(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
伸張度が10%以上の基材上に形成された粘着剤組成物からなる前駆体層に、放射線を照射して、架橋反応物を含有する粘着剤層を前記基材上に得る工程を備える、皮膚貼着用テープの製造方法であって、
前記粘着剤組成物は、アルキル基の炭素数が4〜18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーを単量体単位として含む第1のポリマーと、アルキル基の炭素数が4〜18のアルキル(メタ)アクリレートモノマー及び放射線架橋基含有エチレン性不飽和モノマーを単量体単位として含む第2のポリマーと、を含有し、
前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーの少なくとも一方はエチレン性不飽和極性モノマーを単量体単位として更に含み、
前記第1及び第2のポリマーを構成する全ての単量体に対する前記放射線架橋基含有エチレン性不飽和モノマーの質量比は0.05〜10質量%であり、
前記第1及び第2のポリマーを構成する全ての単量体に対する前記エチレン性不飽和極性モノマーの質量比は3.0質量%未満であり、
前記放射線架橋基含有エチレン性不飽和モノマーは、エチレン性不飽和結合と1種又は2種以上の放射線架橋基とを有するモノマーであり、
前記放射線架橋基は、放射線照射によりラジカルを生じ得る官能基である、皮膚貼着用テープの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸等の他の類似の表現においても同様である。また、本明細書中、「実質的に含有しない」とは、対象成分の含有量が、0.0005質量%未満であることを意味する。また、本明細書において、「粘着力」とは、例えば、180°剥離試験によって測定される剥離強度をいい、「保持力」とは、例えば、剪断強度試験によって測定される剪断強度をいう。
【0016】
本実施形態に係る皮膚貼着用テープは、伸張度が10%以上の基材と、該基材の少なくとも片面に積層された粘着剤層と、を備える。この皮膚貼着用テープは、再剥離性(repositionable)を有しており、医療用途等において広く用いることができる。具体的には、サージカルテープ、キネシオテープ、スポーツテープ、ドレッシングテープ(3M社製「Tegaderm」等)、バンデージなどに用いることができる。皮膚貼着用テープの形状は特に限定されず、例えば、シート状であってよい。
【0017】
基材は、皮膚への貼り付けの観点から、伸張度が10%以上である必要があるが、その限りにおいて、和紙、高分子フィルム、不織布、綿布等の従来皮膚貼着用テープに用いられる基材(例えば裏材)を任意に用いることができる。基材の伸張度は、テンシロン等の引っ張り測定器により測定することでき、例えば、10〜100%であってよい。基材の厚さは、基材の種類に応じて適宜設定することができる。基材が高分子フィルムである場合、基材の厚さは10〜50μmであってよい。基材が不織布である場合、基材の厚さは例えば坪量として30〜100g/m
2であってよい。
【0018】
粘着剤層は、基材の少なくとも片面に積層されていればよく、基材の両面に積層されていてもよい。粘着剤層の厚さは、例えば、5μm以上であってよく、10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。粘着剤層の厚さは、100μm以下であってよく、300μm以下であってもよい。上述の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。なお、以下の同様の記載においても、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。
【0019】
粘着剤層は、少なくとも放射線の照射により生じた架橋構造を有する架橋反応物(放射線架橋反応物)を含有している。粘着剤層は、架橋反応物のみからなっていてもよいが、該架橋反応物以外の成分として、添加剤等の他の成分を含有していてもよい。但し、粘着剤層は実質的に溶剤を含有しないことが好ましい。また、粘着剤層は添加剤として可塑剤(Plasticizer)を含有していてもよいが、本実施形態によれば、粘着剤層が可塑剤を実質的に含有していない場合であっても、角質の剥離を抑制することができ、さらに、十分な保持力が得られる。
【0020】
架橋反応物は、少なくともアルキル基の炭素数が4〜18のアルキル(メタ)アクリレートモノマー(以下「C4−18アクリレート」と略称する場合がある。)と、放射線架橋基含有エチレン性不飽和モノマー(以下「放射線架橋性モノマー」と略称する場合がある。)と、エチレン性不飽和極性モノマー(以下「極性モノマー」と略称する場合がある。なお、エチレン性不飽和極性モノマーは、放射線架橋基非含有のモノマーである。)と、を単量体単位として含むポリマーであり、放射線架橋性モノマーの放射線架橋基に由来する架橋構造を有する。すなわち、上記架橋反応物は、放射線架橋性モノマーにおける放射線架橋基が放射線の照射により反応して分子内又は分子間で架橋構造を形成することにより得られる架橋反応物である。
【0021】
放射線は、紫外線等の非電離放射線であってよく、電子線、γ線等の電離放射線であってもよい。すなわち、架橋反応物は、光架橋反応物(例えば紫外線架橋反応物)であってよく、電子線架橋反応物であってもよく、γ線架橋反応物であってもよい。また、放射線架橋性モノマーは、光架橋基含有エチレン性不飽和モノマー(例えば紫外線架橋基含有エチレン性不飽和モノマー)であってよく、電子線架橋基含有エチレン性不飽和モノマーであってもよく、γ線架橋基含有エチレン性不飽和モノマーであってもよい。
【0022】
C4−18アクリレートは、炭素数が4〜18のアルキル基を有するモノ(メタ)アクリレートであり、放射線架橋基を含有せず、一般に非極性である。このようなC4−18アクリレートとしては、例えば、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート及びイソボルニル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0023】
架橋反応物を構成する全ての単量体に対するC4−18アクリレートの質量比は、50質量%以上であってよく、70質量%以上であってもよい。架橋反応物を構成する全ての単量体に対するC4−18アクリレートの質量比は、99.0質量%以下であってよく、99.5質量%以下であってもよく、99.95質量%以下であってもよい。このような含有量にすることで、十分な粘着性が得られやすい。
【0024】
放射線架橋性モノマーは、エチレン性不飽和結合と1種又は2種以上の放射線架橋基とを有するモノマー(エチレン性不飽和結合を有する芳香族ケトン化合物等)であればよい。放射線架橋基は、放射線照射によりラジカルを生じ得る官能基である。放射線架橋基としては、例えば、ベンゾフェノン基、アセトフェノン基、アントラキノン基等が挙げられる。このような放射線架橋性モノマーとしては、例えば、パラ−アクリロキシベンゾフェノン(ABP)、パラ−アクリロキシエトキシベンゾフェノン(AEBP)、パラ−N−(メチルアクリロキシエチル)−カルバモイルエトキシベンゾフェノン、4−アクリロキシジエトキシ−4−クロロベンゾフェノン、パラ−アクリロキシアセトフェノン、オルト−アクリルアミドアセトフェノン及びアクリル化アントラキノンからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0025】
架橋反応物を構成する全ての単量体に対する放射線架橋性モノマーの質量比は0.05〜10質量%である。本実施形態に係る皮膚貼着用テープは、放射線架橋性モノマーの質量比が上記範囲であり、且つ、極性モノマーの質量比が3.0質量%未満であることで、可塑化作用を有する液体成分を含有させることなく、テープを剥離する際の角質の剥離を抑制することができ、さらに、十分な保持力が得られる。また、十分な粘着力及び安定した接着特性を発揮することができ、剥離時の糊残りが生じ難く、優れた再剥離性を発揮し得る。放射線架橋性モノマーの質量比は、糊残りを一層抑制できる観点、保持力に一層優れる観点、及び、角質の剥離を一層抑制できる観点から、0.06質量%以上であることが好ましく、0.08質量%以上であることがより好ましい。放射線架橋性モノマーの質量比は、実用時のテープの浮き及び剥がれを抑制できる観点から、5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましい。すなわち、架橋反応物を構成する全ての単量体に対する放射線架橋性モノマーの質量比は0.06〜5.0質量%であることが好ましく、0.08〜3.0質量%であることがより好ましい。
【0026】
極性モノマーは、放射線架橋基を含有せず、極性を有するエチレン性不飽和モノマーである。極性モノマーは、例えば、エチレン性不飽和結合と、1種又は2種以上の極性基とを有する。極性基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、カルバモイル基、アミド基、アミノ基、エポキシ基、ニトリル基等が挙げられる。
【0027】
極性モノマーは、酸性のエチレン性不飽和極性モノマー(以下、「酸性モノマー」と略称する場合がある。)、塩基性のエチレン性不飽和極性モノマー(以下、「塩基性モノマー」と略称する場合がある。)及び中性のエチレン性不飽和極性モノマー(以下、「中性モノマー」と略称する場合がある。)に分類することができる。酸性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸等の酸性の(メタ)アクリルモノマーなどが挙げられる。塩基性モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N,N−ジエチルアクリルアミド等の塩基性の(メタ)アクリルモノマー、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムなどが挙げられる。中性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、極性モノマーが塩基性モノマーを含むことが好ましく、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルカプロラクタム等の窒素原子含有モノマーを含むことが好ましい。
【0028】
架橋反応物を構成する全ての単量体に対する極性モノマーの質量比は、3.0質量%未満である。極性モノマーの質量比は、角質の剥離を一層抑制できる観点から、2.5質量%以下であってもよく、2.0質量%以下であってもよい。また、極性のモノマーの質量比は、より十分な粘着力及び保持力を得る観点から、0.0005質量%以上であってよく、0.001質量%以上であってもよく、0.002質量%以上であってもよい。
【0029】
架橋反応物を構成する全ての単量体に対する酸性モノマーの質量比は、0.5質量%以下であることが好ましい。この場合、接着力の経時的な上昇が一層抑制され、角質の剥離が一層抑制される。このような観点から、本実施形態では、架橋反応物が酸性モノマーを単量体単位として実質的に含まないこと(架橋反応物を構成する全ての単量体に対する質量比が0.0005質量%未満)が好ましい。架橋反応物は酸性の(メタ)アクリルモノマーを実質的に含まないことがより好ましく、特に(メタ)アクリル酸を実質的に含まないことが好ましい。
【0030】
架橋反応物を構成する全ての単量体に対する塩基性モノマーの質量比は、0.0005質量%以上3.0質量%未満であることが好ましい。塩基性モノマーの質量比が上記範囲であると、基材に対する接着が強固となり、糊残りが一層生じ難くなると共に、粘着力が強くなりすぎず、角質の剥離が一層抑制される。塩基性モノマーの質量比は0.0005質量%以上であってよく、0.001質量%以上であってもよく、0.002質量%以上であってもよい。この場合、糊残りが一層生じ難くなる。塩基性モノマーの質量比は、2.5質量%以下であってもよく、2.0質量%以下であってもよい。この場合、角質の剥離が一層抑制される。
【0031】
架橋反応物は、C4−18アクリレート、放射線架橋性モノマー及び極性モノマー以外の他の共重合性モノマーを単量体単位として更に含んでいてよい。他の共重合モノマーとしては、エチレン性不飽和結合を2以上有する多官能モノマー、C4−18アクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。エチレン性不飽和結合を2以上有する多官能モノマーとしては、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート)等のポリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等のポリビニル化合物が挙げられる。なお、(メタ)アクリルモノマーの水素原子を極性基(ハロゲン原子等も含む)に置換したモノマーは極性モノマーに含むものとする。
【0032】
上述の架橋反応物は、例えば、1種のポリマーが放射線により架橋することで得られる、単一のポリマー由来の骨格を備える架橋反応物であってよく、2種以上のポリマーが放射線により架橋することで得られる、2種以上のポリマー由来の骨格を備える架橋反応物であってもよい。
【0033】
以下では、架橋反応物の一例として、少なくとも第1のポリマーと、第1のポリマーとは異なる第2のポリマーとが放射線架橋することで得られる架橋反応物について説明する。このような架橋反応物は、第1のポリマー由来の骨格と、第2のポリマー由来の骨格と、を備える。
【0034】
第1のポリマーは、前記C4−18アクリレートを単量体単位として含む。すなわち、第1のポリマーは、C4−18アクリレートを含有するモノマーを重合して得ることのできるポリマーである。
【0035】
第1のポリマーは、C4−18アクリレートの1種又は2種以上のみを単量体単位として含むものであってもよいが、前記放射線架橋性モノマーを単量体単位として更に含むものであってもよく、前記極性モノマーを単量体として更に含むものであってもよく、前記他の共重合モノマーを単量体単位として更に含むものであってもよい。但し、第2のポリマーが極性モノマーを単量体単位として含まない場合には、第1のポリマーは極性モノマーを単量体単位として含む必要がある。
【0036】
第1のポリマーを構成する全ての単量体に対するC4−18アクリレートの質量比は、例えば、80〜99.5質量%であってよく、90〜99.0質量%であってもよく、95〜98.5質量%であってもよい。このような含有量にすると、十分な粘着性及び十分な保持力が得られやすい。
【0037】
第1のポリマーを構成する全ての単量体に対する放射線架橋性モノマーの質量比は、例えば、0.01〜1.0質量%であってよく、0.05〜0.5質量%であってもよく、0.1〜0.3質量%であってもよい。第1のポリマーが上記のような範囲で放射線架橋性モノマーを単量体単位として含む場合、放射線架橋性モノマーが第2のポリマーにのみ単量体単位として含まれる場合と比較して、より少ない第2のポリマーの添加量で十分な内部凝集力が得られる。
【0038】
第1のポリマーを構成する全ての単量体に対する極性モノマーの質量比、酸性モノマーの質量比及び塩基性モノマーの質量比は、架橋反応物を構成する全ての単量体に対する極性モノマーの質量比、酸性モノマーの質量比及び塩基性モノマーの質量比が上述する範囲となるように適宜調整することができる。
【0039】
第1のポリマーはFOX式から計算されるガラス転移温度(Tg)が0℃以下であることが好適である。このようなTgを有することにより皮膚貼着用テープとして良好な粘着力が発揮される。Tgは−5℃以下が好ましく、−10℃以下が更に好ましい。
【0040】
第1のポリマーのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定による重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、100,000〜5,000,000であってよく、500,000〜1,500,000であってもよい。
【0041】
第1のポリマーは、上述したモノマーを例えばラジカル重合、イオン重合などで重合して得ることができる。その際、任意のラジカル重合開始剤、イオン重合開始剤、連鎖移動剤などを使用することができる。ラジカル重合開始剤としては熱重合開始剤であっても、光(例えば紫外線)重合開始剤であってもよい。すなわち、第1のポリマーを得るための重合は、熱重合であってよく光重合であってもよい。但し、第1のポリマーが放射線架橋性モノマー(特に光架橋基含有エチレン性不飽和モノマー)を単量体単位として含む場合、重合は、光重合ではなくそれ以外の方法(熱重合等)で行うことが好ましい。重合開始剤及び連鎖移動開始剤の種類及び配合量は特に限定されず、重合により得られる第1のポリマーの分子量等を考慮して適宜調整することができる。また、重合には、有機溶媒を使用してもよいが、有機溶媒を使用しない方法が好ましい。具体的には、実施例に記載の方法により上述したモノマーを重合させることが好ましい。
【0042】
第2のポリマーは、前記C4−18アクリレートと前記放射線架橋性モノマーとを単量体単位として含む。すなわち、第2のポリマーは、C4−18アクリレートと放射線架橋性モノマーとを含有するモノマーを重合して得ることのできるポリマーである。
【0043】
第2のポリマーは、C4−18アクリレートの1種又は2種以上と、放射線架橋性モノマーの1種又は2種以上とのみを単量体単位として含むものであってもよいが、前記極性モノマーを単量体単位として更に含むものであってもよく、前記他の共重合モノマーを単量体単位として更に含むものであってもよい。なお、第2のポリマーにおけるC4−18アクリレート、放射線架橋性モノマー、極性モノマー及び他の共重合モノマーは、第1のポリマーと同一であっても異なっていてもよい。
【0044】
第2のポリマーを構成する全ての単量体に対するC4−18アクリレートの質量比は、例えば、50〜99質量%であってよく、60〜97質量%であってもよく、70〜95質量%であってもよい。このような含有量にすることで、第1のポリマーとの相溶性に優れるようになる。
【0045】
第2のポリマーを構成する全ての単量体に対する放射線架橋性モノマーの質量比は、例えば、1.0〜20質量%であってよく、1.5〜15質量%であってもよく、2.0〜10質量%であってもよい。このような含有量にすると、第2のポリマーが少量であっても十分な架橋構造が得られるようになる。
【0046】
第2のポリマーを構成する全ての単量体に対する極性モノマーの質量比、酸性モノマーの質量比及び塩基性モノマーの質量比は、架橋反応物を構成する全ての単量体に対する極性モノマーの質量比、酸性モノマーの質量比及び塩基性モノマーの質量比が後述する範囲となるように適宜調整することができる。
【0047】
第2のポリマーについてはFOX式から計算されるTgは任意であるが、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定による重量平均分子量(ポリスチレン換算)は50,000以上であることが好ましい。重量平均分子量は100,000〜1,000,000であることがより好ましい。また、第2のポリマーの重量平均分子量は、第1のポリマーと同等かそれ以下であることが好ましい。
【0048】
第2のポリマーは放射線架橋基を含有することから、第1のポリマーと混合して放射線を照射することで第1のポリマーと架橋構造を形成する。放射線で架橋を生じる化合物が第2のポリマーのように高分子の放射線架橋剤(例えば紫外線架橋剤)であることにより、低分子の放射線架橋剤(例えば紫外線架橋剤)である場合に比べて、接着力の経時的上昇をより効果的に防止でき、また保持力も高いものとなる。すなわち、第2のポリマーの重量平均分子量が上述のように50,000以上であることで、上記性能をより高めることができる。
【0049】
第2のポリマーは、第1のポリマーと同様に製造可能であるが、放射線架橋基を有するモノマーを含むことから重合は光重合ではなくそれ以外の方法(熱重合等)で行うことが好ましい。
【0050】
なお、第1のポリマーと第2のポリマーとは、相溶性が高い方がより均一且つ安定な皮膚貼着用テープを製造することができる。したがって、第1のポリマーと第2のポリマーの溶解度パラメータ(Fedors法による)は近似していることが好ましく、例えば溶解度パラメータが±3、好ましくは±2の間に収まるとよい。
【0051】
架橋反応物を構成する第1のポリマーに対する第2のポリマーの質量比は、1.0〜20.0質量%であることが好ましく、1.5〜10.0質量%であることがより好ましく、2.0〜5.0質量%であることが更に好ましい。皮膚貼着用テープを滅菌処理して使用する場合には、上記質量比を調整することで、滅菌処理後に所望の接着特性が達成しやすくなる。例えば、滅菌処理を行った場合には粘着力が低下する傾向があるが、第2のポリマーの比率を増やすことで滅菌処理後に所望の粘着力となるように調整することができる。
【0052】
架橋反応物は、第1のポリマー及び第2のポリマー以外の他のポリマー由来の骨格を有していてもよく、例えば、粘着付与剤等の添加剤由来の骨格を有していてもよい。粘着付与剤の例としては、例えば、ロジン系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペン・フェノール系樹脂、C5系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂、C9系石油樹脂、スチレン系共重合体、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂及び、これらの水添樹脂、変性樹脂等が挙げられる。
【0053】
上述した架橋反応物を含有する粘着剤層は、例えば、少なくとも前記第1のポリマー及び前記第2のポリマーを含有する粘着剤組成物を基材上に塗布し、粘着剤組成物からなる前駆体層を形成した後、該前駆体層に放射線(例えば紫外線)を照射することで得られる。すなわち、本実施形態にかかる皮膚貼着用テープの製造方法は、例えば、伸張度が10%以上の基材上に粘着剤組成物からなる前駆体層を形成する工程と、該基材上に形成された粘着剤組成物からなる前駆体層に、放射線を照射して、架橋反応物を含有する粘着剤層を前記基材上に得る工程と、を備える。
【0054】
粘着剤組成物においては、上述の架橋反応物を得るために、第1及び第2のポリマーを構成する全ての単量体に対する放射線架橋性モノマーの質量比を0.05〜10質量%とすることが好ましく、0.06〜5.0質量%とすることがより好ましく、0.08〜3.0質量%とすることが更に好ましい。また、第1及び第2のポリマーを構成する全ての単量体に対する極性モノマーの質量比は3.0質量%未満であり、0.0005〜3.0質量%であってよく、0.001〜2.5質量%であってもよく、0.002〜2.0質量%であってもよい。
【0055】
粘着剤組成物には、本発明の効果を阻害しない限り、添加剤を含有させることができる。添加剤としては、上述した粘着付与剤の他に、例えば、酸化防止剤、光安定剤、色素、顔料、香料、可塑剤等を用いることができる。これらの添加剤は、粘着剤組成物の調製時に配合されてよく、第1のポリマー及び第2のポリマーの合成時に配合されてもよい。粘着付与剤の含有量は、例えば、第1及び第2のポリマーの合計100質量部に対して20質量部未満とすることができる。粘着付与剤の含有量は、0〜15質量部であってよく、0〜10質量部であってもよい。また、粘着付与剤以外の添加剤の含有量は、第1及び第2のポリマーの合計100質量部に対して、例えば、0.01〜3.0質量部とすることができる。粘着剤組成物は、可塑剤を実質的に含有していなくてもよい。なお、粘着剤組成物中の第1のポリマーに対する第2のポリマーの質量比の好ましい範囲は、上述した架橋反応物を構成する第1のポリマーに対する第2のポリマーの質量比と同一である。
【0056】
上述の粘着剤組成物は、例えば、ホットメルト型の粘着剤組成物であり、実質的に溶剤を含有しない。粘着剤組成物がホットメルト型である場合、粘着剤組成物の25℃での粘度は、例えば、4000Pa・s以下であり、1600Pa・s以下、800Pa・s以下、400Pa・s以下、200Pa・s以下、100Pa・s以下、50Pa・s以下、20Pa・s以下又は10Pa・sであってもよい。本実施形態では、粘着剤組成物をホットメルト型とするために例えば第1のポリマーの分子量を小さくした場合であっても、前駆体層の形成後に放射線を照射することで、放射線架橋性モノマー由来の架橋構造を形成し、高分子量化することができる。そのため、本実施形態に係る皮膚貼着用テープは、架橋反応物を構成する全ての単量体に対する極性モノマーの質量比を2質量%未満とした場合でも、十分な粘着力及び内部凝集力を有する。
【0057】
粘着剤組成物の調製方法は特に限定されない。粘着剤組成物がホットメルト型である場合、例えば、往復一軸押出成形機、二軸押出成形機、及びニーダー等の標準的な溶融混合装置を用いて調製することができる。この場合、組成物を十分に溶融混合するために2つ以上の機器を同一ラインで用いてもよい。
【0058】
粘着剤組成物を基材に塗布する方法は特に限定されない。例えば、ロールコーティング、フローコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、ダイコーティング等の方法を用いることができる。
【0059】
放射線の照射は、酸素存在下又は不活性ガス存在下で行うことができる。放射線の照射は、公知の方法により行うことができる。例えば、紫外線を照射する場合、UVランプを使用して紫外線照射することができる。使用するUVランプとしては、ベンゾフェノンを活性化するUV−C領域に強い発光スペクトルをもつもの、すなわち、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が使用できる。酸素存在下の場合は、UV−C領域の照射エネルギーは10〜100mJ/cm
2が好適であり、20〜80mJ/cm
2がより好ましい。
【0060】
上述した皮膚貼着用テープは、γ線照射、電子線照射等により滅菌処理を行った場合にも、十分な粘着力及び保持力を維持し得るため、滅菌処理を必要とする用途においても用いることができる。滅菌処理におけるγ線の線量は、例えば、20〜45Gkyであってよく、電子線の線量は、例えば、20〜45Gkyであってよい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
[材料リスト]
実施例及び比較例において使用する材料のリストを以下の表に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
[アクリレートPSA1〜3の調製]
表2に示す材料を用いて、WO96/07522に記載の方法に従い、「アクリレートPSA1〜3」を得た。
【0065】
【表2】
【0066】
[光架橋性ポリマー1の調製]
70.00質量部の2EHA、20.00質量部の2EHMA、5.00質量部のDMAA、5.00質量部のAEBP、100.00質量部の酢酸エチル(溶媒)、0.75質量部のt−ドデカンチオール及び0.12質量部のV−65を、反応容器中で混合した。この反応容器を窒素ガスで置換し、24時間、50℃で反応させた。その結果、「光架橋性ポリマー1」の50質量%酢酸エチル溶液を得た。「光架橋性ポリマー1」は酢酸エチル中に生じており、後述の皮膚貼着用テープの作製における「光架橋性ポリマー1」は、上記「光架橋性ポリマー1」の50質量%酢酸エチル溶液から溶媒(酢酸エチル)を除去したものを用いた。
【0067】
[実施例1]
(皮膚貼着用テープの作製)
表3に示す材料を同表に示す配合量(単位:質量部)となるように粘着剤組成物を作製した。具体的には、「アクリレートPSA1」を、単軸押出機を用いて140℃で押出し、二軸押出機に3.00kg/hで供給した。また、二軸押出機に「光架橋性ポリマー1」を0.18kg/h(「アクリレートPSA1」100質量部に対し6質量部の量)で供給した。二軸押出機は、バレル温度を170℃とし、「アクリレートPSA1」及び「光架橋性ポリマー1」を混練してホットメルト型の粘着剤組成物とした。
【0068】
次に、ラボラトリーコーターのアンワインダー(unwinder)に裏材として和紙を設置し、該裏材上に上記粘着剤組成物を塗布した。粘着剤組成物の塗布は、160℃、6.7m/minで行った。また、粘着剤組成物の塗布量(乾燥後の量)は40g/m
2とした。次いで、粘着剤組成物が塗布された裏材をUVチャンバー(アイグラフィックス(株)製)に通し、メタルハライドランプにて紫外線の照射を行い、裏材上に粘着剤層を形成した。UVメーター(EIT社製、UV Power PuckII)で測定したUV−C強度は45mJ/cm
2であった。
【0069】
[実施例2〜8及び比較例1〜2]
下記表3に示す材料を同表に示す配合量(単位:質量部)となるように二軸押出機に供給して粘着剤組成物を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜8及び比較例1〜2の皮膚貼着用テープを作製した。
【0070】
【表3】
【0071】
[比較例3]
比較例3の皮膚貼着用テープとして、日東電工(株)製の「優肌絆」(基材:和紙、粘着剤:過疎化したアクリル系粘着剤、「優肌絆」は登録商標)を用意した。
【0072】
[比較例4]
比較例4の皮膚貼着用テープとして、3M社製の「Micropore」(基材:不織布、粘着剤:アクリル系粘着剤)を用意した。
【0073】
実施例及び比較例について、以下に示す試験により、皮膚貼着用テープの接着特性を評価した。結果を表4に示す。
【0074】
[試験1:剥離粘着力試験]
皮膚貼着用テープを幅2.54cm(1inch)、長さ10.16cm(4inch)の寸法に切り出し、試験用サンプルとし、該試験用サンプルを用いて、ステンレススチール板に対する180°剥離粘着力を測定するための試験を行った。具体的には、2.1kg(4.5ポンド)のローラーに試験用サンプルを4回通すことにより、該試験用サンプルをステンレススチール板に貼り付けた。温度約22℃及び相対湿度40%でエージングを約1時間行った後、Instrumentors,Inc.から入手可能なモデル3M90スプリット/剥離試験機を用いて、180°構成において剥離速度300mm/分で試験用サンプルを剥離させた。
【0075】
[試験2:剪断強度試験]
皮膚貼着用テープを幅2.54cm(1inch)、長さ10.16cm(4inch)の寸法に切り出し、試験用サンプルとし、該試験用サンプルを用いて、ステンレス鋼に対する剪断強度(保持力)を測定するための試験を行った。具体的には、2.1kg(4.5ポンド)ローラーに試験用サンプルを4回通すことにより、該試験用サンプルの端から長さ方向に2.54cm(幅2.54cm)の領域をステンレススチール板の縁部分に貼り付けた。次いで、温度を25℃、相対湿度を50%に保ち、24時間放置した。24時間経過後から、試験用サンプルのステンレススチール板からはみ出た部分(幅2.54cm、長さ7.62cmの領域)に、500グラムの錘を吊り下げ、錘が落下するまでの時間を測定した。
【0076】
[試験3:粘着剤残留試験]
剪断強度試験において、錘が落ちた後、ステンレススチール板に残留した粘着剤(粘着層)の残留物が存在する部分の面積比率(試験用サンプルが貼り付けられていた部分の面積に対する比率)を求めた。
【0077】
[試験4:皮膚粘着力試験]
皮膚貼着用テープを幅2.54cm(1inch)、長さ7.62cm(3inch)の寸法に切り出し、試験用サンプルとした。試験用サンプルをヒト対象者の背中の上に、試験用サンプルの長手方向が背骨に対して垂直方向となるように貼り付けた。試験用サンプルの貼り付けは、2kgのローラーで押し付けることにより行った。次いで、10分経過後(表4中T0と表記。)、24時間経過後(表4中、T24と表記)及び48時間経過後(表4中T48と表記。)に、粘着力テスターの継がれた機械引張装置(Zwick社製)を用いて、試験用サンプルを背中から剥離し、その際の粘着力を測定した。具体的には、11.4kgのテストラインが取り付けられた幅2.54cm(1inch)の金属製クリップを幅2.54cm(1inch)で試験用サンプルに取り付け、該テストラインを、背中に対して水平方向(180゜)且つ試験用サンプルの長手方向に沿って並行に、30.48cm/min(12inch/min)の速度で引張った。上記操作における試験用サンプルの剥離の開始から完全除去に至るまでの測定値の平均値(N/2.54cm)を表4に示す。
【0078】
[試験5:皮膚粘着浮上試験]
皮膚粘着力試験において試験用サンプルを背中に貼り付けてから24時間経過後及び48時間経過後の試験用サンプルを目視にて観察し、皮膚から浮き上がった(剥離した)部分の面積比率(試験用サンプルの面積に対する比率)を求め、次のような等級付けを行った。
0 浮き上がりは観測されない。
0超1以下 浮き上がった部分の面積比率が0%超1%以下。
1超2以下 浮き上がった部分の面積比率が1%超25%以下。
2超3以下 浮き上がった部分の面積比率が25%超50%以下。
3超4以下 浮き上がった部分の面積比率が50%超75%以下。
4超5以下 浮き上がった部分の面積比率が75%超100%以下。
14回の試験の結果を平均した平均値を表4に示す。好ましい皮膚貼着用テープは、一般的には、約2.5未満の平均等級を呈する。
【0079】
[試験6:皮膚粘着剤残留試験]
皮膚粘着力試験において試験用サンプルを剥離後、試験用サンプルが貼り付けられていた部分を目視にて観察し、皮膚表面上に残留した粘着剤(粘着層)の残留物が存在する部分の面積比率(試験用サンプルが貼り付けられていた部分の面積に対する比率)を求め、次のような等級付けを行った。なお、上記評価は、試験用サンプルを背中に貼り付けてから24時間経過後及び48時間経過後に剥離を行った試験について行った。
0 残留物は見られない。
0超1以下 残留物が存在する部分の面積比率が0%超1%以下。
1超2以下 残留物が存在する部分の面積比率が1%超25%以下。
2超3以下 残留物が存在する部分の面積比率が25%超50%以下。
3超4以下 残留物が存在する部分の面積比率が50%超75%以下。
4超5以下 残留物が存在する部分の面積比率が75%超100%以下。
14回の試験の結果を平均した平均値を表4に示す。好ましい皮膚貼着用テープは、一般的には、約2.5未満の平均等級を呈する。
【0080】
[試験7:剥離時角質損傷試験]
皮膚粘着力試験において試験用サンプルを背中に貼り付けてから24時間経過後に剥離を行った試験サンプルの粘着面の任意の点を赤外透過率測定器(ATR法)にて測定した。角質(たんぱく質)の振動数(1539cm
−1、1630cm
−1)における吸光度を測定し、実際の皮膚を測定したときの吸光度を100%、皮膚に貼り付けていない粘着剤単独での吸光度を0%とし、粘着面に付着した角質の吸光度を%で記録し、その平均値を算出した。得られた平均値を、吸光度が100%の場合の質量を基準としてmg換算し、単位面積当たりの角質付着量(mg/cm
2)を求めた。
【0081】
[試験8:再粘着試験]
皮膚粘着力試験において試験用サンプルを背中に貼り付けてから24時間経過後に剥離を行った試験サンプルを用いて、上述の方法により180°剥離粘着力試験を行った。
【0082】
【表4】
【0083】
実施例2〜8及び比較例2の皮膚貼着用テープに対し滅菌処理を行った後に、上述の剥離粘着力試験及び剪断強度試験を行った。具体的には、皮膚貼着用テープに対し、下記の条件でγ線又は電子線を照射することにより滅菌処理を行った。結果を表5に示す。
γ線:25kGy(Target dose)、28.3〜28.6kGy(Actualdose)
γ線:45kGy(Target dose)、45.3.〜46.2kGy(Actual dose)
電子線:45kGy(Target dose)、45.3.〜46.2kGy(Actual dose)
【0084】
【表5】
【0085】
表5に示すように、実施例の皮膚貼着用テープは、滅菌処理後においても十分な粘着力及び保持力を示すことが確認された。