(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022100539
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】電極の製造方法、非水電解質二次電池の製造方法、および非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20220629BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20220629BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220629BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220629BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20220629BHJP
H01M 10/05 20100101ALI20220629BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M10/058
H01M4/36 C
H01M4/13
H01M10/0567
H01M10/05
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020214569
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神山 彰
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ02
5H029AJ04
5H029AJ06
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AL18
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ12
5H029CJ22
5H029HJ01
5H050AA02
5H050AA10
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB29
5H050DA04
5H050EA11
5H050FA02
5H050FA18
5H050GA22
5H050HA01
(57)【要約】
【課題】電極の厚さ方向において皮膜の組成を変化させること。
【解決手段】電極基材が準備される。電極基材の表面に活物質層が配置されることにより、電極が製造される。活物質層は第1層と第2層とを含む。第1層は、電極基材と第2層との間に配置されている。第1層は第1活物質と第1溶解性成分とを含む。第2層は第2活物質と第2溶解性成分とを含む。第2溶解性成分は第1溶解性成分と異なる。第1溶解性成分および第2溶解性成分の各々は、電解液に対する溶解性を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液を含む非水電解質二次電池に使用される、電極の製造方法であって、
電極基材を準備すること、
および、
前記電極基材の表面に活物質層を配置することにより、電極を製造すること、
を含み、
前記活物質層は、第1層と第2層とを含み、
前記第1層は、前記電極基材と前記第2層との間に配置されており、
前記第1層は、第1活物質と第1溶解性成分とを含み、
前記第2層は、第2活物質と第2溶解性成分とを含み、
前記第2溶解性成分は、前記第1溶解性成分と異なり、
前記第1溶解性成分および前記第2溶解性成分の各々は、前記電解液に対する溶解性を有する、
電極の製造方法。
【請求項2】
前記第1活物質および前記第2活物質の各々は、負極活物質を含み、
前記第1溶解性成分および前記第2溶解性成分は、それぞれ独立に、ボレート系化合物、スルホン酸系化合物、リン酸系化合物、およびカーボネート系化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記第1活物質および前記第2活物質の各々は、正極活物質を含み、
前記第1溶解性成分および前記第2溶解性成分は、それぞれ独立に、ボレート系化合物、ニトリル系化合物、リン酸系化合物、およびホウ酸エステル系化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、
請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
前記第1層は、第1スラリーの塗布により形成され、
前記第2層は、第2スラリーの塗布により形成され、
前記第1スラリーにおける前記第1溶解性成分の質量分率は、0.02%から5%であり、
前記第2スラリーにおける前記第2溶解性成分の質量分率は、0.02%から5%である、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電極の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電極の製造方法により、電極を製造すること、
前記電極を含む電極体を形成すること、
および、
前記電極体と前記電解液とを含む前記非水電解質二次電池を製造すること、
を含み、
前記電解液は、溶媒と支持電解質と前記第1溶解性成分と前記第2溶解性成分とを含む、
非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記電解液における前記第1溶解性成分の質量分率は、0.02%から5%であり、
前記電解液における前記第2溶解性成分の質量分率は、0.02%から5%である、
請求項5に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項7】
電極と電解液とを含み、
前記電解液は、溶媒と支持電解質と第1溶解性成分と第2溶解性成分とを含み、
前記第2溶解性成分は、前記第1溶解性成分と異なり、
前記第1溶解性成分および前記第2溶解性成分の各々は、前記溶媒に溶解しており、
前記電極は、電極基材と活物質層とを含み、
前記活物質層は、前記電極基材の表面に配置されており、
前記活物質層は、第1層と第2層とを含み、
前記第1層は、前記電極基材と前記第2層との間に配置されており、
前記第1層は、第1活物質と第1皮膜とを含み、
前記第2層は、第2活物質と第2皮膜とを含み、
前記第1皮膜は、前記第1活物質の表面に付着しており、
前記第1皮膜は、前記電解液に由来する成分を含み、
前記第1皮膜において、前記第1溶解性成分に由来する成分は、前記第2溶解性成分に由来する成分に比して多く、
前記第2皮膜は、前記第2活物質の表面に付着しており、
前記第2皮膜は、前記電解液に由来する成分を含み、
前記第2皮膜において、前記第2溶解性成分に由来する成分は、前記第1溶解性成分に由来する成分に比して多い、
非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電極の製造方法、非水電解質二次電池の製造方法、および非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2010-116475号公報(特許文献1)は、特定の重合体を含む電極添加剤を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非水電解質二次電池(以下「電池」と略記され得る。)において、活物質と電解液(電解質)との界面における反応を制御することが求められている。従来、各種の添加剤が電解液に添加されている。添加剤は電解液に溶解する。添加剤は、例えば活物質の表面で分解する。添加剤の分解生成物は、活物質の表面に皮膜を形成し得る。ある種の皮膜は、高温保存時に活物質の表面における電解液の分解反応を阻害し得る。これにより、例えば高温保存特性の改善が期待される。また、ある種の皮膜は、キャリアイオンの脱溶媒和を促進し得る。これにより、例えば入出力特性の改善が期待される。
【0005】
電極は多孔質である。電解液は電極に浸透している。電極は所定の厚さを有する。電池の使用態様によって、電極の厚さ方向において、活物質と電解液との反応にばらつきが生じることもある。例えば、電極の上層において、活物質と電解液との反応が相対的に活発になる使用態様がある。例えば、電極の下層において、活物質と電解液との反応が相対的に活発になる使用態様もある。例えば、電池の使用態様に応じて、電極の上層と下層とで別種の皮膜を形成することが考えられる。しかしながら、例えば、電解液中に複数種の添加剤が溶解していても、電極の上層と下層とで別種の皮膜を形成することは困難であると考えられる。電解液中において添加剤(溶解成分)の濃度が略均一であるためである。
【0006】
本技術の目的は、電極の厚さ方向において皮膜の組成を変化させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本技術の構成および作用効果が説明される。ただし本技術の作用メカニズムは、推定を含んでいる。作用メカニズムの正否は、本技術の範囲を限定しない。
【0008】
〔1〕電極は、電解液を含む非水電解質二次電池に使用される。電極の製造方法は、下記(a1)および(a2)を含む。
(a1)電極基材を準備する。
(a2)電極基材の表面に活物質層を配置することにより、電極を製造する。
活物質層は第1層と第2層とを含む。第1層は、電極基材と第2層との間に配置されている。第1層は第1活物質と第1溶解性成分とを含む。第2層は第2活物質と第2溶解性成分とを含む。第2溶解性成分は第1溶解性成分と異なる。第1溶解性成分および第2溶解性成分の各々は、電解液に対する溶解性を有する。
【0009】
本技術の電極(活物質層)は多層構造を有する。すなわち活物質層は第1層と第2層とを含む。第1層および第2層は、それぞれ異なる溶解性成分を含む。溶解性成分は、例えば従来電解液に添加されている添加剤であり得る。電池内において、電解液が活物質層に浸透することにより、各層において溶解性成分が電解液に溶解する。電解液に溶解した溶解性成分は、その近傍で皮膜になることが期待される。したがって本技術によれば、電極(活物質層)の厚さ方向において、皮膜の組成が変化し得ると考えられる。
【0010】
〔2〕上記〔1〕において、第1活物質および第2活物質の各々は、例えば負極活物質を含んでいてもよい。第1溶解性成分および第2溶解性成分は、それぞれ独立に、例えば、ボレート系化合物、スルホン酸系化合物、リン酸系化合物、およびカーボネート系化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0011】
本技術の製造方法においては、例えば負極が製造されてもよい。負極活物質の表面を改質する溶解性成分としては、例えば、ボレート系化合物、スルホン酸系化合物、リン酸系化合物、およびカーボネート系化合物等が考えられる。
【0012】
〔3〕上記〔1〕において、第1活物質および第2活物質の各々は、正極活物質を含んでいてもよい。第1溶解性成分および第2溶解性成分は、それぞれ独立に、ボレート系化合物、ニトリル系化合物、リン酸系化合物、およびホウ酸エステル系化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0013】
本技術の製造方法においては、例えば正極が製造されてもよい。正極活物質の表面を改質する溶解性成分としては、例えばボレート系化合物、ニトリル系化合物、リン酸系化合物、およびホウ酸エステル系化合物等が考えられる。
【0014】
〔4〕上記〔1〕から〔3〕において、第1層は、例えば第1スラリーの塗布により形成されてもよい。第2層は、例えば第2スラリーの塗布により形成されてもよい。第1スラリーにおける第1溶解性成分の質量分率は、例えば0.02%から5%であってもよい。第2スラリーにおける第2溶解性成分の質量分率は、例えば0.02%から5%であってもよい。
【0015】
活物質層は、例えばスラリーの塗布により形成されてもよい。スラリーに対する溶解性成分の配合量としては、例えば、質量分率で0.02%から5%の範囲が想定される。
【0016】
〔5〕非水電解質二次電池の製造方法は、下記(A)から(C)を含む。
(A)上記〔1〕から〔4〕のいずれか1つに記載の電極の製造方法により、電極を製造する。
(B)電極を含む電極体を形成する。
(C)電極体と電解液とを含む非水電解質二次電池を製造する。
電解液は、溶媒と支持電解質と第1溶解性成分と第2溶解性成分とを含む。
【0017】
電極の厚さ方向において、第1溶解性成分および第2溶解性成分の分布に濃淡が形成され、なおかつ電解液に第1溶解性成分および第2溶解性成分が添加されてもよい。これにより、いっそうの性能改善が期待される。
【0018】
〔6〕上記〔5〕の非水電解質二次電池の製造方法において、電解液における第1溶解性成分の質量分率は、例えば0.02%から5%であってもよい。電解液における第2溶解性成分の質量分率は、例えば0.02%から5%であってもよい。
【0019】
〔7〕非水電解質二次電池は電極と電解液とを含む。電解液は、溶媒と支持電解質と第1溶解性成分と第2溶解性成分とを含む。第2溶解性成分は第1溶解性成分と異なる。第1溶解性成分および第2溶解性成分の各々は、溶媒に溶解している。
電極は電極基材と活物質層とを含む。活物質層は電極基材の表面に配置されている。活物質層は第1層と第2層とを含む。第1層は、電極基材と第2層との間に配置されている。第1層は第1活物質と第1皮膜とを含む。第2層は第2活物質と第2皮膜とを含む。
第1皮膜は第1活物質の表面に付着している。第1皮膜は、電解液に由来する成分を含む。第1皮膜において、第1溶解性成分に由来する成分は、第2溶解性成分に由来する成分に比して多い。
第2皮膜は第2活物質の表面に付着している。第2皮膜は、電解液に由来する成分を含む。第2皮膜において、第2溶解性成分に由来する成分は、第1溶解性成分に由来する成分に比して多い。
【0020】
通常、電解液に複数種の添加剤が溶解していても、電極の厚さ方向において皮膜の組成を変化させることは困難であると考えられる。本技術の電池においては、電解液に複数種の添加剤が溶解しており、なおかつ電極の厚さ方向において、皮膜の組成が変化している。本技術の電池は、例えば上記〔5〕の製造方法により製造され得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本実施形態における非水電解質二次電池の製造方法の概略フローチャートである。
【
図2】
図2は、本実施形態における電極を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態における電極体の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本実施形態における非水電解質二次電池の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本技術の実施形態(以下「本実施形態」とも記される。)が説明される。ただし以下の説明は、本技術の範囲を限定しない。
【0023】
本明細書において、「含む、備える(comprise,include)」、「有する(have)」およびこれらの変形〔例えば「から構成される(be composed of)」、「包含する(emcopass,involve)」、「含有する(contain)」、「担持する(carry,support)」、「保持する(hold)」等〕の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含むが、当該構成のみを含むことに限定されない。「からなる(consist of)」との記載はクローズド形式である。「実質的に・・・からなる(consist essentially of)」との記載はセミクローズド形式である。すなわち「実質的に・・・からなる」との記載は、本技術の目的を阻害しない範囲で、必須成分に加えて、追加の成分が含まれ得ることを示す。例えば、本技術の属する分野において通常想定される成分(例えば不可避不純物等)が、追加の成分として含まれていてもよい。
【0024】
本明細書において、方法に含まれる2個以上のステップ、動作および操作等は、特に断りのない限り、その記載された順序に限定されない。
【0025】
本明細書において、単数形(「a」、「an」および「the」)は、特に断りの無い限り、複数形も含む。例えば「粒子」は「1つの粒子」のみならず、「粒子の集合体(粉体、粉末、粒子群)」も含み得る。
【0026】
本明細書において、例えば「0.02%から5%」または「0.02%~5%」等の数値範囲は、特に断りのない限り、上限値および下限値を含む。例えば「0.02%から5%」は、「0.02%以上5%以下」の数値範囲を示す。また、数値範囲内から任意に選択された数値が、新たな上限値および下限値とされてもよい。例えば、数値範囲内の数値と、本明細書中の別の部分に記載された数値とが任意に組み合わされることにより、新たな数値範囲が設定されてもよい。
【0027】
本明細書における幾何学的な用語(例えば「垂直」等)は、厳密な意味に解されるべきではない。例えば「垂直」は、厳密な意味での「垂直」から多少ずれていてもよい。本明細書における幾何学的な用語は、例えば、設計上、作業上、製造上等の公差、誤差等を含み得る。各図中の寸法関係は、実際の寸法関係と一致しない場合がある。本技術の理解を助けるために、各図中の寸法関係(長さ、幅、厚さ等)が変更されている場合がある。さらに一部の構成が省略されている場合もある。
【0028】
本明細書において、例えば「LiCoO2」等の化学量論的組成式によって化合物が表現されている場合、該化学量論的組成式は代表例に過ぎない。組成比は非化学量論的であってもよい。例えば、コバルト酸リチウムが「LiCoO2」と表現されている時、特に断りのない限り、コバルト酸リチウムは「Li/Co/O=1/1/2」の組成比に限定されず、任意の組成比でLi、CoおよびOを含み得る。
【0029】
本明細書においては、非水電解質二次電池の一例としてリチウムイオン電池が説明される。ただし非水電解質二次電池は、非水系電解液を含む限り、任意の電池であり得る。
【0030】
<非水電解質二次電池の製造方法>
図1は、本実施形態における非水電解質二次電池の製造方法の概略フローチャートである。本実施形態において、電池の製造方法は「(A)電極の製造」、「(B)電極体の形成」および「(C)電解液の注入」を含む。
【0031】
<(A)電極の製造>
本実施形態において、電極の製造方法は「(a1)電極基材の準備」および「(a2)活物質層の配置」を含む。本実施形態においては、負極が製造されてもよいし、正極が製造されてもよいし、負極および正極の両方が製造されてもよい。すなわち本実施形態においては、負極および正極の少なくとも一方が製造され得る。
【0032】
《(a1)電極基材の準備》
図2は、本実施形態における電極を示す概略断面図である。
本実施形態において、電極の製造方法は電極基材11を準備することを含む。電極基材11は、例えば導電性シートであってもよい。電極基材11は、例えば5μmから50μmの厚さを有していてもよい。電極基材11は、例えば金属箔を含んでいてもよい。電極10が負極である場合、電極基材11は、例えば銅(Cu)箔、Cu合金箔等を含んでいてもよい。電極10が正極である場合、電極基材11は、例えばアルミニウム(Al)箔、Al合金箔等を含んでいてもよい。金属箔は、例えば炭素材料等により被覆されていてもよい。
【0033】
《(a2)活物質層の配置》
本実施形態において、電極の製造方法は、電極基材11の表面に活物質層12を配置することにより、電極10を製造することを含む。活物質層12は、電極基材11の片面のみに配置されてもよいし、表裏両面に配置されてもよい。活物質層12の配置後、活物質層12が圧縮されてもよい。例えば、圧延機等により、活物質層12が圧縮されてもよい。圧縮後の活物質層12は、例えば10μmから200μmの厚さを有していてもよい。
【0034】
活物質層12は第1層1と第2層2とを含む。第1層1は、電極基材11と第2層2との間に配置される。第1層1の厚さと第2層2の厚さとの比は任意である。例えば「第1層の厚さ/第2層の厚さ=1/9~9/1」の関係が満たされていてもよい。例えば「第1層の厚さ/第2層の厚さ=3/7~7/3」の関係が満たされていてもよい。
【0035】
本明細書において「上層、下層」との記載は、第1層1と第2層2との間における相対的な位置関係を示している。活物質層12は、第1層1および第2層2を含む限り、追加の層をさらに含んでいてもよい。例えば、第1層1と第2層2との間に、追加の層が形成されていてもよい。例えば、第1層1と電極基材11との間に、追加の層が形成されていてもよい。例えば、活物質層12の表面と、第2層との間に、追加の層が形成されていてもよい。追加の層は、第1層1および第2層2と異なる組成を有する。
【0036】
各層の形成方法は任意である。例えばスラリーの塗布により、各層が形成されてもよい。例えば、スロットダイコータ、ロールコータ等により、スラリーが塗布されてもよい。各層は、例えば湿潤顆粒がシート状に成形されることにより形成されてもよい。各層は順次形成されてもよいし、実質的に同時に形成されてもよい。
【0037】
第1層1は第1活物質と第1溶解性成分とを含む。例えば、第1活物質と第1溶解性成分と第1バインダと第1分散媒とが混合されることにより、第1スラリーが調製されてもよい。第1スラリーが電極基材11の表面に塗布され、乾燥されることにより、第1層1が形成されてもよい。
【0038】
第2層2は第2活物質と第2溶解性成分とを含む。例えば、第2活物質と第2溶解性成分と第2バインダと第2分散媒とが混合されることにより、第2スラリーが調製されてもよい。第2スラリーが第1層1の表面に塗布され、乾燥されることにより、第2層2が形成されてもよい。
【0039】
分散媒は、分散質の種類に応じて選択され得る。第2分散媒は第1分散媒と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1分散媒および第2分散媒は、それぞれ独立に、例えば、水、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等を含んでいてもよい。第2バインダは、第1バインダと同じであってもよいし、異なっていてもよい。バインダについては後述される。
【0040】
以下、第1活物質および第2活物質が「活物質」と総称される場合がある。第1溶解性成分および第2溶解性成分が「溶解性成分」と総称される場合がある。
【0041】
(活物質)
本実施形態の活物質は、例えば粒子群であってもよい。活物質は、例えば1μmから30μmのD50を有していてもよい。本明細書における「D50」は、体積基準の粒度分布において、小粒径側からの累積体積が全体の50%になる粒径を示す。体積基準の粒度分布は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定され得る。
【0042】
第2活物質は第1活物質と同じであってもよいし、異なっていてもよい。電極10が負極である場合、第1活物質および第2活物質の各々は負極活物質を含む。負極活物質は任意の成分を含み得る。負極活物質は、例えば、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、珪素(Si)、酸化珪素(SiO)、珪素基合金、錫(Sn)、酸化錫(Sn)、錫基合金、リチウム(Li)金属、Li基合金、およびLi4Ti5O12からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。本明細書において、例えば「珪素基合金」は、Siをモル分率で50%以上含む合金を示す。
【0043】
電極10が正極である場合、第1活物質および第2活物質の各々は正極活物質を含む。正極活物質は任意の成分を含み得る。正極活物質は、例えばLiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、Li(NiCoMn)O2、Li(NiCoAl)O2、およびLiFePO4からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。ここで、例えば「Li(NiCoMn)O2」等の組成式における「(NiCoMn)」等の記載は、括弧内の組成比の合計が1であることを示している。組成比の合計が1である限り、各元素(Ni、Co、Mn)の組成比は任意である。
【0044】
(溶解性成分)
本実施形態において溶解性成分は、電解液に対する溶解性を有する。本明細書において、溶解性の有無は次の手順で確認される。電解液が準備される。電解液に代えて、例えば有機溶媒が準備されてもよい。有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶媒である。混合比は「EC/EMC=3/7(体積比)」である。電解液(または有機溶媒)中における対象成分の質量分率が5%となるように、電解液に対象成分が投入される。対象成分の投入後、電解液が良く攪拌される。攪拌後の電解液が25℃において24時間静置される。24時間静置後、電解液が目視で観察される。目視観察において、電解液中に白濁または固形物が実質的にみられない場合、対象成分は、電解液に対する溶解性を有するとみなされる。なお、活物質、導電材およびバインダ等は、通常、電解液に対する溶解性を有しない。溶解性成分は、スラリーの分散媒に対して、溶解性を有していてもよいし、溶解性を有していなくてもよい。
【0045】
第1溶解性成分および第2溶解性成分の各々は、実質的に単一の成分からなっていてもよい。第1溶解性成分および第2溶解性成分の各々は、2種以上の成分を含んでいてもよい。第2溶解性成分は、第1溶解性成分と異なる。
【0046】
スラリーにおける溶解性成分の質量分率は、例えば0.02%から5%であってもよい。すなわち、第1スラリーにおける第1溶解性成分の質量分率は、例えば0.02%から5%であってもよい。第2スラリーにおける第2溶解性成分の質量分率は、例えば0.02%から5%であってもよい。各スラリーにおける溶解性成分の質量分率は、例えば、0.025%以上であってもよいし、0.05%以上であってもよいし、0.1%以下であってもよい。例えば、第1溶解性成分が2種以上の成分を含む場合、第1スラリーにおける第1溶解性成分の質量分率は、各成分の質量分率の合計を示す。第2溶解性成分についても同様である。
【0047】
例えば活物質が正極活物質である時、スラリーにおける溶解性成分の質量分率は、例えば0.02%から3%であってもよい。
【0048】
溶解性成分は、活物質の表面に皮膜を形成し得る。例えば活物質の表面において溶解性成分が分解し、溶解性成分の分解生成物が皮膜を形成してもよい。溶解性成分は、活物質の表面において酸化分解してもよいし、還元分解してもよい。例えば活物質の表面に、溶解性成分が吸着することにより、皮膜が形成されてもよい。溶解性成分の吸着は、化学吸着であってもよいし、物理吸着であってもよい。溶解性成分は、例えば活物質の種類に応じて選択され得る。
【0049】
(負極用溶解性成分)
例えば、第1活物質および第2活物質の各々が負極活物質を含む場合、第1溶解性成分および第2溶解性成分は、それぞれ独立に、ボレート系化合物、スルホン酸系化合物、リン酸系化合物、およびカーボネート系化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0050】
(ボレート系化合物)
ボレート系化合物に由来する皮膜は、例えば、高温保存時に活物質の表面における電解液の分解反応を阻害し得る。例えばボレート系化合物が第1層1(下層)に偏在していることにより、高温保存時の容量維持率が改善しやすい傾向がある。ボレート系化合物は、例えば、下記式(I)により表されてもよい。
【0051】
【0052】
上記式(I)中、R11は、-C(=O)-C(=O)-、-C(=O)-R21-C(=O)-、またはハロゲン原子を示す。R21は、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基またはハロゲン化アリーレン基を示す。
R12は、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基またはハロゲン化アリーレン基を示す。
Y11およびY12は、それぞれ独立に、-O-(酸素原子)または-S-(硫黄原子)を示す。Xはアルカリ金属原子(Li、Na等)を示す。aは1から4の整数である。bは0から8の整数である。cおよびdは1から3の整数である。
【0053】
ボレート系化合物は、例えば、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート〔Lithium difluoro (oxalato)borate,LiDFOB〕、およびリチウムビス(オキサラト)ボレート〔Lithium bis(oxalato)borate,LiBOB〕からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0054】
(スルホン酸系化合物)
スルホン酸系化合物に由来する皮膜は、例えばLiイオンの脱溶媒和を促進し得る。これにより、例えば、入出力特性の改善が期待される。例えばスルホン酸系化合物が第2層2(上層)に偏在していることにより、入出力特性が改善しやすい傾向がある。スルホン酸系化合物は、例えば、下記式(II)から(V)のいずれかにより表されてもよい。
【0055】
【0056】
上記式(II)中、Y11およびY12は、それぞれ独立に、-O(酸素原子)、-F(フッ素原子)、または-O-R21を示す。R21は、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、またはアリル基を示す。R21は環を形成していてもよい。Xはアルカリ金属原子を示す。aおよびbは、1から3の整数である。
【0057】
【0058】
上記式(III)中、R11およびR12は、それぞれ独立に、-Si-(R21)3を示す。R21は、アルキレン基、アルキル基またはアリル基を示す。R21は環を形成していてもよい。
【0059】
【0060】
上記式(IV)中、X11およびX12は、それぞれ独立に、-O-、-S-、または-CH2-を示す。R11は、-H(水素原子)、-F、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、またはアリル基を示す。R11は、環を形成していてもよい。
【0061】
【0062】
上記式(V)中、X11およびX12は、それぞれ独立に、-O-、-S-、または-CH2-を示す。R11は、-H、-F、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリル基を表す。R11は、環を形成していてもよい。
【0063】
スルホン酸系化合物は、例えば、硫酸ビス(トリメチルシリル)〔Bis(trimethylsilyl)sulfate,BTMS〕、硫酸エチレン(1,3,2-dioxathiolane 2,2-dioxide,DTD)、およびフルオロスルホン酸リチウム(FSO3Li)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0064】
(リン酸系化合物)
リン酸系化合物に由来する皮膜は、例えば、高温保存時に活物質の表面における電解液の分解反応を阻害し得る。例えばリン酸系化合物が第1層1(下層)に偏在していることにより、高温保存時の容量維持率が改善しやすい傾向がある。リン酸系化合物は、例えば、下記式(VI)から(VIII)のいずれかにより表されてもよい。
【0065】
【0066】
上記式(VI)中、R11およびR12は、それぞれ独立に、-C(=O)-C(=O)-、-C(=O)-R21-C(=O)-、またはハロゲン原子を示す。R21は、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基、またはハロゲン化アリーレン基を表す。
R13は、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基またはハロゲン化アリーレン基を示す。
Y11およびY12は、それぞれ独立に、-O-、または-S-を示す。Xは、アルカリ金属原子を示す。aは1から4の整数である。bは1から2の整数である。cは0から8の整数である。dおよびeは1から3の整数である。
【0067】
【0068】
上記式(VII)中、Y11およびY12は、-O、-F、または-O-R21を示す。R21は、アルキレン基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、またはアリル基を示す。R21は環を形成していてもよい。Xはアルカリ金属原子を示す。aおよびbは1から3の整数である。
【0069】
【0070】
上記式(VIII)中、R11およびR12は、それぞれ独立に、-Si-(R21)3を示す。R21は、アルキレン基、アルキル基またはアリル基を示す。R21は環を形成していてもよい。
【0071】
リン酸系化合物は、例えば、リチウムジフルオロビス(オキサラト)ホスフェート〔Lithium difluoro bis(oxalato)phosphate,LPFO〕、およびジフルオロリン酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0072】
(カーボネート系化合物)
カーボネート系化合物に由来する皮膜は、例えば、高温保存時に活物質の表面における電解液の分解反応を阻害し得る。例えばカーボネート系化合物が第1層1(下層)に偏在していることにより、高温保存時の容量維持率が改善しやすい傾向がある。カーボネート系化合物は、例えば、下記式(IX)または(X)により表されてもよい。
【0073】
【0074】
上記式(IX)中、R11は、-H、-F、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリル基を示す。R11は環を形成していてもよい。
【0075】
【0076】
上記式(X)中、R11は、-H、-F、アルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリル基を示す。R11は環を形成していてもよい。
【0077】
カーボネート系化合物は、例えばビニレンカーボネート(VC)、モノフルオロエチレンカーボネート(FEC)およびビニルエチレンカーボネート(VEC)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0078】
例えば、第1活物質および第2活物質の各々が負極活物質を含む場合、第1溶解性成分および第2溶解性成分は、それぞれ独立に、例えばLiBOB、BTMS、LPFO、およびVCからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0079】
例えば、第1活物質および第2活物質の各々が負極活物質を含む場合、第1溶解性成分がLiBOB、LPFO、およびVCからなる群より選択される少なくとも1種を含み、かつ第2溶解性成分がBTMSを含んでいてもよい。
【0080】
(正極用溶解性成分)
例えば、第1活物質および第2活物質の各々が正極活物質を含む場合、第1溶解性成分および第2溶解性成分は、それぞれ独立に、ボレート系化合物、ニトリル系化合物、リン酸系化合物、およびホウ酸エステル系化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。ボレート系化合物およびリン酸系化合物の詳細は前述のとおりである。
【0081】
(ニトリル化合物)
ニトリル系化合物に由来する皮膜は、例えば、正極活物質における金属元素の溶出反応を阻害することが期待される。ニトリル化合物は、例えば、アジポニトリル(AdpCN)、スクシノニトリル(ScCN)およびベンゾニトリルからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0082】
(ホウ酸エステル系化合物)
ホウ酸エステル系化合物に由来する皮膜は、例えば、高温保存時の正極活物質の劣化を軽減することが期待される。ホウ酸エステル系化合物は、例えば、ホウ酸トリメチル等を含んでいてもよい。
【0083】
(活物質と溶解性成分との組み合わせ)
溶解性成分は、活物質の種類に応じて選択されてもよい。例えば、黒鉛とLiBOBとが組み合わされてもよい。例えば、黒鉛とVCとが組み合わされてもよい。例えば、SiOとFECとが組み合わされてもよい。例えば、SiとFECとが組み合わされてもよい。各組み合わせは、第1層1(下層)および第2層2(上層)のいずれに適用されてもよい。
【0084】
溶解性成分は、活物質の粉体物性に応じて選択されてもよい。例えば、相対的に高いBET比表面積を有する第1黒鉛と、相対的に低いBET比表面積を有する第2黒鉛とが使用されてもよい。第1黒鉛は、例えば1m2/gから3m2/gのBET比表面積を有していてもよい。第2黒鉛は、例えば3m2/gから10m2/gのBET比表面積を有していてもよい。本明細書における「BET比表面積」は、ガス吸着法により測定される吸着等温線において、BET多点法により算出される比表面積を示す。吸着質ガスは窒素ガスである。例えば、第1黒鉛とLiBOBとが組み合わされてもよい。例えば、第1黒鉛とVCとが組み合わされてもよい。例えば、第2黒鉛とFSO3Liとが組み合わされてもよい。各組み合わせは、第1層1および第2層2のいずれに適用されてもよい。
【0085】
(その他の成分)
第1層1および第2層2の各々は、活物質および溶解性成分に加えて、例えば導電材およびバインダ等をさらに含んでいてもよい。導電材は任意の成分を含み得る。導電材は、例えばアセチレンブラック、カーボンナノチューブおよびグラフェンフレークからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。導電材の配合量は、100質量部の活物質に対して、例えば0.1質量部から10質量部であってもよい。
【0086】
バインダは任意の成分を含み得る。バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(ビニリデンフルオリド-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVdF-HFP)、ポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVAL)、ポリエチレンオキシド(PEO)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリイミド(PI)、およびポリアミドイミド(PAI)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。バインダの配合量は、100質量部の活物質に対して、例えば0.1質量部から10質量部であってもよい。
【0087】
<(B)電極体の形成>
図3は、本実施形態における電極体の一例を示す概略図である。
本実施形態において、電池の製造方法は、電極10を含む電極体50を形成することを含む。上記で製造された電極10は、所定の平面形状に切断される。電極10は、例えば帯状に切断されてもよい。対極20が準備される。対極20は、電極10と異なる極性を有する。電極10が負極である場合、対極20は正極である。電極10が正極である時、対極20は負極である。対極20も本実施形態の電極の製造方法により製造されてもよい。
【0088】
セパレータ30が準備される。セパレータ30が電極10と対極20との間に介在するように、電極10とセパレータ30と対極20とが積層されることにより、積層体が形成される。積層体が渦巻状に巻回されることにより、電極体50が形成される。電極体50は扁平状に成形されてもよい。
図3の電極体50は巻回型である。ただし電極体50は積層型であってもよい。すなわちセパレータ30を挟んで電極10と対極20とが交互に積層されることにより、電極体50が形成されてもよい。
【0089】
(セパレータ)
セパレータ30は多孔質シートである。セパレータ30は電解液を透過する。セパレータ30は、例えば200s/100mLから400s/100mLの透気度を有していてもよい。本明細書における「透気度」は、「JIS P8117:2009」に規定される「透気抵抗度(air resistance)」を示す。透気度はガーレー試験法により測定される。
【0090】
セパレータ30は電気絶縁性である。セパレータ30は、例えばポリオレフィン系樹脂を含んでいてもよい。セパレータ30は、例えば、実質的にポリオレフィン系樹脂からなっていてもよい。ポリオレフィン系樹脂は、例えばポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。セパレータ30は、例えば単層構造を有していてもよい。セパレータ30は、例えば、実質的にPE層からなっていてもよい。セパレータ30は、例えば多層構造を有していてもよい。セパレータ30は、例えば、PP層とPE層とPP層とがこの順に積層されることにより形成されていてもよい。セパレータ30の表面に、例えば耐熱層等が形成されていてもよい。
【0091】
<(C)電解液の注入>
図4は、本実施形態における非水電解質二次電池の一例を示す概略図である。
本実施形態において、電池の製造方法は、電極体50と電解液(不図示)とを含む電池100を製造することを含む。
【0092】
例えば外装体90が準備される。外装体90は、例えば金属製の容器であってもよい。外装体90は、例えば外装缶91と封口板92とを含んでいてもよい。封口板92は、外装缶91の開口部を塞いでいる。封口板92は、正極端子81と負極端子82とを備えている。正極端子81および負極端子82に電極体50が接続される。電極体50が外装缶91に収納される。外装缶91と封口板92とが接合される。
【0093】
封口板92は注入口(不図示)も備えている。注入口から電解液が外装体90の内部に注入される。外装体90が密閉される。電解液が電極体50に含浸される。以上より電池100が製造され得る。なお、外装体90は任意の形態を有し得る。外装体90は、例えばAlラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。
【0094】
(電解液)
電解液は液体電解質である。電解液は、溶媒と支持電解質と第1溶解性成分と第2溶解性成分とを含む。溶媒は非プロトン性である。溶媒は任意の成分を含み得る。溶媒は、例えば、EC、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、EMC、ジエチルカーボネート(DEC)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、メチルホルメート(MF)、メチルアセテート(MA)、メチルプロピオネート(MP)、およびγ-ブチロラクトン(GBL)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0095】
支持電解質は溶媒に溶解している。支持電解質は、例えば、LiPF6、LiBF4、およびLiN(FSO2)2からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。支持電解質は、例えば0.5mоl/Lから2.0mоl/Lのモル濃度を有していてもよい。支持電解質は、例えば0.8mоl/Lから1.2mоl/Lのモル濃度を有していてもよい。
【0096】
第1溶解性成分および第2溶解性成分は、上記「(A)電極の製造」において説明されたものと同じである。第1溶解性成分および第2溶解性成分の各々は、溶媒に溶解している。第2溶解性成分は、第1溶解性成分と異なる。電解液における第1溶解性成分の質量分率は、例えば0.02%から5%であってもよい。電解液における第2溶解性成分の質量分率は、例えば0.02%から5%であってもよい。電解液における各溶解性成分の質量分率は、例えば0.025%以上であってもよいし、0.05%以上であってもよいし、0.1%以下であってもよい。例えば、第1溶解性成分が2種以上の成分を含む場合、電解液における第1溶解性成分の質量分率は、各成分の質量分率の合計を示す。第2溶解性成分についても同様である。
【0097】
例えば電極10が正極である時、電解液における第1溶解性成分の質量分率は、例えば0.02%から3%であってもよい。
【0098】
<非水電解質二次電池>
電池100は、任意の用途で使用され得る。電池100は、例えば電動車両において、主電源または動力アシスト用電源として使用されてもよい。複数個の電池100が連結されることにより、電池モジュールまたは組電池が形成されてもよい。
【0099】
電池100は電極10と電解液とを含む。電解液の詳細は前述のとおりである。電解液は、第1溶解性成分と第2溶解性成分とを含む。電極10は、負極または正極の少なくとも一方を示す。電極10は電極基材11と活物質層12とを含む(
図2参照)。活物質層12は、電極基材11の表面に配置されている。活物質層12は第1層1と第2層2とを含む。第1層1は、電極基材11と第2層2との間に配置されている。
【0100】
第1層1は第1活物質と第1皮膜とを含む。第1層1は導電材およびバインダをさらに含んでいてもよい。第1活物質、導電材およびバインダの詳細は前述のとおりである。第1皮膜は第1活物質の表面に付着している。第1皮膜は、電解液に由来する成分を含む。第1皮膜は、実質的に、電解液に由来する成分からなっていてもよい。
【0101】
第2層2は第2活物質と第2皮膜とを含む。第2層2は導電材およびバインダをさらに含んでいてもよい。第2活物質の詳細は前述のとおりである。第2皮膜は、第2活物質の表面に付着している。第2皮膜は、電解液に由来する成分を含む。第2皮膜は、実質的に、電解液に由来する成分からなっていてもよい。
【0102】
本実施形態の電極10においては、第2皮膜が第1皮膜と異なる組成を有する。すなわち電極10の厚さ方向において皮膜の組成が変化している。第1皮膜においては、第1溶解性成分に由来する成分が、第2溶解性成分に由来する成分に比して多い。第1皮膜は、例えば、第2溶解性成分に由来する成分を含んでいなくてもよい。第1皮膜は、例えば実質的に、第1溶解性成分に由来する成分からなっていてもよい。第2皮膜においては、第2溶解性成分に由来する成分が、第1溶解性成分に由来する成分に比して多い。第2皮膜は、例えば、第1溶解性成分に由来する成分を含んでいなくてもよい。第2皮膜は、例えば実質的に、第2溶解性成分に由来する成分からなっていてもよい。
【0103】
各皮膜中における第1溶解性成分に由来する成分の量、および第2溶解性成分に由来する成分の量は、例えば、イオンクロマトグラフィ質量分析法(IC-MS)によって測定される。すなわち、第1層1および第2層2からそれぞれ試料が採取される。各試料において、IC-MSにより第1溶解性成分に由来する成分の量、および第2溶解性成分に由来する成分の量が測定され得る。これにより、第1層1および第2層2の各々において、第1溶解性成分に由来する成分の量(質量モル濃度)と、第2溶解性成分に由来する成分の量(質量モル濃度)との大小関係が特定され得る。
【実施例0104】
以下、本技術の実施例(以下「本実施例」とも記される。)が説明される。ただし、以下の説明は、本技術の範囲を限定しない。
【0105】
<電池の製造>
下記手順により、No.1からNo.18に係る評価電池(非水電解質二次電池)が製造された。
【0106】
<(A)電極の製造>
《(a1)電極基材の準備、(a2)活物質層の配置》
下記材料が準備された。
第1活物質:天然黒鉛(D50 20μm)
第2活物質:天然黒鉛(D50 20μm)
第1溶解性成分:下記表1参照
第2溶解性成分:下記表1参照
導電材:アセチレンブラック
バインダ:CMC、SBR
分散媒:水
電極基材:Cu箔
【0107】
第1活物質、第1溶解性成分、導電材、バインダおよび分散媒が混合されることにより、第1スラリーが調製された。第1スラリーが電極基材の表面に塗布され、乾燥されることにより第1層が形成された。
【0108】
第2活物質、第2溶解性成分、導電材、バインダおよび分散媒が混合されることにより、第2スラリーが調製された。第2スラリーが第1層の表面に塗布され、乾燥されることにより第2層が形成された。第2層は、第1層と実質的に等しい厚さを有していた。また第2層は、第1層と実質的に等しい目付(単位面積あたりの質量)を有していた。以上より電極(負極)が製造された。
【0109】
下記材料が準備された。
活物質:LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2
導電材:アセチレンブラック
バインダ:PVdF
分散媒:NMP
電極基材:Al箔
【0110】
活物質、導電材、バインダおよび分散媒が混合されることにより、スラリーが調製された。固形分の配合比は「活物質/導電材/バインダ=87/10/3(質量比)」であった。スラリーが電極基材の表面に塗布され、乾燥されることにより、活物質層が形成された。これにより対極(正極)が製造された。
【0111】
<(B)電極体の形成>
セパレータが準備された。セパレータは三層構造を有していた。三層構造はPP層とPE層とPP層とからなっていた。セパレータは300s/100mLの透気度を有していた。セパレータを挟んで電極と対極とが対向するように、電極とセパレータと対極とが積層された。これにより電極体が形成された。
【0112】
<(C)電解液の注入>
外装体が準備された。外装体はAlラミネートフィルム製のパウチであった。外装体に電極体が収納された。電解液が準備された。電解液組成は下記のとおりであった。外装体に電解液が注入された。外装体が密封された。以上より評価電池が製造された。
【0113】
《電解液組成》
溶媒:「EC/EMC=3/7(体積比)」
支持電解質:LiPF6(モル濃度=1.0mоl/L)
第1溶解性成分:下記表1参照
第2溶解性成分:下記表1参照
【0114】
《活性化》
25℃に設定された恒温槽内において、0.3Itの定電流方式(CC)充電により、評価電池が4.1Vまで充電された。次いで、0.3ItのCC放電により、評価電池が3Vまで放電された。該充電と該放電との一巡が3回繰り返された。なお「It」は電流の時間率を表す記号である。1Itの電流は、評価電池の設計容量が1時間で放電されるように定義される。
【0115】
《初期容量》
活性化処理後、定電流-定電圧方式(CC-CV)充電により評価電池が充電された。CC充電時の電流は0.2Itであった。CV充電時の電圧は4.1Vであった。CV充電は、電流が0.02Itまで減衰した時点で終了された。次いで、0.2ItのCC放電により、評価電池が3.0Vまで放電されることにより、初期容量(放電容量)が測定された。以下、本実施例の「SOC(state of charge)」は、初期容量に対する、その時点の充電容量の百分率を示す。
【0116】
<評価>
《IV抵抗》
評価電池のSOCが50%に調整された。-10℃に設定された恒温槽内で評価電池が4時間保存された。4時間保存後、同環境下で0.3Itの電流により、10秒間の充放電が実施された。同様に、0.5It、1.0Itの電流についても、10秒間の充放電が実施された。各電流における電圧変化の傾きから、IV抵抗が算出された。IV抵抗が低い程、入出力特性が良好であると考えられる。
【0117】
《保存後容量維持率》
CC-CV充電により評価電池のSOCが100%に調整された。60℃に設定された恒温槽内で評価電池が60日間保存された。60日保存後、初期容量と同条件で保存後容量が測定された。保存後容量が初期容量で除されることにより、容量維持率が算出された。容量維持率が高い程、高温保存特性が良好であると考えられる。
【0118】
【0119】
<結果>
例えばLiBOBに由来する皮膜には、高温保存特性の改善効果が期待される。例えばBTMSに由来する皮膜には、入出力特性の改善効果が期待される。
【0120】
例えば、No.4からNo.6においては、スラリー中におけるLiBOBおよびBTMSの合計質量分率が同じである。No.4においては、LiBOBおよびBTMSに由来する皮膜が、電極の厚さ方向に略均一に分布していると考えられる。No.5においては、LiBOBに由来する皮膜が第2層(上層)に偏在し、かつBTMSに由来する皮膜が第1層(下層)に偏在していると考えられる。No.6においては、LiBOBに由来する皮膜が第1層(下層)に偏在し、かつBTMSに由来する皮膜が第2層(上層)に偏在していると考えられる。No.4からNo.6の結果から、BTMSに由来する皮膜が第2層(上層)に偏在することにより、入出力特性の改善効果が大きくなる傾向がみられる。このように、電極の厚さ方向において、皮膜の組成が変化することにより、各種の性能改善が期待される。
【0121】
No.5からNo.8等の結果から、電解液にも電極と同じ溶解性成分が添加されていることにより、改善効果が大きくなる傾向がみられる。
【0122】
本実施形態および本実施例は、全ての点で例示である。本実施形態および本実施例は、制限的ではない。本技術の範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内における全ての変更を包含する。例えば、本実施形態および本実施例から、任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも、当初から予定されている。本実施形態および本実施例に複数の作用効果が記載されている場合、本技術の範囲は、全ての作用効果を奏する範囲に限定されない。
1 第1層、2 第2層、10 電極、11 電極基材、12 活物質層、20 対極、30 セパレータ、50 電極体、81 正極端子、82 負極端子、90 外装体、91 外装缶、92 封口板、100 電池(非水電解質二次電池)。