(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0023】
(実施の形態1)
以下、実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
<AR−HUDの動作について>
図1は、本実施の形態1によるAR機能を実現するHUD装置(以下では「AR−HUD」と記載する場合がある)における動作概念の例について概要を示した説明図である。
【0025】
ヘッドアップディスプレイ装置であるAR−HUD1は、
図1に示すように、プロジェクタやLCD(Liquid Crystal Display)などからなる映像表示装置30に表示された映像を、ミラー51やミラー52により反射させて、開口部7を通過して車両2のウィンドシールド3に投射する。ミラー51やミラー52は、例えば、自由曲面ミラーや光軸非対称の形状を有するミラーである。
【0026】
運転者5は、ウィンドシールド3に投射された映像を見ることで、透明のウィンドシールド3を通してその前方に虚像として上記映像を視認する。本実施の形態では、例えば、ミラー52の角度を調整することで、ウィンドシールド3に投射する映像の位置が調整され、運転者5が見る虚像の表示位置を上下方向に調整することが可能である。そして、虚像を車外の風景(道路や建物、人など)に重畳させるようにその表示位置を調整することで、AR機能を実現する。
【0027】
また、AR−HUD1は、ウィンドシールド3に投射される映像の表示領域を拡大してより多くの情報をウィンドシールド3に表示することも可能である。例えばミラー52などをより大面積化することによって実現することができる。
【0028】
〈AR−HUDの構成例〉
図2は、本実施の形態1によるAR−HUD1の全体の構成例について概要を示した機能ブロック図である。
【0029】
車両2に搭載されたAR−HUD1は、
図2に示すように、車両情報取得部10、制御部20、映像表示装置30、ミラー駆動部50、ミラー52、およびスピーカ60などからなる。なお、
図2の例では、車両2の形状を乗用車のように表示しているが、特にこれに限られず、車両一般に適宜適用することができる。
【0030】
車両情報取得部10は、車両2の各部に設置された後述するような各種のセンサなどの情報取得デバイスからなり、車両2にて生じた各種イベントを検知したり、所定の間隔で走行状況に係る各種パラメータの値を検知・取得したりすることで車両情報4を取得して出力する。
【0031】
車両情報4には、図示するように、例えば、車両2の速度情報やギア情報、ハンドル操舵角情報、ランプ点灯情報、外光情報、距離情報、赤外線情報、エンジンON/OFF情報、車内外のカメラ映像情報、加速度ジャイロ情報、GPS(Global Positioning System)情報、ナビゲーション情報、車車間通信情報、および路車間通信情報などが含まれ得る。
【0032】
制御部20は、AR−HUD1の動作を制御する機能を有し、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびこれにより実行されるソフトウェアにより実装される。マイクロコンピュータやFPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアにより実装されていてもよい。
【0033】
制御部20は、
図2に示したように、車両情報取得部10から取得した車両情報4などに基づいて、虚像として表示する映像を映像表示装置30を駆動して生成し、これをミラー52などによって適宜反射させることでウィンドシールド3に投射する。そして、虚像の表示領域6の表示位置を調整するなどの制御を行う。
【0034】
映像表示装置30は、上述したように、例えば、プロジェクタやLCDにより構成されるデバイスであり、制御部20からの指示に基づいて虚像を表示するための映像を生成してこれを投射したり表示したりする。
【0035】
ミラー駆動部50は、制御部20からの指示に基づいてミラー52の角度を調整し、虚像の表示領域6の位置を上下方向に調整する。
【0036】
スピーカ60は、AR−HUD1に係る音声出力を行う。例えば、ナビゲーションシステムの音声案内や、AR機能によって運転者5に警告などを通知する際の音声出力などを行うことができる。
【0037】
〈ハードウェアの構成例〉
図3は、
図2のAR−HUD1における車両情報4の取得に係るハードウェア構成の例について概要を示した説明図である。
【0038】
ここでは、主に車両情報取得部10および制御部20の一部のハードウェア構成について示す。車両情報4の取得は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)21の制御の下、ECU21に接続された各種のセンサなどの情報取得デバイスにより行われる。
【0039】
これらの情報取得デバイスとしては、例えば、車速センサ101、シフトポジションセンサ102、ハンドル操舵角センサ103、ヘッドライトセンサ104、照度センサ105、色度センサ106、測距センサ107、赤外線センサ108、エンジン始動センサ109、加速度センサ110、ジャイロセンサ111、温度センサ112、路車間通信用無線受信機113、車車間通信用無線受信機114、カメラ(車内)115、カメラ(車外)116、GPS受信機117、およびVICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム、登録商標(以下同様))受信機118などの各デバイスを有する。
【0040】
必ずしもこれら全てのデバイスを備えている必要はなく、また、他の種類のデバイスを備えていてもよい。備えているデバイスによって取得できる車両情報4を適宜用いることができる。
【0041】
車速センサ101は、
図2の車両2の速度情報を取得する。シフトポジションセンサ102は、車両2の現在のギア情報を取得する。ハンドル操舵角センサ103は、ハンドル操舵角情報を取得する。
【0042】
ヘッドライトセンサ104は、ヘッドライトのON/OFFに係るランプ点灯情報を取得する。照度センサ105および色度センサ106は、外光情報を取得する。測距センサ107は、車両2と外部の物体との間の距離情報を取得する。
【0043】
赤外線センサ108は、車両2の近距離における物体の有無および距離などに係る赤外線情報を取得する。エンジン始動センサ109は、エンジンのON/OFF情報を検知する。
【0044】
加速度センサ110およびジャイロセンサ111は、車両2の姿勢や挙動の情報として、加速度や角速度からなる加速度ジャイロ情報を取得する。温度センサ112は、車内外の温度情報を取得する。
【0045】
路車間通信用無線受信機113および車車間通信用無線受信機114は、車両2と道路や標識、信号等との間の路車間通信により受信した路車間通信情報、および車両2と周辺の他の車両との間の車車間通信により受信した車車間通信情報をそれぞれ取得する。
【0046】
カメラ(車内)115およびカメラ(車外)116は、車内および車外の状況の動画像を撮影して車内のカメラ映像情報および車外のカメラ映像情報をそれぞれ取得する。カメラ(車内)115では、例えば、
図1の運転者5の姿勢や、眼の位置、動きなどを撮影する。得られた動画像を解析することにより、例えば、運転者5の疲労状況や視線の位置などを把握することが可能である。
【0047】
また、カメラ(車外)116では、車両2の前方や後方などの周囲の状況を撮影する。得られた動画像を解析することにより、例えば、周辺の他の車両や人などの移動物の有無、建物や地形、雨や積雪、凍結、凹凸などといった路面状況、および道路標識などを把握することが可能である。
【0048】
GPS受信機117およびVICS受信機118は、それぞれ、GPS信号を受信して得られるGPS情報およびVICS信号を受信して得られるVICS情報を取得する。これらの情報を取得して利用するカーナビゲーションシステムの一部として実装されていてもよい。
【0049】
〈制御部の構成例〉
図4は、
図2のAR−HUD1の構成例について詳細を示した機能ブロック図である。
【0050】
制御部20は、より詳細には、ECU21、音声出力部22、不揮発性メモリ23、メモリ24、光源調整部25、歪み補正部26、表示素子駆動部27、ミラー調整部29、自己障害判定部80、ユニット障害判定部81、および障害時表示決定部82などの各部を有する。
【0051】
ECU21は、
図3に示したように、車両情報取得部10を介して車両情報4を取得するとともに、取得した情報を必要に応じて不揮発性メモリ23やメモリ24に記録、格納したり読み出したりする。
【0052】
不揮発性メモリ23には、各種制御のための設定値やパラメータなどの設定情報が格納されていてもよい。また、ECU21は、専用のプログラムを実行させるなどにより、AR−HUD1に虚像として表示する映像データを生成する。
【0053】
音声出力部22は、必要に応じてスピーカ60を介して音声情報を出力する。光源調整部25は、映像表示装置30の発光量を調整する。
【0054】
歪み補正部26は、ECU21が生成した映像について、映像表示装置30によって車両2のウィンドシールド3に投射した場合に、ウィンドシールド3の曲率によって生じる映像の歪みを画像処理により補正する。表示素子駆動部27は、歪み補正部26による補正後の映像データに応じた駆動信号を映像表示装置30に対して送り、投射する映像を生成させる。ミラー調整部29は、虚像の表示領域6自体の位置を調整する必要がある場合に、ミラー駆動部50を介してミラー52の角度を変更し、虚像の表示領域6を上下に移動させる。
【0055】
自己障害判定部80は、AR−HUD1におけるハードウェアなどの異常、すなわち装置異常の有無を判定する。自己障害判定部80は、AR−HUD1の装置異常が発生していると判定した場合、異常発生信号を生成して障害時表示決定部82に出力する。
【0056】
ユニット障害判定部81は、AR−HUD1以外の車両2に搭載されるユニットに障害が発生しているか否かを判定する。ユニット障害判定部81は、他のユニットに異常が発生していると判定すると、異常発生信号を生成して障害時表示決定部82に出力する。
【0057】
障害時表示決定部82は、自己障害判定部80またはユニット障害判定部81から出力される異常発生信号を受けて、表示されている虚像が運転者の運転の妨げとならないように映像表示装置30を制御する。
【0058】
<処理内容>
図5は、
図2のAR−HUD1における初期動作の例について概要を示したフローチャートである。
【0059】
停止中の車両2においてイグニッションスイッチがONされることでAR−HUD1の電源がONされると(ステップS01)、AR−HUD1は、制御部20からの指示に基づいて、まず、車両情報取得部10により車両情報4を取得する(ステップS02)。
【0060】
そして、制御部20は、車両情報4のうち、照度センサ105や色度センサ106などにより取得した外光情報に基づいて好適な明るさレベルを算出し(ステップS03)、光源調整部25により映像表示装置の発光量を制御して、算出した明るさレベルとなるように設定する(ステップS04)。例えば、外光が明るい場合には明るさレベルを高くし、暗い場合には明るさレベルを低く設定する。
【0061】
その後、ECU21により、虚像として表示する映像、例えば、初期画像などを決定、生成し(ステップS05)、生成した映像に対して歪み補正部26により歪みを補正する処理を実施した後(ステップS06)、表示素子駆動部27により映像表示装置30が有する表示素子を駆動・制御して、投射する映像を生成させる(ステップS07)。これにより、映像がウィンドシールド3に投射され、運転者5は、虚像を視認することができるようになる。
【0062】
AR−HUD1全体で、上述した一連の初期動作も含む各部の起動・始動が完了すると、HUD−ON信号が出力されるが、制御部20ではこの信号を受けたか否かを判定する(ステップS08)。
【0063】
受けていなければ、さらにHUD−ON信号を一定時間待ち受け(ステップS09)、ステップS08の処理にてHUD−ON信号を受けたと判定されるまで、HUD−ON信号の待ち受け処理(ステップS09)を繰り返す。
【0064】
ステップS08の処理において、HUD−ON信号を受けたと判定された場合は、後述するAR−HUD1の通常動作を開始し(ステップS10)、一連の初期動作を終了する。
【0065】
〈通常動作例〉
図6は、
図2のAR−HUD1における通常動作の例について概要を示したフローチャートである。
【0066】
通常動作においても、基本的な処理の流れは上述の
図5に示した初期動作と概ね同様である。まず、AR−HUD1は、制御部20からの指示に基づいて、車両情報取得部10により車両情報4を取得する(ステップS21)。
【0067】
続いて、制御部20は、後述するステップS23の処理を実行するか否かを判定する(ステップS22)。このステップS22の処理は、予め設定された時間が経過する毎に行われるものであり、前回の処理から設定された設定時間が経過している場合にステップS23の処理を実行すると判定する。
【0068】
制御部20が前回の処理から設定された設定時間が経過していると判定した際には、障害発生状況の確認および表示内容変更処理を実行する(ステップS23)。障害発生状況の確認および表示内容変更処理は、AR−HUD1の障害発生状況を確認してAR−HUD1が表示する内容を変更する処理である。なお、このステップS23の処理については、後述する
図10にて詳しく説明する。
【0069】
また、ステップS22の処理にて、前回の処理が設定時間を経過していない場合、制御部20は、車両情報4のうち、照度センサ105や色度センサ106などにより取得した外光情報に基づいて明るさレベル調整処理を行う(ステップS24)。
【0070】
その後、ECU21は、ステップS21の処理にて取得した最新の車両情報4に基づいて、虚像として表示する映像を現状のものから必要に応じて変更し、変更後の映像を決定、生成する(ステップS25)。
【0071】
なお、車両情報4に基づいて表示内容を変更するパターンは、取得した車両情報4の内容やそれらの組み合わせなどに応じて多数のものがあり得る。例えば、速度情報が変化したことにより、常時表示されている速度表示の数値を変更する場合や、ナビゲーション情報に基づいて案内の矢印図形を表示/消去したり、矢印の形状や表示位置などを変更したりする場合など、様々なパターンがあり得る。
【0072】
その後、車両2の走行状況に応じて視認性や表示内容の適切性などを維持するための調整・補正処理を行う。虚像の表示領域6自体の位置を調整する必要がある場合、ミラー駆動部50を介してミラー52の角度を変更し、虚像の表示領域6を上下に移動させるミラー調整処理を行う(ステップS26)。
【0073】
上述した一連の通常動作を実行している際に、車両2の停止などに伴って電源OFFなどがなされると、AR−HUD1に対してHUD−OFF信号が出力されるが、制御部20では、この信号を受けたか否かを判定する(ステップS27)。
【0074】
HUD−OFF信号を受けていなければ、ステップS21の処理に戻って、HUD−OFF信号を受けるまで一連の通常動作を繰り返す。HUD−OFF信号を受けたと判定された場合は、一連の通常動作を終了する。
【0075】
続いて、
図6のステップS22の処理による自己障害判定部80およびユニット障害判定部81による異常の判定技術について説明する。
【0076】
〈自己障害判定テーブルの構成例〉
図7は、
図4の自己障害判定部80が有する自己障害判定テーブルTB1による構成の一例を示す説明図である。
【0077】
自己障害判定部80は、自己障害判定テーブルTB1を参照してAR−HUD1に異常が発生したか否かを判定する。自己障害判定テーブルTB1は、例えば自己障害判定部80が有する図示しないメモリなどに格納される。あるいは
図4の制御部20が有する不揮発性メモリ23または制御部20が有する図示しないメモリなどに格納するようにしてもよい。
【0078】
自己障害判定テーブルTB1のデータ構成は、
図7に示すように、パラメータ、状態、正常範囲、しきい値、および現在値などからなる。この自己障害判定テーブルTB1におけるパラメータの現在値が装置情報となる。
【0079】
パラメータは、自己障害判定部80がAR−HUD1に異常が発生しているか否かを判定する際に参照する情報であり、該自己障害判定部80が取得するデータである。
【0080】
これらパラメータは、例えば映像表示装置30の温度、制御部20、すなわちCPUの温度、映像表示装置30が発光する光の光度、およびミラー52の角度などの情報からなる。パラメータは、ある間隔毎に定期的に取得する。
【0081】
なお、CPUの温度のしきい値は、該CPUに障害などが発生する前の温度、すなわちCPUが完全に暴走などの障害に陥る前の予防的な温度に設定する。これは、CPUの温度のしきい値が高く、例えば該CPUが障害に陥る間際の温度に設定すると、上記したように障害と判定して間もなくCPUの暴走や誤動作などが発生してAR−HUD1の制御が困難となってしまう恐れがあるために、しきい値に余裕を持たせている。
【0082】
状態は、パラメータの取得状態を示したものであり、パラメータの情報が取得できている場合には、読取可となり、センサなどが故障してパラメータが取得できない場合には、読取不可となる。
【0083】
正常範囲は、各パラメータの正常値の範囲を示したものである。現在値は、自己障害判定部80がパラメータを取得した際の値である。よって、現在値は、自己障害判定部80がパラメータを取得する毎に更新される。
【0084】
自己障害判定部80は、取得したパラメータと各パラメータに対して予め設定されるしきい値とをそれぞれ比較して、取得したパラメータの現在値が設定されるしきい値を超えた際にAR−HUD1に異常が発生したと判定する。
【0085】
例えば映像表示装置30の温度がしきい値である80℃を超えた場合、映像表示装置30の故障などが発生する恐れがあるので、自己障害判定部80は、AR−HUD1に障害が発生したまたは発生する恐れがあると判定して、異常発生信号を生成して出力する。
【0086】
図7に示したパラメータに加えて、例えば
図7のパラメータを取得するセンサなど稼働状態などを示す他のパラメータなどを取得するようにしてもよい。
【0087】
例えば映像表示装置30の温度の取得およびCPUの温度の取得には、それぞれ温度センサが用いられる。そこで、他のパラメータとして、温度センサなどの各センサの稼働時間、累積稼働時間、および累積エラー回数などの情報を取得する。
【0088】
連続稼働時間は、例えば温度センサが連続して稼働した時間を示す。累積稼働時間は、温度センサなどの稼働時間の累積値である。累積エラー回数は、温度センサなどが温度情報を測定する際に、測定エラーとなった回数を示す。
【0089】
これら他のパラメータに対しても、予めしきい値がそれぞれ設定されており、
図7に示すパラメータだけでなく、稼働時間、累積稼働時間、および累積エラー回数などについても、しきい値を超えた場合には、センサが寿命を迎えている恐れがあり、その結果、AR−HUD1に障害などが発生する可能性が高いとして判定して異常発生信号を生成して出力する。
【0090】
〈他ユニット障害判定テーブルの構成例〉
図8は、
図4のユニット障害判定部81が有する他ユニット障害判定テーブルTB2による構成の一例を示す説明図である。
【0091】
他ユニット障害判定テーブルTB2は、
図8に示すように、通信相手、規定通信間隔、障害判定しきい値、送信先、連続エラー回数上限、および現在の連続エラー回数などの情報を有する。
【0092】
通信相手は、制御部20と定期的に通信を行うユニットを示す。この場合、通信相手は、例えば
図2の車両情報4を取得する車両情報取得部10が有するユニットであり、例えば
図3のGPS受信機117、車速センサ101、およびカメラ116などである。
【0093】
規定通信間隔は、制御部20とユニットとの予め規定された通信間隔の時間を示す。障害判定しきい値は、制御部20とユニットとの通信に異常があると判定する際に用いるしきい値である。
【0094】
制御部20とユニットとの通信間隔の時間と障害判定しきい値の時間とを比較し、通信が途絶えた時間が障害判定しきい値の時間を超過した際にユニット障害判定部81は、異常発生信号を生成して出力する。
【0095】
送信先は、制御部20がデータを送信するユニットを示す。連続エラー回数上限は、制御部20とユニットとの間の連続した送信エラーの回数の上限値を示す。現在の連続エラー回数は、現在の制御部20とユニットとの間の連続した送信エラーの回数を示す。
【0096】
また、ユニット障害判定部81は、現在の連続エラー回数と連続エラー回数上限の値とを比較し、現在の連続エラー回数が連続エラー回数上限の値を超えた場合に異常発生信号を生成して出力する。ここで、制御部20とユニットとの通信間隔の時間および現在の連続エラー回数がユニット情報となる。
【0097】
続いて、障害時表示決定部82による異常が発生した場合の表示内容変更処理の動作について説明する。
【0098】
〈表示例〉
図9は、
図4の制御部20が有する障害時表示決定部82による異常発生時におけるウィンドシールド3への表示の一例を示した説明図である。
【0099】
この
図9は、
図2の車両2の運転者5が運転席からウィンドシールド3を介して視認している前方の風景およびウィンドシールド3に投射されたAR−HUD1による虚像を表示する表示領域6の状態の例を模式的に示したものである。
【0100】
異常発生信号を受け取ると、障害時表示決定部82は、AR−HUD1それ自体をシャットダウンする処理を実行する。AR−HUD1がシャットダウンすることにより、
図9に示すように、点線にて示す表示領域6には、何も表示されない。これにより、運転者5の視野を確保することができ、安全運転を維持することができる。
【0101】
AR−HUD1のシャットダウンは、例えばAR−HUD1と連携して動作するユニット、具体的には、車両2の自動運転を支援する自動運転システムが有するECUなどがAR−HUD1に供給される電力を遮断するようにしてもよい。その場合、障害時表示決定部82が制御信号を上述したユニットが有するECUなどに出力する。ECUは、障害時表示決定部82からの制御信号を受け取ると、AR−HUD1に供給される電力を遮断する処理を行う。
【0102】
あるいは、障害時表示決定部82がAR−HUD1に供給される電力を遮断する処理を行うようにしてもよい。AR−HUD1を障害時表示決定部82がシャットダウンする処理では、該障害時表示決定部82がシャットダウン処理を行ったことを示すフラグを出力する。
【0103】
障害時表示決定部82が出力したフラグは、例えば
図4の不揮発性メモリ23などに格納される。そして、AR−HUD1の起動の際にフラグが立っていた場合には、制御部20が自己診断を実施して各種パラメータに異常がないことを確認した後、初期動作を実行する。
【0104】
また、表示領域6に虚像を表示させないようにする他の処理としては、例えば障害時表示決定部82がECUを介して光源調整部25を制御して、映像表示装置30の発光量を調整させる処理を行う。
【0105】
具体的には、映像表示装置30がLCDの場合には、該LCDに備えられる光源であるバックライトをオフさせる。これにより、AR−HUD1は、虚像を表示させる動作を行っているが、表示領域6には何も表示されていない状態にすることができる。
【0106】
バックライトをオフさせて表示領域6に表示させない状態とした場合の利点は、該バックライトをオフさせた後、表示領域6への虚像の表示を復帰させることができる点である。
【0107】
例えば
図7において、CPUの温度がしきい値を超えたためにLCDのバックライトがオフされ、表示領域6に虚像が表示されていないものとする。この場合、AR-HUD1がシャットダウンしていないので、制御部20は動作している。
【0108】
図6に示したように、AR-HUD1の動作時には、障害発生状況を調査(ステップS22の処理)がある間隔毎に実行されている。よって、LCDのバックライトがオフされた後においても、パラメータの監視は続けられている。LCDのバックライトのオフ後において、ステップS22の処理にてCPUの温度がしきい値以下となったと判定すると、制御部20は、再びバックライトをオンするように制御することができる。
【0109】
なお、バックライトは、パラメータの現在値がしきい値以下となった際に直ちにオンするようにしてもよいし、あるいはパラメータの現在値がしきい値以下となってから予め設定された時間が経過した後バックライトをオンするようにしてもよい。
【0110】
これにより、AR−HUD1のシャットダウンと再起動などの処理を行うことなく、表示領域6への虚像の表示を復帰させることができ、運転者5の利便性を高めることができる。
【0111】
続いて、上述した障害発生状況の確認および表示内容変更処理について詳しく説明する。
【0112】
〈障害発生状況の確認および表示内容変更処理の例〉
図10は、
図6のステップS23の処理である障害発生状況の確認および表示内容変更処理の一例を示すフローチャートである。
【0113】
なお、
図10では、表示内容変更処理の例として、例えば上述したLCDのバックライトをオフにして表示領域6に虚像を表示させないようにする場合の処理を示したものである。
【0114】
まず、自己障害判定部80およびユニット障害判定部81が対象のパラメータをそれぞれ取得し(ステップS31)、取得したパラメータを
図7の自己障害判定テーブルTB1および
図8の他ユニット障害判定テーブルTB2にそれぞれ格納する(ステップS32)。
【0115】
続いて、制御部20は、障害中の特殊表示を実行中であるか否かを判定する(ステップS33)。
図10において、特殊表示とは、LCDのバックライトがオフされているなど、通常AR−HUD1に虚像を表示するときとは異なる表示を行うことである。
【0116】
ステップS33の処理にて、特殊表示を実行中ではない、すなわちLCDのバックライトがオンである判定すると、自己障害判定部80およびユニット障害判定部81は、
図7の自己障害判定テーブルTB1および
図8の他ユニット障害判定テーブルTB2をそれぞれ参照し、取得した各種のパラメータの現在値がしきい値を超えているか否かを判定する(ステップS34)。
【0117】
パラメータの現在値がしきい値を超えていない場合、障害発生状況の確認および表示内容変更処理は終了となる。また、ステップS33の処理にてパラメータの現在値がしきい値を超えている場合、再び取得したパラメータの現在値がしきい値を超えているか否かを判定する(ステップS35)。このステップS35の処理は、予め設定した回数、繰り返される。ステップS35の処理を繰り返し実行するのは、例えばセンサの誤作動などにより一度だけパラメータの現在値がしきい値を超えてしまったケースを障害が発生したと判断してしまうことを防ぐためである。
【0118】
ステップS35の処理にてパラメータの現在値がしきい値を超えていないと判定した際には、所定時間待機状態とした後(ステップS36)、ステップS34の処理に戻る。また、ステップS35の処理にてパラメータの現在値がしきい値を超えていると判定した際には、特殊表示を実行、すなわちLCDのバックライトをオフする(ステップS37)。
【0119】
また、ステップS33の処理において、特殊表示を実行中である、すなわちLCDのバックライトがオフである判定すると、自己障害判定部80およびユニット障害判定部81は、
図7の自己障害判定テーブルTB1および
図8の他ユニット障害判定テーブルTB2をそれぞれ参照し、取得した各種のパラメータの現在値がしきい値を超えているか否かを判定する(ステップS38)。
【0120】
ステップS38の処理にて、パラメータの現在値がしきい値を超えている場合、障害発生状況の確認および表示内容変更処理が終了となり、バックライトのオフが継続される。また、ステップS38の処理にてパラメータの現在値がしきい値を超えていない場合は、障害発生はないので、障害中の特殊表示の実行を解除、すなわちLCDのバックライトをオンにする(ステップS39)。
【0121】
その後、制御部20は、AR−HUD1の表示領域6に表示するコンテンツを決定して(ステップS40)、決定したコンテンツの表示処理を実行する(ステップS41)。
【0122】
以上により、障害発生状況の確認および表示内容変更処理は終了となる。
【0123】
なお、
図10においては、自己障害判定部80およびユニット障害判定部81がそれぞれ異常を異常検出する例を示したが、自己障害判定部80による装置異常の検出だけを行うようにしてもよい。あるいはユニット障害判定部81によるユニット異常の検出だけを行うようにしてもよい。
【0124】
〈問題点について〉
ここで、AR−HUD1に障害などにより異常表示が発生した際の問題点について説明する。
【0125】
図11は、本発明者の検討によるAR−HUD1の障害発生時における異常表示画面の一例を示す説明図である。また、
図12は、本発明者の検討によるAR−HUDの障害発生時における異常表示画面の他の例を示す説明図である。
【0126】
図11(a)は、運転者が運転席からウィンドシールドを介して視認している虚像の表示領域150にナビゲーションによる案内表示の異常表示の例を示したのである。この場合、
図11(a)の上方に示すように、車両151が交差点の左折ポイントP1を過ぎたにもかかわらず、左折案内の表示を出し続けた状態となっている。また、左折ポイントP1までの距離を示す距離数についても、間違った表示となっている。
【0127】
また、
図11(b)は、異常表示により、表示領域150の全体、あるいは大部分が塗りつぶされたように表示されている例を示している。
図12では、表示領域150の全体にわたって、不必要かつ無関係な多数のオブジェクトが表示されている状態を示している。
【0128】
図11および
図12に示した例のように、AR−HUD1に障害が発生して異常表示がされると、運転者は、表示領域150の表示に気をとられてしまい、運転動作が疎かになってしまう恐れがある。そればかりか、
図11(b)や
図12のように、前方の視界不良を引き起こしてしまう恐れがある。
【0129】
一方、本発明のAR−HUD1の場合には、該AR−HUD1の障害をいち早く検知して、
図9などに示したように表示領域6の虚像を表示させなくすることができる。これによって、運転者5が表示領域6を注視して注意力が散漫になったり、あるいは異常表示による前方の視界不良が発生して安全にかかわる重要な情報が認識されないなどの事態を回避することができる。
【0130】
以上により、AR−HUD1は障害発生時においても運転者5の視界を確保することができるので、車両運転時の安全を向上させることができる。
【0131】
なお、本実施の形態1では、障害発生時に表示領域6に虚像を表示させないようにしたが、例えば表示領域6の表示はそのままに、該表示領域6の表示の明るさ、すなわち輝度を最低とするようにしてもよい。
【0132】
あるいは、虚像が表示される領域を小さくする、言い換えれば小面積化するようにしてもよい。
【0133】
〈他の表示例〉
図13は、
図4の制御部20が有する障害時表示決定部82による障害発生時におけるウィンドシールド3への表示の他の例を示した説明図である。
【0134】
この
図13において、点線は、障害が発生する前の正常動作時における表示領域6を示しており、実線は、障害が発生した際の表示領域6aを示している。正常動作時には、表示領域6に虚像を表示し、障害が発生した際には、表示領域の面積を縮小して表示領域6aとする。また、表示領域の面積を縮小した表示領域6aに障害が発生した旨などのアラートを表示させ、運転者5に通知することもできる。
【0135】
これによって、運転者5の前方視界を確保することができる。この表示領域の縮小は、特に広い範囲に渡って虚像を表示するAR−HUDに有効である。
【0136】
これによって、表示領域6に表示される情報を目立たなくすることができるので、前方の視界不良を低減することができる。
【0137】
(実施の形態2)
〈AR-HUDの構成例〉
図14は、本実施の形態2によるAR-HUD1における構成の一例を示す説明図である。
【0138】
本実施の形態2においては、障害発生時に虚像を表示させない技術として、機能性フィルムを用いた例について説明する。
【0139】
この場合、AR-HUD1は、前記実施の形態1の
図1および
図2の構成に新たに機能性フィルム120を設けたものである。機能性フィルム120は、電圧の印加に応じて透明や白色などに変化する。例えば電圧を印加した際には白色となって光を透過させず、電圧を印加しない場合には、透明となり、光を透過させる特性を有する。
【0140】
この機能性フィルム120は、前記実施の形態1の
図1における開口部7に設けられる。そして、通常動作時には、
図14(a)に示すように印加電圧を制御して光を透過させるように透明の状態とする。そして、障害の発生時には、
図14(b)に示すように印加電圧を制御して光を透過させないように白色の状態とする。
【0141】
これにより、障害発生時、
図9に示すように表示領域6には、虚像が表示されなくなる。機能性フィルム120に印加する電圧の制御は、例えば
図4の障害発生時表示決定部82が行うものとする。
【0142】
これによっても、運転者5が表示領域6を注視したり、あるいは異常表示による前方の視界不良の発生を防ぐことができる。
【0143】
以上により、安全運転に寄与することができる。
【0144】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0145】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0146】
また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。