(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、車両の高性能化に伴い、タイヤの高速走行性能のさらなる向上が要求されている。
【0005】
車両の高速走行時、トレッド部(トレッドゴム)は、路面との接地及び離隔の繰り返し変形により発熱する。発熱したトレッド部は、柔らかくなり、ひいては、高速走行性能の低下を招く。
【0006】
発明者らは、トレッド部の陸部に設けられた横溝及びサイプによる放熱効果に着目し、これらを改善することで、高速走行性能を向上させることに成功した。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、優れた高速走行性能を発揮し得るタイヤを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、トレッド部を含むタイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる第1主溝と、前記第1主溝に隣接する第1陸部とを含み、前記第1陸部には、前記第1主溝から延びかつ前記第1陸部内で途切れる少なくとも1本の途切れ横溝と、タイヤ軸方向に延びかつ両端が前記第1陸部内で途切れる少なくとも1本の横サイプとが設けられ、前記横サイプのサイプ壁には、凹部が設けられている。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記トレッド部は、前記第1主溝のタイヤ軸方向外側をタイヤ周方向に連続して延びる第2主溝を含み、前記第1陸部は、前記第1主溝と前記第2主溝とで区分されているのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記第1主溝の溝幅は、前記第2主溝の溝幅よりも大きいのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記第1陸部は、タイヤ周方向に連続して延びるリブであるのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記途切れ横溝は、前記第1陸部のタイヤ軸方向の中心位置よりも前記第1主溝側で途切れているのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記途切れ横溝は、前記横サイプとタイヤ軸方向に重複しているのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記途切れ横溝と前記横サイプとのタイヤ軸方向の重複長さは、前記横サイプのタイヤ軸方向の長さの20%〜40%であるのが望ましい。
【0015】
本発明のタイヤにおいて、前記途切れ横溝の前記第1陸部内の端部は、前記途切れ横溝の途切れ端に向かって先細状であるのが望ましい。
【0016】
本発明のタイヤにおいて、前記途切れ横溝は、タイヤ軸方向に対して傾斜しているのが望ましい。
【0017】
本発明のタイヤにおいて、前記トレッド部は、タイヤ回転方向が指定され、前記途切れ横溝は、その途切れ端側に向かって前記タイヤ回転方向の後着側に傾斜しているのが望ましい。
【0018】
本発明のタイヤにおいて、前記途切れ横溝は、その途切れ端側に向かって深さが大きくなっているのが望ましい。
【0019】
本発明のタイヤにおいて、前記途切れ横溝は、その途切れ端側に向かって溝幅が大きくなっているのが望ましい。
【0020】
本発明のタイヤにおいて、前記第1陸部は、前記第1主溝から延びかつ前記第1陸部内で途切れるセミオープンサイプを含むのが望ましい。
【0021】
本発明のタイヤにおいて、前記横サイプは、両側の前記サイプ壁のそれぞれに複数の前記凹部が設けられているのが望ましい。
【0022】
本発明のタイヤにおいて、前記凹部は、前記横サイプの長さ方向に沿った第1長さが前記横サイプの深さ方向に沿った第2長さよりも小さいのが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のタイヤは、上記の構成を採用したことによって、優れた高速走行性能を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。なお、本明細書において説明されない技術事項には、公知のものを適用することが可能である。
図1には、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の横断面図が示されている。なお、
図1は、タイヤ1の正規状態におけるタイヤ回転軸を含む子午線断面図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に用いられる。但し、このような態様に限定されるものではなく、本発明のタイヤ1は、例えば、重荷重用として用いられても良い。
【0026】
「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。なお、本明細書で説明された各構成は、ゴム成形品に含まれる通常の誤差を許容するものとする。
【0027】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0028】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0029】
図1に示されるように、トレッド部2には、例えば、タイヤ周方向に連続して延びる複数の主溝3と、これらに区分された複数の陸部4とが設けられている。本実施形態のタイヤ1は、例えば、4本の主溝に区分された5つの陸部4を有する所謂5リブタイヤである。
【0030】
主溝3は、2本の第1主溝5及び2本の第2主溝6を含んでいる。第1主溝5は、タイヤ赤道Cと隣接しており、本実施形態では2本の第1主溝5がタイヤ赤道Cを挟んでいる。第2主溝6は、第1主溝5のタイヤ軸方向外側に設けられている。なお、本明細書において、第1主溝5のタイヤ軸方向外側とは、第1主溝5よりもトレッド端Te側を意味する。第1主溝5のタイヤ軸方向内側とは、第1主溝5よりもタイヤ赤道C側を意味する。
【0031】
トレッド端Teは、前記正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。「正規荷重」は、各種の規格が定められた空気入りタイヤの場合、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。また、各種の規格が定められていないタイヤや、非空気式タイヤの場合、「正規荷重」は、タイヤの標準使用状態において、1つのタイヤに作用する荷重を指す。前記「標準使用状態」とは、タイヤの使用目的に応じた標準的な車両にタイヤが装着され、かつ、前記車両が走行可能な状態で平坦な路面上に静止している状態を指す。
【0032】
陸部4は、第1主溝5に隣接する第1陸部7を含む。本実施形態の第1陸部7は、第1主溝5と第2主溝6との間に区分されている。陸部4は、2つの第1主溝5の間に区分された第2陸部8と、第2主溝6とトレッド端Teとの間に区分された第3陸部9とを含む。第2陸部8及び第3陸部9には、タイヤに求められる性能に応じて、種々の溝が配置され得る。したがって、本明細書において、第2陸部8及び第3陸部9に配される溝の説明は、省略される。
【0033】
図2には、第1陸部7の拡大図が示されている。
図2に示されるように、第1陸部7には、少なくとも1本の途切れ横溝10と、少なくとも1本の横サイプ11とが設けられている。途切れ横溝10は、第1主溝5から延びかつ第1陸部7内で途切れている。横サイプ11は、タイヤ軸方向に延びかつ両端が第1陸部7内で途切れている。本実施形態の第1陸部7には、途切れ横溝10及び横サイプ11がそれぞれ複数設けられており、具体的には、これらがタイヤ周方向に交互に設けられている。
【0034】
本明細書において、「サイプ」とは、微小な幅を有する切れ込み要素であって、互いに向き合う2つのサイプ壁の間の幅が1.5mm以下のものを指す。望ましい態様として、本実施形態の横サイプ11の前記幅は、1.0mm以下とされる。本明細書では、ある切れ込み要素の横断面において、幅が1.5mm以下の領域をその全深さの50%以上含むものは、幅が1.5mmを超える領域を一部に含むものであっても、サイプ(溝要素を含んだサイプ)として扱うものとする。また、ある切れ込み要素の横断面において、幅が1.5mmよりも大きい領域をその全深さの50%以上含むものは、幅が1.5mm以下の領域を一部に含むものであっても、溝(サイプ要素を含む溝)として扱うものとする。
【0035】
図3には、横サイプ11のサイプ壁12を示す拡大斜視図が示されている。
図3は、
図2のA−A線断面を示す拡大斜視図である。
図3に示されるように、横サイプ11のサイプ壁12には、凹部13が設けられている。本発明のタイヤ1は、上記の構成を採用したことによって、優れた高速走行性能を発揮することができる。その理由としては、以下のメカニズムが推察される。
【0036】
図2に示されるように、第1陸部7内で途切れる途切れ横溝10、及び、両端が第1陸部7内で途切れる横サイプ11は、第1陸部7の剛性を維持することができる。高い剛性を有する第1陸部7は、優れた高速走行性能を発揮するのに役立つ。
【0037】
また、高速走行時、第1主溝5には、多くの空気が流れ、第1主溝5に隣接する第1陸部7が冷却される。また、途切れ横溝10にも、第1主溝5から空気が流れ込むことにより、第1陸部7は冷却される。さらに、サイプ壁12に凹部13(
図3に示す)が設けられた横サイプ11は、高い放熱効果を期待でき、第1陸部7の内部を効果的に冷却することができる。このような溝及びサイプの放熱効果により、第1陸部7の温度上昇が抑制され、第1陸部7は高速走行時においても高い剛性が維持され、優れた高速走行性能を発揮することができると考えられる。
【0038】
以下、本実施形態のさらに詳細な構成が説明される。なお、以下で説明される構成は、本実施形態の具体的態様を示すものである。したがって、本発明は、以下で説明される構成を具えないものであっても、上述の効果を発揮し得るのは言うまでもない。また、上述の特徴を具えた本発明のタイヤに、以下で説明される各構成のいずれか1つが単独で適用されても、各構成に応じた性能の向上は期待できる。さらに、以下で説明される各構成のいくつかが複合して適用された場合、各構成に応じた複合的な性能の向上が期待できる。
【0039】
第1主溝5の溝幅W1及び第2主溝6の溝幅W2は、それぞれ、トレッド幅TW(
図1に示す)の3.5%〜7.5%である。また、第1主溝5の深さ及び第2主溝6の深さは、それぞれ、5〜10mmであるのが望ましい。これにより、高速走行性能とウェット性能とがバランス良く向上する。トレッド幅TWは、前記正規状態における一方のトレッド端Teから他方のトレッド端Teまでのタイヤ軸方向の距離である。
【0040】
第1陸部7は、タイヤ赤道C側の方が大きな接地圧が作用して発熱し易い傾向があり、この発熱を抑制することが高速走行性能を向上させる上で重要となる。このような観点から、第2主溝6は、第1主溝5のタイヤ軸方向外側に配されており、かつ、第1主溝5の溝幅W1は、第2主溝6の溝幅W2よりも大きいのが望ましい。具体的には、前記溝幅W1は、例えば、前記溝幅W2の105%〜180%であり、望ましくは110%〜130%である。これにより、第1主溝5を通る空気によって第1陸部7のタイヤ赤道C側が効果的に冷却され、ひいては高速走行性能が向上する。
【0041】
第1陸部7は、例えば、タイヤ周方向に連続して延びるリブであるのが望ましい。前記リブとは、陸部を完全に横断する横溝及びサイプが設けられていない態様を意味する。このような第1陸部7は、タイヤ周方向の剛性が大きく、かつ、上述の途切れ横溝10及び横サイプ11による大きな放熱効果が期待できるため、優れた高速走行性能を発揮し得る。
【0042】
途切れ横溝10は、例えば、第1陸部7のタイヤ軸方向の中心位置よりも第1主溝5側で途切れている。途切れ横溝10のタイヤ軸方向の長さL1は、例えば、第1陸部7のタイヤ軸方向の幅W3の25%〜40%である。このような途切れ横溝10は、上述の第1主溝5と協働することにより、第1陸部7の剛性を維持しつつ優れた冷却効果を発揮できる。
【0043】
途切れ横溝10は、例えば、タイヤ軸方向に対して15°以下、望ましくは10°以下の角度で配されている。本実施形態の途切れ横溝10は、タイヤ軸方向に対して平行に配されている。このような途切れ横溝10は、ウェット路面でのトラクションを高めるのに役立つ。但し、後述されるように、他の実施形態では、途切れ横溝10は、タイヤ軸方向に対して傾斜するものでも良い。
【0044】
途切れ横溝10の溝幅W4は、例えば、第1主溝5の溝幅W1の5%〜20%である。本実施形態の途切れ横溝10は、一定の溝幅で延びている。このような途切れ溝10は、上述の第1主溝5及び第2主溝6と相俟って、高速走行性能とウェット性能とがバランス良く向上する。但し、後述されるように、途切れ横溝10の溝幅W4は、その長さ方向に変化するものでも良い。
【0045】
図4には、
図2の途切れ横溝10のB−B線断面図が示されている。
図4に示されるように、途切れ横溝10は、例えば、第1主溝5からその途切れ端10a側に向かって深さが大きくなっているのが望ましい。これにより、第1陸部7の内部が冷却され易くなり、第1陸部7の剛性が効果的に維持される。
【0046】
ウェット性能を維持しつつ上述の効果を発揮するために、途切れ横溝10の最小の深さd3は、途切れ横溝10の最大の深さd2の30%〜70%が望ましく、より望ましくは40%〜60%である。具体的には、前記最小の深さd3は、1.0〜5.0mmとされるのが望ましい。前記最大の深さd2は、3.0〜9.0mmとされるのが望ましい。また、前記最大の深さd2は、例えば、第1主溝5の深さd1の70%〜90%である。
【0047】
図2に示されるように、横サイプ11は、直線状に延びている。但し、横サイプ11は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、波状に延びるものでも良い。
【0048】
上述の途切れ横溝10と協働して第1陸部7を効率良く冷却させる観点から、横サイプ11は、例えば、第1陸部7のタイヤ軸方向の中心位置を横切っているのが望ましい。また、横サイプ11のタイヤ軸方向の長さL2は、例えば、途切れ横溝10のタイヤ軸方向の長さL1よりも大きいのが望ましい。横サイプ11の前記長さL2は、第1陸部7のタイヤ軸方向の幅W3の50%〜80%である。
【0049】
途切れ横溝10は、横サイプ11とタイヤ軸方向に重複しているのが望ましい。なお、この態様は、横サイプ11の第1主溝5側の端が、途切れ横溝10の途切れ端10aよりも第1主溝5側に位置していることを意味する。途切れ横溝10と横サイプ11とのタイヤ軸方向の重複長さL3は、例えば、横サイプ11のタイヤ軸方向の長さL2の10%〜50%であり、望ましくは20%〜40%である。途切れ横溝10と横サイプ11とがこのような関係で配置されることにより、高速走行性能とウェット性能とがバランス良く発揮される。とりわけ、本実施形態では、このような途切れ横溝10及び横サイプ11が、上述の第1横溝5及び第2横溝と組み合わされることにより、さらなる性能向上が期待できる。
【0050】
横サイプ11は、例えば、タイヤ軸方向に対して15°以下、望ましくは10°以下の角度で配されている。本実施形態の横サイプ11は、タイヤ軸方向に対して平行に配されている。より望ましい態様では、横サイプ11と途切れ横溝10とが互いに平行である。このような横サイプ11は、ウェット走行時、途切れ横溝10とともにタイヤ周方向の摩擦力を提供し、トラクション性能を高める。
【0051】
図3に示されるように、横サイプ11の1つのサイプ壁12には、複数の凹部13が設けられているのが望ましい。また、本実施形態では、両側のサイプ壁12のそれぞれに、複数の凹部13が設けられている。これにより、第1陸部7を確実に冷却することができる。
【0052】
加硫成形不良を抑制しつつ、上述の効果を得るために、1つのサイプ壁における複数の凹部13の開口面積の合計S1は、各凹部13を完全に埋めたときの1つのサイプ壁12の全体の面積Stの20%〜50%であり、望ましくは30%〜40%である。
【0053】
本実施形態では、1つのサイプ壁12に、同一形状の4つの凹部13が設けられている。各凹部13は、例えば、その内面及びサイプ壁の延長面で囲まれた空間が直方体となる形状で構成されている。但し、凹部13の形状は、このような態様に限定されるものではない。
【0054】
凹部13は、横サイプ11の長さ方向に沿った第1長さL4が横サイプ11の深さ方向に沿った第2長さL5よりも小さい。第1長さL4は、例えば、横サイプ11のタイヤ軸方向の長さL2(
図2に示す)の5%〜20%である。第2長さL5は、例えば、横サイプ11の深さd4の50%〜80%である。このような凹部13は、加硫成形不良を抑制しつつ、十分な冷却効果を発揮できる。
【0055】
凹部13の深さd4は、例えば、横サイプ11の開口幅よりも小さいのが望ましい。凹部13の深さd4は、0.3〜1.5mmである。これにより、横サイプ11による第1陸部7の剛性低下が抑制されつつ、横サイプ11内に十分に空気が入り込み易くなり、優れた冷却効果が得られる。なお、凹部13の深さとは、凹部13の開口エッジ13eから凹部の底面13dまでの横サイプ11の幅方向の距離である。
【0056】
以下、本発明の他の実施形態が説明される。他の実施形態を示す図において、既に説明された要素には、上述のものと同じ符号が付されており、上述の構成を適用することができる。
【0057】
図5及び
図6には、他の実施形態の第1陸部7の拡大図が示されている。
図5に示される実施形態では、途切れ横溝10は、タイヤ軸方向に対して傾斜している。途切れ横溝10のタイヤ軸方向に対する角度θ1は、例えば、10〜50°であり、望ましくは25〜35°である。このような途切れ横溝10は、ウェット走行時にタイヤ軸方向の摩擦力も発揮でき、ウェット性能を向上させる。
【0058】
この実施形態において、途切れ横溝10の第1陸部7内の端部は、途切れ横溝10の途切れ端10aに向かって先細状である。前記端部におけるエッジ間の角度θ2は、例えば、20〜60°である。これにより、第1主溝5から途切れ横溝10に入った空気は、上述の端部から横サイプ11側に移動し、横サイプ11内の空気の入れ替えを促進させる。これにより、冷却効果がより一層向上する。
【0059】
この実施形態の第1陸部7には、第1主溝5から延びかつ第1陸部7内で途切れるセミオープンサイプ15が設けられている。また、途切れ横溝10とセミオープンサイプ15とは、タイヤ周方向に交互に設けられている。このようなセミオープンサイプ15は、途切れ横溝10及び横サイプ11とともに、優れた冷却効果を発揮する。
【0060】
セミオープンサイプ15は、例えば、第1陸部7のタイヤ軸方向の中心位置よりも第1主溝5側で途切れている。セミオープンサイプ15は、横サイプ11の第1主溝5側の端よりも第1主溝5側で途切れている。より望ましい態様では、セミオープンサイプ15は、途切れ横溝10の途切れ端10aよりも第1主溝5側で途切れている。セミオープンサイプ15のタイヤ軸方向の長さL6は、第1陸部7のタイヤ軸方向の幅W3の20%〜40%である。このようなセミオープンサイプ15は、第1陸部7の剛性を維持しつつ、冷却効果を高めることができる。
【0061】
セミオープンサイプ15のタイヤ軸方向に対する角度は、例えば、途切れ横溝10のタイヤ軸方向に対する角度θ1よりも小さいのが望ましい。この実施形態のセミオープンサイプ15は、タイヤ軸方向に対して平行に延びている。このようなセミオープンサイプ15は、上述の途切れ横溝10及び横サイプ11と相俟って、高速走行性能を高めるとともに、ウェット走行時のトラクション性能も高める。
【0062】
セミオープンサイプ15のサイプ壁には、横サイプ11のサイプ壁12と同様の凹部が設けられているのが望ましい。これにより、セミオープンサイプ15の冷却効果がさらに向上する。
【0063】
図6に示される実施形態では、タイヤ回転方向Rが指定されたトレッド部2を含む。また、途切れ横溝10は、その途切れ端10a側に向かってタイヤ回転方向Rの後着側に傾斜している。途切れ横溝10のタイヤ軸方向に対する角度θ1は、例えば、20〜30°である。このような途切れ横溝10は、タイヤの回転を利用して第1主溝5内の空気を積極的に途切れ横溝10内に導くことができる。
【0064】
この実施形態の途切れ横溝10は、その途切れ端10a側に向かって溝幅が大きくなっている。途切れ横溝10の途切れ端10aにおける溝幅W6は、途切れ横溝10の第1主溝5側の端部の溝幅W5の120%〜180%である。このような途切れ横溝10は、第1陸部7の内部を効果的に冷却することができる。
【0065】
同様の観点から、この実施形態の途切れ横溝10には、
図4で示される途切れ横溝10の断面形状の構成を適用することができる。
【0066】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0067】
図2に示される第1陸部を有するサイズ245/40R18の空気入りタイヤが、途切れ横溝と横サイプとの重複長さL3を変化させて複数試作された。また、性能比較のための基準タイヤとして、
図7に示される第1陸部aを有するタイヤが試作された。この基準タイヤの第1陸部aには、第1陸部aを完全に横断する横溝bが複数設けられている一方、サイプは設けられていない。また、比較例1として、
図2に示される第1陸部を有し、かつ、横サイプのサイプ壁には凹部が設けられていないタイヤが試作された。各テストタイヤは、上述の構成を除き、実質的に同じ構成を具えている。各テストタイヤの高速走行性能及びウェット性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:18×8.5J
タイヤ内圧:前輪230kPa、後輪230kPa
テスト車両:排気量2500cc、後輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0068】
<高速走行性能>
上記テスト車両でサーキットを10周走行させたときの1周あたりの平均タイムが測定された。結果は、基準タイヤの前記平均タイムからの短縮タイムが、比較例1の前記短縮タイムを100とする指数で示されている。数値が大きい程、前記短縮タイムが大きく、高速走行性能が優れていることを示す。
【0069】
<ウェット性能>
上記テスト車両で、水深10mmかつ長さ20mの水たまりが設けられた半径100mのアスファルト路面を走行し、前輪の横加速度(速度55〜80km/hの前輪の平均横G)が計測された。結果は、基準タイヤの前記横加速度からの増加量が、比較例1の前記増加量を100とする指数で示されている。数値が大きい程、前記増加量が大きく、ウェット性能が優れていることを示す。
【0070】
なお、以下で示されるテスト結果において、高速走行性能とウェット性能との指数の合計が、高速走行性能とウェット性能との総合性能の評価指標として用いられても良い。
テストの結果が表1に示される。
【0071】
【表1】
【0072】
テストの結果、各実施例のタイヤは、優れた高速走行性能を発揮していることが確認できた。また、各実施例のタイヤは、ウェット性能が維持されていることも確認できた。
【0073】
比較例2として、
図5で示される第1陸部を有し、かつ、横サイプのサイプ壁に凹部が設けられていないタイヤが試作された。また、
図5で示される第1陸部を有し、かつ、途切れ横溝の角度を変化させたタイヤが試作された。各テストタイヤについて、上述と同様のテストが実施された。
テストの結果が表2に示される。
【0074】
【表2】
【0075】
表2に示されるように、各実施例のタイヤは、優れた高速走行性能を発揮していることが確認できた。また、各実施例のタイヤは、ウェット性能が維持されていることも確認できた。
【0076】
図5で示される第1陸部を有し、かつ、途切れ横溝の端部のエッジ間の角度θ2を変化させた実施例について、上述と同様のテストが実施された。
テストの結果が表3に示される。
【0077】
【表3】
【0078】
表3に示されるように、各実施例のタイヤは、優れた高速走行性能を発揮していることが確認できた。また、各実施例のタイヤは、ウェット性能が維持されていることも確認できた。
【0079】
図5で示される第1陸部を有し、かつ、セミオープンサイプの長さL6を変化させた実施例について、上述と同様のテストが実施された。
テストの結果が表4に示される。
【0080】
【表4】
【0081】
表4に示されるように、各実施例のタイヤは、優れた高速走行性能を発揮していることが確認できた。また、各実施例のタイヤは、ウェット性能が維持されていることも確認できた。
【0082】
図2で示される第1陸部及び
図4に示される途切れ横溝の断面形状を有し、かつ、途切れ横溝の最小の深さを変化させた実施例について、上述と同様のテストが実施された。
テストの結果が表5に示される。
【0083】
【表5】
【0084】
表5に示されるように、各実施例のタイヤは、優れた高速走行性能を発揮していることが確認できた。また、各実施例のタイヤは、ウェット性能が維持されていることも確認できた。
【0085】
比較例3として、
図6で示される第1陸部を有し、かつ、横サイプのサイプ壁に凹部が設けられていないタイヤが試作された。また、
図6で示される第1陸部を有し、かつ、途切れ横溝の溝幅及び深さを変化させたタイヤが試作された。各テストタイヤについて、上述と同様のテストが実施された。
テストの結果が表6に示される。
【0086】
【表6】
【0087】
表6に示されるように、各実施例のタイヤは、優れた高速走行性能を発揮していることが確認できた。また、各実施例のタイヤは、ウェット性能が維持されていることも確認できた。
【解決手段】トレッド部2を含むタイヤである。トレッド部2は、タイヤ周方向に連続して延びる第1主溝5と、第1主溝5に隣接する第1陸部7とを含む。第1陸部7には、第1主溝5から延びかつ第1陸部7内で途切れる少なくとも1本の途切れ横溝10と、タイヤ軸方向に延びかつ両端が第1陸部7内で途切れる少なくとも1本の横サイプ11とが設けられている。横サイプ11のサイプ壁12には、凹部13が設けられている。