特許第6969120号(P6969120)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友金属鉱山株式会社の特許一覧
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6969120
(24)【登録日】2021年11月1日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】酸化ニッケル微粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/04 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   C01G53/04
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-50876(P2017-50876)
(22)【出願日】2017年3月16日
(65)【公開番号】特開2018-154510(P2018-154510A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2020年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(72)【発明者】
【氏名】米里 法道
(72)【発明者】
【氏名】木道 雄太郎
【審査官】 青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−019624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸ニッケル水溶液とナトリウムを含む塩基性溶液との中和反応により中間体粒子を晶析させる中和工程と、前記中間体粒子を純水を用いて洗浄する洗浄工程と、前記洗浄された中間体粒子を大気雰囲気中において850℃以上950℃以下の熱処理温度で熱処理して酸化ニッケル粉末を生成する焼成工程と、前記焼成工程の際に形成され得る酸化ニッケル粉末の焼結体を解砕して酸化ニッケル微粉末にする解砕工程とを含む酸化ニッケル微粉末の製造方法であって、
前記中和反応の条件を調整することによって前記洗浄工程後の中間体粒子は、その粒度分布を粒径10μm未満の粒子が体積積算で全体の5%以下で且つそのナトリウム含有量が乾燥基準で50質量ppm以下となるようにすることを特徴とする酸化ニッケル微粉末の製造方法。
【請求項2】
硫酸ニッケル水溶液とナトリウムを含む塩基性溶液との中和反応により中間体粒子を晶析させる中和工程と、前記中間体粒子を洗浄する洗浄工程と、前記洗浄された中間体粒子を非還元性で且つ酸素分圧が5kPa以下の雰囲気中において800℃以上950℃以下の熱処理温度で熱処理して酸化ニッケル粉末を生成する焼成工程と、前記焼成工程の際に形成され得る酸化ニッケル粉末の焼結体を解砕して酸化ニッケル微粉末にする解砕工程とを含む酸化ニッケル微粉末の製造方法であって、
前記中和反応の条件を調整することによって前記洗浄工程後の中間体粒子は、その粒度分布を粒径10μm未満の粒子が体積積算で全体の5%以下で且つそのナトリウム含有量が乾燥基準で50質量ppm以下となるようにすることを特徴とする酸化ニッケル微粉末の製造方法。
【請求項3】
前記洗浄工程が純水を用いて洗浄することを特徴とする、請求項に記載の酸化ニッケル微粉末の製造方法。
【請求項4】
前記非還元性で且つ酸素分圧が5kPa以下の雰囲気の主成分が、窒素、二酸化炭素、水蒸気、アルゴン、及びヘリウムから選ばれる1種であることを特徴とする、請求項2または3に記載の酸化ニッケル微粉末の製造方法。
【請求項5】
前記ナトリウムを含む塩基性溶液が水酸化ナトリウム及び炭酸ナトリウムのうちの少なくとも一方を含む溶液であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸化ニッケル微粉末の製造方法。
【請求項6】
前記焼成工程において熱処理温度の上限を900℃とすることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸化ニッケル微粉末の製造方法。
【請求項7】
前記解砕工程で得た酸化ニッケル微粉末の比表面積が2m/g以上、硫黄含有量が50質量ppm以下、レーザー散乱法で測定したD50が0.5μm以下であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の酸化ニッケル微粉末の製造方法。
【請求項8】
前記洗浄工程で得た中間体粒子のナトリウム含有量が乾燥基準で30質量ppm以下であり、前記酸化ニッケル微粉末の硫黄含有量が30質量ppm以下であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の酸化ニッケル微粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品や固体酸化物形燃料電池の電極に用いられる材料として好適な酸化ニッケル微粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化ニッケル微粉末は、電子部品用材料や固体酸化物形燃料電池の電極用材料等の多様な用途に用いられている。例えば、電子部品用材料としての用途では、酸化ニッケル微粉末を酸化鉄、酸化亜鉛等の他の原料と混合した後、焼結することによりフェライト部品等を作製することが行われている。このフェライト部品のように、複数の原料を混合して焼成することにより複合金属酸化物を製造する場合は、その生成反応は固相の拡散反応で律速されるので、当該原料はより微細であることが一般的に好ましい。その理由は、微細であれば他の材料との接触確率が高くなると共に粒子の活性が高くなるため、低温で且つ短時間の処理であっても反応が均一に進むからである。従って、上記のような複合金属酸化物の製造では、原料となる粉末の粒径を小さくして微細にすることが効率向上の重要な要件となる。
【0003】
酸化ニッケル粉末は、上記のフェライト部品等の電子部品以外にも用途が広がっており、例えば、環境及びエネルギーの両面から新しい発電システムとして期待されている固体酸化物形燃料電池では、その電極材料に酸化ニッケル微粉末が用いられている。一般に、固体酸化物形燃料電池のセルスタックは、空気極、固体電解質及び燃料極からなる単セルが順次積層された構造を有している。この燃料極には、例えばニッケル又は酸化ニッケルと、安定化ジルコニアからなる固体電解質とを混合したものが用いられている。燃料極では発電時に水素や炭化水素等の燃料ガスにより還元されてニッケルメタルとなり、ニッケルと固体電解質と空隙からなる三相界面が燃料ガスと酸素の反応場となるため、上記のフェライト部品として用いる場合と同様に原料となる粉体の粒径を小さくして微細にすることが発電効率向上の重要な要素となる。
【0004】
近年、フェライト部品はますます高機能化する傾向にあり、加えて上記の通り酸化ニッケル微粉末の用途はフェライト部品等の電子部品以外にも広がっている。そのため、酸化ニッケル微粉末に含まれる不純物元素のより一層の低減が求められている。不純物元素の中でも特に塩素(Cl)や硫黄(S)は、電極に利用されている銀と反応して電極劣化を生じさせたり、焼成炉を腐食させたりすることがあるため、できるだけ低減することが望ましい。そこで、例えば特許文献1には、フェライト材料の原料段階におけるフェライト粉において、その硫黄成分の含有量をS換算で300〜900ppmにし、塩素成分の含有量をCl換算で100ppmにする技術が提案されている。このフェライト材料は、低温焼成においても添加物を用いることなく高密度化を図ることができ、これにより形成されるフェライト磁心及び積層チップ部品は、耐湿性と温度特性に優れたものにすることができると記載されている。
【0005】
従来、不純物含有量の低い酸化ニッケル微粉末の製造方法として、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、水酸化ニッケル等のニッケル塩類又はニッケルメタル粉を、ロータリーキルン等の転動炉、プッシャー炉等のような連続炉、あるいはバーナー炉のようなバッチ炉を用いて酸化性雰囲気下で焼成する方法が一般的に採用されてきた。例えば、特許文献2には、原料としての硫酸ニッケルに対して、キルンなどを用いて酸化雰囲気中で焙焼温度950〜1000℃未満で焙焼する第1段焙焼と、焙焼温度1000〜1200℃で焙焼する第2段焙焼とを行って酸化ニッケル粉末を製造する方法が提案されている。この製造方法によれば、制御された平均粒径を有し、且つ硫黄含有量50質量ppm以下の酸化ニッケル微粉末が得られると記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、450〜600℃の仮焼による脱水工程と、1000〜1200℃の焙焼による硫酸ニッケルの分解工程とを明確に分離した酸化ニッケル粉末の製造方法が提案されている。この製造方法によれば、硫黄の含有量が低く且つ平均粒径が小さい酸化ニッケル粉末を安定して製造できると記載されている。更に、特許文献4には、横型回転式製造炉を用いて強制的に空気を導入しながら、最高温度を900〜1250℃として焙焼する方法が提案されている。この製造方法によっても、不純物が少なく、硫黄の含有量が500質量ppm以下の酸化ニッケル粉末が得られると記載されている。
【0007】
上記の乾式法に対して一部湿式法で酸化ニッケル微粉末を製造する方法として、硫酸ニッケルや塩化ニッケル等のニッケル塩を含む水溶液を、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリで中和して水酸化ニッケル粒子を晶析させ、これを焙焼する方法も提案されている。例えば、特許文献5には、塩化ニッケル水溶液をアルカリで中和して水酸化ニッケルを生成し、得られた水酸化ニッケルを500〜800℃の温度で熱処理して酸化ニッケルを生成し、得られた酸化ニッケルに水を加えてスラリーにした後、湿式ジェットミルを用いて解砕すると同時に洗浄することにより、硫黄及び塩素の含有量が低く且つ微細な粒径の酸化ニッケル微粉末を作製する方法が提案されている。この方法は水酸化ニッケル粒子を焙焼する際に陰イオン成分由来のガスの発生が少ないため、排ガス処理が不要となるか若しくは簡易な設備でよく、よって低コストでの製造が可能になると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−198213号公報
【特許文献2】特開2001−032002号公報
【特許文献3】特開2004−123488号公報
【特許文献4】特開2004−189530号公報
【特許文献5】特開2011−042541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の特許文献2または3の製造方法により不純物含有量の低い酸化ニッケル微粉末を得ることができるものの、これら製造方法では熱処理を2回行うため生産性が低下し、コストが高くなるという問題を抱えている。また、特許文献2〜4のいずれの製造方法も、硫黄の含有量を低減するために焙焼温度を高くすると粒子が粗大になり、粒子の粗大化を抑えるために焙焼温度を下げると硫黄の含有量が高くなるという欠点があり、粒径と硫黄の含有量を同時に最適値に制御することは困難であった。また、熱処理の際に大量のSOxを含むガスが発生し、これを除害処理するために高価な設備が必要になるという問題も抱えている。
【0010】
更に、酸化ニッケル微粉末を電子部品用として、特にフェライト部品用の原料として用いる場合は、硫黄の含有量を単に低減するだけでなく、硫黄の含有量を所定の範囲内に厳密に制御することを要求されることがある。すなわち、酸化ニッケル微粉末を電子部品用材料として用いる場合は、粒径の微細化と不純物の低減に加えて、硫黄の含有量の厳密な制御が必要になることがある。しかしながら、特許文献5の酸化ニッケル微粉末の製造方法は、原料に塩化ニッケルを用いていることから硫黄の低減は可能であるが、硫黄の含有量を所定の範囲内に制御することは困難であった。また、湿式解砕を採用しているため、その後工程にコストがかかる乾燥処理が必要になる上、この乾燥処理時に凝集するおそれがあった。
【0011】
このように、従来の酸化ニッケル粉末の製造方法では、微細な粒子径を有すると共に、硫黄の含有量が制御された酸化ニッケル微粉末を得るのは困難であり、更なる改善が望まれていた。本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであり、工業上広く用いられる硫酸ニッケルを原料として酸化ニッケル微粉末を製造する際に、微粒化と硫黄分の低減とを効率的に両立させることが可能な製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
硫酸ニッケル水溶液を水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のナトリウムを含む塩基性溶液で中和することで得られる水酸化ニッケル、炭酸ニッケル等の中間体粒子には、硫酸ニッケルの形態で硫黄分が存在しているため、この硫酸ニッケルの分解温度以上で該中間体粒子を焼成することにより、硫黄の含有量が低減した酸化ニッケル粒子を効率的に生成することができる。しかし、この焼成の過程では酸化ニッケルの粒子が成長するため、硫黄の含有量を所定の低濃度の範囲内に制御しつつ粒径を微細にするのは困難であった。
【0013】
本発明者らは、上記の硫黄品位の制御と微細な粒径を両立させるため、酸化ニッケル粉末の製造プロセスについて鋭意研究を重ねた結果、硫酸ニッケル水溶液を上記したナトリウムを含む塩基性溶液で中和して晶析することで得られる中間体粒子は微量のナトリウムを含んでおり、焼成の過程で難分解性の硫酸ナトリウムが生成され、また、この中間体粒子に含まれるナトリウムの含有量に応じた量の硫黄分が残存することが分かった。更に中間体粒子において微細な粒径を有する粒子の占める割合が高くなると晶析後に行う洗浄の際にナトリウムの含有量を低減しにくくなるので、中間体粒子において微粒子の比率を所定の値以下とすることで、ナトリウムだけでなく硫黄の含有量も低い微細な酸化ニッケル微粉末を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の酸化ニッケル微粉末の製造方法は、硫酸ニッケル水溶液とナトリウムを含む塩基性溶液との中和反応により中間体粒子を晶析させる中和工程と、前記中間体粒子を純水を用いて洗浄する洗浄工程と、前記洗浄された中間体粒子を大気雰囲気中において850℃以上950℃以下の熱処理温度で熱処理して酸化ニッケル粉末を生成する焼成工程と、前記焼成工程の際に形成され得る酸化ニッケル粉末の焼結体を解砕して酸化ニッケル微粉末にする解砕工程とを含む酸化ニッケル微粉末の製造方法であって、前記中和反応の条件を調整することによって前記洗浄工程後の中間体粒子の粒度分布を粒径10μm未満の粒子が体積積算で全体の5%以下で且つ該中間体粒子のナトリウム含有量が乾燥基準で50質量ppm以下となるようにすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フェライト部品などの電子部品材料や電池材料として好適な、硫黄の含有量が低く且つ微細な酸化ニッケル微粉末を容易に作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る酸化ニッケル微粉末の製造方法について説明する。この製造方法は、硫酸ニッケル水溶液とナトリウムを含む塩基性溶液とを混ぜ合わせ、それらの中和反応により中間体粒子を晶析させる中和工程と、この中間体粒子を洗浄する洗浄工程と、洗浄後の中間体粒子を焼成して酸化ニッケル粉末を生成する焼成工程と、該焼成工程の際に形成され得る酸化ニッケル粉末の焼結体を解砕して酸化ニッケル微粉末を得る解砕工程とを有しており、上記の中和工程において、中和反応の諸条件を適切に設定することで上記洗浄工程後の中間体粒子において粒径10μm未満の粒子が体積積算で全体の5%以下となる粒度分布を有するようにしている。
【0017】
上記の製造方法により得られる酸化ニッケル微粉末は、ニッケル鍍金等に広く用いられる硫酸ニッケルを原料に用いても低硫黄含有量にすることができ、レーザー散乱法で測定した中心粒径D50(粒度分布上における粒子量の体積積算50%での粒径)が0.5μm以下の酸化ニッケル微粉末である。よって、電子部品材料や固体酸化物形燃料電池の電極用材料等に好適に用いることができる。以下、上記の酸化ニッケル微粉末の製造方法を構成する一連の工程の各々について詳細に説明する。
【0018】
(中和工程)
中和工程では、硫酸ニッケル水溶液に水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のナトリウムを含む塩基性溶液を混合して中和することにより、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル等の中間体粒子を晶析させる。原料として用いる硫酸ニッケルには、例えば硫酸ニッケル六水和物等を用いることができ、これと水とを混合することで水溶液にする。尚、最終的に得られる酸化ニッケル微粉末は電子部品用材料や電池用材料として用いられることから、その腐食防止のため、原料中に含まれる不純物は100質量ppm未満であることが望ましい。
【0019】
硫酸ニッケル水溶液中のニッケルの濃度は、特に限定されるものではないが、生産性を考慮すると、ニッケル濃度で50〜150g/Lが好ましい。この濃度が50g/L未満では生産性が悪くなり、逆に150g/Lを超えると水溶液中の陰イオン濃度が高くなりすぎ、晶析により生成される水酸化ニッケル等の中間体粒子中の硫黄含有量が高くなるため、最終的に得られる酸化ニッケル微粉末中の不純物含有量が十分に低くならない場合がある。
【0020】
中和に用いるナトリウムを含む塩基性溶液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、又は硝酸ナトリウムの溶液を用いることができ、これらの中では入手しやすさや反応速度の点で水酸化ナトリウム及び炭酸ナトリウムのうちの1種以上を含む溶液が好ましい。中和反応により得られる中間体粒子は、水酸化ナトリウムを用いた場合は水酸化ニッケル粒子、炭酸ナトリウムを用いた場合は炭酸ニッケル粒子、硝酸ナトリウムを用いた場合は硝酸ニッケルとなる。塩基性溶液が上記のうちの2種類以上の混合液の場合、得られる中間体粒子は水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、および硝酸ニッケルのうちの2種類以上の混合粒子となる。塩基性溶液の溶媒には特に限定はなく、水でもよいし、水にアルコール等の水溶性有機溶媒を混合させたものでもよい。
【0021】
中和反応では、反応液のpH、温度、撹拌状態(撹拌機の回転数)、反応時間等の諸条件を調整することにより粒径や比表面積の異なる種々の中間体粒子を得ることができる。例えば、中間体粒子のD50は、上記中和反応の諸条件を適宜設定することにより、10〜50μmの範囲内にすることができる。本発明の実施形態に係る酸化ニッケル微粉末の製造方法では、中和反応の上記諸条件を適切に調整することで、後工程の洗浄工程後の中間体粒子に対してレーザー散乱法による測定で得た粒度分布において、粒径10μm未満の粒子の比率が体積積算で全体の5%以下となるようにしている。
【0022】
上記の中間体粒子は、通常は1〜3質量%程度の硫黄と100〜1000質量ppm程度のナトリウムを含有しているが、上記のように粒径10μm未満の粒子の比率を体積積算で全体の5%以下とすることで、後工程の洗浄工程後の中間体粒子のナトリウム含有量を乾燥基準で好適には50質量ppm以下に、より好適には30質量ppm以下にすることができる。これに対して、上記の粒度分布において粒径10μm未満の粒子の分布量が多くなると、中間体粒子を構成する微細な粒子の割合が高くなるので所望の洗浄効果が得られにくくなり、特に粒径10μm未満の粒子比率が体積換算で全体の5%を超えると、洗浄後の中間体粒子のナトリウム含有量が乾燥基準で50質量ppmを超えることがある。また、焼成工程において、後述するように、中間体粒子に含まれるナトリウムは焼成の過程で融点が884℃と高い難分解性の硫酸ナトリウムを形成するため、硫黄含有量の低減も困難となる。すなわち、ナトリウム含有量の多い中間体粒子から生成した酸化ニッケルは、ナトリウムだけでなく硫黄の含有量も多くなりやすい。
【0023】
従って中間体粒子の粒度分布において、上記の粒径10μm未満の微粒が占める割合を低減するためには、中和反応における反応液のpH、温度、撹拌状態(攪拌機の回転数)、及び反応時間の各パラメータのいずれかを所定の条件となるように調整することが重要になる。その際、中間体粒子の物性に応じて、上記パラメータのうちの2つ以上の調整を行うことが好ましい場合がある。いずれのパラメータを調整する場合においても、できるだけ精密な調整ができるように中和反応が行われる装置が構成されていることが好ましく、また、pHセンサーや温度計等の校正、維持が適切に行われていることが好ましい。特に上記のパラメータの中では、反応時間を主たる調整パラメータとし、補助的にその他のパラメータを調整するのが好ましい。以下、各パラメータについて詳細に説明する。
【0024】
上記中和反応時は反応液のpHを8.3〜9.0の範囲内に調整することが好ましく、pH8.3〜8.7の範囲に調整することがより好ましい。このpHが8.3未満であったり9.0を超えたりすると、得られる中間体粒子の粒径分布は粒径が小さい側にシフトし、粒径10μm未満の粒子の比率が体積積算で全体の5%を超えるおそれがある。またpHが8.3未満では、中間体粒子に取り込まれる陰イオン成分が増加し、硫黄含有量が高くなるおそれがある。
【0025】
尚、中和反応時の反応液のpHを9.0以下にすると反応後の水溶液中に僅かにニッケル成分が残存することがあるが、この場合は、上記中和工程での中和反応による晶析の後、該水溶液のpHを10程度まで上げてから固液分離することによって、該固液分離後の濾液中のニッケル成分を低減することができる。中和反応時のpHはほぼ一定に保つのが好ましく、具体的にはその変動幅が設定値を中心として絶対値で0.2以内となるように制御することが好ましい。pHの変動幅がこれより大きくなると、不純物が増大したり、最終的に得られる酸化ニッケル微粉末の比表面積が低下したりするおそれがある。
【0026】
上記中和反応時は反応液の液温を50〜70℃に調整するのが好ましく、55〜65℃に調整するのがより好ましい。一般的には上記反応液の液温を高くするとこれに伴って中間体粒子の粒径分布におけるD50が大きくなるが、液温が高くなると中和反応の反応速度が速くなって、中間体粒子の粒径分布も広くなる。従って、液温を50〜70℃の範囲にすれば、結果的に粒径10μm未満の粒子の比率を低くすることができる。この液温が70℃を超えると水の蒸発が顕著になり、水溶液中の硫黄等の不純物濃度が高くなるため、生成した中間体粒子中の硫黄等の不純物品位が高くなるおそれがある。逆にこの液温が50℃未満では反応速度が遅くなるので生産効率が低下するおそれがある。
【0027】
上記中和反応では均一な特性の中間体粒子を効率よく生産するため、反応槽内において反応液が十分に撹拌されて乱流状態となっているのが好ましい。すなわち、撹拌機の回転数が少なくなって反応槽内の反応液の流動速度が遅くなると中間体粒子の粒径分布が広がり、逆に撹拌機の回転数が多くなって反応液の流動速度が速くなると中間体粒子の粒径分布が小さい側にシフトする傾向がある。よって、攪拌機の回転数を変えることによって粒径10μm未満の粒子の比率を調整することができる。尚、反応槽内の撹拌状態は上記の攪拌機の回転数のほか、撹拌羽根の数や形状、反応槽の大きさや形状等の影響を受けるため、攪拌機の回転数の好適な範囲はこれらの条件をも考慮して適宜設定するのが好ましい。
【0028】
この中和工程においては、反応槽内に予め貯めておいた塩基性溶液に、硫酸ニッケル水溶液を添加することで中和しつつpH調製用の塩基性溶液を適宜添加するバッチ晶析法でもよいし、反応槽内において十分に撹拌されている液(塩基性溶液等)に対して、予め調製しておいた硫酸ニッケル水溶液と塩基性溶液とをいわゆるダブルジェット方式で添加する連続晶析法でもよい。これらいずれの晶析法においても、中和に要する時間、つまり反応時間は0.5〜2.5時間とするのが好ましく、1.0〜2.0時間とするのがより好ましい。
【0029】
ここで反応時間とは、バッチ晶析法では、反応槽内に予め貯めておいた塩基性溶液に対して硫酸ニッケル水溶液を添加してから中和反応が終了するまでの時間を指す。この場合、中和反応の終了は所定量の硫酸ニッケル水溶液を添加した後、反応液が上記pHの範囲内となり変動も十分に小さくなることで判断することができる。一方、連続晶析法では、反応槽の有効容量(貯留できる最大容量)を、硫酸ニッケル水溶液と塩基性溶液の合計添加速度で除して得られる時間を指す。例えば、オーバーフロー口を設けることで有効容積が10Lに維持されている反応槽に硫酸ニッケル水溶液と塩基性溶液とを合計20L/hの添加速度で供給する場合、反応時間は10/20=0.5時間になる。
【0030】
上記の反応時間が0.5時間未満では、中和反応時に中間体粒子の成長が不十分となってD50が大きくならず、その結果、微粒が多く残るので粒径10μm未満の粒子の比率が高くなる。逆に反応時間が2.5時間を超えると、中間体粒子が成長して粒径は大きくなるが、一部の粒子が撹拌により粉砕され、かえって粒径10μm未満の粒子の比率が高くなるおそれがある。
【0031】
(洗浄工程)
洗浄工程では、上記の中和工程の晶析により得た中間体粒子を含む沈殿物もしくはスラリーに対して濾過等の固液分離処理を行って固形分として湿潤状態の中間体粒子群の塊(ケーキ)を回収し、このケーキを水等の洗浄液を用いて洗浄した後、乾燥させる。この洗浄工程により、中間体粒子に混在している硫酸イオン等の陰イオンやナトリウム成分を除去することができる。
【0032】
中間体粒子から陰イオンやナトリウムを効率よく除去するには、上記洗浄液には水を用いるのが好ましく、純水がより好ましい。洗浄方法は種々の一般的な方法を用いることができる。例えば上記固液分離により得たケーキを、攪拌機を備えた洗浄槽内に投入して洗浄液を加え、これらを撹拌することで洗浄することができる。あるいは中和工程で得た中間体粒子を含むスラリーをそのままフィルタープレス等の固液分離装置に導入し、初期の固液分離操作の後に固形分側に水を導入して洗浄を行ってもよい。
【0033】
洗浄液の量は、撹拌等の操作が損なわれないのであれば特に限定はないが、洗浄の効果を高めるにはできるだけ多い方が好ましい。洗浄時の液温も特に限定はないが、20〜60℃の温度範囲内とするのが好ましい。この場合、加温によりナトリウム量の一層の低減が期待できる。また、上記の洗浄操作を繰り返し行うことで洗浄の効果をより一層高めることができる。例えば、洗浄液に純水を用いる場合、洗浄後の洗浄液の導電率を測定して、所定の導電率以下となるまで洗浄を繰り返すことで、陰イオンやナトリウムを所望のレベルまで確実に除去することができる。
【0034】
(焼成工程)
焼成工程は、上記の洗浄工程で洗浄された中間体粒子を熱処理して酸化ニッケル粉末を得る工程である。この熱処理は、大気雰囲気下で行うか、又は非還元性で且つ酸素分圧が5kPa以下の低酸素雰囲気下で行うのが好ましい。前述した通り、中間体粒子は硫黄分を含有している。この硫黄分は主として原料に起因する硫酸の形態を有しており、大部分は硫酸ニッケルの形態で中間体粒子内もしくはその表面に存在している。この硫酸ニッケルは焼成により熱分解するので、焼成処理後に得られる酸化ニッケル粉末は硫黄品位が低減している。
【0035】
大気雰囲気下での焼成の場合、その熱処理温度を850〜950℃の範囲とするのが好ましい。この熱処理温度が850℃未満では、硫酸ニッケルの分解温度が大気の1気圧中では840℃なので、硫酸ニッケルの熱分解が進行しにくくなって硫黄成分が残留し、硫黄含有量50質量ppm以下の酸化ニッケル微粉末が得られないことがある。逆に熱処理温度が950℃を超えると、中間体粒子の熱分解により得られる酸化ニッケル粉末の焼結が進行し、この焼結した粉末の分離が次工程の解砕において困難となり、電子部品材料や電池材料の用途には適さない程度に小さな比表面積と大きなD50を有する粉末となるおそれがある。
【0036】
なお、粉末の粒径と比表面積には下記式1の関係があるので、粉末の比表面積を指標にして粉末がどの程度微細であるか判断することができる。但し、下記式1の関係は粒子が真球状であると仮定して導き出されたものであるため、下記式1から得られる粒径と実際の粒径との間にはいくらかの誤差を含むことになるが、比表面積が大きいほど粒径が小さくなることが分る。
[式1]
粒径=6/(密度×比表面積)
【0037】
上記の中間体粒子に含まれる硫黄分のほとんどは、前述したように硫酸ニッケルの形態であるが、この硫酸ニッケルの熱分解では、下記式2の反応により酸化ニッケルに分解される。
[式2]
2NiSO→2NiO+2SO+O
【0038】
この反応式からも分かる通り、酸素分圧が低くなると反応は右側に進行するので熱処理温度を下げることができる。よって非還元性で酸素分圧が5kPa以下の低酸素雰囲気での焼成の場合、熱処理温度を800〜950℃の範囲内とするのが好ましい。この熱処理温度が800℃未満では、硫酸ニッケルの熱分解が進行しにくくなり、硫黄成分が残留したり未反応の中間体粒子が残留したりすることがある。逆に熱処理温度が950℃を超えると、中間体粒子の熱分解により得られる酸化ニッケル粉末の焼結が進行して、この焼結した粉末の分離が次工程の解砕において困難となり、電子部品材料や電池材料の用途には適さない程度に小さな比表面積と大きなD50を有する粉末となるおそれがある。
【0039】
低酸素雰囲気下で焼成する場合、非還元性で且つ酸素分圧が5kPa以下とするのが好ましく、3kPa以下とするのがより好ましく、1kPa以下とするのがさらに好ましい。この酸素分圧が5kPaを超えると、上記式2の分解反応が進みにくくなり、酸化ニッケル粉末の硫黄含有量が低下しないことがある。酸素分圧の下限値には特に限定はないが、10Paとすれば十分に酸化ニッケル粉末の硫黄含有量を低減することができる。もちろん酸素分圧がさらに低い場合を除外するものではない。
【0040】
中間体粒子の焼成時は、中間体粒子が還元されてニッケルになるのを防止するため、その雰囲気を非還元性にするのが好ましい。具体的には、焼成時の雰囲気ガスの主成分を、窒素、二酸化炭素、水蒸気、アルゴン、及びヘリウムから選ばれる1種とするのが好ましい。具体的には、窒素、二酸化炭素、水蒸気、アルゴン、及びヘリウムから選ばれる1種のガスか、又はこれらの少なくともいずれかを主成分として更に酸素を低酸素分圧で含有させるかまたは含有しないガスを供給しながら焼成するのが好ましい。あるいは、炉内の酸素分圧が5kPa以下となるまで減圧した状態となるように炉内の雰囲気ガスを排気しながら焼成してもよい。
【0041】
尚、中間体粒子中にナトリウムが残留していると、前述したように硫酸ニッケルから熱分解した硫酸根がこのナトリウムと化合して硫酸ナトリウムとなることがある。この硫酸ナトリウムは熱分解しにくく、融点も884℃と高いため、中間体粒子のナトリウム含有量が多くなると、最終的な酸化ニッケル粉末の硫黄含有量を所望の値まで低減できなくなるおそれがある。この場合、焼成温度を硫酸ナトリウムの融点より高くすれば酸化ニッケル粉末の硫黄およびナトリウム含有量を下げることができるが、酸化ニッケル粉末の焼結が進行してD50が大きくなるので、微細な酸化ニッケル粉末が得られなくなる。
【0042】
従って、酸化ニッケル微粉末において微粒化と低硫黄含有量とを両立させるため、上記したとおり、中間体粒子のナトリウム含有量を低減するのが好ましく、そのために中間体粒子において粒径10μm未満の粒子の比率を体積積算で5%以下にしている。特にD50が0.4μm以下の微細な酸化ニッケル微粒子を得るには、焼成時の焼結を抑えるため、硫酸ナトリウムの融点を考慮して熱処理温度を900℃以下にするのが好ましく、880℃以下がより好ましい。
【0043】
(解砕工程)
解砕工程は、上記の焼成工程の際に形成され得る酸化ニッケル粉末の焼結体を分離、破壊して酸化ニッケル微粉末を得る工程である。上記の焼成工程では中間体粒子が熱分解されて酸化ニッケル粒子が形成されるが、その際、粒径の微細化が起こると共に、高温の影響で酸化ニッケル粒子同士の焼結がある程度進行する。この焼結体を破壊するため、解砕工程では焼成後の酸化ニッケル粉末に対して解砕処理を行い、粒子同士を衝突させたり、圧縮力やせん断力を加えたりすることにより所望の粒度を有する酸化ニッケル微粉末を得ている。
【0044】
この解砕に用いる装置には特に限定はなく、一般的なものを用いることができる。例えば、ビーズミルやボールミル等の解砕メディアを用いて解砕する装置でもよいし、ジェットミル等の解砕メディアを用いないで自身の流体エネルギーを利用して解砕する装置でもよい。
【0045】
(酸化ニッケル微粉末の物性)
以上説明した一連の工程からなる製造方法により作製される酸化ニッケル微粉末は、制御された硫黄含有量を有するとともに、粒径が小さく微細である。具体的には、硫黄含有量が50質量ppm以下、より好ましくは30質量ppm以下であり、レーザー散乱法で測定したD50が0.5μm以下、より好ましくは0.3〜0.5μmである。また比表面積は2m/g以上、より好ましくは3m/g以上である。比表面積の上限は特に限定されないが、上記で説明した製造方法にて得られる酸化ニッケル微粉末は6m/gが上限となる。従って、電子部品材料、特にフェライト部品用の材料や、電池材料、特に固体酸化物形燃料電池の電極用材料として好適である。尚、固体酸化物形燃料電池の電極用材料としては、硫黄含有量が100質量ppm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等によってなんら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた酸化ニッケル微粉末又はその中間体である水酸化ニッケル粒子の評価方法は、以下の通りである。
(1)粒径および粒度分布の測定:粒子径測定装置(Microtrac 9320−X100、Microtrac Inc製)を用いて、レーザー回折・散乱法で行なった。
(2)酸化ニッケル微粉末の比表面積の測定:比表面積測定装置(NOVA 1000e、ユアサアイオニクス社製)を用いて、BET法で行なった。
(3)硫黄含有量およびナトリウム含有量の分析:ICP発光分光分析法で行なった。
【0047】
[実施例1]
撹拌機を備えた反応槽内で硫酸ニッケルの水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを混合して中和反応を行わせ、中間体粒子として水酸化ニッケルを晶析させた。中和反応の条件としては、反応時間1.0時間、攪拌機の回転数700rpmに設定した。また、反応槽内では反応液の液温を60℃にし、pHは8.5を中心としてその変動幅が絶対値で0.2以内となるように制御しながら中和反応をおこなった(中和工程)。得られた中間体粒子を含むスラリーを、ヌッチェに載置した濾紙を用いて固液分離し、固形分側をレパルプ水洗してから、乾燥して水酸化ニッケルを得た(洗浄工程)。得られた水酸化ニッケル粒子は、硫黄含有量が2.2質量%、ナトリウム含有量が50質量ppmであり、粒径10μm未満の粒子の比率が体積積算で5%の粒度分布を有していた。
【0048】
上記洗浄工程で得た水酸化ニッケル10gをアルミナの試料皿に量り取り、管状炉を用いて毎分1Lの大気気流雰囲気において雰囲気温度920℃で5時間かけて焼成することで酸化ニッケル粉末を得た(焼成工程)。得られた酸化ニッケル粉末を乳鉢により粉砕して酸化ニッケル微粉末とした(解砕工程)。得られた酸化ニッケル微粉末は、硫黄含有量が40質量ppm、D50が0.48μm、比表面積が3.0m/gであった。
【0049】
[実施例2]
中和工程の反応時間を1.0時間に代えて1.5時間とした以外は上記実施例1と同様にして水酸化ニッケル粒子を作製した。この水酸化ニッケル粒子は硫黄含有量が2.0質量%、ナトリウム含有量が30質量ppmであり、粒径10μm未満の粒子の比率が体積積算で3%の粒度分布を有していた。この水酸化ニッケル粒子に対して上記実施例1と同様に処理して酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は硫黄含有量が20ppm、D50が0.48μm、比表面積が3.2m/gであった。
【0050】
[実施例3]
中和工程の液温を60℃に代えて55℃とし、洗浄工程ではレパルプ水洗に代えて濾紙上の固形分に水を供給する注水洗浄を行った以外は上記実施例2と同様にして水酸化ニッケル粒子を作製した。この水酸化ニッケル粒子は硫黄含有量が1.8質量%、ナトリウム含有量が20質量ppmであり、粒径が10μm未満の粒子の比率が体積積算で4%の粒度分布を有していた。この水酸化ニッケル粒子に対して上記実施例1と同様に処理して酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は硫黄含有量が10質量ppm、D50が0.46μm、比表面積が3.4m/gであった。
【0051】
[実施例4]
中和工程の反応時間を1.0時間に代えて2.0時間とし、洗浄工程ではレパルプ水洗に代えて濾紙上の固形分に水を供給する注水洗浄を行った以外は上記実施例1と同様にして水酸化ニッケル粒子作製した。この水酸化ニッケル粒子は硫黄含有量が1.7質量%、ナトリウム含有量が10質量ppm、粒径10μm未満の粒子の比率が体積積算で2%の粒度分布を有していた。この水酸化ニッケル粒子100gを焼成工程において小型転動炉を用いて毎分10Lの大気気流雰囲気で熱処理した以外は実施例1と同様にして酸化ニッケル微粉末を得た。得られた酸化ニッケル微粉末は硫黄含有量が10質量ppm、D50が0.45μm、比表面積が3.5m/gであった。
【0052】
[比較例1]
中和工程の反応時間を1.0時間に代えて6.0時間とした以外は上記実施例1と同様にして水酸化ニッケル粒子を作製した。この水酸化ニッケル粒子は硫黄含有量が2.0質量%、ナトリウム含有量が150質量ppm、粒径10μm未満の粒子の比率が体積積算で10%の粒度分布を有していた。この水酸化ニッケル粒子に対して上記実施例1と同様に処理して酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は硫黄含有量が120質量ppm、D50が0.51μm、比表面積が2.8m/gであった。
[比較例2]
中和工程の反応時間を1.0時間に代えて4.0時間とし、洗浄工程ではレパルプ水洗に代えて濾紙上の固形分に水を供給する注水洗浄を行った以外は上記実施例1と同様にして水酸化ニッケル粒子を作製した。この水酸化ニッケル粒子は硫黄含有量が2.0%、ナトリウム含有量が90質量ppm、粒径10μm未満の粒子の比率が体積積算で8%の粒度分布を有していた。この水酸化ニッケル粒子に対して上記実施例1と同様に処理して酸化ニッケル微粉末を作製した。得られた酸化ニッケル微粉末は硫黄含有量が70質量ppm、D50が0.48μm、比表面積が2.9m/gであった。これら実施例1〜4および比較例1〜2の測定結果を下記表1にまとめて示す。
【0053】
【表1】
【0054】
[実施例5]
焼成工程の雰囲気温度を920℃に代えて865℃とした以外は上記実施例2と同様にして酸化ニッケル微粉末作製した。この酸化ニッケル微粉末は硫黄含有量が30ppm、D50が0.40μm、比表面積が4.5m/gであった。
【0055】
[実施例6]
焼成工程の炉に長尺石英管にヒーターを付設した管状炉を使用し、石英管端部から99.99vol%窒素を毎分1Lで導入して酸素分圧0.1kPa未満の気流雰囲気において雰囲気温度920℃で5時間焼成した以外は上記実施例2と同様にして酸化ニッケル微粉末作製した。この酸化ニッケル微粉末は硫黄含有量が20質量ppm、D50が0.47μm、比表面積が3.2m/gであった。
【0056】
[実施例7]
雰囲気温度を920℃に代えて800で焼成した以外は上記実施例6と同様にして酸化ニッケル微粉末を作製した。この酸化ニッケル微粉末は硫黄含有量が50質量ppm、D50が0.36μm、比表面積が5.1m/gであった。
【0057】
[実施例8]
実施例2と同様にして作製した中間体粒子としての水酸化ニッケル粒子20gをアルミナの匣鉢に量り取り、小型減圧加熱炉内に載置した。排気量と吸気量を調整して炉内の圧力が20kPa以下、炉内の酸素分圧が4kPa以下の雰囲気になるようにして850℃で2時間焼成することにより酸化ニッケル粉末を得た。得られた酸化ニッケル粉末を乳鉢により解砕して酸化ニッケル微粉末を作製した。この酸化ニッケル微粉末は硫黄含有量が30質量ppm、D50が0.39μm、比表面積が4.4m/gであった。これら実施例5〜8の測定結果を実施例2の測定結果と合わせて下記表2にまとめて示す。
【0058】
【表2】
【0059】
上記表1の実施例1〜4の結果から分かるように、水酸化ニッケル粒子の粒度分布において粒径10μm未満の粒子の比率が体積積算で5%以下であるため、水酸化ニッケル粒子のナトリウム含有量が50質量ppm以下であり、酸化ニッケル微粉末の硫黄含有量も40質量ppm以下であることが分かる。また実施例1〜8の酸化ニッケル微粉末はD50が0.50μm以下、比表面積が3.0m/g以上と微粒化されており、酸化ニッケル微粉末の微粒化と硫黄含有量の低減とが両立できていることも分かる。
【0060】
これに対して比較例1及び比較例2では、水酸化ニッケル粒子の粒度分布において粒径10μm未満の粒子の比率が体積積算で5%を超えているため、水酸化ニッケル粒子のナトリウム含有量が50質量ppmを超えているうえ、酸化ニッケル微粉末の硫黄含有量も50質量ppm以上であり、酸化ニッケル微粉末の硫黄含有量が低減できていないことが分かる。