(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記故障モード同定部は、前記差分に基づいて、前記1つ以上の故障モードを生じている可能性が高い順に並べ、前記並び順が所定番目までの故障モードを同定の対象とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の故障診断装置。
前記模擬部は、前記対象機器について想定される前記1つ以上の故障モードと、前記対象機器から得られた運転データとを入力とし、複数種類の前記仮想測定データの値を出力とするモデルを用いて前記模擬を行う、請求項1から4のいずれか1項に記載の故障診断装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の故障診断システムの構成を示す模式図である。
図1の故障診断システムでは、故障診断装置1と発電プラント2が通信ネットワーク3により接続されている。
【0009】
故障診断装置1は、プロセッサなどの制御部1aと、通信インタフェースなどの通信部1bと、キーボードやマウスなどの操作部1cと、モニタなどの表示部1dと、メモリやストレージなどの記憶部1eとを備えている。制御部1aは、模擬部11と、測定データ取得部12と、故障モード同定部13と、出力部14とを備えている。制御部1aのこれらの機能ブロックは、例えば記憶部1eのストレージ内に格納された故障診断プログラムを制御部1aのプロセッサにより実行することで実現される。故障診断プログラムは、記録媒体から故障診断装置1にインストールされてもよいし、通信ネットワーク3上のサーバから故障診断装置1にダウンロードされてもよい。
【0010】
発電プラント2は、発電機2a、タービン2b、ボイラ2cなどの機器と、これらの機器の動作を制御する制御装置2dとを備えている。本実施形態では、これらの機器が故障診断装置1による診断の対象機器となる。発電プラント2の例は、火力発電プラントであるが、発電の種別としては火力発電に限定されない。なお、故障診断装置1の対象となる設備は、発電プラント2に限定されるものではなく、エンジン、コンプレッサ、ポンプなどの一般産業機器を含むその他の設備でもよい。
【0011】
模擬部11は、対象機器の挙動を模擬するデータ処理を行うブロックであり、対象機器に対応するモデルを用いてこのような模擬を行う。模擬部11は、対象機器が1つ以上の故障モードのうちの少なくともいずれか1つにあるときの仮想測定データを、モデルを用いて出力する。例えば、発電機2aのロータファンが損傷していると仮想した場合、発電機モデルを用いた模擬により振動データが出力される。
【0012】
測定データ取得部12は、対象機器から測定された測定データを取得するブロックである。例えば、発電機2aから測定された振動データが、制御装置2dから測定データ取得部12に通信ネットワーク3を介して転送される。
【0013】
故障モード同定部13は、模擬部11から仮想測定データを受信し、測定データ取得部12から測定データを受信し、受信した仮想測定データおよび測定データに基づいて、対象機器の故障モードを同定する。例えば、上記の仮想振動データの値が上記の振動データの値に近い場合には、発電機2aのロータファンが損傷していると判定される。
【0014】
なお、仮想測定データと測定データの両データを受信するデータ受信部は、故障モード同定部13に内在してもよいし、内在せずに故障診断装置1に有してもよい。また、模擬部11、測定データ取得部12、およびデータ受信部を含めて、故障診断装置1内の監視装置と称する。
【0015】
出力部14は、故障モード同定部13から受け取った故障モードの同定結果を出力するブロックであり、例えば、故障モードの同定結果を、表示部1dのモニタに表示したり、記憶部1eのストレージに保存したり、通信部1bにより外部に送信する。例えば、発電機2aのロータファンが損傷しているとの判定結果がモニタに表示される。
【0016】
なお、出力部14は、故障モードの同定結果として、対象機器に生じたと判定された故障モードを出力してもよいし、対象機器に生じた可能性があると判定された故障モードを出力してもよい。前者の例は「発電機2aにロータコイル通風阻害とロータファン損傷が生じている」との判定結果のモニタ表示である。後者の例は「発電機2aにレイヤショート、ロータコイル通風阻害、ロータファン損傷のいずれか1つ以上が生じている可能性がある」とのモニタ表示である。
【0017】
図2は、第1実施形態の発電機モデルの動作を説明するための模式図である。
【0018】
図2の発電機モデルMは、発電機2aについて想定される1つ以上の故障モード(想定故障モード)D1と、発電機2aから得られた運転データD2とを入力とし、複数種類の仮想測定データD3の値を出力とする。
【0019】
図2は、想定故障モードD1の例として故障モードA〜Mを示している。例えば、故障モードAは、発電機2aのレイヤショートである。故障モードBは、発電機2aのロータコイル通風阻害である。故障モードCは、発電機2aのロータファン損傷である。発電機2aでは、これらの故障モードが生じることが想定される。なお、故障モードの数や種類は、
図2に示す数か個数に限定されるものではない。
【0020】
運転データD2は、発電機2aの運転状態を表すデータであり、制御装置2dから模擬部11に通信ネットワーク3を介して転送される。運転データD2の例は、発電機2aの出力電力(電気出力)の時系列データである。
【0021】
図2は、仮想測定データD3の例として仮想測定データA〜Gを示している。例えば、仮想測定データAは、発電機2aのエアギャップ磁束密度である。仮想測定データBは、発電機2aのロータの振動に関するデータ(例えば振幅や位相)である。
【0022】
発電機モデルMは、想定故障モードD1と運転データD2とに基づいて仮想測定データD3を出力する種々のモジュールの集合として構成されている。
図2は、これらのモジュールの例としてモジュールA〜Fを示している。例えば、モジュールAは、発電機2aの電磁力を取り扱うモジュールである。モジュールBは、発電機2aの熱曲りを取り扱うモジュールである。モジュールCは、発電機2aの振動応答を取り扱うモジュールである。これらのモジュールは例えば、物理モデルに基づく数式、事前に行った数値計算結果に基づくテーブルや関数、経験に基づくテーブルや関数などにより構成される。
【0023】
故障診断装置1は、発電機2aに故障モードAが生じているか否か(または生じている可能性があるか否か。以下同様)を判定する場合、発電機モデルMに故障モードAに関するデータを入力する。この場合、モジュールA、Bは、故障モードAに関するデータに基づいて仮想測定データAとモジュールCへのデータとを出力し、モジュールCは、モジュールA、Bからのデータに基づいて仮想測定データBを出力する。仮想測定データA、Bは、発電機2aに故障モードAが生じているか否かを判定するために使用される。
【0024】
図3は、第1実施形態の故障診断装置1の動作を示すフローチャートである。
図3については、対象機器が発電機2aである場合を例として説明する。
【0025】
まず、模擬部11の発電機モデルMは、想定故障モードD1と運転データD2とに基づいて、発電機2aの所定の故障モードに関する仮想測定データD3を出力する(プロセスS1)。例えば、模擬部11は、仮想測定データD3として、故障モード1〜nのうちの故障モードiに関する仮想測定データX
iを出力する。ここで、nは1以上の整数であり、iは1≦i≦nを満たす整数である。仮想測定データX
iは、K種類の仮想測定データの値からなるK次ベクトルである(Kは2以上の整数)。
図3のプロセスSa〜Sbのループ処理から理解されるように、故障診断装置1は、プロセスS1〜S5を故障モード1〜nの各々について実行する。故障モードiは、故障モード1〜nのうちの任意の故障モードを表す。
【0026】
一方、測定データ取得部12は、発電機2aから測定された測定データを取得して処理し、このデータを仮想測定データX
iと比較可能な処理済み測定データX
0に変換する(プロセスS2)。処理済み測定データX
0は、K種類の処理済み測定データの値からなるK次ベクトルである。
【0027】
プロセスS2では例えば、発電機2aのロータの振動の時系列データが周波数データにフーリエ変換され、周波数データにおける所定周波数の振幅が処理済み測定データX
0として出力される。また、発電機2aからの測定データのサンプリング周波数は、測定データの種類ごとに異なる場合があるため、サンプリング周波数を整合させるための処理をプロセスS2にて行う。例えば、上記の変換処理では、高いサンプリング周波数(例えば512Hz)で測定された振動の時系列波形が周波数波形に変換され、ロータのオーバーオール振幅、ロータの回転数に同期した振動成分の振幅および位相、ロータの回転数の2倍成分の振幅、ロータの回転に非同期の振動成分の振幅、これらの時間変化率などが周波数波形から抽出され、処理済み測定データX
0の成分として出力される。さらには、ロータの振動は軸受のメタル温度に関連性があることから、処理済み測定データX
0としてメタル温度を出力してもよい。
【0028】
次に、模擬部11は、仮想測定データX
iのK個の値同士の関係を正規化し、正規化された仮想測定データx
iを出力する(プロセスS3)。正規化は、故障モードiを精度良く同定するために、仮想測定データX
iの値同士の寄与率(重み付け)を変化させる処理である。例えば、発電機2aにおいてオーバーオール振幅よりもオーバーオール振幅の時間変化率の方が故障モードiへの影響が大きい場合には、オーバーオール振幅の時間変化率の値に寄与率に応じた係数を乗じることで仮想測定データX
iを仮想測定データx
iに正規化する。これにより、故障モードiに対するオーバーオール振幅とその時間変化率の影響を正確に評価することが可能となる。同様に、測定データ取得部12は、処理済み測定データX
0のK個の値同士の関係を正規化し、正規化された処理済み測定データx
0を出力する(プロセスS4)。以下、正規化された処理済み測定データx
0を、単に「正規化された測定データx
0」と表記する。
【0029】
正規化された仮想測定データx
iは、K種類の仮想測定データの値からなるK次ベクトルである。同様に、正規化された測定データx
0は、K種類の測定データの値からなるK次ベクトルである。仮想測定データx
iと測定データx
0の値(ベクトル成分)の例は、ロータのオーバーオール振幅、ロータの回転数に同期した振動成分の振幅および位相、ロータの回転数の2倍成分の振幅、ロータの回転に非同期の振動成分の振幅、これらの時間変化率、軸受のメタル温度などである。なお、仮想測定データX
iの正規化方法と、測定データx
0の正規化方法としては、互いに比較が可能な正規化データx
i、x
0を導出できるのであれば、同じ方法を採用してもよいし、異なる方法を採用してもよい。
【0030】
次に、故障モード同定部13は、正規化された仮想測定データx
iと、正規化された測定データx
0とを受信して、両者の差分二乗和e
iを計算する(プロセスS5)。差分二乗和e
iは、仮想測定データx
iと測定データx
0との差分(K次ベクトル)x
i−x
0を計算し、差分x
i−x
0のノルム|x
i−x
0|の二乗を計算することで導出可能である。プロセスS5では、差分x
i−x
0の二乗和の代わりに、x
iとx
0の内積を計算してもよい。
【0031】
差分二乗和e
iは、発電機2aからの測定データx
0が、故障モードiの仮想測定データx
iに近いほど小さくなる。よって、差分二乗和e
iは、故障モードiを同定するために使用可能である。なお、上述の運転データD2は、プロセスS1にて仮想測定データD3を計算するのに使用する代わりに、プロセスS5にて差分二乗和e
iを計算するのに使用してもよいし、プロセスS7において運転データを特定する(例えば負荷率を特定する)ことで使用してもよい。
【0032】
故障診断装置1は、プロセスS1〜S5を故障モード1〜nの各々について行う。その結果、故障モード1〜nに対応する差分二乗和e
1〜e
nが計算される。故障モード同定部13は、これらの差分二乗和e
1〜e
nを小さい順に並べ替える(プロセスS6)。これは、故障モード1〜nを生じている可能性が高い順に並べ替えることに相当する。
【0033】
ただし、このプロセスS6は必須のプロセスではなく、並べ替えをそもそもしない場合もあれば、並べ替えをする場合であっても、差分二乗和e
1〜e
nの大きさではなく、例えば所定の優先順位に基づいて並べ替えをする場合もある。したがって、プロセスS7の同定も、このプロセスS6の有無を含む様々な状況を踏まえて実施される。
【0034】
次に、故障モード同定部13は、差分二乗和e
1〜e
nに基づいて発電機2aの故障モードを同定する(プロセスS7)。具体的には、故障モード同定部13は、差分二乗和e
iが規格化した判定基準値よりも小さい場合において、故障モードiが生じている(または生じている可能性がある)と判定する。差分二乗和e
1〜e
nはプロセスS6で小さい順に並べ替えられるため、並び順が1番目からm番目(mは1≦m≦nを満たす整数)の差分二乗和のみを規格化した判定基準値と比較することにしてもよい。すなわち、並び順が所定番目(m番目)までの故障モードを同定の対象としてもよい。この場合、最大でm個の故障モードが同定されることとなる。
【0035】
なお、故障モード同定部13は、発電機2aにレイヤショートが生じていることや、発電機2aにレイヤショートが生じている可能性を判定する代わりに、発電機2aにレイヤショートが生じる予兆が見られることを判定してもよい。これにより、発電機2aのレイヤショートが生じる前にその予兆を検出することが可能となる。このように、故障モード同定部13は、故障が発生している故障モードを同定してもよいし、故障の予兆が見られる故障モードを同定してもよい。後者の同定処理は例えば、前者の同定処理に比べて上記の規格化した判定基準値を大きく設定することで実現可能である。
【0036】
なお、故障モードの用語は、故障が発生している場合のみを含む用語として用いられることがあるが(例えば、FMEA:Failure Mode and Effect Analysis)、本明細書では、故障が発生している場合と、故障の予兆が見られる場合とを含み得る用語として用いている。本実施形態の故障モード同定部13は、発生している故障に関する故障モードのみを同定するよう構成されていてもよいし、発生している故障に関する故障モードを同定すると共に、予兆が見られる故障に関する故障モードを同定するよう構成されていてもよい。
【0037】
その後、出力部14は、故障モード同定部13から受け取った故障モードの同定結果を出力する。例えば、発電機2aにレイヤショート、ロータコイル通風阻害、およびロータファン損傷が生じている可能性があることがモニタに表示される。この場合、これら3つの故障モードは、プロセスS6で得られた並び順、すなわち、差分二乗和が小さい順に表示してもよい。
【0038】
図4は、第1実施形態の仮想測定データについて説明するためのグラフである。
【0039】
図4の横軸は、仮想測定データx
iや測定データx
0の第1成分(x(1))を示し、
図4の縦軸は、仮想測定データx
iや測定データx
0の第2成分(x(2))を示している。
図4は、仮想測定データx
iや測定データx
0の第1〜第K成分のうち、第1および第2成分のみを示したものである。より正確には、仮想測定データx
iや測定データx
0は、K次元空間内の点として表現される。
【0040】
図4の円c
1〜c
6は、プロセスS7にて用いられる規格化した判定基準値に相当する判定基準円を図面化したものである。例えば、測定データx
0が仮想測定データx
1の判定基準円c
1の中に位置する場合には、仮想測定データx
1と測定データx
0との間の差分二乗和e
1は判定基準円の半径よりも小さい。よって、プロセスS7にて故障モード1が同定される。
【0041】
図4の判定基準円c
2と判定基準円c
5は重複部分が存在しているため、測定データx
0は判定基準円c
2と判定基準円c
5の両方の中に同時に位置することが可能である。この場合、プロセスS7にて故障モード2、5の両方が同定される。なお、
図4に示す判定基準円(K=2の場合を一例として明示)は、K次元空間においてはK次元球として表現される。
【0042】
なお、本実施形態では、仮想測定データx
1用の判定基準円c
1として、小さい円である第1の円と、大きい円である第2の円を用意してもよい。この場合、第1の円は、発電機2aに故障が生じていることを判定するために使用し、第2の円は、発電機2aに故障の予兆があることを判定するために使用してもよい。また、仮想測定データx
1用の判定基準円c
1として、半径の異なる2種類以上の円を用意して、2種類以上の判定を行ってもよい。これは、判定基準円c
2〜c
6についても同様である。
【0043】
図5は、第1実施形態の仮想測定データについて説明するための別のグラフである。
【0044】
図5に示すように、仮想測定データx
iと測定データx
0の差分2乗和e
iに着目し、差分が小さいほど故障が発生している可能性が高くなることを利用して、差分2乗和e
iの大きさに応じて故障確率を推定することも可能である。
図5は、x
1に対応する故障モード1の故障確率が、x
2およびx
3に対応する故障モード2および3よりも大きいことを示している。なお、差分2乗和e
iの大きさそのもので評価を行うことも可能である。
【0045】
図6は、故障診断方法について説明するためのグラフである。
【0046】
信号1、2は、診断の対象機器である発電機2aから得られた信号を示しており、上記の測定データx
0の第1および第2成分にそれぞれ対応している。符号A1、A2はそれぞれ、信号1、2のしきい値を表す。曲線Aは、信号1のレベルがしきい値A1を超え、発電機2aが稼働不能な状態に至る様子を示している。一般的な故障診断方法では、信号1、2のいずれかがしきい値A1、A2に達すると、発電機2aが故障した、または発電機2aに故障の予兆が見られると判定される。これにより、曲線Aのような事態を回避している。
【0047】
この様子は、
図4にも図示されている。
図4の符号Rの領域は、測定データx
0の第1成分(信号1)の大きさが閾値A1未満で、測定データx
0の第2成分(信号2)の大きさが閾値A2未満の領域を示している。測定データx
0が領域Rから外に出た場合に故障またはその予兆の発生が検出される。
【0048】
一方、本実施形態の故障診断装置1は、発電機2aに生じ得る1つ以上の故障モードをあらかじめ想定しておき、これらの故障モードが生じた場合に得られる仮想測定データを発電機モデルを用いて導出する。よって、本実施形態の故障診断装置1は、発電機モデルからの仮想測定データと、発電機2aからの測定データとを比較することで、発電機2aの故障モードを同定することができる。具体的には、
図4に示すような領域Rではなく、
図4に示すような判定基準円c
1〜c
6により故障診断を行うことができる。
【0049】
本実施形態の故障診断装置1は、故障モードを同定し、かつ故障またはその予兆の発生を検出することができる。すなわち、しきい値を用いた判定では正常とみなされる領域R内であっても、信号1と信号2とを組み合わせた統合状態量によって、事象発生前に具体的な故障箇所とその原因を特定することができる。
【0050】
このように、本実施形態では、測定データを分析して故障モードを同定する代わりに、想定故障モードから発電機モデルにより仮想測定データを導出し、仮想測定データと測定データとの比較により故障モードを同定している。
【0051】
本実施形態の故障診断によれば、種々の利点を享受することが可能となる。
【0052】
例えば、過去の発電機2aの故障事例を分析し、この分析結果を想定故障モードや発電機モデルに反映させることで、発電機2aの故障診断を精度良く行うことが可能となる。理由は、故障事例の分析により故障時や故障前に発電機2aからどのような測定データが得られるかを詳細に分析することができ、その詳細な分析結果が想定故障モードや発電機モデルに反映されるからである。
【0053】
また、過去の故障事例の件数や分析結果がより豊富になれば、例えば上記の正規化方法や規格化した判定基準値を改善することで、故障診断の精度をさらに向上させることや、故障や故障予兆を早期に検知することも可能となる。正規化方法や規格化した判定基準値については、故障診断装置1のユーザが操作部1cにより変更できるようにしてもよい。
【0054】
なお、発電プラント2内の機器の故障は、ロータを有する機器や、その作動流体を生成する機器で生じやすい。理由は、ロータの回転に起因する摩擦や振動や、作動流体を生成する際の熱や圧力が、機器に影響するからである。よって、故障診断装置1は、これらを診断の対象機器とすることが望ましい。
【0055】
以上のように、本実施形態によれば、対象機器の故障診断を精度良く行うことが可能となる。
【0056】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置、方法、およびプログラムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置、方法、およびプログラムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。