特許第6911684号(P6911684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6911684
(24)【登録日】2021年7月12日
(45)【発行日】2021年7月28日
(54)【発明の名称】微生物用栄養液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20210715BHJP
   B09C 1/10 20060101ALI20210715BHJP
   C08L 101/16 20060101ALI20210715BHJP
【FI】
   C12N1/20 AZAB
   B09B3/00 E
   C12N1/20 D
   C08L101/16
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-191574(P2017-191574)
(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-62808(P2019-62808A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年8月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】柴田 幸樹
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成志
(72)【発明者】
【氏名】片山 傳喜
(72)【発明者】
【氏名】川原 成
【審査官】 松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−42737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/20
B09C 1/10
C08L 101/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリエステルを主成分とするポリマー成分と40質量%以上の水を含む水性媒体とを用意し、該水性媒体に前記ポリマー成分を投入し、常圧下で加熱して加水分解することで、
不溶解物を有しており、該不溶解物の少なくとも一部が前記ポリマー成分の不溶解性加水分解物であり、且つ、不溶解物を除いた液体の全有機炭素濃度が130ppm以上である微生物用栄養液を製造することを特徴とする微生物用栄養液の製造方法。
【請求項2】
前記水性媒体が、濃度60質量%以下の乳酸水溶液である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記不溶解物の重量平均分子量が12,000〜20,000である、請求項1〜3の何れかに記載の製造方法。
【請求項5】
加水分解により酸を放出する低分子量化促進樹脂として、ポリオキサレートを使用する、請求項1〜4の何れかに記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の製造方法により得られた微生物用栄養液を、固液分離することなく直接土壌に散布する、土壌微生物への栄養供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物に与える栄養液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場などで生じる汚染土壌は、長年、処理施設に運搬し、焼却することで無害化されてきた。この方法は、短時間で処理ができるという点や汚染物質の種類を問わず処理できるという点で優れていたが、運搬費用等のコストがかかるという難点があった。
【0003】
そこで最近では、バイオレメディエーションと呼ばれる微生物を活用した土壌浄化方法が盛んに検討されている。バイオレメディエーションは、特定の微生物を汚染土壌に存在させ、汚染物質を食べさせたりすることで汚染物質を無害化し、土壌を浄化するというものである。
【0004】
バイオレメディエーションでは、有機酸等の電子供与体を微生物用の栄養剤として汚染土壌に散布し、微生物の繁殖や活動をより活発にすることが行われている。かかる栄養剤には、散布直後から微生物の栄養として機能することができる即効性、栄養を徐々に放出し長期に亘って微生物に栄養を供給する徐放性、地中深くにいる微生物にも栄養を供給できる拡散性等が求められている。
【0005】
従来使用されてきた有機酸等は、そのままで栄養として機能するので即効性があり、また、水に溶けて地中深くまで浸透するので拡散性にも優れていた。しかし、徐放性に劣り、さらに地下水等による土壌からの流出性が高いため、散布を頻繁に行わなければいけないという問題があった。
【0006】
有機酸以外では、例えば特許文献1で、固体状態であり且つ重量平均分子量が12,000以下のポリ乳酸系樹脂が栄養剤として提案されている。特許文献1の栄養剤は、徐放性を有する点や地下水等により土壌から流出しにくい非流出性の点では優れているが、即効性に欠け、また水に溶けにくいので拡散性も有していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−104551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、即効性、徐放性、非流出性および拡散性の全てを備えた微生物用栄養液の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、脂肪族ポリエステルを主成分とするポリマー成分と40質量%以上の水を含む水性媒体とを用意し、前記水性媒体に前記ポリマー成分を投入し、常圧下で加熱して加水分解することで、不溶解物を有しており、該不溶解物の少なくとも一部が前記ポリマー成分の不溶解性加水分解物であり、且つ、不溶解物を除く液体の全有機炭素濃度が130ppm以上である微生物用栄養液を製造することを特徴とする微生物用栄養液の製造方法が提供される。
【0010】
本発明の製造方法においては、以下の態様が好適である。
(1)前記水性媒体が、濃度60質量%以下の乳酸水溶液である。
(2)前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸である。
(3)前記不溶解物の重量平均分子量が12,000〜20,000である。
(4)加水分解により酸を放出する低分子量化促進樹脂として、ポリオキサレートを使用する。
【0011】
また、本発明によれば、前記製造方法により得られた微生物用栄養液を、固液分離することなく直接土壌に散布する、土壌微生物への栄養供給方法が提供される。
【0012】
尚、本明細書において「不溶解性」とは製造直後の時点で微生物用栄養液に解けずに沈殿乃至分散している状態を指している。
また、不溶解性加水分解物の存在は、製造直後の微生物用栄養液を固液分離し、固体分についてゲル浸透クロマトグラフィにより平均分子量を測定し、その値が原料のポリマー成分の平均分子量より小さくなっていることで確認することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルを主成分とするポリマー成分を常圧・水性媒体中で加水分解する。かかる方法での加水分解には、モノマーやオリゴマー等の微小分子が水性媒体に溶解しやすいという特徴、並びに、加水分解が進み溶解物量が増えるにつれ、溶解している微小分子と親和性が高く且つ微小分子より分子の少し大きい加水分解物まで溶解しやすくなってくるという特徴がある。よって、図1〜3の実施例の結果が示すように、本発明の製造方法では、加水分解開始からしばらくの間、不溶解物の分子量分布ではピークが低分子量側にシフトしていき、不溶解物の重量平均分子量(以下、平均分子量と略称することがある。)は小さくなっていくが、ある程度以上加水分解が進むと、反応液に溶解する溶解性加水分解物が増える等の理由により、不溶解物の分子量分布においてピークがシフトしなくなり形が崩れていく。この段階では不溶解物の平均分子量は実質的に不変である。そのまま加水分解を続けると、不溶解物は、平均分子量はあまり変わらずに量が減っていき、最終的に消滅し、加水分解が完全に終わる。
【0014】
従って、本発明によれば、不溶解物の平均分子量が不変になる段階で加水分解を止めることで、簡単且つ確実に、液中に加水分解物の一部が溶解せずに分散乃至沈殿し、且つ、それ以外の加水分解物や水性媒体に使用した有機酸等が一定量以上溶解した微生物用栄養液を得ることができる。
【0015】
そして、バイオレメディエーション等の際にかかる栄養液を被処理土壌に散布すると、溶解性加水分解物や有機酸、有機溶媒が地中深くまで浸透し、すぐに微生物に食べられる。
【0016】
一方、不溶解物は、散布後は地表付近にとどまり、環境中の水分により徐々に加水分解して微生物に分解されていく。不溶解物は、水に溶けにくく地下水等により土壌から流出する可能性も低い。
【0017】
従って、本発明の製造方法により得られる微生物用栄養液は、即効性、拡散性、非流出性および徐放性の点で優れている。
【0018】
仮に上記の微生物用栄養液を得るために、溶解性脂肪族ポリエステル、水および不溶解性脂肪族ポリエステルをそれぞれ用意し、混合しようとすると、粉砕や撹拌作業が煩雑となり、設備等にもコストがかかるが、本発明では、原料のポリマー成分を水性媒体中で加熱しながら撹拌するだけでよいので、作業が簡単で製造コストを抑えることができる。土壌浄化には多量の栄養液が必要になるので、かかる利点は工業上極めて有利である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1における不溶解物の分子量分布の経時変化を示すグラフである。
図2】実施例1〜3における不溶解物の平均分子量の経時変化を示すグラフである。
図3図2の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明では、水性媒体中にポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルを主成分とするポリマー成分を投入して加水分解を行う。
【0021】
<水性媒体>
水性媒体としては、40質量%以上の水を含む水性媒体を使用する。好適には、水性媒体は、水であるか、あるいは水中に有機酸および/または有機溶媒を60質量%以下の量で含んでいる。有機酸が多すぎると、加水分解物が溶解しやすくなり、栄養液中に十分量の不溶解物を分散乃至沈殿させることが難しくなる。また、有機溶媒が多すぎると、加水分解に必要な水の量が確保できない虞がある。尚、無機酸は加水分解時の加熱により揮発するので好ましくない。
【0022】
有機酸としては、環境への配慮から、カルボン酸が好ましく、乳酸が特に好ましい。
【0023】
有機溶媒としては、ヒドロキシ基を含む有機溶媒が好ましく、エチレングリコールまたはメタノールがより好ましく、沸点が高いのでエチレングリコールが特に好ましい。
【0024】
水以外の水性媒体には、40質量%以上の水を含んでおり且つ本発明の効果を損なわないという条件の下、無機酸やアルカリ金属塩等の他の溶質を溶解させてもよいが、加水分解速度が遅くなるので、有機酸以外の他の溶質は使用しないことが好ましい。
【0025】
加水分解が速く進むので、水性媒体として、水中に有機酸を60質量%以下の量で溶解させた有機酸水溶液を使用することが特に好ましい。
【0026】
<ポリマー成分>
ポリマー成分は、脂肪族ポリエステルを主成分とする。即ち、ポリマー成分全体に対する脂肪族ポリエステルの割合が50質量%以上、好ましくは70質量%以上となっており、脂肪族ポリエステル以外は後述の添加剤または低分子量化促進樹脂が占めている。
【0027】
脂肪族ポリエステルとしては、公知のものを制限なく使用することができる。例えばポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(β−ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(ω−ヒドロキシアルカノエート)、ポリアルキレンジカルボキシレート等を挙げることができる。これらは、一種単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。また、ホモポリマーでもよいが、本発明の効果を損なわないという条件の下、共重合成分とともにコポリマーの状態となっていてもよい。
【0028】
コポリマーを形成する成分としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、ビスフェノールA、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アントラセンジカルボン酸などのジカルボン酸やそのジエステル;グリコール酸、L−乳酸、D−乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、マンデル酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸;グリコリド、カプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトンなどのラクトン類;などが挙げられる。
【0029】
脂肪族ポリエステルとしては、入手が容易であるという点で、ポリ(α−ヒドロキシ酸)が好ましく、ポリ乳酸が特に好ましい。ポリ乳酸は、100%ポリ−L−乳酸或いは100%ポリ−D−乳酸の何れであってもよいし、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の溶融ブレンド物でもよく、また、L−乳酸とD−乳酸とのランダム共重合体やブロック共重合体であってもよい。
【0030】
脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は、25,000以上が好ましい。かかる分子量の脂肪族ポリエステルであれば、栄養液中に適度な量の溶解性加水分解物が溶け、且つ、適度な量の不溶解物が分散乃至沈殿することが確認されているからである。上限は特に制限されないが、加水分解時間短縮の観点から、300,000以下が特に好ましい。脂肪族ポリエステルの重量平均分子量の最も好適な範囲は、100,000〜300,000である。
【0031】
脂肪族ポリエステルは、溶解性加水分解物と不溶解物の量のバランスの観点から、水性媒体1リットルあたり100g〜1.5kg投入することが好ましい。
【0032】
ポリマー成分には、必要に応じて、公知の可塑剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、顔料、フィラー、充填剤、離型剤、帯電防止剤、香料、滑剤、発泡剤、抗菌・抗カビ剤、核形成剤、カルボキシル基結合性化合物などの添加剤が更に含まれていてもよい。添加剤の配合量は、本発明の効果を損なわないという条件の下適宜決定されるが、通常は、脂肪族ポリエステル100質量部あたり5質量部以下である。
【0033】
また、ポリマー成分には、前述の脂肪族ポリエステルに比べて加水分解しやすく且つ加水分解により酸を放出する樹脂、即ち、水と混合したときに容易に加水分解して酸を放出する樹脂が低分子量化促進樹脂として含まれていてもよい。特に、ポリ乳酸のような難加水分解性の脂肪族ポリエステルを原料に用いる場合には、かかる脂肪族ポリエステルの加水分解を促進して低分子量化を進めるため、低分子量化促進樹脂が好適に使用される。低分子量化促進樹脂から放出される酸としては、特に、0.005g/ml濃度の水溶液乃至水分散液でのpH(25℃)が4以下、特に3以下を示すものが好ましい。放出される酸としては、シュウ酸やグリコール酸が挙げられる。
【0034】
低分子量化促進樹脂としては、例えば、ポリオキサレート、ポリグリコール酸などが挙げられるが、ポリオキサレートが好ましい。これらは、コポリマーの状態で使用してもよい。また、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。コポリマーを形成する成分としては、原料の脂肪族ポリエステルの説明で挙げたコポリマーを形成する成分を採用することができる。
【0035】
低分子量化促進樹脂の重量平均分子量は、一般に、1,000〜200,000である。
【0036】
低分子量化促進樹脂の配合量は、特に制限はないが、脂肪族ポリエステル100質量部に対して、1質量部以上100質量部未満が好ましい。1質量部以上50質量部未満がより好ましく、1質量部以上30質量部未満が特に好ましい。
【0037】
低分子量化促進樹脂は、必要に応じて、ポリマー成分に配合する代わりに、それ単独で水性媒体に投入して使用してもよい。
【0038】
ポリマー成分の形態としては、フィルム乃至シート、フィルム乃至シートを裁断した形態、ペレット、粒子状等が挙げられるが、粒子状が好ましい。粒子状のポリマー成分を用いると、必然的に不溶解物も粒子状となり、直接微生物用栄養液として利用できるメリットがあるからである。
【0039】
本発明では、通常、反応槽、加熱装置および撹拌装置を備えた反応装置を用い、常圧(略1気圧)下で水性媒体に原料となるポリマー成分を投入し、加熱および撹拌をして加水分解を行う。ポリマー成分は、投入前に予め細粒状にしておくと、加水分解がムラなく進行するので好ましい。
【0040】
加熱温度は、水性媒体の組成や使用する脂肪族ポリエステルの種類等によって決定されるが、通常は90℃以上である。加熱温度が低すぎると、加水分解速度が遅い。
【0041】
加熱温度の上限は、通常、水性媒体の沸点未満であるが、水性媒体に有機溶媒を配合する場合は、有機溶媒の沸点以下に設定するとよい。尚、水性媒体の沸点とは、原料を投入する前の沸点を意味する。加熱温度が高すぎると、有機酸や有機溶媒が揮発する虞がある。
【0042】
加水分解は、不溶解物の平均分子量や不溶解物を除いた反応液の全有機炭素濃度が所望の値になったときに終了すればよいが、予め反応条件と平均分子量が不変になるときのその平均分子量の値の関係を確認および調整しておき、不溶解物の平均分子量が変化しにくくなった時点で加水分解を終了させると、簡単且つ確実に所望の微生物用栄養液を得ることができるので好ましい。
【0043】
<微生物用栄養液>
かくして得られる微生物用栄養液には、ポリマー成分の加水分解物のうち相対的に分子の小さい加水分解物が溶解しており、相対的に分子が大きい加水分解物が不溶解物として沈殿乃至分散している。例えば実質的にポリ乳酸のみからなるポリマー成分を使用した場合には、溶解性加水分解物にはポリ乳酸のモノマーやオリゴマー等が含まれ、不溶解性加水分解物には平均分子量が低分子量溶解物よりは大きく原料ポリ乳酸よりは小さいポリ乳酸が含まれる。
【0044】
また、ポリマー成分の組成や投入量等によっては、微生物用栄養液には、加水分解されなかったポリマー成分も不溶解物として残存していることがある。更に、水性媒体に有機酸や有機溶媒が含まれていた場合には、不溶解物を除く液中に、有機酸が溶解し、あるいは、液状の有機溶媒が共存する。
【0045】
このように、本発明の微生物用栄養液では、不溶解物として、ポリマー成分の不溶解性加水分解物と、場合によっては未反応ポリマー成分とが分散乃至沈殿している。また、不溶解物を除く液中には、ポリマー成分の溶解性加水分解物や、場合によっては有機酸が溶解しており、また、液状の有機溶媒が共存している。
【0046】
不溶解物を除いた栄養液の全有機炭素濃度(TOC)は、製造直後の時点で130ppm以上、好適には1800ppm以上である。TOC値が低いと、溶解性加水分解物や有機酸といった溶解成分の量が少なく、即効性と拡散性に欠ける虞がある。TOCは、例えば下記条件で測定される。
装置:株式会社島津製作所製TOC−5000A
キャリアガス:高純度空気
キャリアガス流量:150mL/min
測定項目:TC(全炭素)/IC(無機炭素)/TOC(=TC−IC)
キャリブレーション物質:フタル酸水素ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウム
燃焼温度:680℃
【0047】
栄養液のTOCが上記数値範囲にあるとき、溶解成分、即ち、溶解性加水分解物並びに場合によって含まれる有機酸および有機溶媒の合計の重量平均分子量は、通常、2,000以下、特に1,000以下である。
【0048】
一方、本発明の微生物用栄養液において、不溶解物は、製造後そのままの状態では分散或いは沈殿している。
【0049】
不溶解物の重量平均分子量は、溶解性加水分解物より大きく且つ溶解しない程度であり、2,000〜25,000、特に12,000〜20,000の範囲にあることが好ましい。かかる不溶解物は、徐放性に優れていると共に環境中での加水分解速度が適度である。また、後述のように、得られた微生物用栄養液は、必要に応じて、不溶解物のみを回収して粉砕し、微生物固体栄養剤として利用されることがあるが、その際に粉砕が容易であるという点でも優れている。
【0050】
本発明の微生物用栄養液には、水酸化ナトリウム等を更に配合して中和させてもよい。中和することで、より環境に配慮した微生物用栄養液を得ることができる。
【0051】
本発明の微生物用栄養液は、様々な分野で使用され、特に、土壌浄化用の微生物用栄養液として好適に使用される。不溶解物は、徐放性と非流出性に貢献し溶解性加水分解物が即効性と拡散性に貢献する。更に、水性媒体に有機酸やメタノール等の有機溶媒を使用した場合には、有機酸や有機溶媒も栄養になり、即効性と拡散性に貢献する。よって、本発明の微生物用栄養液は、固液分離することなく直接土壌に散布するだけで、効果的に微生物に栄養を供給する。
【0052】
また、ボールミル等の公知の手段により微生物用栄養液中で不溶解物を粉砕し、不溶解物が微小粒子となって分散乃至沈殿しているスラリー状微生物用栄養液としてもよい。かかるスラリー状の微生物用栄養液は、非流出性の点では少し劣るものの、溶解性加水分解物や有機酸、有機溶媒だけでなく不溶解物も地中深くまで浸透しやすいという利点がある。
【0053】
あるいは、濾過等公知の手段により微生物用栄養液から不溶解物を回収し、粉砕して固体の微生物栄養剤としてもよい。
【実施例】
【0054】
本発明を次の実施例にて説明する。
【0055】
<使用材料>
PLA(ポリ乳酸樹脂)は海正生物材料製REVODE 101(d−乳酸4.62%)を用いた。
50%乳酸水溶液としては、武蔵野化学研究所製ムサシノ乳酸50F(50質量%)を用いた。
50%エチレングリコール/水混合液は、和光純薬工業株式会社製試薬特級エチレングリコール(純度99.7+%)を100%エチレングリコールとして扱い、純水で希釈することにより調製した。
【0056】
<PLA分子量の測定>
装置:ゲル浸透クロマトグラフ GPC
検出器:示差屈折率検出器RI
カラム:SuperMultipore HZ−M(2本)
溶媒:クロロホルム
流速:0.5mL/min
カラム温度:40℃
試料調製:試料約10mgに溶媒3mLを加え、室温で放置した。
目視で溶解していることを確認し、0.45μmフィルターにて濾過した。
標準試料はポリスチレンを用いた。
【0057】
<栄養剤全有機炭素量(TOC)の測定>
装置:株式会社島津製作所製TOC−5000A
キャリアガス:高純度空気
キャリアガス流量:150mL/min
測定項目:TC(全炭素)/IC(無機炭素)/TOC(=TC−IC)
キャリブレーション物質:フタル酸水素ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウム
燃焼温度:680℃
試料調製:試料1mLを100mL容メスフラスコに滴下し、Milli−Q水で100
倍に希釈した。この100倍希釈溶液を1mL取り、10mL容メスフラスコ
に滴下し、同様に10倍に希釈した。1000倍希釈溶液を測定試料とした。
【0058】
(実施例1)
3本の20mL容バイアル瓶において、PLA5.0gをMilli−Q水5.0gに浸漬させた。95℃に加熱した状態でそれぞれ10時間、30時間、52時間静置した。
【0059】
(実施例2)
3本の20mL容バイアル瓶中において、PLA5.0gを50%乳酸水溶液5.0gに浸漬させた。95℃に加熱した状態でそれぞれ10時間、30時間、52時間静置した。
【0060】
(実施例3)
3本の20mL容バイアル瓶中において、PLA5.0gを50%エチレングリコール/水混合液5.0gに浸漬させた。95℃に加熱した状態でそれぞれ10時間、30時間、52時間静置した。
【0061】
加熱処理後、固形分と溶液をパスツールピペットにより分離した。固形分を20mLの純水で2回以上洗浄し、95℃で1時間加熱乾燥した。得られた固形分試料片から重量平均分子量(Mw)を測定し、結果を表1および図1〜3に示した。
前述の方法により溶液のTOC値(1000倍希釈)を測定し、結果を表2に示した。
【表1】
【表2】
【0062】
表1に示されているように、いずれの溶媒を用いた場合も熱処理を受けて時間とともに不溶解物の平均分子量が低下し、10時間で25,000以下に到達した。30時間以上の処理では、平均分子量は10,000未満にまで小さくなった。
表2に示されているように、いずれの溶媒を用いた場合でも、10時間処理の時点で液体の全有機炭素量が十分量確保できた。30時間処理から、いずれの溶媒でも溶液のTOC値が上昇していた。栄養液としては、希釈前で全有機炭素濃度100ppm以上上昇していると、加水分解が進んでおり溶解性加水分解物が多くて好ましい。
以上より、10時間以上の処理で本発明の微生物用栄養液を製造できた。10時間以上30時間未満では、不溶解物の平均分子量が適度な大きさである点で好適な微生物用栄養液を製造できた。30時間以上では、溶解性加水分解物が多い点で好適な微生物用栄養液を製造できた。
図1
図2
図3