特許第6947278号(P6947278)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 王子ホールディングス株式会社の特許一覧

特許6947278粘着シート、粘着シートの製造方法および着色剤を選択する方法
<>
  • 特許6947278-粘着シート、粘着シートの製造方法および着色剤を選択する方法 図000003
  • 特許6947278-粘着シート、粘着シートの製造方法および着色剤を選択する方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6947278
(24)【登録日】2021年9月21日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】粘着シート、粘着シートの製造方法および着色剤を選択する方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20210930BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20210930BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J11/04
   C09J133/00
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-200095(P2020-200095)
(22)【出願日】2020年12月2日
(65)【公開番号】特開2021-91888(P2021-91888A)
(43)【公開日】2021年6月17日
【審査請求日】2021年6月17日
(31)【優先権主張番号】特願2019-219001(P2019-219001)
(32)【優先日】2019年12月3日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】山本 真之
(72)【発明者】
【氏名】辻 和政
【審査官】 上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2020−192708(JP,A)
【文献】 特開2020−7500(JP,A)
【文献】 特開2020−164764(JP,A)
【文献】 国際公開第2020/230875(WO,A1)
【文献】 国際公開第2020/050340(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/121794(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/055189(WO,A1)
【文献】 特開2013−250834(JP,A)
【文献】 特開2016−66374(JP,A)
【文献】 特開2014−199336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 1/00− 43/00
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル重合体および着色剤を含む粘着シートであって、
前記着色剤が金属酸化物であり、
前記着色剤が、金属種類が銅、鉄、マンガンおよびチタンからなる群から選択される1種以上を含む金属酸化物を少なくとも1種類含み、
前記粘着シートが黒枠を備える透明部材貼合用であり、
前記粘着シートは、JIS Z8781−4:2013で規定されるL表色系におけるL値が60以上90未満であり、a値が0未満であり、かつ下記式1で表されるC値が9〜15である、粘着シート。
式1:
C=0.13×L−b
【請求項2】
前記アクリル重合体が、架橋性官能基を有するアクリル単量体単位を含有する、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
さらに架橋剤を含む、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
さらに紫外線吸収剤を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記C値が11〜13である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記C値が12以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項7】
アクリル重合体および着色剤を含む粘着シートの製造方法であって、
前記着色剤が金属酸化物であり、
前記粘着シートが黒枠を備える透明部材貼合用であり
記着色剤が、金属種類が銅、鉄、マンガンおよびチタンからなる群から選択される1種以上を含む金属酸化物を少なくとも1種類含み、かつ前記L値が60以上90未満であり、前記a値が0未満であり、かつ下記式1で表されるC値が9〜15である前記粘着シートを選別する工程を含む、粘着シートの製造方法。
式1:
C=0.13×L−b
【請求項8】
アクリル重合体および着色剤を含む粘着シート用の着色剤を選択する方法であって、
前記着色剤が金属酸化物であり、
前記粘着シートが黒枠を備える透明部材貼合用であり、
前記アクリル重合体および前記着色剤を用いて前記粘着シートを製造する場合に
属種類が銅、鉄、マンガンおよびチタンからなる群から選択される1種以上を含む金属酸化物を少なくとも1種類含み、かつ前記粘着シートの前記L値が60以上90未満であり、前記a値が0未満となり、かつ下記式1で表されるC値が9〜15となる前記着色剤を選択する工程を含む、着色剤を選択する方法。
式1:
C=0.13×L−b
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート、粘着シートの製造方法および着色剤を選択する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置や、タッチパネルなどの表示装置と組み合わせて用いられる入力装置が広く用いられている。これらの表示装置や入力装置の製造等においては、光学部材を貼り合せる用途に粘着シートが使用されている。近年、粘着シートに意匠性や機能性のための隠蔽性を付与すべく、黒色の外観を有する粘着シートが求められる場合があり、遮光性を付与するために両面粘着シートに黒色顔料を含む黒色層を設けることが知られている(特許文献1および2参照)。
【0003】
特許文献1には、可とう性基材層、第一の黒色層及び第二の黒色層、並びに、第一の粘着剤層及び第二の粘着剤層を含む積層体からなる両面粘着シートであって、第一の粘着剤層及び第二の粘着剤層が積層体の両側の最外層である、両面粘着シートが開示されている。
【0004】
特許文献2には、粘着成分と、黒色顔料と、スチレン−マレイン酸樹脂とを含有する黒色箔状粘着剤であって、黒色箔状粘着剤中における黒色顔料の含有量が、2〜6質量%である黒色箔状粘着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−060435号公報
【特許文献2】特開2013−032430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、基材または粘着剤を着色することにより得られる黒色粘着シートが知られているが、このような粘着シートは黒枠を備える透明部材やそのディスプレイ面との貼合が想定されておらず、黒枠を備える透明部材やそのディスプレイ面と粘着シートを貼合した際の意匠性、特にディスプレイが消灯状態の場合(電源オフ時)の黒枠との一体感については検討がなされていなかった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、黒枠を備える透明部材の黒枠との一体感に優れる粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、アクリル重合体を含む粘着シートに着色剤として金属酸化物を配合し、かつ、粘着シートのL表色系におけるL値、a値およびb値が所定の関係を満たすように制御することにより、上記課題を解決できる粘着シートが得られることを見出した。
具体的に、本発明の構成および好ましい構成は、以下の構成である。
【0009】
[1] アクリル重合体および着色剤を含む粘着シートであって、
着色剤が金属酸化物であり、
粘着シートが黒枠を備える透明部材貼合用であり、
粘着シートは、JIS Z8781−4:2013で規定されるL表色系におけるL値が60以上90未満であり、a値が0未満であり、かつb値が0未満である、粘着シート。
[2] 着色剤が、金属種類が銅、鉄、マンガンおよびチタンからなる群から選択される1種以上を含む金属酸化物を、少なくとも1種類含む、[1]に記載の粘着シート。
[3] アクリル重合体および着色剤を含む粘着シートであって、
着色剤が、金属種類が銅、鉄、マンガンおよびチタンからなる群から選択される1種以上を含む金属酸化物を少なくとも1種類含み、
粘着シートが黒枠を備える透明部材貼合用であり、
粘着シートは、JIS Z8781−4:2013で規定されるL表色系におけるL値が60以上90未満であり、a値が0未満である、粘着シート。
[4] 着色剤が、黒色の金属酸化物である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の粘着シート。
[5] アクリル重合体および着色剤を含む粘着シートであって、
着色剤が黒色の金属酸化物であり、
粘着シートが黒枠を備える透明部材貼合用であり、
粘着シートは、JIS Z8781−4:2013で規定されるL表色系におけるL値が60以上90未満であり、a値が−10.0以上0未満である、粘着シート。
[6] 粘着シートは、a値が−3.0以上−0.2未満であり、かつb値が−20.0以上0未満である、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の粘着シート。
[7] アクリル重合体が、架橋性官能基を有するアクリル単量体単位を含有する、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の粘着シート。
[8] さらに架橋剤を含む、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の粘着シート。
[9] さらに紫外線吸収剤を含む、[1]〜[8]のいずれか1項に記載の粘着シート。
[10] 下記式1で表されるC値が9〜15である、[1]〜[9]のいずれか1項に記載の粘着シート。
式1:
C=0.13×L−b
[11] C値が11〜13である、[10]に記載の粘着シート。
[12] アクリル重合体および着色剤を含む粘着シートの製造方法であって、
着色剤が金属酸化物であり、
粘着シートが黒枠を備える透明部材貼合用であり、
JIS Z8781−4:2013で規定されるL表色系におけるL値が60以上90未満であり、a値が0未満であり、かつb値が0未満である粘着シートを選別する工程;
着色剤が、金属種類が銅、鉄、マンガンおよびチタンからなる群から選択される1種以上を含む金属酸化物を少なくとも1種類含み、かつL値が60以上90未満であり、a値が0未満である粘着シートを選別する工程;および
値が60以上90未満であり、a値が−3.0以上0未満である粘着シートを選別する工程;
のうちいずれかの工程を含む、粘着シートの製造方法。
[13] 粘着シートは、下記式1で表されるC値が9〜15である、[12]に記載の粘着シートの製造方法。
式1:
C=0.13×L−b
[14] アクリル重合体および着色剤を含む粘着シート用の着色剤を選択する方法であって、
着色剤が金属酸化物であり、
粘着シートが黒枠を備える透明部材貼合用であり、
アクリル重合体および着色剤を用いて粘着シートを製造する場合に、
粘着シートのJIS Z8781−4:2013で規定されるL表色系におけるL値が60以上90未満であり、a値が0未満であり、かつb値が0未満となる着色剤を選択する工程;
金属種類が銅、鉄、マンガンおよびチタンからなる群から選択される1種以上を含む金属酸化物を少なくとも1種類含み、かつ粘着シートのL値が60以上90未満であり、a値が0未満となる着色剤を選択する工程;および
値が60以上90未満であり、a値が−3.0以上0未満となる着色剤を選択する工程;
のうちいずれかの工程を含む、着色剤を選択する方法。
[15] 粘着シートは、下記式1で表されるC値が9〜15である、[14]に記載の着色剤を選択する方法。
式1:
C=0.13×L−b
【0010】
[101] アクリル重合体および着色剤を含む粘着シートであって、
着色剤が金属酸化物であり、
粘着シートが黒枠を備える透明部材貼合用であり、
粘着シートは、JIS Z8781−4:2013で規定されるL表色系におけるL値が60以上90未満であり、a値が0未満であり、かつ下記式1で表されるC値が9〜15である、粘着シート。
式1:
C=0.13×L−b
[102] アクリル重合体が、架橋性官能基を有するアクリル単量体単位を含有する[101]に記載の粘着シート。
[103] さらに架橋剤を含む[101]または[102]に記載の粘着シート。
[104] さらに紫外線吸収剤を含む[101]〜[103]のいずれか1項に記載の粘着シート。
[105] C値が11〜13である[101]〜[104]のいずれか1項に記載の粘着シート。
[106] 着色剤が、金属種類が銅、鉄およびマンガンからなる群から選択される1種以上を含む金属酸化物を、少なくとも1種類含む[101]〜[105]のいずれか1項に記載の粘着シート。
[107] アクリル重合体および着色剤を含む粘着シートの製造方法であって、
着色剤が金属酸化物であり、
粘着シートが黒枠を備える透明部材貼合用であり、
JIS Z8781−4:2013で規定されるL表色系におけるL値が60以上90未満であり、a値が0未満であり、かつ下記式1で表されるC値が9〜15である粘着シートを選別する工程を含む、粘着シートの製造方法。
式1:
C=0.13×L−b
[108] アクリル重合体および着色剤を含む粘着シート用の着色剤を選択する方法であって、
着色剤が金属酸化物であり、
粘着シートが黒枠を備える透明部材貼合用であり、
アクリル重合体および着色剤を用いて粘着シートを製造する場合に、粘着シートのJIS Z8781−4:2013で規定されるL表色系におけるL値が60以上90未満であり、a値が0未満であり、かつ下記式1で表されるC値が9〜15となる着色剤を選択する工程を含む、着色剤を選択する方法。
式1:
C=0.13×L−b
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、黒枠を備える透明部材の黒枠との一体感に優れる粘着シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、剥離シートを有する粘着シートの断面を表す概略図である。
図2図2は、C値が下限値9である場合に式1をLとbとの関係式に変換した式1Aと、C値が上限値15である場合に式1をLとbとの関係式に変換した式1Bと、各実施例および比較例で得られたプロットとをまとめたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
[粘着シート]
本発明の粘着シートの第1の態様は、アクリル重合体および着色剤を含む粘着シートであって、
着色剤が金属酸化物であり、
粘着シートが黒枠を備える透明部材貼合用であり、
粘着シートは、JIS Z8781−4:2013で規定されるL表色系におけるL値が60以上90未満であり、a値が0未満であり、かつb値が0未満である。
本発明の粘着シートの第2の態様は、アクリル重合体および着色剤を含む粘着シートであって、
着色剤が、金属種類が銅、鉄、マンガンおよびチタンからなる群から選択される1種以上を含む金属酸化物を少なくとも1種類含み、
粘着シートが黒枠を備える透明部材貼合用であり、
粘着シートは、JIS Z8781−4:2013で規定されるL表色系におけるL値が60以上90未満であり、a値が0未満である。
本発明の粘着シートの第3の態様は、アクリル重合体および着色剤を含む粘着シートであって、
着色剤が黒色の金属酸化物であり、
粘着シートが黒枠を備える透明部材貼合用であり、
粘着シートは、JIS Z8781−4:2013で規定されるL表色系におけるL値が60以上90未満であり、a値が−3.0以上0未満である。
本発明の粘着シートは、上記構成を有するものであるため、黒枠を備える透明部材の黒枠との一体感に優れる。黒画面を表示している状態または表示していない消灯状態のディスプレイにおいて、本発明の粘着シートを貼合することでディスプレイの黒色度合いが高まるため、ディスプレイ面の周囲に黒枠を備える透明部材との一体感が強調される。
【0015】
<粘着シートの特性>
本発明の粘着シートは、JIS Z8781−4:2013で規定されるL*a*b*表色系におけるL値が60以上90未満である。L値は65以上であることが好ましく、70以上がより好ましい。L値は85以下であることが好ましく、80以下がより好ましい。粘着シートのL値を上記範囲内とすることにより、ディスプレイ等の黒発色度合いをより効果的に高められる。粘着シートは、黒画面を表示したディスプレイ等に貼合した場合に、その意匠性を高められることが好ましい。具体的には、粘着シートを、黒画面を表示したディスプレイに貼合した場合に、ディスプレイの黒発色度合い(黒色度合いの好ましさ)を高められる。その結果、黒枠を備える透明部材との一体感を高められる。さらに、黒枠を備える透明部材の意匠性を高められることが好ましい。粘着シートのL値は、着色剤の種類や量を制御したり、粘着シートの厚みを制御したりすることにより、制御することが好ましい。
【0016】
本発明の粘着シートは、JIS Z8781−4:2013で規定されるL*a*b*表色系におけるa値が0未満であることが好ましく、−0.2未満であることがより好ましく、−0.4以下であることが特に好ましい。a値は−10.0以上であることが好ましく、−3.0以上であることがより好ましく、−2.0以上であることが特に好ましく、−1.0以上であることがより特に好ましい。粘着シートのa値を上記範囲内とすることにより、黒枠を備える透明部材との一体感を高められる。
本発明の粘着シートは、JIS Z8781−4:2013で規定されるL*a*b*表色系におけるb値は−20.0以上であることが好ましく、−10.0以上であることがより好ましく、−5.0以上であることが特に好ましい。b値は0未満であることが好ましく、−0.4以下であることがより好ましい。粘着シートのb値を上記範囲内とすることにより、黒枠を備える透明部材との一体感を高められる。粘着シートのa値およびb値は、着色剤の種類や量を制御したり、紫外線吸収剤の種類や量を制御したりすることにより、制御することが好ましい。
【0017】
本発明の粘着シートは、下記式1で表されるC値が9〜15であることが好ましい。C値は10以上であることがより好ましく、11以上であることが特に好ましい。C値は14以下であることがより好ましく、13以下であることが特に好ましい。粘着シートのC値を上記範囲内とすることにより、黒枠を備える透明部材との一体感を高められる。粘着シートのC値は、着色剤の種類を制御したり、紫外線吸収剤の種類を制御したりすることにより、制御することが好ましい。
式1:
C=0.13×L−b
【0018】
粘着シートの厚みは、1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。また、粘着シートの厚みは、5000μm以下であることが好ましく、3000μm以下であることがより好ましく、1000μm以下であることがさらに好ましい。粘着シートの厚みを上記上限値以下にすることで、端部からの水蒸気侵入を防いで耐久性を高めたりできる。一方、粘着シートの厚みを上記下限値以上にすることで、粘着シートの取り扱いを容易したり、薄膜化が求められる光学部材貼合用として用いやすくしたりできる。
【0019】
<粘着シートの構成>
本発明の粘着シートは、単層の粘着シートであってもよい。また、粘着シートは、片面に基材(好ましくは透明基材)を備えた片面粘着シートでも、両面粘着シートでもよい。両面粘着シートとしては、粘着剤層からなる単層の粘着シート、粘着剤層を複数積層した多層の粘着シート、粘着剤層と粘着剤層の間に他の粘着剤層を積層した多層の粘着シート、粘着剤層と粘着剤層の間に支持体を積層した多層の粘着シート、支持体の片面に粘着剤層が積層し、他方の面に他の粘着剤層が積層した多層の粘着シートが挙げられる。両面粘着シートが支持体を有する場合、支持体として透明な支持体を用いたものが好ましい。支持体としては、透明基材と同様に光学分野に用いられる一般的なフィルムを用いることができる。このような両面粘着シートは、粘着シート全体としての透明性にも優れることから、光学部材同士の接着に好適に用いることができる。
【0020】
図1に示されるように、本発明は、粘着シート11の両表面に剥離シート12a及び剥離シート12bを備える剥離シート付き粘着シートに関するものであってもよい。剥離シートとしては、剥離シート用基材とこの剥離シート用基材の片面に設けられた剥離層とを有する剥離性積層シート、あるいは、低極性基材としてポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。
【0021】
剥離性積層シートにおける剥離シート用基材には、紙類、高分子フィルムが使用される。光学用途では異物の混入を防ぐため、高分子フィルムが好ましく用いられる。剥離層を構成する剥離剤としては、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。特に、反応性が高い付加型シリコーン系剥離剤が好ましく用いられる。
シリコーン系剥離剤としては、具体的には、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24−4527、SD−7220等や、信越化学工業(株)製のKS−3600、KS−774、X62−2600などが挙げられる。また、シリコーン系剥離剤中にSiO単位と(CHSiO1/2単位あるいはCH=CH(CH)SiO1/2単位を有する有機珪素化合物であるシリコーンレジンを含有することが好ましい。シリコーンレジンの具体例としては、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24−843、SD−7292、SHR−1404等や、信越化学工業(株)製のKS−3800、X92−183等が挙げられる。
剥離性積層シートとして、市販品を用いてもよい。例えば、三菱ケミカル(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである重セパレータフィルムや、三菱ケミカル(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである軽セパレータフィルムを挙げることができる。
【0022】
本発明の粘着シートが両面粘着シートの場合は、剥離力が互いに異なる1対の剥離シートを有することが好ましい。すなわち、剥離シートは、剥離しやすくするために、一方の剥離シートと他方の剥離シートの剥離性を異なるものとすることが好ましい。一方からの剥離性と他方からの剥離性とが異なると、剥離性が高い方の剥離シートだけを先に剥離することが容易となる。
【0023】
<粘着シートの組成>
(アクリル重合体)
アクリル重合体は、アクリル単量体単位を有するものであれば特に制限はないが、アクリル共重合体であることが好ましい。アクリル共重合体としては、例えば、非架橋性(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)と、架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)を含有するものであることが好ましい。なお、本明細書および特許請求の範囲において、「単位」は重合体を構成する繰り返し単位(単量体単位)である。また、アクリル重合体は、(メタ)アクリル重合体を意味し、すなわちメタクリル重合体も含む。
【0024】
非架橋性(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する繰り返し単位であることが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸n−ウンデシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらは1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、粘着性が高くなることから、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルから選ばれる少なくとも1種類が好ましい。
【0025】
架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)は、カルボキシ基含有単量体単位、ヒドロキシ基含有単量体単位、アミノ基含有単量体単位及びグリシジル基含有単量体単位から選択される少なくとも1種類であることが好ましく、ヒドロキシ基含有単量体単位、アミノ基含有単量体単位及びグリシジル基含有単量体単位から選択される少なくとも1種類であることがより好ましい。すなわち、アクリル重合体は、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、グリシジル基およびイソシアネート基から選択される少なくとも1種類の架橋性官能基を有することが好ましく、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、グリシジル基およびイソシアネート基から選択される少なくとも1種類の架橋性官能基を有することがより好ましい。
カルボキシ基含有単量体単位としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
ヒドロキシ基含有単量体単位は、ヒドロキシ基含有単量体に由来する繰り返し単位である。ヒドロキシ基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸モノ(ジエチレングリコール)などの(メタ)アクリル酸[(モノ、ジ又はポリ)アルキレングリコール]、(メタ)アクリル酸モノカプロラクトンなどの(メタ)アクリル酸ラクトンが挙げられる。
アミノ基含有単量体単位としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、アリルアミン等のアミノ基含有単量体に由来する繰り返し単位が挙げられる。
グリシジル基含有単量体単位としては、(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有単量体に由来する繰り返し単位が挙げられる。
【0026】
アクリル重合体における架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)の含有量は0.01〜40質量%であることが好ましく、0.5〜35質量%であることがより好ましい。架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)の含有量を上記範囲内とすることにより、アクリル重合体の架橋性と粘着性をコントロールしやすくなる。
【0027】
アクリル重合体は、アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートに由来する単位をさらに含んでもよい。アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートは、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートである。アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルコキシ基の炭素数が1〜12であり、アルコキシ基に結合するアルキレン基の炭素数が1〜18であるアルコキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。アルコキシ基の炭素数は1〜8であることが好ましく、1〜4であることがより好ましく、1もしくは2であることが特に好ましい。また、アルコキシ基に結合するアルキレン基の炭素数は1〜12であることが好ましく、1〜8であることがさらに好ましく、1〜4であることが一層好ましく、1〜3であることが特に好ましい。
【0028】
このようなアルコキシアルキル(メタ)アクリレートの例としては、2−メトキシメチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシメチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、4−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−エトキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
アクリル重合体は、窒素含有単量体に由来する単位をさらに含んでもよい。窒素含有単量体は、1分子内に窒素元素を含有する単量体である。窒素含有単量体としては、例えば、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチルアクリルアミド、メチロールアクリルアミド、メトキシメチルアクリルアミド、エトキシメチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルホルムアミド等を挙げることができる。中でも、窒素含有単量体は、アクリルアミド誘導体、アミノ基含有モノマー及び含窒素複素環含有モノマーから選択される少なくとも1種類であることが好ましく、アクリルアミド誘導体であることがより好ましい。アクリルアミド誘導体は、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド及びアクリロイルモルホリンから選択される少なくとも1種類であることがさらに好ましく、ジエチルアクリルアミドであることが特に好ましい。
【0030】
アクリル重合体は、必要に応じて、他の単量体単位を有してもよい。他の単量体は、上述したアクリル単量体と共重合可能なものであればよく、例えば(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン等が挙げられる。アクリル重合体における他の単量体単位の含有量は20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
【0031】
アクリル重合体の酸価は、50mgKOH/g以下であることが好ましく、40mgKOH/g以下であることがより好ましく、30mgKOH/g以下であることがさらに好ましく、20mgKOH/g以下であることが一層好ましく、10mgKOH/g以下であることがより一層好ましく、5mgKOH/g以下であることが特に好ましい。なお、アクリル重合体の酸価は、0mgKOH/gであってもよい。アクリル重合体の酸価を上記範囲内とすることにより、粘着シートの色抜け性を効果的に抑制することができる。具体的には、アクリル重合体の酸価を上記範囲内とすることにより、粘着シートを高温高湿条件下に長時間置いた場合であっても、全光線透過率の上昇を抑制することができる。粘着シートを85℃、相対湿度85%環境下に240時間置く前後の全光線透過率を測定し、その値から算出した全光線透過率の変化量は10%未満であることが好ましい。さらに、粘着シートを85℃、相対湿度85%環境下に240時間置いた後の全光線透過率は、85%未満であることが好ましい。なお、全光線透過率の変化量は、以下の式で算出される。
変化量(%)=(処理前のサンプルの全光線透過率)−(処理後のサンプルの全光線透過率)
【0032】
アクリル重合体の酸価は、JIS K 0070(1992)に準拠して測定される。具体的には、まず、精密天秤で100ml三角フラスコに試料約2g程度を精秤し、これにエタノール/ジエチルエーテル=1/1(重量比)の混合溶媒10mlを加えて溶解する。更に、この容器に指示薬としてフェノールフタレインエタノール溶液を1〜3滴添加し、試料が均一になるまで充分に撹拌する。これを、0.1N水酸化カリウム−エタノール溶液で滴定し、指示薬のうすい紅色が30秒間続いたときを、中和の終点とする。その結果から下記の計算式(1)を用いて得た値を、試料の酸価とする。
酸価(mgKOH/g)=[B×f×5.611]/S (1)
計算式(1)中、Bは、0.1N水酸化カリウム−エタノール溶液の使用量(ml)であり、fは、0.1N水酸化カリウム−エタノール溶液のファクターであり、Sは、試料の採取量(g)である。
【0033】
アクリル重合体の重量平均分子量は、10万〜200万が好ましく、20万〜150万がより好ましい。なお、アクリル重合体の重量平均分子量は後述する架橋剤で架橋される前の値である。重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定し、ポリスチレン基準で求めた値である。アクリル重合体としては、市販のものを用いてもよく、公知の方法により合成したものを用いてもよい。
アクリル重合体の溶液粘度は、35質量%溶液の23℃における溶液粘度として1,000〜10,000mPa・sであることが好ましく、1,500〜8,000mPa・sであることがより好ましい。
【0034】
(着色剤)
本発明の粘着シートは、着色剤を含む。着色剤は、金属酸化物である。
着色剤として、金属酸化物を用いることにより、黒枠との一体感、意匠性、粘着シートの視認性をより効果的に高めることができる。また、染料を用いる場合と比較して、金属酸化物を用いる場合は粘着シートを製造する際の架橋反応を阻害しにくく、耐色抜け性にも優れる。
【0035】
金属酸化物としては、黒色顔料であることが好ましい。金属酸化物としては、酸化銅、四三酸化鉄、二酸化マンガン、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸鉄、銅−クロム酸化物、銅−マンガン酸化物、銅−鉄−マンガン酸化物、銅−クロム−マンガン酸化物または銅−鉄−クロム酸化物、チタン酸窒化物やチタン酸化物などのチタンブラック等を挙げることができる。なお、本明細書中、金属酸窒化物は金属酸化物に含まれる。中でも、着色剤は、金属種類が銅、鉄、マンガンおよびチタンからなる群から選択される1種以上を含む金属酸化物を少なくとも1種類含むことがより好ましく、銅、鉄及びマンガンからなる群から選択される1種以上を含む金属酸化物を、少なくとも1種類含むことが特に好ましい。金属種類とは、金属酸化物を構成する金属イオンを意味する。着色剤として上記種類を選択することで、着色安定性が良好となる。金属種類は単数または複数(単独酸化物または複合酸化物)であってもよい。
着色剤として、金属酸化物を1種類のみ単独で用いてもよく、2種類以上の混合物として用いてもよい。
【0036】
着色剤は微粒子であることが好ましい。着色剤の一次平均粒子径は0.01μm以上であることが好ましい。また、着色剤の一次平均粒子径は5μm未満であることが好ましく、3μm未満であることがより好ましく、1μm未満であることがさらに好ましく、0.5μm未満であることが特に好ましい。着色剤の一次平均粒子径を上記範囲内とすることにより、粘着シートの視認性をより効果的に高めることができる。
【0037】
粘着シート中の着色剤の単位面積当たりの含有量は、0.03〜0.25g/mであることが好ましく、0.05〜0.20g/mであることがより好ましく、0.10〜0.18g/mであることが特に好ましい。
粘着シートの粘着剤層厚みに関わらず、単位面積当たりに上記の範囲に着色剤が含まれるように調整すれば視認性や黒枠を備える透明部材の黒枠との一体感を高めることができる。
【0038】
なお、着色剤は、分散樹脂に分散した状態で、アクリル重合体と混合されることが好ましい。分散樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂等を挙げることができる。
【0039】
(架橋剤)
本発明の粘着シートは、架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤は、アクリル重合体が有する架橋性官能基との反応性を考慮して適宜選択できる。例えばイソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物などの公知の架橋剤の中から選択できる。これらの中でも、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを容易に架橋できることから、イソシアネート化合物やエポキシ化合物を用いることが好ましい。すなわち、架橋剤は二官能以上のエポキシ化合物および二官能以上のイソシアネート化合物から選択される少なくとも1種類であることが好ましく、二官能以上のイソシアネート化合物であることがより好ましい。
【0040】
イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。市販品の例としては、トリレンジイソシアネート化合物(東ソー(株)製、コロネートL)、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物(東ソー(株)製、コロネートL−55E)、キシリレンジイソシアネート化合物(三井化学(株)製、タケネートD−110N)等が挙げられる。
エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラグリシジルキシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
市販品の例としては、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン(またはN,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ベンゼンジ(メタンアミン);三菱ガス化学(株)製、TETRAD−X)、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学(株)製、TETRAD−C)等が挙げられる。
【0041】
粘着シート中の架橋剤の含有量は、所望とする粘着性等に応じて適宜選択されるが、アクリル重合体100質量部に対し、0.01〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。架橋剤の含有量を上記範囲内とすることにより、粘着シートの加工性をより高めることができる。なお、架橋剤としては1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよく、2種類以上を併用する場合は、合計質量が上記範囲内であることが好ましい。
【0042】
(紫外線吸収剤)
本発明の粘着シートは、紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、黒枠との一体感、意匠性およびそれらの耐光性(耐色抜け性)を考慮して適宜選択できる。例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物、ヒンダードアミン系化合物(光安定剤)などの公知の紫外線吸収剤の中から選択できる。これらの中でも、紫外線の長波長部(UV−A領域)を強く吸収できる観点から、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物を用いることが好ましい。
【0043】
トリアジン系化合物としては、例えば、ヒドロキシフェニルトリアジン等が挙げられる。市販品の例としては、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物(BASFジャパン株式会社製、Tinuvin 477)等が挙げられる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。市販品の例としては、Benzenepropanoic acid, 3−(2H−benzotriazol−2−yl)−5−(1,1−dimethylethyl)−4−hydroxy−,C7−9 −branched and linear alkyl esters(BASFジャパン株式会社製、Tinuvin 384−2)等が挙げられる。
【0044】
粘着シート中の紫外線吸収剤の含有量は、所望とする耐光性(耐色抜け性)等に応じて適宜選択されるが、アクリル重合体100質量部に対し、0.01〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。紫外線吸収剤の含有量を上記範囲内とすることにより、粘着シートの加工性をより高めることができる。なお、紫外線吸収剤としては1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよく、2種類以上を併用する場合は、合計質量が上記範囲内であることが好ましい。
【0045】
(溶剤)
本発明の粘着シートを形成するための粘着剤組成物は、溶剤を含んでいてもよい。この場合、溶剤は、粘着剤組成物の塗工適性の向上のために用いられる。溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酪酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のポリオール及びその誘導体が挙げられる。
【0046】
粘着剤組成物中の溶剤の含有量は、特に限定されないが、アクリル重合体100質量部に対し、25〜500質量部が好ましく、30〜400質量部がより好ましい。
また、溶剤の含有量は、粘着剤組成物の全質量に対し、10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。溶剤は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよく、2種類以上を併用する場合は、合計質量が上記範囲内であることが好ましい。
【0047】
(他の成分)
粘着シートは、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、粘着剤用の添加剤として公知の成分を挙げることができる。例えば可塑剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、酸捕捉剤等の中から必要に応じて選択できる。
可塑剤としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニルのようなカルボン酸ビニルエステル類やスチレン等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これら酸化防止剤は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
金属腐食防止剤としては、粘着剤の相溶性や効果の高さから、ベンゾリアゾール系樹脂を好ましい例として挙げることができる。
粘着付与剤として、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油樹脂などが挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、メルカプトアルコキシシラン化合物(例えば、メルカプト基置換アルコキシオリゴマー等)などが挙げられる。
【0048】
<粘着シートの用途>
本発明の粘着シートは、黒枠を備える透明部材を貼合する用途に用いられる。ただし、透明部材の一部に黒色部があれば、その黒色部を黒枠とする。すなわち、黒枠は透明部材の全周を囲うものに限定されない。
黒枠を備える透明部材としては、建造物の窓、車両のサイドガラスといった部材や、タッチパネルや画像表示装置等の光学部材を挙げることができる。中でも、本発明の粘着シートは光学部材貼合用であることが好ましい。黒枠を備える光学部材としては、スマートフォン、テレビ、車載用ディスプレイが挙げられ、特に車載用のディスプレイであることが好ましい。車載用ディスプレイとしては、カーナビゲーションシステム;ヘッドアップディスプレイ(HUD);バックモニター、サイドミラー用ディスプレイ、リアビューミラー、その他のルームミラーディスプレイ;センターインフォメーションディスプレイ(CID)、インストルメントパネル、マルチインフォメーションディスプレイ、デジタルメーター類、その他の機能用ディスプレイ;オンダッシュモニター、ヘッドレストモニター、サンバイザーモニター、その他の設置型ディスプレイ;リアシートエンターテイメント(RSE)、その他のエンターテイメント用ディスプレイなどを挙げることができる。
本発明の粘着シートは光学部材貼合用である場合、粘着シートは、光学製品における各構成部材や最表層のカバーレンズに貼合される飛散防止フィルム等に貼合する用途として用いられることが好ましく、中でも、タッチパネルに貼合する用途として用いられることが特に好ましい。黒枠を備えるタッチパネルとしては、特にカーナビゲーションシステムやCIDのタッチパネル式のディスプレイを挙げることができる。
タッチパネルの構成部材としては、例えば透明樹脂フィルムにITO膜が設けられたITOフィルム、ガラス板の表面にITO膜が設けられたITOガラス、透明樹脂フィルムに導電性ポリマーをコーティングした透明導電性フィルム、ハードコートフィルム、耐指紋性フィルムなどが挙げられる。画像表示装置の構成部材としては、例えば液晶表示装置に用いられる反射防止フィルム、配向フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルムなどが挙げられる。
これらの部材に用いられる材料としては、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリイミド、セルロースアシレートなどが挙げられる。
【0049】
[粘着シートの製造方法]
本発明の粘着シートを製造する方法としては、特に制限はない。
【0050】
<粘着剤組成物を塗工して塗膜を形成する工程>
粘着シートの製造方法は、剥離シート上に粘着剤組成物を塗工して塗膜を形成する工程を含むことが好ましい。
粘着剤組成物の塗工は、公知の塗工装置を用いて実施できる。塗工装置としては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。
【0051】
<塗膜を加熱する工程>
粘着シートの製造方法は、塗膜を加熱する工程を含むことが好ましい。この場合、粘着剤組成物を塗工して形成される塗膜の加熱には、加熱炉、赤外線ランプ等の公知の加熱装置を用いることができる。塗膜を加熱した後には、一定温度で一定期間粘着シートを静置するエージング処理を施してもよい。エージング処理は例えば、23℃で7日間静置して行うことができる。
【0052】
本発明は、上述した粘着シートと透明部材を有する積層体、及び上述した粘着シートと透明部材を有する積層体の製造方法に関するものであってもよい。積層体を製造する場合、粘着シートを透明部材に貼合する工程を含む。
【0053】
<粘着シートを選別する工程>
本発明の粘着シートの製造方法は、粘着シートを選別する工程を含むことが好ましい。具体的には、本発明の粘着シートの製造方法は、アクリル重合体および着色剤を含む粘着シートの製造方法であって、着色剤が金属酸化物であり、粘着シートが黒枠を備える透明部材貼合用であり、JIS Z8781−4:2013で規定されるL表色系におけるL値が60以上90未満であり、a値が0未満であり、かつb値が0未満である粘着シートを選別する工程;
着色剤が、金属種類が銅、鉄、マンガンおよびチタンからなる群から選択される1種以上を含む金属酸化物を少なくとも1種類含み、かつL値が60以上90未満であり、a値が0未満である粘着シートを選別する工程;および
値が60以上90未満であり、a値が−3.0以上0未満である粘着シートを選別する工程;
のうちいずれかの工程を含むことが好ましい。
粘着シートを選別する工程では、選別される粘着シートは、下記式1で表されるC値が9〜15であることがより好ましい。
C=0.13×L−b
粘着シートを選別する工程としては、特に制限はない。例えば、上記の方法で製造した粘着シートの状態または粘着シートと透明部材を有する積層体の状態のサンプルのL値、a値およびb値を測定してC値を計算し、各値の範囲内のサンプルのみを本発明の粘着シートとして選別し、残りの各値の範囲を外れる不良品を除くことができる。
また、市販の粘着シートをサンプルとし、サンプルのL値、a値およびb値を測定してC値を計算し、各値の範囲内のサンプルのみを本発明の粘着シートとして選別し、残りの各値の範囲を外れる不良品を除くことができる。
その他、市販の粘着剤組成物に対し、上述の方法で粘着シートの状態または粘着シートと透明部材を有する積層体の状態としたものをサンプルとし、サンプルのL値、a値およびb値を測定してC値を計算し、各値の範囲内のサンプルのみを本発明の粘着シートとして選別し、残りの各値の範囲を外れる不良品を除くことができる。この場合、各値の範囲を外れる不良品が多数製造される場合は、市販の粘着剤組成物に対して上記の好ましい着色剤を追加するなどして粘着剤組成物の組成を調節する工程をさらに行って、粘着シートを製造することが好ましい。
【0054】
[着色剤を選択する方法]
本発明の着色剤を選択する方法は、アクリル重合体および着色剤を含む粘着シート用の着色剤を選択する方法であって、着色剤が金属酸化物であり、粘着シートが黒枠を備える透明部材貼合用であり、アクリル重合体および着色剤を用いて粘着シートを製造する場合に、粘着シートのJIS Z8781−4:2013で規定されるL表色系におけるL値が60以上90未満であり、a値が0未満であり、かつb値が0未満となる着色剤を選択する工程;
金属種類が銅、鉄、マンガンおよびチタンからなる群から選択される1種以上を含む金属酸化物を少なくとも1種類含み、かつ粘着シートのL値が60以上90未満であり、a値が0未満となる着色剤を選択する工程;および
値が60以上90未満であり、a値が−3.0以上0未満となる着色剤を選択する工程;
のうちいずれかの工程を含む。
着色剤を選択する工程では、粘着シートは、下記式1で表されるC値が9〜15であることがより好ましい。
C=0.13×L−b
着色剤を選択する工程としては特に制限はない。例えば、任意の着色剤に対して上記の好ましいアクリル重合体を追加するなどして粘着剤組成物を調製し、粘着シートを製造して、上記の方法で製造した粘着シートの状態または粘着シートと透明部材を有する積層体の状態のサンプルのL値、a値およびb値を測定してC値を計算し、各値の範囲内のサンプルが得られるか否かを確認することができる。特に、b値およびC値は、着色剤の種類によって大きく変動するため、このような着色剤を選択する工程によって、本発明の粘着シートを製造しやすい着色剤を選択することができる。
【実施例】
【0055】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0056】
[実施例1]
<アクリル重合体Aの合成>
アクリル重合体Aを、酢酸エチル中での溶液重合により作製した。ブチルアクリレート(BA)及び2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)を質量比で70:30となるように配合し、ラジカル重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を溶液へ溶解した。溶液を60℃に加熱してランダム共重合させ、アクリル重合体Aを得た。このアクリル重合体Aの35質量%溶液の23℃における溶液粘度は6,400mPa・sであった。また、アクリル重合体Aの酸価は0.0mgKOH/gであった。
【0057】
<粘着剤組成物の調製>
アクリル重合体A、イソシアネート架橋剤(トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート付加物の酢酸エチル溶液、東ソー(株)製、コロネートL−55E)、MO着色剤(銅、鉄、マンガン系酸化物である金属酸化物、大日精化工業(株)製、TMブラック3550)、紫外線吸収剤C(ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、BASFジャパン株式会社製、Tinuvin 477)、紫外線吸収剤D(ベンゾトリアゾール系化合物、BASFジャパン株式会社製、Tinuvin 384−2)および溶剤(酢酸エチル)を混合することで、アクリル重合体A100質量部に対して、架橋剤が0.5質量部、着色剤が0.06質量部、紫外線吸収剤が合計2.00質量部含まれ、固形分濃度が30質量%の粘着剤組成物を得た。
【0058】
<粘着シートの調製>
上記粘着剤組成物を、第1の剥離シート(重セパレータフィルム、三菱ケミカル(株)製、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム)上へ塗工した。塗工は、ヨシミツ精機株式会社製、ドクターブレードYD型を用いて、乾燥後の厚みが100μmとなるように行った。その後、熱風乾燥機にて100℃で3分間乾燥させて溶剤を除去し、粘着剤層を有する粘着シートを形成した。
この粘着シートの片面に第1の剥離シートより剥離性の高い離型処理が施された第2の剥離シート(軽セパレータフィルム、三菱ケミカル(株)製)を貼り合わせ、剥離シート付きの粘着シートである実施例1の粘着シートを得た。実施例1の粘着シートでは、粘着剤層に含まれるMO着色剤の単位面積当たりの含有量は、0.06g/mである。なお、その他の各実施例および比較例の粘着シートでは、粘着剤層に含まれるMO着色剤の単位面積当たりの含有量は、粘着剤組成物中のMO着色剤の配合量および乾燥後の粘着剤シートの厚みに比例する。
【0059】
[実施例2]
MO着色剤の含有量が0.17質量部となるように着色剤の配合量を変更し、乾燥後の粘着シートの厚みが50μmとなるように変更した以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物及び剥離シート付きの粘着シートを得た。
【0060】
[実施例3]
MO着色剤の含有量が0.17質量部となるように着色剤の配合量を変更した以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物及び剥離シート付きの粘着シートを得た。
【0061】
[実施例4]
乾燥後の粘着シートの厚みが250μmとなるように変更した以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物及び剥離シート付きの粘着シートを得た。
【0062】
[実施例5]
アクリル重合体A、エポキシ架橋剤(N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ベンゼンジ(メタンアミン)、三菱ガス化学(株)製、TETRAD−X)、MO着色剤(銅、鉄、マンガン系酸化物である金属酸化物、大日精化工業(株)製、TMブラック3550)、紫外線吸収剤C(ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、BASFジャパン株式会社製、Tinuvin 477)、紫外線吸収剤D(ベンゾトリアゾール系化合物、BASFジャパン株式会社製、Tinuvin 384−2)および溶剤(酢酸エチル)を混合することで、アクリル重合体A100質量部に対して、架橋剤が0.5質量部、着色剤が0.23質量部、紫外線吸収剤が合計2.00質量部含まれ、固形分濃度が30質量%の粘着剤組成物を得た。このようにして得た粘着剤組成物を用いて実施例1と同様にして剥離シート付きの粘着シートを得た。
【0063】
[実施例6]
<アクリル重合体Bの合成>
アクリル重合体Bを、酢酸エチル中での溶液重合により作製した。2−メトキシエチルアクリレートモノマー(MEA)、2−ヒドロキシエチルアクリレートモノマー(2HEA)、メチルメタクリレート(MMA)、ジメチルアクリルアミド(DMAA)及びブチルアクリレート(BA)を質量比で70:10:10:5:5となるように配合し、ラジカル重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を溶液へ溶解した。溶液を60℃に加熱してランダム共重合させ、アクリル重合体Bを得た。このアクリル重合体Bの35質量%溶液の23℃における溶液粘度は2,000mPa・sであった。また、アクリル重合体Bの酸価は0.0mgKOH/gであった。
【0064】
<粘着剤組成物および粘着シートの調製>
アクリル重合体B、エポキシ架橋剤(N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ベンゼンジ(メタンアミン)、三菱ガス化学(株)製、TETRAD−X)、MO着色剤(銅、鉄、マンガン系酸化物である金属酸化物、大日精化工業(株)製、TMブラック3550)および溶剤(酢酸エチル)を混合することで、アクリル重合体B100質量部に対して、架橋剤が0.05質量部、着色剤が0.11質量部含まれ、固形分濃度が30質量%の粘着剤組成物を得た。このようにして得た粘着剤組成物を、乾燥後の厚みが50μmとなるように塗工した以外は実施例1と同様にして剥離シート付きの粘着シートを得た。
【0065】
[実施例7〜9]
MO着色剤の含有量が下記表1に記載の量となるように着色剤の配合量を変更し、乾燥後の粘着シートの厚みが下記表1に記載の厚みとなるようにした以外は実施例6と同様にして粘着剤組成物及び剥離シート付きの粘着シートを得た。
【0066】
[比較例1]
アクリル重合体A、エポキシ架橋剤(N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ベンゼンジ(メタンアミン)、三菱ガス化学(株)製、TETRAD−X)、CB着色剤(カーボンブラック、トーヨーカラー(株)製、マルチラック A 903 ブラック)および溶剤(酢酸エチル)を混合することで、アクリル重合体A100質量部に対して、架橋剤が1.1質量部含まれ、着色剤が0.14質量部含まれ、固形分濃度が30質量%の粘着剤組成物を得た。このようにして得た粘着剤組成物を用いて実施例1と同様にして剥離シート付きの粘着シートを得た。
【0067】
[比較例2]
CB着色剤の含有量が0.83質量部となるように着色剤の配合量を変更し、乾燥後の粘着シートの厚みが50μmとなるように変更した以外は比較例1と同様にして粘着剤組成物及び剥離シート付きの粘着シートを得た。
【0068】
[比較例3]
CB着色剤の含有量が0.28質量部となるように着色剤の配合量を変更し、乾燥後の粘着シートの厚みが250μmとなるように変更した以外は比較例1と同様にして粘着剤組成物及び剥離シート付きの粘着シートを得た。
【0069】
[実施例10]
<アクリル重合体Cの合成>
アクリル重合体Cを、酢酸エチル中での溶液重合により作製した。ブチルアクリレート(BA)、2エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)、エチルアクリレート(EA)、2ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)及びアクリル酸(AA)を質量比で85:5:4:4:2となるように配合し、ラジカル重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を溶液へ溶解した。溶液を60℃に加熱してランダム共重合させ、アクリル重合体Cを得た。このアクリル重合体Cの35質量%溶液の23℃における溶液粘度は3,650mPa・sであった。また、アクリル重合体Cの酸価は1.6mgKOH/gであった。
【0070】
<粘着剤組成物の調製>
アクリル重合体C、架橋剤(N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ベンゼンジ(メタンアミン)(三菱ガス化学(株)社製、TETRAD−X))、MO着色剤(御国色素(株)社製、酸化チタンであるMHIブラック#PD−367M)、2)および溶剤(酢酸エチル)を混合することで、アクリル重合体C100質量部に対して、架橋剤が0.1質量部、着色剤が1質量部含まれ、固形分濃度が30質量%の粘着剤組成物を得た。
【0071】
<粘着シートの調製>
上記粘着剤組成物を、第1の剥離シート(重セパレータフィルム、三菱ケミカル(株)製、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム)上へ塗工した。塗工は、ヨシミツ精機株式会社製、ドクターブレードYD型を用いて、乾燥後の厚みが25μmとなるように行った。その後、熱風乾燥機にて100℃で3分間乾燥させて溶剤を除去し、粘着剤層を有する粘着シートを形成した。
この粘着シートの片面に第1の剥離シートより剥離性の高い離型処理が施された第2の剥離シート(軽セパレータフィルム、三菱ケミカル(株)製)を貼り合わせ、剥離シート付きの粘着シートである実施例10の粘着シートを得た。実施例10の粘着シートでは、粘着剤層に含まれるMO着色剤の単位面積当たりの含有量は、0.25g/mである。
【0072】
[光学特性測定]
各実施例および比較例の粘着シートから、第2の剥離シートである軽剥離セパレーターを剥がして、剥がしたセパレーターの代わりにPETフィルム(東洋紡社製、コスモシャインA4300#100)をハンドローラーを用いて貼合し、積層フィルムを作製した。この積層フィルムを幅50mm、長さ50mmの大きさにカットし、第1の剥離シートを剥がした。次いで露出した粘着面をハンドローラーを用いてスライドガラス(松浪硝子社製、S9112)に貼り付けた。この状態で、40℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に30分間保持させてガラス板に密着させた。
得られた積層体サンプルについて、JIS Z8781−4:2013に準拠し、L表色系におけるL、aおよびbを測定した。また、下記式1で表されるC値を求めた。得られた結果を下記表1に記載した。
式1:
C=0.13×L−b
なお、用いたスライドガラスは無色透明であり、得られたL、aおよびbを粘着シートのL、aおよびbとして用いた。
【0073】
参考のため、C値が下限値9である場合に式1をLとbとの関係式に変換した下記式1Aと、C値が上限値15である場合に式1をLとbとの関係式に変換した下記式1Bと、各実施例および比較例で得られたプロットとを図2にまとめた。図2の横軸はLであり、縦軸はbである。
式1A:
=0.13×L−9
式1B:
=0.13×L−15
図2より、金属酸化物を用いた各実施例の粘着シートは、式1で表されるC値が9〜15を満たすことがわかる。
【0074】
[評価]
<黒枠との一体感>
光学特性測定と同様に積層体サンプルを作製し、黒画面を表示した状態、および消灯状態(電源オフ時)の黒枠を備えるディスプレイ上に乗せて評価した。得られた結果を下記表1に記載した。
○:何も乗せないときと比べて、よりディスプレイ周囲の黒枠との境界が目立ちにくくなり、一体感が高まった。
×:変化無し。またはディスプレイ周囲の黒枠との境界が目立ち一体感がない。
【0075】
<意匠性>
光学特性測定と同様に積層体サンプルを作製し、黒画面を表示した、黒枠を備えるディスプレイ上に乗せて評価した。得られた結果を下記表1に記載した。
○:何も乗せないときと比べてより黒く見えた。
×:変化無し。
【0076】
【表1】
【0077】
上記表1より、各実施例で得られた本発明の粘着シートは、黒枠を備える透明部材の黒枠との一体感に優れることがわかった。一方で、比較例で得られた粘着シートは、a値が(−3.0以上)0未満の範囲を外れ、b値が0未満の範囲を外れ、「金属種類が銅、鉄、マンガンおよびチタンからなる群から選択される1種以上を含む金属酸化物」である着色剤を含まないものであり、黒枠を備える透明部材の黒枠との一体感が劣るものであった。
【符号の説明】
【0078】
1 剥離シート付き粘着シート
11 粘着シート
12a 剥離シート
12b 剥離シート
図1
図2