【文献】
PRZEGLAD ELEKTROTECHNICZNY (ELECTRICAL REVIEW),2012年,p.310-312
【文献】
Chem. Ing. Tech.,2014年 3月,Vol.86, No.4,pp.529-537
【文献】
Abschlussbericht : Prozess- und Reaktorentwicklung fur die plasmaunterstutzte chlorfreie TFE Synthese[オンライン],p.1-8,29,54-69,URL:https://www.dbu.de/OPAC/ab/DBU-Abschlussbericht-AZ-28227.pdf 検索日 2019年10月9日
【文献】
Abschlussbericht : Prozess- und Reaktorentwicklung fur die plasmaunterstutzte chlorfreie TFE Synthese[オンライン],2012年,p.1-8,29,54-69,URL:https://www.dbu.de/OPAC/ab/DBU-Abschlussbericht-AZ-28227.pdf 検索日 2019年10月9日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保護ガス供給流(9)が、長手方向軸(7)に対して45°〜110°の角度で前記リアクタチャンバ(1)に導入され、更に、前記転化供給流(10)が前記長手方向軸(8)に沿って方向付けられる、請求項2に記載の方法。
前記保護ガス供給流(9)及び前記転化供給流(10)が、前記保護ガス供給流(9)の流量と前記転化供給流(10)の流量との流量比50〜700で前記リアクタチャンバ(1)に導入される、請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン及びポリプロピレンなどの従来の塊状ポリマーの合成のためのオレフィン炭化水素モノマーは、通常、水蒸気分解法により得られる。
【0003】
それに対して、部分的及び完全にフッ素化された(パーフルオロ化された)ポリマー(フルオロポリマー)の生成に必要な、テトラフルオロエチレン(TFE)及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)並びにフッ化ビニリデン又はフッ化ビニルなどのフッ素化オレフィンモノマーは、現在、産業規模の複雑な多段階方法を介してのみ入手可能である。この方法は、塩素の化学的性質が関与し、かなり大量のエネルギーを必要とするため、環境及び経済的側面に関して欠点がある。更に、多くの塩素化中間物及び副生物が生成され、フッ化水素酸に汚染された大量の水性塩酸廃棄物の、費用のかかる廃棄が必要となる。加えて、TFEは自然爆発しやすいため、世界中の多くの国で規制機関がTFEの輸送を認めておらず、製造場所で直接更なる処理を行う必要がある。
【0004】
フルオロポリマーは、その例外的な特性のために、半導体部門、環境保護の分野におけるシール及び耐食材料としての電気/電子システム、並びにエネルギー転化の技術、たとえば燃料電池などの先端技術の応用において、他のものに置き換えることができない。フルオロポリマーは、280℃を上回る連続動作温度を可能にし、通常、不燃性であり、高い誘電強度及び低い誘電損失、良好な機械的特性及び摺動特性、不活性挙動、並びに生体適合性を呈する。
【0005】
TFE及びHFPを生成するための最新の方法は、中間物としてクロロジフルオロメタン(R−22)を使用し、塩素、メタン、及びフッ化水素酸を基剤とする。第1のステップでは、トリクロロメタン及び多くの望ましくない副生物がメタンの部分的な塩素化によって得られ、その後、トリクロロメタンが、塩化アンチモン触媒の存在下でフッ化水素酸により更に処理されて、クロロジフルオロメタンを生じさせる。この化合物は、第3のステップにおいて800℃〜900℃で熱分解され、除去により中間物として得られたジフルオロカルベンが、その後の二量化を通してTFEになる。この方法は、塩酸、種々のクロロメタン、フッ化アンチモン、及びフルオロメタンを生じさせる。R−22の熱分解は、主に、気相のみにおいて管状リアクタ内で実施される。約64KJ/モルの吸熱反応のため、使用されている管状リアクタ内で温度勾配が生じ、転化及び選択度を低下させる。したがって、リアクタ内の収率は30〜40%にすぎないが、これは、低転化ではTFEに対する選択度が非常に高くなり、副生物の形成を低減させることができるため、意図的なものである。しかしながら、R−22ルートによるTFE合成は、多くの廃棄物を生じさせるため、これを処理し、分離し、通常、熱によって再利用しなければならない。
【0006】
したがって、より反応しにくい、塩素を含まない出発原料を基材として、特に、電気化学的フッ素化により産業規模で得られる少なくとも部分的にフッ素化された、又は更にはパーフルオロ化されたパラフィンから、TFE及びHFPなどの所望のモノマーの生成を可能にする、新しい方法及びリアクタが必要である。そのような新しい方法の開発が必要なのは、結果として得られるフルオロポリマーが、化学技術、バイオテクノロジー、自動車及び電子機器産業における重要な構成部品としての特殊プラスチックの生成に非常に重要であるからである。更に、フッ化水素酸により汚染された大量の水性塩酸廃棄物を減らすか、又は回避すべきである。
【0007】
フッ素化材料の分解に基づく代わりのTFE合成として、プラズマ又はアークなどの高エネルギー衝撃による方法が、たとえば、米国特許第2,902,521号、米国特許第2,709,182号、米国特許第3,133,871号、米国特許第2,709,192号、米国特許第3,133,871号、米国特許第3,009,966号、米国特許第3,471,546号、米国特許第3,904,501号、米国特許第4,849,554号、米国特許第4,898,645号、米国特許第4,973,773号、米国特許第5,611,896号、WO99/59385、米国特許第6,624,337号、米国特許第7,622,693号、及び米国特許第6,919,015号において報告されている。
【0008】
分解してフルオロアルケンを生成するフッ素化化合物は、たとえば、フッ化水素酸及び当技術分野で公知の短鎖脂肪族化合物を出発原料とした電気化学フッ素化により得られる。しかしながら、前述の塩素を含まないTFE合成の方法は、これまで、経済的な利益が限られていた。WO2010/039820に別のルートが記載されており、ここではフッ素化材料が流動床リアクタ内でマイクロ波照射を受ける。しかしながら、フッ素化アルケンを生成するための更なる方法が依然として必要であり、そのような方法のための装置により、R−22ルートの代わりとしての十分な転化及び収率を伴う合成が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明により、TFE及びHFPなどのフッ素化アルケンを直鎖又は分枝鎖フッ素化アルカンから直接入手できることがわかっている。したがって、複雑な多段階のR−22ルートを回避することができるため、この方法に関連する望ましくない大量の廃棄物も回避される。特に、本発明は塩素を含む化合物を必要としないので、塩酸又はクロロフルオロカーボンなどの副生物の形成が実質的に回避され、したがって、そのような副生物を廃棄する必要がない。
【0013】
本発明による方法は、フッ素化アルカンをフッ素化アルケンにプラズマ誘導転化することである。本方法は、プラズマリアクタにおいて実施される。
図1を参照して、本発明によるプラズマリアクタ及び本発明による方法を例示する。同様の要素は同じ参照符号により示される。
【0014】
リアクタ(1’)は、フッ素化アルケンを含む生成物流(14)を生成するための生成ラインの一部である。本明細書に示す方法は、プラズマ内でフッ素化アルカンを分解することによりフッ素化アルケンを生成する。好ましくは、生成されるフッ素化アルケンとしては、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、又は両方が挙げられる。
【0015】
リアクタ(1’)は、内部にリアクタチャンバ(1)を備える。リアクタチャンバ(1)はリアクタ壁(2)により制限される。リアクタチャンバ(1)は、長さ(6)と、直径(5)をもった略円形断面(4)とを有する。長さ(6)は、少なくとも直径以上である。リアクタチャンバ(6)の内側部分(7)は、長さ(6)に平行に延びるとともに断面(4)に垂直な長手方向軸(8)を含む。リアクタチャンバ(1)は、使用時に、転化反応が行われる反応ゾーン(0’)を含む。反応ゾーン(0’)はプラズマ(0)により生成される。プラズマ(0)は、マイクロ波源(13)からのマイクロ波により生成される。マイクロ波エネルギーは、導波路(15)によりリアクタチャンバに方向付けられてもよい。反応ゾーン(0’)のプラズマ(0)は、リアクタチャンバの内側部分(7)の軸(8)に沿って軸方向(12)及び半径方向(11)に延びる。反応ゾーン(0’)は、領域(0’)内で半径方向(11)に制限されて、リアクタ壁(2)に接触しないようになっている。反応ゾーン(0’)は、軸方向において軸(8)に沿った領域に制限される。プラズマを領域(0’)に制限するリアクタチャンバ内の流れ状態は、保護ガス流(9)のみにより、又は転化供給流(10)の流れと組み合わせて生成される。保護ガス供給流(9)は、入口(9a)、(9b)、又は(9c)又は複数の入口により、チャンバ(1)に導入される。入口(9a、9b、9c)はゾーン(0’)の上流に配置される。入口は、保護ガス供給流(9)が軸(8)に対してある角度で、かつ/又は転化供給流(10)に対してある角度で反応チャンバに入るように位置決めされる。転化される抽出物、すなわちアルカンを運ぶ転化供給流(10)は、入口(10a)又は複数の入口により、チャンバ(1)に導入される。それに代えて、ただし好ましくはそれに加えて、転化供給流(10)が、ゾーン(0’)の端又はゾーン(0’)より後の下流位置に位置する遠隔入口(10b)を介してチャンバ(1)に導入されてもよい。アルケンへの転化が反応ゾーン(0’)内で行われ、ここで生成物流(14)が発生する。好ましくは、転化は、転化供給流(10)内及び/又は反応ゾーン(0’)内に固体粒子がない状態で実施され、特にリアクタ及びその反応チャンバは、固体粒子を含む流動床を含む流動床リアクタではない。生成物流(14)は、出口(14a)を介してリアクタチャンバ(1)から出る。その後、生成物流(14)は、急冷を受けるために急冷ユニット(16)に入ってもよく、続いて浄化ステップに方向付けられてもよい。
【0016】
リアクタ及びそのチャンバの寸法は、所望の生成物の意図した処理量及び生成速度、並びにマイクロ波放射の印加周波数に応じて決まる。
【0017】
リアクタ及び方法、並びにそれらの構成要素について、以下でより詳細に説明する。
【0018】
プラズマ(0)
ガスがイオン化されると、プラズマが形成される。電荷担体の存在により、プラズマは導電性になるため、電磁場に強く影響される。生成されたプラズマは一般にグローを発するため、視覚的に観察可能でもある。
【0019】
好ましくは、プラズマ(0)はマイクロ波プラズマであり、これはマイクロ波放射により生成されることを意味する。プラズマは、ガスから生成されると有利である。概ね、任意のイオン化ガスを使用して、プラズマ(0)を生成することができる。好ましくは、方法の転化反応に対して化学的に不活性のガスが使用される。好ましくは、ガスが容易にイオン化され得る。好ましいガスは、1〜20eV、たとえば1〜10eV、又は10〜20eVの範囲の第1のイオン化エネルギーを有する。適切なガスの例としては、希ガスが挙げられる。好ましいガスはアルゴンである。
【0020】
マイクロ波プラズマの形成及び維持は、当技術分野で公知である。通常、マイクロ波プラズマ(0)は、マイクロ波源(13)からのガスにエネルギーを供給することによって生成される。マイクロ波プラズマを点火し永続させるのに十分なマイクロ波放射をもたらすマイクロ波源を使用することができる。プラズマ印加に有用な一般的なマイクロ波源としては、たとえばドリフト管、クライストロン、又はマグネトロンが挙げられる。マグネトロンが好ましい源である。
【0021】
マイクロ波は、概ね1mm〜1mの範囲の波長を有し、これは300GHz〜300MHzの周波数範囲に対応する。原則として、上記範囲のすべてのマイクロ波放射を使用することができる。しかしながら、実用上の理由で、電気通信以外の工業、科学、及び医療目的での無線周波(RF)エネルギーの使用のために国際的に確保されている、工業、科学、及び医療用(ISM)無線帯域から選択された周波数が使用される。好ましくは、915MHz、2.45GHz又は5.8GHz、より好ましくは、915MHz及び2.45GHzの周波数が使用される。
【0022】
マイクロ波放射は、パルスであっても連続的(連続波(CW))であってもよい。好ましくは、マイクロ波放射が連続的である。
【0023】
マイクロ波源(13)は、リアクタチャンバ(1)の外側に配置されてもよい。マイクロ波放射は、導波路(16)によって、リアクタチャンバ(1)に方向付けられ、供給されてもよい。導波路は、通常、円筒形又は円錐形又は同軸線の中空構造であり、当技術分野で公知である。導波路(16)及びリアクタチャンバ(2)は、導波路(16)の長手方向軸がリアクタチャンバ(2)の長手方向軸(7)に垂直であるように配置されてもよい。リアクタチャンバ(2)の長手方向軸は、導波路(16)の長手方向軸に平行であっても、他の方向であってもよい。一般的な導波路は、円形であり、最大約120mm、たとえば約80mm〜約100mmの範囲の内径を有してもよい。
【0024】
リアクタチャンバ(1)は、共振器として機能し得る金属チャンバ(2’)に挿入される。
【0025】
マイクロ波プラズマは、粒子若しくは繊維の存在下でマイクロ波放射を供給すること、マイクロ波照射をレーザ、圧電スパークと組み合わせることを含む当技術分野で公知の手段により、又はマイクロ波照射を減圧と組み合わせることにより点火され得る。好ましくは、マイクロ波プラズマは、イオン化ガスをマイクロ波照射と組み合わせた減圧に晒すことにより点火される。たとえば、リアクタチャンバ内の圧力を、約0.1ミリバール〜約500ミリバール、好ましくは約1ミリバール〜約100ミリバール、より好ましくは約5ミリバール〜約50ミリバール、より好ましくは約10ミリバール〜20ミリバールの範囲に低下させてもよい。プラズマの点火後、リアクタ内の圧力を、プラズマを維持しながら意図した反応を行うことができる圧力まで上昇させてもよい。通常、そのような圧力範囲は、約0.01バール〜約10バール、より好ましくは約0.8バール〜約1.2バールであってよい。
【0026】
リアクタチャンバ(1)
プラズマ(0)は、リアクタ(1’)のリアクタチャンバ(1)内で生成される。リアクタチャンバは、リアクタ壁(2)により少なくとも部分的に制限される。リアクタ壁(2)は、リアクタ(1’)の壁と同一でなくてよく、実際には、リアクタ壁(2)は、リアクタ(1’)の壁(2’)により少なくとも部分的に囲まれていてもよい。そのような壁(2’)は金属チャンバであっても、金属チャンバの一部であってもよい。そのような金属チャンバは、マイクロ波エネルギーの共振器として機能し得る。リアクタ壁(2)は入口及び出口を含み、プラズマ(0)を視覚的に観察するための検査窓を含んでよい。リアクタチャンバ(1)は、マイクロ波エネルギーにより引き起こされ持続されるか又は持続のみされるプラズマを伴う反応を保持するように設計される。リアクタチャンバ(1)及びそのリアクタ壁(2)は、これらの条件を満たし、動作状態にも耐えるように設計される。したがって、リアクタ壁(2)は、好ましくは、反応チャンバ内に存在する温度状態及び試薬状態において耐久性がある。マイクロ波放射は、リアクタチャンバ内の反応ゾーンに到達することができなければならず、プラズマ(0)が生成され維持され得るようにする。マイクロ波放射がリアクタ壁(2)を通って(反応チャンバ(1)内に配置されるか、又は反応チャンバ(1)の中心部分に連結された導波路(16)を通るだけでなく)反応ゾーン(0’)に到達する場合には、リアクタ壁(2)により、十分な量の放射がリアクタ壁(2)に貫入して反応ゾーン(0’)に到達することができる。好ましくは、リアクタ壁(2)は、マイクロ波を透過する領域を含む(又はマイクロ波を透過する領域からなる)。一実施形態において、リアクタ壁(2)全体がマイクロ波を透過する。マイクロ波透過領域又は材料は、通常、(25℃及び1〜10GHzにおいて)0より大きく最大10の複素誘電率ε
r’の実数部と、(25℃及び1〜10GHzにおいて)0より大きく最大0.001の複素誘電率ε
r”の虚数部とを有する。多くの材料について、複素誘電率は標準的な参考テキストで入手可能である。マイクロ波透過材料の例としては、アルミナ、石英ガラス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及び窒化ホウ素が挙げられる。
【0027】
リアクタ壁(2)全体がマイクロ波を透過する必要がなくてもよい。したがって、リアクタ壁(2)はマイクロ波を透過する少なくとも1つの領域を含んでよいが、一方で少なくとも1つの他の領域において、透過性が低く、実質的にマイクロ波を透過しないか、又はマイクロ波を透過しない。好ましくは、マイクロ波を透過する領域はコヒーレントである。好ましくは、リアクタ壁(2)は、リアクタ壁(2)の領域全体の少なくとも5%、好ましくはリアクタ壁(2)の領域全体の少なくとも20%、より好ましくはリアクタ壁(2)の領域全体の少なくとも40%、より好ましくはリアクタ壁(2)の領域全体の少なくとも60%、より好ましくはリアクタ壁(2)の領域全体の少なくとも80%、より好ましくはリアクタ壁(2)の領域全体の少なくとも90%を覆う、マイクロ波を透過する領域を呈する。
【0028】
リアクタチャンバ(1)は、円形又は略円形断面(4)(たとえば、楕円形断面、半円形断面、又は円形、半円形、又は楕円形によって最もよく近似され得る断面)を有してよい。円形又は略円形の断面により、他の断面と比べてリアクタ壁上の堆積物の形成が低減する。リアクタチャンバ(1)の略円形断面により、リアクタチャンバ(1)内のガス流の制御が容易になる。リアクタチャンバ(1)は、断面(14)に垂直な長さ(6)を更に有する。長さ(6)は、断面(4)の直径(5)に等しく、好ましくはこれより大きい。円形断面と比べて、略円形断面はいくつかの直径を有することができ、その場合、本明細書では最長の直径を直径(5)と呼ぶ。好ましい実施形態において、リアクタチャンバ(1)は管状、より好ましくは直線管状であり、これは曲がっておらず、又はS字型でないことを意味する。
【0029】
リアクタチャンバ(1)は、リアクタチャンバ(1)の全長(6)にわたって一定の直径(5)、又は長さ(6)に沿って変化する直径(5)をもった断面(4)を有することができるが、長さ(6)に沿って変化する直径(5)はあまり好ましくない。約2.45GHzのマイクロ波周波数を印加するために、リアクタチャンバは、好ましくは約3mm〜約86mm、好ましくは15mm〜42mmの内径を有する。
【0030】
リアクタチャンバ(1)の長さ(6)は、本発明による方法の反応ゾーン(0’)全体を含むのに十分な長さとすべきである。反応ゾーンの長さは、転化供給流及び保護ガス供給流の流速、並びにリアクタチャンバ(1)に供給されるマイクロ波放射の出力に応じて決まる。原則として、抽出物の転化を、転化供給流(10)のより高い流速を使用し、より大きいマイクロ波出力を供給することによって増加させてもよい。これにより、反応ゾーンの長さを増加させ、リアクタチャンバ(1)のより大きい長さ(6)が反応ゾーン(0’)を完全に含む必要があるようにしてもよい。望ましくは、反応ゾーン(0’)内で発生する生成物流(14)が、できるだけ早く反応チャンバ(1)から出て、急冷を受ける。これにより、望ましくない副反応が生じることを減らすか、又は回避することができ、所望のフッ素化アルケンの収率を向上させることができる。したがって、リアクタチャンバ(1)内での生成物流(14)の滞留時間を最小限にするように、リアクタチャンバ(1)の長さ(6)の上限を選択することができる。たとえば、リアクタチャンバ(6)の長さ(6)は、反応チャンバ内に生成された反応ゾーンの長さと同じか、又はそれよりもいくらか大きいだけであってよい。場合により、リアクタチャンバ(1)の長さ(6)を限定して、反応ゾーンが終わるところでリアクタチャンバが本質的に終わり、反応生成物の早急な処理ができるようにする必要があり得る。しかしながら、他の場合には、リアクタチャンバ(1)の長さ(6)を、反応ゾーンの長さを越えて延ばすことが有利となり得る。
【0031】
2.45MHzのマイクロ波周波数により生成されるプラズマ(0)によって反応が行われる一般的な実施形態において、リアクタチャンバ(1)は、約22mm〜約250mm、より好ましくは約43mm〜約160mmの長さ(6)を有する。
【0032】
本発明の別の実施形態において、915MHzの周波数を有するマイクロ波放射が印加される。概ね、2.45GHzの周波数を有するマイクロ波放射に有効な上記の考察のすべてが、915MHzのマイクロ波放射の場合にも当てはまる。本実施形態におけるリアクタチャンバは、好ましくは、約20mm〜約600mm、たとえば約100mm〜約450mm、又は約200mm〜約300mmの範囲の内径を有する。リアクタチャンバの長さは、少なくとも約120mm、たとえば少なくとも約500mmである。長さの上限としては、所望の反応状態に応じて、約300〜約2000mm又は約500〜約1700mmが挙げられる。保護ガス供給流のための少なくとも1つの入口と、反応ゾーンの開始部との間の距離は、通常、約100mm以下であり、より好ましくは約0mmである。上記の状態について、出口直径は、好ましくは約10mm〜約86mmの範囲であり、より好ましくは約15mm〜約50mmの範囲である。
【0033】
保護ガス供給流(9)
保護ガスは、保護ガス供給流(9)としてリアクタチャンバ(1)に導入される。保護ガスは、反応ゾーン(0’)の容積及び長さを制御して、限られた空間に制限された高プラズマ濃度を有するゾーンをもたらすように導入される。好ましくは、反応ゾーン(0’)は、リアクタチャンバ(1)の中心内側部分(7)に制限される。生成されたプラズマ(0)は一般にグローを発するため、保護ガス流の導入に対するプラズマの反応を視覚的に観察することができる。保護供給流(9)がないと、反応ゾーン(0’)内のプラズマ(0)は、移動し絡み合ういくつかの別個のフィラメントを含むように見える。本明細書に記載されるような保護供給流(9)のないプラズマの概略図が
図2Aに示される。
図2Aの円筒は、反応ゾーン、たとえば反応ゾーン(0’)を表す。
図2Aの矢印は、プラズマを維持するためのガス供給流を表す。プラズマ自体は、絡み合う線で表される。
【0034】
保護ガス流を導入することにより、プラズマフィラメントが合体し始め、最終的に、変動が明確に低減したこと又は変動が全くないことを示す、本質的に安定した中心プラズマビームが形成される。プラズマは、リアクタの長手方向軸に沿った中心領域内の位置に関して本質的に安定して、反応ゾーン(0’)を形成する。したがって、プラズマ(0)をその軸方向(12)で、長手方向軸(7)に沿った領域に制限し、その半径方向(11)で、リアクタ壁(2)から離れたリアクタチャンバ(1)の内部領域、好ましくは中心領域に制限することができる。プラズマ(0)の軸方向(12)は、リアクタチャンバの長手方向軸(8)に沿って延び、その半径方向はその軸方向に垂直である。反応ゾーン(0’)を形成するプラズマ(0)を、その半径方向(11)及び軸方向(12)でリアクタチャンバ(1)の内部部分(7)、好ましくは中心部分に制限することができる。前述したプラズマの概略図が
図2Bに示される。
図2Bは、第2の矢印が保護ガス供給流、たとえばガス供給流(9)を表すことを除いて、
図2Aと同じ構成を示す。
図2Aに示すような絡み合うプラズマではなく、今度はプラズマが反応ゾーンの中心領域に制限されている。制限されたプラズマが、
図2Bに、濃色の中実円筒として表される。
【0035】
プラズマの合体は、渦が保護ガス流により形成されることによるものであると考えられる。プラズマの合体は、最適な反応状態を可能にする条件で保護ガス流がリアクタに導入されるかどうかを制御するための手段である。好ましくは、渦がリアクタチャンバ(1)の長手方向軸(8)に沿って延びる。これにより、生成されたプラズマ(0)のプラズマフィラメントは、リアクタチャンバ(1)の長手方向軸(8)に沿って配置され得る。好ましくは、プラズマフィラメントは渦に沿って配置される。これにより、渦がフィラメントの収縮を可能にして、位置及び長手方向伸長が安定した太いプラズマビームを形成する。好ましくは、フィラメントは、最高電界強度及び最高マイクロ波濃度の点に集中するように収縮される。
【0036】
保護ガス供給流(9)を導入することによりプラズマフィラメントを集中させる効果を、磁場を重畳させることによって高めてもよい。重畳磁場を、マイクロ波周波放射と無線周波放射との組合せにより有利に印加することができる。無線周波放射を、当技術分野で公知の任意の手段、たとえば無線周波コイルにより印加してもよい。
【0037】
保護ガス供給流(9)は、リアクタチャンバ(1)内を流れて、前述の制限された反応ゾーン(0’)を生成し、かつ/又は維持するように設けられる。保護ガスをリアクタチャンバに供給して、所望の連続的な反応ゾーン(0’)が生成されるようにすべきである。保護ガス供給流は、1つ又は2つ以上の入口(9a)、(9b)、(9c)を通って反応チャンバ(1)に供給される。2つ以上の入口(9a)、(9b)、(9c)の場合、そのうちの少なくとも2つをリアクタチャンバ(1)の長手方向軸(8)に垂直な1つの平面に位置させてもよい。好ましくは、保護ガス供給流のためのすべての入口が、リアクタチャンバ(1)の長手方向軸に垂直な1つの平面に位置する。入口は、回転対称であるパターンに配置してもよい。たとえば、同じ平面に配置された2つの入口(第1の入口及び第2の入口)の場合、この平面内で第1の入口の位置を180°仮想回転させると、第1の入口が第2の入口の位置になる。3つの入口(第1、第2、及び第3の入口)の場合、同じようにして第1の入口を120°仮想回転させると、第1の入口が第2の入口の位置になり、第1の入口を240°仮想回転させると、第1の入口が第3の入口の位置になる。
【0038】
好ましくは、保護ガス供給流(9)のための少なくとも1つの入口(9a)、(9b)、又は(9c)は、保護ガス供給流(9)がリアクタチャンバ(1)の長手方向軸(8)に対して45°〜135°の角度でリアクタチャンバ(1)に入るように構成される。この角度は、保護ガス供給流(9)の流れと転化供給流(10)の流れとの相互作用によって生じ得る。好ましくは、1つ以上の入口(9a)は、リアクタ(1’)が連続使用されるときにリアクタチャンバ(1)内に存在する流れ状態において、保護ガス供給流(9)が、リアクタチャンバの長手方向軸(8)に対して110°〜65°、より好ましくは90°〜75°の角度でリアクタチャンバ(1)に入るように構成される。好ましくは、保護ガス供給流(9)が、リアクタチャンバ(1)の長手方向軸(8)に対して90°の角度で、すなわち長手方向軸(8)に垂直な角度でリアクタチャンバ(1)に導入される。
【0039】
好ましくは、保護ガス供給流のための1つ以上の入口(9a)、(9b)、(9c)は、反応ゾーン(0’)の上流に位置決めされる。好ましくは、少なくとも1つの入口(9a)、(9b)、又は(9c)と反応ゾーン(0’)との間の距離は、保護ガス供給流(9)の運動量を維持するように短い。好ましくは、少なくとも1つの入口(9a)、(9b)、又は(9c)と反応ゾーン(0)の開始部との間の距離が、10cmを超えるべきではない。より好ましくは、少なくとも1つの入口(9a)と反応ゾーン(0)の開始部との間の距離が、約50mm未満、好ましくは更に小さく、たとえば約10mm以下であり、場合により更には約0mmである。
【0040】
好ましくは、保護ガス供給流(9)のための1つ以上の入口(9a)、(9b)、又は(9c)は、転化供給流(10)が反応チャンバ(2)に入る前の位置、すなわち同じ高さで転化供給流に対して上流の位置に保護ガス流(9)を導入するように位置決めされる。
【0041】
少なくとも1つの入口(9a)、(9b)、(9c)の内径は、通常、約1mm〜約12mmの範囲であり、より好ましくは約2mm〜約6mmの範囲である。
【0042】
保護ガス供給流(9)は、0.1kg/m
3〜10.0kg/m
3、たとえば0.5kg/m
3〜8.5kg/m
3、又は1.0kg/m
3〜6.0kg/m
3、又は1.5kg/m
3〜4.5kg/m
3の密度を有してよい。本発明の文脈における「密度」は、基準密度、すなわち0℃及び1.01325バールにおける密度と理解される。更に、保護ガス供給流(9)が生成物ガスの沸点とは十分に異なる沸点を有して、その後の精留による生成物ガスの浄化を容易にすることが好ましい。好ましくは、保護ガス供給流(9)が、不活性ガス、フッ素化アルカン、水素、水蒸気、及びこれらの2つ以上の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む。不活性ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、不活性ガスはアルゴンである。フッ素化アルカンとして、本方法の動作状態において気体又は液体凝集状態である任意のフッ素化アルカンを使用することができる。好ましくは、フッ素化アルカンはテトラフルオロメタン、ジフルオロクロロメタン、又はこれらの混合物である。より好ましくは、フッ素化アルカンはテトラフルオロメタンである。適切なフッ素捕捉剤は、水素及びジフルオロメタンである。
【0043】
印加周波数が2.45GHzである本発明の一態様によれば、処理中の保護ガス供給流(9)の流量は、1L/分〜50L/分の範囲、好ましくは5L/分〜25L/分の範囲、より好ましくは10L/分〜15L/分の範囲である。
【0044】
前述した保護ガス供給流(9)のない方法では、処理中に生成された化合物がリアクタ壁(2)の内表面に付着することがある。このいわゆる「リアクタ付着物」は、副反応が画定されない表面で開始する、リアクタ壁(2)に生じたホットスポットがリアクタ壁の耐用寿命を低下させる、又は更には過熱によりリアクタ壁が完全に破損するなどの問題を生じさせるおそれがある。そのような過熱は、リアクタ壁(2)の内表面への炭素などの副生物の堆積が、リアクタ壁(2)の表面のこの副生物へのマイクロ波の結合と組合わさるによって生じ得る。リアクタ壁表面の固体材料の起こり得る堆積物も、リアクタ壁のマイクロ波透過性を低下させる。
【0045】
これらの問題は、本発明による保護ガス供給流(9)によって少なくとも実質的に防止されるか又は低減される。したがって、リアクタ壁のマイクロ波透過性は、好ましくは、リアクタ設計に応じて、1時間、1日、1週間、又は1ヶ月の動作当たり、5%未満、より好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満、より好ましくは0.1%未満低下する。好ましくは、リアクタ壁(2)のマイクロ波透過性は、本方法の動作中には実質的に低下しない。
【0046】
転化供給流(10)
転化供給流(10)は、フッ素化アルケンへの転化のために反応ゾーン(0’)に反応物を導入する。転化供給流(10)を反応ゾーン(0’)内のプラズマ(0)に接触させて生成物流(14)を発生させる。転化供給流(10)は、ゾーン(0’)内のプラズマ(0)を通って、又はプラズマ(0)に沿って進むことができる。好ましくは、転化供給流(10)はプラズマ(0)に通される。一実施形態において、追加の転化供給流(10)をプラズマのフェーディングテールに接触させ、すなわちプラズマの端部に向けることができる。これにより、プラズマのフェーディングテールゾーンにおける望ましくない副反応を抑制することによって、所望の生成物の収率を向上させることができる。
【0047】
転化供給流(10)は、1〜10の炭素原子を有する少なくとも1つのフッ素化直鎖又は分枝鎖アルカンを含む。少なくとも1つのフッ素化直鎖又は分枝鎖アルカンは、好ましくは1〜8の炭素原子、より好ましくは1〜6の炭素原子、より好ましくは1〜4の炭素原子を有する。好ましくは、少なくとも1つのフッ素化直鎖又は分枝鎖アルカンは、1、2、3、又は4の炭素原子を有する。少なくとも1つのフッ素化アルカンの例が、対応する炭化水素、たとえば、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、及び2,2,3−トリメチルブタンの構造に基づいて提示される。
【0048】
好ましくは、転化供給流(10)は、化学式(I)の少なくとも1つのフッ素化直鎖アルカンを含み、
【化1】
ここでR
1〜R
8は互いに独立してH又はFであり、nは0〜8の範囲の整数である。好ましくは、nは0〜7、より好ましくは0〜6、より好ましくは0〜5、より好ましくは0〜4、より好ましくは0〜3、より好ましくは0〜2の範囲の整数である。好ましくは、nは0、1、又は2である。
【0049】
好ましくは、転化供給流(10)中に存在する少なくとも1つのフッ素化直鎖又は分枝鎖アルカンが、気体又は液体状態である。好ましくは、フッ素化直鎖又は分枝鎖アルカンは、気体状態である。転化供給流中に存在するすべてのフッ素化直鎖又は分枝鎖アルカンが気体状態であることが最も好ましい。
【0050】
概ね、転化供給流中の少なくとも1つのフッ素化直鎖又は分枝鎖アルカンの濃度は、転化を実行できるようにするのに十分なものである。好ましくは、転化供給流(10)中の少なくとも1つのフッ素化直鎖又は分枝鎖アルカンの濃度は、約5〜約100体積パーセント(以下vol%)、たとえば約30〜約95vol%、又は約50〜約90vol%、又は約80〜約85vol%の範囲である。
【0051】
転化供給流(10)は、少なくとも1つの更なるガスを含んでもよい。好ましくは、所望のフッ素化アルケンに関する収率の増加、ターンオーバの増加、プラズマの安定性の増加、より良好な温度制御、プラズマ体積のより良好な制御など、方法への有利な影響を呈するガスが含まれる。好ましくは、更なるガスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、ジフルオロメタン、及びアルゴン、又はこれらの2つ以上の組合せからなる群から選択される。一部の好ましい場合には、更なるガスが水素又は一酸化炭素であり、一酸化炭素がより好ましい可能性がある。転化供給流(10)がマイクロ波プラズマを生成するためのガスとして作用するのに適した化合物を更に含むと有利となり得る。したがって、アルゴンも転化供給流中に存在すると、反応の円滑な進行に寄与することができる。転化供給流中の更なるガス又は更なるガスの混合物の濃度は、通常、約0〜約95vol%の範囲、たとえば約5〜約70vol%の範囲、又は約10〜約50vol%、又は約15〜約20vol%である。
【0052】
転化供給流(10)の流量は、通常、転化反応が良好な収率をもたらすのに十分な反応ゾーン(0’)における滞留時間をもたらすように選択される。好ましくは、転化供給流(10)の滞留時間は0.1〜3000ミリ秒、好ましくは1〜150ミリ秒、より好ましくは5〜15ミリ秒である。加えて、供給流(10)の流量を、保護ガス供給流(9)の流量及び流動挙動に適応させて、前述の制限された反応ゾーン(0’)を生成又は維持してもよい。本発明による方法において、約1〜約1000、好ましくは約50〜約700、たとえば約100〜約400、又は約400〜約700である、保護ガス供給流(9)の流量と転化供給流(10)の流量との比を使用することが更に好ましい可能性がある。
【0053】
好ましくは、転化供給流(10)が連続的にリアクタに通される。
【0054】
マイクロ波放射の2.45GHzの周波数が印加される本発明の一実施形態において、転化供給流(10)は、5mL/分〜5000mL/分、好ましくは30mL/分〜500mL/分の範囲の流量を有する。
【0055】
概ね、転化供給流(10)に含まれる少なくとも1つのフッ素化直鎖又は分枝鎖アルカンによって吸収される比エネルギーは、限定されない。好ましくは、転化供給流に含まれる少なくとも1つのフッ素化直鎖又は分枝鎖アルカンによって吸収される比エネルギーは、転化供給流に含まれる少なくとも1つのフッ素化直鎖又は分枝鎖アルカンに基づいて、約1000kJ/モル〜約500000kJ/モル、より好ましくは約5000kJ/モル〜約50000kJ/モルの範囲である。吸収された比エネルギーは、転化供給流に含まれる少なくとも1つのフッ素化直鎖又は分枝鎖アルカンによって吸収されたマイクロ波出力に関連する。吸収されたマイクロ波出力は、印加されたマイクロ波出力及び反射されたマイクロ波出力に基づいて決定される。反射されたマイクロ波出力を、たとえばダイオードを用いて電子的に、又は、たとえば、アイソレータの水負荷又はリアクタの冷却水の測定などの熱量測定により熱量測定的に測定することができる。
【0056】
転化供給流(10)は、1つ以上の入口(10a、10b)を介してリアクタチャンバ(1)に供給される。供給流(10)は、入口から反応チャンバ(1)を通って反応ゾーン(0)を介して反応チャンバ(1)の出口(14a)へ流れる。転化供給流(10)の流速は、反応ゾーン(0’)が安定して保持されつつ所望の転化が達成されるようなものとすべきである。転化供給流(10)のための入口(10a、10b)の内径は、通常、約0.2mm〜約16mmの範囲である。好ましくは、前述の状態について、転化供給流のための入口の内径は、約1mm〜約10mm、より好ましくは約2mm〜約4mmの範囲である。
【0057】
入口(10a)又は複数の入口が設けられ、転化供給流(10)がリアクタチャンバ(1)の長手方向軸(8)に沿って、又は長手方向軸(8)に対して約80°以下、好ましくは45°以下、たとえば、約10°未満、又は5°未満の角度で流れるようになっている。
【0058】
入口(10a)は、好ましくは、入口ノズルを介して転化供給流(10)をリアクタチャンバ(1)に供給する。好ましくは、リアクタチャンバの内径と入口ノズルの内径との比は、約3:1〜約6:1、より好ましくは約4:1〜約5:1である。入口(10a)を反応ゾーン(0’)の上流に、たとえば反応ゾーンの開始部に直接、又は開始部から距離をおいて位置させてもよい。転化供給流(10)が2つ以上の入口によりリアクタチャンバに供給される場合、異なる構成成分を有する、又は同じ構成成分を有するが異なる濃度を有する異なる転化供給流(10、10’)に異なる入口を使用することが可能である。また、反応ゾーン(0’)の開始部から距離をおいて入口(10a)を位置決めすることにより、異なる転化供給流(10、10’)を混合できるようにすると有用であり得る。また、入口(10a)を介して異なる位置で同じ又は異なる転化供給流(10)を供給することも可能である。たとえば、1つの入口(10a)を反応ゾーン(0’)の開始部より前、又は開始部に位置させてもよく、少なくとも1つの更なる入口(10a)を、反応ゾーンの開始部より後、たとえば、反応ゾーンの中央、又は反応ゾーンの端部、又は更には反応ゾーンが終わった後に位置させてもよい。本明細書において、反応ゾーンの端部の近く又は端部に位置する入口(10c)を「遠隔入口」と呼ぶ。遠隔入口により、プラズマのフェーディングテールでの供給が可能になり、したがって、好ましくは、遠隔入口が、プラズマに対して下流に十分に近接して位置する。この入口の内径は、通常、少なくとも転化供給流の10分の1〜転化供給流の2倍の範囲のガス流入を容易にする寸法を有する。
【0059】
生成物流(14)
生成物流(14)は、反応ゾーン(0’)で生成されたフッ素化アルケンを含み、転化供給流(10)が反応ゾーン(0’)のプラズマ(0)に接触した後又は接触している間に発生する。生成物流(14)は、反応ゾーン(0’)の下流に位置決めされた1つ以上の出口(14a)を介してリアクタチャンバ(1)から出る。生成物流(14)は、反応ゾーン内で生成されたフッ素化アルケンを含み、未反応の反応物及び副生物を更に含み得る。
【0060】
出口(14a)を通ってリアクタチャンバから出る生成物流(14)の流れ方向が、リアクタチャンバ(1)の長手方向軸(8)に本質的に平行であるか、又は長手方向軸(8)に沿うように、出口(14a)を位置決めすることができる。出口(14a)の内径は、通常、リアクタチャンバ(1)内の望ましくない逆圧を回避するか、又は最小限にすることができるように選択される。概ね、出口(14a)の直径は、リアクタチャンバ(1)の直径の範囲内である。たとえば、出口の直径とリアクタチャンバの直径との比は、約1:約0.3、好ましくは約0.95:約0.7であってよい。
【0061】
生成物流(14)は、任意で、急冷ステップd)を受けてもよい。概ね、急冷ステップを、当技術分野で公知の任意の方法により実施してもよい。急冷ステップを連続的又は不連続的に、又はこれらの組合せにより実施してもよい。しかしながら、急冷ステップが連続して実施されると有利となり得る。それぞれの急冷方法に応じて、生成物流(14)が冷却媒体を通るか、又は生成物流(14)が冷却媒体に沿って進む。冷却媒体も、同様に流動モードにあってよい。この場合、生成物流(14)は、冷却媒体に対して向流モード又は平行流モードにあってよい。
【0062】
ステップd)の冷却媒体は、固体(たとえば、冷却壁)、液体、又は気体状態であってよい。好ましくは、冷却媒体は液体又はガスである。ガスの場合、好ましくは、少なくとも1つの不活性ガスを使用してもよい。更に、ガスが生成物ガスの沸点とは十分に異なる沸点を有して、その後の精留による生成物ガスの浄化を容易にすることが好ましい。好ましくは、冷却媒体は、(室温及び大気圧の条件下で)水又は水溶液などの液体である。より好ましくは、冷却媒体は、フッ化水素酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カルシウムの水溶液などのフッ素捕捉剤の水溶液である。
【0063】
冷却媒体は、生成物流に接触する前に、最高約100℃、好ましくは最高約50℃の温度を有することができる。概ね、起こり得る有害な副反応又は逆反応の時間を最小限にするように、冷却を行うべきである。結果として、冷却媒体の温度及び量は、生成物流の非常に急速な冷却を行うのに十分なものであるべきである。したがって、ステップd)で、生成物流(14)が、約10K/秒〜約5000K/秒、好ましくは約100K/秒〜約1000K/秒の冷却速度で冷却されると好ましい可能性がある。生成物流(14)の温度を、当業者に公知の任意の手段により測定してもよい。例として、抵抗温度計及び熱電対が挙げられる。
【0064】
概ね、本発明による方法のステップa)〜c)を、塩素、塩素を含む化合物、又は塩素及び塩素を含む化合物の存在下で実行してもよい。しかしながら、好ましくは、ステップa)〜c)は、塩素、塩素を含む化合物、又は塩素及び塩素を含む化合物が実質的に存在しない状態で実行される。最も好ましい実施形態において、供給流は、塩素及び塩素を含む化合物を含まない。この文脈で使用される「塩素及び塩素を含む化合物を含まない」という用語は、塩素及び塩素を含む化合物が全く含まれていないか、又は微量の不純物にのみ含まれることを意味する。たとえば、供給流(転化供給流及び保護ガス供給流)中の塩素及び塩素を含む化合物の濃度は、全体で多くても500ppm、より好ましくは多くても100ppmである。
【0065】
生成物流(14)が浄化ステップe)を受けてもよい。好ましくは、生成物流は、蒸留、より好ましくは精留などの熱分離法により浄化される。したがって、本方法で使用されるガスが急冷ステップ内で凝縮可能であり、これらのガスが互いに十分に異なる沸点を有すると有利である。
【0066】
本発明を以下の実施例によって更に説明するが、本発明をこれらの実施例に限定する意図はない。
【実施例】
【0067】
以下で説明する実施例は、
図1Aに示すリアクタにおいて実施された。リアクタは、長さ94mm、内径40mmの管状の石英ガラスリアクタチャンバを含んでいた。石英管が共振器として金属チャンバに挿入された。マイクロ波源が、導波路(86mm幅×43mm高さ)を介して共振器(2)に連結された。抽出物が、リアクタチャンバの上部の入口(
図1aに示す(入口10a))により、長手方向軸に沿ってリアクタチャンバに供給された。保護ガス供給流が、
図1Aに示す入口(9c)によりリアクタチャンバの長手方向軸に対して90°の角度でリアクタチャンバに導入された。リアクタチャンバの底部で、生成物供給流(14)が出口(14a)を介して急冷ユニット内に方向付けられた。
【0068】
実施例を実施する前に、装置全体がアルゴンで15分間洗浄された。その後、リアクタ内の圧力を低下させて、15分間にわたり15ミリバールに設定した。2200Wのマイクロ波出力(連続波(cw))が2分間印加され(2.45GHz)、これによりプラズマが点火された。その後、マイクロ波出力を500W(cw)に低下させた。周囲圧力に到達するようにアルゴンが導入された。
【0069】
実施例1:n−パーフルオロブタンの転化
接線方向に導入された5L/分のアルゴン流により、リアクタチャンバの中心領域に制限されたプラズマビームが生成された。中心領域に制限されたプラズマの写真が撮影され、
図3に示されている。写真はリアクタ壁の円形観察窓から撮影され、リアクタゾーンを示す。写真の中心の明るい垂直線がプラズマであった。写真に示すように、プラズマは狭い中心領域に制限された。転化供給流のための入口を介して、n−パーフルオロブタンが35mL/分の流量でリアクタに導入された。反応ゾーンを出た後、ガスが水酸化カリウムの水溶液により急冷された。生成物ガスはガスクロマトグラフィーを用いて分析された。少なくとも1つのフッ素化直鎖又は分枝鎖アルカンにより吸収された吸収マイクロ波出力に従う生成物流(反応生成物のモル分率)の組成が表1に示される。
【表1】
【0070】
実施例2:20vol%の水素の存在下におけるn−パーフルオロブタンの転化
接線方向に導入された5L/分のアルゴン流により、プラズマビームが生成された。転化供給流のための入口を介して、35mL/分のn−パーフルオロブタンと7mL/分のH
2とがリアクタチャンバに導入された。反応ゾーンを出た後、ガスが水酸化カリウムの水溶液により急冷された。生成物ガスはガスクロマトグラフィーにより分析された。少なくとも1つのフッ素化直鎖又は分枝鎖アルカンにより吸収された吸収マイクロ波出力に従う生成物流(反応生成物のモル分率)の組成が表2に示される。
【表2】
【0071】
実施例3:n−パーフルオロエタンの転化
接線方向に導入された5L/分のアルゴン流により、プラズマビームがリアクタチャンバの中心領域に制限された。転化供給流のための入口を介して、n−パーフルオロエタンが35mL/分の流量でリアクタチャンバに導入された。反応ゾーンを出た後、ガスが水酸化カリウムの水溶液により急冷された。生成物ガスはガスクロマトグラフィーを用いて分析された。少なくとも1つのフッ素化直鎖又は分枝鎖アルカンにより吸収された吸収マイクロ波出力に従う生成物流(反応生成物のモル分率)の組成が表3に示される。
【0072】
【表3】
【0073】
ガスクロマトグラフィー
ガスクロマトグラフィー(GC)分析は、ヒューレットパッカード5890シリーズII機械で実施された。カラムは「カーボパックCメッシュ80/100」を備え、6mの長さを有していた。キャリアガスとして、16mL/分の流量でヘリウムが使用された。基準流量は60mL/分であった。開始温度は40℃で、5分間保持し、その後、温度を25℃/分ずつ110℃まで上昇させ、110℃で10分間一定に維持した。検出器として、熱伝導性検出器が使用された。
【0074】
保持時間は以下のとおりであった。
【表4】