(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るプレス装置を示す構成図である。
【0013】
本実施形態のプレス装置1は、
図1に示すように、サーボモータ11、減速装置13、クランク軸15、コネクティングロッド17、スライド19、ベッド21及び制御装置30を備える。クランク軸15は、軸受け16を介して回転自在に支持され、コネクティングロッド17は連結ピン18を介してスライド19に連結されている。スライド19はスライドガイド20によりスライドガイド20に沿って並進可能に支持されている。これらの構成のうち、サーボモータ11が、本発明に係る駆動装置の一例に相当し、減速装置13、クランク軸15、コネクティングロッド17及びスライド19が、本発明に係る動力伝達機構の一例に相当する。サーボモータ11と動力伝達機構とを合わせて駆動部10と記す。
【0014】
制御装置30には、サーボモータ11の駆動制御を行う駆動制御部32と、診断用の計測データを記憶する不揮発性の記憶部34と、診断処理を実行する診断制御部36と、警告表示及び画像表示が可能な表示部38とを備える。駆動制御部32及び診断制御部36は、例えばCPU(Central Processing Unit)が制御プログラムを実行することで実現される機能モジュールである。診断制御部36は、本発明に係る診断部の一例に相当する。
【0015】
さらに、プレス装置1は、各部の温度を計測する複数の温度センサ41と、動力伝達機構の振動を計測する複数の振動センサ43と、スライド19の位置を計測する位置センサ45と、サーボモータ11の電流を計測する電流センサ47とを備える。複数の温度センサ41は、例えば、サーボモータ11、減速装置13、軸受け16及び連結ピン18の軸受け等の温度、並びに、これらに供給された潤滑油の温度を計測する。電流センサ47は、サーボモータ11を駆動する駆動電流の例えば実効値を検出する。温度センサ41、振動センサ43、位置センサ45及び電流センサ47の各出力は診断制御部36へ送られる。温度センサ41、振動センサ43及び電流センサ47は、本発明に係る計測部の一例に相当する。
【0016】
このような構成のプレス装置1においては、スライド19及びベッド21に金型51が、52が保持され、金型51、52の間に被成形物がセットされる。そして、サーボモータ11が駆動されることで、減速装置13を介して回転運動がクランク軸15に伝達され、クランク軸15とコネクティングロッド17により回転運動が並進運動に変換されてスライド19が昇降する。これにより金型51、52の間で被成形物が加圧されて被成形物が成形される。
【0017】
プレス装置1では、クランク軸15と軸受け16との接触部、クランク軸15とコネクティングロッド17との接触部、コネクティングロッド17と連結ピン18との接触部、又は、スライド19と連結ピン18との接触部などに、摩耗、偏摩耗、齧り又は潤滑不良などの異常の原因となりえる事象が生じる場合がある。また、スライド19とスライドガイド20との接触部等においても同様である。そして、このような事象が進行するに従って各接触部において摺動抵抗が徐々に高くなるといった状態変化が生じる。また、上記の異常の原因となる事象が更に進行すると、焼き付きなどの異常が発生し、異常の発生に至った場合、大掛かりな修理が必要となる。
【0018】
<診断機能>
診断制御部36は、プレス装置1の異常の兆候を検知できる診断機能を提供する。診断制御部36は、先ず、製品出荷時の近傍又は修理直後などの初期状態の段階で、プレス装置1を動作させて、診断処理に使用する基準データを取得し記憶部34に記憶する。ここで、初期状態の段階が、本発明に係る第1時点の一例に相当し、基準データが本発明に係る第1物理量が示されるデータの一例に相当する。
【0019】
基準データは、駆動部10の負荷に関する物理量を示すデータであり、温度センサ41、振動センサ43及び電流センサ47を用いた計測処理によって取得される。また、基準データは、プレス加工の加圧無しの状態で、かつ、プレス加工のときよりも低い速度(例えば標準的なプレス加工の速度の1/Nの速度:Nは例えば2以上)で駆動部10を駆動したときの計測データである。プレス加工の加圧無しの状態とは、被成形物がセットされていない状態を意味する。基準データは、駆動部10を複数サイクル動作させたときの各タイミング(サイクル動作中の間欠的な複数タイミングでもよい)で計測された物理量を含み、各タイミングの物理量の計測値はスライド19のサイクル運動の位相と対応づけて保存される。スライド19のサイクル運動の位相は、位置センサ45によるスライド19の位置から求めてもよいし、その他、駆動部10の各機構の位置又は回転角度から求めてもよい。また、上記の物理量の計測は、プレス装置1の機器温度又は潤滑油温度を複数異ならせて複数セット実施され、これにより、複数の温度に対応する複数の基準データが取得され記憶部34に記憶される。温度によって潤滑油の粘度が変わり、潤滑油の粘度によって各接触部位の摩擦抵抗が変わり、これが負荷に関する物理量に影響する。このため、診断制御部36は、複数の温度にそれぞれ対応する複数の基準データを取得する。
【0020】
負荷に関する物理量としては、例えばサーボモータ11の負荷トルク、サーボモータ11を駆動する電流、駆動部10の各部の振動量、振動の振幅(変位)、振動加速度、振動の周波数を適用できる。また、この物理量として、駆動部10の各摺動部の温度、各摺動部の駆動開始からの温度変化等を適用してもよい。これらのうち1つを対象としてよいし、複数の組み合わせを対象としてもよい。これらの物理量は、駆動部10の負荷に応じて値が変化する量である。トルクは電流から推定できる。物理量として振動に関する量を適用する場合、サーボモータ11の軸受け部、サーボモータ11のモータフレーム、あるいは、プレス装置1のフレームの振動を計測してもよい。また、物理量として摺動部の温度に関する量を適用する場合、駆動部10に含まれる軸(伝動軸、クランク軸又はエキセン軸など)のガイド部あるいは軸受け部の温度、スライドガイドのライナー部の温度を計測してもよい。また、フライホイールとクラッチを適用した駆動部の場合、負荷に関する物理量として、スライドの1サイクル分の移動時間を適用してもよい。
【0021】
なお、基準データが、同一機種の複数のプレス装置1の間でバラツキの小さなデータである場合には、1台のプレス装置1ごとに基準データを取得する必要はない。この場合、同一機種の1台のプレス装置1で取得した基準データを、同一機種の他のプレス装置1の基準データとして記憶部34に記憶させてもよい。
【0022】
診断制御部36は、例えばプレス装置1の所定の運転時間ごと、あるいは、所定のショット数(プレス加工回数)ごと等、適宜設定された所定の診断サイクルで、プレス装置1の診断処理を行う。診断処理では、先ず、診断制御部36は、基準データを取得したときと同様の条件でプレス装置1を動作させて診断データを取得する。ここで、診断処理の実行時点が本発明に係る第2時点の一例に相当し、診断データが本発明に係る第2物理量を示すデータの一例に相当する。
【0023】
診断データは、駆動部10の負荷に関する物理量を示すデータであり、温度センサ41、振動センサ43及び電流センサ47を用いた計測処理によって取得される。負荷に関する物理量の具体例は、上述した通りである。また、診断データを取得する際には、プレス加工の加圧無しの状態(すなわち被成形物がセットされていない状態)で、かつ、プレス加工のときよりも低い速度(例えば標準的なプレス加工の速度の1/Nの速度:Nは例えば2以上)で駆動部10が駆動される。これらの条件は基準データを取得したときと同様にしてもよいし、少し異なる条件としてもよい。さらに、診断データは、駆動部10を少なくとも1サイクル動作させたときの各タイミングで計測された物理量を含み、各タイミングの物理量の計測値はスライド19のサイクル運動の位相と対応づけられて保存される。なお、診断データは、1サイクル動作中の間欠的な複数タイミングに計測されたデータとしてもよい。
【0024】
診断制御部36は、上記のように取得された診断データと基準データと比較してプレス装置1の異常の兆候について診断する。このとき、基準データとしては、機器温度又は潤滑油温度が、診断データを取得したときと同等の温度で取得されたものが使用される。診断には、比較的に短期間のうちに進行して異常に至るような異常の兆候を診断する第1診断処理と、比較的に長期間に渡って徐々に進行して異常に至るような異常の兆候を診断する第2診断処理とが含まれる。続いて、これら診断処理について詳細を説明する。
【0025】
<基準データの収集>
図2は、診断制御部が実行する基準データ収集処理の手順を示すフローチャートである。
【0026】
診断制御部36は、プレス装置1の製品出荷時に近い期間又は修繕直後などの初期状態の段階で、
図2の基準データ収集処理を実行する。基準データ収集処理は、初期状態で電源投入時等に自動的に開始される構成としても良いし、オペレータの操作により開始される構成としてもよい。
【0027】
基準データ収集処理が開始されると、診断制御部36は、プレス装置1を診断用の計測を行うための診断モードで起動する(ステップS1)。診断モードでは、診断制御部36は診断モードであることをユーザに報知する表示を表示部38に行い、被成形物が金型51、52にセットされないよう、あるいは金型51、52自体がスライド19及びベッド21にセットされないよう警告する。
【0028】
次に、診断制御部36は、温度センサ41から機器温度及び潤滑油の温度を取得する(ステップS2)。続いて、診断制御部36は、駆動部10を診断用の低い速度で運転し、低い速度でスライド19を複数サイクル動作させる(ステップS3)。低い速度とは、例えば標準的なプレス加工の速度の1/Nの速度(Nは例えば2以上)である。なお、フライホイールとクラッチとを含む駆動部の場合には、標準的なプレス加工時よりも低い速度でフライホイールを回転させた後、クラッチを接続して駆動部をサイクル動作させればよい。
【0029】
駆動部10を複数サイクル動作させる間、診断制御部36は、サイクル動作の各タイミングにおいて振動センサ43及び電流センサ47からの計測値を入力し、これら計測値の連続データを、複数サイクル分取得する(ステップS4)。このとき、診断制御部36は、位置センサ45の計測値も並行して入力し、各計測値の連続データをスライド19のサイクル運動の位相と対応づけて記憶部34に記憶させる。1サイクル分の連続データを、以下「遷移曲線」とも呼ぶ。ステップS4で取得した複数サイクル分の遷移曲線が、基準データである。
【0030】
次に、診断制御部36は、ステップS4で取得した複数サイクル分の遷移曲線から、平均遷移曲線を演算し、ステップS2で取得した温度データと対応づけて、記憶部34に記憶させる(ステップS5)。平均遷移曲線とは、各位相の値が、複数の遷移曲線についての各位相の値の平均値となっている曲線である。さらに、診断制御部36は、ステップS4で取得した複数サイクル分の遷移曲線から、各位相の値の標準偏差σ1を演算する(ステップS6)。標準偏差σ1は、位相ごとに異なる値をとりえる。標準偏差σ1は、分布が正規分布と仮定したときの標準偏差として計算してもよい。
【0031】
加えて、診断制御部36は、平均遷移曲線に標準偏差σ1(σ1は位相の関数)に基づく幅を持たせた範囲データ(以下、「診断基準範囲」と呼ぶ。)を演算する(ステップS7)。そして、診断制御部36は、これをステップS2で取得した温度データと対応づけて、記憶部34に記憶させる(ステップS7)。具体的には、診断基準範囲は、平均遷移曲線“+n×σ1(n=3)”である上限遷移曲線と、平均遷移曲線“−n×σ1(n=3)”である下限遷移曲線とに囲まれる範囲である。診断基準範囲が取得されたら、診断制御部36は1回の基準データ収集処理を終了する。ステップS7は、本発明に係る記憶ステップの一例に相当する。
【0032】
診断制御部36は、上記のような基準データ収集処理を、機器温度及び潤滑油温度が例えば0℃から60℃の範囲で10℃ピッチずつ異ならせて、複数セット実行する。温度は、エアコン又はヒータ等を用いてオペレータが環境温度を変化させることで、設定された温度になるように制御すればよい。なお、ステップS2の温度の計測ステップに替えて、駆動部10をサイクル動作させている間に連続的に温度の計測を行うようにしてもよい。そして、このときの連続した温度の計測結果から、基準データを収集した際の環境温度を求めてもよいし、あるいは、連続した温度の計測結果を、基準データの遷移曲線の一つとして利用してもよい。
【0033】
図3は、基準データから演算される診断基準範囲の第1例を示すグラフである。
図4は、基準データから演算される診断基準範囲の第2例を示すグラフである。
図3及び
図4は、計測される物理量としてサーボモータ11の電流値を採用した場合を示しており、以下では、サーボモータ11の電流に関する基準データについて説明する。
【0034】
基準データ収集処理において、標準的なプレス加工のときよりも非常に低い速度で駆動部10を駆動させたときには、
図3に示すような診断基準範囲C1sが導き出される基準データが得られる。診断基準範囲C1sは、サイクル動作の開始時及び終了時に電流の変化が生じる一方、それ以外の期間では電流が略一定の範囲に収まるような平均遷移曲線C1avが得られる。さらに、複数のサイクル動作における各位相の計測値の標準偏差σ1は、位相間で大きく変化せず、診断基準範囲C1sの上限遷移曲線C1u及び下限遷移曲線C1dは平均遷移曲線C1avと同様の形状を有する曲線となる。
【0035】
一方、基準データ収集処理において、標準的なプレス加工のときよりは低いものの、
図3のときよりは高い速度で駆動部10を駆動させたときには、
図4に示すような診断基準範囲C2sが導き出される基準データが得られる。診断基準範囲C2sは、スライド19のサイクル動作の開始期間にスライド19を加速するために電流が増加し、サイクル動作の終了期間にスライド19を減速するために電流が減少する平均遷移曲線C2avが得られる。また、複数のサイクル動作における各位相の計測値の標準偏差σ1は、位相間で大きく変化せず、診断基準範囲C2sの上限遷移曲線C2u及び下限遷移曲線C2dは平均遷移曲線C2avと同様の形状を有する曲線となる。
【0036】
基準データを取得するときの駆動部10の駆動速度は、
図3のようにスライド19の加速及び減速に必要なトルクの変化が電流値に表われないような非常に低い速度としてもよいし、
図4のようにこのトルクの変化が電流値に表われる程度の低い速度としてもよい。
【0037】
<第1診断処理>
図5は、診断制御部により実行される第1診断処理の手順を示すフローチャートである。
図6は、第1診断処理の比較ステップを説明するグラフである。
【0038】
第1診断処理は、比較的に短期間のうちに進行して異常に至るような短期の異常の兆候を診断可能な処理である。診断制御部36は、所定の診断周期(例えばプレス装置1の所定の運転時間ごとあるいは所定のショット数ごとなど)で、
図5の第1診断処理を実行する。第1診断処理は、上記の診断周期で自動的に開始されても良いし、上記の診断周期に達した後、次のプレス装置1の電源投入時に自動的に開始されても良い。また、第1診断処理は、診断制御部36が自動的に開始してもよいし、診断制御部36が第1診断処理の実行タイミングであることをユーザに報知し、ユーザの開始操作に基づいて開始されてもよい。
【0039】
第1診断処理が開始されると、診断制御部36は、プレス装置1を診断用の計測を行うための診断モードで起動する(ステップS11)。診断モードでは、診断制御部36は診断モードであることをユーザに報知する表示を表示部38に行い、被成形物が金型51、52にセットされないよう、あるいは金型51、52自体がスライド19及びベッド21にセットされないように警告する。
【0040】
次に、診断制御部36は、温度センサ41から機器温度及び潤滑油の温度を取得する(ステップS12)。そして、診断制御部36は、駆動部10を診断用の低い速度で運転し、低い速度でスライド19を1回サイクル動作させる(ステップS13)。低い速度とは、
図2の基準データ収集処理のステップS3のときと同様の駆動部10の速度である。なお、フライホイールとクラッチとを含む駆動部の場合には、診断基準範囲を計測したときと同様の低い速度でフライホイールを回転させた後、クラッチを接続して駆動部をサイクル動作させればよい。
【0041】
駆動部10をサイクル動作させる間、診断制御部36は、サイクル動作の各タイミングにおいて振動センサ43及び電流センサ47からの計測値を入力し、1サイクル分の計測値の連続データ(遷移曲線)を、診断データとして取得する(ステップS14)。このとき、診断制御部36は、位置センサ45の計測値も並行して入力し、各計測値の連続データをスライド19のサイクル運動の位相と対応づけて記憶部34に記憶させる。ステップS13、S14は、本発明に係る計測ステップの一例に相当する。
【0042】
次に、診断制御部36は、ステップS14で取得された診断対象の遷移曲線と、
図2の基準データ収集処理で演算された診断基準範囲とを比較する(ステップS15)。この比較処理では、ステップS12で計測された温度に対応する診断基準範囲が選択される。電流及び振動の大きさなど、複数種の診断対象がある場合には、各種の診断対象ごとに診断対象の遷移曲線と診断基準範囲との比較を行う。ステップS15は、本発明に係る診断ステップの一例に相当する。
【0043】
ここで、
図6の遷移曲線Ctaを診断対象とし、
図3及び
図6の診断基準範囲C1sを比較基準とした場合の、ステップS15の比較処理の具体例について説明する。プレス装置1が初期状態から変化していなければ、診断対象の遷移曲線Ctaは、診断基準範囲C1sの平均遷移曲線C1avに近い曲線となり、診断基準範囲C1sの上限遷移曲線C1uと下限遷移曲線C1dとを超えることは略無い。しかし、例えば、動力伝達機構の特定の位相H1で摺動する部位に、偏摩耗又は潤滑不良などの偏った変化があると、その位相H1で動力伝達機構の摺動抵抗が変化する。そして、
図6に示すように、診断対象の遷移曲線Ctaに、診断基準範囲C1sの平均遷移曲線C1avから逸脱するような部分が現れる。そして、偏摩耗又は潤滑不良などの偏った変化が大きくなるほど、遷移曲線Ctaの平均遷移曲線C1avからの逸脱量も大きくなる。そして、この偏った変化が、異常の兆候を示す程度に大きくなると、遷移曲線Ctaの特定の位相H1の部分が、診断基準範囲C1sの上限遷移曲線C1uを超えるか、あるいは、下限遷移曲線C1dを下回る。
図6は、特定位相H1で摺動抵抗が増加して診断対象の遷移曲線Ctaが上限遷移曲線C1uを超えた場合を示している。したがって、ステップS15の比較ステップでは、診断制御部36は、1サイクル動作の各位相で診断対象の遷移曲線Ctaが診断基準範囲C1sの範囲を超えていないか、1サイクル動作の全位相に渡って比較を行う。
【0044】
ステップS15の比較の結果、超えている箇所がないと判別されれば、診断制御部36は、例えば表示部38に異常無しの表示を行うなどの正常通知処理(ステップS16)を行って、第1診断処理を終了する。
【0045】
一方、ステップS15の比較の結果、超えている箇所が有りと判別されれば、診断制御部36は、例えば表示部38に異常の兆候有りの表示を行うなどの異常警報処理(ステップS17)を行って、第1診断処理を終了する。異常警報処理には、
図6に示したようなグラフデータが含まれていてもよい。この異常警報処理により、ユーザ又はメンテナンス員が、駆動部10の摺動部位の点検及び潤滑状態の点検を行い、例えば一部の部品の交換又は潤滑油の供給を行うなど、早期の対処を行うことができる。また、ユーザ又はメンテナンス員は、グラフデータから、スライド19のサイクル運動のどの位相で異常の兆候が生じているのか予測して、対処を行うことができる。これらによって、焼き付き等の広範囲の部品交換が必要となるような異常の発生を未然に防ぐことができる。
【0046】
なお、
図5のステップS19に示すように、診断制御部36は、表示部38から、
図6に示したような診断対象の遷移曲線Ctaと、診断基準範囲C1sの平均遷移曲線C1avとを比較するグラフ画像を出力するようにしてもよい。また、この画像表示においては、診断基準範囲C1sの平均遷移曲線C1avの替りに、基準データ収集処理で収集された1サイクル分の遷移曲線を用いてもよい。このような診断処理の内容を可視化することで、ユーザ又はメンテナンス員は、プレス装置1の状態をより詳しく認識することができる。
【0047】
また、ステップS12の温度の計測ステップに替えて、駆動部10をサイクル動作させている間に連続的に温度の計測を行うようにしてもよい。そして、このときの連続した温度の計測結果から診断データを収集した際の環境温度を求めてもよいし、あるいは、連続した温度の計測結果を、診断データである遷移曲線の一つとして利用してもよい。
【0048】
<第2診断処理の診断基準値の取得>
図7は、第2診断処理で使用される診断基準値の演算処理を示すフローチャートである。
【0049】
第2診断処理で使用される診断基準値は、プレス装置1が初期状態のときに収集された基準データ(
図2の基準データ収集処理で収集された複数サイクル分の遷移曲線)に基づいて演算される。
【0050】
診断基準値の演算処理では、診断制御部36は、複数サイクル分の遷移曲線のデータから、平均値に関する診断基準値を演算し(ステップS21〜S24)、また、ピーク値に関する診断基準値を演算する(ステップS25〜S28)。
【0051】
平均値に関する診断基準値の演算処理では、先ず、診断制御部36は、複数サイクル分の遷移曲線から、1サイクルごとに遷移曲線の平均値(「1サイクル平均値」と呼ぶ)を演算する(ステップS21)。これにより複数サイクルにそれぞれ対応する複数の1サイクル平均値が求められる。
【0052】
次に、診断制御部36は、ステップS21で演算された複数の1サイクル平均値について、さらにその平均値Av2(「複数サイクル平均値」と呼ぶ)を計算する(ステップS22)。例えば、基準データが電流値の遷移曲線である場合、1サイクル平均値は1サイクルの平均電流に相当し、複数サイクル平均値は複数サイクル分の複数の平均電流の平均値に相当する。また、診断制御部36は、複数の1サイクル平均値の標準偏差σ2を演算する(ステップS23)。標準偏差σ2は、分布が正規分布と仮定したときの標準偏差として計算してもよい。平均値Av2及び標準偏差σ2は、スライド19のサイクル運動の位相に依存しない固定値となる。
【0053】
そして、診断制御部36は、これらの値から、平均値に関する診断基準値を「Av2 ± m×σ2」(ここで、m=4.5)のように定め、これを記憶部34に記憶させる(ステップS24)。
【0054】
ピーク値に関する診断基準値の演算処理では、先ず、診断制御部36は、複数サイクル分の遷移曲線から、1サイクルごとに遷移曲線のピーク値を演算する(ステップS25)。これにより、複数サイクルにそれぞれ対応する複数のピーク値が得られる。
【0055】
次に、診断制御部36は、ステップS25で演算された複数サイクルにそれぞれ対応する複数のピーク値について、平均値Av3と標準偏差σ3とを演算する(ステップS26、S27)。標準偏差σ3は、分布が正規分布と仮定したときの標準偏差として計算してもよい。平均値Av3及び標準偏差σ3は、スライド19のサイクル運動の位相に依存しない固定値となる。
【0056】
そして、診断制御部36は、これらの値から、ピーク値に関する診断基準値を「Av3 ± m×σ3」(ここで、m=4.5)」のように定め、これを記憶部34に記憶させる(ステップS28)。
【0057】
これらの平均値に関する診断基準値と、ピーク値に関する診断基準値とは、機器温度及び潤滑油温度が例えば0℃から60℃の範囲で10℃ピッチずつ異ならせたときの計測値を用いて、複数セット演算されて記憶部34に記憶される。
【0058】
<第2診断処理>
図8は、診断制御部により実行される第2診断処理の手順を示すフローチャートである。
図9は、第2診断処理のステップS36の比較ステップを説明するグラフである。
【0059】
第2診断処理は、比較的に長期間にかけて徐々に進行して異常に至るような長期の異常の兆候を診断する処理である。診断制御部36は、所定の診断周期(例えばプレス装置1の所定の運転期間ごとあるいは所定のショット数ごと)で、
図8の第2診断処理を実行する。
【0060】
第2診断処理が開始されると、診断制御部36は、プレス装置1を診断モードで起動し(ステップS31)、機器温度及び潤滑油温度を計測し(ステップS32)、低い速度で駆動部10を1サイクル動作させる(ステップS33)。さらに、診断制御部36は、1回のサイクル動作の振動センサ43及び電流センサ47からの計測値を入力し、1サイクル分の計測値の連続データ(遷移曲線)を、「診断データ」として取得し、記憶部34に記憶させる(ステップS34)。第2診断処理のステップS31〜S34の診断データの取得処理は、第1診断処理のステップS11〜S14(
図3)の診断データの取得処理と同様である。
図8のステップS31〜S34の処理を実行する替りに、
図3のステップS11〜S14の処理で取得した診断データを
図8のステップS35以降で使用してもよい。ステップS33、S34は、本発明に係る計測ステップの一例に相当する。
【0061】
診断データ(診断対象の1サイクル分の遷移曲線)を取得したら、診断制御部36は、診断対象の遷移曲線から平均値とピーク値とを演算し、これらを記憶部34へ記憶させる(ステップS35)。ここで、診断制御部36は、過去複数回の第2診断処理で同様に演算された複数の平均値及び複数のピーク値に基づき、平均値の趨勢を示すグラフ(
図10を参照)、並びに、ピーク値の趨勢を示すグラフを作成し、表示部38に表示出力してもよい(OUT1)。これら複数の平均値及び複数のピーク値は、記憶部34に記憶されている。
【0062】
診断制御部36は、次に、ステップS32で計測された温度に対応する診断基準値を記憶部34から読み出し、ステップS35で演算された診断対象の平均値と平均値に関する診断基準値とを比較する(ステップS36)。加えて、診断制御部36は、ステップS35で演算された診断対象のピーク値とピーク値に関する診断基準値とを比較する(ステップS36)。各温度に対応した平均値に関する診断基準値と、各温度に対応したピーク値に関する診断基準値とは、上述した
図7の演算処理おいて記憶部34に記憶されている。ステップS36は、本発明に係る診断ステップの一例に相当する。
【0063】
ここで、
図9を参照しつつ、診断対象を平均電流として診断基準値と比較する具体例について説明する。
図9に示すように、診断基準値において、その中央値(全サイクル平均値)Fc、上限値Fu及び下限値Fdは、スライド19のサイクル運動の位相に関係なく固定値として定まる。一方、ステップS34で取得した診断対象の遷移曲線Ctaは、スライド19のサイクル運動の位相に応じて変化のある曲線である。プレス装置1では、例えば偏摩耗等の偏った劣化でなく、経年劣化のような全体的な劣化が生じた場合、位相の大きな範囲で摺動抵抗が初期状態から変化する。そして、その時に取得された電流の遷移曲線Ctaは、曲線形状に初期状態の遷移曲線からの差が余り生じないが、曲線に初期状態の遷移曲線よりも値が一方に異なるような変化が生じる。つまり、遷移曲線の平均値(平均電流)が、例えば経年劣化が進行するほど増加したりする。したがって、ステップS36の比較ステップでは、診断制御部36は、初期状態の遷移曲線の平均値に幅を持たせた診断基準値と、診断対象の遷移曲線の平均値とを比較する。そして、診断制御部36は、診断対象の平均値が、診断基準値の上限又は下限を超えたら、経年劣化等の全体的な劣化が進行したと判定できる。
【0064】
また、このような全体的な劣化は、同様に、遷移曲線のピーク値の変化としても現れる。したがって、ステップS36の比較ステップでは、診断制御部36は、初期状態の遷移曲線のピーク値に幅を持たせた診断基準値と、診断対象の遷移曲線のピーク値とを比較する。そして、診断制御部36は、診断対象の平均値が、診断基準値の上限又は下限を超えたら、経年劣化等の全体的な劣化が進行したと判定できる。なお、ピーク値は、遷移曲線の最大値としてもよいし、最小値としてもよい。
【0065】
ステップS36の比較の結果、平均値及びピーク値が診断基準値内であれば、診断制御部36は、例えば表示部38に異常無しの表示を行う等の正常通知処理(ステップS37)を行って、第2診断処理を終了する。
【0066】
一方、ステップS36の比較の結果、平均値又はピーク値が診断基準値の上限又は下限を超えていれば、診断制御部36は、例えば表示部38に異常の兆候有りを示す表示を行うなどの異常警報処理(ステップS38)を行って、第2診断処理を終了する。異常警報処理により、ユーザ又はメンテナンス員は、駆動部10の点検を行い、劣化した部品の交換を行うなど、早期の対処を行うことができる。これにより、焼き付き等の広範囲の部品交換が必要となるような異常の発生を未然に防ぐことができる。
【0067】
<第1診断処理の監視幅と第2診断処理の監視幅の設定例>
上述したように、第1診断処理では、平均遷移曲線に±n×標準偏差の幅を持たせた診断基準範囲C1s(
図4を参照)を用いて、診断対象の遷移曲線Ctaの監視が行われる。第2診断処理では、平均値又はピーク値に±m×標準偏差の幅を持たせた診断基準値を用いて、診断対象の遷移曲線の平均値又はピーク値の監視が行われる。ここでは、診断基準範囲のn×標準偏差を「第1診断処理の監視幅」と呼び、診断基準値のm×標準偏差を「第2診断処理の監視幅」と呼ぶ。
【0068】
第1診断処理では、比較的に短期間のうちに進行して異常に至るような異常の兆候を診断する。一方、第2診断処理では、比較的に長期間に渡って徐々に進行して異常に至るような異常の兆候を診断する。このため、第1診断処理では駆動部10に偏った変化が現れてから比較的に短期間の診断データを監視することになり、第2診断処理ではプレス装置1の初期の状態から長期間の診断データを監視することになる。一般に、長期間のデータのバラツキは、短期間のデータのバラツキよりも大きくなる。このため、第1診断処理の監視幅を決める「n」の値と、第2診断処理の監視幅を決める「m」の値とは、m>nとなるように設定してもよい。
【0069】
なお、第1診断処理及び第2診断処理において、監視幅を決定する「n」と「m」の値は、予め設定された固定値としてもよいし、ユーザの設定により可変にしてもよい。これの値を小さく設定することで、監視範囲を狭くして、異常の兆候の検出感度を上げることができる。また、監視幅を決定する「n」と「m」の値を、複数段階の値として設定しておき、診断制御部36は、診断対象が1段目の監視幅を超えたときに軽度の異常の兆候を警告し、診断対象が2段目の監視幅を超えたときに中度の異常の兆候を警告してもよい。さらに、診断制御部36は、診断対象が最終段目の監視幅を超えたときに重度の異常兆候の警告を行い、プレス装置1の停止指令を出力するなどの制御を行ってもよい。
【0070】
<第2診断処理の変形例>
図10は、第2診断処理及びその変形例を説明するタイムチャートである。
図10は、サーボモータ11の平均電流を比較対象として、所定ショット数ごとに第2診断処理を行った場合において、各々の第2診断処理で比較された診断対象の平均電流と診断基準値の上限値及び下限値を示している。
【0071】
サーボモータ11の平均電流は、
図10に示すように、経年劣化等の駆動部10の全体的な変化に起因して、時間の経過に伴って徐々に変化していく。そして、変化量が大きくなって、診断基準値の上限値又は下限値を超えたときt1に、上述した第2診断処理では異常の予兆ありと診断される。
【0072】
一方、経年劣化等の駆動部10の全体的な変化であっても、緩く変化が進行する状態から、急に変化が進行する状態へ遷移する場合がある。そして、このような状態の遷移を、異常の予兆として早期に検知できると、その後のメンテナンス又は軽微な修繕によりプレス装置1で焼き付き等の異常が発生することを抑制することができる。
【0073】
そこで、変形例の第2診断処理では、診断制御部36は、上記の比較処理に加えて、過去複数の第2診断処理で求められたサーボモータ11の平均電流の経時変化に基づく診断を併せて行う。例えば、診断制御部36は、現在から過去所定回の第2診断処理で求められた平均電流の増分を算出し、この増分が所定の閾値を超えた場合に、異常の予兆有りと診断する。あるいは、平均電流の増分と所定の閾値とを比較する替りに、過去複数回分の増量の統計値(例えば各回の増量の平均値+l×各回の増量の標準偏差)を閾値として採用し、同様の比較により、診断制御部36が異常の予兆有りと診断してもよい。このような処理により、駆動部10の全体的な変化が、緩く進行する状態から急に進行する状態に遷移したことを検知することができる。
【0074】
なお、平均電流の増量に基づく診断を行う場合でも、複数段階の閾値を採用し、各段階の閾値を超えるごとに、強弱の異なる警告を行うようにしてもよい。
【0075】
また、上記では、過去複数回の第2診断処理で求められた平均電流の経時変化に基づき診断を行う例を示したが、平均電流の替りに、駆動部10の負荷に関する種々の物理量を適用できる。例えば、サーボモータ11のサイクル動作期間中のピーク電流、振動センサ43によって計測される各部の振動量の平均値、又はそのピーク値などであってもよい。
【0076】
<実施形態の効果>
以上のように、本実施形態のプレス装置1によれば、プレス装置1が初期状態のとき、プレス加工の加圧無しかつ低い速度で駆動部10を運転して計測された駆動部10の負荷に関する物理量が、基準データとして記憶部34に記憶される。さらに、診断制御部36は、所定の診断サイクルで、同様の条件で駆動部10を運転したとき駆動部10の負荷に関する物理量を診断データとして計測する。そして、診断制御部36は、これらを比較することで駆動部10の診断を行う。このように、基準データと診断データとは、プレス加工の加圧無しかつ低い速度で駆動部10を動かしたときに計測されたデータである。したがって、診断データに、プレス装置1の小さい状態変化(例えば接触部の摩耗、偏摩耗、潤滑不足など)が表われる。例えば、サーボモータ11の電流値を例に採って説明すると、低い速度であるためベースの電流値が小さくなり、駆動部10の小さな摺動抵抗の変化が小さな電流値の変化として表われる。よって、基準データと診断データとの比較によりこのような小さな状態変化を検出することが可能となる。
【0077】
図11に示すように、例えば駆動部10の各機構の接触部において焼き付きなどの異常が発生する場合、異常の発生直前直後の領域R2では、接触部の摺動抵抗(摩擦係数)が大きく変化する。しかし、この段階で異変が検知されても、機構の損傷が進んでしまうので、大掛かりな修理が必要となる。一方、焼き付きなどの異常に至るより前に徐々に接触部の摺動抵抗(摩擦係数)が変化する領域R1があり、この小さな変化を検出できれば、軽微な修繕を行うことで、機構の損傷が進まないように制御できる。本実施形態のプレス装置1の診断機能は、領域R1に示されるようなプレス装置1の小さな状態変化、すなわち異常の兆候を検出することができる。したがって、異常の兆候の検出に基づき軽微な修繕を行うことで、大掛かりな修理を要することなく、プレス装置1を長期に渡って継続的に使用することができる。
【0078】
また、実施形態のプレス装置1によれば、診断制御部36は、サーボモータ11の電流、各部の振動に関する量、温度等を、駆動部10の負荷に関する物理量として計測する。さらに、診断制御部36は、スライド19のサイクル動作期間に渡ってこれらを計測し、各計測値をサイクル動作の位相に対応づけて保存して、基準データと診断データとする。したがって、このような基準データ及び診断データによって、プレス装置1のサイクル動作の各位相で生じえる異常についての兆候を検出することができ、さらに、サイクル動作のどの位相で異常の兆候が有るのか検出することもできる。
【0079】
また、実施形態のプレス装置1によれば、第2診断処理において、診断対象の遷移曲線の平均値、最大値又は最小値であるピーク値を、基準データから算出された診断基準値と比較して、駆動部10の診断を行う。これにより、例えば機構の接触部の経年劣化のように全体的に徐々に進行するような異常の兆候を検出することができる。
【0080】
また、実施形態のプレス装置1によれば、第1診断処理において、
図6に示したように、診断基準範囲C1sの上限遷移曲線C1uと下限遷移曲線C1dと、診断対象の遷移曲線Ctaとを比較することで、駆動部10の診断を行う。これにより、例えば機構の接触部の偏摩耗のようなサイクル動作の特定の位相で進行するような異常の兆候を検出することができる。
【0081】
また、実施形態のプレス装置1によれば、診断制御部36は、第1診断処理(
図5)のステップS19において、診断対象の遷移曲線Ctaと診断基準範囲C1sの平均遷移曲線C1avとを比較するグラフ画像(
図6を参照)を表示部38に出力する。これにより、ユーザ又はメンテナンス員は、プレス装置1の状況を詳細に認識することができる。
【0082】
また、実施形態のプレス装置1によれば、診断制御部36は、第2診断処理の変形例において、過去複数時点の診断データの平均値又はピーク値(最大値、最小値など)の経時変化に基づいて、駆動部10の診断を行う。例えば診断制御部36は、上記の経時変化として、過去複数回分の上記の値の増量が閾値を超えたか否か検出し、駆動部10の診断を行う。このような診断により、例えば機構の接触部の摩耗量又は潤滑不足量が比較的に急激に変化するような異常の兆候を検出することができる。
【0083】
また、実施形態のプレス装置1によれば、複数の温度環境で計測された基準データが記憶部34に記憶され、同様の温度環境で計測された診断データと基準データとを比較して駆動部10の診断を行う。したがって、温度環境の影響を排除して、駆動部10の異常の兆候を検出することができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、本発明に係る第1時点で計測された第1物理量として、プレス装置1が初期状態のときに計測された基準データを例にとって説明した。しかし、本発明に係る第1時点とは、プレス装置1が初期状態のときに限られず、診断時より一定期間前であればよく、この時点で計測された物理量を第1物理量として、これと診断時に計測された第2物理量とを比較して診断を行ってもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、スライド19のサイクル動作の始端から終端までの遷移曲線を基準データ及び診断データして取得し、これらについて比較を行う構成を示した。しかし、サイクル動作の全期間うち異常の発生が生じにくい一部の期間(例えば上死点の近傍)などを除いた遷移曲線を基準データ及び診断データとして比較を行ってもよい。また、このような遷移曲線から平均値又はピーク値を演算してもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、サーボモータ11によりスライド19の速度を制御可能なプレス装置1を示したが、本発明に係るプレス装置は、フライホイール及びクラッチを有し、スライド19の速度の詳細な制御が行われないタイプであってもよい。この場合でも、フライホイールを駆動するモータが、通常の回転速度の駆動と低い回転速度の駆動とを適用できる構成であれば、本発明に係る診断機能を適用できる。また、上記実施形態では、スライド19に動力を伝達する動力伝達機構として、クランク軸とコネクティングロッドにより回転運動をスライド19の並進運動に変換する機構を示した。しかし、本発明に係る動力伝達機構は、ナックル機構、リンク機構、スクリュー機構など、種々のメカニカル駆動プレスの構成が適用されてもよい。また、本発明に係る駆動装置は、サーボモータに限られず、インバータ駆動モータ、油圧プレスの油圧ポンプモータ、サーボコントロール油圧ポンプモータであってもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、プレス装置1の診断制御部36が基準データの取得から第1診断処理及び第2診断処理を実行する構成を示したが、本発明に係る診断方法には、同様の処理をメンテナンス員等の人間が行う態様も含まれる。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。