形状の自由度を持ち合わせている。支持体200を薄くすれば、平面だけなく曲がった面や複雑な形状を持つ面にも実装可能となる。
【0060】
図1で説明したパッド104の部分は、伝導膜202の中で磁性膜201にも伝導膜203にも重ならない部分(図4のパッド204)が担っている。また図1のパッド105の部分は、伝導膜202と伝導膜203が直接重なる部分(図4のパッド205)が担っている。さらにパッド106の部分は、伝導膜203の中で磁性膜201にも伝導膜202にも重ならない部分(図4のパッド206)が担っている。
【0061】
以下、第1の実施形態について、実施例を用いてさらに具体的に説明する。
(実施例1)
本実施形態の具体的な例として実施例1を、図2乃至図4を参照して説明する。
【0062】
まず、支持体200として大きさ10cm×10cm、厚さ25μmのポリイミドフィルムを準備した。
【0063】
続いて、マグネトロンスパッタ法を用いて、支持体200上に第一の伝導膜202としてWを、ステンシルマスクを用いて凡そ幅8cm×長さ8cmの大きさで、厚さ5nm分を蒸着した。
【0064】
次に、既知のフェライト薄膜製造法を用いて、図2の可変断熱素子に用いる磁性膜101として、Ni0.1Zn0.1Fe1.8膜を作製した。磁性膜のサイズは凡そ幅9cm×長さ6cm、膜厚は1umとした。
【0065】
さらに、マグネトロンスパッタ法を用いて、第二の伝導膜203としてPtを、ステンシルマスクを用いて凡そ幅8cm×長さ8cmの大きさで、厚さ5nm分を蒸着した。
【0066】
最後に、制御機構207として外部からオンとオフの制御ができるリレーを接続し、本実施形態の可変断熱素子を作製した。
【0067】
この可変断熱素子を、温度が摂氏23度の環境温度にある基準熱浴と、摂氏53度の高温側の熱浴の間に挟んだとき、素子と各熱浴との界面熱抵抗、支持体の熱抵抗などを考慮し、可変断熱素子自身には約1[mK]の温度差が安定的に生じる状況を考える。
【0068】
制御機構207が開放状態の時、素子の厚さの大部分を占める磁性膜201には、約10[kW/m]の熱流束密度で熱流が流れ、熱抵抗θは約0.1[μK/(W/m)]となる。
【0069】
制御機構207が短絡状態となった場合、実効的な熱抵抗θは、フーリエの関係式にスピンペルチェ熱流成分を加えた式 θ=1[mK]/(10[MW/m]+Q+Q)で表すことができる。この時、Q、Q共にQと逆符号となるためθはθよりも大きくなる。
【0070】
すなわちリレーで構成されるスイッチを操作することによって、可変断熱素子の熱抵抗が高い状態、もしくは低い状態に設定することができる。
(第2の実施形態)
図5の断面図を用いて第2の実施形態を説明する。
【0071】
本実施形態の可変断熱素子は、実施例1に記載の支持体が電気伝導性を持つ材料である場合や、可変断熱素子の伝導膜が表面に露出しないように、絶縁性の保護膜で被覆する必要がある場合に対応することを目的としている。
【0072】
すなわち、実施例1の可変断熱素子に加えて、絶縁や保護のための被覆層を設けている物であり、さらに被覆層に磁性絶縁体を用いることで、付加的なスピンペルチェ効果によるより大きな断熱可変効果が得られることを特徴としている。
【0073】
本実施形態の可変断熱素子は、図5に示すように電気伝導性を持つ支持体500、それぞれ実施例1と同様の磁性膜501、第一の伝導膜502、第二の伝導膜503、制御機構507として、外部からのON/OFF制御が可能なスイッチを備えている。
【0074】
さらに、可変断熱素子と支持体500との間に保護用磁性膜508を、可変断熱素子の表面に保護用磁性膜509を備えている。二つの保護用磁性膜は、材料として磁性膜501と同じフェライト膜を用いている。
【0075】
その結果、スピンゼーベック効果によって生じた電流は、第一、第二の伝導膜から素子の外部に散逸することなく、効果的にスピンペルチェ効果による熱流束の発生に寄与することができるため効果的である。
【0076】
また保護用磁性膜に、磁性膜501と同様に磁性を持ち熱スピン流の伝搬を実現する材料を用いた場合、両方の保護用磁性膜からのスピン流による熱起電の電流成分が加わるためより効果的である。
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1、第2の実施形態、実施例1で述べた可変断熱素子をシールド材に用いた例を説明する。
【0077】
例えば、人工衛星や宇宙探査機の内部温度を一定に保つ目的で機体を覆うシールド材は、太陽からの輻射熱流入や、太陽の陰になっている部分からの輻射熱流出を最小限にするために、材料の熱抵抗を高くすることが一般的に好ましい。逆にシールドの内部で発熱の大きな機器を動作させる場合には、逆に熱抵抗を低減して放熱を促すことが好ましい。熱抵抗を高くしたい場合には可変断熱素子を短絡し、逆に熱抵抗を低減したい場合には開放する。そのためには制御機構として、例えば前述のバイモルフスイッチ、PTCサーミスタ、NTCサーミスタ等を用いることで、環境温度に依存して自動的に開放、短絡を切り替えるようにすればよい。
【0078】
可変断熱素子は、そのような場合に通常の材料では実現が困難な、固体素子による熱抵抗変化機能を提供することが可能で、特にスピンゼーベック、スピンペルチェ効果を用いると薄膜やシート状の素子形状を持つ特徴を生かして、シールド材へ容易に実装することが可能である。
【0079】
さらに、第2の実施形態で説明した可変断熱素子は磁性膜と導電性の膜からなる多層構造を有している。
【0080】
図6に示すように支持体600の上に、それぞれ実施例1と同様の材料で形成される第一の磁性膜601、第二の磁性膜602、第三の磁性膜603、さらに実施例1と同様の第一の伝導材料604、第一の磁性材料と異なる符号のスピンホール角を有する第二の伝導材料605が図6に示すように積層構造を形成している。
【0081】
この時、各々の磁性膜の上面と下面には異なる伝導材料からなる膜が存在する。すなわち、積層方向へ第一の伝導材料604と第二の伝導材料605は交互に存在し、また交互に接続している。交互に接続する箇所は、素子上方から見て互い違いにしており、重ならないようにしている。
【0082】
さらに、伝導材料は外部の制御機構607と閉回路を形成している。また、素子全体は保護用磁性膜606で覆われ、絶縁が保たれている。
【0083】
複数の磁性材料、伝導材料で形成される積層構造は、その周期、材料の組み合わせ等に対応して、光の反射膜、反射防止膜としても機能する。反射膜は、膜を突き抜ける光に対して、透過防止膜として機能する。
【0084】
すなわち、人工衛星や宇宙探査機に用いるシールド材としては、波長が約500nm付近にピークを持つ太陽光スペクトルによる熱流入を抑えるために、可変断熱素子に用いる各材料の屈折率と膜厚を最適化して、反射効率が高くなるように設計するとよい。
(第4の実施形態)
図7の断面図を用いて本実施形態を説明する。本実施形態は、第3の実施形態で述べた、複数の磁性材料、伝導材料で形成される積層構造を持つ可変断熱素子の制御機構707に、直列に外部電源710を接続している。
【0085】
第2の実施形態2で説明した人工衛星や宇宙探査機の機体を覆うシールド材は、シールドの内部で発熱の大きな機器を動作させる場合には、放熱効率を最大にすることが好ましい。
【0086】
この場合、スピンゼーベック効果により素子内部で発生したエネルギーによる断熱性能変化分だけでなく、図7に示すように、多層型可変断熱素子701に外部電源710を接続して、外部エネルギーによる積極的な放熱を行うことができる。
【0087】
外部電源710によって多層型可変断熱素子701に電流を流す。外部電源710の制御機構のある側を+、その反対側を−とすると、電流は上層の伝導膜からその下層の伝導膜、・・・と流れ、最下層の伝導膜から外部電源710に戻る。制御機構は短絡しておく。保護抵抗を入れてもよい。
【0088】
電流を流すとスピンホール効果によって、伝導膜に挟まれた磁性膜にスピン流が生じ、その結果熱流(温度勾配)が発生する。つまり図1で述べたのと逆工程によって多層型可変断熱素子701の膜厚方向に温度勾配が発生する。温度勾配の高温側を放熱したい箇所、例えば電子機器の表面に接触させると、電子機器から放熱させることが可能となる。外部電源710から流す電流を調整することによってスピン流の大きさつまり温度勾配の大きさを調整することができるので、断熱性能の調整が可能になる。
【0089】
なお可変断熱素子は多層型に限らず、図1に示したような単層型可変断熱素子を用いてもかまわない。 上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
少なくとも一方向の内部磁化を有する磁性膜を有し、前記磁性膜の一方の面に前記磁性膜と磁気的に結合した第一の伝導膜と、前記磁性膜のもう一方の面に前記磁性膜と磁気的に結合した第二の伝導膜とを備え、
前記第一、第二の伝導膜はいずれも、少なくとも一部にスピン軌道相互作用を有する材料を含み、スピン軌道相互作用の大きさに関係するスピンホール角を有し、前記スピンホール角が互い異なる符号であり、前記第一の伝導膜、前記第二の伝導膜、電気的コンダクタンスを変化させることができる制御機構と、が閉回路を構成可能であることを特徴とする可変断熱素子。
(付記2)
前記第一の伝導膜、前記第二の伝導膜及び前記制御機構が直列の閉回路を構成する付記1に記載の可変断熱素子。
(付記3)
前記第一、第二の伝導膜が一端で電気的に接続されている付記1または2に記載の可変断熱素子。
(付記4)
前記磁性膜は絶縁体または半導体である付記1から3のいずれか一項に記載の可変断熱素子。
(付記5)
前記第一、第二の伝導膜が磁性膜である付記1から4のいずれか一項に記載の可変断熱素子。
(付記6)
前記第一の伝導膜、前記第二の伝導膜、前記制御機構、及び電源が直列の閉回路を構成する付記1から5のいずれか一項に記載の可変断熱素子。
(付記7)
前記第一の伝導体、及び第二の伝導体を覆う絶縁性の保護膜を有する付記1から6のいずれか一項に記載の可変断熱素子。
(付記8)
前記絶縁性の保護膜は、少なくとも一方向の内部磁化を有する磁性膜で前記第一の伝導体、及び第二の伝導体に磁気的に結合している付記7に記載の可変断熱素子。
(付記9)
前記第一伝導膜、前記磁性膜、前記第二の伝導膜が複数積層している付記1から8のいずれか一項に記載の可変断熱素子。
(付記10)
前記磁性膜、前記第一伝導膜、前記第二の伝導膜、前記保護膜の少なくともいずれか一つが、膜を突き抜ける光に対して、透過防止膜として機能する付記7から9のいずれか一項に記載の可変断熱素子。
(付記11)
前記可変断熱素子はシート状の支持体に形成されている付記1から10のいずれか一項に記載の可変断熱素子。
(付記12)
前記制御機構は開放と短絡の切り替えができるスイッチである付記1から11のいずれか一項に記載の可変断熱素子。
(付記13)
前記スイッチとして、温度に応じて開放と短絡が切り替わるスイッチを用いる付記12に記載の可変断熱素子。
(付記14)
前記制御機構として整流素子を設け、熱流がある一方向に流れたとき前記可変断熱素子の熱抵抗を高い状態にする付記1から11のいずれか一項に記載の可変断熱素子。
(付記15)
付記1から14のいずれか一項に記載の可変断熱素子の制御機構を短絡状態とすることで前記可変断熱素子の熱抵抗が高い状態にするか、または前記制御機構を開放状態とすることで前記の熱抵抗が前記短絡状態よりも低い状態にすることを特徴とする可変断熱素子の駆動方法。
(付記16)
前記可変断熱素子の熱抵抗が高い状態とは、前記熱抵抗が前記可変断熱素子を構成する材料の熱抵抗よりも高い状態である付記15に記載の可変断熱素子の駆動方法。
(付記17)
付記6から16のいずれか一項に記載の可変断熱素子の駆動方法であって、前記電源から前記直列の閉回路に流す電流によって生じた温度勾配の高温側を、放熱したい箇所に接触させる可変断熱素子の駆動方法。
(付記18)
支持体上に、少なくとも一部にスピン軌道相互作用を有する材料を含み、スピン軌道相互作用の大きさに関係する第1のスピンホール角を有する第一の伝導膜を形成し、前記第一の伝導膜上に、少なくとも一方向の内部磁化を有し、前記第一の伝導膜と磁気的に結合した磁性膜を形成し、前記磁性膜上に少なくとも一部にスピン軌道相互作用を有する材料を含み、スピン軌道相互作用の大きさに関係し、前記第1のスピンホール角とは異なる符号の第2のスピンホール角を有し、前記磁性膜と磁気的に結合した第二の伝導膜を形成し、
前記第一の伝導膜及び前記第二の伝導膜に接続することを特徴とする可変断熱素子の形成方法。
【符号の説明】
【0090】
101、201、501 磁性膜
102、202、502 第一の伝導膜
103、203、503 第二の伝導膜
104、105、106、205 パッド
107、207、507、607、707 制御機構
200、500、600 支持体
508、509、606 保護用磁性膜
601 第一の磁性膜
602 第二の磁性膜
603 第三の磁性膜
604 第一の伝導材料
605 第二の伝導材料
701 多層型可変断熱素子
710 外部電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7