(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のマッハツェンダー干渉手段は、前記第1の導波路に前記データ電気信号を印加するための第1の高周波電極と、前記第1の導波路に前記直流電気信号を印加するための第1の直流電極と、前記第2の導波路に前記データ電気信号を印加するための第2の高周波電極と、前記第2の導波路に前記直流電気信号を印加するための第2の直流電極、とを備え、
前記第2のマッハツェンダー干渉手段は、前記第3の導波路に前記データ電気信号を印加するための第3の高周波電極と、前記第3の導波路に前記直流電気信号を印加するための第3の直流電極と、前記第4の導波路に前記データ電気信号を印加するための第4の高周波電極と、前記第4の導波路に前記直流電気信号を印加するための第4の直流電極、とを備え、
前記第3のマッハツェンダー干渉手段は、前記第5の導波路に前記直流電気信号を印加するための第5の直流電極と、前記第6の導波路に前記直流電気信号を印加するための第6の直流電極、とを備える
請求項4に記載した光変調装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
コヒーレント光通信に用いられるマッハツェンダー(Mach−Zehnder:MZ)型光変調器は、駆動条件(ロス条件、干渉条件)を定める直流(direct current:DC)バイアスを印加するDC電極と、主信号を印加するRF(Radio−Frequency)電極を備える。MZ型光変調器においては、一対の光導波路にDC電圧または電流を印加することによって導波路を伝播する光の位相を変化させる。また、一対の分岐光同士の干渉状態を変化させることにより、出力光のパワーや位相を変化させることができる。
【0009】
また、特許文献1に記載されたような半導体を用いた光変調器は、光導波路に電圧を印加することによって導波路の損失(ロス)が変化するため、伝播する光は位相だけではなく振幅も変化する。
【0010】
同相成分I(In−phase)および直交位相成分Q(Quadrature−phase)に対応した2個のMZ干渉計を含むデュアルパラレルMZ型光変調器では、各MZ干渉計のDC電圧の設定について、変調動作に対応した3個の調整パラメータがある。すなわち、(A)各MZ干渉計の消光比、(B)IQ間のパワーバランス、そして(C)IQ間の位相差である。また、MZ型光変調器の信号特性を最適にするための駆動条件は、(a)消光比が高いこと、(b)I成分とQ成分のパワーが等しいこと、および(c)IQ間の位相差が90度であること、である。
【0011】
図5に、デュアルパラレル型のMZ型光変調器300の構成を示す。MZ型光変調器300は、I成分に対応したMZ干渉計(MZ_I)、Q成分に対応したMZ干渉計(MZ_Q)、およびIQ間の位相差を調整するMZ干渉計(MZ_M)を備えている。
【0012】
ここで、MZ型光変調器300が、電圧印加によって導波路のロスが変化しない、例えばLN光変調器である場合、MZ_IおよびMZ_QのDC電極(IP1、IP2、QP1、QP2)は、上述した駆動条件のうち「(a)消光比が高いこと」を実現するために用いられる。また、MZ_MのDC電極(MP1、MP2)は、上述した駆動条件のうち「(c)IQ間の位相差が90度であること」を実現するために用いられる。
【0013】
一方、MZ型光変調器300が、電圧によって導波路のロスが変化する、例えば半導体光変調器である場合、MZ_MのDC電極(MP1、MP2)は、駆動条件(c)に加えて駆動条件(b)「I成分とQ成分のパワーが等しいこと」を実現するためにも用いられる。
【0014】
図5に示すように、MZ型光変調器300においては、MZ_Iの出力光およびMZ_Qの出力光がMZ_Mの入力光となる。そのため、MZ_I(MZ_Q)の印加電圧の変化によりMZ_I(MZ_Q)の出力光の位相、または位相とパワーが変化すると、MZ_MにおけるMZ_Iの出力光とMZ_Qの出力光の干渉状態が変化する。すなわち、上述した調整パラメータが変化することになる。
【0015】
このように、MZ型光変調器において、一つのパラメータを調整する目的で一のMZ干渉計の印加電圧を変更すると、上述した3つのパラメータ(A)(B)(C)に影響を及ぼすことになる。そのため、MZ型光変調器の制御が複雑になるという課題がある。
【0016】
以下に、上述した課題について、さらに詳細に説明する。
【0017】
まず、導波路に対する電圧印加によって伝播光の位相および振幅が変化するMZ干渉計の動作について説明する。
図6に、MZ干渉計400の構成を模式的に示す。
【0018】
同図に示すように、入力光は二つに分岐され一対の導波路をそれぞれ伝播する。そして、各導波路に印加された電圧に応じて、伝播する光の位相および振幅が変化する。すなわち、分岐光X1および分岐光X2は、電圧V
1および電圧V
2がそれぞれ印加された導波路を伝播することによって、位相θおよび振幅Aが変化する。分岐光X1および分岐光X2の複素振幅A1およびA2は、それぞれ以下のように表される。
A1=A
1(V
1)*exp[iθ
1(V
1)] (1)
A2=A
2(V
2)*exp[iθ
2(V
2)] (2)
分岐光X1および分岐光X2はMZ干渉計の出力側で再度合波し、出力光X3として出力される。出力光X3の複素振幅A3は下記の式(3)で表される。
A3=A
out*exp[iθ
out] (3)
ここで、A
outおよびθ
outは、以下のように表される。
A
out=√(A
12+A
22+A
1*A
2cos(θ
1−θ
2)
tanθ
out=(A
1sinθ
1+A
2sinθ
2)/(A
1cosθ
1+A
2cosθ
2)
なお、A
1=A
2の場合は以下のようになる。
tanθ
out=(2sin((θ
1+θ
2)/2)*cos((θ
1−θ
2)/2))/(2cos((θ
1+θ
2)/2)*cos((θ
1−θ
2)/2))
さらに、cos((θ
1−θ
2)/2)≠0の場合は以下の式で表される。
tanθ
out=sin((θ
1+θ
2)/2)/cos((θ
1+θ
2)/2)=tan((θ
1+θ
2)/2)
上記の式で表されるように、出力光X3の複素振幅A3は分岐光X1および分岐光X2の位相θ
1、θ
2および振幅A
1、A
2に依存する。
【0019】
図5に示したMZ型光変調器300において、MZ_I(MZ_Q)の印加電圧を変化させると、各MZ干渉計の消光比(調整パラメータ(A))が変化する。上述したように、MZ_Iの出力光およびMZ_Qの出力光が、MZ_Mの分岐した入力光になっているので、MZ_I(MZ_Q)の出力光すなわちMZ_Mへの入力光の位相およびパワーも変化する。したがって、MZ_Mの印加電圧を変化させていない場合においても、IQ間のパワーバランス(調整パラメータ(B))やIQ間の位相差(調整パラメータ(C))が変化することになる。
【0020】
一方、MZ_MのDC電極(MP1、MP2)の印加電圧を変化させた場合、MZ_I(MZ_Q)から入射される分岐光のパワーが変化する。その結果、MZ_Mの出力光におけるIQ間のパワーバランス(調整パラメータ(B))が変化するだけでなく、IQ間の位相差(調整パラメータ(C))も変化する。
【0021】
上述したように、半導体光変調器のような、電圧印加によって伝播光の位相や振幅が変化するMZ干渉計型光変調器においては、1個のMZ干渉計の印加電圧を変化させるだけで、3個の調整パラメータが変化する場合がある。したがって、3個の調整パラメータを同時に最適化するために、すべてのMZ干渉計における干渉状態を考慮した複雑な制御が必要となる。ここで、3個の調整パラメータは、上述した(A)各MZ干渉計の消光比、(B)IQ間のパワーバランス、および(C)IQ間の位相差である。
【0022】
図7に、MZ型光変調器を備えた関連する光変調装置500の構成を示す。関連する光変調装置500は、MZ型光変調器510、光モニタ部520、制御部530、電圧印加部540、信号入力部550、およびレーザー光源560を有する。ここで、MZ型光変調器510は、MZ干渉計511、DC電極512、およびRF電極513を備え、電圧印加で伝播光の位相や振幅が変化する。
【0023】
次に、関連する光変調装置500の動作について説明する。
【0024】
レーザー光源560から、MZ型光変調器510に入力光51が入射する。電圧印加部540はMZ型光変調器510が備えるDC電極512にDC電圧を印加し、信号入力部550は入力信号52をRF電極513に与える。これにより、MZ型光変調器510は入力光51を変調し、出力光53を出力する。また、出力光53の一部を分岐光54として出力する。光モニタ部520は分岐光54をモニタする。制御部530は光モニタ部520からのモニタ情報に基いて、必要に応じて電圧印加部540を制御する。
【0025】
MZ型光変調器510の構成は、
図5に示したMZ型光変調器300の構成と同様である。MZ干渉計511を構成するMZ_Mにおいて、MZ_IとMZ_Qの出力光が干渉する。MZ型光変調器510が良好な信号特性を備えた出力光53を出力するためには、上述した3個の駆動条件を満たす必要がある。すなわち、(a)MZ_Iの出力光およびMZ_Qの出力光の消光比が高いこと、(b)I成分とQ成分のパワーが等しいこと、および(c)IQ間の位相差が90度であること、が必要である。
【0026】
これらの駆動条件、すなわち、消光比、IQ間のパワーバランス、およびIQ間の位相差を最適化するために、3個のMZ干渉計MZ_I、MZ_Q、およびMZ_Mに印加する電圧の組み合わせを、光モニタ部520からのモニタ情報に基いて決定する。
【0027】
ここで、IQ間のパワーが等しく、IQ間の位相差が90度に設定されている状態で、I成分に対応したMZ干渉計(MZ_I)の消光比を調整するための動作について説明する。上述したように、MZ_IのDC電極(IP1、IP2)に印加する電圧を変化させると、MZ_Iの出力光の消光比を調整することができる。このとき同時に、MZ_Iの出力光のパワーおよび位相が変化する(式(3)参照)。そうすると、MZ_MにおけるIQ間のパワーバランスが変化し、上述した3個の調整パラメータのうち(C)I出力光とQ出力光の位相差が90度ではなくなる。
【0028】
すなわち、一のMZ干渉計の印加電圧を変化させると、他のMZ干渉計にまでその変化が波及し、上述した3個の調整パラメータ(A)、(B)、(C)が変化することになる。したがって、3個の調整パラメータ(A)、(B)、(C)を最適化するために、3個のMZ干渉計を同時に制御する必要がある。
【0029】
このように、複数のマッハツェンダー干渉計を備えた光変調器の信号特性を最適化するために、複雑な制御が必要になる、という問題があった。
【0030】
本発明の目的は、上述した課題である、複数のマッハツェンダー干渉計を備えた光変調器の信号特性を最適化するために、複雑な制御が必要になる、という課題を解決する光変調装置および光変調器の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明の光変調装置は、一対の導波路を含む複数のマッハツェンダー干渉手段を備えた光変調器と、導波路に印加されるバイアス電気信号と導波路の光学特性との関係を示す導波路特性情報を記憶する記憶手段と、複数のマッハツェンダー干渉手段のうちの一のマッハツェンダー干渉手段に含まれる導波路に印加されるバイアス電気信号の変化に応じて、他のマッハツェンダー干渉手段に含まれる導波路に印加する補正電気信号を、導波路特性情報に基いて算出する演算手段と、補正電気信号を、他のマッハツェンダー干渉手段に含まれる導波路に印加する信号印加手段、とを有する。
【0032】
本発明の光変調器の制御方法は、一対の導波路を含む複数のマッハツェンダー干渉計を備えた光変調器の制御方法であって、導波路に印加されるバイアス電気信号と導波路の光学特性との関係を示す導波路特性情報を取得し、複数のマッハツェンダー干渉計のうちの一のマッハツェンダー干渉計に含まれる導波路に印加されるバイアス電気信号の変化に応じて、他のマッハツェンダー干渉計に含まれる導波路に印加する補正電気信号を、導波路特性情報に基いて算出し、補正電気信号を、他のマッハツェンダー干渉計に含まれる導波路に印加する。
【発明の効果】
【0033】
本発明の光変調装置および光変調器の制御方法によれば、複数のマッハツェンダー干渉計を備えた光変調器の信号特性を、簡便な制御により最適化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0036】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光変調装置100の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る光変調装置100は、光変調器110、記憶部(記憶手段)120、演算部(演算手段)130、および信号印加部(信号印加手段)140を有する。
【0037】
光変調器110は、一対の導波路を含む複数のマッハツェンダー干渉計(マッハツェンダー干渉手段)を備える。記憶部120は、この導波路に印加されるバイアス電気信号と導波路の光学特性との関係を示す導波路特性情報を記憶する。
【0038】
演算部130は、複数のマッハツェンダー干渉計のうちの一のマッハツェンダー干渉計に含まれる導波路に印加されるバイアス電気信号の変化に応じて、他のマッハツェンダー干渉計に含まれる導波路に印加する補正電気信号を、導波路特性情報に基いて算出する。そして、信号印加部140は、この補正電気信号を、他のマッハツェンダー干渉計に含まれる導波路に印加する。
【0039】
このような構成としたことにより、本実施形態の光変調装置100によれば、一のマッハツェンダー干渉計に含まれる導波路に印加されるバイアス電気信号の変化に応じて、他のマッハツェンダー干渉計に含まれる導波路に補正電気信号が印加される。そのため、光変調器110の信号特性を最適化するために、一のマッハツェンダー干渉計の調整パラメータを変更した場合であっても、他のマッハツェンダー干渉計の調整パラメータを一定に保つことができる。そのため、光変調器110の各調整パラメータを独立に制御することが可能になる。すなわち、本実施形態の光変調装置100によれば、複数のマッハツェンダー干渉計を備えた光変調器の信号特性を、簡便な制御により最適化することができる。
【0040】
次に、本実施形態による光変調装置100の動作について説明する。
【0041】
光変調器110の変調動作を最適化するための調整パラメータのうち、調整対象とするパラメータが選択されると、制御対象となるマッハツェンダー(Mach−Zehnder:MZ)干渉計に対するバイアス電気信号(印加電圧)が変更される。このとき、演算部130は、このバイアス電気信号の変化による導波路の光学特性の変化量を、導波路特性情報に基いて算出する。ここで光学特性は、導波路を伝播する導波光の位相および損失とすることができる。
【0042】
演算部130は続いて、導波路の光学特性の変化量による一のマッハツェンダー干渉計(マッハツェンダー干渉手段)の出力光の特性変化量を算出する。そして、この特性変化量を相殺するように、補正電気信号を導波路特性情報に基いて決定する。
【0043】
すなわち、演算部130は、導波路の損失(ロス)と印加電圧の関係および位相変化と印加電圧との関係(導波路特性情報)と、MZ型干渉計の理論式(式(3)参照)を用いて、各パラメータ変化を計算する。そして、調整対象となるパラメータ以外のパラメータの変化を補正するように、各MZ干渉計に印加する補正電気信号(補正電圧)を逆算する。この計算結果に基いてバイアス電圧印加を行うことにより、調整対象となるパラメータ以外のパラメータを一定に保つことができる。
【0044】
このように、本実施形態の光変調装置100によれば、光変調器110の調整パラメータを独立に調整することが可能になるので、簡便な制御により光変調器110の最適制御を行うことができる。特に、半導体光変調器のような、電圧印加によって伝播光の位相だけでなく振幅も変化するMZ干渉計型光変調器であっても、簡便な制御によって最適動作を実現することが可能になる。
【0045】
次に、本実施形態による光変調器の制御方法について説明する。本実施形態による光変調器の制御方法は、一対の導波路を含む複数のマッハツェンダー干渉計を備えた光変調器の制御方法である。
【0046】
本実施形態の光変調器の制御方法においては、まず、導波路に印加されるバイアス電気信号と導波路の光学特性との関係を示す導波路特性情報を取得する。そして、複数のマッハツェンダー干渉計のうちの一のマッハツェンダー干渉計に含まれる導波路に印加されるバイアス電気信号の変化に応じて、他のマッハツェンダー干渉計に含まれる導波路に印加する補正電気信号を、導波路特性情報に基いて算出する。この補正電気信号を、他のマッハツェンダー干渉計に含まれる導波路に印加する。
【0047】
ここで、上述の光学特性は、導波路を伝播する導波光の位相および損失とすることができる。
【0048】
また、補正電気信号の算出は、以下の工程を含む構成とすることができる。すなわち、補正電気信号の算出においては、まず、バイアス電気信号の変化による導波路の光学特性の変化量を、導波路特性情報に基いて算出する。続いて、導波路の光学特性の変化量による一のマッハツェンダー干渉計の出力光の特性変化量を算出する。そして、この特性変化量を相殺するように、補正電気信号を導波路特性情報に基いて決定する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の光変調装置100および光変調器の制御方法によれば、複数のマッハツェンダー干渉計を備えた光変調器の信号特性を、簡便な制御により最適化することができる。
【0050】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図2は、本発明の第2の実施形態に係る光変調装置200の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る光変調装置200は、MZ型光変調器(光変調器)210、データ保存部(記憶手段)220、データ演算部(演算手段)230、および信号印加部(信号印加手段)240を有する。
【0051】
MZ型光変調器210は、一対の導波路を含む複数のマッハツェンダー干渉計(マッハツェンダー干渉手段)からなるMZ干渉計211を備える。データ保存部220は、この導波路に印加されるバイアス電気信号と導波路の光学特性との関係を示す導波路特性情報を記憶する。
【0052】
データ演算部230は、複数のマッハツェンダー干渉計のうちの一のマッハツェンダー干渉計に含まれる導波路に印加されるバイアス電気信号の変化に応じて、他のマッハツェンダー干渉計に含まれる導波路に印加する補正電気信号を、導波路特性情報に基いて算出する。そして、信号印加部240は、この補正電気信号を、他のマッハツェンダー干渉計に含まれる導波路に印加する。
【0053】
ここまでの構成は、第1の実施形態による光変調装置100の構成と同様である。本実施形態に係る光変調装置200は、さらにレーザー光源250と光モニタ部(モニタ手段)260を有する。レーザー光源250は、MZ型光変調器210に入力するレーザー搬送波を送出する。光モニタ部260は、MZ型光変調器210の出力光の一部をモニタしてモニタ信号を出力する。
【0054】
ここで、データ演算部230は、このモニタ信号に基いて導波路特性情報を生成し、生成した導波路特性情報をデータ保存部220に記憶する。
【0055】
また、信号印加部240は、電圧印加部(直流電気信号印加手段)242、信号入力部(データ信号入力手段)243、および制御部(制御手段)241を備えた構成とした。ここで、電圧印加部242は、バイアス電気信号および補正電気信号を含む直流電気信号を導波路に印加する。信号入力部243は、導波路にデータ電気信号を印加する。そして、制御部241は、一のマッハツェンダー干渉計に含まれる導波路にバイアス電気信号を印加し、他のマッハツェンダー干渉計に含まれる導波路に補正電気信号を印加するように、電圧印加部242を制御する。
【0056】
上述したように、MZ型光変調器210は、複数のマッハツェンダー干渉計からなるMZ干渉計211を備える。MZ干渉計211は、第1のマッハツェンダー干渉計(第1のマッハツェンダー干渉手段)、第2のマッハツェンダー干渉計(第2のマッハツェンダー干渉手段)、および第3のマッハツェンダー干渉計(第3のマッハツェンダー干渉手段)を含む構成とすることができる。
【0057】
ここで、第1のマッハツェンダー干渉計は、第1の導波路と第2の導波路を備える。第2のマッハツェンダー干渉計は、第3の導波路と第4の導波路を備える。そして、第3のマッハツェンダー干渉計は、第1のマッハツェンダー干渉計が出力する第1の干渉光を導波する第5の導波路と、第2のマッハツェンダー干渉計が出力する第2の干渉光を導波する第6の導波路とを備える。このとき、データ保存部220は、第1の導波路、第2の導波路、第3の導波路、第4の導波路、第5の導波路、および第6の導波路に対する導波路特性情報をそれぞれ記憶する。
【0058】
また、MZ型光変調器(光変調器)210は、DC電極(直流電極)212と、RF電極(高周波電極)213を備える。
【0059】
具体的には、第1のマッハツェンダー干渉計に関して、第1の導波路にデータ電気信号を印加するための第1の高周波電極と、第1の導波路に直流電気信号を印加するための第1の直流電極を備える。さらに、第2の導波路にデータ電気信号を印加するための第2の高周波電極と、第2の導波路に直流電気信号を印加するための第2の直流電極を備える。
【0060】
第2のマッハツェンダー干渉計に関して、第3の導波路にデータ電気信号を印加するための第3の高周波電極と、第3の導波路に直流電気信号を印加するための第3の直流電極を備える。さらに、第4の導波路にデータ電気信号を印加するための第4の高周波電極と、第4の導波路に直流電気信号を印加するための第4の直流電極を備える。
【0061】
また、第3のマッハツェンダー干渉計に関して、第5の導波路に直流電気信号を印加するための第5の直流電極と、第6の導波路に直流電気信号を印加するための第6の直流電極を備える。
【0062】
次に、本実施形態に係る光変調装置200の動作について説明する。
【0063】
レーザー光源250からMZ型光変調器210に入力光21が入射する。電圧印加部242はDC電極212に直流電圧を印加する。そして、MZ型光変調器210は、信号入力部243からRF電極213に与えられる入力信号22によって入力光21を変調し、出力光23を出力する。また、光モニタ部260は、出力光の一部を分岐した分岐光24をモニタする。
【0064】
以下の説明では、MZ型光変調器210は、
図5に示したデュアルパラレル型のMZ型光変調器300と同様の構成である場合について説明する。すなわち、MZ型光変調器210は、第1のマッハツェンダー干渉計としてI成分(同相成分)に対応したMZ干渉計(MZ_I)を、第2のマッハツェンダー干渉計としてQ成分(直交位相成分)に対応したMZ干渉計(MZ_Q)を備える。MZ型光変調器210は、さらに、第3のマッハツェンダー干渉計としてIQ間の位相差を調整するMZ干渉計(MZ_M)を備えている。
【0065】
この場合、
図7に示した関連する光変調装置500では、上述した3個の調整パラメータを同時に最適化するように、制御部530が電圧印加部540を制御する必要があった。ここで3個の調整パラメータは、(A)各MZ干渉計の消光比、(B)IQ間のパワーバランス、そして(C)IQ間の位相差、である。
【0066】
それに対して、本実施形態の光変調装置200は、調整対象として選択したパラメータだけを変化させ、その他のパラメータは変化しないように補正を行う機能を有する。
【0067】
具体的には、まず、起動時にあらかじめ、MZ型光変調器210が備えるMZ干渉計211を構成する各導波路について、位相対電圧特性およびロス対電圧特性の測定データをキャリブレーションデータ(導波路特性情報)25としてデータ保存部220に保存する。すなわち、制御部241が起動時に電圧印加部242を制御してDC電極212に印加する電圧を変化させ、光モニタ部260から取得したモニタ信号の干渉特性から、各導波路の位相変化対印加電圧の関係およびロス対印加電圧の関係を演算により求める。そして、演算結果からキャリブレーションデータ(導波路特性情報)25を生成し、このキャリブレーションデータ25をデータ保存部220に保存する構成とすることができる。
【0068】
図3Aおよび
図3Bに、キャリブレーションデータの例を示す。
図3Aは、印加電圧に対する導波路を伝播する導波光の位相変化を示し、
図3Bは、印加電圧に対する導波路の過剰損失(ロス)を示す。
【0069】
デュアルパラレル型のMZ型光変調器210の場合、データ保存部220は、各MZ干渉計(MZ_I、MZ_Q、MZ_M)の一対の導波路それぞれについて、伝播する光の位相と印加電圧の特性およびロスと印加電圧の特性をキャリブレーションデータ25として保持する。したがって、この場合、データ保存部220は、位相とロスの2種類について6個の導波路に対するデータ、すなわち合計12個のデータを保存する。
【0070】
MZ型光変調器210の3個の調整パラメータのうち、調整対象とするパラメータを選択する。調整パラメータのうち、(A)消光比を調整する場合は、MZ_IまたはMZ_Qを制御対象のMZ干渉計とする。(B)IQ間パワーバランスを調整する場合、および(C)IQ間の位相差を調整する場合には、MZ_Mを制御対象のMZ干渉計とする。
【0071】
ここで、調整パラメータ(A)を調整する場合、調整パラメータ(B)および(C)を一定に保つようにMZ_Mの印加電圧を補正する。調整パラメータ(B)を調整する場合は、MZ_Mだけを制御することになるため、これにより調整パラメータ(A)が影響を受けることはない。よって、調整パラメータ(C)を一定にするようにMZ_Mの印加電圧を補正する。また、調整パラメータ(C)を調整する場合、MZ_Mだけを制御するので、これにより調整パラメータ(A)が影響を受けることはない。よって、調整パラメータ(B)を一定にするようにMZ_Mの印加電圧を補正する。
【0072】
制御対象のMZ干渉計の電極に印加する電圧を変化させる際に、制御部241は電圧印加部242から現在の印加電圧に関する印加電圧情報26と、データ保存部220が保存しているキャリブレーションデータ25を取得し、データ演算部230に送付する。
【0073】
データ演算部230は、制御対象のMZ干渉計が備える各導波路の、印加電圧が変化する前後における伝播光の位相変化量およびロス変化量を算出する。そして、データ演算部230は、MZ干渉計の理論式(式(3)参照)から、制御対象であるMZ干渉計の出力光について印加電圧が変化する前後における位相変化量および振幅変化量を計算する。
【0074】
データ演算部230は、さらに、制御対象であるMZ干渉計の印加電圧が変化したことによって変動したMZ_Mへの入射光や出力光の位相変化量および振幅変化量を計算する。そして、データ演算部230は、調整対象以外の調整パラメータを一定にするように、キャリブレーションデータ25から補正電圧量を逆算する。データ演算部230は、逆算することにより得られた補正電圧のデータを制御部241に送付する。制御部241は、電圧印加部242に補正電圧を印加するように指示し、電圧印加部242は補正電圧をMZ_Mに印加する。
【0075】
このように、本実施形態による光変調装置200は、調整対象のパラメータを変化させることによりMZ型光変調器210の駆動条件を制御する際に、調整対象以外のパラメータを一定に保つことができる。すなわち、光変調装置200においては、制御対象であるMZ干渉計の印加電圧を変化させると、調整対象以外のパラメータを一定にするように調整対象以外のMZ干渉計(例えばMZ_M)の補正電圧量をキャリブレーションデータから計算し自動的に補正する。そのため、対象とする調整パラメータのみを変化させることによってMZ型光変調器210の最適な制御が可能となる。
【0076】
次に、本実施形態に係る光変調装置200の動作について、さらに詳細に説明する。以下の説明では、MZ型光変調器210が、電圧印加によって伝播光の位相だけでなく振幅も変化する半導体光変調器である場合について説明する。半導体変調器においては、位相対電圧特性や、ロス対電圧特性が線形でない(
図3A、
図3B参照)。そのため、DC電圧を変化させて制御を行う場合、位相やロスの変化量は、変化させる前の印加電圧にも依存する。
【0077】
以下では、調整パラメータのうち(A)消光比を調整する場合について、
図4に示した数値例を用いて具体的に説明する。
【0078】
電圧印加部242は、制御部241の命令に従って
図3Aおよび3Bに示したような特性を有する導波路(MZ_I側)のDC電極(IP1、IP2)に印加する電圧を変化させる。例えば、IP1、IP2をそれぞれ4[V]から6.1[V]に変化させた場合、この導波路を伝播する光の位相は+0.69[rad]だけ変化し、ロスは+0.5〔dB〕だけ増加する。したがって、MZ_Iの出力光は位相(I位相)が+0.69[rad]だけ変化し、出力光のパワー(I−Power)においてロスが0.5〔dBm〕だけ増加する。一方、印加電圧が変化していないMZ_Qの出力光の特性は、MZ_IのDC電極(IP1、IP2)に印加する電圧が変更した前後で変化しない。
【0079】
データ演算部230は、電圧印加部242から制御部241を介して印加電圧情報26を取得し、データ保存部220から保存しているキャリブレーションデータ25を取得する。そして、印加電圧情報26とキャリブレーションデータ25から、DC電極(IP1、IP2)を備えた導波路を伝播する光の位相変化および振幅変化を算出する。そして、データ演算部230は、MZ干渉計の理論式(式(3)参照)からMZ_Iの出力光の位相変化および振幅変化を計算する。
【0080】
ここで上述したように、調整パラメータ(A)を調整する場合、MZ_Iを制御対象のMZ干渉計とすると、MZ_MのI側導波路に入射する光の位相および振幅が変化する。そのため、他の調整パラメータ(B)、(C)も変化する。そこで、調整パラメータ(B)、(C)を変化前後で一定に保つために、下記の式(4)および(5)を同時に満たすように、キャリブレーションデータから補正電圧を逆算して算出する。そして、この補正電圧をMZ_MのDC電極(MP1、MP2)に印加する。
【0081】
−(MP1補正電圧によるI側導波路の位相変化)+MP2補正電圧によるQ側導波路の位相変化 = パラメータ(A)調整時に変化したMZ_I出力光の位相変化 (4)
−(MP1補正電圧によるI側導波路のロス変化)+MP2補正電圧によるQ側導波路のロス変化 = パラメータ(A)調整時に変化したMZ_I出力光のロス変化 (5)
図4の「初期状態」欄に例示したように、IQ間パワーバランス(IQPower差)およびIQ位相差が最適化されている場合において、MZ_Iの消光比を調整する場合について、具体的に説明する。MZ_IのDC電極(IP1、IP2)に印加されている電圧が、消光比を調整するために4Vから6.1Vに変更されたとする。このとき、MZ_I出力光のパワー(I−Power)および位相(I位相)が変化するため、IQ間パワーバランス(IQPower差)およびIQ位相差は最適状態ではなくなる。
【0082】
しかしながら、本実施形態の光変調装置200によれば、MZ_MのDC電極(MP1、MP2)の印加電圧(6.5V、2.2V)が補正電圧(5V、2.9V)に自動的に変更される。これにより、IQ間パワーバランス(IQPower差)およびIQ位相差の変化分を相殺することができる。
【0083】
図4に例示した数値を用いると、上記式(4)は下記式(4’)のように表すことができる。
+0.57[rad](MP1:6.5V→5V)+0.13[rad](MP2:2.2V→2.9V)≒0.69[rad](IP1、IP2:4V→6.1V) (4’)
また、上記式(5)は下記式(5’)のように表すことができる。
+0.5[dB](MP1:6.5V→5V)+0[dB](MP2:2.2V→2.9V)=0.5[dB](IP1、IP2:4V→6.1V) (5’)
データ演算部230は、算出したMZ_MのDC電極(MP1、MP2)に印加する補正電圧のデータを制御部241に送出する。制御部241は、この補正電圧をDC電極(MP1、MP2)に印加するように電圧印加部242を制御する。
【0084】
これらの動作により、制御対象としたMZ干渉計(MZ_I)だけを考慮して、調整パラメータ(A)を調整することができる。
【0085】
その他の調整パラメータを調整する場合についても、データ演算部230が同様の計算を行い、補正電圧が自動的に印加される。そのため、制御対象とした調整パラメータの調整だけを考慮して、MZ型光変調器210の制御を行うことができる。
【0086】
上述したように、本実施形態の光変調装置200によれば、信号特性に直接影響する各制御パラメータを独立に最適化することができるため、制御が簡便になる。具体的には例えば、光変調装置200を搭載した製品(変調器アセンブリ)の出荷試験時において、光変調器の干渉状態を決定する電圧駆動条件を変化させて測定を行う場合に、条件設定が簡便になる。このように、本実施形態の光変調装置200によれば、複数のマッハツェンダー干渉計を備えた光変調器の信号特性を、簡便な制御により最適化することができる。
【0087】
なお、MZ型光変調器210として、偏波多重IQ(Dual Polarization In−phase Quadrature−phase:DP−IQ)光変調器を用いた場合は、偏波間のパワーのインバランスの補正も容易になる。また、光変調器の自動電圧制御ループを実装した光変調装置にも本実施形態を適用することが可能であり、この場合、自動電圧制御を簡便にすることができる。
【0088】
上記説明では、MZ_IのDC電極(IP1、IP2)に印加する電圧の変化によりMZ_Iの出力光の位相が変化した場合、MZ_MのDC電極(MP1、MP2)に印加する電圧を調整してMZ型光変調器210の出力光のIQ間位相差を補正することとした。しかし、これに限らず、Q成分に対応したMZ干渉計(MZ_Q)のDC電極(QP1、QP2)に印加する電圧を変化させることにより、MZ_Qの出力光の位相を変化させる構成としてもよい。
【0089】
また、MZ_IのDC電極(IP1、IP2)に印加する電圧の変化によりMZ_Iの出力光の振幅が変化した場合、MZ_MのDC電極(MP1、MP2)に印加する電圧を調整してMZ型光変調器210の出力光のIQパワーバランスを補正することとした。しかし、これに限らず、MZ_QのDC電極(QP1、QP2)に印加する電圧を変化させることにより、MZ_Qの出力光の振幅を変化させる構成としてもよい。
【0090】
本実施形態では、MZ型光変調器210が半導体光変調器である場合について説明した。しかし、これに限らず、MZ型光変調器210が、導波路への電圧印加によって導波路の位相のみが変化する光変調器、例えばLN光変調器である場合であっても、本実施形態を適用することができる。この場合、IQ間のパワーバランス(調整パラメータ(B))はDC電極の印加電圧の変化により変動することはないため、調整パラメータ(B)に関する制御は必要ない。
【0091】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。