(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の代表的な実施形態を例示する目的でより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
【0011】
本開示で言及する特性値(具体的にはボールタック、ローリングホイールタック、剥離力及び保持力)は、それぞれ、本開示の実施例に記載された方法又はこれらと同等であることが当業者に理解される方法で測定される値である。
【0012】
本開示の一実施態様の粘着積層体は、基材と、基材上に配置された感圧接着層とを含む。感圧接着層は、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、軟化点が70℃以上の第1粘着付与剤、及び軟化点が50℃以下の第2粘着付与剤を含む。スチレン−イソプレン−スチレン共重合体は、感圧接着層に、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、第1粘着付与剤及び第2粘着付与剤の合計100質量部に対して53質量部以上の量で含まれる。第2粘着付与剤は感圧接着層にスチレン−イソプレン−スチレン共重合体100質量部に対して0.5質量部以上16質量部以下の量で含まれる。なお、本開示における軟化点は、JIS K 2207(2006年版)環球式での測定に準拠する。
【0013】
基材は、用途に応じて様々な材料及び物品であってよく、例えば紙、ポリマーフィルム、金属板、織布、不織布、フォーム、装飾シート、化粧板、壁紙、床材などが挙げられる。基材が複数の層から構成される積層体であってもよい。基材がある物品の一部、例えば装飾シートの一部であってもよい。基材は、感圧接着層との結合面にプライマー処理、コロナ処理、フレーム処理などの表面処理を有してもよい。
【0014】
例えば、粘着積層体がテープである実施態様では、基材としてテープの支持体として用いることのできる従来公知の材料を含むものを使用することができ、例えばクラフト紙、クレープ紙、和紙などの紙、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリマーを含有するフィルム、ラミネート紙、織布、不織布、ポリマーフォームなどが挙げられる。ポリマーフィルムは1軸又は2軸延伸されていてもよい。ボックスシーリングテープ用途では、強度、耐候性などの点で、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムが有利に使用される。
【0015】
基材の寸法は粘着積層体の形態及び用途に応じて種々設定することができる。例えば粘着積層体がテープである実施態様では、基材の幅は一般に約9mm以上、約15mm以上又は約30mm以上、約150mm以下、約100mm以下又は約70mm以下とすることができ、基材の厚さは一般に約10μm以上、約25μm以上又は約40μm以上、約500μm以下、約200μm以下又は約125μm以下とすることができる。
【0016】
基材は、感圧接着層の配置された面の反対面(背面)に剥離処理を有してもよい。粘着積層体がテープである実施態様では、基材は背面に剥離処理を有することが一般的であり、これにより使用時のテープの引き出しを滑らかにすることができる。剥離処理として、シリコーン系、長鎖アルキル系又はフッ素系の剥離処理剤を用いたコーティングが挙げられる。
【0017】
基材が紙など吸収性を有する材料である場合、バリア層を基材に形成した後、バリア層の上に剥離処理を行ってもよい。バリア層に含まれる材料として、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド、又は尿素ホルムアルデヒド樹脂などのエラストマー、ポリアミド(例えばナイロン)、ポリオレフィン(例えばポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテート、エチレン−プロピレン共重合体、ポリメチルメタクリレート、熱可塑性ゴムブロック共重合体などの熱可塑性樹脂、並びにこれらの配合物及び混合物が挙げられる。
【0018】
感圧接着層は粘着性ポリマーとしてスチレン−イソプレン−スチレン(SIS)共重合体を含む。スチレン−イソプレン−スチレン共重合体はハードセグメントとソフトセグメントを有するブロック共重合体であり、タック、凝集性、塗工性(例えば積層体を製造する際に厚み等をほぼ均一にして塗工できること)、加工性などに優れている。
【0019】
スチレン−イソプレン−スチレン共重合体は、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、第1粘着付与剤、及び第2粘着付与剤の合計100質量部に対して、感圧接着層に53質量部以上の量で含まれる。いくつかの実施態様では、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体は、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、第1粘着付与剤、及び第2粘着付与剤の合計100質量部に対して、感圧接着層に約55質量部以上又は約58質量部以上、約70質量部以下又は約65質量部以下の量で含まれる。スチレン−イソプレン−スチレン共重合体の量が上記範囲であることにより、低温タックと高温保持力のバランスに優れた接着特性を感圧接着層に付与することができる。
【0020】
スチレン−イソプレン−スチレン共重合体のスチレン量は、一般に約10%以上、約12%以上又は約14%以上、約30%以下、約25%以下又は約20%以下である。スチレン量が上記範囲のスチレン−イソプレン−スチレン共重合体は、高温保持力、タック、及び加工性のバランスに優れている。例えば、感圧接着層自身の凝集力と接着初期の濡れ広がり性をバランスよく保持することができる。また、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体原料をペレット形状のまま、ホッパー等の投入口に搬送することができる。
【0021】
スチレン−イソプレン−スチレン共重合体のジブロック量は、一般に約5%以上、約8%以上又は約10%以上、約50%以下、約45%以下又は約40%以下である。ジブロック量が上記範囲のスチレン−イソプレン−スチレン共重合体は、高温保持力及びタックのバランスに優れている。例えば、感圧接着層自身の凝集力と接着初期の濡れ広がり性をバランスよく保持することができる。
【0022】
スチレン−イソプレン−スチレン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、一般に約3万以上、約5万以上又は約7万以上、約100万以下、約50万以下又は約30万以下である。
【0023】
スチレン−イソプレン−スチレン共重合体の300%モジュラスは、JIS K 6251に準拠して測定したときに、一般に約0.3MPa以上、約0.5MPa以上又は約0.7MPa以上、約3.0MPa以下、約2.5MPa以下又は約2.0MPa以下である。300%モジュラスが上記範囲のスチレン−イソプレン−スチレン共重合体は、高温保持力、タック、及び塗工性のバランスに優れている。
【0024】
スチレン−イソプレン−スチレン共重合体として、例えばQuintac(商標)(日本ゼオン株式会社)、Kraton(商標)D SISポリマー(クレイトンポリマージャパン株式会社)などを使用することができる。
【0025】
感圧接着層は、接着特性を損なわない範囲で、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体以外に、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系エラストマーを含んでもよく、例えば、感圧接着層中の全重合体の約20質量%以下、約15質量%以下、又は約10質量%以下が、上記オレフィン系エラストマーであってもよい。一実施態様では、感圧接着層はスチレン−イソプレン−スチレン共重合体以外の粘着性ポリマーを含まない。
【0026】
第1粘着付与剤として、軟化点が70℃以上の様々な粘着付与剤を使用することができる。第1粘着付与剤として軟化点が70℃以上の粘着付与剤を以下説明する軟化点が50℃以下の第2粘着付与剤と組み合わせて使用することにより、低温タックを損なわずに高温保持力を維持することができる。そのような粘着付与剤として、例えば、脂肪族系石油樹脂、脂環系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、ロジン系樹脂、テルペン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、クマロン−インデン樹脂、及びそれらの誘導体などを挙げることができる。第1粘着付与剤は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。スチレン−イソプレン−スチレン共重合体との相溶性が良好であることから、第1粘着付与剤として脂肪族系石油樹脂を用いることが有利である。
【0027】
いくつかの実施態様では、第1粘着付与剤の軟化点は、約80℃以上又は約90℃以上、約130℃以下又は約120℃以下である。
【0028】
第1粘着付与剤の量は、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体100質量部に対して、一般に約30質量部以上又は約50質量部以上、約150質量部以下又は約120質量部以下である。第1粘着付与剤の量を上記範囲とすることにより、タック及び凝集力の両方をバランスよく得ることができる。
【0029】
第2粘着付与剤として、軟化点が50℃以下の様々な粘着付与剤を使用することができる。第2粘着付与剤は感圧接着層にスチレン−イソプレン−スチレン共重合体100質量部に対して0.5質量部以上16質量部以下の量で含まれる。感圧接着層が第2粘着付与剤を所定量含むことにより、高温保持力を損なわずに低温タックを感圧接着層に付与することができる。そのような粘着付与剤として、例えば、脂肪族系石油樹脂、脂環系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、ロジン系樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、クマロン−インデン樹脂、及びそれらの誘導体などを挙げることができる。第2粘着付与剤は単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。いくつかの実施態様では、第2粘着付与剤は脂環構造を含む化合物であり、具体的には脂環系石油樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂などが挙げられる。第2粘着付与剤がテルペンフェノール樹脂であることが望ましい。この点、いかなる理論に拘束される訳ではないが、テルペンフェノール樹脂に含まれるフェノール性水酸基が感圧接着層の凝集力の維持に特に有利に寄与するものと考えられる。
【0030】
いくつかの実施態様では、第2粘着付与剤の軟化点は、約10℃以上又は約20℃以上、約40℃以下又は約35℃以下である。
【0031】
いくつかの実施態様では、第2粘着付与剤の量は、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体100質量部に対して、約1質量部以上又は約1.5質量部以上、約15質量部以下又は約12質量部以下である。
【0032】
一実施態様において、感圧接着層はプロセス油を含まない。プロセス油はホットメルト型粘着剤組成物の軟化剤として知られており、例えば、ナフテン系オイル、芳香族系オイル、パラフィン系オイルなどが挙げられる。感圧接着層がプロセス油を含まないことにより、高温保持力を高めることができる。
【0033】
感圧接着層は、接着特性を損なわない限りにおいて、必要に応じて酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、充填剤などの添加剤を含んでもよい。
【0034】
粘着積層体は、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、第1粘着付与剤、第2粘着付与剤、及び必要に応じて添加剤を含む粘着剤組成物を、ホットメルトコーターなどを用い基材上に塗工して、基材上に感圧接着層を形成することにより製造することができる。粘着積層体は、粘着剤組成物を、必要に応じて剥離処理を施したライナー上に塗工して感圧接着層を形成し、その後熱ラミネートなどにより基材上に感圧接着層を転写することによっても製造することができる。粘着剤組成物は、溶剤系、エマルジョンなどの水系、又は無溶剤系であってよい。
【0035】
粘着剤組成物は、塗工性の点から、190℃での溶融粘度が、約1,000mPa・s以上又は約2,000mPa・s以上、約500,000mPa・s以下又は約400,000mPa・s以下であることが有利である。
【0036】
感圧接着層の厚さは、一般に約5μm以上、約10μm以上又は約15μm以上、約100μm以下、約80μm以下又は約50μm以下である。感圧接着層の厚さを大きくすると低温タック及び高温保持力を高めることができるがコストの面で不利になる。いくつかの実施態様では、コストの観点から、所望の接着特性が得られる限り感圧接着層の厚さは小さくされ、例えば感圧接着層の厚さは約40μm以下又は約30μm以下である。
【0037】
粘着積層体は、感圧接着層の上にライナーを備えてもよい。ライナーとして、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、酢酸セルロースなどのプラスチック材料、紙、及び前記プラスチック材料で被覆された紙などを挙げることができる。これらのライナーは、シリコーン、フッ素樹脂、長鎖アルキル樹脂などにより剥離処理した表面を有してもよい。
【0038】
一実施態様では、粘着積層体の感圧接着層のボールタックが、JIS Z 0237(2000年版)に準拠して5℃で測定したときに4以上、5以上又は6以上である。
【0039】
一実施態様では、粘着積層体の感圧接着層の撥水処理表面に対する保持力が、JIS Z 0237(2000年版)に準拠して40℃、荷重1kgで測定したときに約100分以上、約500分以上、又は約1000分以上である。
【0040】
粘着積層体はテープ(ロール状)の形態であってもよく、シートの形態であってもよい。
【0041】
本開示の粘着積層体は、低温タック及び高温保持力を優れたバランスで備えている。本開示の粘着積層体は、例えば農業用途の撥水段ボール箱に適用されるボックスシーリングテープ、屋内外の広告、装飾などの目的に使用される装飾シートなどとして使用することができる。
【実施例】
【0042】
以下の実施例において、本開示の実施形態をより具体的に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0043】
本実施例において使用した材料を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
<例1〜7及び比較例1〜5>
表2に示す配合で各成分を含む粘着剤組成物を、押出ホットメルトコーティングを用いて厚さ40μmの2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム上に塗工して、OPPフィルム上に厚さ40μmの感圧接着層を形成することにより、例1〜7及び比較例1〜5の粘着積層体を作製した。M100/1076は、Quintone(商標)M100 98質量%とIrganox(商標)1076 2質量%の混合物である。
【0046】
<例8及び比較例6>
表3に示す配合で各成分を含む粘着剤組成物を、押出ホットメルトコーティングを用いて厚さ40μmの2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム上に厚さが24μm程度となるように塗工して、OPPフィルム上に感圧接着層を形成することにより、例8及び比較例6の粘着積層体を作製した。
【0047】
<比較例7>
比較例7の粘着積層体として、カートンテープNo.640−PF(天然ゴム系粘着剤、ニチバン株式会社)を使用した。
【0048】
以下の手順で粘着積層体の特性を評価した。
【0049】
<剥離力>
被着体はステンレススチール又は撥水段ボールである。JIS Z 0237(2000年版)に準拠して、試験温度23℃、相対湿度50%で180度剥離を測定する。
【0050】
<ボールタック>
JIS Z 0237(2000年版)に準拠して斜面角度20度、温度5±1℃、10±1℃、又は23±1℃でボールタックを測定する。
【0051】
<ローリングホイールタック試験>
試験は5±1℃、10±1℃、又は23±1℃の室内で行う。サンプル及び試験機は室内で10分以上放置した後用いる。サンプルの背面に両面テープを貼り付け、ローリングホイールタック試験機のサンプルを貼り付ける位置に両面テープを気泡が入らないように貼る。ローリングホイールをメチルエチルケトン(MEK)で拭いた後、ヘキサンで拭き、試験機にセットする。ストッパーをゆっくりと上げてホイールを転がし、ホイールが停止した位置に印をつける。手でホイールを押さえながらゆっくりとホイールを動かし、ホイールとサンプルが最初に接触する位置に印をつける。印をつけた2点間の距離を測定する。距離が短いほどタックが大きいことを示す。
【0052】
<保持力>
JIS Z 0237(2000年版)に準拠して保持力を測定する。被着体はステンレススチール又は撥水段ボールである。テープ寸法は25mm×25mmである。700gのローラーを用いてサンプルを被着体に適用する。試験荷重は1kg又は2kgである。試験温度は23℃又は40℃である。
【0053】
評価結果を表2及び表3に示す。
【0054】
【表2-1】
【0055】
【表2-2】
【0056】
【表3】