特許第6934473号(P6934473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特許6934473-III族窒化物半導体発光素子 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6934473
(24)【登録日】2021年8月25日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】III族窒化物半導体発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/32 20100101AFI20210906BHJP
   H01L 33/36 20100101ALI20210906BHJP
   H01L 33/16 20100101ALI20210906BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20210906BHJP
   C30B 29/38 20060101ALI20210906BHJP
   C30B 29/16 20060101ALI20210906BHJP
   C30B 29/22 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
   H01L33/32
   H01L33/36
   H01L33/16
   H01L21/205
   C30B29/38 C
   C30B29/38 D
   C30B29/16
   C30B29/22 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-524067(P2018-524067)
(86)(22)【出願日】2017年6月19日
(86)【国際出願番号】JP2017022454
(87)【国際公開番号】WO2017221863
(87)【国際公開日】20171228
【審査請求日】2020年5月21日
(31)【優先権主張番号】特願2016-125477(P2016-125477)
(32)【優先日】2016年6月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】特許業務法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 義直
(72)【発明者】
【氏名】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】木下 亨
【審査官】 右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/096884(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/090821(WO,A1)
【文献】 特開2004−179365(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/137781(WO,A1)
【文献】 特開2016−082200(JP,A)
【文献】 特開2007−234902(JP,A)
【文献】 特開2011−082570(JP,A)
【文献】 特開2006−261358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 − 33/64
H01L 21/205
H01L 33/32
C30B 1/00 − 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶n型AlGa1−XN(0.7≦X≦1.0)と、電極を備えたIII族窒化物半導体発光素子であって、前記単結晶n型AlGa1−XN(0.7≦X≦1.0)と前記電極との間に、結晶質の(AlGa1−Y(0<Y≦0.2)からなるn型コンタクト層が設けら
前記n型コンタクト層は、230nm〜260nmの波長の光に対して透過性を有することを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子
【請求項2】
前記n型コンタクト層が、Si、Snから選ばれる少なくとも一種のn型ドーパントを含み、該n型ドーパント濃度が1018〜1021cm−3であることを特徴とする請求項1に記載のIII族窒化物半導体発光素子
【請求項3】
前記n型コンタクト層が、単結晶もしくは多結晶であることを特徴とする請求項1又は2に記載のIII族窒化物半導体発光素子
【請求項4】
前記単結晶n型AlGa1−XN(0.7≦X≦1.0)がn型AlNであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子
【請求項5】
前記電極が形成される単結晶n型AlGa1−XN(0.7≦X≦1.0)表面が窒素極性面であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のIII族窒化物半導体発光素子
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードなどの半導体デバイスに適用できるIII族窒化物積層構造であって、電極とn型III族窒化物層との間にn型コンタクト層を備えたIII族窒化物からなる積層構造体、及び該積層体を備えた縦型半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
Al組成の高いAlXGa1-XN系III族窒化物半導体は、ワイドバンドギャップ半導体として一般的に知られているGaNやSiCに比べて、さらに大きなバンドギャップエネルギーを持っていることから、深紫外発光素子や従来よりも高い耐電圧特性を有する電子デバイスなど、種々の半導体デバイスへの応用が期待されている。
【0003】
このような半導体デバイスを作製する上で、Al組成の高いAlXGa1-XN半導体層と電極との接触抵抗を低減し良好なオーミック特性を得る技術は、デバイス内での電力損失やそれに伴い発生するジュール熱を低減する観点から、非常に重要となる。しかしながら、Al組成の増加に伴って良好なオーミック特性を得ることが困難になるため、Al組成の高いn型AlXGa1-XN半導体層へのオーミック電極を形成する手段として、電極材料およびその形成方法やn型AlXGa1-XN半導体層を含むコンタクト層の構造に関して多数の検討がなされてきた。例えば特許文献1では、n型AlGaN層上に、Ti、V、Taからなる第一の電極金属を形成後に所定の温度で熱処理を行い、更に、第一の電極金属上に、高導電性金属を含む第二の電極金属を形成する方法が提案されている。また、別の手段として、特許文献2および3では、電極が形成される表面に、Al組成の低いn型AlGaN層をコンタクト層として形成することによって接触抵抗を低減する構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5670349号
【特許文献2】特許5352248号
【特許文献3】特許5594530号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で開示された方法に従って電極を形成した場合、n型AlXGa1-XNのAl組成が0.7以上の場合、特にAl組成が1.0であるn型AlNとのオーミック電極を形成する場合には、半導体層のn型導電性の低下が著しく、さらにn型AlXGa1-XN表面に形成される酸化層などのダメージ層が形成されやすくなり、その結果、Al組成が0.5程度の場合と比べて、電極とn型AlXGa1-XN間の抵抗が大きくなってしまい、ショットキーバリアが形成される場合があるという課題があった。
【0006】
また、特許文献2および3に開示された構造を採用する場合、以下の方法によって電極を形成する必要がある。すなわち、先ず半導体層上にマスク材料を形成した後、電極が形成される箇所にフォトリソグラフィーによって開口部を設ける。次に、開口部に選択的にn型AlGaN層からなるコンタクト層を結晶成長させた後に、マスク材料を除去する。最後に、コンタクト層上に電極を形成する。この場合、電極と直接接触するn型AlGaN層のAl組成を低くすることが可能なため、良好な電極特性は得られるが、上述の通り、一般的な電極形成プロセスと比べて、電極形成プロセスが非常に煩雑になってしまうという課題があった。また、紫外発光ダイオードに適用する場合、コンタクト層のAl組成が低いため、発光層から放射される紫外光がコンタクト層で吸収されてしまい、その結果、発光効率が減少するなどの特性低下が起こることも課題として挙げられる。
【0007】
従って、本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、Al組成の高いn型AlXGa1-XNと電極との接触抵抗を低減された良好な電極特性を有するIII族窒化物積層体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討をおこなった。そこで、Al組成の高いn型AlXGa1-XN(0.7≦X≦1.0)と電極との間に、紫外光透過性の良好なワイドバンドギャップ材料であり、かつ高い導電特性を有する半導体材料をコンタクト層として設ける構造に思い至り、従来、主に基板材料として用いられてきたGa23層系材料をコンタクト層として設けた積層構造を作製することによって、電極間のショットキーバリアを低減し、良好なコンタクト特性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、第一の本発明は、単結晶n型AlxGa1-xN(0.7≦X≦1.0)と、電極を備えたIII族窒化物積層体であって、単結晶n型AlXGa1-XN(0.7≦X≦1.0)と、電極との間に、(AlYGa1-Y23(0.0≦Y<0.3)からなるn型コンタクト層が設けられたことを特徴とするIII族窒化物積層体である。
【0010】
上記本発明のIII族窒化物積層体は以下の態様が好適に採り得る。
【0011】
1)前記n型コンタクト層が、Si、Snから選ばれる少なくとも一種のn型ドーパントを含み、該n型ドーパント濃度が1018〜1021cm-3であること。
【0012】
2)前記n型コンタクト層が、単結晶もしくは多結晶であること。
【0013】
3)前記単結晶n型AlXGa1-XN(0.7≦X≦1.0)がn型AlNであること。
【0014】
4)前記電極が形成される単結晶n型AlXGa1-XN(0.7≦X≦1.0)表面が窒素極性面であること。
【0015】
さらに第二の本発明は、上述したIII族窒化物積層体を備えた縦型半導体デバイスである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、Al組成の高い単結晶n型AlXGa1-XN(0.7≦X≦1.0)と電極との間の抵抗を低減することが可能となる。その結果、例えば、本発明のIII族窒化物積体を備えた、280nm以下の紫外発光素子などの縦型半導体デバイスにおける発光素子の動作電圧を低減することが可能となる。さらにまた、n型AlN基板を用いた紫外発光素子に適用する場合には、n型AlN基板の発光素子層が形成される面とは反対側に、本発明のIII族窒化物積層体を作製することによって、動作電圧の低い縦型の紫外発光素子を作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のIII族窒化物積層体を備えた縦型半導体デバイスの一例を示す模式断面図である。
図2】本発明のIII族窒化物積層体を備えた縦型半導体デバイスの他の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のIII族窒化物積層体は、単結晶n型AlxGa1-xN(0.7≦X≦1.0)と、電極を備えた積層体であって、単結晶n型AlXGa1-XN(0.7≦X≦1.0)と、電極との間に、(AlYGa1-Y23(0.0≦Y<0.3)からなるn型コンタクト層が設けられたことが特徴である。上記構造を有するものであれば、その形状は特に制限されるものではなく、単結晶n型AlXGa1-XN自体が基板となっていても良く、あるいは、基板上に単結晶n型AlXGa1-XN層が形成された積層構造であってもよい。単結晶n型AlXGa1-XN層が形成された積層構造とする場合、単結晶n型AlXGa1-XN層は基板上に直接形成されていてもよいし、基板と単結晶n型AlXGa1-XN層の間にバッファ層などを挿入した多層構造とすることもできる。以下本発明のIII族窒化物積層体の各層について説明する。
【0019】
(単結晶n型AlXGa1-XN(0.7≦X≦1.0))
本発明における単結晶n型AlXGa1-XN(0.7≦X≦1.0)は、単結晶からなるn型半導体である。
【0020】
前記のとおり単結晶n型AlXGa1-XN層が形成された積層構造とする場合における単結晶n型AlXGa1-XN層の厚みは特に制限されるものではないが、通常0.1〜10μmの範囲である。使用する基板材料には、サファイア、SiC、AlNなどの公知の単結晶基板材料を用いることができるが、単結晶n型AlXGa1-XN層中の結晶欠陥(転位)の形成を抑制するためには、n型AlXGa1-XN層との格子定数差が小さいAlNを用いることが好ましい。
【0021】
また、単結晶n型AlXGa1-XN(0.7≦X≦1.0)層のAl組成(X)は特に制限されるものではなく、本発明の範囲内において設計に応じて適宜決定すればよい。本発明のIII族窒化物積層体は、上述のAl組成が高い範囲で高い効果を得ることができる。Al組成(X)が本発明の下限値以下の場合においても、本発明の構造を用いて良好なコンタクト特性を得ることはできるが、X<0.7の場合は、例えば特許文献1で開示された方法によって良好な電極特性を得ることが容易となるため、本発明のn型コンタクト層を形成することによる効果が得られにくく、かつ電極形成プロセスが煩雑になることがデメリットとなる。
【0022】
単結晶n型AlXGa1-XNからなる単結晶基板の場合も、Al組成(X)は特に制限されるものではないが、生産性や基板内での組成不均一が発生しないなどの観点からAlN(X=1)であることが好ましい。また基板の厚みも、特に制限されるものではなく、所望の用途、設計に応じて適宜決定すればよいが、基板としての自立性などを考慮すると、20〜1000μmである。
【0023】
上記単結晶n型AlXGa1-XN層、もしくはn型AlXGa1-XN基板中の転位密度は、特に制限されるものではないが、本発明のIII族窒化物積層体を設けた半導体デバイスの特性および信頼性の低下を抑制するためには、好ましくは108cm-2以下であって、さらに好ましくは106cm-2以下、最も好ましくは104cm-2以下である。転位密度の好適な下限値は0cm-2であるが、分析精度や工業的な製品品質の限界を考慮すると102cm-2である。転位密度の測定は、透過型電子顕微鏡による観察(TEM)、又は簡易的にアルカリ溶液に浸漬した後のエッチピット密度の観察により行うことができる。
【0024】
本発明の単結晶n型AlXGa1-XN(0.7≦X≦1.0)は、AlXGa1-XN(0.7≦X≦1.0)中にn型ドーパントを含むn型半導体であって、n型ドーパントにはSi、Ge、Oなどの公知のn型ドーパントを制限なく使用することができるが、AlXGa1-XN(0.7≦X≦1.0)中のイオン化エネルギーの小さいSiを用いることが好ましい。n型ドーパント濃度は、特に制限されるものではなく、目的に応じて適宜決定すればよいが、n型ドーパント濃度が1×1018cm-3以下の場合は、n型導電性が低下するため界面での抵抗が高くなる傾向があり、一方、5×1019cm-3以上の場合は、n型ドーパントを補償する欠陥や不純物の混入によってn型導電性が低下する傾向にあることから、電極およびn型コンタクト層との抵抗値を低減するためには、n型ドーパント濃度は、1×1018〜1×1020cm-3であることが好ましく、更に好ましくは5×1018〜5×1019cm-3である。
【0025】
上記単結晶n型AlXGa1-XNは、上記範囲内のn型ドーパント濃度であって、膜厚方向において濃度の異なる複数の層から形成されていてもよい。なお、n型ドーパント濃度の測定は、2次イオン質量分析法(SIMS)などの公知の技術によって行うことができる。また、n型導電性は公知のホール効果測定、CV測定などにより測定することができる。
【0026】
n型コンタクト層および電極が形成される単結晶n型AlXGa1-XN層、もしくはn型AlXGa1-XN基板表面の面方位は、設計に応じて適宜決定すればよい。一般的に、III族窒化物からなる半導体デバイスは、基板上にC面が露出するように結晶が積層された構造である。この場合、n型コンタクト層および電極が形成されるn型AlXGa1-XN表面の面方位はC面(III族極性面)か、あるいは−C面(窒素極性面)の何れかとなる。半導体デバイス層が形成される側と同じ側に電極が形成されるフリップチップ構造の場合は、n型AlXGa1-XNの面方位はC面(III族極性面)となる。また、単結晶n型AlXGa1-XN基板を用いる場合には、−C面(窒素極性面)上にn型コンタクト層および電極を形成することによって、縦型半導体デバイスを作製することが可能になる。
【0027】
本発明の単結晶n型AlXGa1-XNは、公知の単結晶成長手法、例えば、有機金属気相成長(MOCVD)法、分子線エピタキシー(MBE)法、ハイドライド気層成長(HVPE)法、昇華法、物理気層輸送(PVT)法を用いて製造することができる。これらの結晶成長手法は、所望とする厚みや形状によって好適な手法を適宜選択すればよい。基板上に単結晶n型AlXGa1-XN層を形成する場合には、高品質な薄膜単結晶が得られやすいMOCVD法、MBE法を用いることが好ましく、中でも生産性に優れたMOCVD法を用いることが最も好ましい。一方、n型単結晶AlXGa1-XN基板を製造する場合には、バルク成長に適した、ハイドライド気層成長(HVPE)法、昇華法、物理気層輸送(PVT)法を選択することが好ましく、中でも、単結晶n型AlXGa1-XN基板中のn型ドーパント濃度の制御性が良好なHVPE法を用いることが好ましい。
【0028】
(n型コンタクト層)
本発明のn型コンタクト層は、n型AlXGa1-XN(0.7≦X≦1.0)上に直接形成された(AlYGa1-Y23(0.0≦Y<0.3)からなる層である。一般的に、ZnOやGa23(本発明のn型コンタクト層におけるY=0のn型コンタクト層に相当)などの酸化物半導体は、半導体層中に形成される酸素欠陥によって弱いn型導電性を示し、ドナー不純物をドーピングすることによってn型導電性が向上することが知られている。本発明のn型コンタクト層では、ドナー不純物としてSiもしくはSnから選ばれる少なくとも一種のn型ドーパントを、n型コンタクト層中に1018〜1021cm-3の範囲で含んでいることが好ましく、さらに好ましくは1019〜5×1020cm-3である。n型コンタクト層中の不純物濃度は、n型AlXGa1-XN(0.7≦X≦1.0)と同様にSIMSなどの公知の技術によって測定することができる。
【0029】
n型コンタクト層のAl組成(Y)は、特に限定されるものではなく、本発明で定める範囲で、設計に応じて適宜決定すればよい。n型コンタクト層のAl組成(Y)が0の場合、すなわちn型コンタクト層がGa23の場合、バンドギャップは最少の4.8eV程度であり、原理的に、導電性は最も高くなり電極との良好なコンタクト特性が得られやすくなる。そして、Al組成が高くなるにつれてバンドギャップは大きくなり、それに伴ってコンタクト層の抵抗値は増加し、結果として電極とのコンタクト特性も悪化する傾向にある。すなわち、電極とのコンタクト特性のみに着目した場合、Al組成の小さいn型コンタクト層を用いることが好ましい。
【0030】
一方で、n型コンタクト層の光透過性に着目すると、Al組成の増加に伴ってバンドギャップが大きくなるため、より短波長の光に対しても透明になる。その結果、本発明のIII族窒化物積層体を、例えば紫外発光ダイオードに適用する場合、透明コンタクト層として使用することができるなど、設計の自由度が向上するメリットがある。上述の通り、Ga23のバンドギャップは4.8eV程度であり、概ね波長260nm以下の光を吸収するのに対し、Al組成の増加とともに、より短波長の光まで透過することができるようになる。例えばAl組成(Y)が0.2の場合のバンドギャップは5.5eV程度となり、230nmまで透過性を維持することが可能になる。
【0031】
このように、n型コンタクト層のAl組成は、導電性と紫外光透過性のトレードオフの関係性を有しているが、実用的な発光素子の発光波長を考慮すると、Al組成(Y)は、0≦Y<0.25であって、より好ましくは0≦Y<0.2である。
【0032】
また、本発明のn型コンタクト層は、導電性を高める目的において、結晶質、すなわち単結晶もしくは多結晶であることが好ましい。n型コンタクト層が結晶質であることによって、n型コンタクト層中での電子の散乱が抑制され、その結果、高い導電性を実現することができる。また、Ga23およびAl23は、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロンなど複数の結晶構造を取り得ることが知られているが、結晶構造については特に限定されるものではなく、本発明の効果が得られる範囲において、n型コンタクト層は単一の結晶構造からなる層であってもよいし、複数の結晶構造から構成された層であってもよい。n型コンタクト層の安定性を考慮すると、安定構造であるベータ層が主成分層であることが好ましく、ベータ層のみから構成されていることが最も好ましい。
【0033】
また、n型コンタクト層の膜厚は、特に限定されるものではないが、5〜1000nmの範囲とすることが好ましい。一般的に、電極と直接接触するコンタクト層厚が薄くなると、コンタクト層の光透過性は向上する一方で、電極特性は悪化する傾向にある。一方、上述の光透過性および生産性の観点から、コンタクト層の膜厚を1000nm以下とすることが好ましい。
【0034】
本発明のn型コンタクト層は、結晶質の酸化物を成膜可能な、MOCVD法、MBE法、HVPE法、ミストCVD法、パルスレーザー堆積(PLD)法、スパッタリング法などの公知の堆積手法によって形成することができる。MOCVD法、MBE法、HVPE法を用いる場合は、GaおよびAl原料と酸素原料をキャリアガスとともにn型AlXGa1-XN上に供給し、n型コンタクト層を成長させる。具体的な成長条件は、例えば、J.Electronic Materials,Vol.44,p.1357−1360(MOCVD法)、J.Crystal Growth,Vol.378,p.591−595(MBE法)、Japanese J.Appl.Phyis.,Vol.47,p.7311−7313(ミストCVD)、J.Crystal Growth,Vol.405,p.19−22(HVPE法)に記載されている条件を参考にすればよい。また、PLD法は、高真空化で、n型コンタクト層と同組成、すなわち(AlYGa1-Y23(0.0≦Y<0.3)のセラミックターゲット材料にレーザーを照射し、セラミックターゲット材料を蒸発させてn型AlXGa1-XN上にn型コンタクト層を堆積させる。スパッタリング法は、PLD法と同様に、真空下において、ガスイオンをセラミックターゲット材料に衝突させ、叩き出されたセラミックターゲット材料によって、n型コンタクト層を堆積する。PLD法、およびスパッタリング法は、例えば、Physica Status Solidi(a),Vol.221,p.34−39(PLD法)、J.Optoelectronics and Advanced Materials Vol.7,p.891−896(スパッタリング法)を参考にすればよい。なお、PLD法、スパッタリング法に用いるターゲットには、ドーピングのためのSn、Siを含んだターゲット材料を用いることもできる。
【0035】
(電極)
本発明において、電極は、n型コンタクト層との電極抵抗を低減できる材料であれば、公知の材料を制限なく使用することができる。例えば、特開2015−002293に記載されたような、Au、Al、Ti、Sn、Ge、In、Ni、Co、Pt、W、Mo、Cr、Cu、Pb等の金属、これらの金属のうちの2つ以上を含む合金、又はITO等の導電性化合物や、異なる2つの金属からなる2層構造(例えばTi/Al、Ti/Au、Ti/Pt、Al/Au、Ni/Au、Au/Ni)を用いることができる。このような電極は、真空蒸着法、スパッタリング法などの、公知の薄膜形成手法によって形成することができる。これらの電極は、n型コンタクト層との電極抵抗を低減させる目的で、電極形成後にアニール処理を行うことが好ましい。アニール処理の雰囲気、温度は特に限定されるものではないが、例えば、特開2015−002293に記載されているように、窒素雰囲気下で500℃程度とすればよい。
【0036】
次に、本発明のIII族窒化物積層体を備えた縦型半導体デバイスについて説明する。
【0037】
(III族窒化物積層体を備えた縦型半導体デバイス)
以下、本発明のIII族窒化物積層体を備えた縦型半導体デバイスについて図を用いて説明する。図1は、本発明のIII族窒化物積層体を備えたフリップチップ型の発光ダイオードの模式断面図を示す。また、図2は、本発明のIII族窒化物積層体を備えた縦型発光ダイオードの模式断面図を示す。
【0038】
図1に示されるフリップチップ型の発光ダイオードは、基板4上に、n型AlXGa1-XN層3が形成されており、n型AlXGa1-XN層3の表面上の一部にn型コンタクト層2、および電極1が形成されている。この場合、n型コンタクト層2が形成されるn型AlXGa1-XN層3表面の面方位はC面(III族極性面)となる。さらに、n型AlXGa1-XN層3の表面のn型コンタクト層が形成されていない領域には、活性層5、p型層6、およびp電極7がこの順に形成されている。
【0039】
図1に示す構造を作製する場合、先ず、基板4上にMOCVD法などによって、n型AlXGa1-XN層3、活性層5、p型層6をこの順に成長させる。なお、基板4とn型AlXGa1-XN層3の間に、n型AlXGa1-XN層3の結晶品質を高める、もしくは歪を制御する目的で、バッファ層を設けることもできる。次いで、n型AlXGa1-XN層3のn型コンタクト層が形成される領域を、公知のフォトリソグラフィーとドライエッチングによって露出させる。その後、露出した個所にn型コンタクト層を形成した後、電極1およびp電極7を形成する。
【0040】
また、図2に示す縦型発光ダイオードの場合、n型AlXGa1-XN基板3上に、n型層4、活性層5、p型層6をこの順に成長した後、n型AlXGa1-XN基板3の裏面、すなわち−C面(窒素極性面)上ににn型コンタクト層2を堆積させる。その後、n型コンタクト層2およびp型層6上に、それぞれ電極1、p電極7を形成する。なお、図2では、n型コンタクト層2上に一部に電極1が形成された例を示したが、n型コンタクト層2は電極1と同様に、n型AlXGa1-XN基板3の一部に形成することもできる。
【0041】
上記本発明の縦型半導体デバイスについて図を用いて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において、本発明のIII族窒化物積層体を備えた他の構造の半導体デバイスなどへ応用することもできる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0043】
実施例1
PVT法により作製されたφ23mmのC面AlN単結晶基板を準備した。このAlN種基板は、オフ角度は0.05〜0.5°であり、転位密度は104cm-2以下である。
【0044】
次に、前記AlN基板を、MOCVD装置内のサセプター上に設置し、総流量13slmの水素と窒素の混合ガスを流しながら、1200℃まで加熱し、結晶成長面のクリーニングを行った。次いで、基板温度を1050℃とし、トリメチルアルミニウム流量を35μmol/min、トリメチルガリウム流量を3μmol/min、テトラエチルシラン流量を0.03μmol/min、アンモニア流量を1.5slmの条件で、n型Al0.9Ga0.1N層(n型AlXGa1-XN層)を1.0μm形成した。成長後の基板を複数の7×7mmの正方形形状に切断した。
【0045】
切断後の一つについて、セシウムイオンを1次イオンに用いたSIMS分析を行い、Si濃度の定量評価を行った。n型Al0.9Ga0.1N層中のSi濃度は、1×1019cm-3であった。さらに、同じ基板を、450℃に加熱した水酸化カリウムと水酸化ナトリウムの混合溶液に5min浸漬した後、微分干渉顕微鏡によって、100μm角の視野範囲で、任意の10視野を観察し、エッチピット密度(転位密度)を観察した。算出されたエッチピット密度(転位密度)は8×104cm-2であった。また、別の基板については、n型Al0.9Ga0.1N層上に、真空蒸着法によって、7×7mm基板の四隅にTi(20nm)/Al(100nm)/Ti(20nm)/Au(50nm)を形成し、窒素雰囲気中1000℃の条件で熱処理を行った。この基板のホール効果測定を行った結果、室温における電子濃度および比抵抗は、2×1017cm-3、0.9Ωcmであった。
【0046】
次いで、切断後の二つを、HVPE装置のサセプター上に設置した。850℃に加熱した金属Gaと塩素ガスを反応させることによって得られる塩化ガリウムガス(供給分圧1×10-3atm)、酸素(供給分圧5×10-3atm)、四塩化ケイ素ガス(供給分圧1×10-6atm)を、窒素キャリアガスとともに、1000℃に加熱した基板上に供給し、n型Al0.9Ga0.1N層上にSiをドーピングしたGa23(n型コンタクト層)を形成した。n型コンタクト層が形成された基板の一つについて、XRDω−2θ測定を行った。その結果、n型コンタクト層が(−201)面に配向したベータ型Ga23単結晶層であることを確認した。さらに、同じ基板を使用してSIMS分析を行った結果、n型コンタクト層中のSi濃度は2×1019cm-3であった。
【0047】
次いで、真空蒸着法によって、n型コンタクト層上に複数の300×300μmのTi(20nm)/Au(200nm)(電極)を形成し、窒素雰囲気中500℃の条件で熱処理を行った。その後、ICPエッチング装置によって、電極が形成されている以外のn型コンタクト層部分を、n型Al0.9Ga0.1N層が露出するまでエッチングした。
【0048】
測定電圧−20〜20Vの範囲で電極間の電流―電圧測定を行い、電極とn型コンタクト層間のショットキーバリアを見積もった。ショットキーバリアは0.1V以下と見積もられた。
【0049】
実施例2
実施例1のトリメチルガリウム流量を11μmol/minに変更し、n型Al0.8Ga0.2N層(n型AlXGa1-XN層)を1.0μm形成した以外は、実施例1と同様のプロセスで、n型コンタクト層および電極を形成した。n型Al0.8Ga0.2N層中のSi濃度およびエッチピット密度は実施例1と同等であった。また、n型Al0.8Ga0.2N層の電子濃度および比抵抗は、それぞれ2×1018cm-3、0.07Ωcmであった。また、測定電圧−20〜20Vの範囲で電極間の電流―電圧測定を行って見積もられたショットキーバリアは0.1V以下であった。
【0050】
実施例3
実施例1で得られたn型Al0.9Ga0.1N層(n型AlXGa1-XN層)が形成された7×7mmの基板の二つを、HVPE装置のサセプター上に設置した。850℃に加熱した金属Gaと塩素ガスを反応させることによって得られる塩化ガリウムガス(供給分圧9×10-4atm)、550℃に加熱した金属Alと塩化水素ガスを反応させることによって得られる塩化アルミニウムガス(供給分圧8×10-5atm)、酸素(供給分圧5×10-3atm)、四塩化ケイ素ガス(供給分圧1×10-6atm)を、窒素キャリアガスとともに、1000℃に加熱した基板上に供給し、n型Al0.9Ga0.1N層上にSiをドーピングした(AlYGa1-Y23(n型コンタクト層)を形成した。n型コンタクト層が形成された基板の一つについて、XRDω−2θ測定を行った。その結果、n型コンタクト層が(−201)面に配向したベータ型(Al0.1Ga0.923単結晶層(Y=0.1)であることを確認した。さらに、同じ基板を使用してSIMS分析を行った結果、n型コンタクト層中のSi濃度は3×1019cm-3であった。
【0051】
次いで、実施例1と同様の手順で、Ti(20nm)/Au(200nm)(電極)を形成し、窒素雰囲気中500℃の条件で熱処理を行った後、ICPエッチング装置によって、電極が形成されている以外のn型コンタクト層部分をエッチングした。電流−電圧測定から見積もられたショットキーバリアは0.4Vであった。
【0052】
実施例4
実施例1と同様のPVT法により作製されたC面AlN単結晶基板を準備した。このAlN基板をHVPE装置内のサセプター上に設置した後、HVPE装置内の圧力を750Torrとし、水素、窒素の混合キャリアガス雰囲気下で、種基板を1450℃に加熱した。この際、全キャリアガス流量(10slm)に対して0.5体積%になるようにアンモニアガスを供給した。次いで、450℃に加熱した金属Alと塩化水素ガスを反応させることによって得られる塩化アルミニウムガスを全キャリアガス供給量に対して0.05体積%になるように供給し、種基板上にn型AlN層を330μm形成した。この際、サセプター上に石英片(□3mm×厚み1mm)を5個設置し、成長時に起こる石英の反応・分解現象を利用して、AlN層中にSiをドーピングした。
【0053】
その後、PVT法により作製されたAlN単結晶基板部分を機械研磨により除去し、HVPE法により作製したn型AlNからなる自立基板(n型AlXGa1-XN基板)を作製した。次いで、成長表面(Al極性面)、およびN極性面を化学機械(CMP)研磨により平滑化した。こうして得られたn型AlN基板の厚みは200μmであった。その後、複数の7×7mmの正方形形状に切断した。
【0054】
切断後の基板の一つについてSIMSによる定量分析を行った結果、Si濃度は3×1018cm-3であった。さらに、同じ基板のAl極性側を、450℃に加熱した水酸化カリウムと水酸化ナトリウムの混合溶液に5min浸漬し、実施例1と同様にエッチピット密度を観察した。算出されたエッチピット密度(転位密度)は2×105cm-2であった。また、別の基板については、C面((III族極性面)上に、真空蒸着法によって、7×7mm基板の四隅にTi(20nm)/Al(100nm)/Ti(20nm)/Au(50nm)を形成し、窒素雰囲気中1000℃の条件で熱処理を行った。この基板のホール効果測定を行った結果、室温における電子濃度および比抵抗は、4×1014cm-3、95Ωcmであった。
【0055】
次いで、実施例1と同様の手順で、n型AlNからなる自立基板の窒素極性面上にGa23(n型コンタクト層)、およびTi(20nm)/Au(200nm)(電極)を形成し、窒素雰囲気中500℃の条件で熱処理を行った後、ICPエッチング装置によって、電極が形成されている以外のn型コンタクト層部分をエッチングした。測定電圧−20〜20Vの範囲で電極間の電流―電圧測定を行った結果、ショットキーバリア高さは0.3Vであった。
【0056】
比較例1
実施例1で7×7mmに切断した基板の一つについて、ホール効果測定用サンプルと同手順で、n型Al0.9Ga0.1N層上に複数の300×300μmの電極を形成した。測定電圧−20〜20Vの範囲で電極間の電流―電圧測定を行った結果、ショットキーバリア高さは1.8Vであった。
【0057】
比較例2
実施例2で7×7mmに切断した基板の一つについて、ホール効果測定用サンプルと同手順で、n型Al0.8Ga0.2N層上に複数の300×300μmの電極を形成した。測定電圧−20〜20Vの範囲で電極間の電流―電圧測定を行った結果、ショットキーバリア高さは0.8Vであった。
【0058】
比較例3
実施例2の塩化アルミニウムガスの供給分圧を1×10-3atmとした以外は、実施例2と同様にして、n型Al0.9Ga0.1N層上にn型コンタクト層を形成した。n型コンタクト層が形成された基板の一つについて、XRDω−2θ測定を行った。その結果、n型コンタクト層が(−201)面に配向したベータ型(Al0.4Ga0.623単結晶層(Y=0.4)であることを確認した。さらに、同じ基板を使用してSIMS分析を行った結果、n型コンタクト層中のSi濃度は5×1019cm-3であった。
【0059】
次いで、実施例1と同様の手順で、Ti(20nm)/Au(200nm)(電極)を形成し、窒素雰囲気中500℃の条件で熱処理を行った後、ICPエッチング装置によって、電極が形成されている以外のn型コンタクト層部分をエッチングした。電流−電圧測定を行った結果、−20〜20Vの範囲の抵抗値は極めて大きく、ショットキーバリアは12Vであった。
【0060】
比較例4
実施例4で得られたn型AlN基板の窒素極性面上に、実施例1の、ホール効果測定用サンプルと同手順で、複数の300×300μmの電極を形成した。測定電圧−20〜20Vの範囲で電極間の電流―電圧測定を行った結果、ショットキーバリア高さは8.2Vであった。
【0061】
比較例5
実施例1で7×7mmに切断した基板の一つを用いて、四塩化ケイ素ガスの供給分圧を1×10-8atmに変更した以外は、実施例1と同様にしてn型Al0.9Ga0.1N層上にSiをドーピングしたGa23(n型コンタクト層)を形成した。n型コンタクト層が形成された基板の一つについて、XRDω−2θ測定を行った。SIMS分析を行った結果、n型コンタクト層中のSi濃度は9×1016cm-3であった。実施例1と同手順で、複数の300×300μmの電極を形成した。測定電圧−20〜20Vの範囲で電極間の電流―電圧測定を行った結果、ショットキーバリア高さは1.3Vであった。
図1
図2