【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度から平成29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「海洋エネルギー技術研究開発/海洋エネルギー発電システム実証研究/水中浮遊式海流発電」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転軸を含む発電用タービンと、前記回転軸の回転軸線に沿って配置され、前記発電用タービンが設けられたポッドと、を備える水中浮遊式発電装置の姿勢制御システムであって、
前記水中浮遊式発電装置の重心は前記回転軸線より下に位置しており、
前記水中浮遊式発電装置を係留するための係留ロープであって、前記係留ロープの一端は前記水中浮遊式発電装置における前記回転軸線よりも下でかつ前記水中浮遊式発電装置の前記重心よりも下の部分に設けられた1つ又は複数の係留点に接続されている、係留ロープと、
前記水中浮遊式発電装置の少なくともピッチ方向の傾斜角度を検出する検出部と、
前記発電用タービンに対して設けられ、前記発電用タービンの回転数を調整可能な回転数調整手段と、
前記検出部によって検出された前記傾斜角度に応じて前記回転数調整手段を制御し、前記発電用タービンの回転数を変更することにより、タービン推力を変化させ、前記水中浮遊式発電装置の垂直方向における前記回転軸線および前記重心の間の距離と前記タービン推力の変化量との積に応じた前記係留点周りのモーメントを発生させ、前記水中浮遊式発電装置のピッチ方向の姿勢を修正する制御部と、を備える水中浮遊式発電装置の姿勢制御システム。
前記水中浮遊式発電装置は、前記回転軸線方向に交差する方向において前記発電用タービンから離間して配置され、第2回転軸を含む第2発電用タービンと、前記第2回転軸の第2回転軸線に沿って配置され、前記第2発電用タービンが設けられた第2ポッドと、前記ポッドおよび前記第2ポッドを連結する連結部と、を更に備え、前記水中浮遊式発電装置の前記重心は前記第2回転軸線より下に位置しており、
前記水中浮遊式発電装置の前記係留点は、前記第2回転軸線よりも下の部分に設けられており、
前記第2発電用タービンに対して設けられ、前記第2発電用タービンの回転数を調整可能な第2回転数調整手段を更に備え、
前記制御部は、前記検出部によって検出された前記傾斜角度に応じて前記第2回転数調整手段を制御し、前記第2発電用タービンの回転数を変更することにより、第2タービン推力を変化させ、前記水中浮遊式発電装置の垂直方向における前記第2回転軸線および前記重心の間の距離と前記第2タービン推力の変化量との積に応じた前記係留点周りのモーメントを発生させ、前記水中浮遊式発電装置のピッチ方向の姿勢を修正する、請求項1に記載の水中浮遊式発電装置の姿勢制御システム。
回転軸を含む発電用タービンと、前記回転軸の回転軸線に沿って配置され、前記発電用タービンが設けられたポッドと、を備える水中浮遊式発電装置の姿勢制御システムであって、
前記発電用タービンは、ピッチ角度が可変な2枚のブレードを含み、
前記水中浮遊式発電装置の重心は前記回転軸線より下に位置しており、
前記水中浮遊式発電装置を係留するための係留ロープであって、前記係留ロープの一端は前記水中浮遊式発電装置における前記回転軸線よりも下でかつ前記水中浮遊式発電装置の重心よりも下の部分に設けられた1つ又は複数の係留点に接続されている、係留ロープと、
前記水中浮遊式発電装置の少なくともピッチ方向の傾斜角度を検出する検出部と、
前記発電用タービンに設けられ、前記2枚のブレードのピッチ角度を調整可能なピッチ角度調整装置と、
前記検出部によって検出された前記傾斜角度に応じて前記ピッチ角度調整装置を制御し、前記発電用タービンにおける前記2枚のブレードのピッチ角度を変更することにより、タービン推力を変化させ、前記水中浮遊式発電装置の垂直方向における前記回転軸線および前記重心の間の距離と前記タービン推力の変化量との積に応じた前記係留点周りのモーメントを発生させ、前記水中浮遊式発電装置のピッチ方向の姿勢を修正する制御部と、を備える水中浮遊式発電装置の姿勢制御システム。
前記水中浮遊式発電装置は、前記回転軸線方向に交差する方向において前記発電用タービンから離間して配置され、第2回転軸を含む第2発電用タービンと、前記第2回転軸の第2回転軸線に沿って配置され、前記第2発電用タービンが設けられた第2ポッドと、前記ポッドおよび前記第2ポッドを連結する連結部と、を更に備え、前記水中浮遊式発電装置の前記重心は前記第2回転軸線より下に位置しており、
前記第2発電用タービンは、ピッチ角度が可変な2枚の第2ブレードを含み、
前記水中浮遊式発電装置の前記係留点は、前記第2回転軸線よりも下の部分に設けられており、
前記第2発電用タービンに設けられ、前記2枚の第2ブレードのピッチ角度を調整可能な第2ピッチ角度調整装置を更に備え、
前記制御部は、前記検出部によって検出された前記傾斜角度に応じて前記第2ピッチ角度調整装置を制御し、前記第2発電用タービンにおける前記2枚の第2ブレードのピッチ角度を変更することにより、第2タービン推力を変化させ、前記水中浮遊式発電装置の垂直方向における前記第2回転軸線および前記重心の間の距離と前記第2タービン推力の変化量との積に応じた前記係留点周りのモーメントを発生させ、前記水中浮遊式発電装置のピッチ方向の姿勢を修正する、請求項3に記載の水中浮遊式発電装置の姿勢制御システム。
回転軸を含む発電用タービンと、前記回転軸の回転軸線に沿って配置され、前記発電用タービンが設けられたポッドと、を備える水中浮遊式発電装置の姿勢制御方法であって、
前記水中浮遊式発電装置の重心は前記回転軸線より下に位置しており、
前記水中浮遊式発電装置を係留するための係留ロープの一端は、前記水中浮遊式発電装置における前記回転軸線よりも下でかつ前記水中浮遊式発電装置の重心よりも下の部分に設けられた1つ又は複数の係留点に接続されており、
前記水中浮遊式発電装置の少なくともピッチ方向の傾斜角度を検出する検出ステップと、
前記傾斜角度に応じて、前記発電用タービンの回転数を変更することにより、タービン推力を変化させ、前記水中浮遊式発電装置の垂直方向における前記回転軸線および前記重心の間の距離と前記タービン推力の変化量との積に応じた前記係留点周りのモーメントを発生させ、前記水中浮遊式発電装置のピッチ方向の姿勢を修正する回転数変更ステップと、を含む、水中浮遊式発電装置の姿勢制御方法。
回転軸を含む発電用タービンと、前記回転軸の回転軸線に沿って配置され、前記発電用タービンが設けられたポッドと、を備える水中浮遊式発電装置の姿勢制御方法であって、
前記水中浮遊式発電装置の重心は前記回転軸線より下に位置しており、
前記発電用タービンは、ピッチ角度が可変な2枚のブレードを含み、
前記水中浮遊式発電装置を係留するための係留ロープの一端は、前記水中浮遊式発電装置における前記回転軸線よりも下でかつ前記水中浮遊式発電装置の重心よりも下の部分に設けられた1つ又は複数の係留点に接続されており、
前記水中浮遊式発電装置の少なくともピッチ方向の傾斜角度を検出する検出ステップと、
前記傾斜角度に応じて、前記発電用タービンにおける前記2枚のブレードのピッチ角度を変更することにより、タービン推力を変化させ、前記水中浮遊式発電装置の垂直方向における前記回転軸線および前記重心の間の距離と前記タービン推力の変化量との積に応じた前記係留点周りのモーメントを発生させ、前記水中浮遊式発電装置のピッチ方向の姿勢を修正するピッチ角度変更ステップと、を含む、水中浮遊式発電装置の姿勢制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水中浮遊式発電装置は、たとえば、ピッチ方向に傾斜し得る。従来、水中浮遊式発電装置がピッチ方向に傾斜した場合に、その姿勢を修正することに関しては、十分に検討されていない。従来の手法を用いてピッチ方向の姿勢を制御しようとしても、効率的な姿勢制御を実現することは難しい。
【0006】
たとえば、引用文献1に記載の装置では、深度の調整は可能であるが、ピッチ方向の姿勢の制御は不可能である。ピッチ方向の姿勢を制御するためには、たとえば水平尾翼を用いて揚力を発生させる機構が必要である。また、引用文献2に記載の装置では、プロペラの推力方向を変更する機構が必要である。そのために大きな動力が必要になると、その装置は、エネルギープラントとして適さないことになる。また、スイベル結合部を有する構造は、疲労破壊や漏水を招き得る。引用文献3に記載の装置では、荷物のヨー方向の姿勢が制御される。そのため、荷物の重心からずれた位置にプロペラや動力装置を設置する必要がある。その結果、定常状態において荷物のバランスを取ることは難しい。また、単発プロペラでは、反トルク成分を打ち消すことは難しい。その結果、プロペラが取り付けられた荷物は、ロール方向に傾き得る。
【0007】
本発明は、水中浮遊式発電装置がピッチ方向に傾斜した場合に、その姿勢を修正することができる水中浮遊式発電装置の姿勢制御システムおよび姿勢制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、回転軸を含む発電用タービンと、回転軸の回転軸線に沿って配置され、発電用タービンが設けられたポッドと、を備える水中浮遊式発電装置の姿勢制御システムであって、
水中浮遊式発電装置の重心は回転軸線より下に位置しており、水中浮遊式発電装置を係留するための係留ロープであって、係留ロープの一端は水中浮遊式発電装置における回転軸線よりも下でかつ水中浮遊式発電装置の重心よりも下の部分に設けられた1つ又は複数の係留点に接続されている、係留ロープと、水中浮遊式発電装置の少なくともピッチ方向の傾斜角度を検出する検出部と、発電用タービンに対して設けられ、発電用タービンの回転数を調整可能な回転数調整手段と、検出部によって検出された傾斜角度に応じて回転数調整手段を制御し、発電用タービンの回転数を変更することにより、タービン推力を変化させ、水中浮遊式発電装置の垂直方向における回転軸線および重心の間の距離とタービン推力の変化量との積に応じた係留点周りのモーメントを発生させ、水中浮遊式発電装置のピッチ方向の姿勢を修正する制御部と、を備える。
【0009】
この姿勢制御システムでは、係留ロープによって係留された水中浮遊式発電装置が水中を浮遊し、発電用タービンが回転することで、発電が行われる。制御部は、水中浮遊式発電装置のピッチ方向の傾斜角度に応じて、発電用タービンの回転数を変更する。発電用タービンの回転数が変更されると、発電用タービンの推力は変化する。ここで、係留ロープの一端は、水中浮遊式発電装置における回転軸線よりも下の部分に設けられた係留点に接続されている。このように係留点が下部に設けられた結果、回転軸線方向の推力は、係留点を中心にモーメントを発生させる。発生したモーメントは、ピッチ方向に関して、水中浮遊式発電装置の姿勢を安定させるように作用する。これにより、水中浮遊式発電装置のピッチ方向の姿勢が修正され得る。
【0010】
いくつかの態様において、水中浮遊式発電装置は、回転軸線方向に交差する方向において発電用タービンから離間して配置され、第2回転軸を含む第2発電用タービンと、第2回転軸の第2回転軸線に沿って配置され、第2発電用タービンが設けられた第2ポッドと、ポッドおよび第2ポッドを連結する連結部と、を更に備え
、水中浮遊式発電装置の重心は第2回転軸線より下に位置している。水中浮遊式発電装置の係留点は、第2回転軸線よりも下の部分に設けられている。姿勢制御システムは、第2発電用タービンに対して設けられ、第2発電用タービンの回転数を調整可能な第2回転数調整手段を更に備え、制御部は、検出部によって検出された傾斜角度に応じて第2回転数調整手段を制御し、第2発電用タービンの回転数を変更する
ことにより、第2タービン推力を変化させ、水中浮遊式発電装置の垂直方向における第2回転軸線および重心の間の距離と第2タービン推力の変化量との積に応じた係留点周りのモーメントを発生させ、水中浮遊式発電装置のピッチ方向の姿勢を修正する。この場合、発電用タービンの回転数と第2発電用タービンの回転数とが変更されるので、水中浮遊式発電装置のピッチ方向の姿勢のみならず、ロール方向の姿勢を制御することができる。
【0011】
本発明の別の態様は、回転軸を含む発電用タービンと、回転軸の回転軸線に沿って配置され、発電用タービンが設けられたポッドと、を備える水中浮遊式発電装置の姿勢制御システムであって、発電用タービンは、ピッチ角度が可変な2枚のブレードを含み、
水中浮遊式発電装置の重心は回転軸線より下に位置しており、水中浮遊式発電装置を係留するための係留ロープであって、係留ロープの一端は水中浮遊式発電装置における回転軸線よりも下でかつ水中浮遊式発電装置の重心よりも下の部分に設けられた1つ又は複数の係留点に接続されている、係留ロープと、水中浮遊式発電装置の少なくともピッチ方向の傾斜角度を検出する検出部と、発電用タービンに設けられ、2枚のブレードのピッチ角度を調整可能なピッチ角度調整装置と、検出部によって検出された傾斜角度に応じてピッチ角度調整装置を制御し、発電用タービンにおける2枚のブレードのピッチ角度を変更することにより、タービン推力を変化させ、水中浮遊式発電装置の垂直方向における回転軸線および重心の間の距離とタービン推力の変化量との積に応じた係留点周りのモーメントを発生させ、水中浮遊式発電装置のピッチ方向の姿勢を修正する制御部と、を備える。
【0012】
この姿勢制御システムでは、係留ロープによって係留された水中浮遊式発電装置が水中を浮遊し、発電用タービンが回転することで、発電が行われる。制御部は、水中浮遊式発電装置のピッチ方向の傾斜角度に応じて、2枚のブレードのピッチ角度を変更する。2枚のブレードのピッチ角度が変更されると、発電用タービンの推力は変化する。ここで、係留ロープの一端は、水中浮遊式発電装置における回転軸線よりも下の部分に設けられた係留点に接続されている。このように係留点が下部に設けられた結果、回転軸線方向の推力は、係留点を中心にモーメントを発生させる。発生したモーメントは、ピッチ方向に関して、水中浮遊式発電装置の姿勢を安定させるように作用する。これにより、水中浮遊式発電装置のピッチ方向の姿勢が修正され得る。
【0013】
いくつかの態様において、水中浮遊式発電装置は、回転軸線方向に交差する方向において発電用タービンから離間して配置され、第2回転軸を含む第2発電用タービンと、第2回転軸の第2回転軸線に沿って配置され、第2発電用タービンが設けられた第2ポッドと、ポッドおよび第2ポッドを連結する連結部と、を更に備え
、水中浮遊式発電装置の重心は第2回転軸線より下に位置している。第2発電用タービンは、ピッチ角度が可変な2枚の第2ブレードを含む。水中浮遊式発電装置の係留点は、第2回転軸線よりも下の部分に設けられている。姿勢制御システムは、第2発電用タービンに設けられ、2枚の第2ブレードのピッチ角度を調整可能な第2ピッチ角度調整装置を更に備え、制御部は、検出部によって検出された傾斜角度に応じて第2ピッチ角度調整装置を制御し、第2発電用タービンにおける2枚の第2ブレードのピッチ角度を変更する
ことにより、第2タービン推力を変化させ、水中浮遊式発電装置の垂直方向における第2回転軸線および重心の間の距離と第2タービン推力の変化量との積に応じた係留点周りのモーメントを発生させ、水中浮遊式発電装置のピッチ方向の姿勢を修正する。この場合、発電用タービンのブレードのピッチ角度と第2発電用タービンの第2ブレードのピッチ角度とが変更されるので、水中浮遊式発電装置のピッチ方向の姿勢のみならず、ロール方向の姿勢を制御することができる。
【0014】
いくつかの態様において、発電用タービンはポッドの回転軸方向における第1端に設けられており、係留点は、回転軸線方向における第1端とは反対側である第2端側の部分に設けられる。発電用タービンが、水流の向きを基準としてポッドの下流側に配置されるダウンウィンド型のタービンである場合、発電用タービンとは反対側である上流側に係留点が設けられることになる。この場合、推力は、より大きな復元モーメントを発生させる。これにより、姿勢の修正効果(たとえば応答性など)が高められる。
【0015】
いくつかの態様において、ポッドは円筒状をなしており、係留点は、ポッドの円筒面上に設けられる。係留点がポッドの円筒面上に設けられる場合、係留点が回転軸線方向におけるポッドの端面に設けられる場合に比して、推力は、より大きな復元モーメントを発生させる。これにより、姿勢の修正効果(たとえば応答性など)が高められる。
【0016】
本発明の更に別の態様は、回転軸を含む発電用タービンと、回転軸の回転軸線に沿って配置され、発電用タービンが設けられたポッドと、を備える水中浮遊式発電装置の姿勢制御方法であって、
水中浮遊式発電装置の重心は回転軸線より下に位置しており、水中浮遊式発電装置を係留するための係留ロープの一端は、水中浮遊式発電装置における回転軸線よりも下でかつ水中浮遊式発電装置の重心よりも下の部分に設けられた1つ又は複数の係留点に接続されており、水中浮遊式発電装置の少なくともピッチ方向の傾斜角度を検出する検出ステップと、傾斜角度に応じて、発電用タービンの回転数を変更することにより、タービン推力を変化させ、水中浮遊式発電装置の垂直方向における回転軸線および重心の間の距離とタービン推力の変化量との積に応じた係留点周りのモーメントを発生させ、水中浮遊式発電装置のピッチ方向の姿勢を修正する回転数変更ステップと、を含む。
【0017】
この姿勢制御方法によれば、発電用タービンの回転数の変更に基づいて発生する上述の推力と、水中浮遊式発電装置の下部に設けられた係留点との相互作用により、水中浮遊式発電装置のピッチ方向の姿勢を修正することができる。
【0018】
本発明の更に別の態様は、回転軸を含む発電用タービンと、回転軸の回転軸線に沿って配置され、発電用タービンが設けられたポッドと、を備える水中浮遊式発電装置の姿勢制御方法であって、
水中浮遊式発電装置の重心は回転軸線より下に位置しており、発電用タービンは、ピッチ角度が可変な2枚のブレードを含み、水中浮遊式発電装置を係留するための係留ロープの一端は、水中浮遊式発電装置における回転軸線よりも下でかつ水中浮遊式発電装置の重心よりも下の部分に設けられた1つ又は複数の係留点に接続されており、水中浮遊式発電装置の少なくともピッチ方向の傾斜角度を検出する検出ステップと、傾斜角度に応じて、発電用タービンにおける2枚のブレードのピッチ角度を変更することにより、タービン推力を変化させ、水中浮遊式発電装置の垂直方向における回転軸線および重心の間の距離とタービン推力の変化量との積に応じた係留点周りのモーメントを発生させ、水中浮遊式発電装置のピッチ方向の姿勢を修正するピッチ角度変更ステップと、を含む。
【0019】
この姿勢制御方法によれば、発電用タービンのブレードのピッチ角度の変更に基づいて発生する上述の推力と、水中浮遊式発電装置の下部に設けられた係留点との相互作用により、水中浮遊式発電装置のピッチ方向の姿勢を修正することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のいくつかの態様によれば、水中浮遊式発電装置のピッチ方向の姿勢を効率的に修正することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0023】
以下の説明において、「上流」または「下流」との語は、水の流れを基準として用いられる。「前」との語は、水の流れの上流側を意味し、「後」との語は、水の流れの下流側を意味する。たとえば、ダウンウィンド型のタービンが用いられる場合には、ポッドの後部側にブレード(翼)が配置される。「左」または「右」との語は、水の流れに対して垂直で且つ水平な方向を意味し、後方すなわち下流側から見た場合を基準として用いられる。「上」または「下」との語は、水中浮遊式発電装置1の姿勢が安定した状態における鉛直方向線を基準として用いられる。水中浮遊式発電装置1の姿勢に関する「ピッチ」や「ピッチング」との語は、ポッドの中心軸線に垂直で且つ水平な軸線、すなわち左右方向の軸線を中心とする回転を意味する。「ロール」との語は、ポッドの中心軸線に平行な軸線、すなわち前後方向の軸線を中心とする回転を意味する。
【0024】
図1および
図2を参照して、本実施形態の姿勢制御システムSが適用された水中浮遊式発電装置1について説明する。
図1に示されるように、水中浮遊式発電装置1は、たとえば海水中に設置されて浮遊し、海流を利用して発電を行う。水中浮遊式発電装置1は、左右に離間して配置された一対のポッドである第1ポッド2Aおよび第2ポッド2Bと、第1ポッド2Aおよび第2ポッド2Bを連結するクロスビーム(連結部)3とを備える。第1ポッド2Aは右側に配置されたポッドであり、第2ポッド2Bは左側に配置されたポッドである。第1ポッド2Aの後部には、第1発電用タービン4Aが設けられている。第2ポッド2Bの後部には、第2発電用タービン4Bが設けられている。以下の説明では、水中浮遊式発電装置1を海流発電装置1という。また、第1発電用タービン4Aおよび第2発電用タービン4Bを、それぞれ、第1タービン4Aおよび第2タービン4Bという。
【0025】
第1ポッド2Aは、第1タービン4Aを回転可能に支持しつつ、第1タービン4Aに適正な浮力を付与する。第2ポッド2Bは、第2タービン4Bを回転可能に支持しつつ、第2タービン4Bに適正な浮力を付与する。第1ポッド2Aおよび第2ポッド2Bは、円筒状をなしており、たとえば、同じ大きさおよび構造を有している。
【0026】
第1ポッド2Aおよび第2ポッド2Bの間には、これらを連結する構造体であるクロスビーム3が延在している(すなわち左右に横断するように延びている)。クロスビーム3は、前後方向に所定の長さを有し、所定の厚みを有する。クロスビーム3は、浮遊する海流発電装置1の姿勢を安定させるべく、たとえば翼形状をなしている。クロスビーム3の左右の両端は、たとえば、第1ポッド2Aおよび第2ポッド2Bの胴部の略中央にそれぞれ固定されている。なお、クロスビーム3が固定される位置は、上記の位置に限られない。クロスビーム3は、ポッドの上部または下部に固定されてもよいし、ポッドの前部または後部に固定されてもよい。クロスビーム3は、その延在方向(すなわち左右方向)において等しい断面形状を有してもよく、延在方向において変化する断面形状を有してもよい。クロスビーム3の中央付近に、1又は複数の物体が設けられてもよい。また、この物体から係留索が接続されていてもよい。
【0027】
海流発電装置1は、海底に固定されたシンカー14に対して、第1係留ロープ11Aおよび第2係留ロープ11Bを介して接続されている。第1係留ロープ11Aおよび第2係留ロープ11Bは、これらの分岐点がシンカー14に設けられた、いわゆるV字状の係留索である。第1係留ロープ11Aの下端(他端)および第2係留ロープ11Bの下端(他端)は、たとえば、シンカー14に対して360度回転可能であるように接続されている。シンカー14に対する第1係留ロープ11Aおよび第2係留ロープ11Bの接続部は、たとえばシャックル等を用いた締結構造であってもよい。なお、分岐点がシンカー14と海流発電装置1との間の途中部分に設けられることで、第1係留ロープ11Aおよび第2係留ロープ11BがY字状をなしてもよい。なお、係留ロープの他端を海底に固定する固定部として、シンカー14に代えて、アンカーが用いられてもよい。
【0028】
海流発電装置1は、たとえば、第1係留ロープ11Aおよび第2係留ロープ11Bによって、異なる2点で係留されている。より詳細には、第1係留ロープ11Aの上端(一端)は、右側に位置する第1ポッド2Aに接続されている。第2係留ロープ11Bの上端(一端)は、左側に位置する第2ポッド2Bに接続されている。第1係留ロープ11Aの係留点12Aと、第2係留ロープ11Bの係留点12Bとは、左右方向に所定の長さ離間している。
【0029】
図1に示されるように、第1係留ロープ11Aおよび第2係留ロープ11Bに沿うようにして、第1タービン4Aおよび第2タービン4Bにおいて発電された電力を送電するための送電ケーブル10が設けられている。より詳細には、第1タービン4Aで発電された電力を送電する第1ケーブル10Aが、第1係留ロープ11Aに沿って設けられており、第2タービン4Bで発電された電力を送電する第2ケーブル10Bが、第2係留ロープ11Bに沿って設けられている。第1ケーブル10Aの一端は、第1ポッド2A内の発電機17(
図2参照)に接続されている。第2ケーブル10Bの一端は、第2ポッド2B内の発電機に接続されている。送電ケーブル10の他端は、たとえばシンカー14内に設けられた中継器(または変圧器等)に接続されている。中継器には、海底に敷設されて地上まで延びる送電ケーブルが接続されており、これらの送電ケーブルを介して、第1タービン4Aおよび第2タービン4Bにおいて発電された電力が地上に送電されるようになっている。
【0030】
なお、各ケーブルが設けられる形態は上記形態に限られない。たとえば、送電ケーブル10、第1ケーブル10Aおよび第2ケーブル10Bが、始動時のための給電ケーブルと一体になっていてもよい。第1タービン4Aに接続された第1ケーブル10Aが給電ケーブルであり、第2タービン4Bに接続された第2ケーブル10Bが送電ケーブルであってもよい。中継器は、シンカー14外の海底に設定されてもよい。
【0031】
海流発電装置1に適用される第1タービン4Aおよび第2タービン4Bは、いわゆるダウンウィンド型のタービンである。第1ポッド2Aおよび第2ポッド2Bは、海流の向きに対向した姿勢で浮遊する。この浮遊状態において、第1タービン4Aおよび第2タービン4Bの回転軸線L1,L2(
図2に示される回転軸16の軸線)は、互いに平行をなしており、略水平に維持される。
【0032】
第1タービン4Aは、第1ハブ5Aと、第1ハブ5Aに設けられた2枚の第1ブレード6Aとを含んでいる。第2タービン4Bは、第2ハブ5Bと、第2ハブ5Bに設けられた2枚の第2ブレード6Bとを含んでいる。第1ハブ5Aは、第1ポッド2Aの後端部に配置されている。第2ハブ5Bは、第2ポッド2Bの後端部に配置されている。ダウンウィンド型のタービンを採用した海流発電装置1においては、海流の向きを基準として、第1ポッド2Aの下流側に第1ブレード6Aが配置され、第2ポッド2Bの下流側に第2ブレード6Bが配置される(
図1参照)。
【0033】
第1タービン4Aと第2タービン4Bとにおいて、ブレードのピッチは逆向きとされている。すなわち、第2ブレード6Bのピッチは、第1ブレード6Aのピッチとは逆向きである。これにより、第1タービン4Aと第2タービン4Bとは、海流を受けて互いに逆向きに回転する。たとえば、第1タービン4Aは、上流側から見て時計回りの回転方向に回転し、第2タービン4Bは、上流側から見て反時計回りの回転方向に回転する。
【0034】
続いて、海流発電装置1の姿勢(特に、ピッチ方向の姿勢)を制御する姿勢制御システムSについて説明する。姿勢制御システムSは、係留点12Aおよび係留点12Bにそれぞれ接続された第1係留ロープ11Aおよび第2係留ロープ11Bと、海流発電装置1の少なくともピッチ方向の傾斜角度を検出するジャイロセンサ(検出部)23と、第1タービン4Aおよび第2タービン4Bの回転数を調整可能な回転数調整手段と、を備えている。
【0035】
姿勢制御システムSは、回転数調整手段に代えて、または回転数調整手段に加えて、第1ブレード6Aおよび第2ブレード6Bのピッチ角度を調整可能なピッチ角度調整装置20を備えてもよい。以下の説明では、姿勢制御システムSが回転数調整手段およびピッチ角度調整装置20を備える場合について説明する。また、以下の説明では、第1ポッド2Aが備える構成を主に説明する。第2ポッド2Bも第1ポッド2Aと同様の構成を備えるため、第2ポッド2Bに関する説明を省略する。
【0036】
図2に示されるように、第1ポッド2Aの後端部の第1ハブ5Aには、第1ブレード6Aが取り付けられており、第1ブレード6Aは、第1ハブ5Aと一体的に回転可能になっている。第1タービン4Aの回転は、回転軸16を介して発電機17に伝達される。回転軸16は、たとえば第1ポッド2Aの中心軸線に沿って設けられている。
【0037】
海流発電装置1において、第1ブレード6Aのピッチ角度は可変になっている。上記したピッチ角度調整装置20は、油圧式駆動装置21と、ブレード軸22とを備える。より詳細には、各第1ブレード6Aの基端部のブレード軸には、油圧式駆動装置21が連結されている。油圧式駆動装置21は、たとえば第1ハブ5A内に搭載される。油圧式駆動装置21は、たとえば、歯車機構を含んでいる。油圧式駆動装置21としては、公知の機構を用いることができる。油圧式駆動装置21は、制御部25によって制御されて、第1ブレード6Aのピッチ角度を任意の角度に調整可能である。油圧式駆動装置21によって一方の第1ブレード6Aがブレード軸22を中心に回転させられると同時に、他方の第1ブレード6Aが、ブレード軸22を中心に同じ角度だけ回転させられる。これと同様にして、第2ブレード6Bのピッチ角も、可変になっている。すなわち、第2タービン4Bにも、ピッチ角度調整装置20が設けられている。なお、第1ブレード6Aおよび第2ブレード6Bのピッチ角度を変化させる機構として、油圧式駆動装置21に限られず、サーボモータ等が用いられてもよい。回転数調整手段のみによって海流発電装置1の姿勢が調整される場合、第1ブレード6Aおよび第2ブレード6Bのピッチ角度は可変でなく、固定されていてもよい。
【0038】
第1ポッド2Aには、第1タービン4Aの回転数を検出するレゾルバが搭載されている。第1タービン4Aの回転数を検出するための検出機構として、レゾルバに限られず、エンコーダ等のセンサが用いられてもよい。レゾルバや回転数センサ等は、検出した第1タービン4Aの回転数(第1ブレード6Aの回転数)を制御部25に逐次出力する。また、油圧式駆動装置21には、駆動量を計測するセンサが搭載されている。
【0039】
第1ポッド2A内には、海流発電装置1の姿勢の傾斜を検出するジャイロセンサ23が設けられている。ジャイロセンサ23は、海流発電装置1のロール方向、ピッチ方向、およびヨー方向の傾斜角度を検出する。ジャイロセンサ23は、検出した各傾斜角度を、制御部25に逐次出力する。なお、第1ポッド2A内に、海流発電装置1の深度を計測する深度センサ(圧力センサ)が設けられてもよい。
【0040】
第1ポッド2A内には、上記した回転数調整手段としての発電機17およびブレーキ装置30が設けられている。発電機17は、たとえばインバータ17aを備えている。発電機17は、インバータ17aが電気的に制御されることにより、回転軸16に対する負荷トルクを調整可能である。発電機17は、負荷トルクの調整により、第1タービン4Aの回転数(第1ブレード6Aの回転数)を調整する。発電機17は、油圧ドライブトレイン等であってもよい。ブレーキ装置30は、たとえば回転軸16に接続されている。ブレーキ装置30は、たとえば摩擦力を用いて第1タービン4Aの回転数を低減させるパッド等を備えており、第1タービン4Aにブレーキ力を作用させ得る。ブレーキ装置30は、たとえば油圧ブレーキ装置等であってもよい。ブレーキ装置30は、ブレーキ力の調整により、第1タービン4Aの回転数(第1ブレード6Aの回転数)を調整する。なお、回転数調整手段として、発電機17およびブレーキ装置30のいずれか一方が用いられてもよい。なお、回転数調整手段として、たとえば減速比を変更するギヤ機構等が用いられてもよい。
【0041】
姿勢制御システムSは、第1ポッド2Aの外部との間で海水を注排水して海流発電装置1全体の重量を変化させる浮力調整装置(図示せず)を備えてもよい。浮力調整装置は、第1ポッド2A内に設けられたタンクと、タンクと第1ポッド2Aの外部とを接続する注排水管と、注排水管に設けられたポンプとを含んでもよい(いずれも図示せず)。
【0042】
海流発電装置1には、各センサからの情報を得て各アクチュエータ等を制御し、海流発電装置1全体を制御する制御部25が設けられている。この制御部25は、姿勢制御システムSの一部を構成している。制御部25は、ジャイロセンサ23によって検出された海流発電装置1のピッチ方向の傾斜角度に応じて、発電機17のインバータ17aおよび/またはブレーキ装置30を制御する。また、制御部25は、浮力調整装置を制御して、海流発電装置1全体の浮力を調整する。制御部25は、たとえば、第1ポッド2A内に設けられている。制御部25は、たとえばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)等のハードウェアと、ROMに記憶されたプログラム等のソフトウェアとから構成されたコンピュータである。
【0043】
制御部25には、海流発電装置1の姿勢制御に用いられる、ピッチ方向の傾斜角度に関する2つの閾値が予め記憶されている。制御部25は、ロール方向の閾値を記憶していてもよい。制御部25は、ピッチ方向の閾値として、第1閾値および第2閾値を記憶している。第2閾値は、第1閾値よりも大きい。第1閾値および第2閾値は、たとえば、海流発電装置1が有している、重心および浮心に基づく復原力の許容モーメントに基づいて決められ得る。
【0044】
本実施形態の海流発電装置1では、第1係留ロープ11Aおよび第2係留ロープ11Bは、海流発電装置1の前方下部に接続されている。すなわち、係留点12Aおよび係留点12Bは、海流発電装置1における第1回転軸線L1および第2回転軸線L2よりも下の部分に設けられている。より詳細には、係留点12Aは第1ポッド2Aの前方下部に設けられ、係留点12Bは第2ポッド2Bの前方下部に設けられる。係留点12Aと係留点12Bとは、回転軸線L1および回転軸線L2の両方に平行であって回転軸線L1および回転軸線L2から等距離にある仮想平面に関して、面対称の位置にある。
【0045】
第1ポッド2Aに対する第1係留ロープ11Aの接続構造について説明する。なお、第2ポッド2Bに対する第2係留ロープ11Bの接続構造は、第1ポッド2Aに対する第1係留ロープ11Aの接続構造と同様である。係留点12Aは、円筒状の第1ポッド2Aの円筒面上に設けられている。たとえば、第1ポッド2Aの円筒面に対して、外側に突出する平板状のリブが固定される。リブには貫通孔が形成されている。たとえば、その貫通孔に挿通されたボルトと、ボルトに取り付けられたU字状の接続金具と、ナットとによって第1係留ロープ11Aの接続構造が構成される。U字状の接続金具に、第1係留ロープ11Aの上端が接続される。第1係留ロープ11Aは、第1ポッド2Aに対して回転可能に接続されている。したがって、第1ポッド2Aに対する第1係留ロープ11Aの角度は、自由に変わり得る。係留ロープの接続構造は上記に限られず、他の公知の接続構造が採用されてもよい。
【0046】
係留点12Aの位置は、海流発電装置1の重心GCおよび浮心BCの位置に対しても重要な意味をもつ。
図3に示されるように、海流発電装置1の重心GCは、たとえば第1回転軸線L1より下部に位置する。海流発電装置1の浮心BCは、たとえば第1回転軸線L1より上部に位置する。
【0047】
なお、
図3においては、重心GCおよび浮心BCの位置が左右方向に投影されて示されている。重心GCおよび浮心BCの図示は、
図4、
図6および
図7においても同様である。重心GCおよび浮心BCは、たとえば、上記した装置中央の仮想平面上に位置する。重心GCは、第1回転軸線L1および第2回転軸線L2を含む平面より下に位置し、浮心BCは、第1回転軸線L1および第2回転軸線L2を含む平面より上に位置する。
【0048】
重心GCが浮心BCよりも下に位置することは必要である
。
【0049】
係留点12Aは、重心GCおよび浮心BCより前方に設けられている。すなわち、第1タービン4Aは第1ポッド2Aの第1回転軸線L1における後端に設けられているが、係留点12Aは、第1タービン4Aとは反対側である前端側の部分に設けられている。より詳細には、係留点12Aは、第1ポッド2Aの前端面(すなわち円筒面を塞ぐ端面)ではなく、その前端面よりも幾らか後部に設けられている。係留点12Aは、重心GCよりも下の部分に設けられている。
【0050】
このように、係留点12Aは、第1ポッド2Aの円筒面の前方下部に設けられている。この係留点12Aの配置は、大きな復元モーメントを発生させ得るため、海流発電装置1の姿勢の安定に寄与する。係留点12Aおよび係留点12Bの位置は、海流発電装置1を一つの剛体とみなした上で決定され得る。なお、タービン推力によるピッチ方向の姿勢制御の観点では、係留点12Aは第1回転軸線L1よりも下の部分に設けられればよい。この条件さえ満たせば、どこに係留点12Aがあったとしても復元モーメントが発生し得るため、姿勢制御が可能である。
【0051】
なお、本実施形態とは異なり、係留点がポッドの上部に設けられた場合、海流発電装置が水面に浮上した際に、係留ロープの重さや張力によって海流発電装置の姿勢が傾く可能性がある。海流発電装置1では、係留点12Aが第1ポッド2Aの下部に設けられているので、海流発電装置1が水面に浮上した際にも、姿勢の安定が図られる。
【0052】
続いて、姿勢制御システムSによる、海流発電装置1の姿勢制御方法について説明する。まず、海流発電装置1は、海水中に浮遊しており、海水の流れを受けて、通常運転状態にある。
図5に示されるように、制御部25は、ジャイロセンサ23によって検出された海流発電装置1のピッチ方向の傾斜角度を取得する(ステップS01;検出ステップ)。そして、制御部25は、海流発電装置1の傾斜角度が第1閾値未満であるか否かを判断する(ステップS02)。
【0053】
海流発電装置1の運転中においては、流れの変化や何らかの外力(浮遊物や水棲生物の衝突等)によって、海流発電装置1のピッチ方向またはロール方向の姿勢が変化することがある。たとえば、
図4に示されるように、外乱により、ピッチ方向の姿勢が崩れた状態が生じ得る。この場合、海流発電装置1の前部が後部よりも低くなっており、負の方向にピッチングが生じている。これは、いわゆる「頭下がり」の状態である。
【0054】
制御部25は、海流発電装置1の傾斜角度が第1閾値以上であると判断すると(ステップS02:NO)、インバータ17aおよび/またはブレーキ装置30を制御して、第1タービン4Aおよび第2タービン4Bの回転数を変更する(ステップS03;回転数変更ステップ)。なお、制御部25は、海流発電装置1の傾斜角度が第1閾値未満であると判断すると(ステップS02:YES)、ステップS01の処理に戻る。ここで、浮力調整装置による姿勢制御を実施してもよい。浮力調整装置による姿勢制御は、公知の方法に従って行うことができる。
【0055】
制御部25は、たとえば
図4に示される「頭下がり」の状態の場合には、ステップS03において、タービン推力が大きくなるように、電磁ブレーキまたは抵抗ブレーキを弱める。それによって、制御部25は、第1タービン4Aおよび第2タービン4Bにおける回転数を増大させる。制御部25は、第1タービン4Aおよび第2タービン4Bに対して、同一の回転数増大制御を実施してもよいが、異なる回転数増大制御を実施してもよい。以下、タービン推力をスラスト力ともいう。
【0056】
制御部25は、タービン推力が大きくなるように、第1ブレード6Aおよび第2ブレード6Bのピッチ角度を変更してもよい。たとえば、流れFL(
図1参照)に対して第1ブレード6Aの向きがなす角度が大きいほど、第1ブレード6Aはその回転方向に回転しやすく、スラスト力Fを受けやすい。流れFLに対して第1ブレード6Aの向きがなす角度が小さいほど、第1ブレード6Aはその回転方向に回転しにくく、スラスト力Fを受けにくい。スラスト力Fを減少させるには、ブレード6A,6Bに作用するスラスト力を減少させる。たとえば、第1ブレード6Aがスラスト力Fを受けにくいようにピッチ角度を変更するということは、第1ブレード6Aの向きを流れFLの方向に近づけることを意味する。これとは逆に、第1ブレード6Aがスラスト力Fを受けやすいようにピッチ角度を変更するということは、第1ブレード6Aの向きを流れFLの方向から遠ざけることを意味する。
【0057】
図6および
図7を参照して、スラスト力Fの変化に伴って発生するモーメントについて説明する。
図6は、海流発電装置1における力のつり合いを示す図である。
図7は、海流発電装置1の重心GC周りにおけるモーメントのつり合いを示す図である。
図6および
図7では、海流発電装置1に作用するそれぞれの力が、左右方向に投影して示されている。スラスト力、張力、および流体抗力など、第1ポッド2Aおよび第2ポッド2Bのそれぞれに作用する力は、1つの合力として考えられてもよい。
【0058】
図6に示されるように、海流発電装置1では、浮心BCにかかる浮力、重心GCにかかる重力、タービンの軸方向にかかるスラスト力、係留ロープからの張力、および、流れFLから受ける流体抗力の間で、次の関係式が成り立つ。
【0059】
機体(海流発電装置1)の水平方向では、式(1)の関係が成り立つ。
【数1】
機体の垂直方向では、式(2)の関係が成り立つ。
【数2】
ここで、
B:浮力、
G:重力、
F:スラスト力、
T:張力、
θ:タービンの軸線と係留ロープの角度、
R:流体抗力、
Rv:流体抗力の鉛直成分、
Rh:流体抗力の垂直成分、である。
【0060】
また、
図7に示されるように、重心GC周りにおけるモーメントのつり合いは、式(3)のとおりである。
【数3】
ここで、
h
F:機体の垂直方向におけるタービンの軸線と重心との間の距離、
h
R:機体の垂直方向における流体抗力の作用点と重心との間の距離、
h
T:機体の垂直方向における重心と係留点との間の距離、
L
B:機体の水平方向における浮心と重心との間の距離、
L
R:機体の水平方向における重心と流体抗力の作用点との間の距離、
L
T:機体の水平方向における重心と係留点との間の距離、である。
【0061】
しかし、海流発電装置1に対して外乱が付加される場合がある。そこで、制御量ΔF×h
Fを付加することで、式(4)に示されるように、外乱成分を打ち消す。
【数4】
制御量ΔF×h
Fはスラスト力の増減量である。制御量ΔF×h
Fは、タービンの回転数、および/または、タービンのブレードのピッチ角度によって制御され得る。
【0062】
図5に戻り、制御部25は、海流発電装置1の傾斜角度が第1閾値未満であるか否かを再び判断する(ステップS04)。制御部25は、海流発電装置1の傾斜角度が第1閾値未満であると判断すると(ステップS04:YES)、ステップS01の処理に戻り、浮力調整装置のみによる姿勢の修正を実施する。一方、制御部25は、海流発電装置1の傾斜角度が第1閾値以上であると判断すると(ステップS04:NO)、再びステップS03の回転数の変更処理を実施する。
【0063】
図4に示される「頭下がり」の状態の場合に、制御部25が、ステップS03においてスラスト力を増大させることにより、モーメントのつり合いを示す式(4)の左辺に制御量ΔF×h
Fが加わり、係留点周りのモーメントMが発生する(
図4参照)。これにより、モーメントMは頭上げの方向に発生し、海流発電装置1の後部が下がる。そして、海流発電装置1は、
図3に示される定常状態に戻る。この場合の制御量ΔF×h
Fは、スラスト力の増加量(正の値)である。このように、モーメントMは、海流発電装置1の姿勢を修正(すなわち復元)するための復元モーメントである。
【0064】
また、
図4とは逆に、海流発電装置1の後部が前部よりも低くなっており、正の方向にピッチングが生じている場合、すなわち、「頭上がり」の状態では、制御部25は、スラスト力(タービン推力)が小さくなるように、電磁ブレーキまたは抵抗ブレーキを強める。それによって、制御部25は、第1タービン4Aおよび第2タービン4Bにおける回転数を減少させる。なお、制御部25は、スラスト力が小さくなるように、第1ブレード6Aおよび第2ブレード6Bのピッチ角度を変更してもよい。
【0065】
制御部25が、ステップS03においてスラスト力を減少させることにより、モーメントのつり合いを示す式(4)の左辺が減少し、係留点周りのモーメントが減少する。これにより、モーメントは頭下げの方向に発生し、海流発電装置1の後部が上がる。そして、海流発電装置1は、
図3に示される定常状態に戻る。この場合の制御量ΔF×h
Fは、スラスト力の減少量(負の値)である。
【0066】
本実施形態の姿勢制御システムおよび姿勢制御方法では、係留ロープによって係留された水中浮遊式発電装置が水中を浮遊し、発電用タービンが回転することで、発電が行われる。制御部は、水中浮遊式発電装置のピッチ方向の傾斜角度に応じて、発電用タービンの回転数を変更する。発電用タービンの回転数が変更されると、発電用タービンの推力は変化する。ここで、係留ロープの一端は、水中浮遊式発電装置における回転軸線よりも下の部分に設けられた係留点に接続されている。このように係留点が下部に設けられた結果、回転軸線方向の推力は、係留点を中心にモーメントを発生させる。発生したモーメントは、ピッチ方向に関して、水中浮遊式発電装置の姿勢を安定させるように作用する。これにより、水中浮遊式発電装置のピッチ方向の姿勢が修正され得る。水中浮遊式発電装置には、流体をポンプにより移動してその重心を変更させる姿勢調整装置が設けられ得る。姿勢調整装置によっても、ピッチ方向の姿勢を修正することは可能である。しかし、本実施形態の姿勢制御システムは、姿勢調整装置によるピッチ方向の姿勢修正を必要としない。推力に基づいて発生するモーメントは、姿勢調整装置を用いる場合に比して、ピッチ方向の姿勢修正に関する応答性を高めている。そのため、急激な姿勢変化にも対応することができる。また、ピッチ方向の姿勢修正に必要な消費電力量を少なくすることもできる。姿勢調整装置をピッチ方向の姿勢修正のためにも用いる場合に比して、姿勢調整装置のサイズを小さくすることができる。
【0067】
また、制御部によって、発電用タービンの回転数と第2発電用タービンの回転数とが変更されるので、水中浮遊式発電装置のピッチ方向の姿勢のみならず、ロール方向の姿勢を制御することができる。
【0068】
発電用タービンが、水流の向きを基準としてポッドの下流側に配置されるダウンウィンド型のタービンである場合、発電用タービンとは反対側である上流側に係留点が設けられることになる。この場合、推力は、より大きな復元モーメントを発生させる。これにより、姿勢の修正効果(たとえば応答性など)が高められる。
【0069】
係留点がポッドの円筒面上に設けられる場合、係留点が回転軸線方向におけるポッドの端面やクロスビーム(連結部)に設けられる場合に比して、推力は、より大きな復元モーメントを発生させる。これにより、姿勢の修正効果(たとえば応答性など)が高められる。
【0070】
姿勢制御システムSでは、元々設けられている発電機17を用いて回転数を調整し姿勢を制御するため、別途の手段を要さず、効率的な姿勢の制御が可能である。
【0071】
姿勢制御システムSでは、第1タービン4Aおよび第2タービン4Bに設けられたブレーキ装置30を用いて回転数を調整し姿勢を制御するため、別途の手段を要さず、効率的な姿勢の制御が可能である。
【0072】
本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。
【0073】
たとえば、第1閾値による判断に加えて、さらに大きい第2閾値による判断を付加してもよい。その場合、制御部25は、海流発電装置1の傾斜角度が第1閾値以上であると判断すると、浮力調整装置における貯水量を変更する。その後、制御部25は、海流発電装置1の傾斜角度が第1閾値以上であると判断すると、海流発電装置1の傾斜角度が第2閾値未満であるか否かを判断する。制御部25は、海流発電装置1の傾斜角度が第2閾値未満であると判断すると、浮力調整装置における貯水量を変更する。制御部25は、海流発電装置1の傾斜角度が第2閾値以上であると判断すると、回転数および/またはブレードのピッチ角度の変更制御を実施する。そして、制御部25は、海流発電装置1の傾斜角度が第2閾値未満であるか否かを判断し、その傾斜角度が第2閾値以上であると判断すると、再び回転数および/またはブレードのピッチ角度の変更制御を実施する。制御部25は、海流発電装置1の傾斜角度が第2閾値未満であると判断すると、再び傾斜角度を取得する。なお、上記の第2閾値に代えて、第1閾値を用いてもよい。このように、姿勢制御システムSによる姿勢制御と浮力調整装置による姿勢制御とを併用してもよい。
【0074】
クロスビーム3に、1つ又は複数の係留点が設けられてもよい。その場合でも、係留点は前方かつ下部に設けられることが望ましい。クロスビーム3が、第1回転軸線L1および第2回転軸線L2を含む平面より下に設けられてもよい。クロスビーム3が低い位置に設置されると、重心GCがタービンスラストの力点から離れ得る。これにより、タービンスラスト力による制御量(すなわち復元モーメント)が大きくなり、姿勢制御が容易になる。海流発電装置1は一つの剛体とみなされるので、係留点は、その剛体に含まれるどの部材に設けられてもよい。
【0075】
1本の係留ロープが海流発電装置1に接続されていてもよい。すなわち、係留点は1つであってもよい。その場合、係留点は、上記した装置中央の仮想平面上に位置してもよい。
【0076】
制御部25は、回転数の変更制御と、ブレードのピッチ角度の変更制御との両方を実施してもよい。制御部25が回転数の変更制御を実施する場合に、ブレードのピッチ角度は可変でなく固定されていてもよい。制御部25がブレードのピッチ角度の変更制御を実施する場合に、回転数調整手段が省略されてもよい。ピッチ角度の変更制御のみであっても、上記した応答性の高さ、省電力、および姿勢調整装置の小型化といった効果を奏する。
【0077】
本発明の一態様は、単発タービンからなる水中浮遊式発電装置であってもよい。その場合に、1つの発電用ポッドが設けられ、そのポッドの後端または前端に、二重反転ロータ機構が設けられてもよい。単発タービンからなる水中浮遊式発電装置の場合でも、上記した実施形態における姿勢制御方法と同じ方法で、姿勢制御が可能である。
【0078】
本発明の一態様は、3つ以上のポッドおよび3つ以上のタービンを備えた水中浮遊式発電装置であってもよい。その場合、第1端側のみに全タービンが設けられ、係留点が第2端側の部分に設けられてもよい。第1タービン4Aおよび第2タービン4Bは、アップウィンド型のタービンであってもよい。その場合には、係留点は、第1タービン4Aおよび第2タービン4Bと同じ側(第1端側)に設けられてもよい。