特許第6932081号(P6932081)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6932081イソシアネートから誘導された(メタ)アクリレート含有ポリマー化合物を含む、フッ素非含有組成物を使用して繊維基材を処理するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6932081
(24)【登録日】2021年8月19日
(45)【発行日】2021年9月8日
(54)【発明の名称】イソシアネートから誘導された(メタ)アクリレート含有ポリマー化合物を含む、フッ素非含有組成物を使用して繊維基材を処理するための方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/263 20060101AFI20210826BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20210826BHJP
【FI】
   D06M15/263
   C08G18/67 010
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-542144(P2017-542144)
(86)(22)【出願日】2016年2月5日
(65)【公表番号】特表2018-506657(P2018-506657A)
(43)【公表日】2018年3月8日
(86)【国際出願番号】US2016016713
(87)【国際公開番号】WO2016130415
(87)【国際公開日】20160818
【審査請求日】2019年2月4日
(31)【優先権主張番号】62/115,937
(32)【優先日】2015年2月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】コッペンズ, ダーク, エム.
(72)【発明者】
【氏名】ダムス, ルドルフ, ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジャリワラ, チェタン, ピー.
【審査官】 櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第00448399(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00−15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材を処理する方法であって、
前記方法は、フッ素非含有処理組成物を、前記繊維基材を撥水性とするのに十分な量で適用することを含み、
前記処理組成物は、少なくとも1種のイソシアネートから誘導された基と、少なくとも16個の炭素原子を有する少なくとも1種の炭化水素基と、を含む少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーの重合から誘導された、1種以上のポリマー化合物を含み、
前記1種以上のポリマー化合物の少なくとも70重量%が、少なくとも1種のイソシアネートから誘導された基と、16〜60個の炭素原子を有する少なくとも1種の炭化水素基と、を含む(メタ)アクリレートモノマーの重合から得られたものであり、
前記撥水性が、AATCC Technical Manual 2001に収載されている試験法22−1996である噴霧評価試験により測定するとき、前記基材の最小初期噴霧評価が少なくとも80であることを意味する、方法。
【請求項2】
前記1種以上のポリマー化合物が、少なくとも1種のイソシアネートから誘導された基と、16〜60個の炭素原子を有する少なくとも1種の炭化水素基と、を含む少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーの重合から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理組成物が、以下の式:
−NH−C(O)O−L−OC(O)C(R)=CH (式I)、
−X−C(O)NH−L−OC(O)C(R)=CH (式II)、及び
−X−C(O)NH−Q−NHC(O)O−L−OC(O)C(R)=CH (式III)
[式中、R、R及びRは、独立して、少なくとも16個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
、R及びRは、独立して、H又はCHであり、
、L及びLは、独立して、2〜10個の炭素原子を有する分枝状若しくは直鎖状アルキレン基、アリーレン基又はこれらの組み合わせであり、
及びXは、独立して、O、S、−NH又は−N(R)(式中、Rは、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基である。)であり、かつ
Qは、イソシアネート残基である。]のうちの少なくとも1種を有する少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーの重合から誘導された、1種以上のポリマー化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記(メタ)アクリレートモノマー中に存在する前記イソシアネートから誘導された基が、ウレタン基又は尿素基である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1種以上のポリマー化合物が、少なくとも1種のイソシアネートから誘導された基と、16〜60個の炭素原子を有する少なくとも1種の炭化水素基と、を含む少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーの、平均して少なくとも10個の繰り返し単位を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1種以上のポリマー化合物を製造するための反応混合物が、耐久性を高める(メタ)アクリレートを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が、界面活性剤、凝集溶剤、凍結防止溶媒、乳化剤、又は1種以上の微生物に対する安定剤から選択される1種以上の添加剤を任意に含む水性分散液である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記繊維基材が、織物、革、カーペット、紙及び不織布の群から選択される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[背景]
繊維基材を処理し、基材の撥水性を高めるための組成物が知られており、文献、例えば、「Fluorinated Surfactants and Repellents」,E.Kissa,Surfactant Science Series,vol.97,Marcel Dekker,New York,Chapter 12,p.516−551、又は「Chemistry and Technology of Silicones」,W.Noll,Academic Press,New York,Chapter 10,p.585−595に記載されているが、高い撥水性、特に高い初期撥水性、また、特定の条件においては、高い撥水性の耐久性を提供する組成物、特にフッ素非含有組成物への必要性が継続して存在する。
【0002】
[開示の概要]
本開示は、フッ素非含有繊維処理組成物を使用して繊維基材を処理する方法を提供する。
【0003】
一実施形態において、繊維基材を処理する方法が提供され、方法は、フッ素非含有処理組成物を、繊維基材を撥水性とするのに十分な量で適用することを含み、処理組成物は、少なくとも1種(典型的には1種)のイソシアネートから誘導された基と、少なくとも16個の炭素原子(また、いくつかの実施形態においては最大60個の炭素原子)を有する少なくとも1種(典型的には1種)の炭化水素基と、を含む少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーの重合から誘導された、1種以上のポリマー化合物を含む。
【0004】
他の一実施形態において、繊維基材を処理する方法が提供され、方法は、フッ素非含有処理組成物を、繊維基材を撥水性とするのに十分な量で適用することを含み、処理組成物は、以下の式:
1837−NH−C(O)O−CHCH−OC(O)C(R)=CH (式Ia)、
1837OC(O)NH−CHCH−OC(O)C(R)=CH (式IIa)、又は
1837O−C(O)NH−C−NHC(O)O−CHCH−OC(O)C(R)=CH (式IIIa)
(式中、R、R及びRは、独立して、H又はCHである。)のうちの少なくとも1種を有する少なくとも1種の(メタ)アクリレートの重合から誘導された、1種以上のポリマー化合物を含む。
【0005】
他の一実施形態において、本開示の方法によって処理された繊維基材が提供される。繊維基材は、織物、革、カーペット、紙及び不織布の群から選択することができる。
【0006】
本明細書において、「フッ素非含有」処理組成物とは、濃縮物又は即時使用可能な処理組成物であるかを問わず、処理組成物が、固形分に基づいて1重量パーセント(1重量%)未満のフッ素を、処理組成物中に含むという意味である。特定の実施形態において、「フッ素非含有」処理組成物とは、処理組成物が、0.5重量%未満、又は0.1重量%、又は0.01重量%未満を含むという意味である。フッ素は、有機フッ素含有化合物又は無機フッ素含有化合物の形態であってよい。
【0007】
用語「ポリマー」又は「ポリマー化合物」は、少なくとも10個の繰り返し単位を有する化合物を含む。これには、ホモポリマー及びコポリマー(2種以上のモノマー単位を有するものであり、ターポリマー、テトラポリマー等を含む)が含まれる。このようなポリマー化合物の重量平均分子量は、少なくとも3000ダルトンである。
【0008】
用語「残基」は、反応後に残存している元の有機分子の一部を意味する。
【0009】
用語「炭化水素」は、水素及び炭素を含有する、任意の実質的にフッ素非含有の有機基を指す。このような炭化水素基は、環式(芳香環を含む)、直鎖又は分枝鎖であってよい。好適な炭化水素基としては、アルキル基、アルキレン基、アリーレン基等が挙げられる。特に指定がない限り、炭化水素基は、典型的には1〜60個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、炭化水素基は、1〜30個の炭素原子、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子又は1〜3個の炭素原子を含有する。
【0010】
用語「アルキル」は、アルカンの残基である1価の基を指し、直鎖、分枝鎖、環式及び二環式のアルキル基、並びにこれらの組み合わせを含み、非置換及び置換されたアルキル基の両方を含む。特に指定がない限り、アルキル基は、典型的には1〜60個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1〜30個の炭素原子、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子又は1〜3個の炭素原子を含有する。「アルキル」基の例としては、これらに限定されるものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、イソブチル、t−ブチル、イソプロピル、n−オクチル、n−ヘプチル、エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、オクタデシル、ベヘニル、アダマンチル、ノルボルニル等が挙げられる。
【0011】
用語「アルキレン」は、アルカンの残基である2価の基を指し、直鎖、分枝鎖、環式、二環式又はこれらの組み合わせの基を含む。特に指定がない限り、アルキレン基は、典型的には1〜60個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、アルキレン基は、1〜30個の炭素原子、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、2〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子又は1〜4個の炭素原子を有する。「アルキレン」基の例としては、メチレン、エチレン、1,3−プロピレン、1,2−プロピレン、1,4−ブチレン、1,4−シクロヘキシレン、1,6ヘキサメチレン及び1,10デカメチレンが挙げられる。
【0012】
用語「アリーレン」は、芳香族であって、場合により炭素環である、2価の基を指す。アリーレンは、少なくとも1つの芳香環を有する。場合により、芳香環は、芳香環に縮合された1つ以上の更なる炭素環を有し得る。任意の更なる環は、不飽和、部分飽和又は飽和であり得る。特に指定がない限り、アリーレン基は、多くの場合、5〜20個の炭素原子、5〜18個の炭素原子、5〜16個の炭素原子、5〜12個の炭素原子、6〜12個の炭素原子又は6〜10個の炭素原子を有する。
【0013】
(メタ)アクリレートという用語は、アクリレート類及びメタクリレート類を指す。
【0014】
用語「含む(comprises)」及びその変化形は、これらの用語が本明細書及び特許請求の範囲において現れる場合、限定的な意味を有するものではない。このような用語は、記述されるステップ若しくは要素、又はステップの群若しくは要素の群を包含することを示唆するが、いかなる他のステップ若しくは要素、又は他のステップの群若しくは要素の群も排除しないことを示唆するものであると、理解されるであろう。「からなる(consisting of)」は、この語句「からなる」に続くあらゆるものを包含し、これらに限定されることを意味する。それゆえ、語句「からなる」は、列挙された要素が必要又は必須のものであり、他の要素が存在し得ないことを示す。「から本質的になる(consisting essentially of)」は、この語句の後に列挙されるあらゆる要素を含み、列挙された要素に関して本開示で指定される活動若しくは作用に干渉又は寄与しない、他の要素に限定されることを意味する。それゆえ、語句「から本質的になる」は、列挙された要素が、必要又は必須のものであるが、他の要素は任意選択的なものであり、列挙された要素の活動又は作用に実質的に影響を及ぼすか否かに応じて、存在する場合もあれば、存在しない場合もあることを示す。
【0015】
用語「好ましい(preferred)」及び「好ましくは(preferably)」は、ある状況下で、特定の利益を供与し得る本開示の請求項を指す。しかしながら、同一又は他の状況下では、他の請求項もまた好ましい場合がある。更に、1つ以上の好ましい請求項についての詳細な説明は、他の請求項が有用でないことを意味するのではなく、かつ他の請求項を本開示の範囲から除外することを意図するものでもない。
【0016】
本出願において、「a」、「an」及び「the」等の用語は、1つの実体のみを指すことを意図したものではなく、その説明のために具体的な例が用いられ得る一般的な部類を含む。用語「a」、「an」及び「the」は、語句「少なくとも1つ(at least one)」及び「1つ以上(one or more)」と互換的に使用される。列挙が後続する「〜のうちの少なくとも1つ」及び「〜のうちの少なくとも1つを含む」という語句は、列挙内の項目のうちのいずれか1つの項目、及び、列挙内の項目のうちの2つ以上の項目のいずれかの組み合わせを指す。
【0017】
用語「又は」は、特に内容がそうでない旨を明示しない限り、概して「及び/又は」を含む通常の意味で使用される。
【0018】
用語「及び/又は」は、列挙される要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙される要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0019】
更に本明細書において、全ての数は用語「約」によって修飾されるものとみなされ、特定の実施形態において、好ましくは、用語「正確に」によって修飾されるものとみなされる。本明細書において、測定された量に関連して使用するとき、用語「約」は、測定を行い、測定の目的及び使用された測定装置の精度に相応の水準の注意を払った当業者により期待される、測定量における変動を指す。本明細書において、「最大」数字(例えば、「最大50」)という場合、その数(例えば、50)を含む。
【0020】
また、本明細書において、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数及びその端点を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含む)。
【0021】
用語「室温」は、温度20℃〜25℃又は22℃〜25℃を指す。
【0022】
本明細書において、基が、本明細書に記載の式中に1回を超えて存在する場合、具体的に記載されているか否かに関わらず、各基は「独立して」選択される。例えば、1種より多いQ基が式中に存在する場合、各Q基は、独立して選択される。更に、これらの基内に含有される下位の基もまた、独立して選択される。
【0023】
本開示の上記の概要は、開示される各実施形態、又は本開示の全ての実施の記載を意図するものではない。以下の記載により、例示的実施形態をより具体的に例示する。本出願の全体にわたる複数の箇所において、例の列挙を通して指針が提供され、これらの例は様々な組み合わせで使用できる。いずれの場合にも、記載の列挙は、代表的な群としてのみ役割を果たし、排他的な列挙と解釈されるべきではない。
【0024】
[例示的実施形態の詳細な説明]
本開示は、フッ素非含有処理組成物を使用して繊維基材を処理する方法を提供する。
【0025】
本開示の処理組成物は、繊維基材を処理し、基材の撥水性を高めるのに有用である。本明細書で使用する場合、実施例の項に記載の噴霧評価試験により測定するとき、基材の最小初期噴霧評価が少なくとも80を示す場合、基材は撥水性である。特定の実施形態において、実施例の項に記載の噴霧評価試験により測定するとき、初期噴霧評価は少なくとも90又は少なくとも100である。
【0026】
特定の実施形態において、繊維基材は、耐久的に撥水性となるように処理される。本明細書で使用する場合、実施例の項に記載の洗濯(及び任意の洗濯)を伴う噴霧評価試験により測定するとき、基材の噴霧評価が、10回の洗濯後に少なくとも50を示す場合、基材は耐久的に撥水性である。特定の実施形態において、実施例の項に記載の洗濯(及び任意の洗濯)を伴う噴霧評価試験により測定するとき、噴霧評価は、10回の洗濯後に少なくとも80、又は、20回の洗濯後に少なくとも80である。
【0027】
典型的には、処理組成物の量は、所望の初期噴霧評価レベル、かつ/又は、複数回の洗濯後における所望の噴霧評価レベルを得るために使用される。特定の実施形態において、処理組成物の量は、SOF(布地上固形分)が、少なくとも0.1重量パーセント(重量%)、又は少なくとも0.2重量%、又は少なくとも0.3重量%である。特定の実施形態において、処理組成物の量は、SOF(布地上固形分)が、最大2重量%、又は最大1.5重量%、又は最大1重量%である。
【0028】
代表的な繊維基材としては、織物、革、カーペット、紙及び不織布が挙げられる。
【0029】
本開示の処理組成物は、濃縮された処理組成物の総重量に基づいて最大80重量パーセント(重量%)の水を含み得る、濃縮物の形態であってよい。あるいは、本開示の処理組成物は、即時使用可能な処理組成物の総重量に基づいて、80重量%超の水、又は少なくとも85重量%の水、又は少なくとも90重量%の水、又は少なくとも95重量%の水を含み得る、即時使用可能な組成物の形態であってもよい。特定の実施形態において、本開示の即時使用可能な処理組成物は、即時使用可能な処理組成物の総重量に基づいて、98〜99重量%の水を含む。
【0030】
本開示の処理組成物は、少なくとも1種(典型的には1種)のイソシアネートから誘導された基と、少なくとも16個の炭素原子(また、いくつかの実施形態においては最大60個の炭素原子)を有する少なくとも1種(典型的には1種)の炭化水素基と、を含む少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーの重合から誘導された、1種以上のポリマー化合物を含む。このようなポリマー化合物は、ホモポリマーであっても、コポリマー(ターポリマー、テトラポリマー等を含む)であってもよい。
【0031】
特定の実施形態において、このようなポリマー化合物は、少なくとも10個の繰り返し単位、又は少なくとも20個の繰り返し単位、又は少なくとも30個の繰り返し単位、又は少なくとも50個の繰り返し単位、又は少なくとも100個の繰り返し単位、又は少なくとも200個の繰り返し単位、又は少なくとも300個の繰り返し単位、又は少なくとも400個の繰り返し単位、又は少なくとも500個の繰り返し単位、又は少なくとも600個の繰り返し単位、又は少なくとも700個の繰り返し単位、又は少なくとも800個の繰り返し単位、又は少なくとも900個の繰り返し単位、又は少なくとも1000個の繰り返し単位を含む。特定の実施形態において、このようなポリマー化合物は、最大10,000個の繰り返し単位を含む。
【0032】
特定の実施形態において、このようなポリマー化合物の重量平均分子量は、少なくとも3000ダルトン、又は少なくとも10,000ダルトン、又は少なくとも20,000ダルトンである。特定の実施形態において、このようなポリマー化合物の重量平均分子量は、最大200,000ダルトンである。特定の実施形態において、このようなポリマー化合物の重量平均分子量は、最大500,000ダルトンである。
【0033】
(メタ)アクリレートモノマー及びその重合
特定の実施形態において、少なくとも1種(典型的には1種)のイソシアネートから誘導された基(例えば、ウレタン基又は尿素基)と、少なくとも16個の炭素原子(また、いくつかの実施形態においては最大60個の炭素原子)を有する少なくとも1種(典型的には1種)の炭化水素基と、を含む(メタ)アクリレートモノマーは、以下の式のうちの少なくとも1種を有する:
−NH−C(O)O−L−OC(O)C(R)=CH (式I)、
−X−C(O)NH−L−OC(O)C(R)=CH (式II)、又は
−X−C(O)NH−Q−NH−C(O)O−L−OC(O)C(R)=CH (式III)。
【0034】
式I、II及びIIIにおいて、R、R及びRは、独立して、16〜60個の炭素原子(特定の実施形態においては16〜30個の炭素原子)を有する炭化水素基である。好適な炭化水素基の例としては、ヘキサデシル(C16)基、オクタデシル(C18)基、アラキジル(C20)基、ベヘニル(C22)基、リグノセリル(C24)基、セリル(C26)基、モンタニル(C28)基、ミリシル(C30)基、2−ドデシルヘキサデシル(C28分枝鎖)基、2−テトラデシルオクタデシル(C32分枝鎖)基及び炭素原子30〜60個の長直鎖アルキル基(UNILINの商標で入手可)が挙げられる。特定の実施形態において、R及びRは、分枝鎖炭化水素基である。特定の実施形態において、R、R及びRは、独立して、オクタデシル基又はベヘニル基である。
【0035】
式I、II及びIIIにおいて、R、R及びRは、独立して、H又はCHである。
【0036】
式I、II及びIIIにおいて、L、L及びLは、独立して、2〜10個の炭素原子を有する分枝鎖若しくは直鎖状アルキレン基、アリーレン基(特定の実施形態においては、5〜12個の炭素原子を有するアリーレン基)、又はこれらの組み合わせである。このようなアルキレン基の例としては、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCHCHCH−等が挙げられる。このようなアリーレン基の例としては、フェニル、ナフチル等が挙げられる。アルキレン基とアリーレン基との組み合わせの例としては、ベンジル、エチルフェニル等が挙げられる。特定の実施形態において、L、L及びLは、独立して、2〜10個の炭素原子を有する分枝鎖又は直鎖状アルキレン基である。特定の実施形態において、L、L及びLは、独立して、エチレン基、ブチレン基又はプロピレン基から選択される。
【0037】
式II及びIIIにおいて、X及びXは、独立して、O、S、−NH又は−N(R)(式中、Rは、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基(特定の実施形態においては、アルキル基)である。)である。R炭化水素基の例としては、メチル、エチル、デシル、オクタデシル等のアルキル基が挙げられる。
【0038】
式IIIにおいて、Qは2価のイソシアネート残基(すなわち、2つのイソシアネート官能基を有しない、芳香族又は脂肪族ジイソシアネート)である。2価のイソシアネート残基の例としては、2,4−トルエニル及び4,4’−メチレンビス(フェニル)が挙げられる。
【0039】
式Iの好適な(メタ)アクリレートモノマーの例としては、ステアリルイソシアネートの2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応生成物(すなわち、C1837−NHC(O)O−CHCH−OC(O)C(R)=CH(式中、RはH又は−CHである。))、ステアリルイソシアネートの3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとの反応生成物及びステアリルイソシアネートの4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートとの反応生成物が挙げられる。
【0040】
式IIの好適な(メタ)アクリレートモノマーの例としては、イソシアナトエチル(メタ)アクリレートのステアリルアルコールとの反応生成物(すなわち、C1837−OC(O)NH−CHCH−OC(O)C(R)=CH(式中、RはH又は−CHである。))、イソシアナトエチル(メタ)アクリレートのベヘニルアルコールとの反応生成物、イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの2−テトラデシルオクタデカノールとの反応生成物及びイソシアナトエチル(メタ)アクリレートのオクタデシルアミンとの反応生成物が挙げられる。
【0041】
式IIIの好適な(メタ)アクリレートモノマーの例としては、2,4−トルエンジイソシアネート(TDI)のステアリルアルコール及び2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応生成物(すなわち、C1837−OC(O)NH−CNHC(O)OCHCH−OC(O)CR=CH(式中、RはH又は−CHである。))、TDIのステアリルアルコール及び3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとの反応生成物、TDIのステアリルアルコール及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートとの反応生成物、TDIのベヘニルアルコール及び2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応生成物等が挙げられる。
【0042】
特定の実施形態において、少なくとも1種(典型的には1種)のイソシアネートから誘導された基(例えば、ウレタン基又は尿素基)と、少なくとも16個の炭素原子を有する少なくとも1種(典型的には1種)の炭化水素基と、を含む(メタ)アクリレートモノマーは、以下の式のうちの少なくとも1種を有する:
1837−NH−C(O)O−CHCH−OC(O)C(R)=CH (式Ia)、
1837OC(O)NH−CHCH−OC(O)C(R)=CH (式IIa)、又は
1837O−C(O)NH−C−NHC(O)O−CHCH−OC(O)C(R)=CH (式IIIa)
(式中、R、R及びRは、独立して、H又はCHである)。
【0043】
式Iaの化合物は、式Iの化合物の範囲内である。式IIaの化合物は、式IIの化合物の範囲内である。式IIIaの化合物は、式IIIの化合物の範囲内であり、式IIIのQは、2,4−トルエンジイソシアネートから誘導されたイソシアネート残基(−C−)である。
【0044】
本明細書に記載の(メタ)アクリレートモノマーを製造するための手法及び条件は、当業者にとっては公知のものであり得る。特定のウレタン(メタ)アクリレートモノマーの調製は、実施例の項に示す。例えば、好適な(メタ)アクリレートモノマー反応物質(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート)とイソシアネート反応物質(例えば、ステアリルイソシアネート(steraryl isocyanate))とを、適切な触媒と共に、又は、無しに化合させることができる。
【0045】
適切な量(例えば、500ppm)の触媒を使用してもよいが、必須ではない(特に、より高い温度が用いられる場合)。代表的な触媒としては、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)及びビスマスネオデカノエート(例えば、Shepherd Bicat 8108M、ABCRビスマス(III)ネオデカノエート、超伝導体級、ネオデカン酸中約60%(15〜20% Bi)、又はStrem Chemicals ビスマス(III)ネオデカノエート、超伝導体級、ネオデカン酸中約60%(15〜20% Bi))が挙げられる。
【0046】
イソシアネートから誘導された基を有する(メタ)アクリレートを形成するための反応は、典型的には、40℃〜100℃、又は70℃〜100℃、又は75℃〜95℃の範囲の温度において、好ましくは乾燥条件(例えば、乾燥空気)下で実施することができる。触媒を使用しない場合、70℃〜100℃の反応温度が好ましい。典型的には、反応は1〜24時間、又は4〜15時間実施される。
【0047】
イソシアネートから誘導された基(例えば、ウレタン基又は尿素基)と、少なくとも16個の炭素原子(また、いくつかの実施形態においては最大60個の炭素原子)を有する炭化水素基と、を含む1種以上の(メタ)アクリレートモノマーを、様々な組み合わせで使用し、本開示のポリマー化合物を生成することができる。したがって、ポリマー化合物は、ホモポリマーであっても、コポリマーであってもよい。
【0048】
特定の実施形態において、得られるポリマーは、少なくとも70重量%、若しくは少なくとも80重量%、若しくは少なくとも85重量%、若しくは少なくとも90重量%の全モノマー又は繰り返し単位の全てを含み、少なくとも1種(典型的には1種)のイソシアネートから誘導された基と、少なくとも16個の炭素原子(また、いくつかの実施形態においては最大60個の炭素原子又は最大30個の炭素原子)を有する少なくとも1種(典型的には1種)の炭化水素基と、を含む。
【0049】
特定の実施形態において、ポリマーの製造に使用される全モノマー又はモノマーの全てのうち、少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%は、(メタ)アクリレートモノマーである。
【0050】
換言すれば、特定の実施形態において、1種以上のポリマー化合物の少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%は、少なくとも1種のイソシアネートから誘導された基と、16〜60個の炭素原子を有する少なくとも1種の炭化水素基と、を含む少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーの重合から得られる。
【0051】
特定の実施形態において、他のエチレン性不飽和モノマーを、イソシアネートから誘導された基と炭化水素基とを有するエチレン性不飽和(メタ)アクリレートモノマーと、共重合させてもよい。例えば、特定の実施形態において、1種以上のポリマー化合物を製造するための反応混合物は、耐久性を高める(メタ)アクリレートを更に含む。特定の実施形態において、耐久性を高める(メタ)アクリレートは、ブロックイソシアネート基、エポキシ基、クロロヒドロキシプロピル基、ヒドロキシアルキル基、N−メチロール基、アセトアセトキシアルキル基及びこれらの組み合わせから選択される、耐久性を高める基を有する1種以上のポリマー化合物を提供する。
【0052】
イソシアネートから誘導された基と炭化水素基とを有するエチレン性不飽和(メタ)アクリレートモノマーと共重合され得る他のモノマーとしては、例えば、以下が挙げられる:
a)式I、II及びIIIのモノマーであって、式中、R、R及びRが、1〜15個の炭素原子を含有する炭化水素基(ブチルイソシアネートの2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応生成物、ブチルイソシアネートの3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとの反応生成物、及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのブチルイソシアネートとの反応生成物を含むモノマー等)、
b)オレフィン系炭化水素(イソプレン、ブタジエン又はクロロプレン等)、ビニルハライド、アリルハライド若しくはビニリデンハライド(ビニリデンクロライド又はビニルクロライド等)、スチレン及びその誘導体、ビニルエステル(酢酸ビニル等)、アリルエステル(酢酸アリル等)、アルキルビニル、又はアルキルアリルエーテル(オクタデシルビニルエーテル等)、ニトリル(アクリロニトリル等)、マレイン酸エステル若しくはイタコン酸エステル(ジ−オクタデシルイタコン酸エステル等)及び(メタ)アクリルアミド(オクタデシルアクリルアミド等)等の他のエチレン性不飽和モノマー、
c)オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート、ベヘニルアクリレート等の、イソシアネート連結基と、少なくとも16個の炭素を有する炭化水素基と、を有しない(メタ)アクリレート、
d)2−ヒドロキシエチルメタクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の、イソシアネートから誘導された連結基と、16個未満の炭素原子を有する炭化水素基と、を有しない(メタ)アクリレート、並びに
e)架橋、ネットワーク構築、硬化、グラフト化等の反応を更に受けることが可能な官能基を含有する、耐久性を高める(メタ)アクリレート(このようなモノマーは、ポリマー化合物の撥水性の耐久性を高めるものであり、メタクリル酸グリシジル、アリルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、AOIの2−ブタノンオキシムとの反応生成物等が挙げられる)。
【0053】
特定の実施形態において、結果として生じるポリマー化合物は、(i)イソシアネートから誘導された基と、少なくとも16個の炭素原子を有する炭化水素鎖とを有する1種以上の(メタ)アクリレート、(ii)イソシアネートから誘導された基と、16個未満の炭素原子を有する炭化水素鎖とを有する1種以上の(メタ)アクリレート、(iii)イソシアネートから誘導された基は有しないが、少なくとも16個の炭素原子の炭化水素鎖は有する1種以上の(メタ)アクリレート、(iv)イソシアネートから誘導された基は有しないが、16個未満の炭素原子の炭化水素鎖は有する1種以上の(メタ)アクリレート、及び(v)反応を更に受けることが可能な官能基を含有する1種以上の(メタ)アクリレートのフリーラジカル重合によって調製することができるが、ただし、イソシアネートから誘導された基と、少なくとも16個の炭素原子とを有する(メタ)アクリレートの量は、モノマーの総量の、少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%、又は好ましくは100重量%である。
【0054】
例えば、一実施形態において(例えば実施例7)、ポリマー化合物は、以下の構造:
−X−C(O)NH−L−OC(O)C(R)=CH (式II)
(式中、
は18個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
はHであり、
は2個の炭素原子を有するアルキレン基であり、かつ
はOである。)を有する「SA−AOI」ウレタンアクリレートと、
ブロックイソシアネート基を有する、耐久性を高めるアクリレートである、「AOI−MEKO」ウレタンアクリレートと、の共重合から誘導された化合物である。
【0055】
本明細書において、HOEA、SI、AOI、MOI等の頭字語は、反応物質(例えば、モノマー)及び重合の結果得られたポリマーにおける、対応する残基の両方を表すのに使用する。
【0056】
ポリマー化合物を調製するために、フリーラジカル開始剤を使用して重合を開始してもよい。フリーラジカル開始剤としては、当該技術分野において既知のもの、特に、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)及び2,2’−アゾビス(2−シアノペンタン)等のアゾ化合物、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチル−ヒドロペルオキシド及びt−アミル−ヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、ジ−t−ブチルペルオキシフタレート等のペルオキシエステル、並びに過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等のジアシルペルオキシドが挙げられる。
【0057】
重合は、有機フリーラジカル反応に好適な多種多様な溶媒中で実施することができる。好適な溶媒の例としては、脂肪族炭化水素及び脂環式炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、グリム、ジグリム、ジイソプロピルエーテル)、エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)及びこれらの混合物が挙げられる。
【0058】
重合はまた、エマルション重合におけるように、当業者に既知の適切な乳化剤及び開始剤を使用して、水性媒体中で実施することもできる。乳化剤としては、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、(C12〜C18)アルキルアルコール−エチレンオキシド付加物、ポリエトキシレート化ノニルフェノール又はアルキル第四級アンモニウムエトキシレート等の、非イオン性、カチオン性、両性又はアニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0059】
重合反応は、フリーラジカル重合反応を実施するのに好適な温度において実施することができる。使用する特定の温度及び溶媒は、当業者であれば、試薬の溶解度、特定の開始剤を使用するために必要な温度、所望の分子量等の考慮に基づき、容易に選択することができる。全ての開始剤及び全ての溶媒に好適な特定の温度を列挙するのは現実的ではないが、概して好適な温度は、30℃及び150℃である。特定の実施形態において、温度は55℃及び90℃、又は75℃及び80℃である。反応時間は、典型的には1〜24時間以内、また、多くは4〜15時間以内である。
【0060】
処理組成物
本開示の1種以上のポリマー化合物を含む処理組成物は、水性組成物、特に、水への水性分散液として使用される。
【0061】
重合の完了後、最終的な反応混合物は、界面活性剤又は界面活性剤の混合物を、分散体を安定化するのに十分な量で使用し、水に分散させてもよい。ポリマー化合物は、通常は溶媒中の溶液中で製造される。ポリマー化合物は、激しく混合し、界面活性剤又は乳化剤を使用して均質化した後、例えば、Manton Gaulinホモジナイザー又は超音波ホモジナイザーによって均質化することにより、水に分散させることができる。有機溶媒を含まない分散体は、続いて溶媒を蒸留することによって得ることができる。
【0062】
典型的な分散体は、ポリマー化合物又はこのような化合物の混合物の100重量部に基づいて、水を70〜20000重量部の量で含有する。界面活性剤又は界面活性剤の混合物は、好ましくは、ポリマー化合物又はこのような化合物の混合物の100重量部に基づいて、1〜25重量部、又は5〜15重量部の量で含有する。
【0063】
本開示の処理組成物は、従来のカチオン性、非イオン性、アニオン性及び/又は双性イオン性(すなわち、両性)界面活性剤(すなわち、乳化剤)を含むことができる。界面活性剤の混合物、例えば非イオン性及びイオン性界面活性剤を含有するものを使用してもよい。好適な非イオン性界面活性剤は、TERGITOL、TWEEN等のように、高い、又は、低いHLB値を有することができる。好適なカチオン性界面活性剤としては、モノテール又はバイテールの(mono-or bi-tail)アンモニウム塩が挙げられる。好適なアニオン性界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(Rhodia(France)より入手可)等の、スルホン酸化合物及び脂肪族カルボン酸化合物、並びにこれらの塩が挙げられる。好適な両性界面活性剤としては、ココベタイン、スルホベタイン、アミンオキシド等が挙げられる。
【0064】
特定の実施形態において、本開示の処理組成物への使用に好適な界面活性剤は、国際公開第2013/162704号に記載されている。
【0065】
本開示の処理組成物は、少なくとも1種の石蝋を含んでもよい。特定の実施形態において、石蝋の融点は40℃〜75℃である。特定の実施形態において、石蝋の融点は60℃〜75℃である。
【0066】
本開示の処理組成物に存在する場合、1種以上の石蝋の総量は30重量%〜70重量%の量であり、かつ1種以上のポリマー化合物の総量は30重量%〜70重量%である。特定の実施形態において、1種以上の石蝋の総量は50重量%〜70重量%の量であり、かつ1種以上のポリマー化合物の総量は30重量%〜50重量%の量である。これらの量は、処理組成物(即時使用可能な形態又は濃縮物の形態)の総重量に基づく。
【0067】
また、本開示の処理組成物は、凝集溶剤、凍結防止溶媒、乳化剤、又は1種以上の微生物に対する安定剤のうちの1種以上を更に含んでもよい。
【0068】
代表的な実施形態
実施形態1は、繊維基材を処理する方法であって、方法は、フッ素非含有処理組成物を、繊維基材を撥水性とするのに十分な量で適用することを含み、処理組成物は、
少なくとも1種のイソシアネートから誘導された基と、少なくとも16個の炭素原子を有する少なくとも1種の炭化水素基と、を有する少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーの重合から誘導された、1種以上のポリマー化合物を含む。
【0069】
実施形態2は、1種以上のポリマー化合物が、少なくとも1種のイソシアネートから誘導された基と、16〜60個の炭素原子を有する少なくとも1種の炭化水素基と、を含む少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーの重合から得られる、実施形態1に記載の方法である。
【0070】
実施形態3は、1種以上のポリマー化合物の少なくとも70重量%が、少なくとも1種のイソシアネートから誘導された基と、16〜60個の炭素原子を有する少なくとも1種の炭化水素基と、を含む(メタ)アクリレートモノマーの重合から得られる、実施形態1又は2に記載の方法である。
【0071】
実施形態4は、1種以上のポリマー化合物の少なくとも85重量%が、少なくとも1種のイソシアネートから誘導された基と、16〜60個の炭素原子を有する少なくとも1種の炭化水素基と、を含む(メタ)アクリレートモノマーの重合から得られる、実施形態3に記載の方法である。
【0072】
実施形態5は、処理組成物が、以下の式:
−NH−C(O)O−L−OC(O)C(R)=CH (式I)、
−X−C(O)NH−L−OC(O)C(R)=CH (式II)、及び
−X−C(O)NH−Q−NHC(O)O−L−OC(O)C(R)=CH (式III)
[式中、
、R及びRは、独立して、少なくとも16個の炭素原子(また、いくつかの実施形態においては、最大60個の炭素原子)を有する炭化水素基(いくつかの実施形態においては、R及びRは分枝鎖炭化水素基)であり、
、R及びRは、独立して、H又はCHであり、
、L及びLは、独立して、2〜10個の炭素原子を有する分枝鎖若しくは直鎖状アルキレン基、アリーレン基(特定の実施形態においては、5〜12個の炭素原子を有するアリーレン基)、又はこれらの組み合わせであり、
及びXは、独立して、O、S、−NH又は−N(R)(式中、Rは、1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基である。)であり、かつ
Qは、イソシアネート残基である。]のうちの少なくとも1種を有する少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーの重合から誘導された、1種以上のポリマー化合物を含む、実施形態1〜4のいずれか1つに記載の方法である。
【0073】
実施形態6は、R、R及びRが、独立して、16〜60個の炭素原子を有する炭化水素基である、実施形態5に記載の方法である。
【0074】
実施形態7は、R、R及びRが、独立して、オクタデシル基又はベヘニル基である、実施形態6に記載の方法である。
【0075】
実施形態8は、L、L及びLが、独立して、2〜10個の炭素原子を有するアルキレン基である、実施形態5〜7のいずれか1つに記載の方法である。
【0076】
実施形態9は、L、L及びLが、独立して、エチレン基、ブチレン基又はプロピレン基から選択される、実施形態8に記載の方法である。
【0077】
実施形態10は、(メタ)アクリレートモノマー中に存在するイソシアネートから誘導された基が、ウレタン基又は尿素基である、実施形態1〜9のいずれか1つに記載の方法である。
【0078】
実施形態11は、1種以上のポリマー化合物の重量平均分子量が、少なくとも3000ダルトン、又は3000ダルトン〜500,000ダルトン、又は3000ダルトン〜200,000ダルトンである、実施形態1〜10のいずれか1つに記載の方法である。
【0079】
実施形態12は、1種以上のポリマー化合物の重量平均分子量が、少なくとも10,000ダルトン、又は10,000ダルトン〜500,000ダルトン、又は10,000ダルトン〜200,000ダルトンである、実施形態11に記載の方法である。
【0080】
実施形態13は、1種以上のポリマー化合物の重量平均分子量が、少なくとも20,000ダルトン、又は20,000ダルトン〜500,000ダルトン、又は20,000ダルトン〜200,000ダルトンである、実施形態12に記載の方法である。
【0081】
実施形態14は、1種以上のポリマー化合物が、少なくとも1種のイソシアネートから誘導された基と、少なくとも16個の炭素原子(また、いくつかの実施形態においては、最大60個の炭素原子)を有する少なくとも1種の炭化水素基と、を含む少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーの、平均して少なくとも10個の繰り返し単位(又は少なくとも20個の繰り返し単位)を有する、実施形態1〜13のいずれか1つに記載の方法である。
【0082】
実施形態15は、繊維基材を処理する方法であって、方法は、フッ素非含有処理組成物を、繊維基材を撥水性とするのに十分な量で適用することを含み、処理組成物は、
以下の式:
1837−NH−C(O)O−CHCH−OC(O)C(R)=CH (式Ia)、
1837OC(O)NH−CHCH−OC(O)C(R)=CH (式IIa)、又は
1837O−C(O)NH−C−NHC(O)O−CHCH−OC(O)C(R)=CH (式IIIa)
(式中、R、R及びRは、独立して、H又はCHである。)のうちの少なくとも1種を有する少なくとも1種の(メタ)アクリレートの重合から誘導された、1種以上のポリマー化合物を含む。
【0083】
実施形態16は、1種以上のポリマー化合物の重量平均分子量が、少なくとも3000ダルトン、又は3000ダルトン〜500,000ダルトン、又は3000ダルトン〜200,000ダルトンである、実施形態15に記載の方法である。
【0084】
実施形態17は、1種以上のポリマー化合物が、少なくとも1種の(メタ)アクリレートの、平均して少なくとも10個の繰り返し単位を有する、実施形態15又は16に記載の方法である。
【0085】
実施形態18は、1種以上のポリマー化合物を製造するための反応混合物が、耐久性を高める(メタ)アクリレートを更に含む、実施形態1〜17のいずれか1つに記載の方法である。
【0086】
実施形態19は、耐久性を高める(メタ)アクリレートが、ブロックイソシアネート基、エポキシ基、クロロヒドロキシプロピル基、ヒドロキシアルキル基、N−メチロール基、アセトアセトキシアルキル基及びこれらの組み合わせから選択される、耐久性を高める基を有する1種以上のポリマー化合物を提供する、実施形態18に記載の方法である。
【0087】
実施形態20は、組成物が、界面活性剤、凝集溶剤、凍結防止溶媒、乳化剤、又は1種以上の微生物に対する安定剤から選択される1種以上の添加剤を任意に含む水性分散液である、実施形態1〜19のいずれか1つに記載の方法である。
【0088】
実施形態21は、繊維基材が、織物、革、カーペット、紙及び不織布の群から選択される、実施形態1〜20のいずれか1つに記載の方法である。
【0089】
実施形態22は、実施形態1〜21のいずれか1つに記載の方法によって処理された、繊維基材である。
【実施例】
【0090】
以下の実施例によって本発明の目的及び利点を更に例示するが、これらの実施例において詳述する特定の材料及びその量、並びに他の条件及び細部は、本発明を不当に限定するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は、単に例示のために過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【表1】
【0091】
試験方法
噴霧評価(SR)
処理された基材の噴霧評価は、処理された基材に衝突する水に対する、処理された基材の動的撥水性を示す値である。撥水性は、試験法22−1996(2001 Technical Manual of the American Association of Textile Chemists and Colorists(AATCC)に収載)によって測定し、試験した基材の「噴霧評価」によって表記する。噴霧評価は、250ミリリットル(mL)の水を、15センチメートル(cm)の高さから基材に噴霧することによって得た。濡れパターンを、0〜100のスケール(0は完全に濡れていることを意味し、100は全く濡れていないことを意味する。)を使用し、視覚的に評価した。噴霧評価は、最初と、布地を5、10又は20回洗濯した後(それぞれ、5L、10L又は20Lと表記)に測定した。
【0092】
洗濯の手順は、処理された基材の400〜900cmのシートを、バラスト試料(8オンスの布地1.9キログラム(kg))と共に、洗濯機(Miele Novotronic T490)に入れることからなる。市販の洗剤(Henkel(Germany)より入手可能な「Sapton」46グラム(g))を加えた。基材及びバラスト荷重を、短時間洗濯サイクルを使用して40℃で洗濯した後、すすぎサイクル及び遠心脱水を行った。試料は、繰り返しサイクルの間では乾燥させなかった。必要回数のサイクルの後、布地試料は、Miele T−356回転式乾燥機中で、「特別乾燥(Extra dry)」に設定し、乾燥前に室温で終夜コンディショニングして、乾燥した。
【0093】
「パディング」工程による処理手順
布地に適用する前に、固形分30%のポリマー分散体を、蒸留水で、20g/Lの濃度に希釈した。この処理物の分散体に基材を浸漬させ、基材が飽和するまで撹拌することにより、処理物を布地基材上に適用した。続いて飽和した基材をパダー/ローラーに通し、過剰な分散体を取り除き、特定パーセントの含浸量(Wet Pick Up)(WPU)を得る(100%WPUは、この工程後に、基材が、基材自体の100%相当の処理物の分散体を、乾燥前に吸収したことを意味する)。暗灰色のポリエステルの布地及び灰色のポリアミドマイクロファイバーの布地を、これらの含浸溶液によって処理した(含浸量については、表を参照)。実施例1〜5及び比較例A〜Eについて、処理溶液の適用後、布地を150℃で2分間乾燥及び硬化させ、終夜コンディショニングした。布地を、「噴霧評価」について試験した。実施例7〜10に関しては、変更手順についての「結果」を参照されたい。
【0094】
実施例
ステアリルイソシアネートをベースとするウレタンアクリレートモノマーの調製
1Lの丸底三つ口反応フラスコ中で、ステアリルイソシアネート295.5グラム(g)(1モル)をHOEA(2−ヒドロキシエチルアクリレート)116g(1モル)と混合した。室温で、澄明な溶液が得られた。反応は、DBTDL 5滴を加えた後、即座に開始し、反応混合物の温度が自発的に上昇し、白色の不溶性の物質が混合物中に生成し始めた。温度を80℃に上げ、反応を80℃で3時間継続した。この時間以降、FTIRスペクトルによると、全てのNCOが消失した。最終物質の構造は、NMRにより、C1837NHC(O)OCHCHOC(O)CH=CHであることを確認した。室温で、硬質の固体の蝋質の物質が得られ、これを「SI−HOEA」とした。
【0095】
同一の手順により、ステアリルイソシアネートを、異なるヒドロキシ官能性の(メタ)アクリレート:2−ヒドロキシエチルメタクリレート(「SI−HEMA」を生成)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(「SI−HOBA」を生成)、3−ヒドロキシプロピルアクリレート(「SI−HOPA」を生成)と反応させた。
【0096】
ステアリルアルコールをベースとするウレタンアクリレートモノマーの調製
1Lの丸底三つ口反応フラスコ中で、SA 270.5g(1モル)を、TDI 174.2g(1モル)及び酢酸エチル374gと混合した(固形分60%)。温度を40℃まで上げると混合物が澄明となり、自発的な50℃までの発熱が起こり、若干の不溶性の物質が生成した。生成物の混合物を45℃で終夜維持し、部分的に不溶性の物質を得た。続いて、2−ヒドロキシエチルアクリレート116.1g(1モル)及びDBTDL 3滴を加えた。温度を、還流温度まで6時間上げた。この反応後、FTIRスペクトルによると、NCOは混合物中に存在しなかった。この物質は、「SA−TDI−HOEA」と呼ぶこととする。
【0097】
1Lの丸底三つ口反応フラスコ中で、SA 270.5g(1モル)をAOI 141.12g(1モル)と混合した。約60℃で澄明な溶液が得られ、DBTDL 5滴を加えた。反応混合物の温度は、自発的に上昇した。温度を80℃に保ち、反応を80℃で3時間継続した。この時間以降、FTIRスペクトルによると、全てのNCOが消失した。このモノマーは、「SA−AOI」と呼ぶこととする。
【0098】
同一の手順により、SA(ステアリルアルコール)をMOI(2−イソシアナトエチルメタクリレート)と反応させた。このモノマーは、「SA−MOI」と呼ぶこととする。
【0099】
実施例1〜5及び比較例A〜E。ウレタン(メタ)アクリレートホモポリマーの調製
ガラス瓶中で、「SI−HOEA」60gを、酢酸エチル90g及びV−59開始剤0.25gと混合した。ガラス瓶を窒素でパージし、閉じ、予熱したlaunder−o−meter中に、75℃で終夜置いた。この結果、75℃で、粘性の澄明な帯黄色のポリマー溶液が得られた。次に、このポリマー溶液を、脱イオン(DI)水154g、Ethoquad C−12 1.6g、Tergitol TMN−6 3.6g及びTergitol 15−S−30 1.8gからなる水相と60℃で混合することにより、水に分散させた。このプレミックスを、次に「Branson Sonifier」によって6分間、最大設定で超音波処理した。続いて、酢酸エチルを、真空蒸留によって取り除き、安定な、溶媒を含まない分散体を得て、これを脱イオン水(DI水)で固形分30%に希釈した。この物質を「ポリSI−HOEA」と呼ぶ(実施例1)。実施例1の物質は、アクリレートの重合から誘導された化合物であり、アクリレートは以下の構造を有する:
−NH−C(O)O−L−OC(O)C(R)=CH (式I)
(式中、
は18個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
はHであり、かつ
は2個の炭素原子を有するアルキレン基である)。
【0100】
実施例1と同一の乳化手順によって、ポリマー分散体を「SI−HOBA」から調製した(実施例2)。実施例2の物質は、アクリレートの重合から誘導された化合物であり、アクリレートは以下の構造を有する:
−NH−C(O)O−L−OC(O)C(R)=CH (式I)
(式中、
は18個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
はHであり、かつ
は4個の炭素原子を有するアルキレン基である)。
【0101】
実施例1と同一の乳化手順によって、ポリマー分散体を「SI−HOPA」から調製した(実施例3)。実施例3の物質は、アクリレートの重合から誘導された化合物であり、アクリレートは以下の構造を有する:
−NH−C(O)O−L−OC(O)C(R)=CH (式I)
(式中、
は18個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
はHであり、かつ
は3個の炭素原子を有するアルキレン基である)。
【0102】
実施例1と同一の乳化手順によって、ポリマー分散体を「SI−HOEMA」から調製した(実施例4)。実施例4の物質はアクリレートの重合から誘導された化合物であり、アクリレートは以下の構造を有する:
−NH−C(O)O−L−OC(O)C(R)=CH (式I)
(式中、
は18個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
はCHであり、かつ
は2個の炭素原子を有するアルキレン基である)。
【0103】
実施例1と同一の乳化手順によって、ポリマー分散体を「SA−TDI−HOEA」から調製した(実施例5)。実施例5の物質は、アクリレートの重合から誘導された化合物であり、アクリレートは以下の構造を有する:
−X−C(O)NH−Q−NHC(O)O−L−OC(O)C(R)=CH (式III)
[式中、
は18個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
はHであり、
は2個の炭素原子を有するアルキレン基であり、
はOであり、かつ
Qは2,4−トルエンジイソシアネート(TDI)残基である]。
【0104】
同一の手順により、比較例A〜Eのポリマー分散体を、オクタデシルアクリレートのオリゴマー(比較例A、ODA)、オクタデシルメタクリレートのオリゴマー(比較例B、ODMA)、ベヘニルアクリレートのオリゴマー(比較例C、BA A)、ベヘニルメタクリレートのオリゴマー(比較例D、BMA)、及び長鎖炭化水素を有しないウレタンアクリレートのオリゴマー(比較例E、「BI−HOEA」)から調製した。
【0105】
噴霧評価性能を表1に示す。
【表2】
【0106】
これらの結果は、ウレタン基を有する(メタ)アクリレートの重合から調製されたポリマー物質が、ウレタン基を有しない(メタ)アクリレートから調製された物質(比較例A、B、C及びD)、又は短鎖炭化水素基を有しないウレタンアクリレートモノマーから調製された物質(ブチル基を炭化水素基として有する「BI−HOEA」を使用した比較例E)より優れていることを明確に示している。
【0107】
実施例6:ポリ(SA−AOI)
SA−AOIウレタンアクリレートの合成
250mLの三つ口フラスコに、ステアリルアルコール(SA)54g(0.2 mol)、AOI 28.2g(0.2モル)、酢酸エチル35g及びDBTDL 1滴を入れた。この混合物を、窒素雰囲気下、84℃で5時間反応させた。IRによると、全てのイソシアネート基が反応し、ウレタンアクリレートが生成した。澄明な溶液が、84℃で得られた(「SA−AOI」)。
【0108】
同一の手順を使用して、以下の同類のウレタンアクリレートを調製した:
「AOI−MEKO」(ただし、ステアリルアルコールの代わりにMEKOを使用した)及び
「AOI−Guerbet 32アルコール」(AOIのGuerbet 32アルコールとの反応により)。
【0109】
ホモポリマー、ポリ(SA−AOI)の合成
撹拌器、加熱マントル、冷却器及び温度計を取り付けた250mLの三つ口フラスコ中に、上記で調製した「SA−AOI」ウレタンアクリレート100g、酢酸エチル100g及びVAZO−67 0.4gを入れた。アスピレーターによる吸引及び窒素圧を使用し、混合物を3回脱気した。混合物を、窒素雰囲気下、75℃まで6時間加熱した後、VAZO−67 0.1gを加え、反応を16時間継続した。
【0110】
実施例7〜10:ホモポリマー及びコポリマーの合成
実施例7:ポリ(SA−AOI/AOI−MEKO 90/10)
撹拌器、加熱マントル、冷却器及び温度計を取り付けた250mLの三つ口フラスコ中に、上記で調製した「SA−AOI」ウレタンアクリレート90g、上記で調製した「AOI−MEKO」ウレタンアクリレート10g、酢酸エチル100g及びVAZO−67 0.4gを入れた。アスピレーターによる吸引及び窒素圧を使用し、混合物を3回脱気した。混合物を、窒素雰囲気下、75℃まで6時間加熱した後、VAZO−67 0.1gを加え、反応を16時間継続した。
【0111】
実施例7の物質は、アクリレートの共重合から誘導されたポリマー化合物であり、
1)「SA−AOI」ウレタンアクリレートは、以下の構造:
−X−C(O)NH−L−OC(O)C(R)=CH (式II)
(式中、
は18個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
はHであり、
は2個の炭素原子を有するアルキレン基であり、かつ
はOである。)を有し、
かつ、2)「AOI−MEKO」ウレタンアクリレートは、ブロックイソシアネート基を有する、耐久性を高めるアクリレートである。
【0112】
実施例8:ポリ(SI−HOEA/AOI−MEKO 90/10)
実施例7の手順において、全てのSA−AOIウレタンアクリレートをSI−HOEAウレタンアクリレートに置き換えた。実施例8の物質は、アクリレートの共重合から誘導されたポリマー化合物であり、
1)「SI−HOEA」ウレタンアクリレートは、以下の構造:
−NH−C(O)O−L−OC(O)C(R)=CH (式I)
(式中、
は18個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
はHであり、かつ
は2個の炭素原子を有するアルキレン基である。)を有し、
かつ、2)「AOI−MEKO」ウレタンアクリレートは、ブロックイソシアネート基を有する、耐久性を高めるアクリレートである。
【0113】
実施例9:ポリ(AOI−Guerbet 32/AOI−MEKO 90/10)
実施例9は、実施例7を調製するための合成手順を使用し、ただし、SA−AOIウレタンアクリレートをAOI−Guerbet 32ウレタンアクリレートに置き換えて調製した。実施例9の物質は、アクリレートの共重合から誘導されたポリマー化合物であり、
1)「AOI−Guerbet 32」ウレタンアクリレートは、以下の構造:
−X−C(O)NH−L−OC(O)C(R)=CH (式II)
(式中、
は32個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
はHであり、
は2個の炭素原子を有するアルキレン基であり、かつ
はOである。)を有し、
かつ、2)「AOI−MEKO」ウレタンアクリレートは、ブロックイソシアネート基を有する、耐久性を高めるアクリレートである。
【0114】
実施例10:ポリ(SA−AOI/GMA 90/10)
実施例10は、実施例7の手順を使用し、ただし、AOI−MEKOウレタンアクリレートの代わりに、GMA 耐久性を高めるアクリレートを使用して調製した。実施例10の物質は、アクリレートとメタクリレートとの共重合から誘導されたポリマー化合物であり、
1)アクリレートは、以下の構造:
−X−C(O)NH−L−OC(O)C(R)=CH (式II)
(式中、
は18個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
はHであり、
は2個の炭素原子を有するアルキレン基であり、かつ
はOである。)を有し、
かつ、2)メタクリレート 耐久性を高めるアクリレートは、グリシジルメタクリレートである。
【0115】
実施例11:ポリ(SI−HOEA/VCl2/AOI−MEKO 70/20/10)
実施例11は、実施例8を調製するための合成手順を使用し、ただし、20%重量のSI−HOEAをVCl2に置き換えて調製した。実施例11の物質は、アクリレートの共重合から誘導されたポリマー化合物であり、
1)「SI−HOEA」ウレタンアクリレートは、以下の構造:
−NH−C(O)O−L−OC(O)C(R)=CH (式I)
(式中、
は18個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
はHであり、かつ
は2個の炭素原子を有するアルキレン基である。)を有し、
2)VCl2はビニルコモノマーであり、
かつ、3)「AOI−MEKO」ウレタンアクリレートは、ブロックイソシアネート基を有する、耐久性を高めるアクリレートである。
【0116】
実施例12:ポリ(SI−HOEA/NMAM 90/10)
実施例12は、実施例8を調製するための合成手順を使用し、ただし、AOI−MEKOをN−メチロールアクリルアミド(NMAM)に置き換えて調製した。実施例12の物質は、アクリレートの共重合から誘導されたポリマー化合物であり、
1)「SI−HOEA」ウレタンアクリレートは、以下の構造:
−NH−C(O)O−L−OC(O)C(R)=CH (式I)
(式中、
は18個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
はHであり、かつ
は2個の炭素原子を有するアルキレン基である。)を有し、
かつ、2)NMAMはアクリルアミドコモノマーである。
【0117】
実施例13:ポリ(SA−TDI−HOEA/AOI−MEKO 90/10)
実施例13は、実施例7を調製するための合成手順を使用し、ただし、全てのSA−AOIウレタンアクリレートをSA−TDI−HOEAウレタンアクリレートに置き換えて調製した。実施例13の物質は、アクリレートの共重合から誘導されたポリマー化合物であり、
1)「SA−TDI−HOEA」ウレタンアクリレートは、以下の構造:
−X−C(O)NH−Q−NHC(O)O−L−OC(O)C(R)=CH (式III)
[式中、
は18個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
はHであり、
は2個の炭素原子を有するアルキレン基であり、
はOであり、かつ
Qは2,4−トルエンジイソシアネート(TDI)残基である。]を有し、
かつ、2)「AOI−MEKO」ウレタンアクリレートは、ブロックイソシアネート基を有する、耐久性を高めるアクリレートである。
【0118】
ホモポリマー及びコポリマーの乳化手順
撹拌器、加熱マントル、温度計及び冷却器を取り付けた三つ口の1000mLのフラスコに、上記で調製したホモポリマー及びコポリマーの反応混合物(酢酸エチル中固形分50%)200gを入れた。混合物を最高70℃まで加熱し、澄明な酢酸エチル溶液が得られるまで混合した。
【0119】
1000mLのビーカー中に、Tergitol 15−S−30 3g、Tergitol TMN−6 6g、Armocare VGH−70(固形分70%)3.7g及びDI水400gを入れた。この混合物もまた、最高約70℃まで加温した後、激しく撹拌しながら、1000mLの三つ口フラスコ中の上記の有機溶液に加えた。予備エマルションを、70℃で得た。この予備エマルションを、予熱した2−step Manton−Gaulinホモジナイザーに、300バールの圧力で3回通した。溶媒は、温度約45℃〜50℃及び減圧約20〜30mmHgで留去した。安定な、固形分約20%の水への分散体を得た。全ての物質を、この一般手順を使用して乳化した。
【0120】
結果
使用した布地:含浸量76.4%のポリエステルPESマイクロファイバー布地、及び含浸量74.9%のポリアミドPAマイクロファイバー布地。適用は、酢酸0.1%及びイソプロパノール1%を含有する水性処理溶液を使用し、パディング塗布によって行った。付加濃度は、布地上固形分(SOF)0.6%及びSOF 1%であった。硬化は、175℃で2分間行った。布地を、その撥水性について、前述の「噴霧評価(SR)」試験によって試験した。
【0121】
市販のMiele洗濯機を使用し、かつ標準的な洗剤を使用して、布地を40℃で10又は20回洗濯した。最後のサイクルの後、布地を24時間乾燥し、180℃で3秒間アイロンをかけた(IR)後、SR値を再び測定した。
【0122】
処理物及び試験の結果を、表3に要約する。175℃で2分間の硬化で、付加濃度は、SOF 0.6%であった。
【表3】
【0123】
本明細書で言及した特許、特許文献及び刊行物の完全な開示内容は、それぞれが個々に組み込まれたかのように、それらの全容が参照により組み込まれる。当業者には、本開示の範囲及び趣旨を逸脱することのない、本開示に対する様々な改変及び変更が明らかとなるであろう。本開示は、本明細書に記載した例示的な実施形態及び実施例によって不当に制限されるものではないこと、並びにこのような実施例及び実施形態は、以下のような本明細書に記載の請求項によってのみ制限されることを意図した本開示の範囲内の例示としてのみ示されることを理解されたい。