(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961713
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】タガトース生産用組成物及びこれを用いたタガトースの製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/61 20060101AFI20211025BHJP
C12N 9/90 20060101ALI20211025BHJP
C12N 9/12 20060101ALI20211025BHJP
C12N 15/54 20060101ALI20211025BHJP
C12P 19/02 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
C12N15/61ZNA
C12N9/90
C12N9/12
C12N15/54
C12P19/02
【請求項の数】6
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2019-552866(P2019-552866)
(86)(22)【出願日】2018年3月30日
(65)【公表番号】特表2020-511974(P2020-511974A)
(43)【公表日】2020年4月23日
(86)【国際出願番号】KR2018003769
(87)【国際公開番号】WO2018182355
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年9月30日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0042166
(32)【優先日】2017年3月31日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0111494
(32)【優先日】2017年8月31日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0158766
(32)【優先日】2017年11月24日
(33)【優先権主張国】KR
【微生物の受託番号】KCCM KCCM11996P
【微生物の受託番号】KCCM KCCM12093P
【微生物の受託番号】KCCM KCCM12109P
【微生物の受託番号】KCCM KCCM12232P
【微生物の受託番号】KCCM KCCM12235P
【微生物の受託番号】KCCM KCCM12236P
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512088051
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CJ CheilJedang Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, スンジェ
(72)【発明者】
【氏名】リー, ヤン ミ
(72)【発明者】
【氏名】パク, イル ヒャン
(72)【発明者】
【氏名】チョ, ヒュン ク
(72)【発明者】
【氏名】キム, ソン ボ
(72)【発明者】
【氏名】リー, チャン−ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ, エウン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】シン, サン ミ
【審査官】
玉井 真人
(56)【参考文献】
【文献】
韓国公開特許第10−2015−0042391(KR,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0186162(US,A1)
【文献】
THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY, 2015, Vol.290, pp.28963-28976
【文献】
J. Appl. Glycosci., 2010, Vol.57, pp.1-6
【文献】
"Tagatose 6-phosphate kinase," 2017.1.18, retrieved on the Internet, retrieved on 2020.9.29, URL: https://www.uniprot.org/uniprot/A9CES6.txt?version=51
【文献】
"Tagatose 6-phosphate kinase," 2013.12.11, retrieved on the Internet, retrieved on 2020.9.29, URL: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/217335896
【文献】
"Putative tagatose-6-phosphate kinase," 2017.1.18, retrieved on the Internet, retrieved on 2020.9.28, URL: https://www.uniprot.org/uniprot/E8N0N6.txt?version=29
【文献】
"Tagatose-6-phosphate kinase," 2017.1.18, retrieved on the Internet, retrieved on 2020.9.28, URL: https://www.uniprot.org/uniprot/A0A0B3BKZ0.txt?version=15
【文献】
"Uncharacterized protein," 2016.5.11, retrieved on the Internet, retrieved on 2020.9.29, URL: https://www.uniprot.org/uniprot/A0A0S8BRR6.txt?version=4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 9/00− 9/99
C12P 19/00ー19/64
C12N 15/00−15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タガトース−6−リン酸キナーゼ、これを発現する微生物または前記微生物の培養物を含む、前記タガトース−6−リン酸キナーゼによって基質である果糖を変換するための、タガトース生産用組成物。
【請求項2】
前記組成物が、果糖をさらに含む、請求項1に記載のタガトース生産用組成物。
【請求項3】
前記組成物が、配列番号1、3、5、7、9または11のアミノ酸配列からなるタガトース−6−リン酸キナーゼを1つ以上含むものである、請求項1に記載のタガトース生産用組成物。
【請求項4】
前記タガトース−6−リン酸キナーゼが、Anaerolinea sp.、Thermobifida sp.、Thermoanaerobacter sp.、Dictyoglomus sp.由来の酵素またはその変異体である、請求項1に記載のタガトース生産用組成物。
【請求項5】
果糖を、タガトース−6−リン酸キナーゼ、これを発現する微生物または前記微生物の培養物と接触させて、前記果糖をタガトースに転換させる段階を含み、前記タガトース−6−リン酸キナーゼは基質である果糖を変換するために用いられる、タガトースの製造方法。
【請求項6】
前記接触が、pH5.0〜pH9.0の条件で、30℃〜80℃の温度条件で、または0.5時間〜48時間行われる、請求項5に記載のタガトースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、果糖−4−エピマー化酵素を含むタガトース生産用組成物及びこれを用いたタガトースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タガトースは、牛乳、チーズ、カカオなどの食品、リンゴやみかんなどの甘味が出る天然果実に少量存在する天然甘味料であり、物理的性質も砂糖と類似である。タガトースのカロリーは1.5kcal/gで砂糖の1/3水準であり、GI(Glycemic index、血糖指数)は3で砂糖の5%水準であるのに対し、砂糖と同様の甘味を出しながら、様々な健康機能性を有するため、様々な製品に適用すると健康と味を同時に満足できる代替甘味料として用いられる。
【0003】
従来公知されたタガトースの製造方法は、ガラクトースを主原料とした化学的(触媒反応)方法と生物学的(異性化酵素反応)方法がある(特許文献1〜3を参照)。しかし、前記従来の製造方法でガラクトースの基礎原料となる乳糖は、国際市場での原乳及び乳糖の生産量、需要及び供給量などに応じて価格の不安定性が存在し、タガトース生産原料の安定的な需給に限界がある。したがって、普遍化された糖(砂糖、ブドウ糖、果糖など)を原料としてタガトースを製造しうる新しい方法が必要で研究されたところ、前記文献は、グルコースとガラクトース及び果糖からそれぞれガラクトース、プシコース及びタガトースを生産する方法を開示している(特許文献4〜6)。
【0004】
一方、タガトース−6−リン酸キナーゼ(Tagatose−6−phosphate kinase:EC2.7.1.144)は、下記[反応式1]のようにATPとD−タガトース6−リン酸(D−tagatose6−phosphate)を基質にしてADPとD−タガトース1,6二リン酸(D−tagatose 1,6−biphosphate)を生産すると知られていたが、前記タガトース−6−リン酸キナーゼが果糖(D−fructose)をタガトースに転換させる活性を有するかについての報告はない。
【0005】
[反応式1]
ATP+D−タガトース6−リン酸 <=> ADP+D−タガトース1,6二リン酸
【0006】
このような背景下で、本発明者らは、果糖をタガトースに転換させる活性を有する酵素を開発するために鋭意研究努力した結果、タガトース−6−リン酸キナーゼ(Tagatose−6−phosphate kinase:EC2.7.1.144)が果糖をタガトースに転換させる活性があることを確認することにより、本出願を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際特許公報WO2006/058092
【特許文献2】韓国登録特許第10−0964091号
【特許文献3】韓国登録特許第10−1368731号
【特許文献4】韓国登録特許第10−744479号
【特許文献5】韓国登録特許第10−1057873号
【特許文献6】韓国登録特許第10−1550796号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Sambrook et al.,supra,9.50−9.51,11.7−11.8
【非特許文献2】Scheit,Nucleotide Analogs,John Wiley,New York(1980)
【非特許文献3】Uhlman&Peyman,Chemical Reviews,90:543−584(1990)
【非特許文献4】Izsvak et al.J.MoI.Biol.302:93−102(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本出願の一つの目的は、タガトースの製造に有用な組成物を提供することにあって、前記組成物はタガトース−6−リン酸キナーゼ、前記酵素を発現する微生物または前記微生物の培養物を含む。
【0010】
本出願の他の目的は、本願の果糖−4−エピマー化酵素、前記酵素を発現する微生物または前記微生物の培養物を果糖と接触させて果糖をタガトースに転換させる段階を含むタガトースの製造方法を提供することにある。
【0011】
以下、本出願の他の目的及び利点は、添付した請求範囲及び図面と共に下記の詳細な説明によってより明確になる。本明細書に記載されない内容は、本出願の技術分野または類似の分野で熟練された者であれば、十分に認識かつ類推できるため、その説明を省略する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願の目的を達成するために、本出願は一様態として、タガトース−6−リン酸キナーゼ、これを発現する微生物または前記微生物の培養物を含むタガトース生産用組成物を提供する。
前記タガトース−6−リン酸キナーゼ(Tagatose−6−phosphate kinase, EC 2.7.1.144)は、ATPとD−タガトース−6−リン酸(D−tagatose 6−phosphate)を基質としてADPとD−タガトース1,6−二リン酸(D−tagatose 1,6−biphosphate)を生産すると知られているもの。
具体的には、前記組成物は、配列番号1、3、5、7、9または11のアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよく。
本願に至って「タガトース−6−リン酸キナーゼ」が果糖の4番炭素位置をエピマー化して果糖をタガトースに転換させる果糖−4−エピマー化活性を示すことを明らかにし、したがって、本願では「果糖−4−エピマー化酵素」と互換的に用いられてもよい。
一具現例として、本出願の果糖−4−エピマー化酵素は、耐熱性微生物由来の酵素であってもよく、例えば、Anaerolinea sp.由来の酵素、Thermobifida sp.、Thermoanaerobacter sp.、またはその変異体、Dictyoglomus sp.由来の酵素またはその変異体であってもよく、具体的には、Anaerolinea thermophila、 Anaerolineae bacterium、Thermobifida halotoleran、Thermoanaerobacter indiensisまたはDictyoglomus thermophilum由来の酵素またはその変異体であってもよいが、これに制限されるものではない。
本願の果糖−4−エピマー化酵素またはその変異体は、D−フルクトース(果糖)の4番炭素位置をエピマー化してD−タガトースに転換させる特徴があるもので本願でタガトース−6−リン酸キナーゼ(Tagatose−6−phosphate kinase)が果糖−4−エピマー化酵素としての活性を有することを明らかにした。タガトース−6−リン酸キナーゼはD−タガトース6−リン酸(D−tagatose 6−phosphate)を基質としてD−タガトース1,6−二リン酸(D−tagatose 1,6−biphosphate)を生産することが知られていた。つまり、タガトース−6−リン酸キナーゼが果糖−4−エピマー化酵素活性を有することを新たに明らかにすることによって、本出願の一具現例は果糖からタガトースを製造するに当たり、タガトース−6−リン酸キナーゼを果糖−4−エピマー化酵素として用いることを含むタガトース−6−リン酸キナーゼの新規用途に関する。
一具現例として、本出願の果糖−4−エピマー化酵素は、耐熱性の高い酵素であってもよい。具体的には、本出願の果糖−4−エピマー化酵素は、50℃〜70℃で最大活性の50%〜100
%の活性を示しうる。
さらに、これに制限されるものではないが、前記配列番号1からなる果糖−4−エピマー化酵素は、配列番号2のヌクレオチド配列によって;配列番号3からなる果糖−4−エピマー化酵素は、配列番号4のヌクレオチド配列によって;配列番号5からなる果糖−4−エピマー化酵素は、配列番号6のヌクレオチド配列によって;配列番号7からなる果糖−4−エピマー化酵素は、配列番号8のヌクレオチド配列によって;配列番号9からなる果糖−4−エピマー化酵素は、配列番号10のヌクレオチド配列によって;配列番号11からなる果糖−4−エピマー化酵素は、配列番号12のヌクレオチド配列によってそれぞれ暗号化されるものであってもよい。
本出願の果糖−4−エピマー化酵素またはその変異体は、本出願の前記酵素またはその変異体を発現するDNA、例えば、配列番号2、4、6、8、10または12のヌクレオチドでE. coliなどの菌株に形質転換させた後、これを培養して培養物を収得し、前記培養物を破砕して、カラムなどを介して精製して得られたものであってもよい。前記形質転換用菌株は、Escherichia coli などがある。
具体例では、これらの形質転換された菌株としてE. coli BL21(DE3)/CJ_ANT_F4E(これの別名はE.coli BL21(DE3)/pBT7−C−His−an1である)、E. coli BL21(DE3)/CJ_AB_F4E、またはE. coli BL21(DE3)/CJ_DT_F4E、E. coli BL21(DE3)/CJ_ANTA_F4E、E. coli BL21(DE3)/CJ_TH_F4E、E. coli BL21(DE3)/CJ_TAI_F4Eであり、これらはそれぞれ順にブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms)に寄託番号KCCM11996P(寄託日:2017年3月20日)、KCCM12093P(寄託日:2017年8月11日)、KCCM12109P(寄託日:2017年9月13日)、KCCM12232P(寄託日:2018年3月23日)、KCCM12235P(寄託日:2018年3月23日)及びKCCM12236P(寄託日:2018年3月23日)として寄託した。
前記ベクターを形質転換させる方法は熱ショック法などが含まれてもよいが、これに制限されない。
前記発現カセットは、通常、前記遺伝子に作動可能に連結されているプロモーター(promoter)、転写終結シグナル、リボソーム結合部位及び翻訳終結シグナルを含んでもよい。前記発現カセットは、それ自体の複製が可能な発現ベクターの形態であってもよい。また、前記遺伝子は、それ自体またはポリヌクレオチド構造体の形態で宿主細胞に導入され、宿主細胞で発現に必要な配列と作動可能に連結されたものであってもよい。
【0013】
本出願の微生物は、本出願の核酸または本出願の組換えベクターを含み、本出願の果糖−4−エピマー化酵素を生産しうる微生物であれば、原核微生物及び真核微生物いずれも含まれてもよい。例えば、Escherichia属、Erwinia属、Serratia属、Providencia属、Corynebacterium属、及びBrevibacterium属に属する微生物菌株が含まれてもよく、具体的には、E. coliまたはcorynebacterium glutamicumであってもよいが、これに制限されない。このような微生物の例としては、E. coli BL21(DE3)/CJ_ANT_F4E、E.coli BL21(DE3)/CJ_AB_F4E、E. coli BL21(DE3)/CJ_DT_F4E、E. coli BL21(DE3)/CJ_ANTA_F4E、E. coli BL21(DE3)/CJ_TH_F4EまたはE. coli BL21(DE3)/CJ_TAI_F4Eがある。
【0014】
本出願の微生物は、前記核酸またはベクター導入の他にも、様々な公知の方法により本出願の果糖−4−エピマー化酵素を発現しうる微生物をすべて含んでもよい。
【0015】
本出願の微生物の培養物は、本出願のタガトース−6−リン酸キナーゼを発現する微生物を培地で培養して製造したものであってもよい。
【0016】
本出願において、用語、「培養」は、前記微生物を適当に調節された環境条件で生育させることを意味する。本願の培養過程は当業界に公知の適当な培地と培養条件に応じて行われてもよい。このような培養過程は選択される菌株に応じて当業者が容易に調整して用いてもよい。前記微生物を培養する段階は、特にこれに制限されないが、公知の回分式培養方法、連続式培養方法、流加式培養方法などにより行われてもよい。この時、培養条件は特に制限されないが、塩基性化合物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはアンモニア)または酸性化合物(例えば、リン酸または硫酸)を用いて、適正pH(例えば、pH5〜9、具体的には、pH7〜9)を調節してもよい。また、培養中には、脂肪酸ポリグリコールエステルのような消泡剤を用いて気泡生成を抑制してもよく、また、培養物の好気状態を維持するために、培養物内に酸素または酸素含有気体を注入したり、嫌気及び微好気の状態を維持するために気体を注入せず、あるいは窒素、水素または二酸化炭素ガスを注入してもよい。培養温度は、25℃〜40℃、具体的には、30℃〜37℃を維持してもよいが、これに制限されない。培養期間は、所望の有用物質の生産量が収得できるまで続けてもよく、具体的には、約0.5時間〜60時間培養してもよいが、これに制限されない。また、用いられる培養用培地は炭素供給源としては、糖及び炭水化物(例えば、グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、糖蜜、でん粉及びセルロース)、 油 脂及び脂肪(例えば、大豆油、ヒマワリの種油、ピーナッツ油及びココナッツ油)、脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸及びリノール酸)、アルコール(例えば、グリセロール及びエタノール)及び有機酸(例えば、酢酸)などを個別に用いたりまたは混合して用いてもよいが、これに制限されない。窒素供給源としては、窒素含有有機化合物(例えば、ペプトン、酵母抽出液、肉汁、麦芽抽出液、トウモロコシ浸漬液、大豆泊分及びウレア)、または無機化合物(例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム及び硝酸アンモニウム)などを個別に用いたりまたは混合して用いてもよいが、これに制限されない。リン供給源としては、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、これに相応するナトリウム含有塩などを個別に用いたりまたは混合して用いてもよいが、これに制限されない。また、培地には他の金属塩(例えば、硫酸マグネシウムまたは硫酸鉄)、アミノ酸及びビタミンのような必須成長促進物質を含んでもよい。
【0017】
本出願のタガトース生産用組成物は、さらに果糖を含んでもよい。
【0018】
本出願のタガトース生産用組成物は、果糖を直接タガトースに転換させる果糖−4−エピマー化活性を有するタガトース−6−リン酸キナーゼ、これを発現する微生物または前記微生物の培養物を含むものであって、基質である果糖以外の他の酵素を含まないことを特徴としてもよい。
【0019】
例えば、α−グルカンホスホリラーゼ(α−glucan phosphorylase)、デンプンホスホリラーゼ(starch phosphorylase)、マルトデキストリンホスホリラーゼ(maltodextrin phosphorylase)またはスクロースホスホリラーゼ(sucrose phosphorylase)、これを発現する微生物または前記微生物の培養物;
グルコキナーゼ(glucokinase)、これを発現する微生物または前記微生物の培養物;
タガトース−6−リン酸脱リン酸化酵素、これを発現する微生物または前記微生物の培養物;及び/または
α−アミラーゼ(α−amylase)、プルラナーゼ(pullulanase)、グルコアミラーゼ(glucoamylase)、スクラーゼ(sucrase)またはイソアミラーゼ(isoamylase);前記アミラーゼ、プルラナーゼ、グルコアミラーゼ、スクラーゼまたはイソアミラーゼを発現する微生物;または前記アミラーゼ、プルラナーゼ、グルコアミラーゼ、スクラーゼまたはイソアミラーゼを発現する微生物の培養物を含まないことを特徴としてもよい。
【0020】
本出願のタガトース生産用組成物は、当該タガトース生産用組成物に通常用いられる任意の適切な賦形剤をさらに含んでもよい。このような賦形剤としては、例えば、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定化剤または等張化剤などであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0021】
本出願のタガトース生産用組成物は、金属をさらに含んでもよい。一具現例では、本出願の金属は2価陽イオンを含む金属であってもよい。具体的には、本出願の金属はマグネシウム、ニッケル、またはマンガン(Mn)であってもよい。より具体的には、本出願の金属は金属イオンまたは金属塩であってもよく、より具体的には、前記金属塩は、MgCl
2、MgSO
4、NiSO
4、NiCl
2、MnCl
2またはMnSO
4であってもよい。
【0022】
本出願は別の様態として、果糖(D−fructose)を本出願の果糖−4−エピマー化酵素、前記酵素を発現する微生物または前記微生物の培養物と接触させて前記果糖をタガトースに転換する段階を含むタガトースの製造方法を提供する。
【0023】
本出願の一具現例として、前記接触はpH5.0〜pH9.0、温度は、30℃〜80℃の温度条件で、及び/または0.5時間〜48時間行ってもよい。
【0024】
具体的には、本出願の接触はpH6.0〜pH9.0の条件またはpH7.0〜pH9.0の条件で行ってもよい。また、本出願の接触は35℃〜80℃、40℃〜80℃、45℃〜80℃、50℃〜80℃、55℃〜80℃、60℃〜80℃、30℃〜70℃、35℃〜70℃、40℃〜70℃、45℃〜70℃、50℃〜70℃、55℃〜70℃、60℃〜70℃、30℃〜65℃、35℃〜65℃、40℃〜65℃、45℃〜65℃、50℃〜65℃、55℃〜65℃、30℃〜60℃、35℃〜60℃、40℃〜60℃、45℃〜60℃、50℃〜60℃または55℃〜60℃の温度条件で行ってもよい。また、本出願の接触は0.5時間〜36時間、0.5時間〜24時間、0.5時間〜12時間、0.5時間〜6時間、1時間〜48時間、1時間〜36時間、1時間〜24時間、1時間〜12時間、1時間〜6時間、3時間〜48時間、3時間〜36時間、3時間〜24時間、3時間〜12時間、3時間〜6時間、6時間〜48時間、6時間〜36時間、6時間〜24時間、6時間〜12時間、9時間〜48時間、9時間〜36時間、9時間〜24時間、9時間〜12時間行ってもよい。
【0025】
一具現例として、本出願の接触は金属の存在下で行ってもよい。
【0026】
本出願のタガトース製造方法において、本出願の果糖−4−エピマー化酵素、前記酵素を発現する微生物、前記微生物の培養物、金属、金属イオン及び金属塩は他の様態で前述したとおりである。
【0027】
本出願の製造方法は、製造されたタガトースを分離及び/または精製する段階をさらに含んでもよい。前記分離及び/または精製は、本出願の技術分野で通常用いられる方法を用いてもよく、非限定的な例として、透析、沈殿、吸着、電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー及び分別結晶などを用いてもよい。前記精製は一つの方法だけ行ってもよく、2つ以上の方法を一緒に行ってもよい。
【0028】
また、本出願の製造方法は、前記分離及び/または精製する段階の前後に脱色及び/または脱塩を行う段階をさらに含んでもよい。前記脱色及び/または脱塩を行うことにより、より品質に優れたタガトースを得ることができる。
【0029】
他の具現例として、本出願の製造方法は、本出願のタガトースに転換する段階、分離及び/または精製する段階、または脱色及び/または脱塩段階の後にタガトースを結晶化する段階をさらに含んでもよい。前記結晶化は通常用いる結晶化方法を用いて行ってもよい。例えば、冷却結晶化方法を用いて結晶化を行ってもよい。
【0030】
別の具現例として、本出願の製造方法は、前記結晶化する段階の前にタガトースを濃縮する段階をさらに含んでもよい。前記濃縮は結晶化の効率を高めうる。
【0031】
別の具現例として、本出願の製造方法は、本出願の分離及び/または精製する段階の後、未反応の果糖を本出願の酵素、前記酵素を発現する微生物または前記微生物の培養物と接触させる段階、本出願の結晶化する段階の後に結晶が分離された母液を前記分離及び/または精製段階に再利用する段階、またはその組み合わせをさらに含んでもよい。前記追加段階を介してタガトースをさらに高収率で得ることができ、捨てられる果糖の量を削減することができて経済的利点がある。
【発明の効果】
【0032】
本出願の果糖−4−エピマー化酵素は、耐熱性に優れて産業的にタガトース生産が可能であり、普遍化された糖である果糖をタガトースに高収率で転換する経済性が高い効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本出願の一実施例に係る形質転換体で生成されて分離されたタガトース−6−リン酸キナーゼ(CJ_ANT_F4E)の分子量をタンパク質電気泳動(SDS−PAGE)で分析した結果を示す。
【
図2】本出願の一実施例で製造したタガトース−6−リン酸キナーゼ(CJ_ANT_F4E)が果糖−4−エピマー化酵素の活性を有することを示すHPLCクロマトグラフィーの結果である。
【
図3】本出願の一実施例で製造したタガトース−6−リン酸キナーゼ(CJ_ANT_F4E)の果糖−4−エピマー化活性における温度変化による活性の程度を示すグラフである。
【
図4】本出願の一実施例で製造したタガトース−6−リン酸キナーゼ酵素CJ_AB_F4Eが果糖−4−エピマー化酵素の活性を有することを示すHPLCクロマトグラフィーのグラフである。
【
図5】本出願の一実施例で製造したタガトース−6−リン酸キナーゼ酵素CJ_AB_F4Eの温度変化に係る果糖−4−エピマー化の活性を示すグラフである。
【
図6】本出願の一実施例で製造したタガトース−6−リン酸キナーゼ酵素CJ_AB_F4Eの金属添加に係る果糖−4−エピマー化の活性を示すグラフである。
【
図7】本出願の一実施例で製造したタガトース−6−リン酸キナーゼ酵素CJ_DT_F4Eが果糖−4−エピマー化酵素の活性を示すHPLCクロマトグラフィーのグラフである。
【
図8】本出願の一実施例で製造したタガトース−6−リン酸キナーゼ酵素CJ_DT_F4Eの温度変化に係る果糖−4−エピマー化の活性を示すグラフである。
【
図9】本出願の一実施例で製造したタガトース−6−リン酸キナーゼ酵素CJ_DT_F4Eの金属添加に係る果糖−4−エピマー化の活性を示すグラフである。
【
図10】本出願の一実施例で製造したタガトース−6−リン酸キナーゼ(CJ_ANTA_F4E)が果糖−4−エピマー化酵素の活性を有することを示すHPLCクロマトグラフィーの結果である。
【
図11】本出願の一実施例で製造したタガトース−6−リン酸キナーゼ(CJ_TH_F4E)が果糖−4−エピマー化酵素の活性を有することを示すHPLCクロマトグラフィーの結果である。
【
図12】本出願の一実施例で製造したタガトース−6−リン酸キナーゼ(CJ_TAI_F4E)が果糖−4−エピマー化酵素の活性を有することを示すHPLCクロマトグラフィーの結果である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本出願にかかる実施例を記述することにより本出願をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本出願の一例示に過ぎず、本出願の内容がこれに限定されるものと解釈されてはならない。これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのもので、添付された請求項に記載された本発明の範囲がこれらの実施例により制限されないことは、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者にとって明らかである。
【0035】
実施例1:タガトース−6−リン酸キナーゼの製造及びその活性の評価
【0036】
実施例1−1:タガトース−6−リン酸キナーゼ遺伝子を含む組換え発現ベクター及び形質転換体の製造
新規耐熱性の果糖−4−エピマー化酵素を提供するために、2種のAnaerolinea thermophileに由来したタガトース−6−リン酸キナーゼの遺伝子情報を確保して、大腸菌発現可能ベクター及び形質転換微生物(形質転換体)を製造した。
【0037】
具体的には、 KEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)に登録されたAnaerolinea thermophileの遺伝子配列を対象にタガトース−6−リン酸キナーゼ遺伝子配列を選抜し、Anaerolinea thermophileのアミノ酸配列(配列番号1)と塩基配列(配列番号2)及びアミノ酸配列(配列番号7)と塩基配列(配列番号8)を基に、大腸菌発現可能ベクターであるpBT7−C−Hisに挿入して製作された組換え発現ベクターをバイオニアに合成依頼した。組換え発現ベクターを用いるために、Anaerolinea thermophileのゲノミックDNAを用いて、プライマー1:
ATATACATATGATGTTCGGCTCGCCTGCTCCCCTGCTG(配列番号13)とプライマー2:
TGGTGCTCGAGCCCGCACGCCGCAGCGTAATCTTCCAG(配列番号14)を用いて、PCR条件は、94℃で2分間変性した後、94℃で30秒の変性、60℃で30秒のアニーリング、72℃で2分の伸長を35回繰り返した後、72℃で5分間伸長反応を行った。
【0038】
タンパク質の発現を誘導するために大腸菌発現用菌株であるBL21(DE3)に形質転換し、E.coli BL21(DE3)/CJ_ANT_F4E、E.coli BL21(DE3)/CJ_ANTA_F4Eと命名した。ブダペスト条約下で、E.coli BL21(DE3)/CJ_ANT_F4Eは2017年3月20日に寄託番号KCCM11996Pとして寄託され、E.coli BL21(DE3)/CJ_ANTA_F4Eは2018年3月23日に寄託番号KCCM12232Pとして寄託された。
【0039】
実施例1−2:組換え酵素の製造及び精製
組換え酵素を製造するために、前記実施例1−1で製造した形質転換体であるE.coli BL21(DE3)/CJ_ANT_F4E、E.coli BL21(DE3)/CJ_ANTA_F4Eをアンピシリン(ampicillin)が含まれたLB液体培地5mlを含む培養チューブに接種し、600nmで吸光度が2.0になるまで37℃振とう培養器で種菌培養を行った。本種菌培養された培養液をLB(Lysogeny broth)とタンパク質発現調節因子であるラクトースが含有された液体培地を含む培養フラスコに接種して、本培養を行った。前記培養過程中の撹拌速度は180rpmであり、培養温度は37℃が維持されるようした。培養液は8,000rpmで、4℃で20分間遠心分離した後、菌体を回収した。回収された菌体は、50mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝溶液で2回洗浄し、10mM イミダゾール(imidazole)及び300mM NaClが含まれた50mM NaH2PO4(pH8.0)緩衝溶液に再懸濁した。前記懸濁された菌体を細胞破砕機(sonicator)を用いて破砕し、細胞破砕物は13,000rpmで4℃で20分間遠心分離した後、上澄み液のみを取った。前記上澄み液はHis−taq親和クロマトグラフィーを用いて精製し、20mMイミダゾール及び300mM NaClを含有する50mM NaH
2PO
4(pH8.0)緩衝溶液を充填剤の10倍の液量で流して非特異的結合が可能なタンパク質を除去した。最終的に250mM イミダゾール及び300mM NaClを含有する50mM NaH
2PO
4(pH8.0)緩衝液を流して溶出精製し、50mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝溶液で透析した後、酵素特性解析のための酵素2種(CJ_ANT_F4E、CJ_ANTA_F4E)を確保した。その結果、精製された組換え果糖−4−エピマー化酵素はSDS−PAGE分析を介してCJ_ANT_F4Eが約47kDaであることを確認した(
図1)。
【0040】
実施例1−3:果糖からタガトースへの転換活性の評価
前記実施例1−2から得られた酵素の活性を測定するために、30重量%果糖を用い、ここに50mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM CoSO
4、前記実施例1−2で分離された20mg/mlの精製酵素を添加して、温度60℃で2時間反応した。果糖−4−エピマー化酵素CJ_ANT_F4E、CJ_ANTA_F4Eによって転換されたタガトースの濃度及び果糖からタガトースに転換された転換率を確認した結果、CJ_ANT_F4Eの転換率は16.1%、CJ_ANTA_F4Eの転換率は21.9%であった。前記換算率は次の式で計算された:転換率=タガトース生成量/果糖基質濃度×100
【0041】
また、反応後に残存する果糖と生成物であるタガトースの場合、HPLCを用いて定量した。用いたカラムはShodex Sugar SP0810であり、カラム温度を80℃にし、移動相である水の流速は1ml/分で流した。
図2及び
図10にHPLCクロマトグラフィーを用いて果糖を基質とする前記酵素の反応を示すピークを検出し定量した。
【0042】
実施例1−4:果糖−4−エピマー化活性に対する温度の影響
本出願の酵素のエピマー化活性に対する温度の影響性を調査するために、果糖を含む50mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝溶液に、前記実施例1−2で製造した1mg/mlの精製酵素を添加して、50℃〜80℃で3時間反応し、反応終了液はHPLCを用いてタガトースを定量分析した。その結果、本出願のCJ_ANT_F4E酵素は70℃で最大活性を示した(
図3)。
【0043】
実施例2:タガトース−6−リン酸キナーゼの製造及びその活性の評価
【0044】
実施例2−1:タガトース−6−リン酸キナーゼ遺伝子を含む組換え発現ベクター及び形質転換体の製造
本発明者らは、Anaerolineae bacterium Taxon ID:2654588098由来のタガトース−6−リン酸キナーゼ遺伝子情報を確保して、大腸菌発現可能な組換えベクター及び形質転換微生物を製造した。
【0045】
より具体的には、KEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)及びENA(European Nucleotide Archive)に登録されたAnaerolineae bacterium遺伝子配列を対象にタガトース−6−リン酸キナーゼ遺伝子配列を選抜して、Anaerolineae bacterium由来のタガトース−6−リン酸キナーゼCJ_AB_F4Eのアミノ酸配列(配列番号3)及び塩基配列(配列番号4)の情報を基に、前記酵素の塩基配列を含む大腸菌発現可能な組換え発現ベクターpBT7−C−His−CJ_AB_F4Eを製造した((株)バイオニア、韓国)。
【0046】
前記それぞれの各組換えベクターは、熱ショック(heat shock transformation、Sambrook and Russell:Molecular cloning、2001)によって大腸菌BL21(DE3)に形質転換した後、50%グリセロールに冷凍保管して使用した。前記形質転換菌株をE.coli BL21(DE3)/CJ_AB_F4Eと命名し、ブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms、KCCM)に2017年08月11日付けで寄託し、寄託番号KCCM12093Pを付与された。
【0047】
実施例2−2:組換え酵素の製造及び精製
前記実施例2−1に従って製造した形質転換菌株E.coli BL21(DE3)/CJ_AB_F4E由来のCJ_AB_F4Eから本出願換え酵素を収得するために、前記それぞれの形質転換微生物をアンピシリン(ampicillin)抗生剤が含まれたLB液体培地5mLを含む培養チューブに接種し、600nmで吸光度が2.0になるまで37℃振とう培養器で種菌培養を行った。本種菌培養された培養液をLBとタンパク質発現調節因子である乳糖が含まれた液体培地を含む培養フラスコに接種して、本培養を行った。前記種菌培養及び本培養は、攪拌速度180rpm及び37℃の条件で行った。続いて、前記培養液を8,000rpmで4℃で20分間遠心分離した後、菌体を回収した。回収された菌体を50mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝溶液で2回洗浄し、10mMイミダゾール(imidazole)と300mM NaClが含まれた50mM NaH
2PO
4(pH8.0)緩衝溶液に再懸濁した。前記再懸濁された菌体を細胞破砕機(sonicator)を用いて破砕し、細胞破砕物を13,000rpmで4℃で20分間遠心分離した後、上澄み液のみを取った。前記上澄み液をHis−taq親和クロマトグラフィーを用いて精製した後、20mMイミダゾール及び300mM NaClを含有する50mM NaH
2PO
4(pH8.0)緩衝溶液を充填剤の10倍の液量で流して、非特異的結合が可能なタンパク質を除去した。その後、250mMイミダゾール及び300mM NaClを含有する50mM NaH
2PO
4(pH8.0)緩衝溶液を追加で流して溶出精製し、50mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝溶液で透析して、酵素特性解析のための精製酵素CJ_AB_F4Eを確保した。
【0048】
実施例2−3:組換え酵素の果糖からタガトースへの転換活性の評価
前記実施例2−2で確保した本出願組換え酵素CJ_AB_F4Eの活性を測定するために、30重量%果糖に50mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM NiSO
4、及び各20mg/mlのCJ_AB_F4Eを添加して、60℃で10時間反応させた。
【0049】
反応後に残存する果糖及び生成物であるタガトースはHPLCを用いて定量した。HPLC分析は、Shodex Sugar SP0810カラムを用い、カラム温度は80℃、移動相である水の流速は1mL/minで流した(
図4)。
【0050】
実験の結果、前記酵素によって果糖からタガトースに転換された転換率は5.1%であることを確認した。
【0051】
実施例2−4:組換え酵素の温度変化による活性の確認
前記実施例2−2で得られた組換え酵素CJ_AB_F4Eの果糖−4−エピマー化活性に対する温度の影響力を調査するために10重量%果糖を含む50mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝溶液に1mg/ml CJ_AB_F4Eを添加して45℃、50℃、55℃、60℃及び70℃の様々な温度で3時間反応させた。反応が完了した後、反応液内のタガトースはHPLCを用いて定量分析した。
【0052】
実験の結果、CJ_AB_F4E酵素は65℃で最大活性を示し、CJ_AB_F4Eは50℃〜70℃で最大活性の50%以上を維持することが確認できた(
図5)。
【0053】
実施例2−5:金属イオンの添加による組換え酵素活性の確認
従来公知の異性化酵素、例えば、グルコース異性化酵素及びアラビノース異性化酵素及びエピマー酵素、例えば、プシコース3−エピマー化酵素は、金属イオンを必要とすることが知られていた。したがって、前記実施例2−2で得られた本出願の組換え酵素CJ_AB_F4Eも金属イオンが果糖−4−エピマー化活性に影響を与えるかどうかを確認した。
【0054】
より具体的には、10重量%果糖を含む50mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝溶液に、2mg/mlのCJ_AB_F4Eを添加し、様々な金属イオンNiSO
4、CaCl
2、ZnSO
4、MgSO
4、MnSO
4、FeSO
4、CuSO
4、または(NH
4)
2SO
4を各1mMずつ添加して酵素活性を測定した。金属イオンを処理しない場合を対照群として設定した。前記反応が完了した後、反応液内のタガトースはHPLCを用いて定量分析した。
【0055】
実験の結果、CJ_AB_F4E酵素は、MnSO
4、またはNiSO
4の添加によって活性が増加することが示され、マンガンイオンやニッケルイオンなどの金属イオンの要求性があることが分かった。特に、NiSO
4を添加した場合、最大活性を示すことが確認された(
図6)。
【0056】
実施例3:タガトース−6−リン酸キナーゼの製造及びその活性の評価
【0057】
実施例3−1:タガトース−6−リン酸キナーゼ遺伝子を含む組換え発現ベクター及び形質転換体の製造
新規耐熱性の果糖−4−エピマー化酵素を発掘するために、Dictyoglomus thermophilum DSM 3960由来のタガトース−6−リン酸キナーゼ遺伝子情報を確保し、大腸菌発現可能組換えベクター及び形質転換された微生物を製造した。
【0058】
具体的には、KEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)に登録されたDictyoglomus thermophilum遺伝子配列を対象にタガトース−6−リン酸キナーゼ遺伝子配列を選抜して、Dictyoglomus thermophilum由来のタガトース−6−リン酸キナーゼCJ_DT_F4Eのアミノ酸配列(配列番号5)及び塩基配列(配列番号6)の情報を基に、前記酵素の塩基配列を含む大腸菌発現可能な組換え発現ベクターpBT7−C−His −CJ_DT_F4Eを合成した((株)バイオニア、韓国)。
【0059】
前記各組換えベクターは、熱ショック(heat shock transformation、Sambrook and Russell:Molecular cloning、2001)によって大腸菌BL21(DE3)に形質転換して組換え微生物を製造した後、50%グリセロールに冷凍保管して使用した。前記組換え微生物をE. coli BL21(DE3)/CJ_DT_F4Eと命名し、ブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms、KCCM)に2017年9月13日付で寄託し、寄託番号KCCM12109Pを与えられた。
【0060】
実施例3−2:組換え酵素の製造及び精製
前記実施例3−1で製造した遺伝子組換え微生物菌株E. coli BL21(DE3)/CJ_DT_F4Eから組換え酵素CJ_DT_F4Eを製造するために、それぞれの形質転換微生物をアンピシリン(ampicillin)抗生剤が含まれたLB液体培地5mLを含む培養チューブに接種し、600nmで吸光度が2.0になるまで37℃振とう培養器で種菌培養を行った。本種菌培養された培養液をLBとタンパク質発現調節因子である乳糖が含まれた液体培地を含む培養フラスコに接種して、本培養を行った。前記種菌培養及び本培養は攪拌速度180rpm及び37℃の条件で行った。その後、前記培養液を8,000rpmで4℃で20分間遠心分離した後、菌体を回収した。回収された菌体を50mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝溶液で2回洗浄し、10mMイミダゾール(imidazole)と300mM NaClが含まれた50mM NaH
2PO
4(pH8.0)緩衝溶液に懸濁した。前記懸濁された菌体を細胞破砕機(sonicator)を用いて破砕し、細胞破砕物を13,000rpmで4℃で20分間遠心分離した後、上澄み液のみを取った。前記上澄み液をHis−taq親和クロマトグラフィーを用いて精製した後、20mMイミダゾール及び300mM NaClを含有する50mM NaH
2PO
4(pH8.0)緩衝溶液を充填剤の10倍の液量で流して、非特異的結合が可能なタンパク質を除去した。その後、250mMイミダゾール及び300mM NaClを含有する50mM NaH
2PO
4(pH8.0)緩衝溶液を追加で流して溶出精製し、50mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝溶液で透析して酵素特性解析のための精製酵素CJ_DT_F4Eを確保した。
【0061】
実施例3−3:組換え酵素の果糖からタガトースへの転換活性の評価
前記実施例3−2で確保した組換え酵素CJ_DT_F4Eの活性を測定するために、30重量%果糖に50mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM MnSO
4及び5mg/mlのCJ_DT_F4Eを添加して、60℃で10時間反応させた。
【0062】
反応後に残存する果糖及び生成物であるタガトースはHPLCを用いて定量した。HPLC分析はShodex Sugar SP0810カラムを用い、カラム温度は80℃、移動相である水の流速は1mL/minで流した(
図7)。
【0063】
その結果、組換え酵素CJ_DT_F4Eにより果糖からタガトースへの転換された転換率は、2%であることを確認した。
【0064】
実施例3−4:温度による組換え酵素活性の確認
前記実施例3−2で得られた組換え酵素CJ_DT_F4Eの果糖−4−エピマー化活性に対する温度の影響を調査するために、5重量%果糖を含む50mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝溶液に5mg/mlのCJ_DT_F4Eを添加し、40℃、50℃、55℃、60℃及び70℃で5時間反応させた。反応完了液内のタガトースはHPLCを用いて定量分析した。
【0065】
その結果、CJ_DT_F4Eは60℃で最大活性を示し、50℃〜70℃で最大活性の80%以上、55℃〜70℃で最大活性の95%以上の活性を維持することを確認した(表1及び
図8)。
【0067】
実施例3−5:金属添加による組換え酵素活性の確認
前記実施例3−2で得られた組換え酵素CJ_DT_F4Eの果糖−4−エピマー化活性に金属が影響を与えるかどうかを確認した。
【0068】
具体的には、5重量%果糖を含む50mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝溶液に5mg/mlのCJ_DT_F4Eを添加し、金属イオンMgSO
4、MnSO
4を1mMずつ添加して酵素活性を測定した。金属イオンを処理しない場合を対照群(w/o)と設定した。前記反応完了液内のタガトースはHPLCを用いて定量分析した。
【0069】
その結果、CJ_DT_F4EはMnSO
4及びMgSO
4の添加によって活性が増加し、マンガンまたはマグネシウムイオン(または、その塩)がCJ_DT_F4Eの果糖−4−エピマー化活性を増加させうることを確認した(
図9)。特に、CJ_DT_F4Eは MnSO
4を添加した結果、対照群に比べて2.5倍以上の活性増加を確認した。(
図9)。
【0070】
実施例4:タガトース−6−リン酸キナーゼの製造及びその活性の評価
【0071】
実施例4−1:タガトース−6−リン酸キナーゼ遺伝子を含む組換え発現ベクター及び形質転換体の製造
新規耐熱性の果糖−4−エピマー化酵素を発掘するために、Thermobifida halotolerans由来のタガトース−6−リン酸キナーゼ遺伝子情報を確保し、大腸菌発現可能組換えベクター及び形質転換された組換え微生物を製造した。
【0072】
具体的には、KEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)に登録されたThermobifida halotolerans遺伝子配列を対象にタガトース−6−リン酸キナーゼ遺伝子配列を選抜して、Thermobifida halotolerans由来のタガトース−6−リン酸キナーゼCJ_DT_F4Eのアミノ酸配列(配列番号9)及び塩基配列(配列番号10)の情報を基に、前記酵素の塩基配列を含む大腸菌発現可能な組換え発現ベクターpET7−C−His−CJ_TH_F4Eを合成した((株)バイオニア、韓国)。
【0073】
前記各組換えベクターは、熱ショック(heat shock transformation、Sambrook and Russell:Molecular cloning、2001)によって大腸菌BL21(DE3)に形質転換して組換え微生物を製造した後、50%グリセロールに冷凍保管して使用した。前記組換え微生物をE. coli BL21(DE3)/CJ_TH_F4Eと命名し、ブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms、KCCM)に2018年3月23日付で寄託し、寄託番号KCCM12235Pを与えられた。
【0074】
実施例4−2:組換え酵素の製造及び精製
前記実施例4−1で製造した組換え微生物菌株E. coli BL21(DE3)/CJ_TH_F4Eから組換え酵素CJ_TH_F4Eを製造するために、それぞれの形質転換微生物をアンピシリン(ampicillin)抗生剤が含まれたLB液体培地5mLを含む培養チューブに接種し、600nmで吸光度が2.0になるまで37℃振とう培養器で種菌培養を行った。本種菌培養された培養液をLBとタンパク質発現調節因子である乳糖が含まれた液体培地を含む培養フラスコに接種して、本培養を行った。前記種菌培養及び本培養は、攪拌速度180rpm及び37℃の条件で行った。その後、前記培養液を8,000rpmで4℃で20分間遠心分離した後、菌体を回収した。回収された菌体を50mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝溶液で2回洗浄し、10mMイミダゾール(imidazole)と300mM NaClが含まれた50mM NaH
2PO
4(pH8.0)緩衝溶液に懸濁した。前記懸濁された菌体を細胞破砕機(sonicator)を用いて破砕し、細胞破砕物を13,000rpmで4℃で20分間遠心分離した後、上澄み液のみを取った。前記上澄み液をHis−taq親和クロマトグラフィーを用いて精製した後、20mMイミダゾール及び300mM NaClを含有する50mM NaH
2PO
4(pH8.0)緩衝溶液を充填剤の10倍の液量で流して、非特異的結合が可能なタンパク質を除去した。その後、250mMイミダゾール及び300mM NaClを含有する50mM NaH
2PO
4(pH8.0)緩衝溶液を追加で流して溶出精製し、50mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝溶液で透析して酵素特性解析のための精製酵素CJ_TH_F4Eを確保した。
【0075】
実施例4−3:組換え酵素の果糖からタガトースへの転換活性の評価
前記実施例4−2で確保した組換え酵素CJ_TH_F4Eの活性を測定するために、1重量%果糖に50mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM MnSO
4及び4mg/mlのCJ_TH_F4Eを添加して、55℃で4時間反応させた。
【0076】
反応後に残存する果糖及び生成物であるタガトースはHPLCを用いて定量した。HPLC分析は、Shodex Sugar SP0810カラムを用い、カラム温度は80℃、移動相である水の流速は1mL/minで流した(
図11)。
【0077】
その結果、組換え酵素CJ_TH_F4Eにより果糖からタガトースへの転換された転換率は0.1%であることを確認した。
【0078】
実施例5:タガトース−6−リン酸キナーゼの製造及びその活性の評価
【0079】
実施例5−1:タガトース−6−リン酸キナーゼ遺伝子を含む組換え発現ベクター及び形質転換体の製造
新規耐熱性の果糖−4−エピマー化酵素を発掘するために、Thermoanaerobacter indiensis由来のタガトース−6−リン酸キナーゼ遺伝子情報を確保して、大腸菌発現可能組換えベクター及び形質転換された組換え微生物を製造した。
【0080】
具体的には、KEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)に登録されたThermoanaerobacter indiensis遺伝子配列を対象にタガトース−6−リン酸キナーゼ遺伝子配列を選抜して、Thermoanaerobacter indiensis由来のタガトース6−リン酸キナーゼCJ_TAI_F4Eのアミノ酸配列(配列番号11)及び塩基配列(配列番号12)の情報を基に、前記酵素の塩基配列を含む大腸菌発現可能な組換え発現ベクターpBT7−C−His−CJ_TAI_F4Eを合成した((株)バイオニア、韓国)。
【0081】
前記各組換えベクターは、熱ショック(heat shock transformation、Sambrook and Russell:Molecular cloning、2001)によって大腸菌BL21(DE3)に形質転換して組換え微生物を製造した後、50%グリセロールに冷凍保管して使用した。前記組換え微生物をE. coli BL21(DE3)/CJ_TAI_F4Eと命名し、ブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms、KCCM)に2018年3月23日付で寄託し、寄託番号KCCM12236Pを付与された。
【0082】
実施例5−2:組換え酵素の製造及び精製
前記実施例5−1で製造した組換え微生物菌株E. coli BL21(DE3)/CJ_TAI_F4Eから組換え酵素CJ_TAI_F4Eを製造するために、それぞれの形質転換微生物をアンピシリン(ampicillin)抗生剤が含まれたLB液体培地5mLを含む培養チューブに接種し、600nmで吸光度が2.0になるまで37℃振とう培養器で種菌培養を行った。本種菌培養された培養液をLBとタンパク質発現調節因子である乳糖が含まれた液体培地を含む培養フラスコに接種して、本培養を行った。前記種菌培養及び本培養は攪拌速度180rpm及び37℃の条件で行った。その後、前記培養液を8,000rpmで4℃で20分間遠心分離した後、菌体を回収した。回収された菌体を50mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝溶液で2回洗浄し、10mMイミダゾール(imidazole)と300mM NaClが含まれている50mM NaH
2PO
4(pH8.0)緩衝溶液に懸濁した。前記懸濁された菌体を細胞破砕機(sonicator)を用いて破砕し、細胞破砕物を13,000rpmで4℃で20分間遠心分離した後、上澄み液のみを取った。前記上澄み液をHis−taq親和クロマトグラフィーを用いて精製した後、20mMイミダゾール及び300mM NaClを含有する50mM NaH
2PO
4(pH8.0)緩衝溶液を充填剤の10倍の液量で流して、非特異的結合が可能なタンパク質を除去した。その後、250mMイミダゾール及び300mM NaClを含有する50mM NaH
2PO
4(pH8.0)緩衝溶液を追加で流して溶出精製し、50mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝溶液で透析して酵素特性解析のための精製酵素CJ_TAI_F4Eを確保した。
【0083】
実施例5−3:組換え酵素の果糖からタガトースへの転換活性の評価
前記実施例5−2で確保した組換え酵素CJ_TAI_F4Eの活性を測定するために、5重量%果糖に50mM Tris−HCl(pH8.0)、1mM MnSO
4及び5mg/mlのCJ_TAI_F4Eを添加して、55℃で10時間反応させた。
【0084】
反応後に残存する果糖及び生成物であるタガトースはHPLCを用いて定量した。HPLC分析は、Shodex Sugar SP0810カラムを用い、カラム温度は80℃、移動相である水の流速は1mL/minで流した(
図12)。
【0085】
その結果、組換え酵素CJ_TAI_F4Eにより果糖からタガトースに転換された転換率は8.7%であることを確認した。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]