特許第6950195号(P6950195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6950195金属接合部、接合体、半導体装置及び半導体素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6950195
(24)【登録日】2021年9月28日
(45)【発行日】2021年10月13日
(54)【発明の名称】金属接合部、接合体、半導体装置及び半導体素子
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20210930BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20210930BHJP
【FI】
   B23K20/00 310H
   B23K20/00 310M
   B23K20/00 310L
   H01L23/12 501P
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-26707(P2017-26707)
(22)【出願日】2017年2月16日
(65)【公開番号】特開2018-130746(P2018-130746A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2019年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】乃万 裕一
【審査官】 奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−019360(JP,A)
【文献】 特開2013−165156(JP,A)
【文献】 特開平06−036852(JP,A)
【文献】 特開平08−330361(JP,A)
【文献】 特開平11−016939(JP,A)
【文献】 特開2008−270816(JP,A)
【文献】 特開2016−087664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/00
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの銅含有部が接合された金属接合部であって、
前記2つの銅含有部の界面から各銅含有部の深さ方向に向かって少なくとも0.5μmの範囲に金原子が拡散しており、銅及び金で構成されている金属接合部。
【請求項2】
第1の銅含有部を備える第1の部材と、第2の銅含有部を備える第2の部材とが、前記第1の銅含有部と前記第2の銅含有部との金属接合部を介して接合されており、
前記金属接合部が、銅及び金で構成されており、
前記金属接合部における前記第1の銅含有部及び前記第2の銅含有部の界面から前記第1の銅含有部及び前記第2の銅含有部の深さ方向に向かって少なくとも0.5μmの範囲に金原子が拡散している接合体。
【請求項3】
前記第1の銅含有部又は前記第2の銅含有部の深さ方向に見たときに、前記第1の銅含有部と前記第2の銅含有部との接合箇所が、面状、線状又は点状をなす請求項に記載の接合体。
【請求項4】
半導体素子本体と前記半導体素子本体に設けられた銅を含む電極パッドとを備える半導体素子と、銅を含む再配線層とが、前記電極パッドと前記再配線層との金属接合部を介して接合されており、
前記金属接合部が、銅及び金で構成されており、
前記金属接合部における前記電極パッド及び前記再配線層の界面から前記電極パッド及び前記再配線層の深さ方向に向かって少なくとも0.5μmの範囲に金原子が拡散している半導体装置。
【請求項5】
半導体素子本体と、
前記半導体素子本体に設けられ、前記半導体素子本体側から順に、銅含有部と前記銅含有部に接触して配置される金含有層とを有する電極パッドと、
を備え
前記銅含有部に含有される金属に占める銅の割合が、99.9質量%〜100質量%であり、
前記金含有層に占める金の割合が、99.9質量%〜100質量%である半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属接合部、接合体及びその製造方法、接合方法、半導体装置並びに半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材同士を接合するための方法としては、金属部材を電気アーク等による熱で熔解させて接合する融接、金属部材を加圧しながら必要に応じて加熱することで接合する圧接、ろう、はんだ等を用いるろう接などが挙げられる。
【0003】
特に、金属配線と金属端子とを接合する方法は、半導体素子をパッケージ基板に接合して半導体装置を製造する上での重要な技術であり、様々な接合技術が開発されている。
半導体素子をパッケージ基板に接合する方法としては、はんだバンプ等のはんだ材料を用いる場合が多い。しかし、はんだバンプを用いて半導体素子をパッケージ基板に接合すると、はんだバンプの分だけ半導体装置の厚みが増してしまうため、薄型の半導体装置を得るためには、金属配線と金属端子とを直接接合する方法の開発が求められている。さらには、金属配線と金属端子とを直接接合することで、半導体素子とパッケージ基板との間に介在するはんだの影響(例えば、77GHz帯におけるインピーダンスのミスマッチの発生及びエレクトロマイグレーションの発生)を抑制することができる。
【0004】
ここで、金属の中でも銅と銅とを直接接合する方法として、蟻酸を用いる非特許文献1に開示の方法、表面を高精度に結晶化されたバンプ表面を用いる非特許文献2に開示の方法、高真空環境下で接合表面を活性化させる非特許文献3に開示の方法等が挙げられる。
はんだを用いて接合する例としては、非特許文献4に開示の方法等が挙げられる。
銅の加熱による固層拡散接合の例としては、非特許文献5に開示の方法等が挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】N. Matsuoka et al., ICEP−IAAC Proc., pp.460−463, 2015.
【非特許文献2】T. Sakai et al., ICEP−IAAC Proc., pp.464−467, 2015.
【非特許文献3】T. H. Kim et al., J. Vac. Sci. Technol. A, 21, No.2, pp.449−453, 2003.
【非特許文献4】L. F. Miller, IBM Journal of Research and Development, Vol.13, Issue.3, pp.239−250, 1969.
【非特許文献5】塚本雅章ら, 日本金属学会誌, 第75巻,第10号, pp.592−599, 2011.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、非特許文献1に開示の方法では、蟻酸を使用することにより安全性に懸念の生ずることがある。
また、非特許文献2に開示の方法では、発生する微細粉により銅と銅との直接接合が阻害される場合がある。
また、非特許文献3に開示の方法では高真空環境が必要とされ、半導体装置の製造に汎用される従来型の製造装置を転用することが難しい場合がある。
また、非特許文献4に開示の方法ではエレクトロマイグレーションの問題が生ずる場合がある。
また、非特許文献5に開示の方法では、接合温度が1073K(800℃)と高いため、無機物に比較して熱に対して脆弱な有機物を含む半導体パッケージの用途に適用するのは困難である。また、この方法を例えばMEMS(メムス、Micro Electro Mechanical Systems)に適用した場合、異種材料の熱膨張係数の差による歪みが顕著になるため、工程上悪影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
本発明の一形態は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、簡便な方法で金属同士を直接接合することが可能な接合方法及び接合体の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明の一形態は、銅含有部を直接接合した金属接合部及び接合体を提供することを目的とする。さらに本発明の一形態は、電極パッドと再配線層とが直接接合した半導体装置及び銅を含む再配線層との接合に用いられる半導体素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 2つの銅含有部が接合された金属接合部であって、
前記2つの銅含有部の界面から各銅含有部の深さ方向に向かって少なくとも0.5μmの範囲に金原子が拡散している金属接合部。
<2> 2つの銅含有部が接合された金属接合部であって、
前記2つの銅含有部の界面から各銅含有部の深さ方向に向かって金原子の濃度が減少する濃度勾配を有する金属接合部。
【0009】
<3> 第1の銅含有部を備える第1の部材と、第2の銅含有部を備える第2の部材とが、前記第1の銅含有部と前記第2の銅含有部との金属接合部を介して接合されており、
前記金属接合部における前記第1の銅含有部及び前記第2の銅含有部の界面から前記第1の銅含有部及び前記第2の銅含有部の深さ方向に向かって少なくとも0.5μmの範囲に金原子が拡散している接合体。
<4> 第1の銅含有部を備える第1の部材と、第2の銅含有部を備える第2の部材とが、前記第1の銅含有部と前記第2の銅含有部との金属接合部を介して接合されており、
前記金属接合部における前記第1の銅含有部及び前記第2の銅含有部の界面から前記第1の銅含有部及び前記第2の銅含有部の深さ方向に向かって金原子の濃度が減少する濃度勾配を有する接合体。
<5> 前記第1の銅含有部又は前記第2の銅含有部の深さ方向に見たときに、前記第1の銅含有部と前記第2の銅含有部との接合箇所が、面状、線状又は点状をなす<3>又は<4>に記載の接合体。
【0010】
<6> 半導体素子本体と前記半導体素子本体に設けられた銅を含む電極パッドとを備える半導体素子と、銅を含む再配線層とが、前記電極パッドと前記再配線層との金属接合部を介して接合されており、
前記金属接合部における前記電極パッド及び前記再配線層の界面から前記電極パッド及び前記再配線層の深さ方向に向かって少なくとも0.5μmの範囲に金原子が拡散している半導体装置。
<7> 半導体素子本体と前記半導体素子本体に設けられた銅を含む電極パッドとを備える半導体素子と、銅を含む再配線層とが、前記電極パッドと前記再配線層との金属接合部を介して接合されており、
前記金属接合部における前記電極パッド及び前記再配線層の界面から前記電極パッド及び前記再配線層の深さ方向に向かって金原子の濃度が減少する濃度勾配を有する半導体装置。
【0011】
<8> 半導体素子本体と、
前記半導体素子本体に設けられ、前記半導体素子本体側から順に、銅含有部と前記銅含有部に接触して配置される金含有層とを有する電極パッドと、
を備える半導体素子。
【0012】
<9> 第1の金属含有部と前記第1の金属含有部に接触して配置され前記第1の金属含有部の内部に拡散可能な金属を含む第1の拡散金属含有層とを備える第1の部材と、第2の金属含有部と前記第2の金属含有部に接触して配置され前記第2の金属含有部の内部に拡散可能な金属を含む第2の拡散金属含有層とを備える第2の部材とを、前記第1の拡散金属含有層と前記第2の拡散金属含有層とが接触した状態で加熱及び加圧する工程を有する接合体の製造方法。
<10> 前記第1の拡散金属含有層及び前記第2の拡散金属含有層が、接触させた状態で加圧することにより変形する<9>に記載の接合体の製造方法。
<11> 第1の銅含有部と前記第1の銅含有部に接触して配置される第1の金含有層とを備える第1の部材と、第2の銅含有部と前記第2の銅含有部に接触して配置される第2の金含有層とを備える第2の部材とを、前記第1の金含有層と前記第2の金含有層とが接触した状態で加熱及び加圧する工程を有する接合体の製造方法。
【0013】
<12> 第1の金属含有部と前記第1の金属含有部に接触して配置され前記第1の金属含有部の内部に拡散可能な金属を含む第1の拡散金属含有層とを備える第1の部材と、第2の金属含有部と前記第2の金属含有部に接触して配置され前記第2の金属含有部の内部に拡散可能な金属を含む第2の拡散金属含有層とを備える第2の部材とを、前記第1の拡散金属含有層と前記第2の拡散金属含有層とが接触した状態で加熱及び加圧する工程を有する接合方法。
<13> 前記第1の拡散金属含有層及び前記第2の拡散金属含有層が、接触させた状態で加圧することにより変形する<12>に記載の接合方法。
<14> 第1の銅含有部と前記第1の銅含有部に接触して配置される第1の金含有層とを備える第1の部材と、第2の銅含有部と前記第2の銅含有部に接触して配置される第2の金含有層とを備える第2の部材とを、前記第1の金含有層と前記第2の金含有層とが接触した状態で加熱及び加圧する工程を有する接合方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一形態によれば、簡便な方法で金属同士を直接接合することが可能な接合方法及び接合体の製造方法を提供することができる。また、本発明の一形態によれば、銅含有部を直接接合した金属接合部及び接合体を提供することができる。さらに本発明の一形態によれば、電極パッドと再配線層とが直接接合した半導体装置及び銅を含む再配線層との接合に用いられる半導体素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の部材14と第2の部材24とを概略的に示す断面図である。
図2】第1の部材14と第2の部材24とが一部で接触している状態を概略的に示す断面図である。
図3】金含有層12及び金含有層22が変形した状態を概略的に示す断面図である。
図4】接合体30を概略的に示す断面図である。
図5】TEM−EDXにより観察された金属接合部における銅原子の分布状況を示す図である。
図6】TEM−EDXにより観察された金属接合部における金原子の分布状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本明細書において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において各成分の含有率は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
本明細書において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
【0017】
<接合体の製造方法>
本開示の接合体の製造方法は、第1の金属含有部と前記第1の金属含有部に接触して配置され前記第1の金属含有部の内部に拡散可能な金属を含む第1の拡散金属含有層とを備える第1の部材と、第2の金属含有部と前記第2の金属含有部に接触して配置され前記第2の金属含有部の内部に拡散可能な金属を含む第2の拡散金属含有層とを備える第2の部材とを、前記第1の拡散金属含有層と前記第2の拡散金属含有層とが接触した状態で加熱及び加圧する工程を有する。
以下、必要に応じて第1の金属含有部及び第2の金属含有部をまとめて、単に「金属含有部」と称することがある。また、第1の拡散金属含有層及び第2の拡散金属含有層をまとめて、単に「拡散金属含有層」と称することがある。
【0018】
以下に、本開示の接合体の製造方法の推定機構について、金属含有部に含有される金属が銅であり、金属含有部の内部に拡散可能な金属が金である場合を例に図面に基づいて説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。
なお、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。また、同様の機能を有する部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、その説明を省略することがある。
【0019】
図1は、第1の金属含有部としての銅構造体10と、銅構造体10に接触して配置され第1の金属含有部である銅構造体10の内部に拡散可能な金属である金を含む第1の拡散金属含有層である金含有層12とを有する第1の部材14と、第2の金属含有部としての銅構造体20と、銅構造体20に接触して配置され第2の金属含有部である銅構造体20の内部に拡散可能な金属である金を含む第2の拡散金属含有層である金含有層22とを有する第2の部材24とを示す断面図である。
なお、図1では、第1の部材14及び第2の部材24が共に表面に凹凸を有する場合について説明する。凹凸の大きさは特に限定されるものではない。また、第1の部材14及び第2の部材24の表面に凹凸が形成されていなくともよい。第1の部材14及び第2の部材24の表面に存在する凹凸は、金属含有部又は拡散金属含有層を形成する際に生じうる表面の平滑性のばらつきによるものであってもよい。
また、図1では、第1の部材14と第2の部材24とはまだ互いに接触していない状態とされる。
【0020】
第1の部材14と第2の部材24とを相対的に近接することで、図2に示すように、第1の部材14と第2の部材24とが一部で接触する。なお、第1の部材14と第2の部材24とが接触した状態では、第1の部材14及び第2の部材24の表面に存在する凹凸に起因して、第1の部材14と第2の部材24との間に空隙が生ずる場合がある。
圧力を加えながら第1の部材14と第2の部材24とが接触した状態を維持すると、図3に示すように、金含有層12及び金含有層22が変形して第1の部材14と第2の部材24との間に生じていた空隙を埋めることが可能となる。
圧力を加えながら第1の部材14と第2の部材24とが接触した状態を維持しながら両者を加熱すると、金含有層12及び金含有層22に含まれる金が銅構造体10及び銅構造体20の内部に拡散することで、金含有層12及び金含有層22が消失する。金含有層12及び金含有層22の消失に伴い、図4に示すように、第1の部材14と第2の部材24とが銅構造体10と銅構造体20との金属接合部を介して接合され、第1の部材14及び第2の部材24の接合体30が形成される。
なお、図4中、点線Aは銅構造体10と銅構造体20との界面を示す。図4に示すように、金含有層12及び金含有層22に含まれる金が銅構造体10及び銅構造体20の内部に拡散することで、界面から銅構造体10及び銅構造体20の深さ方向に向かって金原子の拡散した領域32が出現する。
【0021】
接合体30は、はんだバンプ等のはんだ材料を用いることなく形成可能であることから、接合体の厚みを低減することが可能となる。
また、銅構造体10又は銅構造体20の表面に金含有層12又は金含有層22を形成する方法についての詳細は後述するが、例えば従来から用いられるメッキ法が適用可能である。さらに、銅構造体10及び銅構造体20同士を結合させて、第1の部材14及び第2の部材24の接合体30を形成するには、第1の部材14及び第2の部材24を加熱及び加圧する手段を用いる必要があるところ、このような手段は従来から公知の手段が転用可能である。そのため、本開示の接合体の製造方法には、蟻酸等の化学薬品が不要であり、簡便な方法で金属同士を直接接合することが可能となる。
【0022】
また、本開示の接合体の製造方法を、例えば、半導体素子をパッケージ基板に接合して半導体装置を製造する半導体装置の製造方法に適用した場合に、半導体素子をパッケージ基板にはんだバンプ等のはんだ材料を用いることなく直接接合することが可能となる。そのため、半導体素子とパッケージ基板との間に介在するはんだの影響による、例えば77GHz帯におけるインピーダンスのミスマッチの発生が抑制される傾向にある。さらには、エレクトロマイグレーションの発生が抑制される傾向にある。
【0023】
本開示においては、金属含有部に含有される金属及び拡散金属含有層に含まれる金属含有部の内部に拡散可能な金属の種類は特に限定されない。
金属含有部に含有される金属としては、銅等が挙げられる。また、金属含有部の内部に拡散可能な金属としては、金等が挙げられる。
金属含有部に含有される金属として銅が用いられ、金属含有部の内部に拡散可能な金属として金が用いられる場合における本開示の接合体の製造方法は、第1の銅含有部と前記第1の銅含有部に接触して配置される第1の金含有層とを備える第1の部材と第2の銅含有部と前記第2の銅含有部に接触して配置される第2の金含有層とを備える第2の部材とを、前記第1の金含有層と前記第2の金含有層とが接触した状態で加熱及び加圧する工程を有するものである。
【0024】
金属含有部に含有される金属及び金属含有部の内部に拡散可能な金属の組み合わせは、金属含有部の内部に容易に拡散可能な金属を用いる観点から、金属含有部に含有される金属に対する拡散金属含有層に含まれる金属の拡散係数に着目して選択することが望ましい。
金属含有部に含有される金属に対する拡散金属含有層に含まれる金属の拡散係数は、加熱及び加圧する工程での温度において、1×10−17−1以上であることが好ましい。また、拡散係数は加熱及び加圧する工程での温度において1×10−17−1以下であってもよい。
拡散係数の測定には、A. B. Martin et al., Journal of Applied Physics, 25, pp.364−369, 1954.を参照することができる。
【0025】
第1の拡散金属含有層及び第2の拡散金属含有層は、接触させた状態で加圧することにより変形することが好ましい。拡散金属含有層が変形することで、部材間に生じうる空隙を埋めることが可能となる。
そのため、金属含有部の内部に拡散可能な金属は、第1の拡散金属含有層及び第2の拡散金属拡散層を接触させた状態で加圧した際の変形のしやすさの観点から、拡散金属含有層を構成する金属のヤング率が、加熱及び加圧する工程での温度において、75GPa以下であることが好ましい。また、ヤング率は、加熱及び加圧する工程での温度において、75GPa以上であってもよい。
ヤング率については、Hristina Petrova et al., Phys. Chem. Chem. Phys., Vol.8, Issue 7, pp.814−821, 2006.を参照することができる。
【0026】
金属含有部に含有される金属及び金属含有部の内部に拡散可能な金属の組み合わせは、金属含有部表面の酸化防止の観点から、酸化還元電位が1.5V以上となる組み合わせであることが好ましい。また、酸化還元電位は1.5V以下となる組み合わせであってもよい。
【0027】
金属含有部に含有される金属及び金属含有部の内部に拡散可能な金属の組み合わせは、前述の条件を満たすものであればどのようなものでもよく、金属含有部に含有される金属として銅及び金属含有部の内部に拡散可能な金属として金の組み合わせが好ましい。
【0028】
金属含有部に含有される金属として銅が用いられる場合における、金属含有部に含有される金属に占める銅の割合は、99.9質量%〜100質量%であることが好ましい。
金属含有部の内部に拡散可能な金属として金が用いられる場合における、拡散金属含有層に占める金の割合は、99.9質量%〜100質量%であることが好ましい。
また、第1の金属含有部に含有される金属及び第1の金属含有部の内部に拡散可能な金属の組み合わせと、第2の金属含有部に含有される金属及び第2の金属含有部の内部に拡散可能な金属の組み合わせとは同じであっても異なっていてもよく、同じであることが好ましい。
【0029】
本開示において、第1の拡散金属含有層と第2の拡散金属含有層とが接触した状態で第1の部材と第2の部材とを加熱する際の加熱条件としては、特に限定されるものではなく、金属含有部に含有される金属及び金属含有部の内部に拡散可能な金属の組み合わせに基づいて適宜選択することができる。金属含有部に含有される金属が銅であり、金属含有部の内部に拡散可能な金属が金である場合の加熱条件としては、例えば、350℃以上であってもよい。
【0030】
本開示において、第1の拡散金属含有層と第2の拡散金属含有層とが接触した状態で第1の部材と第2の部材とを加熱する際の加圧条件としては、特に限定されるものではなく、金属含有部に含有される金属及び金属含有部の内部に拡散可能な金属の組み合わせ並びに金属含有部の形状に基づいて適宜選択することができる。金属含有部に含有される金属が銅であり、金属含有部の内部に拡散可能な金属が金であり、金属含有部における拡散金属含有層同士が接触する箇所の形状が平板状である場合の加圧条件としては、10Pa〜10Paであってもよい。
【0031】
金属含有部に拡散金属含有層を接触した状態で配置する方法は、特に限定されるものではなく、従来から公知の方法を選択することができ、メッキ法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、スパッタ法等が挙げられる。これらの中でも、簡易に拡散金属含有層を形成可能なメッキ法が好ましい。
金属含有部に含有される金属が銅であり、金属含有部の内部に拡散可能な金属が金である場合、金属含有部に拡散金属含有層を接触した状態でメッキ法により配置する方法としては、電解金メッキ法であっても無電解金メッキ法であってもよい。
【0032】
本開示において、金属含有部に拡散金属含有層が「接触した状態で配置」されているとは、金属含有部と拡散金属含有層との間に下地層が設けられていない状態をいう。
【0033】
拡散金属含有層の厚みは特に限定されるものではなく、金属含有部に含有される金属及び金属含有部の内部に拡散可能な金属の組み合わせにより適宜選択することができる。金属含有部に含有される金属が銅であり、金属含有部の内部に拡散可能な金属が金である場合、拡散金属含有層の厚みは、0.08μm〜0.2μmであることが好ましく、0.1μm〜0.2μmであることがより好ましい。
【0034】
本開示の接合体の製造方法の適用範囲は特に限定されるものではない。例えば、半導体装置等の電子部品の製造及びMEMSの製造に適用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
<接合方法>
本開示の接合方法は、第1の金属含有部と前記第1の金属含有部に接触して配置され前記第1の金属含有部の内部に拡散可能な金属を含む第1の拡散金属含有層とを備える第1の部材と、第2の金属含有部と前記第2の金属含有部に接触して配置され前記第2の金属含有部の内部に拡散可能な金属を含む第2の拡散金属含有層とを備える第2の部材とを、前記第1の拡散金属含有層と前記第2の拡散金属含有層とが接触した状態で加熱及び加圧する工程を有する。
本開示の接合方法においては、前記第1の拡散金属含有層及び前記第2の拡散金属含有層が、接触させた状態で加圧することにより変形するものであってもよい。
また、本開示の接合方法は、第1の銅含有部と前記第1の銅含有部に接触して配置される第1の金含有層とを備える第1の部材と、第2の銅含有部と前記第2の銅含有部に接触して配置される第2の金含有層とを備える第2の部材とを、前記第1の金含有層と前記第2の金含有層とが接触した状態で加熱及び加圧する工程を有するものであってもよい。
本開示の接合方法における第1の金属含有部、第2の金属含有部、第1の拡散金属含有層及び第2の拡散金属含有層並びに第1の銅含有部、第2の銅含有部、第1の金含有層及び第2の金含有層の詳細については、本開示の接合体の製造方法と同様である。
また、本開示の接合方法における加熱条件及び加圧条件についても、本開示の接合体の製造方法と同様である。
【0036】
<金属接合部及び接合体>
本開示の金属接合部の第1実施形態は、2つの銅含有部が接合された金属接合部であって、前記2つの銅含有部の界面から各銅含有部の深さ方向に向かって少なくとも0.5μmの範囲に金原子が拡散しているものである。
また、本開示の金属接合部の第2実施形態は、2つの銅含有部が接合された金属接合部であって、前記2つの銅含有部の界面から各銅含有部の深さ方向に向かって金原子の濃度が減少する濃度勾配を有するものである。
【0037】
本開示の金属接合部は、いかなる方法で形成されたものであってもよく、その方法に特に限定はない。本開示の金属接合部の形成方法としては、例えば、本開示の接合体の製造方法が挙げられる。
【0038】
図5及び図6は、後述する実施例で実施された本開示の接合体の製造方法を適用して得られた金属接合部における、透過型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析法(TEM−EDX、Transmission Electron Microscope−Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)による観察結果を示す図であり、図5は金属接合部における銅の分布状況を示し、図6は金属接合部における金の分布状況を示す。図5において白色の濃い部分が銅の多く存在する箇所を示す。図6において白色の濃い部分が金の多く存在する箇所を示す。
後述する実施例では、ケイ素基板上にTiN層と、厚さが1.5μmの銅含有層と、厚さが0.2μmの金含有層をこの順に備えるサンプルを用いて接合体を製造した。
図5及び図6において、各図の上下方向における略中央の左から右に至る領域は、2つの銅含有部の界面に該当する。また、図5及び図6において、各図の上方向及び下方向が各銅含有部の厚み方向(つまりは、界面からの深さ方向)に該当する。
図6から明らかなように、2つの銅含有部の界面から各銅含有部の深さ方向に向かって、少なくとも0.5μmの範囲に金原子が拡散していることがわかる。また、図6から明らかなように、2つの銅含有部の界面から各銅含有部の深さ方向に向かって金原子の濃度が減少する濃度勾配の存在することがわかる。
【0039】
2つの銅含有部の界面から各銅含有部の深さ方向に向かって、各銅含有部の内部に拡散可能な金属である金原子の濃度が減少する濃度勾配の存在は、2つの銅含有部の界面近傍から各銅含有部の深さ方向に向かって金原子が拡散していった過程が存在することを示唆するものである。
【0040】
濃度勾配の存在の有無は、TEM−EDXの観察結果より目視により確認することができる。
【0041】
本開示の接合体の第1実施形態は、第1の銅含有部を備える第1の部材と、第2の銅含有部を備える第2の部材とが、前記第1の銅含有部と前記第2の銅含有部との金属接合部を介して接合されており、前記金属接合部における前記第1の銅含有部及び前記第2の銅含有部の界面から前記第1の銅含有部及び前記第2の銅含有部の深さ方向に向かって少なくとも0.5μmの範囲に金原子が拡散しているものである。
また、本開示の接合体の第2実施形態は、第1の銅含有部を備える第1の部材と、第2の銅含有部を備える第2の部材とが、前記第1の銅含有部と前記第2の銅含有部との金属接合部を介して接合されており、前記金属接合部における前記第1の銅含有部及び前記第2の銅含有部の界面から前記第1の銅含有部及び前記第2の銅含有部の深さ方向に向かって金原子の濃度が減少する濃度勾配を有するものである。
【0042】
本開示の接合体においては、第1の銅含有部又は第2の銅含有部の深さ方向に見たときにおける、第1の銅含有部と第2の銅含有部との接合箇所の形状は特に限定されるものではなく、例えば、面状、線状又は点状をなしていてもよい。
【0043】
本開示において、第1の部材及び第2の部材の構成は、当該部材の少なくとも一部に銅含有部(第1の銅含有部又は第2の銅含有部)を備えるものであれば特に限定されるものではなく、部材全体が銅含有部とされた構成であってもよい。
第1の部材及び第2の部材の具体例としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、リジッド配線板、フレキシブル配線板、配線済みのガラス基板、配線済みのシリコンウエハ、ウエハーレベルCSP(Wafer Level Chip Size Package)で採用される再配線層等の支持部材、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、抵抗アレイ、コイル、スイッチ等の受動素子などを挙げることができる。
また、第1の部材及び第2の部材は、MEMSによって集積化されたデバイスを構成する部材であってもよい。
【0044】
本開示の接合体に係る金属接合部の詳細は、本開示の金属接合部と同様である。
【0045】
本開示の金属接合部及び接合体においては、第1の銅含有部及び第2の銅含有部の界面から第1の銅含有部及び第2の銅含有部の深さ方向に向かって少なくとも0.7μmの範囲に金原子が拡散していてもよく、少なくとも1.0μmの範囲に金原子が拡散していてもよい。
【0046】
<半導体装置及び半導体素子>
本開示の半導体装置の第1実施形態は、半導体素子本体と前記半導体素子本体に設けられた銅を含む電極パッドとを備える半導体素子と、銅を含む再配線層とが、前記電極パッドと前記再配線層との金属接合部を介して接合されており、前記金属接合部における前記電極パッド及び前記再配線層の界面から前記電極パッド及び前記再配線層の深さ方向に向かって少なくとも0.5μmの範囲に金原子が拡散しているものである。
また、本開示の半導体装置の第2実施形態は、半導体素子本体と前記半導体素子本体に設けられた銅を含む電極パッドとを備える半導体素子と、銅を含む再配線層とが、前記電極パッドと前記再配線層との金属接合部を介して接合されており、前記金属接合部における前記電極パッド及び前記再配線層の界面から前記電極パッド及び前記再配線層の深さ方向に向かって金原子の濃度が減少する濃度勾配を有するものである。
【0047】
本開示の半導体装置を構成する半導体素子は特に限定されるものではなく、銅を含む電極パッドを設けられたものであれば従来から公知のものを用いることができる。半導体素子の具体例としては、シリコン半導体等が挙げられる。
【0048】
本開示の半導体装置を構成する再配線層は特に限定されるものではなく、ウエハーレベルCSPの分野で用いられる従来から公知の再配線層を適用することができる。
【0049】
本開示の半導体装置に係る金属接合部の詳細は、本開示の金属接合部と同様である。
【0050】
本開示の半導体素子は、半導体素子本体と、前記半導体素子本体に設けられ、前記半導体素子本体側から順に、銅含有部と前記銅含有部に接触して配置される金含有層とを有する電極パッドと、を備えるものである。
本開示の半導体素子は、本開示の半導体装置の製造に好適に用いることができる。
本開示の半導体素子としては、シリコン半導体等が挙げられる。なお、本開示の半導体素子は銅含有部と前記銅含有部に接触して配置される金含有層とを有する電極パッドを備えるところ、当該電極パッドの形成方法については特に限定されるものではなく、メッキ法、CVD法、スパッタ法等が挙げられる。これらの中でも、簡易に金含有層を形成可能なメッキ法が好ましい。
【実施例】
【0051】
以下、本開示を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本開示は下記実施例に限定されるものではない。
【0052】
[実施例1]
厚さが625μmのケイ素基板上に、TiN層と、厚さが1.5μmの銅含有層と、厚さが0.2μmの金含有層とをこの順に備える評価基板を準備した。評価基板は、メッキ法を用いて作製した。
得られた評価基板から、10mm×10mmのサンプル1と15mm×15mmのサンプル2とを切り出した。
サンプル1及びサンプル2を、アセトンによる超音波洗浄、イソプロパノールによる超音波洗浄及び純水による超音波洗浄の順で5分間ずつ処理した。その後、VUV(真空紫外線、Vacuum Ultra Violet)/Oにより5分間処理した。
上述の処理を実施したサンプル1とサンプル2とを、両者の金含有層が接触するように配置し、次いで大気圧下において10Paの条件で加圧しながら350℃で15分間加熱処理を行い、接合体を得た。サンプル1及びサンプル2に対する加熱加圧処理は、ズース・マイクロテック株式会社製のSB6eを用いて実施した。
得られた接合体について、ヒューグルエレクトロニクス株式会社製のRoyce 650を用いてシェア試験を実施した。シェアの方向は、サンプル1及びサンプル2の接合面に平行な方向とした。
その結果、サンプル1及びサンプル2のバルク破壊が生じ、サンプル1及びサンプル2が強固に接合されていることが明らかとなった。
【0053】
また、得られた接合体に係る金属接合部における銅及び金の分布状況について、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製のJEM−2100F/JED−2300)を用いたエネルギー分散型X線分析法(TEM−EDX)に基づき評価した。金属接合部における銅の分布状況を図5に、金属接合部における金の分布状況を図6に各々示す。
図6から明らかなように、サンプル1及びサンプル2の界面から各サンプルの深さ方向に向かって、少なくとも0.5μmの範囲に金原子が拡散していることがわかった。また、図6から明らかなように、サンプル1及びサンプル2の界面から各サンプルの深さ方向に向かって金原子の濃度が減少する濃度勾配の存在することがわかった。
【0054】
[参考例]
N. Unami et al., Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 49, No. 6S, 06GN12, 2010.によれば、銅含有層と金含有層の間にニッケル含有層を介在させた評価基板を用いて実施例1と同様にして接合を試みても、加熱及び加圧処理後も金がニッケル含有層の表面に残り、銅同士の直接接合は実現しない。
【符号の説明】
【0055】
10、20 銅構造体
12、22 金含有層
14 第1の部材
24 第2の部材
30 接合体
32 金原子の拡散した領域
A 界面
図1
図2
図3
図4
図5
図6