特許第6907994号(P6907994)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6907994
(24)【登録日】2021年7月5日
(45)【発行日】2021年7月21日
(54)【発明の名称】クリップ
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/20 20060101AFI20210708BHJP
   A47G 29/00 20060101ALI20210708BHJP
【FI】
   F16B2/20 D
   A47G29/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-81131(P2018-81131)
(22)【出願日】2018年4月20日
(65)【公開番号】特開2019-190507(P2019-190507A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2020年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅本 嵩之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆之
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−241004(JP,A)
【文献】 実開昭64−043211(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/00− 2/26
A47G 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対をなすクリップ部材軸部材を介して互いに揺動可能に結合されているとともに物品を挟む一端側が付勢部材により閉じ方向に付勢されており、且つ、物品を挟み込んだ状態で前記一端側の開動作を抑止することが可能に構成されているクリップであって、
前記対をなすクリップ部材の一方のクリップ部材における他端側に、当該他端側からユーザに前記一端側の方向へ押し込まれることで前記一端側の方向へスライド可能に且つ複数の係止位置で前記スライドを停止可能に、組み付けられた操作部材と、
前記対をなすクリップ部材の他方のクリップ部材における前記他端側に設けられ、前記操作部材に押し当てられる押し上げ用凸部と、
を備え、
前記操作部材は、前記複数の係止位置間で前記押し上げ用凸部により押し当てられる被押し当て領域が異なるように、且つ、前記一端側に近い前記被押し当て領域よりも前記他端側に近い前記被押し当て領域の方が前記押し上げ用凸部に向けた突出高さが高くなるように構成されている、
ことを特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記操作部材は、前記軸部材を通す長穴であって前記スライドに沿った方向に長い長穴が形成されているとともに、前記被押し当て領域が前記長穴よりも前記他端側に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
前記他方のクリップ部材は、長穴を構成する枠が押し当てられる底面と、前記操作部材が所定の状態にあるときに前記枠を部分的に前記底面よりも下方に位置させることを許容するための逃し部と、が設けられている、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクリップ。
【請求項4】
前記逃し部は、前記底面と前記押し上げ用凸部との間に設けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載のクリップ。
【請求項5】
前記一端側に最も近い前記被押し当て領域は、前記枠よりも前記他端側の位置であって前記枠に隣接する位置に設けられている、
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のクリップ。
【請求項6】
前記軸部材は、前記スライドの方向に対して直交する方向に延伸するように且つ前記底面と前記逃し部との境界付近に位置するように配置されている、
ことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載のクリップ。
【請求項7】
前記操作部材は、前記他端側からユーザが摘まむことが可能な形状に構成されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のクリップ。
【請求項8】
前記他方のクリップ部材は、小型電子機器を装着して保持するケース部品であり、
前記ケース部品及び前記一方のクリップ部材には、前記小型電子機器の識別子を露出する貫通穴が形成されている、
ことを特徴とする請求項から請求項7のいずれか一項に記載のクリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
ウェアラブル端末の中には、端末付属の、又は端末と一体で構成されたクリップで衣服等を挟みこむことで、ウェアラブル端末をユーザに装着するタイプのものがある。このようなウェアラブル端末では、単純なバネ力のみで衣服等を挟んでいるため、激しい運動を行った際や端末に衝撃が加わった際に、衣服等から抜け落ちる恐れがある。
【0003】
抜け落ち防止のため、特許文献1において、物品を挟んだ状態でも開放を制限することが可能なクリップが提案されている。
このクリップは、クリップ本体と挟持片の操作部との間にロック部材を配置して、挟持片の挟持部のクリップ本体に対する開き量を制限する。ロック部材は、四角柱状に形成されており、クリップ本体に対し挟持片を揺動自在に支持する支軸に最も接近した最大制限位置、支軸から最も離れた最小制限位置、及びそれら最大制限位置及び最小制限位置との間の少なくとも一つの中途制限位置のそれぞれにて保持可能な状態でクリップ本体に取り付けられている。
クリップ本体には、最大制限位置と最小制限位置とを結ぶ位置調整方向に延びる一対の支持壁が設けられており、その支持壁には、位置調整方向に延びるガイド部がそれぞれ設けられている。ロック部材はガイド部間に架け渡された支持部材に支持されており、ガイド部には、支持部材を受け入れる少なくとも3つの凹部が位置調整方向に沿って設けられている。支持部材を受け入れる凹部を変更することにより、ロック部材の位置を最大制限位置、最小制限位置及び中途制限位置の間で選択的に変化させる。
挟持片には、ロック部材の四角柱状と接する部分に、位置調整方向に沿って支軸から離れるほど段階的に高さが減少する階段状の突当部が設けられている。突当部は、直角な階段状で、ロック部材の四角柱状の直角部に順次接する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−241004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のクリップでは、挟持片の突当部は、ロック部材の四角柱状の直角部に順次接する直角な階段状のため、クリップ本体と挟持片の間に物品を挟んだ状態では、ロック部材の位置を最大制限位置、最小制限位置及び中途制限位置に自由に動かすことができなかった。
したがって、特許文献1のクリップを、例えばウェアラブル端末の身体装着用として用いようとしても、衣服の厚さによってはロックをかけて衣服を締め付けることができないという問題が生じる。
【0006】
本発明の課題は、クリップにおいて、当該クリップに挟み込む物品の厚さに即したロックを掛けることが可能なロック構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、本発明に係るクリップは、対をなすクリップ部材軸部材を介して互いに揺動可能に結合されているとともに物品を挟む一端側が付勢部材により閉じ方向に付勢されており、且つ、物品を挟み込んだ状態で前記一端側の開動作を抑止することが可能に構成されているクリップであって、前記対をなすクリップ部材の一方のクリップ部材における他端側に、当該他端側からユーザに前記一端側の方向へ押し込まれることで前記一端側の方向へスライド可能に且つ複数の係止位置で前記スライドを停止可能に、組み付けられた操作部材と、前記対をなすクリップ部材の他方のクリップ部材における前記他端側に設けられ、前記操作部材に押し当てられる押し上げ用凸部と、を備え、前記操作部材は、前記複数の係止位置間で前記押し上げ用凸部により押し当てられる被押し当て領域が異なるように、且つ、前記一端側に近い前記被押し当て領域よりも前記他端側に近い前記被押し当て領域の方が前記押し上げ用凸部に向けた突出高さが高くなるように構成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クリップにおいて、当該クリップに挟み込む物品の厚さに即したロックを掛けることが可能なロック構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明を適用したクリップの一実施形態の構成を示すもので、クリップを閉じた状態の概略斜視図である。
図2図1の矢印A−A線に沿った断面図である。
図3図1の矢印B−B線に沿った断面図である。
図4図1のクリップを開いた非ロック状態を示すもので、図3と異なる部分の全体断面図である。
図5図4のクリップを閉じる過程での一段階目のロック状態の全体断面図である。
図6図5のクリップをさらに閉じた二段階目のロック状態の全体断面図である。
図7図1のクリップに小型電子機器を装着した状態を示す概略斜視図である。
図8図7の小型電子機器を装着した状態のクリップの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
(実施形態)
図1から図3は本発明を適用したクリップの一実施形態の構成を示すもので、図示のように、クリップ1は、対をなすクリップ部材を構成するケース部品2とクリップ部品3とが、互いの一端部側を軸部材4によって連結されていて、これらケース部品2とクリップ部品3との一端部側間に付勢部材であるねじりコイルバネ5が挟み込まれている。
すなわち、ケース部品2とクリップ部品3は、各々左右一対のボス部21・31を貫通する軸部材4により互いに揺動可能に結合されていて、ねじりコイルバネ5により常時閉じる方向に付勢されており、このねじりコイルバネ5のコイル部に軸部材4が通されている。
【0011】
ケース部品2は、図7及び図8に示すように、小型電子機器であるウェアラブル端末10の四隅部に接触して内側の爪部23により保持する端末保持部22を四隅部に有しており、そのうち一つの端末保持部22から連続して、ウェアラブル端末10の一側部を覆うカバー部24を有している。
【0012】
また、図1から図3に示したように、クリップ部品3の上面における軸部材4側の一端部に形成した凹段面部32に、クリップ部品3の軸部材4と反対側の他端部の方向へスライド動作可能なスライド部材であるロック部品6が組み付けられている。
ロック部品6は、クリップ部品3の下面側に突出する左右一対の突片部61を有し、この突片部61にクリップ部品3の長さ方向に沿った長穴62が形成されており、この長穴62に軸部材4が通されている。
クリップ部品3に対しロック部品6を押し込むことで、ロック部品6がスライド動作する。このロック部品6は、その下面の左右中央に、クリップ部品3の凹段面部32に接触する一個の係合凸部63を有している。
【0013】
そして、図3に示すように、クリップ部品3は、その軸部材4側の一端部の左右中央に、その一端部側から順に離れた三個の第一係合凹部33、第二係合凹部34及び第三係合凹部35を有している。この係合凹部33・34・35及び係合凸部63はそれぞれRが付けられており、ロック部品6のスライド移動が可能となっており、ロック部品6をスライド移動することにより、この三個の係合凹部33・34・35の各々に、ロック部品6の係合凸部63が順に係合する。
以上の係合凸部63及び係合凹部33・34・35により、ロック部品6のスライド移動の過程において、ロック部品6を二つの位置で係合して停止させる段階的係合停止部7が構成されている。
この段階的係合停止部7によって、ロック部品6は、図示のように、クリップ部品3の第一係合凹部33に係合凸部63が係合した状態を初期位置として、ロック部品6のスライド移動の過程において、クリップ部品3の第二係合凹部34及び第三係合凹部35に対して係合凸部63が順に二段階で各々係合して、そのスライド位置にそれぞれ停止状態にロックできる。
【0014】
さらに、図3及び図4に示すように、ケース部品2は、その軸部材4側の一端部の左右に一対の押し上げ用凸部25を有し、ロック部品6は、ケース部品2の押し上げ用凸部25にそれぞれ接触して二段階で乗り上がる一対の段階的傾斜状突起65を有している。
この段階的傾斜状突起65及び押し上げ用凸部25により、ねじりコイルバネ5の付勢力に抗して前記二つの位置でクリップ部品3に対しロック部品6をほぼ連続的に乗り上げ動作させる段階的乗り上げ動作部8が構成されている。
【0015】
すなわち、段階的傾斜状突起65は、突片部61との間の空所部64に、ケース部品2の押し上げ用凸部25が位置した状態を初期位置として、ロック部品6のスライド移動の過程において、図5に示すように、空所部64から傾斜面により連続して押し上げ用凸部25の上に乗り上がる突起65aと、図6に示すように、その突起65aから僅かな傾斜面により連続して僅かに突出して、押し上げ用凸部25の上に乗り上がる突起65bとから構成されている。
こうして、ロック部品6の段階的傾斜状突起65が、ケース部品2の押し上げ用凸部25に接触して乗り上がることで、ケース部品2に対するクリップ部品3の開き角度をコントロールでき、その開き角度位置にそれぞれ停止状態にロックできる。
【0016】
さらに、クリップ1をつまみやすくするために、ケース部品2の軸部材4側の一端部中央に突出するつまみ部27を設けている。このつまみ部27にストラップ通し穴28が形成されている。
【0017】
また、図7及び図8に示すように、小型電子機器であるウェアラブル端末10の出力情報の識別子である三個のLED11・12・13がケース部品2によって隠されるため、ケース部品2とクリップ部品3には、図示のように、各LED11・12・13を外部から視認できる三個の長穴による貫通穴29・39がそれぞれ形成されている。
すなわち、ケース部品2には、三個のLED11・12・13を囲む矩形状の貫通穴29が形成されている。
そして、クリップ部品3には、各LED11・12・13をそれぞれ囲む三個の長穴による貫通穴39が形成されている。
以上の貫通穴29・39により、ケース部品2及びクリップ部品3の存在によってLED11・12・13が奥まった位置にあるため、屋外の日光の下でもLED11・12・13の発光が見やすくなっている。
すなわち、クリップ部品3に形成された三個の貫通穴39を見るだけで、ウェアラブル端末10に備えられた三個のLED11・12・13のうち、どのLEDが光っているかを一目で分かる。
【0018】
図4はクリップ1を開いた非ロック状態を示すもので、クリップ部品3に対し押し込む前の位置にあるロック部品6は、図示のように、突片部61の長穴62の図示左端部に軸部材4が接触した状態で、図3に示すように、係合凸部63がクリップ部品3の第一係合凹部33に係合した状態にある。
この状態で、ケース部品2のつまみ部27とロック部品6の突出端部を指でつまんで、ケース部品2に対し、矢印P1のように、ロック部品6の突出端部を押し下げると、ロック部品6の空所部64にケース部品2の押し上げ用凸部25が接触して突き当たった状態になる。
これにより、ケース部品2に対しクリップ部品3が開閉幅0〜開閉幅L(最大開閉幅)の間で開動作が規制され、そのケース部品2とクリップ部品3との間に衣服の布地を挿入して、つまみ部27とロック部品6から力を開放すると、矢印Dのように、ねじりコイルばね5の付勢力によって、ケース部品2とクリップ部品3の先端部間に、図示しない衣服の布地が挟み込まれて、図7及び図8に示したウェアラブル端末10を保持したクリップ1が、人体の衣服に装着された状態となる。
【0019】
図5図4のクリップ1を閉じる過程での一段階目のロック状態を示すもので、ケース部品2とクリップ部品3との間に物品が存在しない状態では、ケース部品2のつまみ部27とロック部品6の突出端部を指でつまんで、ケース部品2に対し、矢印P1のように、ロック部品6の突出端部を押し下げると、ケース部品2に対しクリップ部品3が開閉幅0〜開閉幅Sの間で開動作が規制される。図4の開閉幅0〜開閉幅Lの開状態で、厚さが開閉幅Sより厚く、開閉幅Lより薄い衣服の布地Cを挿入して、つまみ部27とロック部品6から力を開放すると、矢印Dのように、ねじりコイルばね5の付勢力によって、ケース部品2とクリップ部品3の先端部間に、衣服の布地Cが挟み込まれる。衣服の布地Cが挟み込まれた状態で、ケース部品2に対し、矢印P2のように、ロック部品6を押し込むと、ロック部品6は、図示のように、長穴62の中間部に軸部材4が位置した状態で、係合凸部63が第二係合凹部34に係合した状態になる。
そして、空所部64から傾斜面により連続する段階的傾斜状突起65の突起65aが、押し上げ用凸部25に乗り上げて接触して突き当たった状態になる。
この状態で、振動等の外部の力により、ケース部品2に対しロック部品6の突出端部に矢印P1の方向に押し下げられる力が加わったとしても、ケース部品2に対するクリップ部品3の開閉は、開閉幅Sで開動作が規制されているため、ケース部品2とクリップ部品3の先端部間に布地Cが締め込まれた状態に維持される。
【0020】
図6図5のクリップ1をさらに閉じた二段階目のロック状態を示すもので、ケース部品2とクリップ部品3との間に物品が存在しない状態では、ケース部品2のつまみ部27とロック部品6の突出端部を指でつまんで、ケース部品2に対し、矢印P1のように、ロック部品6の突出端部を押し下げても、ケース部品2に対するクリップ部品3の開閉幅は0に規制される。図4の開閉幅0〜開閉幅Lの開状態で、厚さが開閉幅Sより薄い衣服の布地Cを挿入して、つまみ部27とロック部品6から力を開放すると、矢印Dのように、ねじりコイルばね5の付勢力によって、ケース部品2とクリップ部品3の先端部間に、衣服の布地Cが挟み込まれる。衣服の布地Cが挟み込まれた状態で、ケース部品2に対し、矢印P3のように、ロック部品6をさらに押し込むと、ロック部品6は、図示のように、クリップ部品3の凹段面部32に突き当たると同時に、長穴62の図示右端部に軸部材4が接触した状態で、係合凸部63が第三係合凹部35に係合した状態になる。
そして、段階的傾斜状突起65の突起65aから僅かな傾斜面により連続して僅かに突出する突起65bが、押し上げ用凸部25に乗り上げて接触して突き当たった状態になる。
この状態で、振動等の外部の力が加わってケース部品2に対しロック部品6の突出端部に押し下げる力が作用しても、ケース部品2に対しクリップ部品3がこれ以上開くことはなく、矢印Dで示したねじりコイルばね5の付勢力によって、図示のように、ケース部品2とクリップ部品3の先端部間に布地Cが締め込まれた状態に維持される。
これにより、ウェアラブル端末10を保持したクリップ1が人体の衣服から抜け落ちるのを確実に防止できる。
【0021】
以上のとおり、ロック部品6の空所部64と段階的傾斜状突起65の突起65a・65bの各つなぎ部は、それぞれ連続する傾斜面となっているため、クリップ部品3に対しロック部品6を押し込むことで、ロック部品3がケース部品2の押し上げ用凸部25に順次乗り上がって行く。
すなわち、押し上げ用凸部25に対し、空所部64から段階的傾斜状突起65の突起65aに乗り上がり、次に、突起65aから突起65bの乗り上がって行き、例えば布地Cが厚い場合に、その厚い布地Cを潰して最適な位置にロックできる等、衣服の布地Cの厚さによって最適な箇所でロックをかけることができる。
【0022】
このように、ロック部品6に、ケース部品2の押し上げ用凸部25と段階的に連続して接触する段階的傾斜状突起65(65a・65b)を付けることによって、衣服の布地Cの厚さに即したロックがかけられるため、あらゆる布地Cの厚さの衣服に対応でき、すなわち、布地Cの厚さに即したロックをかけて、人体の衣服からクリップ1が抜け落ちるのを防ぐことができる。
【0023】
以上、実施形態のクリップ1によれば、クリップ部品3の軸部材4側の一端部に、他端部の方向へスライド動作可能で二つの位置で停止可能に組み付けられたロック部品6を備えて、そのロック部品6とケース部品2とが互いに接触して、ロック部品6のスライド動作の過程において、ねじりコイルバネ5の付勢力に抗して二つの位置でクリップ部品3に対しロック部品6をほぼ連続的に乗り上げ動作させる二段の段階的乗り上げ動作部8(押し上げ用凸部25、凹所部64及び段階的傾斜状突起65)を備えている。
すなわち、クリップ部品3のロック部品6を組み付けるだけの少ない部品点数で構造簡単に位置規制が行えて、位置規制部である段階的乗り上げ動作部8(押し上げ用凸部25、凹所部64及び段階的傾斜状突起65)が、クリップ部品3とロック部品6の間に隠されて外部に露出しないので、外観性を良好にすることができる。
【0024】
しかも、ロック部品6には、当該ロック部品6のスライド動作の過程において、ねじりコイルバネ5の付勢力に抗して二つの位置でケース部品2の押し上げ用凸部25に対し、当該ロック部品6をほぼ連続的に乗り上げ動作させる凹所部64及び段階的傾斜状突起65(65a・65b)が形成されているので、制限位置での開き量を僅かでも許容して、衣服の布地Cの厚さによって最適な箇所でロックをかけることができる。
【0025】
そして、クリップ部品3とロック部品6とが互いに接触して、ロック部品6のスライド動作の過程において、ロック部品6を二つの位置で係合して停止させる段階的係合停止部7(係合凹部33・34・35及び係合凸部63)も、ケース部品2とロック部品6の間に隠されて外部に露出しないので、外観性を良好にすることができる。
【0026】
さらに、ロック部品6には、軸部材4が通される長穴62を有する突片部61が形成されているので、クリップ部品3に対するロック部品6のスライド量を規制して、組み付け状態を維持して脱落を防止することができる。
【0027】
また、ケース部品2の軸部材4側の一端部に、ストラップ通し孔28を有するつまみ部27が備えられているため、このつまみ部27とロック部品6の突出端部を指でつまんで、クリップ1を開閉操作することができる。
このように、ケース部品2のストラップ通し孔28を有する部分をクリップ1のつまみ部27として兼用することができる。
【0028】
また、ケース部品2及びクリップ部品3には、ウェアラブル端末10に備えられた出力情報の識別子である三個のLED11・12・13を各々露出する三個の長穴による貫通穴29・39がそれぞれ形成されているので、その三個の貫通穴29・39を見るだけで、三個のLED11・12・13のうち、どのLEDが光っているかを一目で分かる。
しかも、ケース部品2及びクリップ部品3の存在によって、その各貫通穴29・39の奥まった位置にLED11・12・13がそれぞれあるため、屋外の日光の下でも各LED11・12・13の発光が見やすくなっている。
【0029】
(変形例)
以上の実施形態においては、ウェアラブル端末の身体装着用クリップとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の用途のクリップであってもよい。
また、以上の実施形態においては、衣服を挟み込む場合について説明したが、当該クリップが挟み込む物品は、例えば、リュックの肩紐等、他の物品であってもよい。
また、以上の実施形態においては、当該クリップをウェアラブル端末の付属品として別体で構成したが、ウェアラブル端末と一体で構成されたクリップであってもよい。
さらに、実施形態では、二段階ロック構造の説明としたが、クリップ部品の係合凹部の個数と、ロック部品の段階的傾斜状突起の段階数を増やすことで、三段階以上の多段階のロック機能が可能となる。
また、クリップ部材、スライド部材、段階的傾斜状突起の形状等も任意であり、その他、段階的乗り上げ動作部、段階的係合停止部の具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【0030】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。
付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
対をなすクリップ部材が、軸部材を介して互いに揺動可能に結合されて、付勢部材により互いに閉じ方向に付勢されたクリップにおいて、
当該クリップの開動作を抑止するロック構造であって、当該クリップに物品を挟み込んだ状態で、操作部材を操作することにより、前記物品の厚みに応じた当該クリップの開閉幅において当該クリップの開動作を抑止するロック構造、
を備えることを特徴とするクリップ。
<請求項2>
前記操作部材は、前記対をなすクリップ部材の一方のクリップ部材で前記軸部材側の一端部に、他端部の方向へスライド動作可能で複数の位置で停止可能に組み付けられたスライド部材であり、
前記ロック構造は、
前記スライド部材と、
前記スライド部材と前記対をなすクリップ部材の他方のクリップ部材とが互いに接触して、前記スライド部材のスライド動作の過程において、前記付勢部材の付勢力に抗して前記複数の位置で前記他方のクリップ部材に対し前記スライド部材をほぼ連続的に乗り上げ動作させる段階的乗り上げ動作部と、
前記スライド部材と前記一方のクリップ部材とが互いに接触して、前記スライド部材のスライド動作の過程において、前記スライド部材を前記複数の位置で係合して停止させる段階的係合停止部を備えることを特徴とする請求項1に記載のクリップ。
<請求項3>
前記スライド部材には、当該スライド動作の過程において、前記付勢部材の付勢力に抗して前記複数の位置で前記他方のクリップ部材に対し当該スライド部材をほぼ連続的に乗り上げ動作させる段階的傾斜状突起が形成されていることを特徴とする請求項2に記載のクリップ。
<請求項4>
前記段階的係合停止部は、前記一方のクリップ部材の一端部側から順に離れて形成された複数の係合凹部と、前記スライド部材に形成されて前記複数の係合凹部に順に係合する係合凸部と、を備え、
前記係合凸部及び前記係合凹部はそれぞれRが付けられており、前記スライド部材のスライド移動が可能となっていることを特徴とする請求項2又は3に記載のクリップ。
<請求項5>
前記スライド部材に前記軸部材を通す長穴が形成されていることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載のクリップ。
<請求項6>
前記他方のクリップ部材で前記軸部材側の一端部に、クリップの開閉操作の際に指でつまむためのつまみ部を備えることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載のクリップ。
<請求項7>
前記つまみ部にストラップ通し穴が形成されていることを特徴とする請求項6に記載のクリップ。
<請求項8>
前記他方のクリップ部材は、小型電子機器を装着して保持するケース部品であり、
前記ケース部品及び前記一方のクリップ部材には、前記小型電子機器の識別子を露出する貫通穴が形成されていることを特徴とする請求項2から7のいずれか一項に記載のクリップ。
【符号の説明】
【0031】
1 クリップ
2 クリップ部材(ケース部品)
21 ボス部
22 端末保持部
23 爪部
24 カバー部
25 押し上げ用凸部(段階的乗り上げ動作部)
27 つまみ部
28 ストラップ通し穴
29 貫通穴
3 クリップ部材(クリップ部品)
31 ボス部
32 凹段面部
33・34・35 係合凹部(段階的係合停止部)
39 貫通穴
4 軸部材
5 付勢部材(ねじりコイルバネ)
6 スライド部材(ロック部品、操作部材)
61 突片部
62 長穴
63 係合凸部(段階的係合停止部)
64 凹所部(段階的乗り上げ動作部)
65 段階的傾斜状突起(段階的乗り上げ動作部)
7 段階的係合停止部
8 段階的乗り上げ動作部
10 小型電子機器(ウェアラブル端末)
11・12・13 識別子(LED)
C 布地
図1
図2
図3
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図8