特許第6939340号(P6939340)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6939340
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】車両用制動装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/00 20060101AFI20210909BHJP
   B60T 13/20 20060101ALI20210909BHJP
   B60T 13/14 20060101ALI20210909BHJP
   H02P 5/46 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   B60T8/00 Z
   B60T13/20
   B60T13/14
   H02P5/46 J
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-187906(P2017-187906)
(22)【出願日】2017年9月28日
(65)【公開番号】特開2019-59439(P2019-59439A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】▲葛▼谷 賢
(72)【発明者】
【氏名】浅野 智孝
(72)【発明者】
【氏名】石田 康人
(72)【発明者】
【氏名】小林 達史
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴之
【審査官】 羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−076651(JP,A)
【文献】 特開2007−216774(JP,A)
【文献】 特開2017−163646(JP,A)
【文献】 特開2016−152764(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/088475(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12−8/1769
B60T 8/32−8/96
H02P 5/00−5/753
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一電動モータが駆動することにより、作動液を加圧して供給する第一加圧装置と、
第二電動モータが駆動することにより、前記作動液を加圧して供給する第二加圧装置と、
前記第一電動モータ及び前記第二電動モータのそれぞれに接続された駆動回路を介して前記第一電動モータ及び前記第二電動モータの駆動を制御する制御装置と、を有し、
前記第一加圧装置及び前記第二加圧装置のうちの少なくとも一方によって加圧された前記作動液が車両の車輪に設けられたホイールシリンダに供給されて、前記車輪に液圧制動力を付与する車両用制動装置であって、
前記制御装置は、
前記第一電動モータ及び前記第二電動モータを同時に駆動する必要があるか否かを判定する同時駆動判定部と、
前記同時駆動判定部による判定結果が肯定的である場合、前記第一電動モータ及び前記第二電動モータのうちの少なくとも一方の電動モータに対して出力するPWM信号のデューティ比を、前記同時駆動判定部による前記判定結果が否定的である場合の前記デューティ比に比べて小さく変更して前記電動モータをPWM制御により駆動するPWM制御部と、を備えた、車両用制動装置。
【請求項2】
前記第一加圧装置は、
前記第一電動モータが駆動することによって加圧された前記作動液の液圧を蓄圧する蓄圧装置を有し、
前記PWM制御部は、
前記蓄圧装置の液圧が予め設定された所定液圧以上であり、且つ、前記同時駆動判定部による前記判定結果が前記肯定的である場合、少なくとも前記第一電動モータを前記PWM制御により駆動する、請求項1に記載の車両用制動装置。
【請求項3】
前記PWM制御部は、
前記蓄圧装置の前記液圧が前記所定液圧に比べて大きくなるほど、少なくとも前記第一電動モータに対応する前記デューティ比を小さくして前記PWM制御を実行する、請求項2に記載の車両用制動装置。
【請求項4】
前記PWM制御部は、
車両の車速が予め設定された所定車速以下であり、且つ、前記同時駆動判定部による前記判定結果が前記肯定的である場合に前記PWM制御を実行する、請求項1乃至請求項3のうちの何れか一項に記載の車両用制動装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記第一電動モータに接続された第一駆動回路を介して前記第一電動モータの前記駆動を制御する第一制御部と、
前記第二電動モータに接続された第二駆動回路を介して前記第二電動モータの前記駆動を制御する第二制御部と、
前記第一制御部と前記第二制御部とを通信可能に接続する通信線と、から構成されており、
少なくとも前記第一制御部に前記同時駆動判定部及び前記PWM制御部が設けられており、
前記同時駆動判定部が、前記通信線を介して前記第二制御部から前記第二電動モータの駆動状態を表す駆動状態信号を取得して前記第一電動モータ及び前記第二電動モータを同時に駆動する必要があるか否かを判定し、
前記同時駆動判定部による前記判定結果が前記肯定的である場合、前記PWM制御部が前記PWM制御により前記第一電動モータを駆動する、請求項1乃至請求項4のうちの何れか一項に記載の車両用制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ操作量に応じて液圧制動力を車輪に付与する車両用制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に開示された車両用ブレーキ制御装置(以下、「従来装置」と称呼する。)が知られている。この従来装置は、前輪及び後輪のそれぞれに設けられたホイールシリンダのそれぞれを加圧するポンプと、前輪側のポンプ及び後輪側のポンプを作動させるための第一モータ及び第二モータと、第一モータ及び第二モータに流す電流値を可変させて第一モータ及び第二モータを駆動する制御手段と、を備えている。そして、この従来装置では、制御手段は、第一モータ及び第二モータの駆動開始時点において電流値を大きくして所定時間が経過するまで第一モータ及び第二モータをフル駆動させ、所定時間が経過するとフル駆動時の電流値から目標ホイール圧に相当する電流値に変えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−216774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般に、モータを駆動させる場合、駆動開始直後においてモータに供給される電流が一時的に大きくなる突入電流が生じる。上記従来装置では、第一モータ及び第二モータを同時に駆動させる際に、第一モータの突入電流が発生するタイミングと第二モータの突入電流が発生するタイミングとが重なる場合がある。タイミングが重なった場合、それぞれの突入電流を合計した総突入電流は、電力(電流)を供給するバッテリに大きな負担(負荷)を強いる。このため、上記従来装置においては、第一モータ及び第二モータを同時に駆動させる場合に発生する総突入電流を低減させる点ついて、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。即ち、本発明の目的は、第一モータ及び第二モータを同時に駆動させる際にそれぞれの突入電流の発生するタイミングが重なっても、突入電流を合計した総突入電流を低減する車両用制動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る車両用制動装置の発明は、第一電動モータが駆動することにより、作動液を加圧して供給する第一加圧装置と、第二電動モータが駆動することにより、作動液を加圧して供給する第二加圧装置と、第一電動モータ及び第二電動モータのそれぞれに接続された駆動回路を介して第一電動モータ及び第二電動モータの駆動を制御する制御装置と、を有し、第一加圧装置及び第二加圧装置のうちの少なくとも一方によって加圧された作動液が車両の車輪に設けられたホイールシリンダに供給されて、車輪に液圧制動力を付与する車両用制動装置であって、制御装置は、第一電動モータ及び第二電動モータを同時に駆動する必要があるか否かを判定する同時駆動判定部と、同時駆動判定部による判定結果が肯定的である場合、第一電動モータ及び第二電動モータのうちの少なくとも一方の電動モータに対して出力するPWM信号のデューティ比を、同時駆動判定部による判定結果が否定的である場合のデューティ比に比べて小さく変更して電動モータをPWM制御により駆動するPWM制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
これによれば、同時駆動判定部による判定結果が肯定的である(即ち、第一電動モータ及び第二電動モータを同時に駆動する)場合、PWM制御部は、第一電動モータ及び第二電動モータのうちの少なくとも一方の電動モータを、判定結果が否定的である(即ち、第一電動モータ及び第二電動モータを同時に駆動しない)場合のデューティ比よりも小さなデューティ比に変更したPWM制御によって駆動させることができる。これにより、第一電動モータ及び第二電動モータを同時に駆動する場合であっても、PWM制御により駆動される電動モータの突入電流を低減することができ、突入電流の発生タイミングが重なったときの総突入電流を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る車両用制動装置であって液圧制動力発生装置の構成を示す図である。
図2図1の下流側加圧装置の構成を示す図である。
図3図1の制動制御装置の構成を示す図である。
図4図3の第一制御部によって実行される駆動制御プログラムのフローチャートである。
図5】同時駆動時における電動モータのPWM制御を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の車両用制動装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、以下の実施形態及び変形例の相互において、互いに同一又は均等である部分には、図中、同一符号を付してある。又、説明に用いる各図は概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。
【0010】
車両用制動装置は、図1に示すように、各車輪FL,FR,RL,RRに液圧制動力を付与して車両を制動する液圧制動力発生装置1と、液圧制動力発生装置1の作動を制御する制動装置としての制動制御装置100とを備えている。液圧制動力発生装置1は、ブレーキペダル11の踏み込み操作によるブレーキ操作量に対応したマスタシリンダ圧を発生する第一加圧装置としての上流側加圧装置10と、マスタシリンダ圧とは独立した制御圧を発生する第二加圧装置としての下流側加圧装置20と、から構成されている。又、制動制御装置100は、上流側加圧装置10のポンプモータ13c2の駆動を制御する第一制御部110と、下流側加圧装置20のポンプモータ27の駆動を制御する第二制御部120と、を有している。
【0011】
上流側加圧装置10は、ブレーキペダル11の踏み込みによるブレーキ操作量、具体的には、ブレーキ操作力に対応したマスタシリンダ圧をマスタシリンダ12により発生する。マスタシリンダ12には、ブレーキ操作力を助勢して倍力(増大)する倍力装置であるサーボ圧発生装置13が接続されている。
【0012】
サーボ圧発生装置13は、減圧制御弁13a、増圧制御弁13b、圧力供給部13c、アキュムレータ13d及びレギュレータ13eを備えている。減圧制御弁13aは、非通電状態で開弁する常開型の電磁弁であり、第一制御部110により流量(又は圧力)が制御される。減圧制御弁13aは、レギュレータ13eとリザーバ14とを連結する流路に設けられている。増圧制御弁13bは、非通電状態で閉弁する常閉型の電磁弁であり、第一制御部110により流量(又は圧力)が制御される。増圧制御弁13bは、レギュレータ13eの一端と他端とを連結する流路に設けられている。
【0013】
圧力供給部13cは、作動液を加圧してレギュレータ13eに高圧の作動液を供給するものである。圧力供給部13cは、ポンプ13c1、第一電動モータとしてのポンプモータ13c2及びリザーバ13c3等から構成されている。ポンプ13c1は、ポンプモータ13c2によって駆動され、リザーバ13c3に貯留された作動液を汲み上げて加圧し、高圧の作動液をアキュムレータ13d及びレギュレータ13eひいてはマスタシリンダ12に圧送(供給)する。ポンプモータ13c2は、後述するように、第一制御部110によって駆動が制御される。ここで、以下の説明において、ポンプモータ13c2を「上流側モータ13c2」とも称呼する。リザーバ13c3は、アキュムレータ13dに供給される作動液を貯留するものである。
【0014】
蓄圧装置としてのアキュムレータ13dは、作動液の液圧を高圧状態で蓄圧しており、高圧の作動液をレギュレータ13eひいてはマスタシリンダ12に供給するものである。アキュムレータ13dとレギュレータ13eとを連通する流路には圧力センサ13fが設けられている。圧力センサ13fは、アキュムレータ13dのアキュムレータ圧Paを検出し、検出信号を第一制御部110に送信するようになっている。尚、アキュムレータ圧Paは、アキュムレータ13dに蓄圧された高圧の作動液の貯留量に相関する。
【0015】
ここで、アキュムレータ13dのアキュムレータ圧Paが低下した場合、第一制御部110は圧力センサ13fから入力した検出値に基づいて第一電動モータである上流側モータ13c2を駆動させ、即ち、ポンプ13c1を作動させる。これにより、上流側モータ13c2が駆動することによってポンプ13c1がリザーバ13c3から汲み上げた作動液を加圧してアキュムレータ13dに作動液を圧送(供給)し、アキュムレータ圧Paを所定液以上(後述する第二所定アキュムレータ圧Pd1以上)に回復するようになっている。
【0016】
レギュレータ13eは、シリンダ、制御ピストン及びスプリング等(図示省略)から構成されるものである。レギュレータ13eは、シリンダの内部にて制御ピストンとともに形成されるパイロット室内のパイロット圧とマスタシリンダ12に形成されるサーボ室(図示省略)内のサーボ圧との差圧に応じた流量の作動液がサーボ室に流入出させるようになっている。
【0017】
又、上流側加圧装置10は、反力発生装置15を備えている。反力発生装置15は、マスタシリンダ12と連通可能に接続されており、ブレーキペダル11が操作されたときの操作力に対抗する反力を発生する装置である。反力発生装置15は、主としてストロークシミュレータ15aから構成されている。ストロークシミュレータ15aは、シリンダ、ピストン及びスプリングからなり、ブレーキペダル11の操作に応じてピストンがスプリングの付勢力に抗して移動することにより、ブレーキペダル11の操作を可能とするものである。
【0018】
更に、上流側加圧装置10は、ストロークセンサ16を備えている。ストロークセンサ16は、ブレーキペダル11が操作された操作量(ストローク)を検出するものであり、検出信号を第一制御部110及び第二制御部120に送信する。
【0019】
下流側加圧装置20は、第二制御部120によって作動制御されるものであり、主として、ホイールシリンダWC1,WC2,WC3,WC4のホイール圧を制御するアクチュエータ21から構成されている。アクチュエータ21は、一般に広く知られているものであり、図2に示すように、液圧制御弁22a,22b、増圧制御弁23a1,23a2,23b1,23b2、減圧制御弁24a1,24a2,24b1,24b2、調圧リザーバ25a,25b、ポンプ26a,26b、第二電動モータとしてのポンプモータ27等を一つのケースにパッケージすることにより構成されている。
【0020】
先ず、ブレーキアクチュエータ25の前輪系統の構成について簡単に説明する。油経路Lfには、液圧制御弁22aが設けられている。液圧制御弁22aは、第二制御部120により差圧発生状態と差圧解消状態とを切り替え制御されるものである。液圧制御弁22aは、通常、遮断状態とされており、制御圧の増圧に伴ってホイールシリンダWC1,WC2側の油経路Lf2がマスタシリンダ12側の油経路Lf1よりも制御差圧分だけ高い圧力を有する差圧発生状態にすることができる。一方、液圧制御弁22aは、制御圧の保持又は減圧に伴ってホイールシリンダWC1,WC2側の油経路Lf2とマスタシリンダ12側の油経路Lf1とがほぼ等しい差圧解消状態にすることができる。制御差圧は、第二制御部120によって制御電流に応じて調圧されるようになっている。尚、差圧解消状態においては、減圧制御弁24a1,24a2と調圧リザーバ25aとを連通させてポンプ26aからの作動液を循環させることにより、制御圧の保持又は減圧が行われる。
【0021】
油経路Lf2は二つに分岐しており、一方には加圧制御時においてホイールシリンダWC1のホイール圧の加圧を制御する増圧制御弁23a1が備えられ、他方には加圧制御時においてホイールシリンダWC2へのホイール圧の加圧を制御する増圧制御弁23a2が備えられている。これら増圧制御弁23a1,23a2は、第二制御部120によって連通状態又は遮断状態が制御される二位置弁として構成されている。そして、増圧制御弁23a1,23a2が連通状態に制御されているときには、ポンプモータ27の駆動によるポンプ26aの作動と液圧制御弁22aの制御によって生成される制御圧、又は/及び、マスタシリンダ12のマスタシリンダ圧を各ホイールシリンダWC1,WC2に加えることができる。
【0022】
又、増圧制御弁23a1,23a2と各ホイールシリンダWC1,WC2との間における油経路Lf2は、油経路Lf3を介して調圧リザーバ25aのリザーバ孔25a1に連通されている。油経路Lf3には、第二制御部120によって連通状態又は遮断状態が制御される減圧制御弁24a1,24a2がそれぞれ配設されている。減圧制御弁24a1,24a2は、第二制御部120によって、適宜、連通状態とされて油経路Lf3を通じて調圧リザーバ25aに作動液を逃がすことにより、ホイールシリンダWC1,WC2におけるホイール圧を減圧制御するように構成されている。
【0023】
更に、液圧制御弁22aと増圧制御弁23a1,23a2との間における油経路Lf2と調圧リザーバ25aのリザーバ孔25a1とを結ぶ油経路Lf4にはポンプ26aが安全弁26a1とともに液圧制御弁22aに並設されている。そして、調圧リザーバ25aのリザーバ孔25a1を油経路Lf1を介してマスタシリンダ12と接続するように油経路Lf5が設けられている。ポンプ26aは、第二制御部120の指令により第二電動モータとしてのポンプモータ27によって駆動される。これにより、ポンプ26aは、リザーバ14の作動液を油経路Lf1,Lf5及び調圧リザーバ25aを介して汲み上げて加圧し、油経路Lf4,Lf2及び連通状態である増圧制御弁23a1,23a2を介して各ホイールシリンダWC1,WC2に吐出して制御圧を付与する。尚、ポンプ26aが吐出した作動液の脈動を緩和するために、油経路Lf4のポンプ26aの上流側にはダンパ28aが配設されている。ここで、以下の説明において、ポンプモータ27を「下流側モータ27」とも称呼する。
【0024】
更に、アクチュエータ21の後輪系統も上述した前輪系統と同様の構成であり、後輪系統を構成する油経路Lrは油経路Lfと同様に油経路Lr1〜Lr5より構成されている。油経路Lrには、液圧制御弁22aと同様な液圧制御弁22b及び調圧リザーバ25aと同様な調圧リザーバ25bが備えられている。ホイールシリンダWC3,WC4に連通する分岐した油経路Lr2,Lr2には増圧制御弁23a1,23a2と同様な増圧制御弁23b1,23b2が備えられ、油経路Lr3には減圧制御弁24a1,24a2と同様な減圧制御弁24b1,24b2が備えられている。油経路Lr4には、ポンプ26a、安全弁26a1及びダンパ28aと同様なポンプ26b、安全弁26b1及びダンパ28bが備えられている。
【0025】
アクチュエータ21によるホイール圧の調圧は、マスタシリンダ圧をそのままホイールシリンダWC1〜WC4に供給する増圧制御、ホイールシリンダWC1〜WC4を密閉する保持制御、ホイールシリンダWC1〜WC4内の作動液を調圧リザーバ25a,25bに流出させる減圧制御、又は、ポンプモータ27によって駆動されるポンプ26a,26bの作動と液圧制御弁22a,22bの差圧発生状態によってホイール圧を加圧する加圧制御を実行することで達成される。
【0026】
又、車両用制動装置は、図1に示すように、車輪速度センサSfl,Sfr,Srl,Srrを備えている。車輪速度センサSfl,Sfr,Srl,Srrは、各車輪FL,FR,RL,RRの付近にそれぞれ設けられており、各車輪FL,FR,RL,RRの回転に応じた周波数のパルス信号を第一制御部110及び第二制御部120に送信するようになっている。ここで、第一制御部110及び第二制御部120は、車輪速度センサSfl,Sfr,Srl,Srrによって検出された各車輪FL,FR,RL,RRのパルス信号(車輪速度)から、例えば、平均化処理等を用いることにより、車速Vを検出することができる。
【0027】
制御装置としての制動制御装置100を構成する第一制御部110及び第二制御部120は、CPUやメモリ等を備える電子制御ユニット(ECU)である。第一制御部110は、ホイール圧の目標値である目標ホイール圧(又は目標減速度)に基づいて、サーボ圧発生装置13、より具体的には、圧力供給部13cの上流側モータ13c2を駆動させるECUである。第一制御部110は、目標ホイール圧及びアキュムレータ圧Paに基づいて、サーボ圧発生装置13に対して、加圧制御、減圧制御、又は保持制御を実行する。加圧制御では、増圧制御弁13bが開状態となり、減圧制御弁13aが閉状態となる。減圧制御では、増圧制御弁13bが閉状態となり、減圧制御弁13aが開状態となる。保持制御では、増圧制御弁13b及び減圧制御弁13aが閉状態となる。又、第一制御部110は、アキュムレータ13dのアキュムレータ圧Paが低下している状況において、圧力供給部13cの上流側モータ13c2を駆動させる。
【0028】
第一制御部110には、図3に示すように、ストロークセンサ16、圧力センサ13f、及び、車輪速度センサSfl〜Srr等の各種センサが接続されている。第一制御部110は、これらセンサから、ストローク情報、サーボ圧情報、及び車輪速度情報等を取得する。上記センサと第一制御部110とは、通信線(CAN)により接続されている。又、第一制御部110は、上流側加圧装置10の第一電動モータである上流側モータ13c2を駆動させるための第一駆動回路である駆動回路111を介して、上流側モータ13c2の駆動を制御する。駆動回路111は、バッテリBから上流側モータ13c2に電力(電流)を供給する電力供給ラインに設けられており、第一制御部110によって出力される後述のPWM信号に応じて半導体スイッチング素子のオン又はオフが切り替えられて、上流側モータ13c2を駆動する。駆動回路111は、第一制御部110によってPWM信号におけるオンタイム及びオフタイムの切り替え周波数を表すPWM制御周期に対するオンタイム(パルス幅)の比を表すデューティ比がパルス幅制御(PWM制御)されることに応じて、上流側モータ13c2に供給される電流を調整するようになっている。
【0029】
制動制御装置100を構成する第二制御部120は、ホイール圧の目標値である目標ホイール圧(又は目標減速度)に基づいて、アクチュエータ21に対する制御を実行するECUである。第二制御部120は、目標ホイール圧に基づいて、アクチュエータ21に対して、上記のように、増圧制御、減圧制御、保持制御、又は加圧制御を実行する。
【0030】
ここで、ホイールシリンダWC1に対する制御を例に第二制御部120による各制御状態について簡単に説明すると、増圧制御では、液圧制御弁22a及び増圧制御弁23a1が開状態となり、減圧制御弁24a1が閉状態となる。減圧制御では、増圧制御弁23a1が閉状態となり、減圧制御弁24a1が開状態となる。保持制御では、増圧制御弁23a1及び減圧制御弁24a1が閉状態となる。加圧制御では、液圧制御弁22aが差圧発生状態(絞り状態)となり、増圧制御弁23a1が開状態となり、減圧制御弁24a1が閉状態となり、下流側モータ27を駆動させてポンプ26aが作動する。
【0031】
第二制御部120には、図3に示すように、ストロークセンサ16及び車輪速度センサSfl〜Srr等の各種センサが接続されている。第二制御部120は、これらセンサから、ストローク情報及び車輪速度情報等を取得する。各種センサと第二制御部120とは、通信線(CAN)により接続されている。第二制御部120は、車両の走行状態や要求に応じて、アクチュエータ21に対し、横滑り防止制御やABS制御を実行する。又、第二制御部120は、通信線Zにより、第一制御部110と通信可能に接続されている。
【0032】
更に、第二制御部120は、下流側加圧装置20の第二電動モータである下流側モータ27を駆動させるための第二駆動回路である駆動回路121を介して、下流側モータ27を駆動する。駆動回路121は、バッテリBから下流側モータ27に電力を供給する電力供給ラインに設けられており、第二制御部120によって半導体スイッチング素子のデューティ比がパルス幅制御(PWM制御)されることにより、下流側モータ27に供給される電流を調整する。
【0033】
又、本実施形態において、第一制御部110は、第一加圧装置である上流側加圧装置10の第一電動モータである上流側モータ13c2と第二加圧装置である下流側加圧装置20の第二電動モータである下流側モータ27とを同時に駆動させる必要があるか否かを判定する同時駆動判定部112を備えている。同時駆動判定部112は、通信線Zを介して、第二制御部120から下流側モータ27を駆動させているか否かを表すモータ駆動状態信号を取得するようになっている。そして、同時駆動判定部112は、圧力センサ13fから取得したアキュムレータ圧Paに応じて上流側モータ13c2を駆動させる場合、第二制御部120から取得したモータ駆動状態信号によって下流側モータ27が駆動する或いは駆動していれば、上流側モータ13c2及び下流側モータ27を同時に駆動させる必要があると判定する。
【0034】
又、本実施形態において、第一制御部110は、PWM制御部113を備えている。PWM制御部113は、同時駆動判定部112による判定結果が肯定的、即ち、上流側モータ13c2及び下流側モータ27を同時に駆動する必要があると判定されている場合において、上流側モータ13c2及び下流側モータ27のうちの少なくとも一方である上流側モータ13c2をPWM制御により駆動する。具体的に、PWM制御部113は、上流側モータ13c2に対して出力するPWM信号のデューティ比を、同時駆動判定部112による判定結果が否定的、即ち、上流側モータ13c2を単独で駆動させるときのデューティ比に比べて小さく変更し、上流側モータ13c2をPWM制御により駆動する。
【0035】
ここで、以下の説明において、上流側モータ13c2及び下流側モータ27を同時に駆動させる状況下、即ち、同時駆動判定部112による判定結果が肯定的である場合に、デューティ比を小さくするとともにPWM周波数を高めて上流側モータ13c2(又は/及び下流側モータ27)を駆動する場合のPWM制御を「高周波デューティ制御」と称呼する。又、上流側モータ13c2(又は下流側モータ27)を単独で駆動する場合、即ち、同時駆動判定部112による判定結果が否定的である場合のデューティ比、換言すれば、高周波デューティ制御のデューティ比よりも大きなデューティ比で上流側モータ13c2(又は下流側モータ27)を駆動する場合のPWM制御を「通常デューティ制御」と称呼する。
【0036】
このように構成された制動制御装置100においては、第一制御部110及び第二制御部120が協調して液圧制動力発生装置1の作動を制御する。以下、簡単に協調制御について説明しておく。第一制御部110は、ストローク情報に基づいて目標減速度を設定し、制御情報として目標減速度を表す目標減速度情報を通信線Zを介して第二制御部120に送信する。これにより、第一制御部110及び第二制御部120は、協調して、ホイール圧を目標ホイール圧、即ち、車両の減速度を目標減速度に近づけるように作動液の液圧を制御する。
【0037】
次に、上記のように構成された制動制御装置100による上流側モータ13c2及び下流側モータ27の駆動制御について説明する。
【0038】
本実施形態においては、第一制御部110が図4に示す駆動制御プログラムを実行する。第一制御部110(より詳しくはCPU。以下、同じ。)は、所定の短い時間の経過毎に、図4の駆動制御プログラムの実行をステップS10にて開始する。第一制御部110は、ステップS10にて駆動制御プログラムの実行を開始すると、続くステップS11にて、圧力センサ13fから圧力供給部13cのアキュムレータ13dのアキュムレータ圧Paを表す信号を入力する。そして、第一制御部110(同時駆動判定部112)は、圧力センサ13fから入力したアキュムレータ圧Paが、予め設定されてアキュムレータ13dがレギュレータ13eに対して高圧の作動液の供給が不能となる第一所定アキュムレータ圧Pd以上(所定液圧以上)であるか否かを判定する。
【0039】
即ち、第一制御部110(同時駆動判定部112)は、アキュムレータ圧Paが第一所定アキュムレータ圧Pd以上であれば、アキュムレータ13dから高圧の作動液をレギュレータ13eに供給可能であるので、「Yes」と判定してステップS12に進む。一方、第一制御部110(同時駆動判定部112)は、アキュムレータ圧Paが第一所定アキュムレータ圧Pd未満であれば、早急にアキュムレータ圧Paを第一所定アキュムレータ圧Pd以上に増圧する必要があるため、「No」と判定して後述のステップS16に進む。
【0040】
ステップS12においては、第一制御部110(同時駆動判定部112)は、前記ステップS11にて入力したアキュムレータ圧Paが、予め設定されてアキュムレータ圧Paの増圧を開始する第二所定アキュムレータ圧Pd1未満であるか否かを判定する。
【0041】
即ち、第一制御部110(同時駆動判定部112)は、アキュムレータ圧Paが第二所定アキュムレータ圧Pd1未満であれば、より詳しくは、アキュムレータ圧Paが第一所定アキュムレータ圧Pd以上且つ第二所定アキュムレータ圧Pd1未満であれば、アキュムレータ圧Paを増圧する必要があるので、「Yes」と判定してステップS13に進む。一方、第一制御部110(同時駆動判定部112)は、アキュムレータ圧Paが第二所定アキュムレータ圧Pd1以上であれば、アキュムレータ13dのアキュムレータ圧Paを増圧する必要がないので、「No」と判定してステップS17に進み、駆動制御プログラムの実行を一旦終了する。そして、第一制御部110は、所定の短い時間の経過後、再び、ステップS10にて駆動制御プログラムの実行を開始する。
【0042】
ステップS13においては、第一制御部110(同時駆動判定部112)は、車輪速度センサSfl,Sfr,Srl,Srrによって検出された各車輪FL,FR,RL,RRのパルス信号(車輪速度)を入力する。そして、第一制御部110(同時駆動判定部112)は、入力したパルス信号(車輪速度)から車速Vを演算し、演算した車速Vが予め設定された所定車速Vd以下(所定車速以下)であるか否かを判定する。ここで、所定車速Vdは、例えば、車両が停車する直前のように、ブレーキペダル11に対するブレーキ操作力(ストローク)が減少し、サーボ圧発生装置13によるブレーキ操作力の倍力が不要となるような車速に設定される。
【0043】
第一制御部110(同時駆動判定部112)は、ステップS13において、車速Vが所定車速Vd以下であれば、上流側モータ13c2を駆動して圧力供給部13cのポンプ13c1からレギュレータ13eに高圧の作動液を供給する必要がない。従って、ポンプ13c1からアキュムレータ13dに高圧の作動液を供給することが可能となるため、「Yes」と判定してステップS14に進む。一方、第一制御部110は、車速Vが所定車速Vdよりも大きければ、ポンプ13c1からレギュレータ13eに高圧の作動液を供給してマスタシリンダ12におけるブレーキ操作力を助勢(倍力)する必要があるため、「No」と判定してステップS16に進む。
【0044】
ステップS14においては、第一制御部110(同時駆動判定部112)は、上流側モータ13c2及び下流側モータ27を同時駆動する必要があるか否かを判定する。具体的に、第一制御部110(同時駆動判定部112)は、前記ステップS11から前記ステップS13の各ステップ処理を実行することにより、上流側モータ13c2を駆動する必要があると判定している。又、第一制御部110(同時駆動判定部112)は、第二制御部120から通信線Zを介して下流側モータ27の駆動状態(駆動又は停止)を表すモータ駆動状態信号を取得している。ここで、第二制御部120は、例えば、横滑り防止制御やABS制御等を実行するために、下流側モータ27を駆動させる場合がある。この場合、第二制御部120は、通信線Zを介して、第一制御部110(同時駆動判定部112)に下流側モータ27を駆動させる、或いは、駆動させていることをモータ駆動状態信号として出力する。
【0045】
これにより、同時駆動判定部112は、上流側モータ13c2を駆動させる必要がある状況下において、モータ駆動状態信号に従って下流側モータ27がこれから駆動する(或いは駆動している)場合には、上流側モータ13c2及び下流側モータ27を同時に駆動させる必要があるため、ステップS14にて判定結果が肯定的であることを表す「Yes」と判定してステップS15に進む。一方、同時駆動判定部112は、上流側モータ13c2を駆動させる必要がある状況下において、モータ駆動状態信号に従って下流側モータ27が継続して停止している場合には、上流側モータ13c2及び下流側モータ27を同時に駆動させる必要がなく上流側モータ13c2のみを単独で駆動させるため、判定結果が否定的であることを表す「No」と判定してステップS16に進む。
【0046】
ステップS15においては、第一制御部110(PWM制御部113)は、PWM信号におけるPWM制御周期に対するオンタイム(パルス幅)の比を表すデューティ比を通常のデューティ比よりも小さく変更するとともに、PWM周波数を通常時よりも高周波数とにした高周波デューティ制御(PWM制御)によって上流側モータ13c2を駆動させる。一方で、第一制御部110は、通信線Zを介して、第二制御部120に対して下流側モータ27を通常の駆動制御、具体的には、通常デューティ制御によって、下流側モータ27をフル駆動させる。
【0047】
ステップS15のステップ処理が実行される場合は、上流側モータ13c2及び下流側モータ27を同時に駆動させる状況下にある。このように、上流側モータ13c2及び下流側モータ27を同時に駆動を開始させる場合には、上流側モータ13c2の回転開始時に突入電流が発生するとともに下流側モータ27の回転開始時に突入電流が発生する。このとき、上流側モータ13c2の突入電流の発生タイミングと下流側モータ27の突入電流の発生タイミングとが重なると、発生する総突入電流が大きくなり、電流(電力)を供給するバッテリBに大きな負担を強いる。
【0048】
これに対して、上流側モータ13c2を高周波デューティ制御により駆動させる場合、通常デューティ制御の場合に比べて、上流側モータ13c2に供給される電流を低下させることが可能となる。これにより、上流側モータ13c2及び下流側モータ27を同時に駆動させて突入電流の発生タイミングが重なる状況であっても、上流側モータ13c2が高周波デューティ制御により駆動されることによって総突入電流が低減されるため、バッテリBの負担(負荷)を大幅に低減することが可能となる。
【0049】
尚、ステップS15のステップ処理が実行される状況下では、アキュムレータ13dのアキュムレータ圧Paは第一所定アキュムレータ圧Pd以上であり、未だレギュレータ13eに高圧の作動液を供給することが可能である。このため、ポンプ13c1は、高い応答性及び高い吐出圧により、作動液をアキュムレータ13dに早期に供給する必要がない。即ち、下流側モータ27と同時に駆動する上流側モータ13c2は、大きな駆動力を応答性良く出力する必要がない。
【0050】
一方で、ポンプ26a,26bにおいては、下流側モータ27を応答性良く駆動させてホイールシリンダWC1〜WC4に制御圧を供給する必要がある。即ち、本実施形態においては、上流側モータ13c2及び下流側モータ27を同時に駆動させる場合、下流側モータ27を駆動させることが、上流側モータ13c2を駆動させることに比べて、バッテリBから電流を供給する優先順位が高くなる。従って、本実施形態においては、第一制御部110が第一電動モータである上流側モータ13c2を高周波デューティ制御により駆動させる一方で、第二制御部120が第二電動モータである下流側モータ27を通常デューティ制御によりフル駆動させる。
【0051】
このように、前記ステップS15にて、第一制御部110(PWM制御部113)は、高周波デューティ制御によって上流側モータ13c2を駆動させ、第二制御部120に下流側モータ27を通常デューティ制御により駆動させるようにすると、ステップS17に進み、駆動制御プログラムの実行を終了する。そして、第一制御部110は、所定の短い時間が経過すると、再び、ステップS10にて駆動制御プログラムの実行を開始する。
【0052】
又、第一制御部110は、前記ステップS11、前記ステップS13及び前記ステップS14の各ステップ処理において、「No」と判定すると、ステップS16に進む。ステップS16においては、第一制御部110(PWM制御部113)は、駆動回路111を介して、通常デューティ制御により、上流側モータ13c2をフル駆動させる。即ち、ステップS16が実行される状況は、上流側モータ13c2をフル駆動させてポンプ13c1が高い応答性及び高い吐出圧でアキュムレータ13dに作動液を供給する、或いは、下流側モータ27が駆動しておらず上流側モータ13c2のみを単独でフル駆動させる状況である。このため、第一制御部110(PWM制御部113)は、ステップS16にて、上流側モータ13c2を通常デューティ制御によってフル駆動させる。
【0053】
第一制御部110(PWM制御部113)は、前記ステップS16にて上流側モータ13c2を通常デューティ制御により駆動させると、ステップS17に進み、駆動制御プログラムの実行を終了する。そして、第一制御部110は、所定の短い時間の経過後に、再び、ステップS10にて駆動制御プログラムの実行を開始する。
【0054】
このように、本実施形態においては、第一制御部110は、図4の駆動制御プログラムを実行する。これにより、図5に示すように変化するアキュムレータ13dのアキュムレータ圧Paに対して、第一制御部110は、同時駆動判定部112による肯定的な判定結果に従い、時間t1にて同時駆動する必要がある状況下では、PWM制御部113が高周波デューティ制御によって上流側モータ13c2の駆動を制御する。
【0055】
具体的に、図5に示すように、アキュムレータ圧Paが第二所定アキュムレータ圧Pd1以下且つ第一所定アキュムレータ圧Pd以上であり、上流側モータ13c2及び下流側モータ27を同時駆動させる状況下である時間t1から時間t2までの期間では、上流側モータ13c2を高周波デューティ制御により駆動させ、下流側モータ27をフル駆動させる。一方、第一制御部110は、アキュムレータ圧Paが第二所定アキュムレータ圧Pd1以下且つ第一所定アキュムレータ圧Pd以上であり、上流側モータ13c2のみを駆動させる状況下である時間t3から時間t4までの期間では、上流側モータ13c2を通常デューティ制御により駆動させる。
【0056】
ここで、図5の時間t1から時間t2の間に示すように、アキュムレータ圧Paが第二所定アキュムレータ圧Pd1に向けて回復している、換言すれば、アキュムレータ圧Paが大きくなる状況において、PWM制御部113は、所定液圧である第一所定アキュムレータ圧Pdに比べてアキュムレータ圧Paが大きくなるほど、高周波デューティ制御におけるデューティ比を徐々に小さくなるように変更する。これにより、アキュムレータ圧Paを大きく(増圧)させながら、駆動回路111におけるオンタイムに比べてオフタイムの比率が徐々に大きくなる。従って、バッテリBから上流側モータ13c2に供給される電流が小さくなり、上流側モータ13c2及び下流側モータ27を同時に駆動させている状況下において、バッテリBの負担(負荷)は小さくなる。
【0057】
以上の説明からも理解できるように、上記実施形態の車両用制動装置としての液圧制動力発生装置1は、第一電動モータである上流側モータ13c2(ポンプモータ13c2)が駆動することにより、作動液を加圧して供給する第一加圧装置としての上流側加圧装置10と、第二電動モータである下流側モータ27(ポンプモータ27)が駆動することにより、作動液を加圧して供給する第二加圧装置としての下流側加圧装置20と、上流側モータ13c2及び下流側モータ27のそれぞれに接続された駆動回路111及び駆動回路121を介して上流側モータ13c2及び下流側モータ27の駆動を制御する制御装置としての制動制御装置100と、を有し、上流側加圧装置10及び下流側加圧装置20のうちの少なくとも一方によって加圧された作動液が車両の車輪FL,FR,RL,RRに設けられたホイールシリンダWC1,WC2,WC3,WC4に供給されて、車輪に液圧制動力を付与する車両用制動装置であって、制動制御装置100は、上流側モータ13c2及び下流側モータ27を同時に駆動する必要があるか否かを判定する同時駆動判定部112と、同時駆動判定部112による判定結果が肯定的である場合、上流側モータ13c2及び下流側モータ27のうちの少なくとも一方の電動モータである上流側モータ13c2に対して(駆動回路111を介して)出力するPWM信号のデューティ比を、同時駆動判定部112による判定結果が否定的である場合のデューティ比に比べて小さく変更して上流側モータ13c2をPWM制御である高周波デューティ制御により駆動するPWM制御部113と、を備える。
【0058】
この場合、より具体的に、制動制御装置100は、上流側モータ13c2に接続された第一駆動回路である駆動回路111を介して上流側モータ13c2に供給される電流を制御することにより駆動を制御する第一制御部110と、下流側モータ27に接続された第二駆動回路である駆動回路121を介して下流側モータ27に供給される電流を制御することにより駆動を制御する第二制御部120と、第一制御部110と第二制御部120とを通信可能に接続する通信線Zと、から構成されており、第一制御部110に同時駆動判定部112及びPWM制御部113が設けられており、同時駆動判定部112が、通信線Zを介して第二制御部120から下流側モータ27の駆動状態を表す駆動状態信号を取得して上流側モータ13c2及び下流側モータ27を同時に駆動する必要があるか否かを判定し、同時駆動判定部112による判定結果が肯定的である場合、PWM制御部113がPWM制御(高周波デューティ制御)により上流側モータ13c2を駆動する。
【0059】
これらによれば、同時駆動判定部112が上流側モータ13c2及び下流側モータ27を同時に駆動させる必要があると判定した場合、即ち、同時駆動判定部112による判定結果が肯定的である場合、PWM制御部113は、上流側モータ13c2及び下流側モータ27のうちの少なくとも一方の電動モータである上流側モータ13c2を、単独で駆動させるとき(即ち、同時駆動判定部112による判定結果が否定的である場合)のデューティ比よりも小さなデューティ比に変更したPWM制御によって駆動させることができる。これにより、上流側モータ13c2及び下流側モータ27を同時に駆動する場合であっても、PWM制御(高周波デューティ制御)により駆動される上流側モータ13c2の突入電流を低減することができ、下流側モータ27による突入電流の発生タイミングと重なったときの総突入電流を低減することができる。
【0060】
又、これらの場合、上流側加圧装置10は、上流側モータ13c2が駆動することによって加圧された作動液の液圧を蓄圧する蓄圧装置としてのアキュムレータ13dを有し、PWM制御部113は、アキュムレータ13dの液圧であるアキュムレータ圧Paが予め設定された所定液圧以上となる第一所定アキュムレータ圧Pd以上であり、且つ、同時駆動判定部112による判定結果が肯定的である場合、少なくとも上流側モータ13c2をPWM制御により駆動する。
【0061】
これによれば、アキュムレータ13dがレギュレータ13eに対してアキュムレータ圧Paを供給することができるため、上流側モータ13c2に電流を供給する際の優先順位は下流側モータ27に電流を供給する優先順位よりも低くなる。従って、PWM制御部113は、優先順位の低い上流側モータ13c2をPWM制御(高周波デューティ制御)することにより、上流側モータ13c2が発生する突入電流を低減し、上流側モータ13c2及び下流側モータ27を同時駆動させる際の総突入電流を確実に低減することができる。
【0062】
この場合、PWM制御部113は、アキュムレータ13dのアキュムレータ圧Paが第一所定アキュムレータ圧Pdに比べて大きくなるほど、少なくとも上流側モータ13c2に対応するデューティ比を小さくしてPWM制御(高周波デューティ制御)を実行する。
【0063】
これによれば、上流側モータ13c2及び下流側モータ27を同時に駆動させている状態において、電力の消費量を低減することができる。従って、バッテリBに対する負担(負荷)を軽減することができる。
【0064】
更に、これらの場合、PWM制御部113は、車両の車速Vが予め設定された所定車速以下となる所定車速Vd以下であり、且つ、同時駆動判定部112による判定結果が肯定的である場合にPWM制御(高周波デューティ制御)を実行する。
【0065】
これによれば、車両の車速Vが所定車速Vd以下まで減速しており、マスタシリンダ12から大きなマスタシリンダ圧をホイールシリンダWC1〜WC4に供給する頻度が低下する。このため、上流側モータ13c2に電流を供給する際の優先順位は下流側モータ27に電流を供給する優先順位よりも低くなる。従って、PWM制御部113は、優先順位の低い上流側モータ13c2をPWM制御(高周波デューティ制御)することにより、上流側モータ13c2が発生する突入電流を低減し、上流側モータ13c2及び下流側モータ27を同時駆動させる際の総突入電流を確実に低減することができる。
【0066】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。
【0067】
例えば、上記実施形態においては、第一制御部110が同時駆動判定部112及びPWM制御部113を有するようにした。これに代えて、図3にて破線により示すように、第二制御部120が、同時駆動判定部112及びPWM制御部113と同様の同時駆動判定部122及びPWM制御部123を有するようにすることも可能である。
【0068】
又、上記実施形態においては、第一制御部110が駆動回路111を介して上流側モータ13c2を高周波デューティ制御又は通常デューティ制御により駆動制御するようにした。これに代えて、必要に応じて、第二制御部120が駆動回路121を介して下流側モータ27を高周波デューティ制御又は通常デューティ制御により駆動制御するようにすることも可能である。この場合、駆動回路121は、第二制御部120によって出力されるPWM信号に応じて半導体スイッチング素子のオン又はオフが切り替えられて、下流側モータ27を駆動する。従って、駆動回路121は、第二制御部120によってPWM信号におけるオンタイム及びオフタイムの切り替え周波数を表すPWM制御周期に対するオンタイム(パルス幅)の比を表すデューティ比がパルス幅制御(PWM制御)されることに応じて、下流側モータ27に供給される電流を調整するようになっている。
【0069】
又、上記実施形態においては、第一制御部110が駆動回路111を介して上流側モータ13c2を高周波デューティ制御又は通常デューティ制御により駆動制御するようにした。これに加えて、第二制御部120が駆動回路121を介して下流側モータ27を高周波デューティ制御又は通常デューティ制御により駆動制御するようにすることも可能である。この場合には、必要に応じて、上流側モータ13c2及び下流側モータ27が高周波デューティ制御により駆動するため、突入電流を大幅に低減することができる。
【0070】
又、上記実施形態においては、第一制御部110が図4に示す駆動制御プログラムの前記ステップS12のステップ処理によりアキュムレータ圧Paと第二所定アキュムレータ圧Pd1とを比較して判定し、前記ステップS13にて車速Vと所定車速Vdとを比較して判定するようにした。これに代えて、必要に応じて、前記ステップS12のアキュムレータ圧Paの比較判定処理及び前記ステップS13車速Vの比較判定処理のうちの少なくとも一方を省略することも可能である。アキュムレータ圧Paの比較判定処理又は車速Vの比較判定処理が省略された場合には、第一制御部110(同時駆動判定部112)は、アキュムレータ圧Paの大きさ又は車速Vの大きさに応じて、前記ステップS14以降の各ステップ処理を実行する。この場合においても、上記実施形態と同様に、上流側モータ13c2及び下流側モータ27を同時に駆動させる場合における総突入電流を低減することができる。
【0071】
又、例えば、予め設定された時間が経過する毎に定期的にアキュムレータ圧Paを増圧するように上流側モータ13c2を駆動させる場合、前記ステップS11のアキュムレータ圧Paと第一所定アキュムレータ圧Pdとの比較判定処理が省略されるとともに、アキュムレータ圧Paの判定処理及び車速Vの判定処理の両方が省略される場合がある。この場合においては、第一制御部110(同時駆動判定部112)が上流側モータ13c2を駆動させるタイミングに応じて前記ステップS14にて上流側モータ13c2及び下流側モータ27を同時に駆動させる必要があるか否かを判定し、同時に駆動させる場合(即ち、判定結果が肯定的である場合)に第一制御部110(PWM制御部113)が前記ステップS15にて上流側モータ13c2を高周波デューティ制御により駆動させる。従って、この場合においても、上記実施形態と同様に、上流側モータ13c2及び下流側モータ27を同時に駆動させる場合における総突入電流を低減することができる。
【0072】
更に、上記実施形態においては、第一電動モータが上流側モータ13c2(ポンプモータ13c2)であるとし、第二電動モータが下流側モータ27(ポンプモータ27)であるとした。ところで、第二加圧装置である下流側加圧装置20が、ポンプ26a,26bのそれぞれにポンプモータ(電動モータ)を有するように構成される場合がある。この場合、例えば、後輪系統を構成するポンプ26bを作動させるポンプモータを第一電動モータとし、前輪系統を構成するポンプ26aを作動させるポンプモータを第二電動モータとして、第二制御部120が図4に示す駆動制御プログラムを実行することも可能である。
【0073】
この場合、制動時における車両の挙動を安定させるために、高い応答性及び高い吐出圧が要求されるポンプ26aを作動させる第二電動モータを通常デューティ制御により駆動させる。そして、第二電動モータと第一電動モータを同時に駆動させる場合には、ポンプ26bを作動させる第一電動モータをPWM制御(高周波デューティ制御)により駆動させる。これにより、第一電動モータ及び第二電動モータを適切に同時駆動させることが可能となる。そして、第一電動モータ及び第二電動モータの同時駆動によって突入電流の発生タイミングが重なる状況であっても総突入電流を低減することができ、電流を供給するバッテリBの負荷を適切に低減することができる。
【符号の説明】
【0074】
1…液圧制動力発生装置(車両用制動装置)、10…上流側加圧装置(第一加圧装置)、11…ブレーキペダル、12…マスタシリンダ、13…サーボ圧発生装置、13a…減圧制御弁、13b…増圧制御弁、13c…圧力供給部、13c1…ポンプ、13c2…ポンプモータ(上流側モータ、第一電動モータ)、13c3…リザーバ、13d…アキュムレータ(蓄圧装置)、13e…レギュレータ、13f…圧力センサ、14…リザーバ、15…反力発生装置、15a…ストロークシミュレータ、16…ストロークセンサ、20…下流側加圧装置(第二加圧装置)、21…アクチュエータ、22a,22b…液圧制御弁、23a1,23a2,23b1,23b2…増圧制御弁、24a1,24a2,24b1,24b2…減圧制御弁、25a,25b…調圧リザーバ、26a,26b…ポンプ、27…ポンプモータ(下流側モータ、第二電動モータ)、28a,28b…ダンパ、100…制動制御装置、110…第一制御部、111…駆動回路(第一駆動回路)、112…同時駆動判定部、113…PWM制御部、120…第二制御部、121…駆動回路(第二駆動回路)、122…同時駆動判定部、123…PWM制御部、B…バッテリ、Pa…アキュムレータ圧、Pd…第一所定アキュムレータ圧、Pd1…第二所定アキュムレータ圧、Sfl,Sfr,Srl,Srr…車輪速度センサ、V…車速、Vd…所定車速、Z…通信線、FL,FR,RL,RR…車輪、Lf,Lr…油経路、WC1,WC2,WC3,WC4…ホイールシリンダ
図1
図2
図3
図4
図5