特許第6939882号(P6939882)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6939882ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6939882
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 75/0254 20160101AFI20210909BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20210909BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20210909BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   C08G75/0254
   C08L81/02
   C08L101/00
   C08K5/5415
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-526914(P2019-526914)
(86)(22)【出願日】2018年6月26日
(86)【国際出願番号】JP2018024118
(87)【国際公開番号】WO2019004169
(87)【国際公開日】20190103
【審査請求日】2019年11月20日
(31)【優先権主張番号】特願2017-127440(P2017-127440)
(32)【優先日】2017年6月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-70827(P2018-70827)
(32)【優先日】2018年4月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】奈良 早織
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 英樹
(72)【発明者】
【氏名】角木 将哉
(72)【発明者】
【氏名】茨木 拓
(72)【発明者】
【氏名】井上 敏
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−035023(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/058713(WO,A3)
【文献】 特開昭61−023627(JP,A)
【文献】 特開平09−278888(JP,A)
【文献】 特開平02−045531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 75/00
C08L 81/02
C08K 5/5415
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解によって開環し得る脂肪族系環状化合物の存在下で、ジハロ芳香族化合物と、スルフィド化剤とを重合反応させるポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法であって、
ジハロ芳香族化合物の存在下、水を含むスルフィド化剤と、加水分解によって開環し得る脂肪族系環状化合物とを、減圧下で脱水させながら反応させて、混合物を得る脱水工程(1)を有すること、
前記脱水工程(1)終了後の反応系内に現存する水分量がスルフィド化剤の硫黄原子の合計1モルに対して、0.4モル以下の範囲であること、
前記脱水工程(1)は、ジハロ芳香族化合物の存在下、水を含むスルフィド化剤と、加水分解によって開環し得る脂肪族系環状化合物とを、液温が90℃以上から130℃以下の範囲となるまで大気圧下で昇温させた後、脱水を、液温が90℃超から170℃以下の範囲、かつ圧力が30〔kPa abs〕以上から80〔kPa abs〕以下の範囲に昇温および減圧しながら行い、混合物を得る工程を含むこと、を特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法。
【請求項2】
スルフィド化剤の硫黄原子の合計1モルに対して、ジハロ芳香族化合物が0.2モル以上から5.0モル以下の範囲である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
スルフィド化剤の硫黄原子の合計1モルに対して、脂肪族系環状化合物が0.01モル以上から0.9モル以下の範囲である、請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
スルフィド化剤が、アルカリ金属硫化物、又は、アルカリ金属水硫化物及びアルカリ金属水酸化物である、請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
脱水工程(1)終了後において、混合物が、無水の固形のスルフィド化剤を含むスラリーである、請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
次いで、脱水工程(1)を経て得られた混合物を、ジハロ芳香族化合物1モルに対して反応系内に現存する水分量が0.4モル以下の範囲で加熱して重合反応させる重合工程を有する、請求項1記載の製造方法。
【請求項7】
次いで、脱水工程(1)を経て得られた混合物に、さらに非プロトン性極性有機溶媒を加え、水を留去して脱水を行う脱水工程(2)、
続いて、脱水工程(2)で得られた混合物を、ジハロ芳香族化合物1モルに対して反応系内に現存する水分量が0.03モル未満で重合反応させる重合工程を有する、請求項1記載の製造方法。
【請求項8】
脱水工程(1)において反応用装置の、原料、または反応後に得られる混合物との接触部が、チタン、ジルコニウムおよびニッケル合金からなる群から選ばれる少なくとも1つの材料で構成されている、請求項1記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1記載の製造方法によりポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する工程と、得られたポリアリーレンスルフィド樹脂と、充填剤、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂以外の熱可塑性樹脂、エラストマー、2以上の官能基を有する架橋性樹脂及びシランカップリング剤からなる群より選ばれる、少なくとも1種の他の成分と、を配合し、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂の融点以上に加熱して、溶融混練する工程を有することを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項記載の製造方法によりポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を製造する工程と、得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を溶融成形する工程とを有することを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状高分子量のポリアリーレンスルフィド樹脂の高効率な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、これを「PPS樹脂」と略記する場合がある。)に代表されるポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、これを「PAS樹脂」と略記する場合がある。)は、耐熱性、耐薬品性等に優れ、電気電子部品、自動車部品、給湯機部品、繊維、フィルム用途等に幅広く利用されている。
【0003】
ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法として、例えば、含水アルカリ金属硫化物または該含水アルカリ金属硫化物1モル当たり1モル未満のN−メチルピロリドン、及び、ポリハロ芳香族化合物を混合し、該混合物を共沸脱水することで微粒子状の無水アルカリ金属硫化物を含むスラリー状物を得、次いで、これを加熱して重合反応させる方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。前記方法は、副反応を誘発する反応系内に残留する微量の結晶水等の水分を除去してから、重合反応を行うことで効率よく高分子量のポリアリーレンスルフィド樹脂を製造することが可能であるものの、塩基性の強いスルフィド化剤を高温で脱水処理する必要があることから、反応容器等の反応装置における原料との接触部が腐食しやすく、このため、チタン、ジルコニウムといった腐食に強い金属部材を用いざるを得なかった。しかし、それでもなお、該金属部材が腐食し、該金属部材の消耗を促進することが知られていた。このため、該金属部材の消耗を抑えるポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法が求められていた。
【0004】
さらに、得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、前記接触部の金属部材の消耗により溶出した金属部材由来の金属原子を含むこととなるが、通常の洗浄操作では、これら金属原子を取り除くことも困難であった。特に、近年、ポリアリーレンスルフィド樹脂を用いた成形品の薄肉化も進んでおり、従来よりも高品質のポリアリーレンスルフィド樹脂が求められており、ポリアリーレンスルフィド樹脂中の、反応装置に由来する金属原子含有量の低減は喫緊の課題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−231723号公報
【特許文献2】WO2010/058713号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明が解決しようとする課題は、加水分解によって開環し得る脂肪族系環状化合物の存在下で、ジハロ芳香族化合物と、スルフィド化剤とを重合反応させるポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法において、製造装置の腐食を抑え、得られるポリアリーレンスルフィド樹脂中の、製造装置由来の金属原子の含有量を低減する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決する為、鋭意努力した結果、ジハロ芳香族化合物の存在下、水を含むスルフィド化剤と、加水分解によって開環し得る脂肪族系環状化合物とを、脱水する際に、減圧下で行うことにおり、従来と比べて、すなわち、大気圧下で行う場合と対べて、前記接触部の腐食を低減でき、さらに得られるポリアリーレンスルフィド樹脂中の、製造装置由来の金属原子の含有量を低減することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、加水分解によって開環し得る脂肪族系環状化合物の存在下で、ジハロ芳香族化合物と、スルフィド化剤とを重合反応させるポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法であって、
ジハロ芳香族化合物の存在下、水を含むスルフィド化剤と、加水分解によって開環し得る脂肪族系環状化合物とを、減圧下で脱水させながら反応させて混合物を得る脱水工程(1)を有することを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法に関する。
【0009】
さらに本発明は、前記の製造方法によりポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する工程と、得られたポリアリーレンスルフィド樹脂と、充填剤、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂以外の熱可塑性樹脂、エラストマー、2以上の官能基を有する架橋性樹脂及びシランカップリング剤からなる群より選ばれる、少なくとも1種の他の成分と、を配合し、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂の融点以上に加熱して、溶融混練する工程を有することを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法に関する。
【0010】
さらに本発明は、前記の製造方法によりポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を製造する工程と、得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を溶融成形する工程とを有することを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂成形品の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により加水分解によって開環し得る脂肪族系環状化合物の存在下で、ジハロ芳香族化合物と、スルフィド化剤とを重合反応させるポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法において、製造装置の腐食を抑え、得られるポリアリーレンスルフィド樹脂中の、製造装置由来の金属原子の含有量を低減する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法は、
加水分解によって開環し得る脂肪族系環状化合物の存在下で、ジハロ芳香族化合物と、スルフィド化剤とを反応させるポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法であって、ジハロ芳香族化合物の存在下、水を含むスルフィド化剤と、加水分解によって開環し得る脂肪族系環状化合物とを、減圧下で、脱水させながら反応させて混合物を得る脱水工程(1)を有する。以下の詳述する。
【0013】
・脱水工程(1)
本発明は、ジハロ芳香族化合物の存在下、水を含むスルフィド化剤と、加水分解によって開環し得る脂肪族系環状化合物とを、減圧下で、脱水させながら反応させて混合物を得る脱水工程(1)を必須として有する。
【0014】
脱水工程(1)は、ジハロ芳香族化合物の存在下、水を含むスルフィド化剤と、加水分解によって開環し得る脂肪族系環状化合物とを、脱水させながら反応させる工程である。この工程により、反応系内に現存する水分量を効率よく系外へ除去するとともに、前記脂肪族系環状化合物の加水分解を促進し、少なくとも、無水のスルフィド化剤および前記脂肪族系環状化合物の加水分解物のアルカリ金属塩を含む混合物を形成する工程である。本発明では、脱水を減圧下で行うことによって、大気圧以上の圧力条件下で行う場合と対比して、反応用装置の、原料ないし該混合物との接触部における腐食を低減でき、得られるポリアリーレンスルフィド樹脂中の、該接触部に由来する、金属原子の含有量を低減することができる。
【0015】
本発明に用いるジハロ芳香族化合物は、脱水工程(1)において、得られる混合物の流動性を担保する溶媒として作用するが、その後の重合工程において重合原料として使用することができる。本発明において用いられるジハロ芳香族化合物としては、例えば、p−ジハロベンゼン、m−ジハロベンゼン、o−ジハロベンゼン、2,5−ジハロトルエン、1,4−ジハロナフタレン、1−メトキシ−2,5−ジハロベンゼン、4,4’−ジハロビフェニル、3,5−ジハロ安息香酸、2,4−ジハロ安息香酸、2,5−ジハロニトロベンゼン、2,4−ジハロニトロベンゼン、2,4−ジハロアニソール、p,p’−ジハロジフェニルエーテル、4,4’−ジハロベンゾフェノン、4,4’−ジハロジフェニルスルホン、4,4’−ジハロジフェニルスルホキシド、4,4’−ジハロジフェニルスルフィド、及び、上記各化合物の芳香環に炭素原子数1以上から18以下の範囲のアルキル基を核置換基として有する化合物が挙げられる。なお、上記各化合物中に含まれるハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子であることが望ましく、特に塩素原子であることがより望ましい。
【0016】
前記ジハロ芳香族化合物の中でも、線状のポリアリーレンスルフィド樹脂を効率的に製造する場合、とりわけ最終的に得られるポリアリーレンスルフィド樹脂の機械的強度や成形性が良好となる点からp−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン及び4,4’−ジクロロジフェニルスルホンが好ましく、特にp−ジクロロベンゼンが好ましい。
【0017】
また、線状のポリアリーレンスルフィド樹脂のポリマー構造の一部に分岐構造を持たせたい場合には、上記ジハロ芳香族化合物と共に、1,2,3−トリハロベンゼン、1,2,4−トリハロベンゼン、1,3,5−トリハロベンゼン、1,2,3,5−テトラハロベンゼン、1,2,4,5−テトラハロベンゼン、又は1,4,6−トリハロナフタレンを一部併用することが好ましい。なお、上記各化合物中に含まれるハロゲン原子も、塩素原子、臭素原子であることが望ましく、特に塩素原子であることがより望ましい。併用する際は、ゲル化に注意しながら、ジハロ芳香族化合物100モルに対して、0.001モル以上から3モル以下の範囲で用いることが好ましい。
【0018】
脱水工程(1)において、ジハロ芳香族化合物の添加量は、スルフィド化剤の硫黄原子1モルに対して、好ましくは0.2モル以上、より好ましくは0.3モル以上から、好ましくは5.0モル以下、より好ましくは2.0モル以下の範囲である。0.2モル以上であれば、前記混合物の流動性を担保する観点から好ましく、5.0モル以下の範囲であれば、加熱に必要な総熱量を抑えられ、生産性に優れる観点から好ましい。
【0019】
本発明に用いるスルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、またはアルカリ金属水硫化物およびアルカリ金属水酸化物が挙げられる。一般的に、アルカリ金属硫化物やアルカリ金属水硫化物は、結晶水を含む、いわゆる水和物としてポリアリーレンスルフィド樹脂の原料として用いられるが、その際、固形分濃度が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは35質量%以上から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは65質量%以下の範囲の液状又は固体状の水和物のものを用いる。
【0020】
本発明に用いるアルカリ金属硫化物としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム等の化合物が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。これらアルカリ金属硫化物の中では硫化ナトリウムと硫化カリウムが好ましく、特に硫化ナトリウムが好ましい。
【0021】
また、アルカリ金属硫化物を、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物とを反応させることによっても得られるが、脱水工程(1)と同じ反応系内にて調製されたものを用いてもかまわないし、脱水工程(1)とは異なる反応系で事前に調製されたものを用いてもかまわない。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムが挙げられる。これらの中でも特に水酸化リチウムと水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましく、特に水酸化ナトリウムが好ましい。アルカリ金属水酸化物は、水溶液として用いることが好ましく、その濃度は10質量%以上から50質量%以下となる範囲が好ましい。また、本発明で用いるアルカリ金属水硫化物としては、例えば、水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化ルビジウムまたは水硫化セシウム等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。これらアルカリ金属水硫化物の中では水硫化ナトリウムと水硫化カリウムが好ましく、特に水硫化ナトリウムが好ましい。また、さらに、アルカリ金属水硫化物を、硫化水素とアルカリ金属水酸化物とを反応させることによっても得られるが、反応系外で事前に調製されたものを用いてもかまわない。
【0022】
本発明で用いる脂肪族系環状化合物としては、加水分解によって開環し得るものであれば公知のものを特に限定されることなく用いることができるが、このような脂肪族系環状化合物の具体例としてはN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することがある。)、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム、ホルムアミド、アセトアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチル尿素、N−ジメチルプロピレン尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン酸などの脂肪族環状アミド化合物、アミド尿素、及びラクタム類が挙げられる。これらの中でも反応性が良好である点から脂肪族環状アミド化合物、特にNMPが好ましい。
【0023】
その際、該脂肪族環状化合物の仕込み量は、スルフィド化剤の硫黄原子1モルに対して、好ましくは0.01モル以上から4.0モル以下の範囲の割合であることが好ましいが、さらに高分子量のポリアリーレンスルフィド樹脂を製造する場合には、スルフィド化剤の硫黄原子1モルに対して、好ましくは0.01以上の範囲から、好ましくは0.9モルの範囲、より好ましくは0.9モル未満、さらに好ましくは0.5モル以下の範囲である。
【0024】
脱水工程(1)において、脱水は減圧下で進行させる。より具体的には、ジハロ芳香族化合物の存在下、水を含むスルフィド化剤と、加水分解によって開環し得る脂肪族系環状化合物とを、該スルフィド化剤の沸点以上で、かつ、水が共沸により除去される温度、好ましくは、液温が90以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上、特に好ましくは130℃以上の範囲から、170℃以下、より好ましくは160℃以下、さらに好ましくは150℃以下、特に好ましくは150℃未満の範囲になるよう加熱しつつ、かつ、圧力が30〔kPa abs〕以上、好ましくは35〔kPa abs〕以上、より好ましくは40〔kPa abs〕以上の範囲から、80〔kPa abs〕以下、好ましくは70〔kPa abs〕以下、さらに好ましくは60〔kPa abs〕以下の範囲になるよう減圧することにより、脱水を行う工程を有する方法が挙げられる。さらに好ましくは、ジハロ芳香族化合物の存在下、水を含むスルフィド化剤と、加水分解によって開環し得る脂肪族系環状化合物とを、液温が90℃以上から130℃以下の範囲となるまで大気圧下で昇温させた後、脱水を、液温が、好ましくは90℃超え、より好ましくは110℃以上、より好ましくは130℃以上の範囲から、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下、さらに好ましくは150℃以下の範囲で、かつ、圧力が、好ましくは30〔kPa abs〕以上、より好ましくは35〔kPa abs〕以上、さらに好ましくは40〔kPa abs〕以上の範囲から、80〔kPa abs〕以下、より好ましくは70〔kPa abs〕以下、さらに好ましくは60〔kPa abs〕以下の範囲に昇温および減圧しながら行う方法が挙げられる。
【0025】
さらに、前記方法において、ジハロ芳香族化合物の存在下、水を含むスルフィド化剤と、加水分解によって開環し得る脂肪族系環状化合物とを、液温が90℃以上から130℃以下の範囲となるまで大気圧下で昇温させる際、反応容器内の気相温度を確認することも好ましく、反応容器内の気相温度が水の沸点よりも10℃低い温度に到達した後に、好ましくは水の沸点よりも5℃低い温度に到達した後に、さらに好ましくは水の沸点に到達した後に、脱水操作を開始することも好ましい。また、脱水は、大気圧下から減圧を開始し、上記圧力範囲に到達した後は、一定の範囲内、例えば、±10〔kPa abs〕の範囲内、好ましくは5〔kPa abs〕の範囲内、より好ましくは1〔kPa abs〕の範囲内を維持することが好ましい。前記方法において、大気圧下から、上記圧力範囲に到達するまでの減圧操作は速やかに行うことが好ましい。その際の圧力勾配は反応容器の容積や、原料の合計量などによって異なるため一概に規定することはできないものの、好ましくは−3〔kPa abs/min〕以下の範囲であり、より好ましくは、−6〔kPa abs/min〕以下の範囲である。一方、下限値は特に設定されないが、設備が大がかりになることを防ぐ観点から、好ましくは−60〔kPa abs/min〕以上、より好ましくは−30〔kPa abs/min〕以上の範囲である。
【0026】
前記方法において、液温の調整は、液温を測定した上で、所定温度範囲内に収まるよう、加熱装置から反応系内に投入される熱量を、手動で制御するか、シーケンス制御、フィードバック制御、フィードフォワード制御など、公知の自動制御方法により、自動で制御することが好ましい。制御には必ずタイムラグが伴うため、制御しようとする液温と現実の液温との間には、ある温度幅が許容される。その温度幅は好ましくは、維持しようとする温度に対して、±10℃の範囲であることが好ましく、±5℃の範囲であることがより好ましい。
【0027】
脱水は、上記の範囲に液温と圧力を制御しながら、反応系から蒸留装置に通じる配管のバルブ(弁)を開け、脂肪族系環状化合物と水とジハロ芳香族化合物の混合物を蒸留することにより行われる。該蒸留は、脂肪族系環状化合物を単離した後、水とジハロ芳香族化合物を主成分とする混合蒸気をコンデンサーで凝縮、デカンター等で水とジハロ芳香族化合物とを分離し共沸留出したジハロ芳香族化合物を反応系内に戻す方法などが挙げられる。なお、単離した脂肪族系環状化合物や、脂肪族系環状化合物や水と分離したジハロ芳香族化合物は反応系内に戻すことが好ましいが、戻さない場合は、共沸留出した量に相当する量の脂肪族環状化合物ないしジハロ芳香族化合物を追加仕込みするか、あるいは、共沸留去する量を勘案した上で、脂肪族環状化合物ないしジハロ芳香族化合物を予め過剰に仕込んでおいてもよい。
【0028】
このように本発明の脱水工程(1)は、脱水処理によって水が反応系外に排出されると共に、加水分解によって開環し得る脂肪族系環状化合物が加水分解され、同時に無水のスルフィド化剤、好ましくは、無水のアルカリ金属硫化物が生成する工程である。脱水処理後に反応系内に過剰な水分が存在した場合、その後の重合工程において、副生成物が多量に生成し、成長末端停止反応を誘発して、ポリアリーレンスルフィド樹脂の鎖長延長反応を、ひいては粘度増加ないし高分子量化を阻害する傾向となる。従って、脱水工程(1)後の反応系内の全水分量は極力少ない方が好ましく、具体的には、脱水工程(1)で用いたスルフィド化剤の硫黄原子1モル当たり、好ましくは0.1モル超え、より好ましくは0.6モル以上から、好ましくは0.99モル以下、より好ましくは0.96モル以下の範囲となるような水分量である。ここで「反応系内の全水分量」とは、前記脂肪族系環状化合物の加水分解に消費された水、スルフィド化剤中に微量残存する結晶水、及びその他反応系内に存在する水分の全ての合計質量である。
【0029】
更に、脱水工程(1)後の、反応系内に現存する水分量が反応系内のスルフィド化剤の硫黄原子1モル当たり、0.4モル以下の範囲となる割合であることが好ましく、検出限界から0.4モル以下の範囲となる割合であることがより好ましく、脱水の効率に優れる範囲として、0.03モル以上から0.11モル以下の範囲となる割合であることがさらに好ましい。ここで、「反応系内に現存する水分量」とは、反応系内の全水分量のうち、前記脂肪族環状化合物の加水分解に消費された水分を除く水、即ち、結晶水、HO等として現に反応系内に存在する水分(以下、これらを「結晶水等」という。)の総量をいう。
【0030】
このように、本発明は、減圧下で脱水を進行させることで、スルフィド化剤中の結晶水の遊離がより低い加熱温度でも促進され、重合工程で副反応を引起す原因である反応系内の水分が効率的に除去されると伴に、重合促進作用を示すと考えられる脂肪族系環状化合物の加水分解物にも変換され、その結果、重合促進と伴に、重合時の副反応を抑えることができる。
【0031】
・脱水工程(2)
本発明は、脱水工程(1)で得られた混合物に、さらに非プロトン性極性有機溶媒を加え、水を留去して脱水を行う脱水工程(2)を任意工程として有していてもよい。脱水工程(2)において、反応系内への非プロトン性極性溶媒の仕込み量は、スルフィド化剤の硫黄原子1モルに対して、好ましくは0.5モル以上から5モル以下の範囲となる割合で加えることが好ましい。反応系内に現存する水分量を、スルフィド化剤の硫黄原子1モルに対して、0.03モル未満の範囲にしようとすると、脱水効率が非常に低下する傾向となるため、このような場合に、脱水工程(1)に引き続き、さらに脱水工程(2)を行うことで、脱水工程(2)終了時の反応系内に含まれる水分量を、スルフィド化剤の硫黄原子1モルに対して、0.03モル未満の範囲、好ましくは、検出限界から0.03モル未満の範囲に、さらに、好ましくは、検出限界以上から0.01モル以下の範囲にまで調整することができる。
【0032】
脱水工程(2)における脱水は、液温が90℃以上から220℃以下の範囲で、かつ、30〔kPa abs〕以上から202〔kPa abs〕以下の範囲の条件下で行うことができるが、このうち、脱水工程(1)と同じ減圧下での脱水処理条件、すなわち、液温が好ましくは90℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは130℃以上から、160℃以下、より好ましくは150℃以下の範囲になるよう加熱しつつ、かつ、好ましくは30〔kPa abs〕以上、より好ましくは35〔kPa abs〕以上、さらに好ましくは40〔kPa abs〕以上から、好ましくは80〔kPa abs〕以下、より好ましくは70〔kPa abs〕以下、さらに好ましくは60〔kPa abs〕以下の範囲になるよう減圧しながら脱水を行うことがより低い液温で効率的に脱水できる観点から好ましい。
【0033】
なお、脱水工程(2)は、脱水工程(1)と同じ反応容器で行うことが、製造設備の共有化が図れ、生産性が向上する観点から好ましいが、一方で、単位時間当たりの樹脂生産量を向上させる観点から、脱水工程(1)や重合工程と異なる反応容器を用いて行うことも好ましい。
【0034】
・重合工程
本発明は、次いで、脱水工程(1)を経て得られた混合物を、ジハロ芳香族化合物1モルに対して反応系内に現存する水分量が0.4モル以下の範囲で加熱して重合反応させる重合工程を有する。また、脱水工程(1)の後に、脱水工程(2)を行った場合には、脱水工程(2)を経て得られた混合物を、ジハロ芳香族化合物1モルに対して反応系内に現存する水分量が0.03モル未満の範囲で加熱して重合反応させることができる。
該重合工程は、脱水工程(1)ないし脱水工程(2)を経て得られた混合物を、密閉された反応容器内で200℃以上かつ300℃以下の範囲に加熱することにより、重合反応を進行させる工程である。
【0035】
重合工程において、重合反応条件は特に制限されるものではないが、重合反応が容易に進行し得る温度、すなわち200℃以上かつ300℃以下の範囲、好ましくは210℃以上かつ280℃以下の範囲、更に好ましくは215℃以上かつ250℃以下の範囲にて、反応させることが好ましい。
【0036】
上述した通り、重合原料であるジハロ芳香族化合物は、脱水工程(1)で仕込まれる上に、蒸留で共沸留去されるため、共沸留去される量を勘案した上で、ジハロ芳香族化合物を脱水工程において予め過剰に仕込んでおくか、または重合工程が開始されるまでにジハロ芳香族化合物を追加で仕込み、反応系内におけるジハロ芳香族化合物の割合が、スルフィド化剤の硫黄原子1モルに対して、好ましくは0.8モル以上、より好ましくは0.9モル以上から、好ましくは1.2モル以下、より好ましくは1.1モル以下までの範囲、特に好ましくは等モルで反応できるよう調整する。
【0037】
重合開始時における、反応系内に現存する水分量は少いほどよく、例えば、前記スルフィド化剤の硫黄原子1モルあたり、0.4モル以下の範囲、好ましくは検出限界(モル)以上の範囲から、好ましくは0.4モル以下、より好ましくは0.11モル以下、さらに好ましくは0.08モル以下、特に好ましくは0.03モル以下、最も好ましくは0.01モル以下の範囲である。重合反応が進むにつれて水が生成されるため、重合工程の重合反応終了時に前記スルフィド化剤の硫黄原子1モルあたり0.1モル以上から0.3モル以下の範囲の水が生成されることが好ましく、さらに、ジハロ芳香族化合物の転化率が80モル%を越えた時点以降、より好ましくは60モル%を越えた時点以降、さらに好ましくは重合開始直後から上記範囲を満たしていることが好ましい。
【0038】
ここで、ジハロ芳香族化合物の転化率とは、次の式で表されるものである。
転化率(%)=(仕込み量−残存量)/仕込み量×100
ただし、「仕込み量」は反応系内に仕込んだジハロ芳香族化合物の質量を表し、また「残存量」は反応系内に残存するジハロ芳香族化合物の質量を表すものとする。
【0039】
・後処理工程
重合反応により得られたポリアリーレンスルフィド樹脂を含む反応混合物は後処理工程を施すことができる。後処理工程としては、公知の方法であればよく、特に制限されるものではないが、例えば、重合反応終了後、先ず反応混合物をそのまま、あるいは酸または塩基を加えた後、減圧下または常圧下で溶媒を留去し、次いで溶媒留去後の固形物を水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類などの溶媒で1回または2回以上洗浄し、更に中和、水洗、濾過および乾燥する方法、或いは、重合反応終了後、反応混合物に水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素などの溶媒(使用した重合溶媒に可溶であり、且つ少なくともポリアリーレンスルフィド樹脂に対しては貧溶媒である溶媒)を沈降剤として添加して、ポリアリーレンスルフィド樹脂や無機塩等の固体状生成物を沈降させ、これらを濾別、洗浄、乾燥する方法、或いは、重合反応終了後、反応混合物に反応溶媒(又は低分子ポリマーに対して同等の溶解度を有する有機溶媒)を加えて撹拌した後、濾過して低分子量重合体を除いた後、水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール類などの溶媒で1回または2回以上洗浄し、その後中和、水洗、濾過および乾燥をする方法等が挙げられる。
なお、上記に例示したような後処理方法において、ポリアリーレンスルフィド樹脂の乾燥は真空中で行なってもよいし、空気中あるいは窒素のような不活性ガス雰囲気中で行なってもよい。
【0040】
この様にして得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、そのまま各種成形材料等に利用可能であるが、空気あるいは酸素富化空気中あるいは減圧条件下で熱処理を行い、酸化架橋させてもよい。この熱処理の温度は、目標とする架橋処理時間や処理する雰囲気によっても異なるものの、180℃以上から270℃以下の範囲であることが好ましい。また、前記熱処理は押出機等を用いてポリアリーレンスルフィド樹脂の融点以上で、ポリアリーレンスルフィド樹脂を溶融した状態で行ってもよいが、ポリアリーレンスルフィド樹脂の熱劣化の可能性が高まるため、融点プラス100℃以下で行うことが好ましい。
【0041】
・製造装置
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法において上記の各工程で用いる反応用装置は、原料、すなわち、ジハロ芳香族化合物、スルフィド化剤、アルカリ触媒等、加水分解によって開環し得る脂肪族系環状化合物、脱水工程を経て得られる混合物、そして、重合反応後に得られるポリアリーレンスルフィド樹脂を含む重合反応物との接触部の一部ないし全部が、チタン、ジルコニウム、ニッケル合金で構成されているものを用いることが耐食性の観点から好ましい。
【0042】
前記反応用装置としては、内部に撹拌翼を具備するバッチ式反応容器(オートクレーブ、反応釜)、及び、連続式反応容器などの反応容器(重合ライン)、撹拌翼、邪魔板などが挙げられる。
【0043】
例えば、バッチ式反応容器は、該反応容器内部に原料、混合物または重合反応物を保持し得る容器であればよく、例えば、上部蓋部、胴部、及び底部分から構成され、かつ、必要に応じて密閉可能な構造を有するものが挙げられ、内部に攪拌翼、撹拌翼に動力を伝える軸、邪魔板(バッフル)、温度制御用蛇管を有する構造のものが攪拌効率に優れる点から好ましい。ここで、攪拌翼としては、アンカー型攪拌翼、タービン型攪拌翼、スクリュー型攪拌翼、ダブルヘリカル型攪拌翼等が挙げられる。邪魔板(バッフル)は、下端が反応容器底面付近まで、一方、上端が液面から出る位置まで設置されていることが、熱伝導や熱制御が容易となる観点から好ましい。
【0044】
一方、連続式反応容器は、例えば、可動部分のない複数のミキシングエレメントが内部に固定されている管状反応器が挙げられ、該管状反応器を直列に連結させた重合ライン、或いは、複数の管状反応器を連結する共に反応液の一部を前記管状反応器の原料投入口に環流させる構造を有する連続環状重合ラインを形成するものが挙げられる。これらの連続式反応容器は、プランジャーポンプなどにより原料のフィード及び反応液の移送を行うことがきできる。
【0045】
また、該反応容器には、更に温度計や圧力計、安全弁等の各種測定機器が備えられており、その外部には蒸気装置へ通じる配管と開閉弁、コンデンサー、デカンター、留出液(デカンターの有機層成分)戻しライン、留出液(デカンターの水層成分)留去ライン等の蒸留装置と、圧力調整弁、真空ポンプ、硫化水素捕捉装置等の減圧装置が配設されたものであることが好ましい。
【0046】
本発明で使用する反応用装置は、前記接触部の少なくとも一部が、好ましくは全てが前記ニッケル合金で構成されているものとしてもよい。ここで用いられるニッケル合金は、耐食性の面から、クロムの含有割合が好ましくは43質量%以上から47質量%以下の範囲、モリブデンの含有割合が0.1質量%以上から2質量%以下の範囲および残部がニッケルおよび不可避不純物で構成された合金である。タングステン、鉄、コバルトおよび銅は、検出限界以下の含有量であるものが好ましい。なお、本発明において「不可避不純物」の用語は、技術的に除去が困難な微量の不純物を意味している。本発明においては、例えば、合金中において、3質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは検出限界以下の割合で含まれる炭素原子が挙げられる。
【0047】
・成形加工等
以上詳述した本発明の製造方法によって得られたポリアリーレンスルフィド樹脂は、充填剤、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂以外の熱可塑性樹脂、エラストマー、2以上の官能基を有する架橋性樹脂及びシランカップリング剤からなる群より選ばれる、少なくとも1種の他の成分と、を配合し、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂の融点以上に加熱して、溶融混練する工程を経て、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物とすることができる。
【0048】
充填材としては、特に制限されるものではないが、例えば、繊維状充填材、無機充填材等が挙げられる。繊維状充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、シランガラス繊維、セラミック繊維、アラミド繊維、金属繊維、チタン酸カリウム、炭化珪素、硫酸カルシウム、珪酸カルシウム等の繊維、ウォラストナイト等の天然繊維等が使用出来る。また無機充填材としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、クレー、バイロフェライト、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、マイカ、雲母、タルク、アタルパルジャイト、フェライト、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラスビーズ等が使用出来る。また、成形加工の際に添加剤として離型剤、着色剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、発泡剤、防錆剤、難燃剤、滑剤等の各種添加剤を含有せしめることが出来る。
【0049】
更に、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に配合される、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリーレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ四弗化エチレン、ポリ二弗化エチレン、ポリスチレン、ABS樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、液晶ポリマー等の合成樹脂を配合したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物として使用してもよい。前記ポリアリーレンスルフィド樹脂以外の熱可塑性樹脂の配合割合は、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上から、好ましくは300質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは45質量部以下の範囲である。ポリアリーレンスルフィド樹脂以外の熱可塑性樹脂の含有量がこれらの範囲にあることにより、耐熱性、耐薬品性及び機械的物性の更なる向上という効果が得られる。
【0050】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に配合されるエラストマーとしては、熱可塑性エラストマーが用いられることが挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、弗素系エラストマー及びシリコーン系エラストマーが挙げられる。なお、本明細書において、熱可塑性エラストマーは、前記熱可塑性樹脂ではなくエラストマーに分類される。
【0051】
エラストマー(特に熱可塑性エラストマー)は、ヒドロキシ基又はアミノ基と反応し得る官能基を有することが好ましい。これにより、接着性及び耐衝撃性等の点で特に優れた樹脂組成物を得ることができる。係る官能基としては、エポキシ基、カルボキシ基、イソシアネート基、オキサゾリン基、及び、式:R(CO)O(CO)−又はR(CO)O−(式中、Rは炭素原子数1以上から8以下の範囲のアルキル基を表す。)で表される基が挙げられる。係る官能基を有する熱可塑性エラストマーは、例えば、α−オレフィンと前記官能基を有するビニル重合性化合物との共重合により得ることができる。α−オレフィンは、例えば、エチレン、プロピレン及びブテン−1等の炭素原子数2以上から8以下の範囲のα−オレフィン類が挙げられる。前記官能基を有するビニル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステル等のα,β−不飽和カルボン酸及びそのアルキルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びその他の炭素原子数4以上から10以下の範囲のα,β−不飽和ジカルボン酸及びその誘導体(モノ若しくはジエステル、及びその酸無水物等)、並びにグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ基、カルボキシ基、及び、式:R(CO)O(CO)−又はR(CO)O−(式中、Rは炭素原子数1以上から8以下の範囲のアルキル基を表す。)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するエチレン−プロピレン共重合体及びエチレン−ブテン共重合体が、靭性及び耐衝撃性の向上の点から好ましい。
【0052】
エラストマーの配合割合は、その種類、用途により異なるため一概に規定することはできないが、例えば、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上から、好ましくは300質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは45質量部以下の範囲である。エラストマーの含有量がこれらの範囲にあることにより、成形品の耐熱性、靭性の確保の点でより一層優れた効果が得られる。
【0053】
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に配合される架橋性樹脂は、2以上の官能基を有する。官能基としては、エポキシ基、フェノール性水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、酸無水物基、及びイソシアネート基などが挙げられる。架橋性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、及びウレタン樹脂が挙げられる。
【0054】
該架橋性樹脂の配合量は、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上から、好ましくは300質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは30質量部以下の範囲である。架橋性樹脂の配合量がこれら範囲にあることにより、成形品の剛性及び耐熱性の向上という効果が特に顕著に得られる。
【0055】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に配合されるシランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン及びγ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0056】
シラン化合物の配合量は、例えば、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下の範囲である。シラン化合物の配合量がこれらの範囲にあることにより、ポリアリーレンスルフィド樹脂と前記他の成分との相溶性向上という効果が得られる。
【0057】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、さらに離型剤、着色剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、発泡剤、防錆剤、難燃剤及び滑剤等のその他の添加剤を含有してもよい。添加剤の配合量は、例えば、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して、1質量部以上から10質量部以下の範囲であることが好ましい。
【0058】
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、上記方法により得られたポリアリーレンスルフィド樹脂と、前記他の成分とを溶融混練する方法により、例えば、ペレット状のコンパウンド等の形態で得ることができる。溶融混錬の温度は、例えば、好ましくは250℃以上、より好ましくは290℃以上から、好ましくは350℃以下、より好ましくは330℃以下の範囲である。溶融混錬は、2軸押出機等を用いて行うことができる。
【0059】
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、単独で又は前記他の成分な
どの材料と組み合わせて、射出成形、押出成形、圧縮成形及びブロー成形のような各種溶
融加工法により溶融成形することで、耐熱性、成形加工性、寸法安定性等に優れた成形品に加工することができる。本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、金属含有量が少ないことから、高品質の成形品、特に絶縁性に優れた薄肉成形品の容易な製造を可能にする。
【0060】
本発明の製造方法で得られるポリアリーレンスルフィド樹脂およびその組成物は、ポリアリーレンスルフィド樹脂の本来有する耐熱性、寸法安定性等の諸性能も具備しているので、例えば、コネクタ、プリント基板及び封止成形品等の電気・電子部品、ランプリフレクター及び各種電装品部品などの自動車部品、各種建築物、航空機及び自動車などの内装用材料、あるいはOA機器部品、カメラ部品及び時計部品などの精密部品等の射出成形若しくは圧縮成形、若しくはコンポジット、シート、パイプなどの押出成形、又は引抜成形などの各種成形加工用の材料として、或いは繊維若しくはフィルム用の材料として幅広く有用である。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0062】
(金属原子含有量の測定)
白金るつぼにPPS樹脂を100mg秤取し、濃硫酸2mlを加えた。これを電熱器上に乗せ、硫酸の白煙が出なくなるまで加熱分解を行った。その後、分解物入りるつぼを電気炉に入れ、800℃で3時間加熱分解させ、完全に灰化した。るつぼを冷却し、内容物を1Nの塩酸10mlでメスフラスコに洗い出した。その後、1回5mlの蒸留水で5回に渡って100mlのメスフラスコに洗い出し、メスフラスコを蒸留水でアップし、100mlの希釈液を作製した。得られた希釈液を、ICP発光分光分析装置(パーキン・エルマー株式会社製「Optical Emission Spectrometer Optima 4300 DV」)を使用して、金属イオン含有量を測定し、重合原料として使用したナトリウムイオンを除く、金属イオン含有量を表記した。検出限界は0.01ppmである。
【0063】
(溶融粘度の測定法)
PPS樹脂の溶融粘度(η)は、フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT500D」)を用い、300℃、1.96MPa、L/D=10(mm)/1(mm)で6分間保持した後に測定した値である。
【0064】
(フェノール(副生成物)量の定量)
得られたPPSスラリーを10gと内標準物質(クロロベンゼン)0.2gを量り取り、アセトン15gで希釈する。得られた希釈液を超音波で5分間処理し、遠心分離機で固液分離した。その後、上澄み液を1μL採取し、ガスクロマトグラフで測定した。
【0065】
ガスクロマトグラフでの測定は、島津製作所製ガスクロマトグラフィー「GC2014」(カラム:財団法人化学物質評価研究機構製カラム「G300」、キャリアーガス:ヘリウム 、測定カラム条件:140℃5分間保持し→3℃/分で200℃まで昇温→200℃20分間保持)で行った。フェノール濃度を求める為に、まず標準サンプルで検量線を作成した。次に上記で準備した上澄み液を測定して得られたクロマトグラムから標準サンプルと同じ保持時間のピーク面積を得た。該ピーク面積と検量線から測定液中の濃度を求め、スルフィド化剤1モル(仕込んだ硫黄原子合計1モル)あたりのフェノール量のモル数を百分率で算出した(以下、「mol%/S」)。
【0066】
(水分量の定量)
水分量は、カールフィッシャー水分測定装置(平沼産業株式会社製 AQV−300)を用いて、カールフィッシャー容量滴定方式にて測定した。なお、検出限界は、硫黄原子1モルに対して6.0×10−6モルである。
【0067】
(実施例1)
・脱水工程(1)
温度計、加熱装置、チタン製撹拌翼および圧力計を備え、原料(NMP)貯蔵タンク、減圧装置(圧力調整バルブ、真空ポンプおよび飛散した硫化水素の回収装置)および蒸留装置(精留塔、コンデンサーおよびデカンター)とそれぞれ連結した、内壁(接液部)がニッケル合金(クロム45質量%、モリブデン1質量%およびニッケル残部を含むNi−Cr−Mo合金)製のオートクレーブに、p−ジクロロベンゼン(以下、p−DCBと略す)220.5質量部(1.50モル部)、NMP29.7質量部(0.3モル部)、45wt%NaSHaq.123.6質量部(1.5モル部)および48wt%NaOHaq.125.0g(1.5モル部)を仕込み、該オートクレーブを密閉した状態で、撹拌しながら窒素雰囲気下で液温128℃(オートクレーブ内の気相温度96℃)まで昇温した。
【0068】
次に、前記オートクレーブから蒸留装置へ通ずる配管のバルブを開き、脱水を開始するとともに、減圧装置へ通ずる配管のバルブを開き、−6.6〔kPa abs〕/minの割合で大気圧下から47〔kPa abs〕まで減圧すると伴に、液温を128℃から147℃まで0.1℃/minの割合で徐々に昇温し、最終的に47〔kPa abs〕、液温147℃で4時間、脱水した。精留塔から排出された水とp−DCBの混合蒸気をコンデンサーで凝縮し、水とp−DCBをデカンターで分離して、随時、水は系外へ留出し、p−DCBはオートクレーブ内に戻した。その間、水の留出量は123.5質量部であり、脱水反応後のオートクレーブ内は微粒子状の無水硫化ナトリウム組成物がDCB中に分散したスラリー状態であり、現存する水分の残存量はオートクレーブ中に存在する硫黄原子1モル当たり0.3モルであった。
【0069】
・重合工程
脱水工程で得られた混合物を含むオートクレーブを、窒素雰囲気下とした上でバルブを閉じて、反応系を密閉した。液温を160℃とし、予め原料貯蔵タンクにセットしたNMP415.8質量部(4.2モル部)を、該原料貯蔵タンクに通じるバルブを開いて、配管よりポンプで押し出し、オートクレーブ内に仕込んだ。そして、220℃まで昇温し、2時間撹拌した後、250℃まで昇温し、1時間撹拌した。最終圧力は373〔kPa abs〕であった。その後、室温まで冷却した。
【0070】
・後処理工程
冷却後、得られたスラリーを3000質量部の水に注いで80℃で1時間撹拌した後、濾過した。このケーキを再び3000質量部の温水で1時間撹拌し、洗浄した後、濾過した。この操作を4回繰り返し、濾過後、熱風乾燥機内で120℃で一晩乾燥して白色の粉末状のPPS154質量部を得た。
このポリマーの溶融粘度は66Pa・sであり、フェノール生成量は0.08モル%、クロム、モリブデンおよびニッケルの合計の金属含有量は検出限界値以下であった。
【0071】
(比較例1)
「 次に、前記オートクレーブから蒸留装置へ通ずる配管のバルブを開き、脱水を開始するとともに、減圧装置へ通ずる配管のバルブを開き、−6.6〔kPa abs〕/minの割合で大気圧下から47〔kPa abs〕まで減圧すると伴に、液温を128℃から147℃まで0.1℃/minの割合で徐々に昇温し、最終的に47〔kPa abs〕、液温147℃で4時間、脱水した。」とする部分を、
「 次に、前記オートクレーブから蒸留装置へ通ずる配管のバルブを開き、脱水を開始するとともに、大気圧下で、液温を128℃から173℃まで0.1℃/minの割合で徐々に昇温し、最終的に大気圧下、液温173℃で4.5時間、脱水した。」としたこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0072】
脱水工程(1)の間、水の留出量は123.5質量部であり、脱水反応後のオートクレーブ内は微粒子状の無水硫化ナトリウム組成物がDCB中に分散したスラリー状態であり、水分の残存量はオートクレーブ中に存在する硫黄原子1モル当たり0.3モルであった。
【0073】
また、後処理工程後、得られたPPS樹脂の溶融粘度は65Pa・sであり、フェノール生成量は0.09モル%、クロム、モリブデンおよびニッケルの合計の金属含有量は23pmであった。
【0074】
(比較例2)
「 次に、前記オートクレーブから蒸留装置へ通ずる配管のバルブを開き、脱水を開始するとともに、減圧装置へ通ずる配管のバルブを開き、−6.6〔kPa abs〕/minの割合で大気圧下から47〔kPa abs〕まで減圧すると伴に、液温を128℃から147℃まで0.1℃/minの割合で徐々に昇温し、最終的に47〔kPa abs〕、液温147℃で4時間、脱水した。」とする部分を、
「 次に、前記オートクレーブから蒸留装置へ通ずる配管のバルブを開き、脱水を開始するとともに、大気圧下で、液温を128℃から147℃まで0.1℃/minの割合で徐々に昇温し、最終的に大気圧下、液温147℃で4時間、脱水した。」としたこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0075】
脱水工程(1)の間、水の留出量は49.5質量部であり、脱水反応後のオートクレーブ内は微粒子状の無水硫化ナトリウム組成物がDCB中に分散したスラリー状態であり、水分の残存量はオートクレーブ中に存在する硫黄原子1モル当たり3モルであった。
【0076】
しかしながら、後処理工程後、白色の粉末状のPPS樹脂は得られず、低粘度の生成物が残存した。当該生成物は、粘度が低く、溶融粘度の測定ができなかった。なお、フェノール生成量は0.5モル%、クロム、モリブデンおよびニッケルの合計の金属含有量は0.1ppmであった。
【0077】
(実施例2)
「内壁(接液部)がニッケル合金(クロム45質量%、モリブデン1質量%およびニッケル残部を含むNi−Cr−Mo合金)製のオートクレーブ」とする部分を、
「内壁(接液部)がチタン製のオートクレーブ」としたこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0078】
脱水工程(1)の間、水の留出量は123.5質量部であり、脱水反応後のオートクレーブ内は微粒子状の無水硫化ナトリウム組成物がDCB中に分散したスラリー状態であり、水分の残存量はオートクレーブ中に存在する硫黄原子1モル当たり0.29モルであった。
【0079】
また、後処理工程後、得られたPPS樹脂の溶融粘度は67Pa・sであり、フェノール生成量は0.08モル%、チタンの金属含有量は検出限界値以下であった。
【0080】
(比較例3)
「内壁(接液部)がニッケル合金(クロム45質量%、モリブデン1質量%およびニッケル残部を含むNi−Cr−Mo合金)製のオートクレーブ」とする部分を、
「内壁(接液部)がチタン製のオートクレーブ」としたこと以外は、比較例1と同様に行った。
【0081】
脱水工程(1)の間、水の留出量は123.5質量部であり、脱水反応後のオートクレーブ内は微粒子状の無水硫化ナトリウム組成物がDCB中に分散したスラリー状態であり、水分の残存量はオートクレーブ中に存在する硫黄原子1モル当たり0.27モルであった。
【0082】
また、後処理工程後、得られたPPS樹脂の溶融粘度は65Pa・sであり、フェノール生成量は0.09モル%、チタンの金属含有量は5ppmであった。
【0083】
(比較例4)
「内壁(接液部)がニッケル合金(クロム45質量%、モリブデン1質量%およびニッケル残部を含むNi−Cr−Mo合金)製のオートクレーブ」とする部分を、
「内壁(接液部)がチタン製のオートクレーブ」としたこと以外は、比較例2と同様に行った。
【0084】
脱水工程(1)の間、水の留出量は50.2質量部であり、脱水反応後のオートクレーブ内は微粒子状の無水硫化ナトリウム組成物がDCB中に分散したスラリー状態であり、水分の残存量はオートクレーブ中に存在する硫黄原子1モル当たり2.8モルであった。
【0085】
しかしながら、後処理工程後、白色の粉末状のPPS樹脂は得られず、低粘度の生成物が残存した。当該生成物は、粘度が低く、溶融粘度の測定ができなかった。なお、フェノール生成量は0.5モル%、チタンの金属含有量は2ppmであった。
【0086】
(実施例3)
「該オートクレーブを密閉した状態で、撹拌しながら窒素雰囲気下で液温128℃まで昇温した。」とする部分を、
「該オートクレーブを密閉した状態で、撹拌しながら窒素雰囲気下で液温105℃まで昇温した。」としたこと、および、
「 次に、前記オートクレーブから蒸留装置へ通ずる配管のバルブを開き、脱水を開始するとともに、減圧装置へ通ずる配管のバルブを開き、−6.6〔kPa abs〕/minの割合で大気圧下から47〔kPa abs〕まで減圧すると伴に、液温を128℃から147℃まで0.1℃/minの割合で徐々に昇温し、最終的に47〔kPa abs〕、液温147℃で4時間、脱水した。」とする部分を、
「 次に、前記オートクレーブから蒸留装置へ通ずる配管のバルブを開き、脱水を開始するとともに、減圧装置へ通ずる配管のバルブを開き、−6.6〔kPa abs〕/minの割合で大気圧下から32〔kPa abs〕まで減圧すると伴に、液温を105℃から115℃まで0.1℃/minの割合で徐々に昇温し、最終的に32〔kPa abs〕、液温115℃で4時間、脱水した。」としたことの2点以外は、実施例1と同様に行った。
【0087】
脱水工程(1)の間、水の留出量は123.5質量部であり、脱水反応後のオートクレーブ内は微粒子状の無水硫化ナトリウム組成物がDCB中に分散したスラリー状態であり、水分の残存量はオートクレーブ中に存在する硫黄原子1モル当たり0.3モルであった。
【0088】
また、後処理工程後、得られたPPS樹脂の溶融粘度は62Pa・sであり、フェノール生成量は0.1モル%、クロム、モリブデンおよびニッケルの合計の金属含有量は検出限界値以下であった。
【0089】
(実施例4)
「 次に、前記オートクレーブから蒸留装置へ通ずる配管のバルブを開き、脱水を開始するとともに、減圧装置へ通ずる配管のバルブを開き、−6.6〔kPa abs〕/minの割合で大気圧下から47〔kPa abs〕まで減圧すると伴に、液温を128℃から147℃まで0.1℃/minの割合で徐々に昇温し、最終的に47〔kPa abs〕、液温147℃4時間、脱水した。」とする部分を、
「 次に、前記オートクレーブから蒸留装置へ通ずる配管のバルブを開き、脱水を開始するとともに、減圧装置へ通ずる配管のバルブを開き、−6.6〔kPa abs〕/minの割合で大気圧下から70〔kPa abs〕まで減圧すると伴に、液温を128℃から155℃まで0.1℃/minの割合で徐々に昇温し、最終的に70〔kPa abs〕、液温155℃で4時間、脱水した。」としたこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0090】
脱水工程(1)の間、水の留出量は123.5質量部であり、脱水反応後のオートクレーブ内は微粒子状の無水硫化ナトリウム組成物がDCB中に分散したスラリー状態であり、水分の残存量はオートクレーブ中に存在する硫黄原子1モル当たり0.3モルであった。
【0091】
また、後処理工程後、得られたPPS樹脂の溶融粘度は65Pa・sであり、フェノール生成量は0.09モル%、クロム、モリブデンおよびニッケルの合計の金属含有量は検出限界値以下であった。