(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
まず、本実施形態のペースト状接着剤組成物について説明する。
本実施形態のペースト状接着剤組成物は、以下に示されるものである。
銀粒子を含むペースト状接着剤組成物であって、
前記ペースト状接着剤組成物は、熱処理により前記銀粒子がシンタリングを起こして粒子連結構造を形成するものであり、
前記銀粒子は、シリコーン樹脂粒子の表面に銀が被覆された銀被覆樹脂粒子を含む、ペースト状接着剤組成物。
【0014】
以下、本実施形態のペースト状接着剤組成物を構成する各成分について説明する。
【0015】
(銀粒子)
本実施形態において、組成物中に含まれる銀粒子は、ペースト状接着剤組成物に対して熱処理することによりシンタリングを起こして粒子連結構造を形成する。すなわち、ペースト状接着剤組成物を加熱して得られる接着剤層において、銀粒子同士は互いに融着して存在することとなる。これにより、ペースト状接着剤組成物を加熱して得られる接着剤層について、その熱伝導性や導電性、基材や半導体素子、放熱板等への密着性を向上させることができる。
【0016】
本実施形態の銀粒子は、シリコーン樹脂粒子の表面に銀が被覆された銀被覆樹脂粒子を含むことが好ましい。また、本実施形態の銀粒子は、上記銀被覆樹脂粒子と銀粉とを含有してもよい。実施形態において、銀粉は、銀が被覆された粒子ではなく、銀からなる金属粒子である。
【0017】
上記銀被覆樹脂粒子は、たとえば、メチルクロロシラン、トリメチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等のオルガノクロロシランを重合させることにより得られるオルガノポリシロキサンにより構成される粒子(シリコーン樹脂粒子)を銀で被覆したものであり、また、このオルガノポリシロキサンをさらに三次元架橋した構造を基本骨格としたシリコーン樹脂により構成されるシリコーン樹脂粒子の表面を銀で被覆したものも包含する。
【0018】
また、シリコーン樹脂粒子の構造中に各種官能基を導入することが可能であり、導入できる官能基としてはエポキシ基、アミノ基、メトキシ基、フェニル基、カルボキシル基、水酸基、アルキル基、ビニル基、メルカプト基等があげられるが、これらに限定されるものではない。
なお、本実施形態では、特性を損なわない範囲で他の低応力改質剤をこのシリコーン樹脂粒子に添加しても構わない。併用できる他の低応力改質剤としては、ブタジエンスチレンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、ポリウレタンゴム、ポリイソプレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、液状オルガノポリシロキサン、液状ポリブタジエン等の液状合成ゴム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
なお、本明細書において、「シリコーン樹脂粒子の表面に銀が被覆された」とは、シリコーン樹脂粒子の表面の少なくとも一部の領域を銀が覆っていることをいう。このため、シリコーン樹脂粒子の表面の全面を覆っている態様には限られず、たとえば特定の断面から見たときに表面全面を覆っている態様や、表面の特定の領域を覆っている態様(例えば、シリコーン樹脂粒子の表面に銀からなる金属層が形成されている態様)も含む。ただし、得られる接着剤層のヒートサイクル性をさらに効果的に抑制する観点からは、少なくとも特定の断面から見たときに表面全面を覆っていることが好ましく、表面全面を覆っていることがさらに好ましい。
【0020】
また、本実施形態の銀粒子は、このように、銀被覆樹脂粒子を含むことにより、銀粒子全体としての比重を低下させることができ、組成物中における沈降等を抑止することができる。そのため、ペースト状接着剤組成物としての均一性を向上させることができる。
また、銀粒子が銀被覆樹脂粒子を含むことにより、得られる接着剤層としての弾性を持たせることも可能となる。これにより、接着剤層としてのヒートサイクル性を向上させることができる。
【0021】
上記銀粒子の形状は、とくに限定されないが、たとえば球状、フレーク状等を挙げることができる。本実施形態においては、銀粒子が球状粒子を含むことがより好ましい。これにより、銀粒子の焼結性を向上させることができる。また、シンタリングの均一性の向上にも寄与することができる。また、コストを低減させる観点からは、銀粒子がフレーク状粒子を含む態様を採用することもできる。さらには、コストの低減とシンタリングの均一性のバランスを向上させる観点から、銀粒子が球状粒子とフレーク状粒子の双方を含んでいてもよい。本実施形態において、銀被覆樹脂粒子の形状は、球状であってもよい。一方、銀粉の形状は、球状またはフレーク状のいずれでもよい。
【0022】
本実施形態の銀粒子を用いることにより、銀粒子同士の焼結性を向上させ、ペースト状接着剤組成物を用いて得られる接着剤層の熱伝導性と導電性を効果的に向上させることが可能となる。
なお、本実施形態のペースト状接着剤組成物は、銀粒子の他にも、たとえばシンタリングを促進する、あるいは低コスト化等の目的で金粒子や銅粒子等の、銀以外の金属成分を含む粒子を併用することが可能である。
【0023】
本実施形態において、銀被覆樹脂粒子における銀被覆量の下限値は、特に限定されないが、例えば、銀およびシリコーン樹脂粒子の合計重量100%に対して、20重量%以上でもよく、30重量%以上でもよく、40重量%以上でもよい。これにより、銀粒子の焼結性を向上させることができる。また、銀被覆樹脂粒子における銀被覆量の上限値は、特に限定されないが、例えば、銀およびシリコーン樹脂粒子の合計重量100%に対して、95重量%以下としもよく、93重量%以下としてもよく、90重量%以下としてもよい。これにより、銀粒子の組成物中における沈降を抑制することができる。
【0024】
本実施形態において、銀被覆樹脂粒子の比重の下限値は、特に限定されないが、例えば、1.2以上でもよく、1.5以上でもよく、2.0以上でもよい。これにより、安定的に銀粒子の焼結体を得ることができるので、製造プロセス安定性を高めることができる。一方、銀被覆樹脂粒子の比重の上限値は、特に限定されないが、例えば、8.0以下でもよく、7.0以下でもよく、6.5以下でもよい。これにより、得られるペースト状接着剤組成物の均一性を高めることができる。
【0025】
本実施形態において、銀被覆樹脂粒子の平均粒径(D
50)の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.5μm以上でもよく、1.5μm以上でもよく、2.0μm以上でもよい。一方、銀被覆樹脂粒子の平均粒径(D
50)の上限値は、特に限定されないが、例えば、16μm以下でもよく、12μm以下でもよく、8μm以下でもよい。
【0026】
上記銀粒子の平均粒径(D
50)は、たとえば0.8μm以上20μm以下である。銀粒子の平均粒径が上記下限値以上であることにより、比表面積の過度な増大を抑制し、接触熱抵抗による熱伝導性の低下を抑えることが可能となる。また銀粒子の平均粒径が上記上限値以下であることにより、銀粒子間における焼結性を向上させることが可能となる。また、ペースト状接着剤組成物のディスペンス性を向上させる観点からは、銀粒子の平均粒径(D
50)が1μm以上18μm以下であることがより好ましく、1.2μm以上16μm以下であることがとくに好ましい。本実施形態の銀粒子の平均粒径は、銀被覆樹脂粒子と銀粉との混合物の平均粒径であってもよい。
【0027】
ここで、本実施形態において、銀粉の体積基準の累積分布における50%累積時の粒径D
50(平均粒径(D
50))の下限値は、例えば、0.3μm以上であることが好ましく、0.8μm以上であることがより好ましく、1.2μm以上であることがとくに好ましい。上記下限値以上とすることで熱伝導性の向上を図ることができる。また、銀粉の体積基準の累積分布における50%累積時の粒径D
50の上限値は、例えば、10μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがとくに好ましい。上記上限値以下とすることで、銀粒子間における焼結性を向上させることができ、シンタリングの均一性の向上を図ることができる。
【0028】
なお、銀粒子の平均粒径(D
50)は、たとえばシスメックス株式会社製フロー式粒子像分析装置FPIA(登録商標)−3000を用い、粒子画像計測を行うことで決定することができる。より具体的には、上記装置を用い、体積基準のメジアン径を計測することで銀粒子の粒径を決定することができる。
また、本実施形態において、銀粒子の平均粒径(D
50)、最大粒径、比重は、銀被覆樹脂粒子を含むすべての銀粒子成分の物性値として、評価することができる。
【0029】
また、銀粒子の最大粒径は、とくに限定されないが、たとえば8μm以上30μm以下とすることができ、9μm以上25μm以下であることがより好ましく、10μm以上20μm以下であることがとくに好ましい。これにより、シンタリングの均一性とディスペンス性のバランスをより効果的に向上させることが可能となる。
【0030】
本実施形態において、銀粒子全体における銀被覆樹脂粒子の含有量の下限値は、たとえば1重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、10重量%以上であることがさらに好ましい。これにより、銀粒子全体としての比重を下げやすくなり、組成物中の粒子の分散性を向上させることができる。一方、銀粒子全体における銀被覆樹脂粒子の含有量の上限値は、たとえば98重量%以下であることが好ましく、95重量%以下であることがより好ましく、90重量%以下であることがさらに好ましい。これにより、接着剤層としての熱伝導性や導電性をさらに向上させることができる。
【0031】
本実施形態において、ペースト状接着剤組成物中における銀粒子の含有量の下限値は、特に限定されないが、例えば、10体積%以上としてもよく、20体積%以上としてもよく、30体積%以上としてもよい。一方、ペースト状接着剤組成物中における銀粒子の含有量の上限値は、特に限定されないが、例えば、90体積%以下としてもよく、80体積%以下としてもよく、70体積%以下としてもよい。本実施形態の銀粒子の体積含有率は、銀被覆樹脂粒子と銀粉との混合物の体積含有率であってもよい。
【0032】
本実施形態において、銀粒子全体に対する銀成分の重量割合は、たとえば30重量%以上であり、40重量%以上であることが好ましく、50重量%以上であることがさらに好ましい。銀成分の重量割合を上記の値以上とすることにより、接着剤層としての熱伝導性や導電性をさらに向上させることができる。一方、銀粒子全体に対する銀成分の重量割合は、たとえば99重量%以下であり、98重量%以下であることが好ましく、97重量%以下であることがさらに好ましい。銀成分の重量割合を上記の値以下とすることにより、組成物中の銀粒子の比重を下げやすくし、粒子の分散性を向上させることができる。本実施形態の銀成分は、銀被覆樹脂粒子と銀粉との混合物における銀成分であってもよい。
【0033】
また、銀粒子の比重は、たとえば2以上であり、2.5以上であることが好ましく、3以上であることがさらに好ましい。銀粒子の比重を上記の値以上とすることにより、接着剤層としての熱伝導性や導電性をさらに向上させることができる。また、銀粒子の比重は、たとえば10以下であり、9以下であることが好ましく、8以下であることがさらに好ましい。銀粒子の比重を上記の値以下とすることにより、粒子の分散性を向上させることができる。本実施形態の銀粒子の比重は、銀被覆樹脂粒子と銀粉との混合物の比重であってもよい。
【0034】
ペースト状接着剤組成物中における銀粒子の含有量は、たとえばペースト状接着剤組成物全体に対して1重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましい。これにより、銀粒子の焼結性を向上させ、熱伝導性と導電性の向上に寄与することが可能となる。一方で、ペースト状接着剤組成物中における銀粒子の含有量の割合は、たとえばペースト状接着剤組成物全体に対して95重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがとくに好ましい。これにより、ペースト状接着剤組成物全体の塗布作業性や、接着剤層の機械強度等の向上に寄与することができる。なお、本明細書において、ペースト状接着剤組成物全体に対する含有量とは、溶剤を含む場合には、ペースト状接着剤組成物のうちの溶剤を除く成分全体に対する含有量を指す。
【0035】
(加熱により重合する化合物)
本実施形態のペースト状接着剤組成物は、通常、前述の銀粒子を分散させるモノマーあるいはバインダーとなりうる成分を含む。
ここで、本実施形態においては、たとえば、加熱により重合する化合物を、銀粒子を分散させる成分(分散媒)として含むことができる。
加熱により重合する化合物は、たとえばラジカル重合性二重結合を分子内に一つのみ有する化合物(α−1)、およびエポキシ基を分子内に一つのみ有する化合物(α−2)から選択される一種または二種以上を含むことができる。これにより、ペースト状接着剤組成物を熱処理した際に上記化合物を直鎖状に重合させることが可能となる。このため、シンタリングの均一性やディスペンス性のバランスを向上させることができる。上記に例示したもののうち、ペースト状接着剤組成物を用いて得られる接着剤層の体積抵抗率を低減する観点からは、上記化合物(α−1)を少なくとも含むことがより好ましい。
【0036】
ラジカル重合性二重結合を分子内に一つのみ有する化合物(α−1)は、たとえば(メタ)アクリル基を分子内に一つのみ有する化合物、ビニル基を分子内に一つのみ有する化合物、アリル基を分子内に一つのみ有する化合物、マレイミド基を分子内に一つのみ有する化合物、マレイン酸基を分子内に一つのみ有する化合物から選択される一種または二種以上を含むことができる。本実施形態においては、シンタリングの均一性をより効果的に向上させる観点から、分子内に一つのみ(メタ)アクリル基を有する化合物を少なくとも含むことがより好ましい。分子内に一つのみ(メタ)アクリル基を有する化合物としては、たとえば分子内に一つのみ(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル等を含むことができる。
【0037】
ラジカル重合性二重結合を分子内に一つのみ有する化合物(α−1)中に含まれる(メタ)アクリル酸エステルは、たとえば下記式(1)により表される化合物、および下記式(2)により表される化合物から選択される一種または二種以上を含むことができる。これにより、シンタリングの均一性をより効果的に向上させることができる。
【0039】
上記式(1)中、R
11は水素またはメチル基であり、R
12はOH基を含む炭素数1〜20の一価の有機基である。R
12は、酸素原子、窒素原子、およびリン原子のうちの一種または二種以上を含んでいてもよい。上記式(1)により表される化合物は、とくに限定されないが、たとえば1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、および2−メタクロイロキシエチルアシッドホスフェートから選択される一種または二種以上を含むことができる。本実施形態においては、たとえば1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートに例示されるようにR
12中に環状構造を含む化合物や、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸に例示されるようにR
12中にカルボキシル基を含む化合物を含む場合を好ましい態様の一例として採用することができる。
【0041】
式(2)中、R
21は水素またはメチル基であり、R
22はOH基を含まない炭素数1〜20の一価の有機基である。R
22は、酸素原子、窒素原子、およびリン原子のうちの一種または二種以上を含んでいてもよい。上記式(2)により表される化合物は、とくに限定されないが、たとえばエチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、イソアミルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、n−ラウリルアクリレート、n−ラウリルメタクリレート、n−トリデシルメタクリレート、n−ステアリルアクリレート、n−ステアリルメタクリレート、イソステアリルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングルコールアクリレート、2−エチルヘキシルジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノールエチレンオキシド変性アクリレート、フェニルフェノールエチレンオキシド変性アクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート四級化物、グリシジルメタクリレート、およびネオペンチルグリコールアクリル酸安息香酸エステルから選択される一種または二種以上を含むことができる。本実施形態においては、たとえばフェノキシエチルメタクリレートおよびシクロヘキシルメタクリレートに例示されるようにR
22中に環状構造を含む化合物や、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルアクリレート、およびn−ラウリルメタクリレートに例示されるようにR
22が直鎖状または分岐鎖状のアルキル基である化合物を含む場合を好ましい態様の一例として採用することができる。
【0042】
本実施形態においては、シンタリングの均一性や機械強度等の諸特性のバランスを向上させる観点から、ラジカル重合性二重結合を分子内に一つのみ有する化合物(α−1)中に含まれる(メタ)アクリル酸エステルが、たとえば上記式(1)により表される化合物、および上記式(2)により表される化合物をともに含む態様を採用することができる。一方で、上記化合物(α−1)が、上記式(1)により表される化合物、および上記式(2)により表される化合物のうちのいずれか一方のみを含んでいてもよい。
【0043】
エポキシ基を分子内に一つのみ有する化合物(α−2)は、たとえばn−ブチルグリシジルエーテル、バーサティック酸グリシジルエステル、スチレンオキサイド、エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、およびクレジルグリシジルエーテルから選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、シンタリングの均一性、熱伝導性、導電性等のバランスを向上させる観点からは、クレジルグリシジルエーテルを少なくとも含むことが好ましい態様の一例として挙げられる。
【0044】
加熱により重合する化合物は、たとえばラジカル重合性二重結合を分子内に二つ以上有する化合物や、エポキシ基を分子内に二つ以上有する化合物を含まないことが好ましい。これにより、上記化合物を直鎖状に重合させることが可能となり、シンタリングの均一性の向上に寄与することができる。一方で、上記化合物は、ラジカル重合性二重結合を分子内に二つ以上有する化合物や、エポキシ基を分子内に二つ以上有する化合物を含んでいてもよい。ラジカル重合性二重結合を分子内に二つ以上有する化合物や、エポキシ基を分子内に二つ以上有する化合物を含む場合には、これらを合わせた含有量を上記化合物全体の0重量%超過5重量%以下とすることがよい。これにより、化合物が生成する重合構造中に三次元架橋構造が多く組み込まれることを抑制できることから、三次元架橋構造によって銀粒子のシンタリングが妨げられることを抑制することが可能となる。
【0045】
ペースト状接着剤組成物中に含まれる加熱により重合する化合物の含有量は、たとえばペースト状接着剤組成物全体に対して5重量%以上であることが好ましく、8重量%以上であることがより好ましく、10重量%以上であることがとくに好ましい。これにより、シンタリングの均一性をより効果的に向上させることが可能となる。また、接着剤層の機械強度等の向上に寄与することもできる。一方で、ペースト状接着剤組成物中に含まれる上記化合物の含有量は、たとえばペースト状接着剤組成物全体に対して20重量%以下であることが好ましく、18重量%以下であることがより好ましく、15重量%以下であることがとくに好ましい。これにより、銀粒子の焼結性の向上に寄与することが可能となる。
【0046】
(硬化剤)
ペースト状接着剤組成物は、たとえば硬化剤を含むことができる。硬化剤としては、加熱により重合する化合物の重合反応を促進させるものであればとくに限定されない。これにより、上記化合物の重合反応を促進させて、ペースト状接着剤組成物を用いて得られる機械特性の向上に寄与することができる。
【0047】
一方で、本実施形態においては、シンタリングの均一性、熱伝導性、導電性等のバランスを向上させる観点から、たとえばペースト状接着剤組成物中に硬化剤を含まない態様を採用することもできる。ペースト状接着剤組成物中に硬化剤を含まないとは、たとえば加熱により重合する化合物100重量部に対する硬化剤の含有量が0.01重量部以下である場合を指す。
【0048】
硬化剤は、たとえば3級アミノ基を有する化合物を含むことができる。これにより、たとえば加熱により重合する化合物がエポキシ基を分子内に有する化合物を含む場合において、当該化合物が直鎖状に重合することを促進させることができる。3級アミノ基を有する化合物は、例えば、ベンジルジメチルアミン(BDMA)等の3級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール(EMI24)等のイミダゾール類、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、ピラゾリン等のピラゾール類、トリアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、イミダゾリン、2−メチル−2−イミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン類が挙げられ、これらから選択される一種または二種以上を含むことができる。これにより、たとえば加熱により重合する化合物がエポキシ基を分子内に有する化合物を含む場合において、エポキシ基の単独開環重合を選択的に促進させることができる。これらの中でも、シンタリングの均一性、熱伝導性、導電性等のバランスを向上させる観点からは、イミダゾール類を少なくとも含むことが好ましい態様の一例として挙げられる。
【0049】
硬化剤は、たとえばラジカル重合開始剤を含むことができる。これにより、たとえば加熱により重合する化合物がラジカル重合性二重結合を分子内に有する化合物を含む場合において、当該化合物が重合することを促進させることができる。ラジカル重合開始剤は、たとえばオクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、シュウ酸パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、m−トルイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーベンゾエート、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、およびシクロヘキサノンパーオキサイドから選択される一種または二種以上を含むことができる。
【0050】
ペースト状接着剤組成物中に含まれる硬化剤の含有量は、たとえば加熱により重合する化合物100重量部に対して25重量部以下とすることができる。とくに、上記化合物としてラジカル重合性二重結合を分子内に一つのみ有する化合物(α−1)を含む場合には、シンタリングの均一性を向上させる観点から、上記化合物100重量部に対する硬化剤の含有量を5重量部以下とすることが好ましく、3重量部以下とすることがより好ましく、1重量部以下とすることがとくに好ましい。また、ペースト状接着剤組成物中に含まれる硬化剤の含有量は、上記化合物100重量部に対して0重量部以上とすることができる。ペースト状接着剤組成物の機械特性を向上させる観点からは、たとえば上記化合物100重量部に対する硬化剤の含有量を0.1重量部以上とすることができる。
【0051】
(重合禁止剤)
ペースト状接着剤組成物は、たとえば重合禁止剤を含むことができる。重合禁止剤としては、ペースト状接着剤組成物に含まれる化合物の重合反応を抑える化合物が使用される。これにより、ペースト状接着剤組成物の保管特性をより向上させることができる。重合禁止剤は、とくに限定されないが、たとえばヒドロキノン、p−tert−ブチルカテコール、およびモノ−tert−ブチルヒドロキノンに例示されるヒドロキノン類、ヒドロキノンモノメチルエーテル、およびジ−p−クレゾールに例示されるフェノール類、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、およびp−トルキノンに例示されるキノン類、ならびにナフテン酸銅に例示される銅塩から選択される一種または二種以上を含むことができる。
【0052】
ペースト状接着剤組成物中における重合禁止剤の含有量は、たとえば加熱により重合する化合物100重量部に対して0.0001重量部以上であることが好ましく、0.001重量部以上であることがより好ましい。これにより、シンタリングの均一性の向上に寄与することが可能となる。また、ペースト状接着剤組成物の保管特性をより効果的に向上させることができる。一方で、ペースト状接着剤組成物中における重合禁止剤の含有量は、たとえば上記化合物100重量部に対して0.5重量部以下とすることが好ましく、0.1重量部以下とすることがより好ましい。これにより、接着剤層の機械強度等を向上させることができる。
【0053】
本実施形態に係るペースト状接着剤組成物は、たとえば溶剤を含むことができる。これにより、ペースト状接着剤組成物の流動性を向上させ、作業性の向上に寄与することができる。溶剤は、とくに限定されないが、たとえばエチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、メチルメトキシブタノール、α−ターピネオール、β−ターピネオール、へキシレングリコール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、イゾパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはグリセリン等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン)、2−オクタノン、イソホロン(3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン)もしくはジイソブチルケトン(2,6−ジメチル−4−ヘプタノン)等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、アセトキシエタン、酪酸メチル、ヘキサン酸メチル、オクタン酸メチル、デカン酸メチル、メチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,2−ジアセトキシエタン、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジルもしくはリン酸トリペンチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エトキシエチルエーテル、1,2−ビス(2−ジエトキシ)エタンもしくは1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン等のエーテル類;酢酸2−(2ブトキシエトキシ)エタン等のエステルエーテル類;2−(2−メトキシエトキシ)エタノール等のエーテルアルコール類;トルエン、キシレン、n−パラフィン、イソパラフィン、ドデシルベンゼン、テレピン油、ケロシンもしくは軽油等の炭化水素類;アセトニトリルもしくはプロピオニトリル等のニトリル類;アセトアミドもしくはN,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;低分子量の揮発性シリコンオイル、または揮発性有機変成シリコンオイルから選択される一種または二種以上を含むことができる。
【0054】
次に、本実施形態に係る半導体装置の例について説明する。
図1は、本実施形態に係る半導体装置100を示す断面図である。本実施形態に係る半導体装置100は、基材30と、ペースト状接着剤組成物の熱処理体であるダイアタッチ層10(接着剤層)を介して基材30上に搭載された半導体素子20と、を備えている。半導体素子20と基材30は、たとえばボンディングワイヤ40等を介して電気的に接続される。また、半導体素子20は、たとえば封止樹脂50により封止される。ダイアタッチ層10の膜厚は、とくに限定されないが、たとえば5μm以上100μm以下である。
【0055】
図1に示す例において、基材30は、たとえばリードフレームである。この場合、半導体素子20は、ダイパッド32(30)上にダイアタッチ層10を介して搭載されることとなる。また、半導体素子20は、たとえばボンディングワイヤ40を介してアウターリード34(30)へ電気的に接続される。リードフレームである基材30は、たとえば42アロイ、Cuフレームにより構成される。なお、基材30は、有機基板や、セラミック基板であってもよい。有機基板としては、たとえばエポキシ樹脂、シアネート樹脂、マレイミド樹脂等を適用した当業者公知の基板が好適である。また、基材30の表面は、ペースト状接着剤組成物との接着性をよくするために、銀などにより被膜されていてもよい。
【0056】
半導体素子20の平面形状は、とくに限定されないが、たとえば矩形である。本実施形態においては、たとえば0.5mm□以上15mm□以下のチップサイズを有する矩形状の半導体素子20を採用することができる。
本実施形態に係る半導体装置100の一例としては、たとえば一辺が5mm以上の辺を有する矩形状の大チップを、半導体素子20として用いたものを挙げることができる。
【0057】
本実施形態においては、ダイアタッチ層10が、前述のペースト状接着剤組成物により構成される。ここで、このペースト状接着剤組成物中の銀粒子は、上記の銀被覆樹脂粒子を含むものであり、これ適切に作用し、ダイアタッチ層10としての適度な柔軟性を付与することができる。
また、ペースト状接着剤組成物の塗布段階においては、このペースト状接着剤組成物が均一性の高いものであるため、結果、このダイアタッチ層10中の成分の偏りを抑制することができる。
これらの効果により、ダイアタッチ層10、ひいては、半導体装置100のヒートサイクル性を向上させることができる。
【0058】
図2は、
図1に示す半導体装置100の変形例を示す断面図である。
本変形例に係る半導体装置100において、基材30は、たとえばインターポーザである。インターポーザである基材30のうち、半導体素子20が搭載される一面と反対側の他面には、たとえば複数の半田ボール52が形成される。この場合、半導体装置100は、半田ボール52を介して他の配線基板へ接続されることとなる。
【0059】
本実施形態に係る半導体装置100は、たとえば次のように製造することができる。まず、本実施形態のペースト状接着剤組成物を介して、基材30上に半導体素子20を搭載する。次いで、ペースト状接着剤組成物を加熱する。これにより、半導体装置100が製造されることとなる。
以下、半導体装置100の製造方法を詳細に説明する。
【0060】
本実施形態における半導体装置100の製造方法の概要としては、たとえば、基材30上にペースト状接着剤組成物を塗布した後、ペースト状接着剤組成物からなる塗布膜上に半導体素子20が搭載される。
【0061】
具体的には、まず、基材30上にペースト状接着剤組成物を塗布することにより、塗布膜を形成する。ペースト状接着剤組成物を塗布する方法としては、とくに限定されないが、たとえばディスペンシング法、スクリーン印刷等の印刷法、およびインクジェット法が挙げられる。
【0062】
次に、塗布膜を乾燥させる工程を実施してもよい。これにより、塗布膜の膜厚均一性を向上させることができる。乾燥条件としては、余分な揮発成分を揮発させることにより、タックが抑制された乾燥膜とすることができれば、特に限定されない。
【0063】
次に、基材30上に形成された塗布膜に、半導体素子20をマウントする。
【0064】
次に、ペースト状接着剤組成物からなる塗布膜を熱処理する。このとき、半導体素子20を固定しプレスをかけながら加熱処理を実施してもよいが、半導体素子20に対して無加圧状態(自重のみ)で加熱処理を実施してもよい。
【0065】
上記加熱処理により、ペースト状接着剤組成物からなる塗布膜中の銀粒子にシンタリングが生じ、銀粒子間には粒子連結構造が形成される。これにより、基材30上にダイアタッチ層10が形成されることとなる。
【0066】
本実施形態において、ペースト状接着剤組成物に対して加圧しながら熱処理を行うことにより、銀粒子の焼結性をより向上させることができ、粒子連結構造の形成を促進させることができる。
【0067】
本実施形態に係る製造方法の加熱処理の一例としては、たとえば200℃未満の温度T
1の温度条件で一定時間加熱した後、200℃以上の温度T
2の温度条件で一定時間加熱することにより、第1熱処理および第2熱処理を行うことができる。T
1は、たとえば120℃以上200℃未満とすることができる。T
2は、たとえば200℃以上350℃以下とすることができる。本例において、温度T
1による第1熱処理の処理時間は、たとえば20分以上90分以下とすることができる。また、温度T
2による第2熱処理の処理時間は、たとえば30分以上180分以下とすることができる。
【0068】
一方で、本実施形態においては、25℃から200℃以上の温度T
3まで昇温を止めずに昇温させた後、温度T
3の温度条件で一定時間加熱することによってペースト状接着剤組成物を熱処理してもよい。この場合には、昇温工程のうちの200℃に到達する前までを第1熱処理として扱い、200℃から温度T
3まで昇温して温度T
3で熱処理する工程を第2熱処理として扱うことができる。T
3は、たとえば200℃以上350℃以下とすることができる。
【0069】
本実施形態において、ペースト状接着剤組成物に対して加圧しながら熱処理を行う製造方法の一例においては、たとえば200℃未満の温度T
1の温度条件で一定時間加熱した後、ペースト状接着剤組成物に対して圧力P
1を印加しながら200℃以上の温度T
2の温度条件で一定時間加熱することにより処理を行うことができる。T
1は、たとえば80℃以上200℃未満とすることができる。P
1は、たとえば1MPa以上50MPa未満とすることができる。T
2は、たとえば200℃以上350℃以下とすることができる。また、温度T
2による第2熱処理の処理時間は、たとえば0.5分以上60分以下とすることができる。
次いで、半導体素子20と基材30を、ボンディングワイヤ40を用いて電気的に接続する。次いで、半導体素子20を封止樹脂50により封止する。本実施形態においては、たとえばこのようにして半導体装置100を製造することができる。
【0070】
本実施形態においては、たとえば半導体装置に対して放熱板が接着されていてもよい。この場合、たとえばペースト状接着剤組成物を熱処理して得られる接着剤層を介して半導体装置に放熱板を接着することができる。
放熱板の接着方法は、たとえば次のように行うことができる。まず、上述のペースト状接着剤組成物を介して、半導体装置に放熱板を接着する。次いで、ペースト状接着剤組成物を熱処理する。ペースト状接着剤組成物に対する熱処理は、たとえば上述の半導体装置100の製造方法におけるペースト状接着剤組成物を熱処理してダイアタッチ層10を形成する工程と同様にして行うことが可能である。これにより、ペースト状接着剤組成物中の銀粒子にシンタリングが生じ、銀粒子間には粒子連結構造が形成され、放熱板を接着する接着剤層が形成されることとなる。このようにして、放熱板を半導体装置に接着することができる。
【0071】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 銀粒子を含むペースト状接着剤組成物であって、
前記ペースト状接着剤組成物は、熱処理により前記銀粒子がシンタリングを起こして粒子連結構造を形成するものであり、
前記銀粒子は、シリコーン樹脂粒子の表面に銀が被覆された銀被覆樹脂粒子を含む、ペースト状接着剤組成物。
2. 1.に記載のペースト状接着剤組成物において、
さらに、加熱により重合する化合物を含む、ペースト状接着剤組成物。
3. 2.に記載のペースト状接着剤組成物において、
加熱により重合する前記化合物は、分子内に一つのみ(メタ)アクリル基を有する化合物を含む、ペースト状接着剤組成物。
4. 2.または3.に記載のペースト状接着剤組成物において、
加熱により重合する前記化合物は、エポキシ基を分子内に一つのみ有する化合物を含む、ペースト状接着剤組成物。
5. 1.ないし4.のいずれか一つに記載のペースト状接着剤組成物において、
前記銀粒子の含有量が、当該ペースト状接着剤組成物全体に対して、1重量%以上95重量%以下である、ペースト状接着剤組成物。
6. 1.ないし5.のいずれか一つに記載のペースト状接着剤組成物において、
前記銀粒子の平均粒径D50が、0.8μm以上20μm以下である、ペースト状接着剤組成物。
7. 1.ないし6.のいずれか一つに記載のペースト状接着剤組成物において、
前記銀被覆樹脂粒子の含有量が、前記銀粒子全体に対して、1重量%以上98重量%以下である、ペースト状接着剤組成物。
8. 基材と、
1.ないし7.のいずれか一つに記載のペースト状接着剤組成物の熱処理体である接着剤層を介して前記基材上に搭載された半導体素子と、
を備える半導体装置。
9. 1.ないし7.のいずれか一つに記載のペースト状接着剤組成物を介して、基材上に半導体素子を搭載する工程と、
前記ペースト状接着剤組成物を加熱する工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
10. 1.ないし7.のいずれか一つに記載のペースト状接着剤組成物を介して、半導体装置に放熱板を接着する工程と、
前記ペースト状接着剤組成物を加熱する工程と、
を含む放熱板の接着方法。
【実施例】
【0072】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0073】
[ペースト状接着剤組成物の調製]
各実施例および比較例について、ペースト状接着剤組成物を調製した。ペースト状接着剤組成物は、表1に示す配合に従い各成分を均一に混合することにより得られた。
なお、表1に示す成分の詳細は以下のとおりである。また、表1中における各成分の配合割合は、ペースト状接着剤組成物全体に対する各成分の配合割合(重量部)を示している。
【0074】
(銀粒子)
銀粒子1:銀粉(DOWAエレクトロニクス社製)、AG2−1C、球状、平均粒径(D
50)1.7μm)
銀粒子2:銀粉(福田金属箔粉工業社製、AgC−271B、フレーク状、平均粒径(D
50)2.4μm)
銀粒子3:銀被覆樹脂粒子(三菱マテリアル(株)製、φ2μm耐熱樹脂コア品、平均粒径(D
50)2μm、球状、銀被覆量80重量%、比重4.37)
(分散媒)
分散媒1:1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(日本化成(株)製、CHDMMA、単官能アクリル)
分散媒2:フェノキシエチルメタクリレート(共栄社化学(株)製、ライトエステルPO、単官能アクリル)
分散媒3:メタ・パラ−クレジルグリシジルエーテル(阪本薬品工業(株)製、m、p−CGE、単官能エポキシ)
(硬化剤)
硬化剤1:ジクミルパーオキサイド(化薬アクゾ(株)製、パーカドックスBC、過酸化物)
硬化剤2:イミダゾール(四国化成工業(株)製、2PHZ−PW)
【0075】
各実施例について、得られたペースト状接着剤組成物を塗布して得た塗布膜を、残留酸素濃度1000ppm未満である窒素雰囲気下において25℃から250℃まで昇温速度5℃/分で昇温した後、250℃、2時間の条件で熱処理をしたところ、塗布膜中の銀粒子はシンタリングを起こして粒子連結構造を形成した。
【0076】
[評価]
上記で得られたペースト状接着剤組成物について、以下の項目に基づき評価を行った。
【0077】
(均一性)
実施例および比較例で得られたペースト状接着剤組成物について、25℃の条件で7日静置を行った。目視にてペースト状接着剤組成物を確認し、銀粒子の沈降が観察されないものを○、銀粒子の沈降が観察されたものを×とした。
【0078】
(接着剤層の耐温度サイクル性)
各実施例および比較例について、次にようにして耐温度サイクル性を評価した。
まず、2mm×2mm×0.350mmの裏面をAgめっきしたシリコンチップを、Agめっきした銅フレームに、上記で得られたペースト状接着剤組成物を介してマウントした。次いで、25℃から230℃まで昇温30分、230℃で60分の焼結条件によって、オーブン中にてペースト状接着剤組成物中の銀粒子を焼結させて接着剤層を形成した。焼結後、−65℃から150℃の温度サイクルを1000サイクル行った。そして、温度サイクル試験後の、チップ(裏面)と銅フレームの間の剥離の様子を超音波探傷装置(透過型)にて測定した。このとき、剥離面積が、チップの投影面積全体の10%以下であったものを○とし、10%超過であったものを△とした。
【0079】
【表1】
【0080】
表1の結果から、実施例によれば、均一性に優れ、ヒートサイクル性に優れる接着剤層を与えるペースト状接着剤組成物を提供できる。