(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施してもよい。
なお、本願において、「長尺状」のフィルムとは、フィルムの幅に対して、5倍以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するものをいう。フィルムの幅に対する長さの割合の上限は、特に限定されないが、例えば100,000倍以下としうる。
本願において、ある層又はフィルムの面内レターデーションRe及び厚み方向のレターデーションRthは、式Re=(nx−ny)×d及びRth=[{(nx+ny)/2}−nz]×dに従って算出する。nxは、測定対象の面内の遅相軸方向の屈折率(面内の最大屈折率)であり、nyは、測定対象の面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率であり、nzは、測定対象の厚み方向の屈折率であり、dは、測定対象の厚み(nm)である。測定波長は、別に断らない限り、590nmとする。
【0013】
〔1.樹脂組成物〕
本発明の樹脂組成物は、特定のブロック共重合体水素化物[D]と、可塑剤とを含む、ブロック共重合体水素化物[D]は、ブロック共重合体[C]の水素化物である。ブロック共重合体[C]は、特定の重合体ブロック[A]と重合体ブロック[B]とからなる共重合体である。
【0014】
〔1.1.重合体ブロック[A]〕
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]を主成分とする。
重合体ブロック[A]中の、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]の含有量は、通常98重量%以上、好ましくは99重量%以上である。
【0015】
重合体ブロック[A]の、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]以外の繰り返し単位の例としては、鎖状共役ジエン由来の繰り返し単位[II]及び/又はその他のビニル化合物(即ち、ビニル化合物であって、且つ芳香族ビニル化合物でも鎖状共役ジエン化合物でも無い化合物)由来の繰り返し単位[III]が挙げられる。その含有量は、2重量%以下、好ましくは1重量%以下である。重合体ブロック[A]中の繰り返し単位[II]及び/又は繰り返し単位[III]の含有量を、かかる少ない範囲とすることにより、ブロック共重合体水素化物[D]のハードセグメントのガラス転移温度Tg2を高い値に保つことができる。これにより、本発明の樹脂組成物の耐熱性を、良好なものとすることができる。
【0016】
〔1.2.重合体ブロック[B]〕
重合体ブロック[B]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位[I]及び鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位[II]を主成分とする。
【0017】
重合体ブロック[B]に占める繰り返し単位[I]の重量分率w[IB]、及び重合体ブロック[B]に占める繰り返し単位[II]の重量分率をw[IIB]は、所定の比率を有する。即ち、w[IB]とw[IIB]との比(w[IB]/w[IIB])は、40/60以上、好ましくは45/55以上、より好ましくは50/50以上であり、一方55/45以下、好ましくは54/46以下、より好ましくは53/47以下である。
【0018】
w[IB]/w[IIB]が前記範囲内であることにより、樹脂組成物を、湿式延伸を含む偏光子の製造工程を経てもなお、位相差の発現性が十分に低い材料とすることができる。また、重合体ブロック[B]中の繰り返し単位[I]の相対的な比率が前記下限以上であることにより、ブロック共重合体水素化物[D]のソフトセグメントのガラス転移温度Tg1を高い値に保つことができる。これにより、本発明の樹脂組成物の耐熱性を、良好なものとすることができる。一方、重合体ブロック[B]中の繰り返し単位[I]の相対的な比率が前記上限以下であることにより、ブロック共重合体水素化物[D]のTg1とTg2の区別を明瞭としうる。かかるブロックを採用した場合は、本発明の樹脂組成物がそれぞれのブロックに起因する2つの別々のガラス転位温度(Tg)を示し、それにより樹脂組成物の耐熱性を良好なものとすることができる。
【0019】
重合体ブロック[B]中の、繰り返し単位[I]及び繰り返し単位[II]の合計含有量は、95重量%以上、好ましくは97重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。
【0020】
重合体ブロック[B]中の、繰り返し単位[I]及び繰り返し単位[II]以外の成分の例としては、その他のビニル化合物由来の繰り返し単位[III]が挙げられる。その含有量は、5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。重合体ブロック[B]中の繰り返し単位[I]及び繰り返し単位[II]の含有割合を上記範囲にすることにより、本発明のブロック共重合体水素化物[D]及びそれからなる延伸フィルムは機械的強度と柔軟性を維持し、位相差変化に対する耐熱性が改善される。
【0021】
〔1.3.芳香族ビニル化合物〕
繰り返し単位[I]は、芳香族ビニル化合物由来の単位である。本願において、ある化合物由来の単位とは、その化合物の重合により得られる構造を有する単位である。芳香族ビニル化合物の例としては、スチレン;α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレンなどの、置換基として炭素数1〜6のアルキル基を有するスチレン類;4−クロロスチレン、ジクロロスチレン、4−モノフルオロスチレンなどの、置換基としてハロゲン原子を有するスチレン類;4−メトキシスチレンなどの、置換基として炭素数1〜6のアルコキシ基を有するスチレン類;4−フェニルスチレンなどの、置換基としてアリール基を有するスチレン類;1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレンなどのビニルナフタレン類;などが挙げられる。これらの中でも、吸湿性の観点から、スチレン、置換基として炭素数1〜6のアルキル基を有するスチレン類などの、極性基を含有しない芳香族ビニル化合物が好ましく、工業的な入手の容易さから、スチレンが特に好ましい。
【0022】
〔1.4.鎖状共役ジエン系化合物〕
繰り返し単位[II]は、鎖状共役ジエン系化合物由来の単位である。鎖状共役ジエン系化合物の例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。なかでも、吸湿性の観点から、極性基を含有しない鎖状共役ジエン系化合物が好ましく、工業的な入手の容易さから、1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
【0023】
〔1.5.その他のビニル系化合物〕
繰り返し単位[III]は、ビニル化合物であって、且つ芳香族ビニル化合物でも鎖状共役ジエン化合物でも無い化合物由来の繰り返し単位である。そのような化合物の例としては、鎖状オレフィン化合物、環状オレフィン化合物、不飽和の環状酸無水物、不飽和イミド化合物などが挙げられる。これらの化合物は、ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、又はハロゲン原子を置換基として有していてもよい。
【0024】
これらの中でも、吸湿性の観点から、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテンなどの、1分子当たりの炭素数2〜20の鎖状オレフィン化合物;ビニルシクロヘキサン、4−ビニルシクロヘキセン、ノルボルネンなどの、1分子当たりの炭素数5〜20の環状オレフィン化合物;などの、極性基を含有しないものが好ましく、1分子当たりの炭素数2〜20の鎖状オレフィン化合物がより好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。
【0025】
〔1.6.ブロック共重合体[C]〕
好ましい例において、1分子のブロック共重合体[C]が有する重合体ブロック[A]及び重合体ブロック[B]の数は、通常、重合体ブロック[A]が2つであり、且つ重合体ブロック[B]が1つである。従ってブロック共重合体[C]は通常[A]−[B]−[A]のトリブロック構造を有する。但しブロック共重合体[C]はトリブロック構造を有するものに限定されず、例えば[A]−[B]−[A]−[B]−[A]のペンタブロック構造を有するものであってもよい。
【0026】
1分子のブロック共重合体[C]が2つの重合体ブロック[A]を有する場合、これらは、互いに同じであっても、相異なっていても良い。1分子のブロック共重合体[C]が有する2つの重合体ブロック[A]の重量平均分子量は同一でも相異なってもよい。重合体ブロック[A]の重量平均分子量Mw(A)は、各々3,000〜90,000、好ましくは3,500〜80,000、より好ましくは4,000〜60,000である。
【0027】
重合体ブロック[A]のMw(A)が3,000以上であることにより、ブロック共重合体水素化物[D]の機械的強度を良好なものとすることができる。一方重合体ブロック[A]のMw(A)が90,000以下であることにより、ブロック共重合体水素化物[D]の溶融成形性を良好なものとすることができる。
【0028】
ブロック共重合体[C]中の、重合体ブロック[A]がブロック共重合体[C]に占める重量分率wAと、重合体ブロック[B]がブロック共重合体[C]に占める重量分率wBは、所定の比率を有する。即ち、wAとwBとの比(wA/wB)は、45/55以上、好ましくは50/50以上、より好ましくは55/45以上であり、一方85/15以下、好ましくは80/20以下、より好ましくは75/25以下である。wA/wBが前記範囲内であることにより、樹脂組成物を、湿式延伸を含む偏光子の製造工程を経てもなお、位相差の発現性が十分に低い材料とすることができる。また、wA/wBを前記上限以下とすることにより、ブロック共重合体水素化物[D]に柔軟性を付与し、良好な機械的強度を付与することができる。wA/wBを前記下限以上とすることにより、良好な耐熱性を付与することができる。
【0029】
ブロック共重合体[C]の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、好ましくは50,000以上、より好ましくは55,000以上、さらにより好ましくは60,000以上であり、一方好ましくは150,000以下、より好ましくは130,000以下、さらにより好ましくは100,000以下である。また、ブロック共重合体[C]の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下である。
【0030】
ブロック共重合体[C]は、例えば、リビングアニオン重合などの方法により、芳香族ビニル化合物を主成分として含有するモノマー混合物(a)と芳香族ビニル化合物及び鎖状共役ジエン系化合物を主成分として含有するモノマー混合物(b)を交互に重合させる方法;芳香族ビニル化合物を主成分として含有するモノマー混合物(a)と芳香族ビニル化合物及び鎖状共役ジエン系化合物を主成分として含有するモノマー混合物(b)を順に重合させた後、重合体ブロック[B]の末端同士を、カップリング剤によりカップリングさせる方法;などにより製造することができる。
【0031】
モノマー混合物(b)を重合させて共重合体ブロック[B]を形成させる工程では、モノマー混合物(b)を重合反応系に少量ずつ連続的に供給することが好ましい。それにより、芳香族ビニル化合物と鎖状共役ジエン化合物の重合速度が大きく異なる場合であっても、モノマー組成の均質な共重合体ブロック[B]を形成することができる。これにより、ブロック共重合体水素化物[D]のソフトセグメントのTg1を、0℃以上といった好ましい範囲とすることができる。
【0032】
モノマー混合物(b)を重合反応系に速やかに供給すると、重合速度の速い鎖状共役ジエンの重合が優先され、重合体ブロック[B]がテーパードブロックになり、ブロック共重合体水素化物[D]のソフトセグメントのTg1が0℃を下まわり、ブロック共重合体水素化物[D]の耐熱性が低下するおそれがある。
【0033】
〔1.7.ブロック共重合体水素化物[D]〕
ブロック共重合体水素化物[D]は、ブロック共重合体[C]の主鎖及び側鎖の炭素−炭素不飽和結合、並びに、芳香環の炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得うる。ブロック共重合体[C]中の重合体ブロック[A]及び重合体ブロック[B]を水素化して得られる重合体ブロックが、それぞれブロック共重合体水素化物「D」のハードセグメント及びソフトセグメントを構成する。
【0034】
ブロック共重合体水素化物[D]の水素化率は、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらにより好ましくは99%以上である。水素化率の上限は、理想的には100%である。ブロック共重合体水素化物[D]の水素化率は、ブロック共重合体[C]の芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位に含まれる芳香環の炭素−炭素不飽和結合及び鎖状共役ジエン由来の繰り返し単位に含まれる炭素−炭素不飽和結合の合計に対する、水素化された炭素−炭素結合の割合である。水素化率が高いほど、成形体の耐候性、耐熱性及び透明性が良好である。ブロック共重合体水素化物[D]の水素化率は、
1H−NMR、又はGPCによるUV検出器及びRI検出器によるピーク面積の比較などにより求めることができる。
【0035】
不飽和結合の水素化方法及び反応形態は特に限定されず、既知の方法にしたがって行いうる。水素化率を高くでき、重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましい。このような水素化方法の例としては、国際公開第2011/096389号に記載された方法、及び国際公開第2012/043708号に記載された方法が挙げられる。
【0036】
水素化反応終了後、水素化触媒及び/又は重合触媒を反応溶液から除去した後、得られた溶液からブロック共重合体水素化物[D]を回収することができる。ブロック共重合体水素化物[D]は、通常はペレット状の形状とし、その後の操作に供しうる。
【0037】
ブロック共重合体水素化物[D]の分子量は、THFを溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、好ましくは50,000以上、より好ましくは55,000以上、さらにより好ましくは60,000以上であり、一方好ましくは150,000以下、より好ましくは130,000以下、さらにより好ましくは100,000以下としうる。ブロック共重合体水素化物[D]の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下としうる。Mw及びMw/Mnが上記範囲となるようにすると、成形した延伸フィルムの位相差の変化に対する耐熱性や機械的強度が良好である。
【0038】
〔1.8.可塑剤〕
可塑剤としては、ブロック共重合体水素化物[D]に均一に溶解ないし分散できるものを用いうる。可塑剤の例としては、多価アルコールと1価のカルボン酸からなるエステル系可塑剤(以下において「多価アルコールエステル系可塑剤」という。)、及び多価カルボン酸と1価のアルコールからなるエステル系可塑剤(以下において「多価カルボン酸エステル系可塑剤」という。)等のエステル系可塑剤、並びに燐酸エステル系可塑剤、脂肪族炭化水素系ポリマー等の炭水化物エステル系可塑剤、及びその他のポリマー可塑剤が挙げられる。これらの中でも、エステル系可塑剤、脂肪族炭化水素系ポリマー、及びこれらの混合物が特に好ましい。
【0039】
本発明において好ましく用いられるエステル系可塑剤の原料である多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエチスリトール、ジペンタエリスリトール、キシリトール等を挙げることができる。特に、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンが好ましい。
【0040】
多価アルコールエステル系可塑剤の例としては、エチレングリコールエステル系可塑剤、グリセリンエステル系可塑剤、及びその他の多価アルコールエステル系可塑剤が挙げられる。エチレングリコールエステル系可塑剤の例としては、具体的には、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジブチレート等のエチレングリコールアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジシクロプロピルカルボキシレート、エチレングリコールジシクロヘキルカルボキシレート等のエチレングリコールシクロアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジベンゾエート、エチレングリコールジ4−メチルベンゾエート等のエチレングリコールアリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらの可塑剤を構成するアルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同士が共有結合で結合していてもよい。更にエチレングリコール部も置換されていてもよく、エチレングリコールエステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0041】
グリセリンエステル系可塑剤の例としては、具体的にはトリアセチン、トリブチリン、グリセリンジアセテートカプリレート、グリセリンオレートプロピオネート等のグリセリンアルキルエステル、グリセリントリシクロプロピルカルボキシレート、グリセリントリシクロヘキシルカルボキシレート等のグリセリンシクロアルキルエステル、グリセリントリベンゾエート、グリセリン4−メチルベンゾエート等のグリセリンアリールエステル、ジグリセリンテトラアセチレート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンアセテートトリカプリレート、ジグリセリンテトララウレート、等のジグリセリンアルキルエステル、ジグリセリンテトラシクロブチルカルボキシレート、ジグリセリンテトラシクロペンチルカルボキシレート等のジグリセリンシクロアルキルエステル、ジグリセリンテトラベンゾエート、ジグリセリン3−メチルベンゾエート等のジグリセリンアリールエステル等が挙げられる。これらの可塑剤を構成するアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同士が共有結合で結合していてもよい。更にグリセリン、ジグリセリン部も置換されていてもよく、グリセリンエステル、ジグリセリンエステルの部分構造がポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0042】
その他の多価アルコールエステル系可塑剤としては、具体的には特開2003−12823号公報の段落0030〜0033記載の多価アルコールエステル系可塑剤が挙げられる。
【0043】
これらの可塑剤を構成するアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同士が共有結合で結合していてもよい。更に多価アルコール部も置換されていてもよく、多価アルコールの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0044】
多価カルボン酸エステル系可塑剤の例としては、ジカルボン酸エステル系可塑剤、及びその他の多価カルボン酸エステル系可塑剤が挙げられる。ジカルボン酸エステル系可塑剤の例としては、具体的には、ジドデシルマロネート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート等のアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロペンチルサクシネート、ジシクロヘキシルアジーペート等のアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルサクシネート、ジ4−メチルフェニルグルタレート等のアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジヘキシル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート、ジデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロヘキシル−1,2−シクロブタンジカルボキシレート、ジシクロプロピル−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニル−1,1−シクロプロピルジカルボキシレート、ジ2−ナフチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロプロピルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルフタレート、ジ−4−メチルフェニルフタレート等のアリールジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。
【0045】
これらの可塑剤を構成するアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また一置換でもよく、これらの置換基は更に置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、またこれら置換基同士が共有結合で結合していてもよい。更にこれらの可塑剤を構成するフタル酸の芳香環も置換されていてよく、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。またフタル酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0046】
その他の多価カルボン酸エステル系可塑剤の例としては、具体的にはトリドデシルトリカルバレート、トリブチル−meso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロヘキシルトリカルバレート、トリシクロプロピル−2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート、テトラ3−メチルフェニルテトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、テトラヘキシル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、テトラブチル−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、テトラシクロプロピル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、トリシクロヘキシル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル−1,3,5−シクロヘキシルトリカルボキシレート、ヘキサ4−メチルフェニル−1,2,3,4,5,6−シクロヘキシルヘキサカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、トリドデシルベンゼン−1,2,4−トリカルボキシレート、テトラオクチルベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロペンチルベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、テトラシクロヘキシルベンゼン−1,2,3,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤トリフェニルベンゼン−1,3,5−テトラカルボキシレート、ヘキサ4−メチルフェニルベンゼン−1,2,3,4,5,6−ヘキサカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらの可塑剤を構成するアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また1置換でもよく、これらの置換基は更に置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、またこれら置換基同士が共有結合で結合していてもよい。更にこれらの可塑剤を構成するフタル酸の芳香環も置換されていてよく、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。またフタル酸エステルの部分構造がポリマーの一部、或いは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0047】
燐酸エステル系可塑剤の例としては、具体的には、トリアセチルホスフェート、トリブチルホスフェート等の燐酸アルキルエステル、トリシクロベンチルホスフェート、シクロヘキシルホスフェート等の燐酸シクロアルキルエステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリナフチルホスフェート、トリキシリルオスフェート、トリスオルト−ビフェニルホスフェート等の燐酸アリールエステルが挙げられる。これらの可塑剤を構成する置換基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、また置換基同士が共有結合で結合していてもよい。
【0048】
また、エチレンビス(ジメチルホスフェート)、ブチレンビス(ジエチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアルキルホスフェート)、エチレンビス(ジフェニルホスフェート)、プロピレンビス(ジナフチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアリールホスフェート)、フェニレンビス(ジブチルホスフェート)、ビフェニレンビス(ジオクチルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアルキルホスフェート)、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ナフチレンビス(ジトルイルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアリールホスフェート)等の燐酸エステルが挙げられる。これらの可塑剤を構成する置換基は同一でもあっても異なっていてもよく、更に置換されていてもよい。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、また置換基同士が共有結合で結合していてもよい。
【0049】
更に燐酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。上記化合物の中では、燐酸アリールエステル、アリーレンビス(ジアリールホスフェート)が好ましく、具体的にはトリフェニルホスフェート、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)が好ましい。
【0050】
次に、炭水化物エステル系可塑剤について説明する。炭水化物とは、糖類がピラノースまたはフラノース(6員環または5員環)の形態で存在する単糖類、二糖類または三糖類を意味する。炭水化物の非限定的例としては、グルコース、サッカロース、ラクトース、セロビオース、マンノース、キシロース、リボース、ガラクトース、アラビノース、フルクトース、ソルボース、セロトリオース及びラフィノース等が挙げられる。炭水化物エステルとは、炭水化物の水酸基とカルボン酸が脱水縮合してエステル化合物を形成したものを指し、詳しくは、炭水化物の脂肪族カルボン酸エステル、或いは芳香族カルボン酸エステルを意味する。脂肪族カルボン酸として、例えば酢酸、プロピオン酸等を挙げることができ、芳香族カルボン酸として、例えば安息香酸、トルイル酸、アニス酸等を挙げることができる。炭水化物は、その種類に応じた水酸基の数を有するが、水酸基の一部とカルボン酸が反応してエステル化合物を形成しても、水酸基の全部とカルボン酸が反応してエステル化合物を形成してもよい。本発明においては、水酸基の全部とカルボン酸が反応してエステル化合物を形成するのが好ましい。
【0051】
炭水化物エステル系可塑剤として、具体的には、グルコースペンタアセテート、グルコースペンタプロピオネート、グルコースペンタブチレート、サッカロースオクタアセテート、サッカロースオクタベンゾエート等を好ましく挙げることができ、この内、サッカロースオクタアセテートがより好ましい。
【0052】
ポリマー可塑剤としては、具体的には、脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルとの共重合体、メタクリル酸メチルとアクリル酸メチルとメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルとの共重合体、等のアクリル系ポリマー、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドン等のビニル系ポリマー、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン等のスチレン系ポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア等が挙げられる。
【0053】
脂肪族炭化水素系ポリマーの具体例としては、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−1−オクテン、エチレン・α−オレフィン共重合体等の低分子量体及びその水素化物;ポリイソプレン、ポリイソプレン−ブタジエン共重合体等の低分子量体及びその水素化物等が挙げられる。脂肪族炭化水素系ポリマーは、数平均分子量300〜5,000であることが好ましい。
【0054】
これらポリマー可塑剤は1種の繰り返し単位からなる単独重合体でも、複数の繰り返し構造体を有する共重合体でもよい。また、上記ポリマーを2種以上併用して用いてもよい。
【0055】
本発明の樹脂組成物における可塑剤の割合は、ブロック共重合体水素化物[D]100重量部に対して、好ましくは0.2重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上、さらにより好ましくは1.0重量部以上であり、一方好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量部以下、さらにより好ましくは15重量部以下である。可塑剤の割合を前記範囲内とすることにより、樹脂組成物から得られるフィルムを、湿式延伸における操作を経てもなお位相差の発現性が十分に低いものとすることができる。
【0056】
〔1.9.任意成分〕
本発明の樹脂組成物は、ブロック共重合体水素化物[D]及び可塑剤の他に任意成分を含みうる。任意成分の例としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの安定剤;滑剤などの樹脂改質剤;染料や顔料などの着色剤;及び帯電防止剤が挙げられる。これらの配合剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
【0057】
〔1.10.物性〕
本発明の樹脂組成物は、その熱変形温度が、好ましくは115℃以下であり、より好ましくは110℃以下である。熱変形温度の下限は、特に限定されないが、例えば60℃以上としうる。熱変形温度がこの範囲内であることにより、樹脂組成物から得られるフィルムを、湿式延伸における操作を経てもなお位相差の発現性が十分に低いものとすることができる。熱変形温度の測定は、フィルム等の形状の樹脂組成物を、熱機械分析(Thermomechanical analysis、TMA)に供することにより行いうる。分析には、熱機械分析装置(例えばセイコーインスツルメンツ社製、商品名「TMA/SS7100」)を用いうる。このような熱変形温度を有する樹脂組成物は、ブロック共重合体[C]における繰り返し単位の割合、及び樹脂組成物中のブロック共重合体水素化物[D]と可塑剤との割合を調整することにより容易に得ることができる。
【0058】
〔2.フィルム[E]〕
本発明のフィルムは、前記本発明の樹脂組成物から形成される。説明の便宜上、本願においては、本発明のフィルムを、それ以外のフィルム全般と区別するため、「フィルム[E]」と表記することがある。
【0059】
フィルム[E]は、本発明の樹脂組成物を、任意の成形方法によりフィルム状に成形することにより製造しうる。成形物はそのままフィルム[E]とすることもでき、さらに必要に応じて延伸処理を施してからフィルム[E]とすることもできる。
【0060】
樹脂組成物をフィルム状に成形する方法の例としては、溶融押出成形が挙げられる。本願においては、かかる溶融押出成形により得られたフィルムであって且つ延伸処理に供していないものを、延伸フィルムとの区別のため「未延伸フィルム」という場合がある。また、未延伸フィルムを延伸してなるフィルムを、それ以外の延伸フィルム全般と区別するため、「延伸フィルム[Es]」と表記することがある。偏光板の製造のための材料として用いる場合、フィルム[E]は、好ましくは未延伸フィルムである。
【0061】
溶融押出工程は、本発明の樹脂組成物を押出機によって溶融させ、当該押出機に取り付けられたTダイからフィルム状に押出し、押出されたフィルムを1つ以上の冷却ロールに密着させて成形して引き取る方法により行いうる。
【0062】
溶融押出成形での成形条件は、使用する樹脂組成物の組成及び分子量等の条件に合わせて適宜設定しうる。押出機のシリンダー温度は、好ましくは190℃以上、より好ましくは200℃以上であり、一方好ましくは280℃以下、より好ましくは260℃以下である。フィルム引取り機の冷却ロールの温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは70℃以上であり、一方好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。
【0063】
未延伸フィルムの厚みは、その使用目的などに応じて適宜設定しうる。未延伸フィルムの厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、一方好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下である。未延伸フィルムは、ロール状に巻いて次の延伸工程に供することもでき、また、溶融押出工程に連続した延伸工程に供することもできる。
【0064】
本発明のフィルム[E]は、本発明の樹脂組成物から形成されるものであるため、偏光板の製造に適した特性を有するものとしうる。例えば、延伸した際に発現する複屈折、及び延伸する際の張力が小さいフィルムとしうる。具体的には、下記の特性(E1)及び(E2)の一方又は両方を有するフィルムとしうる。
特性(E1):自由端一軸延伸を、温度50℃〜100℃、倍率1.2〜6.0の範囲で行うことで、発現する複屈折が0.001以下、好ましくは0.0005以下となりうる。
特性(E2):自由端一軸延伸を、温度50℃〜100℃、倍率1.2〜6.0の範囲で行うことで、最大張力が10N/10mm以下、好ましくは8N/10mm以下となりうる。
特性(E1)及び(E2)を有するフィルム[E]は、ブロック共重合体[C]における繰り返し単位の割合、及び樹脂組成物中のブロック共重合体水素化物[D]と可塑剤との割合を調整することにより容易に得ることができる。
【0065】
「自由端一軸延伸を、温度50℃〜100℃、倍率1.2〜6.0の範囲で行うことで、発現する複屈折が特定の値以下となりうる。」とは、温度50℃〜100℃の範囲内のある温度及び倍率1.2〜6.0の範囲内のある延伸倍率の条件にて自由端一軸延伸を行ったときに、発現する複屈折が特定の値以下となりうるような、温度及び延伸倍率の条件が1以上あることをいう。特性(E1)における複屈折の下限は、0.00001としうる。同様に、「自由端一軸延伸を、温度50℃〜100℃、倍率1.2〜6.0の範囲で行うことで、最大張力が特定の値以下となりうる。」とは、温度50℃〜100℃の範囲内のある温度及び倍率1.2〜6.0の範囲内のある延伸倍率の条件にて自由端一軸延伸を行ったときに、延伸に際しての最大張力が特定の値以下となりうるような、温度及び延伸倍率の条件が1以上あることをいう。特性(E2)における最大張力の下限は、例えば0.05N/10mm以上としうる。
【0066】
本発明のフィルム[E]が、既に延伸された延伸フィルム[Es]である場合も、かかる延伸フィルム[Es]が特性(E1)及び(E2)の一方又は両方を満たすことが好ましい。即ち、かかる延伸フィルム[Es]をさらに自由端一軸延伸した場合においてこれらの特性(E1)及び(E2)を満たすことが好ましい。
【0067】
フィルム[E]の形状及び寸法は、所望の用途に応じたものに適宜調整しうる。偏光板の製造に用いる場合、製造の効率上、フィルム[E]は長尺状のフィルムであることが好ましい。フィルム[E]を偏光板の製造のための材料として用いる場合、フィルム[E]の厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、一方好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下である。
【0068】
フィルム[E]を、本発明の偏光板の製造方法に供した場合、フィルム[E]は、かかる偏光板の製造方法の工程において延伸され、延伸フィルム[Es]となる。
【0069】
〔2.1.延伸フィルム[Es]〕
未延伸フィルムを延伸して延伸フィルム[Es]とする際の延伸の条件は、所望の延伸フィルム[Es]が得られるよう適宜選択しうる。また、偏光板の製造方法の工程において未延伸フィルムが延伸されて延伸フィルム[Es]となる場合は、延伸の条件は、偏光板の製造方法において偏光子材料フィルムを延伸して偏光子とするのに好ましい条件に適合させ、適宜設定しうる。
【0070】
例えば、未延伸フィルムを延伸して延伸フィルム[Es]とする際の延伸の態様は、一軸延伸、二軸延伸等の任意の態様としうる。また、未延伸フィルムが長尺状のフィルムである場合、延伸の方向は、縦方向(長尺状のフィルムの長手方向に平行な方向)、横方向(長尺状のフィルムの幅方向に平行な方向)、及び斜め方向(縦方向でも横方向でも無い方向)のいずれであってもよい。偏光板の製造方法において偏光子材料フィルムと共に延伸を行う場合は、偏光子としての機能を発現させる観点から、一軸延伸を行うことが好ましく、自由一軸延伸がさらに好ましく、縦方向の自由一軸延伸が特に好ましい。延伸倍率は、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.4以上であり、一方好ましくは5以下、より好ましくは4以下である。延伸温度は、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上であり、一方好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下である。
【0071】
延伸フィルム[Es]を偏光板の保護フィルムとして用いる場合、その位相差が小さいことが好ましい。具体的には、延伸フィルム[Es]のReは、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下である。Reの下限は0nmとしうる。フィルム[Es]のRthは、好ましくは−10nm以上、より好ましくは−5nm以上であり、一方好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下である。湿式延伸を含む偏光子の製造工程を経てもなおこのように位相差が小さいフィルムは、ブロック共重合体[C]における繰り返し単位の割合、及び樹脂組成物中のブロック共重合体水素化物[D]と可塑剤との割合を調整することにより容易に得ることができる。
【0072】
延伸フィルム[Es]を偏光板の保護フィルムとして用いる場合の延伸フィルム[Es]の厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、一方好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。延伸フィルム[Es]の厚みがかかる範囲内であることにより、好ましい光学的特性及び機械的特性を容易に得ることができる。
【0073】
〔3.偏光板〕
本発明の偏光板は、前記本発明のフィルム[E]を保護フィルムとして備える。
【0074】
偏光板は、通常、偏光子と、その両面を保護する一対の保護フィルムとを備える。本発明の偏光板は、一対の保護フィルムの一方又は両方を、フィルム[E]として備えうる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例及び比較例を参照して、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。以下において、成分の量比に関する「部」及び「%」は、別に断らない限り重量部を表す。
【0076】
〔評価方法〕
〔重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn〕
ブロック共重合体及びブロック共重合体水素化物の分子量は、THFを溶離液とするGPCによる標準ポリスチレン換算値として、38℃において測定した。測定装置として、東ソー社製、HLC8020GPCを用いた。
【0077】
〔水素化率〕
ブロック共重合体水素化物[D]の水素化率は、
1H−NMRスペクトル又はGPC分析により算出した。水素化率99%以下の領域は、
1H−NMRスペクトルを測定して算出し、99%を超える領域は、GPC分析により、UV検出器及びRI検出器によるピーク面積の比率から算出した。
【0078】
〔実施例1〕
(1−1.ブロック共重合体[C]の合成)
攪拌装置を備え、内部が充分に窒素置換された反応器に、脱水シクロヘキサン270部及びn−ジブチルエーテル0.59部を入れ、さらに、n−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)0.63部(n−ブチルリチウム量として)を加えた。
【0079】
(1−1−1.重合1段階)
全容を60℃で攪拌しながら、脱水スチレン30.0部を60分間に亘って連続的に反応器内に添加して重合反応を進め、添加終了後そのままさらに20分間全容を撹拌した。温度は、重合1段階の開始から重合3段階の終了まで60℃を維持した。反応液をガスクロマトグラフィーにより測定したところ、この時点での重合転化率は99.5%であった。
【0080】
(1−1−2.重合2段階)
次に、脱水したスチレン21.0部及びイソプレン19.0部の混合物を、150分間に亘って連続的に反応液に添加し、添加終了後そのままさらに20分間攪拌を続けた。この時点での重合転化率は99.5%であった。
【0081】
(1−1−3.重合3段階)
次に、脱水スチレン30.0部を、60分間に亘って連続的に反応液に添加し、添加終了後そのままさらに20分間攪拌を続けた。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。この時点でイソプロピルアルコール0.5部を反応液に加えて反応を停止させた。これにより、ブロック共重合体[C]を含む混合物を得た。得られたブロック共重合体[C]の重量平均分子量(Mw)は68,100、分子量分布(Mw/Mn)は1.03、wA:wB=60:40、w[IB]:w[IIB]=53:47であった。
【0082】
(1−2.水素化物[D])
(1−1−3)で得たブロック共重合体[C]を含む混合物を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒としての珪藻土担持型ニッケル触媒(製品名「製品名「E22U」、ニッケル担持量60%、日揮触媒化成社製)7.0部、及び脱水シクロヘキサン80部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度190℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。
【0083】
水素化反応終了後、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した。ろ液に、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](コーヨ化学研究所社製、製品名「Songnox1010」)0.1部を溶解したキシレン溶液1.0部を添加して溶解させた。
【0084】
次いで、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所社製、製品名「コントロ」)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、上記溶液から溶媒であるシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去し、溶融ポリマーを得た。溶融ポリマーを、濃縮乾燥器に連結したポリマーフィルターにより、連続して温度260℃にてろ過した。ポリマーフィルターとしては、孔径20μmのステンレス製焼結フィルターを備えたポリマーフィルター(富士フィルター社製)を用いた。ろ過後、ダイから溶融ポリマーをストランド状に押出し、冷却し、ペレタイザーでペレット状の形状とした。これにより、ブロック共重合体水素化物[D]のペレット91部を得た。得られたブロック共重合体水素化物[D]の重量平均分子量(Mw)は71,400、分子量分布(Mw/Mn)は1.06、水素化率はほぼ100%であった。
【0085】
(1−3.樹脂組成物)
(1−2)で得たブロック共重合体水素化物[D]のペレット100部と、可塑剤(株式会社ADEKA製、商品名「アデカサイザーPN260」)5部とを、二軸押出機により混合して樹脂組成物を得た。
【0086】
(1−4.未延伸フィルム)
(1−3)で得た樹脂組成物を、Tダイを備える熱溶融押出フィルム成形機に供給した。Tダイから樹脂組成物を押出し、4m/分の引き取り速度でロールに巻き取ることにより、樹脂組成物を成形した。これにより、樹脂組成物からなる長尺状の未延伸フィルム(厚み50μm)を得た。
【0087】
(1−5.熱変形温度の測定)
(1−4)で得た未延伸フィルムを切断し、5mm×20mmの矩形の試料を得た。この試料について、熱機械分析(Thermomechanical analysis、TMA)を行った。分析には、熱機械分析装置(セイコーインスツルメンツ社製、商品名「TMA/SS7100」)を用い、引張荷重法にて20℃から180℃まで毎分5℃の昇温下においてTMAを行った。測定の結果得られた歪み量変曲点を、未延伸フィルムの熱変形温度とした。
【0088】
(1−6.延伸性の評価)
(1−5)で得た未延伸フィルムを切断し、短辺70mm×長辺90mmの矩形の試料を得た。この試料の短辺をクリップで固定して、長辺方向に自由端延伸を行った。延伸は60℃において、長辺長さを3.0倍とする条件で行った。この際、フィルムが破断しなかったものを「良」、破断したものを「不良」として評価した。また、延伸に際して要する張力を測定し、最大張力を記録した。
【0089】
(1−7.複屈折の測定)
(1−6)で延伸を行った後の試料の面内レターデーションReを、位相差計(オプトサイエンス社製、商品名「ミューラマトリクス・ポラリメータ(Axo Scan)」)を用いて測定した。測定に際し、測定波長は590nmとした。複屈折は、得られた面内レターデーションを測定箇所の厚みで割ることで求めた。また、厚み方向のレターデーションRthを併せて測定した。
【0090】
〔実施例2〕
(1−3)において可塑剤の使用量を10部に変更した他は、実施例1と同様にして、樹脂組成物及びフィルムを得て評価した。
【0091】
〔実施例3〕
(1−3)において、可塑剤の種類をポリブテン(日油社製、商品名「日油ポリブテン 10SH」)に変更し、使用量を10部に変更した他は、実施例1と同様にして、樹脂組成物及びフィルムを得て評価した。
【0092】
〔実施例4〕
(1−3)において、可塑剤の種類をポリブテン(日油社製、商品名「日油ポリブテン 10SH」)に変更し、使用量を15部に変更した他は、実施例1と同様にして、樹脂組成物及びフィルムを得て評価した。
【0093】
〔比較例1〕
(1−3)において、可塑剤を使用しなかった他は、実施例1と同様にして、樹脂組成物及びフィルムを得て評価した。
【0094】
実施例及び比較例の結果を、表1にまとめて示す。
【0095】
【表1】
【0096】
1)ブロック共重合体水素化物[D]のペレット100部に対する配合量(単位:部)
【0097】
表1の結果から、本発明の樹脂組成物から形成されたフィルムは、低い軟化温度及び良好な延伸性を有し、且つ延伸による複屈折の発現が低く、従って偏光子材料フィルムと共延伸する偏光板の製造方法に有用に用いうることが分かる。