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特開2022-101288離型フィルム及び電子部品装置の製造方法
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  • 特開-離型フィルム及び電子部品装置の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101288
(43)【公開日】2022-07-06
(54)【発明の名称】離型フィルム及び電子部品装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20220629BHJP
【FI】
B32B27/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215778
(22)【出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬里 泰洋
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK25B
4F100AK27C
4F100AK42A
4F100AK53B
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA02B
4F100CA16C
4F100CA22B
4F100DE01C
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EJ38A
4F100EJ42C
4F100EJ55A
4F100EJ91
4F100GB41
4F100JG01B
4F100JG04
4F100JL14C
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】帯電防止性能に優れる離型フィルムの提供。
【解決手段】基材層と、導電層と、離型層とをこの順に有し、前記離型層はポリアクリロニトリル粒子を含む、離型フィルム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、導電層と、離型層とをこの順に有し、前記離型層はポリアクリロニトリル粒子を含む、離型フィルム。
【請求項2】
前記ポリアクリロニトリル粒子の平均粒子径Aと離型層の厚みBとの比(A/B)が0.7より大きい、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
前記ポリアクリロニトリル粒子の含有率は前記離型層全体の10質量%以上である、請求項1又は請求項2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記離型層は粘着剤を含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の離型フィルム。
【請求項5】
物体の表面の少なくとも一部を一時的に保護するための、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の離型フィルム。
【請求項6】
露出成形用である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の離型フィルム。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の離型フィルムが電子部品の表面の少なくとも一部に接触した状態で電子部品の周囲を封止する工程と、前記離型フィルムを前記電子部品から剥離する工程と、を備える電子部品装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、離型フィルム及び半導体パッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器、特に携帯電話の薄型化が進むにつれて、半導体素子等の電子部品にも更なる薄型化が求められている。また、放熱性の向上の観点からも、電子部品の全体を封止樹脂で覆うオーバーモールド成形(Over Molding)に代えて、電子部品の表面の一部を露出させる露出成形(Exposed Die Molding)が採用されるケースが増えつつある。
【0003】
電子部品の一部が露出した状態となるように電子部品を封止する際は、電子部品の露出部への封止材の漏れ(フラッシュバリ)を防ぐ必要がある。そこで、電子部品の露出させる部分に離型性を有するフィルム(離型フィルム)を貼り付けた状態で封止を行い、その後に離型フィルムを剥離して電子部品の表面を露出させることが行われている。
このような離型フィルムとして、例えば、特許文献1には延伸ポリエステル樹脂フィルムからなる基材フィルムの少なくとも片面にフッ素樹脂からなるフィルムが積層されてなる積層フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-49850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
離型フィルムが帯電しやすい材質からなる場合、離型フィルムを電子部品に接触させる際又は離型フィルムを電子部品から剥離する際に放電が起こり、電子部品の静電破壊が発生するおそれがある。近年、半導体素子の高集積化に伴ってプロセスノードの微細化が進み、電子部品の静電破壊が発生するおそれが高まりつつある。
【0006】
上記事情にかんがみ、本開示の一態様は、帯電防止性能に優れる離型フィルムを提供することを課題とする。本開示の別の一態様は、この離型フィルムを用いた半導体パッケージの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>基材層と、導電層と、離型層とをこの順に有し、前記離型層はポリアクリロニトリル粒子を含む、離型フィルム。
<2>前記ポリアクリロニトリル粒子の平均粒子径Aと離型層の厚みBとの比(A/B)が0.7より大きい、<1>に記載の離型フィルム。
<3>前記ポリアクリロニトリル粒子の含有率は前記離型層全体の10質量%以上である、<1>又は<2>に記載の離型フィルム。
<4>前記離型層は粘着剤を含む、<1>~<3>のいずれか1項に記載の離型フィルム。
<5>物体の表面の少なくとも一部を一時的に保護するための、<1>~<4>のいずれか1項に記載の離型フィルム。
<6>露出成形用である、<1>~<5>のいずれか1項に記載の離型フィルム。
<7><1>~<6>のいずれか1項に記載の離型フィルムが電子部品の表面の少なくとも一部に接触した状態で電子部品の周囲を封止する工程と、前記離型フィルムを前記電子部品から剥離する工程と、を備える電子部品装置の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、帯電防止性能に優れる離型フィルムが提供される。本開示の別の一態様によれば、この離型フィルムを用いた電子部品装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】離型フィルムの構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0011】
本明細書において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本明細書において組成物中の各成分の粒子径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本明細書において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本明細書において離型フィルム又は離型フィルムを構成する各層の厚みは、公知の手法で測定できる。例えば、ダイヤルゲージ等を用いて測定してもよく、離型フィルムの断面画像から測定してもよい。あるいは、層を構成する材料を溶剤等を用いて除去し、除去前後の質量、材料の密度、層の面積等から算出してもよい。層の厚みが一定でない場合は、任意の5点で測定した値の算術平均値を層の厚みとする。
本明細書において「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルのいずれか一方又は両方を意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートのいずれか一方又は両方を意味する。
【0012】
<離型フィルム>
本開示の離型フィルムは、基材層と、導電層と、離型層とをこの順に有し、前記離型層はポリアクリロニトリル粒子を含む、離型フィルムである。
【0013】
上記構成の離型フィルムは、優れた帯電防止性能を示す。具体的には、基材層と離型層との間に導電層を有することに加え、離型層がポリアクリロニトリル粒子を含むことで、優れた帯電防止性能を示す。
離型層がポリアクリロニトリル粒子を含むことで帯電防止性能が向上する理由としては、ポリアクリロニトリル粒子に含まれる窒素原子の非共有電子対によって離型層に導電性が付与されることが考えられる。
【0014】
基材層、離型層及び導電層を有する離型フィルムの構成の一例を、図1に概略的に示す。図1に示す離型フィルム40は、基材層10と、離型層20と、基材層10と離型層20との間に配置される導電層30と、を備えている。
【0015】
離型フィルムが基材層を有していることで、離型フィルムに必要な強度が付与され、かつその材質を適切に選択することで伸び率、弾性率等の物性を調整することができる。
離型フィルムが離型層を有していることで、離型フィルムを被着面から容易に剥離することができる。
離型フィルムが導電層を有していることで、離型フィルムの貼り付け又は剥離の際の放電が抑制され、電子部品の静電破壊等の発生が効果的に抑制される。
【0016】
離型フィルムの全体の厚みは特に制限されず、所望の物性(伸び率、弾性率等)に応じて設定できる。例えば、30μm~300μmであってもよく、35μm~250μmであってもよく、40μm~200μmであってもよい。
【0017】
(基材層)
基材層の材質は、特に制限されない。例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルエーテル、ポリアミドイミド、フッ素含有樹脂、熱可塑性エラストマーなどの樹脂が挙げられる。基材層に含まれる樹脂は1種のみでも2種以上であってもよい。
【0018】
フィルムの取り扱い性の観点からは、離型フィルムはある程度のコシがあることが好ましい。このため基材層はポリエステルを含むことが好ましく、ポリエチレンテレフタレートを含むことがより好ましい。
【0019】
基材層は延伸処理を施してあっても、延伸処理を施していなくてもよい。延伸処理が施されていると離型フィルムの強度に優れる傾向にあり、延伸処理が施されていないと離型フィルムの伸び性に優れる傾向にある。
【0020】
基材層の厚みは特に限定されず、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。基材層の厚みが10μm以上であると、離型シートが破れにくく、取扱い性に優れる。
基材層の厚みは300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、100μmであることがさらに好ましい。基材層の厚みが300μm以下であると、被着面への追従性(被着面の形状にあわせて変形する性質)が充分に得られる。
【0021】
基材層は、1層のみから構成されても、2層以上から構成されてもよい。2層以上から構成される基材層を得る方法としては、各層の材料を共押出法で押し出して作製する方法、2枚以上のフィルムをラミネートする方法等が挙げられる。
【0022】
離型フィルムが導電層を含む場合、基材層の導電層が設けられる側の面に、導電層に対する密着力を向上させるための処理が施されていてもよい。処理の方法としては、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理、下塗り剤(プライマ)の塗布などが挙げられる。
【0023】
必要に応じ、基材層の背面(被着面に貼り付ける側とは逆の面)に、離型フィルムのロールからの巻き出し性を調節するための背面処理剤が付与されていてもよい。背面処理剤としては、シリコーン樹脂、フッ素含有樹脂、ポリビニルアルコール、アルキル基を有する樹脂等が挙げられる。必要に応じ、これらの背面処理剤は変性処理がされてもよい。背面処理剤は、1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0024】
(離型層)
離型層は、ポリアクリロニトリル粒子を含むのであれば、その材質は特に制限されない。被着面に対する密着性の観点からは、離型層は粘着性を有することが好ましい。離型層に粘着性を付与する方法としては、離型層に粘着剤を含有させる方法が挙げられる。
【0025】
粘着剤の種類は特に制限されず、粘着性、離型性、耐熱性等を考慮して選択できる。具体的には、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤及びウレタン系粘着剤が好ましく、アクリル系粘着剤がより好ましい。離型層に含まれる粘着剤は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
【0026】
アクリル系粘着剤は、主モノマーとしてのアクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、2-エチルヘキシルアクリレート等のガラス転移温度(Tg)が低い(例えば、-20℃以下)モノマーと、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等の官能基を有するモノマーとを共重合させて得られる共重合体(以下、アクリル共重合体ともいう)であることが好ましい。上記「ガラス転移温度」は、該当するモノマーを用いて得られるホモポリマーのガラス転移温度である。
【0027】
アクリル共重合体は、架橋型アクリル共重合体であってもよい。架橋型アクリル共重合体は、アクリル共重合体の原料となるモノマーを、架橋剤を使用して架橋させることにより合成できる。架橋型アクリル共重合体の合成に使用される架橋剤としては、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物等の公知の架橋剤が挙げられる。また、アクリル系粘着剤中に緩やかに広がった網目状構造を形成するために、架橋剤は3官能、4官能等の多官能架橋剤であることがより好ましい。
【0028】
離型層に含まれるポリアクリロニトリル粒子の含有率は、離型層全体の10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。ポリアクリロニトリル粒子の含有率が離型層全体の10質量%以上であると、ポリアクリロニトリル粒子が離型層の導電パスとして充分に機能し、充分な帯電防止性能が得られる傾向にある。
離型層の凝集破壊と被着面への残渣の発生を抑制する観点からは、ポリアクリロニトリル粒子の含有率は、離型層全体の50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0029】
離型層に充分な導電性を付与する観点からは、ポリアクリロニトリル粒子の平均粒子径Aと離型層の厚みBとの比(A/B)が0.7より大きいことが好ましく、0.75以上であることがより好ましく、0.8以上であることがさらに好ましく、0.9以上であることがさらに好ましく、0.95以上であることがさらに好ましい。
ポリアクリロニトリル粒子の平均粒子径Aと離型層の厚みBとの比(A/B)が0.75以上であると、ポリアクリロニトリル粒子が導電パスとして充分に機能し、充分な帯電防止性能が得られる傾向にある。
離型層からのポリアクリロニトリル粒子の脱離を抑制する観点からは、A/Bは2.0以下であることが好ましく、1.7以下であることがより好ましい。
【0030】
離型層の厚みBは、離型フィルムの厚み方向において、ポリアクリロニトリル粒子を含有する離型層の厚みである。厚みが一定でない場合には、離型フィルムを裁断した後に得られる断面をSEMで観察し、任意に選択した5箇所の厚みの算術平均値を離型層の厚みBとする。
【0031】
また、既知の分析手法によりおおよその樹脂組成がわかる場合には、実施例に記載のように離型層をメチルエチルケトン等の溶媒を用いて除去し、除去前後の離型フィルムの質量差と、溶媒で除去した樹脂の比重と、不溶物として残存するポリアクリロニトリル粒子の体積と、から離型層の厚みBを算出することができる。
【0032】
ポリアクリロニトリル粒子の平均粒子径は、例えば、1μm~50μmの範囲内であってもよく、5μm~30μmの範囲内であってもよく、7μm~20μmの範囲内であってもよい。
【0033】
本開示において粒子の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定される体積基準の粒度分布において、小径側からの累積が50%となるときの粒子径(D50)である。
【0034】
ポリアクリロニトリル粒子の粒子形状は特に制限されず、球状であっても非球状(扁平状、不定形状等)であってもよい。
離型層に充分な量を配合する観点からは、ポリアクリロニトリル粒子は非球状であることが好ましい。例えば、ポリアクリロニトリル粒子の平均アスペクト比(長軸/短軸)は1.1以上であってもよく、1.2以上であってもよく、1.5以上であってもよい。ポリアクリロニトリル粒子の平均アスペクト比は10以下であってもよく、7以下であってもよく、5以下であってもよい。
本開示において粒子の平均アスペクト比は、任意に選択した100個の粒子のアスペクト比の算術平均値とする。
【0035】
離型フィルム中に含まれるポリアクリロニトリル粒子の平均粒子径は、次のような手順で測定することができる。離型フィルムの離型層をメチルエチルケトン等の溶媒を用いて除去し、不溶物として残存するポリアクリロニトリル粒子を用いてレーザー回折・散乱法により測定される体積基準の粒度分布において解析し、小径側からの累積が50%となるときの粒子径(D50)を平均粒子径とする。
【0036】
離型層は、ポリアクリロニトリル粒子のみを含んでも、ポリアクリロニトリル粒子と、ポリアクリロニトリル粒子以外の粒子とを含んでもよい。
【0037】
ポリアクリロニトリル粒子以外の粒子の材質は特に制限されず、樹脂等の有機物質であっても、金属、金属酸化物等の無機物質であっても、有機物質と無機物質との組み合わせであってもよい。
【0038】
離型層に含まれる粘着剤との親和性の観点からは、ポリアクリロニトリル粒子以外の粒子は樹脂粒子であることが好ましい。樹脂粒子を構成する樹脂としては、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。成形後の半導体パッケージ表面への残渣を抑制する観点からは、アクリル樹脂が好ましい。
【0039】
ポリアクリロニトリル粒子以外の粒子の平均粒子径は、特に制限されない。例えば、1μm~20μmの範囲から選択できる。
【0040】
離型層がポリアクリロニトリル粒子と、ポリアクリロニトリル粒子以外の粒子とを含む場合、離型層に充分な導電性を付与し、かつ離型層の凝集破壊を抑制する観点からは、ポリアクリロニトリル粒子が粒子全体に占める割合が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
【0041】
離型層は、必要に応じて、粘着剤及び粒子以外の成分を含んでもよい。例えば、アンカリング向上剤、架橋促進剤、着色剤等を含んでいてもよい。
【0042】
離型層の厚みは特に限定されず、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。離型層の厚みが0.1μm以上であると、電子部品に対する粘着力が充分に得られ、封止材の侵入が効果的に抑制される。
離型層の厚みは100μm以下であってもよく、50μm以下であってもよく、10μm以下であってもよい。離型層の厚みが100μm以下であると、離型層の熱硬化時の熱収縮応力が生じにくく、離型フィルムの平坦性が保持されやすい。また、離型フィルムが導電層を有している場合には、離型層表面の導電層からの距離が遠すぎずに表面抵抗率が低く維持され、電子部品の静電破壊が効果的に抑制される。
離型層の形成しやすさ(塗布性等)、粘着力の確保、帯電防止機能の確保等を総合的に考慮すると、離型層の厚みは3μm~50μmであることがさらに好ましい。
【0043】
(導電層)
導電層は、離型フィルムの導電性を高めて帯電を抑制できるものであれば、その構成は特に制限されない。例えば、帯電防止剤、導電性高分子材料、金属等の導電性材料を含む層であってもよい。
【0044】
導電層に含まれる帯電防止剤としては、第4級アンモニウム塩、ピリジウム塩、第1~3級アミノ基等のカチオン性基を有するカチオン性帯電防止剤、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基等のアニオン性基を有するアニオン系帯電防止剤、アミノ酸系、アミノ酸硫酸エステル系等の両性帯電防止剤、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性基を有するノニオン系帯電防止剤、これらの帯電防止剤を高分子量化した高分子型帯電防止剤などが挙げられる。帯電防止剤は、主剤と助剤(硬化剤等)との組み合わせであってもよい。
導電層に含まれる導電性高分子材料としては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等を骨格に有する高分子化合物が挙げられる。
金属としてはアルミニウム、銅、金、クロム、スズ等が挙げられ、入手性の観点からはアルミニウムが好ましい。
【0045】
導電層を形成する方法は、特に制限されない。例えば、基材層となるフィルムの片面に金属箔等をラミネートする方法、基材層となるフィルムの片面に導電層の材料を塗布、蒸着等により付与する方法などが挙げられる。
【0046】
導電層の厚みは、離型フィルムの帯電防止効果が充分に得られるのであれば特に限定されない。例えば、0.01μm~1μmの範囲内であってもよい。
【0047】
本開示の離型フィルムは、種々の用途に使用することができる。例えば、物体の表面の少なくとも一部を一時的に保護するために使用することができる。本開示の離型フィルムは被着面に対する追従性に優れているために、離型フィルムを貼り付けた領域の周囲に対して加工を行った場合、その影響から前記領域を有効に保護することができる。
本開示において「一時的に保護する」とは、物体の表面の少なくとも一部に離型フィルムを貼り付けてから剥離するまで間、離型フィルムが貼り付けられた部分を保護することをいう。
【0048】
離型フィルムを貼り付けた領域の周囲に対して行う加工の種類は、特に制限されない。具体的には、封止材による封止、粗化処理、塗装処理、撥水処理、帯電防止処理等が挙げられる。
離型フィルムは、露出成形に用いられるものであってもよい。
【0049】
<電子部品装置の製造方法>
本開示の電子部品装置の製造方法は、上述した離型フィルムが電子部品の表面の少なくとも一部に接触した状態で電子部品の周囲を封止する工程と、離型フィルムを電子部品から剥離する工程と、を備える電子部品装置の製造方法である。
【0050】
上述したように、本開示の離型フィルムは帯電防止性能に優れている。このため、電子部品の静電破壊の発生が効果的に抑制される。
【0051】
上記方法において使用される電子部品の種類は特に制限されない。例えば、半導体素子、コンデンサ、端子等が挙げられる。
上記方法において電子部品の周囲を封止する材料(封止材)の種類は特に制限されない。例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を含む樹脂組成物が挙げられる。
【実施例0052】
以下に、本開示の離型フィルムについて、実施例に基づき説明する。ただし、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0053】
<実施例1>
基材層として、片面にコロナ処理が施された厚さ38μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「S-38」、ユニチカ株式会社)を準備した。
基材層のコロナ処理面に、下記の帯電防止剤を混合溶剤(水/イソプロピルアルコール=1/1(質量比))で2.5質量%に希釈したものを塗布し、100℃で1分間加熱して導電層を形成した。
【0054】
離型フィルムの作製に使用した帯電防止剤は、下記の成分A(100質量部)及び成分B(25質量部)の混合物である。
【0055】
成分A:第4級アンモニウム塩を有するアクリル共重合体であるカチオン性帯電防止剤、商品名「ボンディップPA-100主剤」、コニシ株式会社
成分B:エポキシ系硬化剤、商品名「ボンディップPA-100硬化剤」、コニシ株式会社
【0056】
形成した導電層の上に、下記の離型層形成用組成物を塗布し、100℃で1分間加熱して離型層を形成し、離型フィルムを作製した。
離型フィルムの作製に使用した離型層形成用組成物は、下記の粘着剤(100質量部)と、架橋剤(10質量部)と、樹脂粒子A(25質量部)と、混合溶剤(トルエン/メチルエチルケトン=8:2(質量比))34質量部との混合物である。
【0057】
粘着剤:アクリル系粘着剤、商品名「B-3」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社、複数種のメタクリル酸エステルモノマーの混合物
架橋剤:ヘキサメチレンジイソシアネート架橋剤、商品名「コロネートH-CL」、日本ポリウレタン工業株式会社
樹脂粒子A:ポリアクリロニトリル粒子、商品名「タフチック ASF-7」、東洋紡株式会社、体積平均粒子径:7μm、不定形状
【0058】
<実施例2>
樹脂粒子Aの量を30質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、離型フィルムを作製した。
【0059】
<実施例3>
樹脂粒子Aの量を40質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、離型フィルムを作製した。
【0060】
<実施例4>
樹脂粒子Aを下記樹脂粒子Bに変更し、その量を30質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、離型フィルムを作製した。
樹脂粒子B:ポリアクリロニトリル粒子、商品名「タフチック AM」、東洋紡株式会社、体積平均粒子径:10μm、不定形状
【0061】
<実施例5>
樹脂粒子Aの量を15質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、離型フィルムを作製した。
【0062】
<比較例1>
離型層形成用組成物に樹脂粒子Aを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、離型フィルムを作製した。
【0063】
<比較例2>
離型層形成用組成物に25質量部の下記樹脂粒子Cを添加したこと以外は比較例1と同様にして、離型フィルムを作製した。
樹脂粒子C:ポリアクリル粒子、商品名「MX-1000」、綜研化学株式会社、体積平均粒子径:10μm、球状
【0064】
<比較例3>
樹脂粒子Cの量を40質量部に変更したこと以外は比較例2と同様にして、離型フィルムを作製した。
【0065】
<比較例4>
樹脂粒子Cを25質量部の下記樹脂粒子Dに変更したこと以外は比較例2と同様にして、離型フィルムを作製した。
樹脂粒子D:ポリアクリル粒子、商品名「MX-500」、綜研化学株式会社、体積平均粒子径:5μm、球状
【0066】
<比較例5>
樹脂粒子Dの量を40質量部に変更したこと以外は比較例4と同様にして、離型フィルムを作製した。
【0067】
<評価試験>
作製した離型フィルムを用いて、以下の評価試験を行った。
【0068】
<離型層厚み>
作製した離型フィルムの離型層をメチルエチルケトンを用いて除去し、除去前後の離型フィルムの質量差から離型層の厚みを算出した。結果を表1に示す。
【0069】
<糊残り>
鏡面仕上げされたSUS(ステンレス鋼)板の表面に、180℃、16MPa、5分間の条件で離型フィルムをプレスした。プレス後放置して室温(25℃)にまで冷却後、離型フィルムをSUS板から剥離した。目視でSUS板の表面を観察し、糊残りが観察されなかった場合はOKとし、糊残りが観察された場合はNGとして糊残りの状態を評価した。結果を表1に示す。
【0070】
<表面抵抗率>
絶縁抵抗計(デジタル超高抵抗/微小電流計 アドバンテスト社製)を用いて、離型フィルムの離型層側の表面抵抗率を測定した。具体的には、23±2℃、湿度50±10%RHの雰囲気内に離型フィルムを1時間放置した後、500Vの電圧を1分間印加した後の表面抵抗値(Ω)を測定し、表面抵抗率(Ω/□)を下式を用いて算出した。結果を表1に示す。
【0071】
表面抵抗率=π(D+d)/(D-d)×R
π:円周率、D:リング状電極の内径、d:リング状電極の外径、R:表面抵抗値
表面抵抗率の計算に用いたπ(D+d)/(D-d)の値は、18.84であった。
【0072】
【表1】
【0073】
表1の結果に示すように、離型層がポリアクリロニトリル粒子を含む実施例の離型フィルムは、離型層がポリアクリロニトリル粒子を含まない比較例の離型フィルムに比べて表面抵抗率が低く、帯電防止性能に優れていると判断できる。
図1