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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101207
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】建物改修用昇降装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20220629BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20220629BHJP
   E04G 3/20 20060101ALI20220629BHJP
【FI】
E04G23/02 Z
E04G23/08 Z
E04G3/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215658
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】大谷 愛斗
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176DD64
(57)【要約】
【課題】簡単で安価な構成により昇降台の横振れを確実に防止し、作業性の向上を図る上で有利な建物改修用昇降装置を提供する。
【解決手段】本実施の形態の建物改修用昇降装置14によれば、建物10の周面の周方向に間隔をおいた複数箇所に上下方向に延在する作業用ゴンドラ振れ止め用の各レール12に水平方向に移動不能で上下方向に転動する案内ローラ30を昇降台16に設けた。強風や地震などが発生した場合であっても、簡単で安価な構成により昇降台16の横振れを確実に防止して昇降台16を安定した状態に維持できるため、昇降台16に搭乗した作業員による作業性の向上を図る上で有利となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の周面に対して対向配置される昇降台と、
前記昇降台を前記建物に沿って昇降させる昇降部とを備え、
前記周面の周方向に間隔をおいた複数箇所にガラス窓清掃用のゴンドラの振れ止め用のレールが上下方向に延在して設けられた建物の建物改修用昇降装置であって、
前記レールに水平方向に移動不能で上下方向に転動する案内ローラが前記昇降台に設けられている、
ことを特徴とする建物改修用昇降装置。
【請求項2】
前記案内ローラは、前記レールを前記周面の周方向から挟むように設けられた一対のローラ体で構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の建物改修用昇降装置。
【請求項3】
前記案内ローラは、前記周面の周方向に間隔をおいた少なくとも2箇所の前記レールに設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の建物改修用昇降装置。
【請求項4】
前記建物は平面視矩形状を呈し、
前記昇降台は、前記建物の周面全周を囲む平面視矩形枠状を呈し、
前記案内ローラは、前記建物の4つの側面毎に設けられている、
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載の建物改修用昇降装置。
【請求項5】
前記レールを挟む一対の前記ローラ体の前記レールを挟む方向の間隔を調整するローラ体間隔調整部が設けられている、
ことを特徴とする請求項2、または請求項2を引用する請求項3または請求項4記載の建物改修用昇降装置。
【請求項6】
前記案内ローラは上下方向に間隔をおいて複数設けられている、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の建物改修用昇降装置。
【請求項7】
前記案内ローラの上下方向の位置を調整するローラ高さ調整部が設けられている、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の建物改修用昇降装置。
【請求項8】
前記昇降台を用いてなされる作業は、前記建物の外壁の損傷部分の補修作業、または、前記外壁の塗装作業、または、前記建物の解体作業である、
ことを特徴とする請求項1から7の何れか1項記載の建物改修用昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物改修用昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の改修や解体に際しては、建物の周囲を囲むように足場を設置し、足場を利用して改修工事の作業を行ったのち、足場を解体、撤去する必要があり、コストがかさみ、工期が長引くものとなっている。
ところで、煙突などの搭状の構造物の解体工事を行なうにあたって、構造物の周囲を囲むように昇降台を設け、この昇降台を昇降部を用いて昇降させ、作業員が昇降台上で解体作業を行うようにする技術が提案されている(特許文献1参照)。
そこで、このような昇降台と昇降部を既存の建物に設置し、建物の改修工事や解体工事を行なうことで、足場を不要とし、コスト低減、工期短縮を図ることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-68757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような昇降台と昇降部を既存の建物に設置した場合、昇降台が強風や地震により横振れすると、建物に昇降台が干渉して建物を損傷したり、あるいは、作業を円滑に行なう上で不利となるおそれがある。
一方、高層ビルなどの建物のガラス窓の清掃には、建物の屋上に設置された昇降装置から繰り出されるワイヤで吊り下げられ建物の周面に沿って昇降されるガラス窓清掃用のゴンドラが設置される。
このような高層ビルには、ゴンドラに係合することでゴンドラが風によって揺れることを防止するためのレールが建物の周面に鉛直方向に沿って延在して予め設けられている。
本発明はこのガラス窓清掃用のゴンドラの振れ止め用のレールに着目してなされたものであり、本発明の目的は、簡単で安価な構成により昇降台の横振れを確実に防止し、作業性の向上を図る上で有利な建物改修用昇降装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために、本発明の一実施の形態は、建物の周面に対して対向配置される昇降台と、前記昇降台を前記建物に沿って昇降させる昇降部とを備え、前記周面の周方向に間隔をおいた複数箇所にガラス窓清掃用のゴンドラの振れ止め用のレールが上下方向に延在して設けられた建物の建物改修用昇降装置であって、前記レールに水平方向に移動不能で上下方向に転動する案内ローラが前記昇降台に設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記案内ローラは、前記レールを前記周面の周方向から挟むように設けられた一対のローラ体で構成されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記案内ローラは、前記周面の周方向に間隔をおいた少なくとも2箇所の前記レールに設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記建物は平面視矩形状を呈し、前記昇降台は、前記建物の周面全周を囲む平面視矩形枠状を呈し、前記案内ローラは、前記建物の4つの側面毎に設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記レールを挟む一対の前記ローラ体の前記レールを挟む方向の間隔を調整するローラ体間隔調整部が設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記案内ローラは上下方向に間隔をおいて複数設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は前記案内ローラの上下方向の位置を調整するローラ高さ調整部が設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記昇降台を用いてなされる作業は、前記建物の外壁の損傷部分の補修作業、または、前記外壁の塗装作業、または、前記建物の解体作業であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態によれば、建物の周面の周方向に間隔をおいた複数箇所に上下方向に延在するガラス窓清掃用のゴンドラの振れ止め用のレールに水平方向に移動不能で上下方向に転動する案内ローラを、昇降台に設けた。
したがって、強風や地震などが発生した場合であっても、ガラス窓清掃用のゴンドラの振れ止め用のレールを利用することで、簡単で安価な構成により昇降台の横振れを確実に防止して昇降台を安定した状態に維持できるため、昇降台に搭乗した作業員による作業性の向上を図る上で有利となる。
また、建物の周面を囲むように足場を構築して建物の改修工事や解体工事を行なう場合に比較して、手間がかかる足場の設置作業と撤去作業が不要となるため、工期の短縮、工事のコストを低減する上で有利となる。
また、案内ローラを、レールを建物の周面の周方向から挟むように設けられた一対のローラ対で構成すると、昇降台の横振れをより確実に防止して昇降台を安定した状態に維持でき、作業性の向上を図る上でより有利となる。
また、案内ローラを、建物の周面の周方向に間隔をおいた少なくとも2箇所のレールに設けると、案内ローラを1箇所のレールに設ける場合に比較して、昇降台の横振れをより確実に防止して昇降台を安定した状態に維持でき、作業性の向上を図る上でより有利となる。
また、建物が平面視矩形状を呈し、昇降台が建物の周面全周を囲む平面視矩形枠状を呈し、案内ローラが、建物の4つの側面毎に設けられていると、4つの側面に設けられた案内ローラによって昇降台の横振れをより確実に防止して昇降台を安定した状態に維持でき、作業性の向上を図る上でより有利となる。
また、レールを挟む一対のローラ体のレールを挟む方向の間隔を調整するローラ体間隔調整部を設けると、様々な寸法のレールに対応して確実に案内ローラでレールを係合できるので、昇降台の横振れをより確実に防止して昇降台を安定した状態に維持でき、作業性の向上を図る上でより有利となる。
また、案内ローラを上下方向に間隔をおいて複数設けると、上下に間隔をおいた複数の案内ローラでレールを係合することで、昇降台の横振れをより確実に防止して昇降台を安定した状態に維持でき、作業性の向上を図る上でより有利となる。
また、案内ローラの上下方向の位置を調整するローラ高さ調整部を設けると、昇降台を建物の最上部に位置させる際に、案内ローラの上下方向の位置を調整することで昇降台をより高い位置に位置させることができ、建物の高い箇所での作業性の向上を図る上で有利となる。
また、昇降台を用いてなされる作業が、建物の外壁の損傷部分の補修作業、または、外壁の塗装作業、または、建物の解体作業であると、昇降台に搭乗した作業員による建物の改修工事や解体工事を効率よく行なう上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態に係る建物改修用昇降装置が建物の外周に設置された状態示す平面図である。
図2図1のA-A線矢視図であり、昇降台が低い位置に位置した状態を示す。
図3図1のB-B線矢視図であり、昇降台が低い位置に位置した状態を示す。
図4図1のA-A線矢視図であり、昇降台が上昇した状態を示す。
図5図1のB-B線矢視図であり、昇降台が上昇した状態を示す。
図6】建物の壁面に設けられたレールに建物改修用昇降装置のローラが係合した状態を示す平面図である。
図7図6のC-C線矢視図である。
図8図6のD-D線矢視図である。
図9】ローラ体間隔調整部およびローラ高さ調整部の構成を示す正面図である。
図10図9のB矢視図である。
図11図9のC-C線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態に係る建物改修用昇降装置について図面を参照して説明する。
まず、建物改修用昇降装置が適用される建物10について説明する。
図1から図3に示すように、本実施の形態では、建物10が断面長方形の高層ビルである場合について説明する。
なお、建物10の断面形状は限定されるものではなく、本発明の建物改修用昇降装置は、従来公知の様々な断面形状の建物10に適用可能である。
建物10は周面を備え、本実施の形態では、周面は、長方形の一対の長辺に対応する一対の長辺側側面1002と、長方形の一対の短辺に対応する一対の短辺側側面1004とを備えている。
各側面1002、1004は、鉛直方向の高さと、高さと直交する幅とを備えた平坦面で構成され、各側面1002、1004には不図示のガラス窓が設けられている。
なお、図中符号Gは地盤を示す。
【0009】
高層ビルなどの建物10には、建物10の屋上に設置された昇降装置から繰り出されるワイヤで吊り下げられ建物10の周面に沿って昇降されるガラス窓清掃用のゴンドラが設けられ、ゴンドラは通常、屋上に収納されている。
また、建物10の周面には、鉛直方向に延在する作業用ゴンドラ振れ止め用のレール12が予め設けられており、ゴンドラに設けられたローラがレール12に転動可能にかつ水平方向に移動不能に係合されることでゴンドラが風によって揺れることを防止している。
本実施の形態では、レール12は、建物10の周面の周方向に間隔をおいた複数箇所に、すなわち、各側面1002、1004の幅方向に間隔をおいた複数箇所に、鉛直方向に延在するレール12が予め設けられている。
レール12は建物10の高さ方向のほぼ全長にわたって設けられている。
【0010】
図6に示すように、本実施の形態では、レール12にはH型鋼が用いられ、一対のフランジ1202と、一対のフランジ1202を接続するウェブ1204とを備えている。
レール12は、一方のフランジ1202が建物10の周面、すなわち、長辺側側面1002および短辺側側面1004に埋設されることで建物10に取り付けられ、他方のフランジ1202が建物10の周面から外方に離間した箇所に位置している。
したがって、後述する案内ローラ30が係合するレール12の箇所はT字型を呈している。
なお、レール12の断面形状は、T字型に限定されるものではなく、従来公知の様々な断面形状のレール12が使用可能であり、レール12の断面形状に対応した従来公知の様々な案内ローラ30が使用可能である。
例えば、断面コ字状を呈し対向する一対のレール体によってレールが構成され、一対のレール体の間に上下方向に延在する溝部が形成されている場合、単一の案内ローラが一対溝部内に挿入され、一対のレール体の内面で案内ローラが案内されるものであってもよい。
また、レール12の建物10への取り付けは、取り付け用のブラケットを用いて行なうなど従来公知の様々な取り付け構造が使用可能である。
【0011】
図1図3に示すように、建物改修用昇降装置14は、昇降台16と、昇降部18と、振れ止め部20とを含んで構成されている。
昇降台16は、作業員が搭乗して建物10の改修作業あるいは建物10の解体作業を行なう箇所であり、また、改修作業や解体作業に用いる機材や材料などを積載する箇所である。
なお、改修作業とは、建物10の外壁の損傷部分の補修、外壁の塗装などの従来公知の作業を含むものである。
昇降台16は建物10の周面に対向して配置され、本実施の形態では、昇降台16は、建物10の周面全周を囲む平面視矩形枠状を呈している。
本実施の形態では、昇降台16は、矩形枠状の底壁1602と、底壁1602の外側の縁部から起立する側壁1604とを備えている。
図1に示すように、底壁1602の内側の縁部によって、建物10の断面形状よりも一回り大きな開口部1606が形成され、底壁1602の内側の縁部と建物10の外周との間には所定寸法の隙間Sが確保されている。
【0012】
図1図3に示すように、昇降部18は、昇降台16を建物10に沿って昇降させるものである。
昇降部18は、複数の案内ロッド22と、複数の昇降ジャッキ24とを含んで構成されている。
案内ロッド22は、不図示のロッドベースを土台にして地盤G上に建物10の外周に沿って間隔をおいて設けられ、各案内ロッド22は、昇降台16の底壁1602に設けられた貫通孔1608(図2図3参照)を貫通して上下方向に延在している。
本実施の形態では、図1に示すように、4本の案内ロッド22が、建物10の一対の長辺側側面1002のそれぞれに沿って等間隔をおいて設けられている。
各案内ロッド22の一端は雄ねじ部、他端は雌ねじ部となっており、一つの案内ロッドの雄ねじ部に別の案内ロッドの雌ねじ部を締結することにより軸方向に案内ロッド22を継ぎ足すことができるように図られている。
各案内ロッド22の一端は雄ねじ部、他端は雌ねじ部となっており、一つの案内ロッドの雄ねじ部に別の案内ロッドの雌ねじ部を締結することにより軸方向に案内ロッド22を継ぎ足すことができるように図られている。
あるいは、各案内ロッド22の両端を何れも雄ねじ部とし、雄ねじ部同士を雌ねじが形成された接続治具を介して締結することにより軸方向に案内ロッド22を継ぎ足すことができるようにするなど任意である。
したがって、案内ロッド22単位で継ぎ足された複数の案内ロッド22全体の長さを伸ばすことができ、また、案内ロッド22に継ぎ足された案内ロッド22を取り外すことで複数の案内ロッド22全体の長さを短くすることができるように構成されている。
案内ロッド22の継ぎ足し、取り外しの作業は、昇降台16に乗った作業者によってなされる。
このように案内ロッド22の長さを増減させることで、昇降ジャッキ24によって昇降される昇降台16の高さ方向の移動範囲を変えることができるように図られている。
また、図3に示すように、各案内ロッド22は、座屈を防止するために、案内ロッド22の軸方向に等間隔をおいて設けられたステー26を介して建物10の外周に脱着可能に取り付けられている。
【0013】
昇降ジャッキ24は、昇降台16の底壁1602の下面に、各貫通孔1608毎に設けられ、各案内ロッド22に結合されている。
昇降ジャッキ24は、上下に間隔を置いて配置された案内ロッド22の上下の保持手段と、上下の保持手段の上下間隔を変える油圧シリンダとを含んで構成されている。
上下の保持手段による案内ロッド22の把持及び把持解除と、油圧シリンダの伸縮作動により、昇降台16は、各昇降ジャッキ24により支持されつつ各案内ロッド22に沿って昇降される。
昇降ジャッキ24の1回の伸長による昇降台16の上昇量、および、昇降ジャッキ24の1回の収縮による昇降台16の下降量は例えば10cmであり、このような昇降ジャッキ24の伸縮動作を繰り返すことで昇降台16は尺取虫のように上昇あるいは下降する。
なお、各昇降ジャッキ24の動作は、昇降部18から離れた箇所、例えば、地上や建物10に設置された不図示の制御装置(コンピュータ)によって制御される。
また、このような制御装置を昇降部18に搭載してもよいことは無論である。
【0014】
図1に示すように、振れ止め部20は、強風や地震などによる昇降台16の横振れを防止するものである。
振れ止め部20は、各レール12毎に設けられている。
図6図8に示すように、振れ止め部20は、筐体28と、案内ローラ30と、ローラ支持機構32(図9図11参照)とを含んで構成されている。
筐体28は、各レール12に対応する底壁1602の上面に立設され、上下方向の高さと、高さよりも小さい寸法で上下方向と直交し建物10の周面と平行する方向の幅と、幅よりも小さい寸法で上下方向および建物10の周面と直交する方向の厚さとを有し上下方向に細長状を呈している。
図6図8に示すように、筐体28は、底壁1602の上面に重ね合わされて取り付けられる底板2802と、底板2802の長手方向の両端から起立し筐体28の幅方向で対向する一対の端面板2804と、底板2802の長手方向と直交する両端から起立し筐体28の厚さ方向で対向する一対の側面板2806と、一対の端面板2804および一対の側面板2806の上端を接続する上板2808とを備えている。
【0015】
案内ローラ30は、レール12に水平方向に移動不能で上下方向に転動するものであり、ローラ支持機構32および筐体28を介して昇降台16に設けられている。
本実施の形態では、案内ローラ30は、建物10の周面の周方向に間隔をおいた少なくとも2箇所のレール12に設けられている。
より詳細には、案内ローラ30は、建物10の4つの側面1002,1004毎に設けられている。
案内ローラ30は、レール12を建物10の周面の周方向から挟むように設けられた一対のローラ体30Aで構成されている。
図6図8に示すように、本実施の形態では、ローラ体30Aは、一端に雄ねじ3002A(図10参照)が形成された支軸3002と、支軸3002の他端に回転可能に支持されたローラ本体3004とを備え、ローラ本体3004の外周面には、レール12のフランジ1202に係合する溝3006が形成されている。
また、本実施の形態では、案内ローラ30は、上下方向に間隔をおいて2つ設けられている。
したがって、1つのレール12に対して合計4つのローラ体30Aが設けられている。
なお、1つのレール12に対して設けるローラ体30Aの個数は4つに限定されるものではなく、2つであっても6つ以上であってもよいことは無論である。
一対のローラ体30Aの溝3006がレール12のフランジ1202の両側に係合することで、各ローラ体30Aは、レール12に対して水平方向に移動不能で上下方向に転動可能となっている。
なお、ローラ本体3004は、筐体28の一対の側面板2806のうち建物10の周面(側面1002または側面1004)に対向する一方の側面板2806の外側に位置し、支軸3002は、その側面板2806に設けられた開口部2810(図7参照)を通って筐体28内部のローラ支持機構32(図9図11参照)に支持されている。
【0016】
図9図10図11に示すように、ローラ支持機構32は、ローラ体30Aの支軸3002を支持するものであり筐体28に設けられている。
ローラ支持機構32は、ローラ体間隔調整部34と、ローラ高さ調整部36と、制御部38とを含んで構成されている。
なお、図9においては、上下に設けられた2組の一対のローラ体30Aのうち上方に設けられた一対のローラ体30Aに対応するローラ支持機構32が示されているが、下方に設けられた一対のローラ体30Aに対応するローラ支持機構32も同様に構成されている。
【0017】
ローラ体間隔調整部34は、一対のローラ体30Aのレール12を挟む方向の間隔を調整するものであり、一対のローラ体30Aのそれぞれに対応して1つずつ設けられている。
ローラ高さ調整部36は、案内ローラ30の上下方向の位置を調整するものであり、本実施の形態では、上下方向に間隔をおいて設けられた複数の案内ローラ30の上下方向の位置を調整するものであり、一対のローラ体30Aのそれぞれに対応して1つずつ設けられている。
制御部38は、ローラ体間隔調整部34およびローラ高さ調整部36の制御を行なうものである。
【0018】
以下、ローラ支持機構32について具体的に説明する。
図9図10図11に示すように、ローラ支持機構32は、取り付けベース3202を備えている。
取り付けベース3202は、矩形板状を呈し、その厚さ方向の一方に位置する外面3202Aが筐体28の一対の側面部2804のうち建物10から離れた側の側面部2804の内面に重ね合わされて取着され、厚さ方向の他方に位置する内面3202Bが建物10の周面に対向している。
【0019】
図9図10図11に示すように、ローラ高さ調整部36は、第1テーブル3602と、第1ステージ3604と、第1送りねじ3606と、第1モータ3608とを備えている。
第1テーブル3602は、取り付けベース3202の内面3202Bに重ね合わせて取着されており、第1テーブル3602の取り付けベース3202と反対側に位置する内面には、上下方向に延在する第1ガイド溝(不図示)が形成されている。
第1ステージ3604は、第1テーブル3602の第1ガイド溝に案内される第1ガイドレール(不図示)を備え、第1テーブル3602の内面に重ね合わせて配置され、第1ガイドレールが第1ガイド溝に案内されることで上下方向に移動可能に設けられている。
第1ステージ3604には、第1ガイドレールと平行して上下方向に延在する第1雌ねじ(不図示)が形成されている。
第1送りねじ3606は、第1雌ねじに螺合している。
第1モータ3608は、取り付けベース3202の内面3202Bに取着され、その駆動軸が第1送りねじ3606の端部に結合され、第1送りねじ3606を正逆方向に回転させ、これにより第1ステージ3604を上下方向に移動させる。
【0020】
図9図10図11に示すように、ローラ体間隔調整部34は、ブラケット3402と、第2テーブル3404と、第2ステージ3406と、第2送りねじ3408と、第2モータ3410とを備えている。
図11に示すように、ブラケット3402は、第1ステージ3604が建物10の周面に対向する内面に重ね合わせて取着された取り付け部3402Aと、取り付け部3402Aの下端から建物10の周面に向かって突設され水平面と平行する支持部3402Bとを備えている。
第2テーブル3404は、支持部3402Bの上面に重ね合わせて取着され、ブラケット3402と反対側に位置する上面には、一対のローラ体30Aが離間接近する方向(水平方向)に延在する第2ガイド溝3404Aが形成されている。
第2ステージ3406は、第2テーブル3404の第2ガイド溝3404Aに案内される第2ガイドレール3406Aを備え、第2テーブル3404の上面に重ね合わせて配置され、第2ガイドレール3406Aが第2ガイド溝3404A3404Aに案内されることで一対のローラ体30Aが離間接近する方向に移動可能に設けられている。
第2ステージ3406には、第2ガイドレール3406Aと平行して一対のローラ体30Aが離間接近する方向(水平方向)に延在する第2雌ねじ3406Bが形成されている。
第2送りねじ3408は、第2雌ねじ3406Bに螺合している。
第2モータ3410は、ブラケット3402の支持部3402Bの上面に取着され、その駆動軸が第2送りねじ3408の端部に結合され、第2送りねじ3408を正逆方向に回転させ、これにより第2ステージ3406を一対のローラ体30Aが離間接近する方向(水平方向)に移動させる。
【0021】
図9図10図11に示すように、第2テーブル3404と反対側に位置する第2ステージ3406の上面にローラ体30Aの支軸3002を支持する支軸支持部40が設けられている。
支軸支持部40は、本体部42と、筒部44とを備えている。
図10に示すように、本体部42には、ローラ体30Aの支軸3002が挿通する支持孔4202が貫通形成されている。
筒部44は、本体部42のうち建物10の周面に対向する箇所から建物10側に向かって突設され、支持孔4202と同心状の孔4402を有し、筒部44はその半径方向に貫通するねじ孔(不図示)が形成されている。
図10図11に示すように、支軸3002は、その一端が筒部44の孔4402から挿通され支軸3002の雄ねじ3002Aが本体部42から突出した状態で、筒部44のねじ孔に螺合したねじBの先端が支軸3002の外周面を押圧すると共に、本体部42から突出した支軸3002の雄ねじ3002AにナットNが締結されることで、軸方向に移動不能にかつ回転不能に支軸支持部40に取り付けられている。
【0022】
図9に示すように、制御部38は、手動操作されるスイッチ39の操作に基づいて、第1モータ3608および第2モータ3410の回転方向および回転量を制御するものである。
制御部38によって第1モータ3608の回転方向および回転量が制御されることによりレール12を挟む一対のローラ体30Aが上下方向に移動される。
また、制御部38によって第2モータ3410の回転方向および回転量が制御されることによりレール12を挟む一対のローラ体30Aがレール12を挟む方向で移動される。
なお、制御部38は、各ローラ支持機構32毎に1台ずつ設けられていてもよいし、1台の制御部38で全てのローラ支持機構32を制御してもよい。
なお、ローラ体間隔調整部34は、一対のローラ体30Aのレール12を挟む方向の間隔を調整できればよく、実施の形態に限定されず、従来公知の様々な機構が使用可能である。また、ローラ高さ調整部36は、案内ローラ30の上下方向の位置を調整するものであればよく、実施の形態に限定されず、従来公知の様々な機構が使用可能である
【0023】
次に建物改修用昇降装置14の使用方法について説明する。
図1図2図3に示すように、建物10の外周の地盤G上で昇降台16を組み立てる。
次いで、不図示のクレーンなどの重機を用いて昇降台16を吊り上げて、昇降台16を地盤Gから所定距離離れた上方の箇所に水平面と平行させた状態で位置させると共に、複数の案内ロッド22を地盤G上に設置すると共に、各案内ロッド22を昇降ジャッキ24に結合させる。
この際、設置された案内ロッド22を、昇降ジャッキ24から昇降台16の底壁1602の貫通孔1608を挿通させ、案内ロッド22の中間部をローラ支持機構32を挿通した状態とする。
そして、各案内ロッド22の軸方向に等間隔をおいた複数箇所を、ステー26を介して建物10の外周に脱着可能に取り付ける。
また、制御部38によりローラ体間隔調整部34を制御して、一対のローラ体30Aの溝3006をレール12のフランジ1202の両側に係合させると共に、制御部38によりローラ高さ調整部36を制御して、上方に設けられた一対のローラ体30Aと、下方に設けられた一対のローラ体30Aとの上下方向の間隔を適切な値に調整する。
これにより、昇降台16は、複数の案内ローラ30を介してレール12に係合されるため、水平方向への移動が不能な状態となり、強風や地震などによる横振れが抑制される。
【0024】
案内ロッド22に昇降ジャッキ24が結合されることで、昇降台16が各昇降ジャッキ24と各案内ロッド22を介して地盤G上に支持されたならば、重機を昇降台16から切り離し、昇降ジャッキ24の動作により昇降台16が昇降可能な状態とする。
そして、昇降ジャッキ24により昇降台16を作業に必要な高さ位置に上昇あるいは下降させたのち昇降ジャッキ24を停止して昇降台16の高さ位置を決定する。
この際、昇降台16の上昇あるいは下降に伴い、各案内ローラ30はレール12上を転動するため、昇降台16は円滑に上昇あるいは下降する。
昇降台16の高さ位置が決定された昇降台16に搭乗した作業員は、その昇降台16の高さ位置で作業可能な建物10の上下方向における一定範囲にわたって改修工事の作業を行なう。
【0025】
作業員による建物10の一定範囲の作業が終了したならば、次の一定範囲の作業が可能となるように、昇降ジャッキ24の伸長動作により昇降台16を上昇させたのち、昇降台16の高さ位置を決定し、作業員によって改修工事の作業を行なう。
【0026】
また、昇降台16をさらに上昇させるために案内ロッド22を継ぎ足す必要があれば、図4図5に示すように、各案内ロッド22に追加の案内ロッド22を継ぎ足し、また、継ぎ足した案内ロッド22を、ステー26を介して建物10の外周に脱着可能に取り付ける。
【0027】
このような昇降台16の上昇、案内ロッド22の継ぎ足しを繰り返して行ないながら、建物10の下部から上部に向かって昇降台16を上昇させつつ、建物10の改修工事の作業を行っていく。
【0028】
やがて昇降台16が建物10の最上部に相当する高さ位置に到達する。
この際、ローラ高さ調整部36により上下に離間した案内ローラ30の間隔を確保しつつ、各案内ローラ30の高さ位置を下げることで昇降台16をより上方に位置させることができる。
したがって、昇降台16をより高い位置に位置させることで昇降台16に搭乗している作業員による建物10の上下方向における作業範囲を確保することができる。
【0029】
建物10の最上部に相当する高さ位置での改修工事の作業が終了したならば、昇降ジャッキ24により昇降台16を下降させつつ、継ぎ足した案内ロッド22を1本ずつ取り外し、昇降台16上に回収する。
また、取り外す案内ロッド22と建物10とをつないでいたステー26を1つずつ取り外して、昇降台16上に回収する。
このようにして昇降台16を下降させつつ、案内ロッド22、ステー26の回収を行っていく。
【0030】
昇降台16が最も低い位置、例えば、地盤G上まで下降し、全ての案内ロッド22、全てのステー26を回収したならば、それら案内ロッド22、ステー26を昇降台16から運び出し、昇降台16を撤去し、改修工事が完了となる。
なお、本実施の形態では、昇降台16を建物10の上方に向けて移動させつつ建物10の改修工事を行なう場合について説明したが、建物10の解体工事を行なう場合は、昇降台16を建物10の最上部に相当する高さまで上昇させておき、作業の進行と共に昇降台16を下降させるようにすればよい。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態の建物改修用昇降装置14によれば、建物10の周面の周方向に間隔をおいた複数箇所に上下方向に延在するガラス窓清掃用のゴンドラの振れ止め用の各レール12に水平方向に移動不能で上下方向に転動する案内ローラ30を、昇降台16に設けた。
したがって、強風や地震などが発生した場合であっても、ガラス窓清掃用のゴンドラの振れ止め用のレール12を利用することで、簡単で安価な構成により昇降台16の横振れを確実に防止して昇降台16を安定した状態に維持できるため、昇降台16に搭乗した作業員による作業性の向上を図る上で有利となる。
また、建物10の周面を囲むように足場を構築して建物10の改修工事や解体工事を行なう場合に比較して、手間がかかる足場の設置作業と撤去作業が不要となるため、工期の短縮、工事のコストを低減する上で有利となる。
【0032】
また、本実施の形態では、案内ローラ30が、レール12を建物10の周面の周方向から挟むように設けられた一対のローラ対30Aで構成されているので、昇降台16の横振れをより確実に防止して昇降台16を安定した状態に維持でき、作業性の向上を図る上でより有利となる。
また、本実施の形態では、案内ローラ30は、建物10の周面の周方向に間隔をおいた少なくとも2箇所のレール12に設けられているので、案内ローラ30が1箇所のレール12に設けられている場合に比較して、昇降台16の横振れをより確実に防止して昇降台16を安定した状態に維持でき、作業性の向上を図る上でより有利となる。
【0033】
また、本実施の形態では、建物10は平面視矩形状を呈し、昇降台16は、建物10の周面全周を囲む平面視矩形枠状を呈し、案内ローラ30は、建物10の4つの側面1002,1004毎に設けられているので、4つの側面1002,1004に設けられた案内ローラ30によって昇降台16の横振れをより確実に防止して昇降台16を安定した状態に維持でき、作業性の向上を図る上でより有利となる。
なお、ローラ体間隔調整部34を省略してもよいが、本実施の形態のように、レール12を挟む一対のローラ体30Aのレール12を挟む方向の間隔を調整するローラ体間隔調整部34を設けると、様々な寸法のレール12に対応して確実に案内ローラ30でレール12を係合できるので、昇降台16の横振れをより確実に防止して昇降台16を安定した状態に維持でき、作業性の向上を図る上でより有利となる。
【0034】
また、案内ローラ30を上下方向に複数設けずに、1つの案内ローラ30を設けてもよいが、本実施の形態のように、案内ローラ30を上下方向に間隔をおいて複数設けると、上下に間隔をおいた複数の案内ローラ30でレール12を係合することで、昇降台16の横振れをより確実に防止して昇降台16を安定した状態に維持でき、作業性の向上を図る上でより有利となる。
また、ローラ高さ調整部36を省略してもよいが、本実施の形態のように、上下方向に間隔をおいて設けられた複数の案内ローラ30の上下方向の位置を調整するローラ高さ調整部36を設けると、昇降台16を建物10の最上部に位置させる際に、案内ローラ30の上下方向の位置を調整することで昇降台16をより高い位置に位置させることができ、建物10の高い箇所での作業性の向上を図る上で有利となる。
また、本実施の形態では、昇降台16を用いてなされる作業は、建物10の外壁の損傷部分の補修作業、または、外壁の塗装作業、または、建物10の解体作業であるため、昇降台16に搭乗した作業員による建物10の改修工事や解体工事を効率よく行なう上で有利となる。
【0035】
なお、本実施の形態では、案内ローラ30がレール12を挟む一対のローラ体30Aで構成されている場合について説明した。
しかしながら、レールの内部に形成された溝部内に単一の案内ローラが挿入され、溝部の内面で案内ローラが案内されるものであっても、ローラ高さ調整部36を設けることができることは無論であり、その場合にも本実施の形態と同様の効果が奏される。
【0036】
なお、本実施の形態では、建物改修用昇降装置14を用いて建物10の改修工事を行なう場合について説明したが、建物改修用昇降装置14を用いて改修工事に先立って建物10の劣化や損傷の診断を行ったり、あるいは、建物改修用昇降装置14を用いて建物10の解体工事を行なうなど、建物改修用昇降装置14は従来公知の様々な用途で使用可能であることは無論である。
【符号の説明】
【0037】
10 建物
1002 長辺側側面(周面)
1004 短辺側側面(周面)
12 レール
1202 フランジ
1204 ウェブ
14 建物改修用昇降装置
16 昇降台
1602 底壁
1604 側壁
1606 開口部
1608 貫通孔
18 昇降部
20 振れ止め部
22 案内ロッド
24 昇降ジャッキ
26 ステー
28 筐体
2802 底板
2804 一対の端面板
2806 一対の側面板
2808 上板
2810 開口部
30 案内ローラ
30A ローラ体
3002 支軸
3002A 雄ねじ
3004 ローラ本体
3006 溝
32 ローラ支持機構
3202 取り付けベース
3202A 外面
3202B 内面
34 ローラ体間隔調整部
3402 ブラケット
3402A取り付け部
3402B 支持部
3404 第2テーブル
3404A 第2ガイド溝
3406 第2ステージ
3406A 第2ガイドレール
3406B 第2雌ねじ
3408 第2送りねじ
3410 第2モータ
36 ローラ高さ調整部
3602 第1テーブル
3604 第1ステージ
3606 第1送りねじ
3608 第1モータ
38 制御部
40 支軸支持部
42 本体部
4202 支持孔
44 筒部
4402 孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11