(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101037
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20220629BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20220629BHJP
A61K 8/21 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
A61K8/49
A61Q11/00
A61K8/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215385
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 佳代
(72)【発明者】
【氏名】岩隈 好恵
(72)【発明者】
【氏名】石角 篤
(72)【発明者】
【氏名】茨木 浩子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB471
4C083AB472
4C083AC691
4C083AC692
4C083AD281
4C083AD282
4C083CC41
4C083DD41
4C083EE32
4C083EE33
(57)【要約】
【課題】歯間ブラシと組み合わせることにより、さらに優れた口腔ケア効果を奏し得る口腔用組成物を提供すること。
【解決手段】塩化セチルピリジニウム及びフッ素化合物を含有する、歯間ブラシと組み合わせて用いるためのジェル状口腔用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化セチルピリジニウム及びフッ素化合物を含有する、
歯間ブラシと組み合わせて用いるためのジェル状口腔用組成物。
【請求項2】
粘度が1000~4000mPa・sである、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
ヒドロキシエチルセルロースを含有する、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
歯間ブラシ及び請求項1~3のいずれかに記載の組成物を備えたキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、口腔用組成物等に関し、より詳細には、歯間ブラシ用組成物等に関する。なお、本明細書に記載される全ての文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
歯間ブラシは、口腔ケアのために用いられるブラシであり、歯牙と歯牙の間の汚れや食べ残し等を除去し、歯茎をマッサージする等により、う蝕や歯周病の予防に効果を発揮する。
【0003】
歯間ブラシは、その全体の形状から、I字型、L字型及びカーブ型に大別される。I字型歯間ブラシは、I字状のハンドル部とブラシ部とが同軸上に設けられているものである(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。L字型歯間ブラシは、L字状のハンドル部の先端に、ブラシ部が設けられているものである(例えば、特許文献4参照)。L字状のハンドル部は、あらかじめL字状に成形されたものと、I字状のハンドル部を折り曲げてL字状のハンドル部として使用できるものと、が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-192275号公報
【特許文献2】特開2018-68515号公報
【特許文献3】特許第3718264号公報
【特許文献4】特許第4008284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
歯間ブラシのみで口腔ケアを行うことによっても上記効果が得られうるが、歯間ブラシと組み合わせて口腔用組成物を用いることにより、より高い上記効果が奏されることが期待される。口腔用組成物単独でも口腔ケア効果を奏することから、歯間ブラシの効果と口腔用組成物の効果とが組み合わさることにより、より優れた効果が得られると考えられるからである。
【0006】
このことを確認するため、本発明者らは、歯間ブラシと口腔用組成物を組み合わせて用いることで得られる口腔ケア効果を検討した。すると、意外なことに、歯間ブラシと口腔用組成物を組み合わせて用いたとしても、上述したような、さらに優れた口腔ケア効果が得られる訳ではないことが分かった。
【0007】
本発明者らは、その後も、歯間ブラシと組み合わせることにより、さらに優れた口腔ケア効果を奏し得る口腔用組成物を見いだすべく、検討を重ねた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、歯間ブラシと、塩化セチルピリジニウム及びフッ素化合物を含むジェル状口腔用組成物とを組み合わせて用いることにより、優れた口腔ケア効果(例えば歯周ポケットケア効果)が得られることを見いだした。
【0009】
また、検討を重ねるなかで、歯間ブラシと組み合わせて用いるための口腔ケア製品を選択する場合においては、口腔内の環境の改善度(特に歯周ポケットケア効果、中でもBOP:Bleeding On Probing)を指標とすることで、好ましい口腔ケア製品を選択することができる可能性を見いだした。
【0010】
これらの知見に基づき、さらに改良を重ねた。
【0011】
本開示は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
塩化セチルピリジニウム及びフッ素化合物を含有する、
歯間ブラシと組み合わせて用いるためのジェル状口腔用組成物。
項2.
粘度が1000~4000mPa・sである、項1に記載の口腔用組成物。
項3.
ヒドロキシエチルセルロースを含有する、項1又は2に記載の口腔用組成物。
項4.
歯間ブラシ及び項1~3のいずれかに記載の組成物を備えたキット。
項A.
歯間ブラシと組み合わせて用いるための口腔ケア製品を選択する方法であって、
候補口腔ケア製品を歯間ブラシと組み合わせて用いた場合の、BOP(Bleeding On Probing)の変化を指標として、口腔ケア製品を選択する方法。
項B.
糖尿病患者が、歯間ブラシと組み合わせて用いるための口腔ケア製品を選択する方法である、項Aに記載の方法。
項C.
BPCが低下したときに、用いた候補口腔ケア製品を選択する項A又はBに記載の方法。
項D.
口腔ケア製品が、口腔用組成物である、項A~Cのいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
歯間ブラシと組み合わせることにより、さらに優れた口腔ケア効果を奏し得る口腔用組成物が提供される。
【0013】
また、歯間ブラシと組み合わせて用いるための好ましい口腔ケア製品を選択可能な方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】歯間ブラシのみ購入する群(「IDB(+)ジェル製剤(-)」)、並びに、歯間ブラシ及びジェル状口腔用組成物のみ購入する群(「IDB(+)ジェル製剤(+)」)について、2年間でのBOP(Bleeding On Probing)の変化値を箱ひげ図として示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。本開示は、口腔用組成物、当該口腔用組成物を供えたキット等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本開示は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
【0016】
本開示に包含される口腔用組成物は、塩化セチルピリジニウム及びフッ素化合物を含有する、ジェル状の口腔用組成物である。以下、本開示に包含される当該口腔用組成物を「本開示の口腔用組成物」ということがある。また、塩化セチルピリジニウムをCPCと表記することがある。
【0017】
CPCは、本開示の口腔用組成物に、例えば0.01~0.5質量%程度含有されることが好ましい。当該範囲の上限又は下限は、例えば、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、又は0.49質量%であってもよい。例えば、当該範囲は0.02~0.3質量%であってもよい。
【0018】
フッ素化合物としては、例えば口腔用組成物分野において公知のフッ素化合物を好ましく用いることができる。より具体的には、例えばモノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化スズ等が挙げられ、中でもモノフルオロリン酸ナトリウム及びフッ化ナトリウムがより好ましい。
【0019】
またフッ素化合物は、本開示の口腔用組成物に、例えばフッ化物イオン濃度換算で2000ppm以下含有されることが好ましく、50~2000ppm含まれることがより好ましい。当該範囲の上限又は下限は、例えば100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、又は1950ppmであってもよい。例えば、当該範囲は、100~1800ppm又は200~1600ppmであってもよい。
【0020】
上記の通り、本開示の口腔用組成物はジェル状口腔用組成物である。ジェル状とするために、増粘剤を用いることが好ましい。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース塩(特にナトリウム塩)、カルボキシメチルエチルセルロース塩(特にナトリウム塩)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウムなどのセルロース誘導体、キサンタンガムなどの微生物産生高分子、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、カラギーナン、デキストリン、寒天、ペクチン、プルラン、ジェランガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウムなどの天然高分子または天然ゴム類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸ナトリウムなどの合成高分子、増粘性シリカ、ビーガムなどの無機粘結剤、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースなどのカチオン性増粘剤が挙げられる。中でもヒドロキシエチルセルロースが好ましい。
【0021】
本開示の口腔用組成物は、ジェル状口腔用組成物であれば、特に限定はされない。粘度が1000~25000mPa・s程度であれば、ジェル状ということができる。本開示の口腔用組成物においては、中でも好ましいジェル状として、粘度が1000~4000mPa・s程度であることが挙げられる。当該範囲の上限又は下限は特に限定されず、例えば1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、又は3900mPa・sであってもよい。例えば当該範囲は1200~3800mPa・sであってもよい。なお、当該粘度は25℃においてB型粘度計により測定される。
【0022】
本開示の口腔用組成物は、ジェル状である範囲であれば、特に制限はされないが、例えば液体歯磨剤等として用いることもできる。
【0023】
本開示の口腔用組成物は、効果を損なわない範囲であって、ジェル状である範囲であれば、口腔用組成物に配合し得る任意成分を単独で又は2種以上さらに含有してもよい。
【0024】
例えば、界面活性剤として、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤または両性界面活性剤を配合することができる。具体的には、例えば、ノニオン界面活性剤としてはショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル;脂肪酸アルカノールアミド類;ソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレン付加係数が8~10、アルキル基の炭素数が13~15であるポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン付加係数が10~18、アルキル基の炭素数が9であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;セバシン酸ジエチル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のアシルアミノ酸塩;ココイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型活性剤;N-ココイル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリン型活性剤;N-ラウリルジアミノエチルグリシン等のアミノ酸型活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.1~5質量%である。特に限定はされないが、界面活性剤は本開示の口腔用組成物には含有されないことも好ましい。(なお、CPCも界面活性剤として働き得るが、本開示の口腔用組成物が界面活性剤を含まない場合であっても、CPCは含まれる。)
【0025】
また、香味剤として、例えば、メントール、カルボン酸、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n-デシルアルコール、シトロネール、α-テルピネオール、メチルアセタート、シトロネニルアセタート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、d-カンフル、d-ボルネオール、ウイキョウ油、ケイヒ油、シンナムアルデヒド、ハッカ油、バニリン等の香料を用いることができる。これらは、単独または2種以上を組み合わせて組成物全量に対して例えば0.001~1.5質量%配合することができる。
【0026】
また、甘味剤として、例えば、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、p-メトキシシンナミックアルデヒド等を用いることができる。これらは、組成物全量に対して例えば0.01~1質量%配合することができる。
【0027】
さらに、湿潤剤として、ソルビット、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3―ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、ポリオキシエチレングリコール等を単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0028】
防腐剤として、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等を配合することができる。
【0029】
着色剤として、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等を配合してもよい。
【0030】
pH調整剤として、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等を配合してもよい。これらは、組成物のpHが4~8、好ましくは5~7の範囲となるよう、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。pH調整剤の配合量は例えば0.01~2重量%であってよい。
【0031】
なお、本開示の口腔用組成物には、さらに、薬効成分として酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸トコフェロール、またはニコチン酸トコフェロール等のビタミンE類、ドデシルジアミノエチルグリシン等の両性殺菌剤、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、ヒノキチオール等の非イオン性殺菌剤、ラウロイルサルコシンナトリウム等のアニオン系殺菌剤、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等のカチオン系殺菌剤、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)等の酵素、トラネキサム酸やイプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシルアラントイン、ジヒドロコレステロール、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、グリセロフォスフェート、クロロフィル、塩化ナトリウム、カロペプタイド、アラントイン、カルバゾクロム、ヒノキチオール、硝酸カリウム、パラチニット等を、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0032】
また、基剤として、アルコール類、シリコン、アパタイト、白色ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、プラスチベース等を添加することも可能である。
【0033】
本開示の口腔用組成物は、歯間ブラシと組み合わせて用いることにより、優れた口腔ケア効果を奏することができる。特に、優れた歯周ポケットケア効果を奏することができる。歯周ポケットが深くなるほど、歯牙喪失のおそれが高まることから、本開示の口腔用組成物は歯牙喪失予防用としても好ましく用いることができる。歯周ポケットケア効果は、BOP(Bleeding On Probing)で評価することができる。BOPは、歯周ポケット深さチェック時の、血が出てしまう部位の比率(%)のことであり、値が小さいほど好ましい。BOPは、歯周病の他、糖尿病とも関連すると言われている。
【0034】
本開示の口腔用組成物と組み合わせて用いる歯間ブラシは、特に制限はされず、歯牙と歯牙との間に入り得るブラシであれば特に制限はされない。例えば、市販される歯間ブラシを購入して用いることができる。また、I字型、L字型、及びカーブ型のいずれの歯間ブラシであってもよい。
【0035】
本開示は、本開示の口腔用組成物と歯間ブラシとを備えたキットも包含する。当該キットを本開示のキットということがある。
【0036】
本開示のキットは、口腔ケア用として好ましく用いることができる。特に、歯周ポケットケア用として好ましく用いることができる。
【0037】
本開示の口腔用組成物及びキットは、口腔ケアを必要とする対象のために特に好ましく用いることができる。例えば、歯周病である対象(特に歯周病患者)、口腔内に歯周病菌(特にポルフィロモナス・ジンジバリス)を保有する対象、介護対象(特に口腔ケアを他社に行って貰う必要がある対象)、等が好ましく挙げられる。また、歯垢が歯牙に付着した対象、歯周ポケットケアが必要な対象も好ましく挙げられる。歯周ポケットが深くなるほど、歯牙喪失のおそれが高まることから、歯牙喪失予防効果も期待できる。
さらには、糖尿病の対象も好ましい。糖尿病の対象としては、例えば、糖尿病患者(特に2型糖尿病患者)や糖尿病予備軍のヒト等が挙げられる。なお、歯周病は糖尿病と関連することが明らかになってきている。対象としては、ヒトのみならず、非ヒト哺乳類も包含される。例えば、ペットや家畜も包含され得る。より具体的には、例えばイヌ、ネコ、サル、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、マウス、ラット等も包含され得る。
【0038】
また、本開示は、口腔ケア製品を選択する方法も包含する。本開示に包含される口腔ケア製品を選択する方法は、歯間ブラシと組み合わせて用いるための口腔ケア製品を選択する方法である。以下、本開示に包含される当該口腔ケア製品選択方法を、「本開示の選択方法」ということがある。
【0039】
本開示の選択方法では、候補口腔ケア製品を歯間ブラシと組み合わせて用いた場合の、BOP(Bleeding On Probing)の変化を指標として、口腔ケア製品を選択する。
【0040】
選択される口腔ケア製品の候補(すなわち、候補口腔ケア製品)としては、特に限定はされず、例えば口腔用器具及び口腔用組成物が挙げられ、口腔用組成物がより好ましい。これらは、口腔内環境を改善するために用い得るものが好ましい。口腔内器具としては、例えば歯ブラシ(電動歯ブラシを含む)、フロス、口腔ケア用シート若しくはティッシュ(ウェットなものが好ましい)、楊枝等が挙げられるが、特に限定されない。また、口腔用組成物としては、例えば液体組成物、ジェル状組成物、ペースト状組成物、粉状組成物等であってよく、特に限定されない。より具体的には、例えば、軟膏剤、ペースト剤、パスタ剤、ジェル剤、液剤、スプレー剤、洗口液剤、液体歯磨剤、練歯磨剤、ガム剤等の形態(剤形)であってよい。なかでも、洗口液剤、液体歯磨剤、練歯磨剤、軟膏剤、ペースト剤、液剤、ジェル剤等が好ましい。
【0041】
本開示の選択方法では、歯間ブラシと組み合わせて用いるために好ましい口腔ケア製品であるかを、BOP(Bleeding On Probing)の変化を指標として選択する。
【0042】
上記の通り、BOP(Bleeding On Probing)は歯周ポケット深さチェック時の、血が出てしまう部位の比率(%)のことであり、値が小さいほど好ましい。
【0043】
歯間ブラシと候補口腔ケア製品とを組み合わせて用いることにより、BOPが低下する場合、その候補口腔ケア製品は、その対象者にとって、歯間ブラシと組み合わせて用いるための特に好ましい口腔ケア製品として選択される。
【0044】
歯間ブラシと補口腔ケア製品とを組み合わせて用いる期間は、特に限定はされないが、例えば少なくとも0.5、1、1.5、2、2.5、又は3年が挙げられる。
【0045】
本開示の選択方法により、歯間ブラシと組み合わせて用いるための口腔ケア製品を選択する対象は、特に制限はされないが、例えば、歯周病である対象(特に歯周病患者)、口腔内に歯周病菌(特にポルフィロモナス・ジンジバリス)を保有する対象、介護対象(特に口腔ケアを他社に行って貰う必要がある対象)、等が好ましく挙げられる。また、歯垢が歯牙に付着した対象、歯周ポケットケアが必要な対象も好ましく挙げられる。さらには、糖尿病患者(特に2型糖尿病患者)等が挙げられる。なお、歯周病は糖尿病と関連することが明らかになってきている。対象としては、ヒトのみならず、非ヒト哺乳類も包含される。例えば、ペットや家畜も包含され得る。より具体的には、例えばイヌ、ネコ、サル、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、マウス、ラット等も包含され得る。
【0046】
なお、本開示の選択方法で用いる歯間ブラシは、特に制限はされず、歯牙と歯牙との間に入り得るブラシであれば特に制限はされない。例えば、市販される歯間ブラシを購入して用いることができる。また、I字型、L字型、及びカーブ型のいずれの歯間ブラシであってもよい。
【0047】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
【0048】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例0049】
以下、例を示して本開示の実施形態をより具体的に説明するが、本開示の実施形態は下記の例に限定されるものではない。なお、以下の検討及び解析においては、匿名化されている情報(特定の個人を識別することができず、対応表が作成されていないもの)を用いた。
【0050】
特定の歯科医院に通院する2型糖尿病患者について、通院時に口腔ケアのために購入する商品を調査した。歯間ブラシ購入者に着目したところ、歯間ブラシのみ購入する人の他、歯間ブラシとあわせて、ジェル状口腔用組成物やペースト状口腔用組成物を購入する人が確認された。
【0051】
なお、ここでのジェル状口腔用組成物は、塩化セチルピリジニウム及びフッ化ナトリウム(フッ素925ppm相当)を含有し、増粘剤としてヒドロキシエチルセルロースを含有する組成物である。また、ペースト状口腔用組成物には界面活性剤(発泡剤)が含まれている。
【0052】
歯間ブラシのみ購入する群、歯間ブラシ及びペースト状口腔用組成物を購入する群、歯間ブラシ及びジェル状口腔用組成物を購入する群、あるいは何も購入しない群、の各群について、その他の製品も購入した人は除外したうえで、BOP(Bleeding On Probing)を測定し、2年後にさらにBOPを測定して、その変化を調査した。なお、BOPは歯周ポケット深さチェック時の、血が出てしまう部位の比率(%)を測定した。
【0053】
その結果、歯間ブラシ及びペースト状口腔用組成物を購入する群は、BOPの改善がそこまで大きくはなかった一方、歯間ブラシ及びジェル状口腔用組成物を購入する群は、優れたBOPの変化を達成した。当該結果を、箱ひげ図として、
図1に示す。具体的には、歯間ブラシのみを購入する群〔IDB(+)ジェル製剤(-)〕のBOPの変化値と、歯間ブラシ及びジェル状口腔用組成物のみを購入する群〔IDB(+)ジェル製剤(+)〕のBOPの変化値とを、示す。なお、
図1は、それぞれの群におけるBOPの変化値を示す。例えば、ある測定対象の初期BOP値が50%であり、2年後のBOP値が20%である場合には、その測定対象のBOPの変化値は-30%になる。また、何も購入しない群の中央値を基準とした。
【0054】
なお、上記の検討は、歯間ブラシ購入者に着目したうえで行われたものであるが、各種の候補口腔ケア製品(各種口腔用器具及び口腔用組成物)について着目し、各種商品を購入した群のBOPの変化を検討したところ、それほど大きなBOPの変化は得られなかった。このことから、BOPの変化(BOP変化値)は、歯間ブラシと組み合わせて用いるための口腔ケア製品を選択する場合において、良好な指標となることが分かった。