特許第6934519号(P6934519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6934519
(24)【登録日】2021年8月25日
(45)【発行日】2021年9月15日
(54)【発明の名称】高圧燃料ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/46 20060101AFI20210906BHJP
   F02M 59/44 20060101ALI20210906BHJP
【FI】
   F02M59/46 C
   F02M59/46 P
   F02M59/46 W
   F02M59/44 N
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-529033(P2019-529033)
(86)(22)【出願日】2018年6月25日
(86)【国際出願番号】JP2018023945
(87)【国際公開番号】WO2019012970
(87)【国際公開日】20190117
【審査請求日】2019年10月28日
(31)【優先権主張番号】特願2017-137638(P2017-137638)
(32)【優先日】2017年7月14日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】秋山 壮嗣
(72)【発明者】
【氏名】臼井 悟史
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】小俣 繁彦
(72)【発明者】
【氏名】根本 雅史
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2017/0159629(US,A1)
【文献】 特表2009−531577(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/163246(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/098482(WO,A1)
【文献】 特開2006−214539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 59/44 − 59/46
F16K 15/00 − 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧室の吐出側に配置された吐出弁と、前記吐出弁が着座する吐出弁シートと、前記吐出弁シートと別部材で独立して構成され、前記吐出弁を間にして前記吐出弁シートと反対側に位置する対向部材と、前記吐出弁及び前記吐出弁シートを有する吐出弁機構が配置された吐出弁室と、を備え、
前記対向部材は、前記吐出弁のストローク方向の変位を規制するストローク方向規制部を有する吐出弁ストッパと、前記吐出弁室と外部とを遮断する栓部材と、を含んで構成されると共に、前記吐出弁ストッパと前記栓部材とが別部材で構成され、
前記ストローク方向規制部はテーパ面として形成され、
前記吐出弁はボール弁により構成され、
前記吐出弁ストッパ、前記ストローク方向において前記テーパ面とオーバーラップする範囲の外周面が前記吐出弁室の内周部に圧入されており、
前記栓部材は前記吐出弁室が形成されるポンプボディに溶接されている高圧燃料ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の高圧燃料ポンプにおいて、
前記対向部材に取り付けられ、前記吐出弁を前記吐出弁シートに向かって付勢する吐出弁ばねを備えた高圧燃料ポンプ。
【請求項3】
請求項1に記載の高圧燃料ポンプにおいて、
前記吐出弁のストローク軸線と直交する方向の変位を規制する径方向規制部が前記栓部材に形成された高圧燃料ポンプ。
【請求項4】
請求項3に記載の高圧燃料ポンプにおいて、
前記径方向規制部に前記ボール弁を介して吐出された燃料を前記吐出弁機構の径方向外側に向かって流す径方向流路が形成された高圧燃料ポンプ。
【請求項5】
請求項4に記載の高圧燃料ポンプにおいて、
前記径方向流路は複数形成された高圧燃料ポンプ。
【請求項6】
請求項3に記載の高圧燃料ポンプにおいて、
前記ストローク方向における前記径方向規制部の長さが前記吐出弁の直径のほぼ半分以上となるように形成される高圧燃料ポンプ。
【請求項7】
請求項3に記載の高圧燃料ポンプにおいて、
前記ストローク方向において前記径方向規制部の長さが前記対向部材の前記テーパ面の長さよりも長くなるように形成される高圧燃料ポンプ。
【請求項8】
請求項1に記載の高圧燃料ポンプにおいて、
前記吐出弁を介して吐出された燃料が設定圧力を超えた場合に前記加圧室に、又は低圧流路に燃料を戻すリリーフ弁機構を備え、
前記加圧室から吐出された燃料は吐出弁室を流れた後に前記リリーフ弁機構が配置されたリリーフ弁室を流れ、吐出口から吐出される高圧燃料ポンプ。
【請求項9】
請求項8に記載の高圧燃料ポンプにおいて、
前記吐出弁を介して吐出された燃料は前記吐出弁機構の径方向外側で、かつ、前記加圧室を構成するポンプボディにほぼ水平方向に形成された流路を流れた後に前記リリーフ弁室を流れ、前記吐出口から吐出される高圧燃料ポンプ。
【請求項10】
請求項1に記載の高圧燃料ポンプにおいて、
前記吐出弁シートが形成される吐出弁シート部材と、前記吐出弁シート部材がポンプボディに圧入される圧入部と、前記対向部材を構成する栓部材が前記ポンプボディに溶接される溶接部と、を備え、
前記吐出弁シート部材と前記対向部材とは非接触に別体で構成された高圧燃料ポンプ。
【請求項11】
請求項1に記載の高圧燃料ポンプにおいて、
前記吐出弁を前記吐出弁シートに向かって付勢する吐出弁ばねを備え、
前記吐出弁ばねは、前記対向部材の前記ストローク方向規制部と前記栓部材とに跨って、前記ストローク方向において前記テーパ面に続いて前記吐出弁シートの側とは反対側に設けられた凹部に配置された高圧燃料ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車用内燃機関に適用される高圧燃料ポンプの特に吐出弁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼室へ直接、燃料を噴射する直接噴射型の自動車用内燃機関において、燃料を高圧化するためのプランジャ式の高圧燃料ポンプが広く用いられている。高圧燃料ポンプの従来技術として特許文献1(特開2011−80391号公報)においては、弁体、シート、ばねを内部に収納する吐出弁ユニットが開示されている。この吐出弁はシート面が平面であり、弁体およびシートの当接部を精度良く研磨することにより、油密性能を得ることができる。
【0003】
また特許文献2(WO15/163246号公報)においては、ポペット弁を用いているものがある。ポペット弁は背圧を受けてシート面に当接することにより、シート部とヘルツ接触を起こし、油密性能を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−80391号公報
【特許文献2】WO15/163246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、吐出弁機構がユニット型であるため取付けるためのスペースが大きく、取り付けるためには製品の全体的な大型化が必要である。一方で、特許文献2においては、ユニット型ではないため、製品の小型化は可能である。しかしながら、弁体がポペット弁であるため、弁体の加工工数がかかり、安価で製造することが困難である。
【0006】
そこで本発明の目的は、安価に信頼性の高い吐出弁機構を有する高圧燃料ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するために、本発明の高圧燃料ポンプは加圧室の吐出側に配置された吐出弁と、前記吐出弁が着座する吐出弁シートと、前記吐出弁シートと別部材で独立して構成され、前記吐出弁を間にして前記吐出弁シートと反対側に位置する対向部材と、前記吐出弁及び前記吐出弁シートを有する吐出弁機構が配置された吐出弁室と、を備え、前記対向部材は、前記吐出弁のストローク方向の変位を規制するストローク方向規制部を有する吐出弁ストッパと、前記吐出弁室と外部とを遮断する栓部材と、を含んで構成されると共に、前記吐出弁ストッパと前記栓部材とが別部材で構成され、前記ストローク方向規制部はテーパ面として形成され、前記吐出弁はボール弁により構成され、前記吐出弁ストッパ、前記ストローク方向において前記テーパ面とオーバーラップする範囲の外周面が前記吐出弁室の内周部に圧入されており、前記栓部材は前記吐出弁室が形成されるポンプボディに溶接されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安価に信頼性の高い吐出弁機構を有する高圧燃料ポンプを提供することが可能である。上記した以外の本発明の構成、作用、効果については以下の実施例において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施例の高圧燃料ポンプが適用されたエンジンシステムの構成図を示す。
図2】本実施例の実施例の高圧燃料ポンプの縦断面図である。
図3】本実施例の実施例の高圧燃料ポンプの上方から見た水平方向断面図である。
図4】本実施例の実施例の高圧燃料ポンプの図1と別方向から見た縦断面図である。
図5】本実施例の吐出弁機構の閉弁状態の縦断面図である。
図6】本実施例の吐出弁機構の開弁状態の横断面図である。
図7】本実施例の吐出弁機構と加圧室戻しリリーフ弁を含む横断面図である。
図8】本実施例の吐出弁機構と低圧室戻しリリーフ弁を含む横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施例を説明する。
【実施例】
【0011】
図1にはエンジンシステムの全体構成図を示す。破線で囲まれた部分が高圧燃料ポンプ(以下、高圧燃料ポンプと呼ぶ)の本体を示し、この破線の中に示されている機構・部品はポンプボディ1に一体に組み込まれていることを示す。なお、図1はエンジンシステムの動作を模式的に示す図面であり、詳細な構成は図2以降の高圧燃料ポンプの構成と異なるところがある。図2は本実施例の高圧燃料ポンプの縦断面図を示し、図3は高圧燃料ポンプを上方から見た水平方向断面図である。また図4は高圧燃料ポンプを図2と別方向から見た縦断面図である。
【0012】
燃料タンク20の燃料は、エンジンコントロールユニット27(以下ECUと称す)からの信号に基づきフィードポンプ21によって汲み上げられる。この燃料は適切なフィード圧力に加圧されて吸入配管28を通して高圧燃料ポンプの低圧燃料吸入口10aに送られる。
【0013】
低圧燃料吸入口10aから吸入ジョイント51を通過した燃料は、圧力脈動低減機構9が配置されるダンパ室(10b、10c)を介して容量可変機構を構成する電磁弁機構300の吸入ポート31bに至る。具体的には電磁弁機構300は電磁吸入弁機構を構成する。
【0014】
電磁弁機構300に流入した燃料は、吸入弁30により開閉される吸入口を通過し加圧室11に流入する。エンジンのカム機構93によりプランジャ2に往復運動する動力が与えられる。プランジャ2の往復運動により、プランジャ2の下降行程には吸入弁30から燃料を吸入し、上昇行程には、燃料が加圧される。加圧された燃料は、吐出弁機構8を介し、圧力センサ26が装着されているコモンレール23へ燃料が圧送される。そしてECU27からの信号に基づきインジェクタ24がエンジンへ燃料を噴射する。本実施例はインジェクタ24がエンジンのシリンダ筒内に直接、燃料を噴射する、いわゆる直噴エンジンシステムに適用される高圧燃料ポンプである。高圧燃料ポンプは、ECU27から電磁弁機構300への信号により、所望の供給燃料の燃料流量を吐出する。
【0015】
図2、3に示すように本実施例の高圧燃料ポンプは内燃機関の高圧燃料ポンプ取付け部90に密着して固定される。具体的には図3に示すようにポンプボディ1に設けられた取付けフランジ1aにねじ穴1bが形成されており、これに図示しない複数のボルトが挿入される。これにより取付けフランジ1aが内燃機関の高圧燃料ポンプ取付け部90に密着し、固定される。高圧燃料ポンプ取付け部90とポンプボディ1との間のシールのためにOリング61がポンプボディ1に嵌め込まれ、エンジンオイルが外部に漏れるのを防止する。
【0016】
図2、4に示すようにポンプボディ1にはプランジャ2の往復運動をガイドし、ポンプボディ1と共に加圧室11を形成するシリンダ6が取り付けられている。つまり、プランジャ2はシリンダの内部を往復運動することで加圧室の容積を変化させる。また燃料を加圧室11に供給するための電磁弁機構300と加圧室11から吐出通路に燃料を吐出するための吐出弁機構8が設けられている。
【0017】
シリンダ6はその外周側においてポンプボディ1と圧入される。ポンプボディ1にはシリンダ6を下側から挿入するための挿入穴が形成され、挿入穴の下端でシリンダ6の固定部6aの下面と接触するように内周側に変形させた内周凸部が形成される。ポンプボディ1の内周凸部の上面がシリンダ6の固定部6aを図中上方向へ押圧し、シリンダ6の上端面で加圧室11にて加圧された燃料が低圧側に漏れないようシールしている。
【0018】
プランジャ2の下端には、内燃機関のカムシャフトに取り付けられたカム93の回転運動を上下運動に変換し、プランジャ2に伝達するタペット92が設けられている。プランジャ2はリテーナ15を介してばね4にてタペット92に圧着されている。これによりカム93の回転運動に伴い、プランジャ2を上下に往復運動させることができる。
【0019】
また、シールホルダ7の内周下端部に保持されたプランジャシール13がシリンダ6の図中下方部においてプランジャ2の外周に摺動可能に接触する状態で設置されている。これにより、プランジャ2が摺動したとき、副室7aの燃料をシールし内燃機関内部へ流入するのを防ぐ。同時に内燃機関内の摺動部を潤滑する潤滑油(エンジンオイルも含む)がポンプボディ1の内部に流入するのを防止する。
【0020】
図3、4に示すように高圧燃料ポンプのポンプボディ1の側面部には吸入ジョイント51が取り付けられている。吸入ジョイント51は、車両の燃料タンク20からの燃料を供給する低圧配管に接続されており、燃料はここから高圧燃料ポンプ内部に供給される。吸入フィルタ52は、燃料タンク20から低圧燃料吸入口10aまでの間に存在する異物を燃料の流れによって高圧燃料ポンプ内に吸収することを防ぐ役目がある。
【0021】
低圧燃料吸入口10aを通過した燃料は、図4に示すポンプボディ1に上下方向に連通した低圧燃料吸入通路を通って圧力脈動低減機構9に向かう。圧力脈動低減機構9はダンパカバー14とポンプボディ1の上端面との間のダンパ室(10b、10c)に配置され、ポンプボディ1の上端面に配置された保持部材9aにより下側から支持される。具体的には、圧力脈動低減機構9は2枚の金属ダイアフラムが重ね合わせて構成される金属ダンパである。圧力脈動低減機構9の内部には0.3MPa〜0.6MPaのガスが封入され、外周縁部が溶接で固定される。
【0022】
圧力脈動低減機構9の上下面には低圧燃料吸入口10a、低圧燃料吸入通路と連通するダンパ室(10b、10c)が形成される。なお、図には表れていないが、保持部材9aには圧力脈動低減機構9の上側と下側とを連通する通路が形成される。
【0023】
ダンパ室(10b、10c)を通った燃料は次にポンプボディに上下方向に連通して形成された低圧燃料吸入通路10dを介して電磁弁機構300の吸入ポート31bに至る。
なお、吸入ポート31bは吸入弁シート31aを形成する吸入弁シート部材31に上下方向に連通して形成される。端子46はコネクタと一体にモールドされ残りの方端がエンジン制御ユニット側と接続可能な構成としている。
【0024】
図3で電磁弁機構300について説明する。カム93の回転により、プランジャ2がカム93の方向に移動して吸入行程状態にある時は、加圧室11の容積は増加し加圧室11内の燃料圧力が低下する。この行程で加圧室11内の燃料圧力が吸入ポート31bの圧力よりも低くなると、吸入弁30は開弁状態になる。吸入弁30が最大リフト状態となると吸入弁30はストッパ32に接触する。吸入弁30がリフトすることにより、吸入弁シート部材31に形成された開口部が開口し開弁する。燃料は吸入弁シート部材31の開口部を通り、ポンプボディ1に横方向に形成された穴を介して加圧室11に流入する。
【0025】
プランジャ2が吸入行程を終了した後、プランジャ2が上昇運動に転じ上昇行程に移る。ここで電磁コイル43は無通電状態を維持したままであり磁気付勢力は作用しない。ロッド付勢ばね40はロッド35の外径側に凸となるロッド凸部35aを付勢し、無通電状態において吸入弁30を開弁維持するのに必要十分な付勢力を有するよう設定されている。加圧室11の容積は、プランジャ2の上昇運動に伴い減少するが、この状態では、一度、加圧室11に吸入された燃料が、再び開弁状態の吸入弁30の開口部を通して吸入通路10dへと戻されるので、加圧室の圧力が上昇することは無い。この行程を戻し行程と称する。
【0026】
この状態で、ECU27からの制御信号が電磁弁機構300に印加されると、電磁コイル43には端子46を介して電流が流れる。磁気コア39とアンカー36との間に磁気吸引力が作用し、磁気コア39及びアンカー36が磁気吸引面で接触する。磁気吸引力はロッド付勢ばね40の付勢力に打ち勝ってアンカー36を付勢し、アンカー36がロッド凸部35aと係合して、ロッド35を吸入弁30から離れる方向に移動させる。
【0027】
このとき、吸入弁付勢ばね33による付勢力と燃料が吸入通路10dに流れ込むことによる流体力により吸入弁30が閉弁する。閉弁後、加圧室11の燃料圧力はプランジャ2の上昇運動と共に上昇し、燃料吐出口12の圧力以上になると、吐出弁機構8を介して高圧燃料の吐出が行われ、コモンレール23へと供給される。この行程を吐出行程と称する。
【0028】
すなわち、プランジャ2の下始点から上始点までの間の上昇行程は、戻し行程と吐出行程からなる。そして、電磁弁機構300のコイル43への通電タイミングを制御することで、吐出される高圧燃料の量を制御することができる。
【0029】
プランジャ2は、大径部2aと小径部2bを有し、プランジャの往復運動によって副室7aの体積は増減する。副室7aは燃料通路10eによりダンパ室(10b、10c)と連通している。プランジャ2の下降時は、副室7aからダンパ室(10b、10c)へ、上昇時は、ダンパ室(10b、10c)から副室7aへと燃料の流れが発生する。
【0030】
このことにより、ポンプの吸入行程もしくは、戻し行程におけるポンプ内外への燃料流量を低減することができ、高圧燃料ポンプ内部で発生する圧力脈動を低減する機能を有している。
【0031】
吐出弁機構8は図3に示すように加圧室11の出口に設けられた吐出弁機構8は、吐出弁シート8a、吐出弁シート8aと接離する吐出弁8b、吐出弁8bを吐出弁シート8aに向かって付勢する吐出弁ばね8c、吐出弁8bのストローク(移動距離)を決める吐出弁ストッパ8dから構成される。吐出弁ストッパ8dとポンプボディ1は当接部8eで溶接により接合され燃料と外部を遮断している。
【0032】
加圧室11と吐出弁室12aに燃料差圧が無い状態では、吐出弁8bは吐出弁ばね8cによる付勢力で吐出弁シート8aに圧着され閉弁状態となっている。加圧室11の燃料圧力が、吐出弁室12aの燃料圧力よりも大きくなった時に吐出弁8bは吐出弁ばね8cに逆らって開弁する。そして、加圧室11内の高圧の燃料は吐出弁室12a、燃料吐出通路12b、燃料吐出口12を経てコモンレール23へと吐出される。吐出弁8bは開弁した際、吐出弁ストッパ8dと接触し、ストロークが制限される。したがって、吐出弁8bのストロークは吐出弁ストッパ8dによって適切に決定される。これによりストロークが大きすぎて、吐出弁8bの閉じ遅れにより、吐出弁室12aへ高圧吐出された燃料が、再び加圧室11内に逆流してしまうのを防止でき、高圧燃料ポンプの効率低下が抑制できる。
【0033】
加圧室11の燃料が加圧されて吐出弁8bが開弁すると、加圧室11内の高圧の燃料は吐出弁室80、燃料吐出通路を通って、燃料吐出口12から吐出される。燃料吐出口12は吐出ジョイント60に形成されており、吐出ジョイント60はポンプボディ1に溶接部にて溶接固定され燃料通路を確保している。
【0034】
次に、図2、3等に示すリリーフ弁機構200について説明する。
リリーフ弁機構200はリリーフボディ201、リリーフ弁202、リリーフ弁ホルダ203、リリーフばね204、ばねストッパ205からなる。リリーフボディ201には、テーパ形状のシート部が設けられている。バルブ202はリリーフばね204の荷重がバルブホルダ203を介して負荷され、リリーフボディ201のシート部に押圧され、シート部と協働して燃料を遮断している。
【0035】
高圧燃料ポンプの電磁吸入弁300の故障等により、燃料吐出口12の圧力が異常に高圧になり、リリーフ弁機構200のセット圧力より大きくなると異常高圧燃料はリリーフ通路213を介して低圧側であるダンパ室10cにリリーフされる。本実施例ではリリーフ弁機構200のリリーフ先をダンパ室10bとしているが、加圧室11にリリーフするように構成しても良い。
【0036】
以下、図5乃至図8を用いて、本実施例における吐出弁機構8を説明する。図3に示したように吐出弁機構8の吐出弁8bをポペット弁とすると、吐出弁8bを切削したうえで研磨する必要があるので加工工数がかかり製造コストが増加するという問題がある。また、吐出弁機構8をユニット型にした場合、加工が難しい部品が必要となり、ポンプボディ1の大型化が必要となる。
【0037】
そこで、本実施例の吐出弁機構8について、図5、6を用いて説明する。図5は吐出弁機構8の吐出弁8Bが吐出弁シート部材8Aの吐出弁シート8Fに接触し閉弁した状態を示す。また図6は吐出弁機構8の吐出弁8Bが吐出弁シート部材8Aの吐出弁シート8Fから離座し、開弁した状態を示す。
【0038】
本実施例の吐出弁機構8は、図5、6に示すように加圧室11の吐出側に配置された吐出弁8Bと、吐出弁8Bが着座する吐出弁シート8Fと、吐出弁シート8Fと別部材で独立して構成され、吐出弁8Bを間にして吐出弁シート8Fと反対側に位置する対向部材8D(ストッパ)と、を備えている。そして吐出弁機構8は、吐出弁8Bのストローク方向の変位を規制するストローク方向規制部8D1が対向部材8Dのテーパ面に形成されている。
【0039】
この構成によれば、ストローク方向規制部8D1が対向部材8Dのテーパ面に形成することにより、吐出弁8Bを安価なボール弁で構成したとしても、吐出弁8Bのストローク方向の動きを安定して規制することが可能である。したがって、安価に信頼性の高い吐出弁機構を構成することが可能となる。
【0040】
なお、本実施例では吐出弁8Bはボール弁により構成される。この構成によれば、吐出弁8Bを安価なボール弁で構成するため安価に吐出弁機構を構成することが可能となる。またこの構成によれば高い燃料圧力においても油密性能を確保し、かつ、小型軽量な吐出弁機構を有する高圧燃料ポンプを提供するものである。
【0041】
図5、6に示すように吐出弁機構8は、吐出弁8Bと吐出弁シート8Fとを有する吐出弁機構8が配置された吐出弁室80を備え、対向部材8D(ストッパ)は栓部材17(封止プラグ)とは別体で構成されている。具体的には大径の対向部材8D(ストッパ)がポンプボディ1の小径の内周部に圧入により固定されている。但し対向部材8D(ストッパ)は吐出弁室80と外部とを遮断する栓部材17(封止プラグ)で構成しても良い。この構成によれば、栓部材17(封止プラグ)で対向部材8D(ストッパ)を一体に構成できるため、安価に吐出弁機構を構成することが可能となる。
【0042】
また吐出弁機構8は弁シート部材8Aと、弁シート部材8Aの吐出弁シート8Fに当接・離間して吐出流路81を開閉する吐出弁8Bと、栓部材17(封止プラグ)に取り付けられ、吐出弁8Bを吐出弁シート8Fに向かって付勢する吐出弁ばね8Cとを備えている。そして上記したように吐出弁8Bのストローク方向の変位を規制するストローク方向規制部8D1が対向部材8Dのテーパ面に形成される。なお、図5、6では対向部材8Dと栓部材17(封止プラグ)とが別体で構成されているが、これらは一体で構成しても良い。
【0043】
本実施例ではストローク規制部8Dは対向部材8D(栓部材17)に形成されているが、吐出ジョイント150に形成してもよい。すなわち、本実施例の高圧燃料ポンプは吐出弁8Bと吐出弁シート8Fとを有する吐出弁機構8が配置された吐出弁室80を備え、対向部材8Dはポンプボディ1に固定された吐出ジョイント60で構成されても良い。
【0044】
吐出弁8Bは吐出弁シート部材8Aの吐出弁シート8Fと接触することにより油密保持可能な環状接触面8Fを形成する。また吐出弁ばね8Cは対向部材8D(栓部材17)に取り付けられ、吐出弁8Bを吐出弁シート8Fに向かって付勢する、つまり吐出弁8Bを閉弁方向に付勢する。
【0045】
吐出弁シート8Fが形成される吐出弁シート部材8Aには、吐出弁8Bのストローク軸線と直行する方向の変位を規制する径方向規制部8A1が形成されている。この構成によれば、吐出弁8Bを安価なボール弁で構成したとしても、吐出弁8Bのストローク軸線と直行する方向の変位を規制することが可能である。したがって、信頼性の高い吐出弁機構を構成することが可能となる。
【0046】
吐出弁軸方向における吐出弁軸方向規制部8A1の長さが、吐出弁8Bの直径のほぼ半分以上となるように形成されていることが望ましい。これにより吐出弁8Bのストローク軸線と直行する方向の変位を安定して規制することが可能であり、信頼性の高い吐出弁機構を構成することが可能となる。
【0047】
また、吐出弁軸方向において径方向規制部8A1の長さが封止プラグ17のテーパ面までの長さ(吐出弁部材8Bのストローク)よりも長くなるように形成されることが望ましい。これにより吐出弁8Bのストローク軸線と直行する方向の変位を安定して規制することが可能であり、信頼性の高い吐出弁機構を構成することが可能となる。
【0048】
吐出弁シート8Fが形成される吐出弁シート部材8Aの径方向規制部8A1にボール弁8Bを介して吐出された燃料を吐出弁機構8の径方向外側に向かって流す径方向流路8A2が形成されている。なお、径方向流路8A2は吐出弁シートの外周に複数形成されていることが望ましい。なお、径方向流路8A2の必要流路面積を確保できれば、円、楕円、長穴、四角等の形状とすることが可能である。径方向流路8A2は吐出弁シートの外周に複数形成することにより必要流路を確保することが可能である。
【0049】
また本実施例の高圧燃料ポンプは吐出弁シート8Fが形成される吐出弁シート部材8Aがポンプボディ1に圧入される圧入部8A3と、対向部材(封止プラグ17)がポンプボディ1に溶接される溶接部17Aと、を備え、吐出弁シートが形成される弁シート部材8Aと対向部材(封止プラグ17)は非接触に別体で構成される。
【0050】
図7、8に示すように本実施例では、吐出弁シート部材8Aを通過した燃料は、吐出弁室80から連通路110を通り燃料吐出口12に流れて高圧燃料ポンプから吐出される。本実施例において燃料吐出口12にはリリーフ弁機構200が配置される。なお、径方向規制部8A1を封止プラグ17の側に形成してもよい。その際に、径方向流路8A2も同様に封止プラグ17の側に形成してもよい。
【0051】
また本実施例の高圧燃料ポンプは、吐出弁8Bを介して吐出された燃料が設定圧力を超えた場合に加圧室11、または圧力脈動低減機構9、吸入通路10b等の低圧流路に燃料を戻すリリーフ弁機構200を備えている。そして、加圧室11から吐出された燃料は吐出弁室80を流れた後にリリーフ弁機構200が配置された連通路110を流れ、燃料吐出口12から吐出される。
【0052】
また本実施例の高圧燃料ポンプは、吐出弁8Bを介して吐出された燃料は吐出弁機構8の径方向外側で、かつ、加圧室11を構成するポンプボディ1にほぼ水平方向に形成された流路を流れた後にリリーフ弁機構200が配置されたリリーフ弁室を流れ、燃料吐出口12から吐出される。
【0053】
以上の本実施例によれば、吐出弁8Bの加工工数を短縮でき安価で弁体を製作でき、且つ高圧燃料ポンプ自体を大型化することなく実現できる。また、吐出弁8Bは、曲面形状の当接部を有しているため、高い背圧がかかった場合にはヘルツ接触により、シート部が微小に変形してシール面を形成し、高い油密性を発揮することができる。したがって、高い燃料圧力においても、油密性能を確保し、かつ、小型軽量な吐出弁構造を有する高圧燃料ポンプを提供できる。
【符号の説明】
【0054】
1…ポンプ本体、2…プランジャ、6…シリンダ、8…吐出弁機構、8A…吐出弁シート部材、8A1…径方向規制部、8A2…径方向流路、8B…吐出弁、8D…対向部材、8D1…ストローク方向規制部、8F…吐出弁シート、17…栓部材、80…吐出弁室、200…リリーフ弁機構、300…電磁吸入弁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8