(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022101738
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】咀嚼訓練用食品組成物、オーラルフレイル対策用食品組成物及び口腔機能改善用食品組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20220630BHJP
【FI】
A23L33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020215985
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】仁神 史生
(72)【発明者】
【氏名】林 眞由
【テーマコード(参考)】
4B018
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD49
4B018MD53
4B018MD57
4B018MD67
4B018MD82
4B018ME14
4B018MF14
(57)【要約】
【課題】咀嚼を促して噛む筋肉を鍛えることができる咀嚼訓練用食品組成物を提供する。
【解決手段】咀嚼訓練用食品組成物は、飯に混ぜ合わせて用いられる。咀嚼訓練用食品組成物は、第1具材と第2具材と第3具材とを含有する。第1具材は、長軸の長さとして規定されるサイズが1cm以上であり、咀嚼時において歯を噛み合わせた際に切断される。第2具材は、咀嚼時において歯を押し付けた際に、弾け、裂け、又は割れを伴う破壊が生じる。第2具材のサイズは、第1具材のサイズ以下である。第3具材は、咀嚼時において歯を押し付けた際に歯に沿って伸びるように変形する。第3具材のサイズは、0.5cm以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飯に混ぜ合わせて用いられる咀嚼訓練用食品組成物であって、
長軸の長さとして規定されるサイズが1cm以上であり、咀嚼時において歯を噛み合わせた際に切断される第1具材と、
長軸の長さとして規定されるサイズが前記第1具材のサイズ以下であり、咀嚼時において歯を押し付けた際に、弾け、裂け、又は割れを伴う破壊が生じる第2具材と、
長軸の長さとして規定されるサイズが0.5cm以上であり、咀嚼時において歯を押し付けた際に歯に沿って伸びるように変形する第3具材と、を含有する咀嚼訓練用食品組成物。
【請求項2】
前記第1具材は、乾燥オクラ、干し芋、干し筍、茎わかめ、乾燥ごぼう、乾燥菊芋及びきくらげから選ばれる少なくとも一種であり、
前記第2具材は、アーモンド、くるみ、ピスタチオ及びアマランサスから選ばれる少なくとも一種であり、
前記第3具材は、乾燥高菜、乾燥小松菜、乾燥大根葉、かんぴょう及びメンマから選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の咀嚼訓練用食品組成物。
【請求項3】
前記第1具材の前記サイズは、1~2.5cmであり、
前記第2具材の前記サイズは、0.1~1cmであり、
前記第3具材の前記サイズは、0.5~1.5cmである請求項1又は2に記載の咀嚼訓練用食品組成物。
【請求項4】
飯に混ぜ合わせて用いられるオーラルフレイル対策用食品組成物であって、
長軸の長さとして規定されるサイズが1cm以上であり、咀嚼時において歯を噛み合わせた際に切断される第1具材と、
長軸の長さとして規定されるサイズが前記第1具材のサイズ以下であり、咀嚼時において歯を押し付けた際に、弾け、裂け、又は割れを伴う破壊が生じる第2具材と、
長軸の長さとして規定されるサイズが0.5cm以上であり、咀嚼時において歯を押し付けた際に歯に沿って伸びるように変形する第3具材と、を含有するオーラルフレイル対策用食品組成物。
【請求項5】
飯に混ぜ合わせて用いられる口腔機能改善用食品組成物であって、
長軸の長さとして規定されるサイズが1cm以上であり、咀嚼時において歯を噛み合わせた際に切断される第1具材と、
長軸の長さとして規定されるサイズが前記第1具材のサイズ以下であり、咀嚼時において歯を押し付けた際に、弾け、裂け、又は割れを伴う破壊が生じる第2具材と、
長軸の長さとして規定されるサイズが0.5cm以上であり、咀嚼時において歯を押し付けた際に歯に沿って伸びるように変形する第3具材と、を含有する口腔機能改善用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、咀嚼訓練用食品組成物、オーラルフレイル対策用食品組成物及び口腔機能改善用食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1に開示されているように、高齢者における口腔機能の衰えのうち自然な衰えとは異なるオーラルフレイルに警鐘が鳴らされている。オーラルフレイルは、非特許文献1及び非特許文献2に開示されているような口腔機能低下症に進行するおそれがある。さらに、オーラルフレイルは、全身の機能の衰えにつながるおそれもある。口腔機能のうち特に咀嚼力の低下は、口腔機能全体の低下につながりやすい。オーラルフレイル該当者は、オーラルフレイルの対策を早期に施すことによって、健康な状態への回復が可能である。
【0003】
非特許文献3及び非特許文献4に開示されているように、小児の口腔機能発達不全症が知られている。口腔機能発達不全症と診断された患者は、口腔機能の発達が遅れている状態、又は口腔機能を正常に獲得できていない状態にある。
【0004】
オーラルフレイル又は口腔機能発達不全症を解消する方法の一つとして、咀嚼の訓練を行うことが挙げられる。咀嚼の訓練によって噛むために必要な筋肉を鍛えることができる。例えば噛み応えのある食品によって咀嚼を促すことで、噛むために必要な筋肉を鍛えることができる。なお、オーラルフレイルの非該当者であっても当該筋肉を鍛えることは、オーラルフレイルの予防につながる。
【0005】
噛み応えのある食品の例としては、例えば、乾燥具材を含む食品がある。特許文献1には、乾燥具材を含む食品用トッピング材が開示されている。食品用トッピング材を添加した食品には、乾燥具材を由来とする食感が付加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】飯島 勝矢、外9名、“歯科診療所におけるオーラルフレイル対応マニュアル2019年版”、[online]、公益社団法人日本歯科医師会、[令和2年12月14日検索]、インターネット<URL:https://www.jda.or.jp/oral_flail/2019/>
【非特許文献2】日本歯科医学会、“口腔機能低下症に関する基本的な考え方(令和2年3月)”、[online]、令和2年3月30日、日本歯科医学会、[令和2年12月14日検索]、インターネット<URL:https://www.jads.jp/basic/pdf/document-200401-2.pdf>
【非特許文献3】浜野 美幸、“地域の開業医における口腔機能発達不全症の対応”、[online]、令和1年11月30日、公益社団法人日本小児保健協会、[令和2年12月14日検索]、インターネット<URL:https://www.jschild.med-all.net/Contents/private/cx3child/2019/007806/014/0539-0543.pdf>
【非特許文献4】日本歯科医学会、“口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方(令和2年3月)”、[online]、令和2年7月22日、日本歯科医学会、[令和2年12月14日検索]、インターネット<URL:https://www.jads.jp/basic/pdf/document-200722-3.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
乾燥具材を由来とする食感は、食品の咀嚼を継続していくなかで持続しやすいという特徴がある。一方で、同じ食感が長く続くために食品を口に含んでからの印象が単調になるという問題がある。
【0009】
食品の食感が長く続くと、食品を食する者に対して咀嚼を促すことができる。しかし、食品の食感が単調であると、咀嚼回数が少ない時点で食品をのみ込んでしまったり、食品を咀嚼する時間が短くなったりするおそれがある。すなわち、咀嚼を十分に促すことができない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための咀嚼訓練用食品組成物は、飯に混ぜ合わせて用いられる咀嚼訓練用食品組成物であって、長軸の長さとして規定されるサイズが1cm以上であり、咀嚼時において歯を噛み合わせた際に切断される第1具材と、長軸の長さとして規定されるサイズが前記第1具材のサイズ以下であり、咀嚼時において歯を押し付けた際に、弾け、裂け、又は割れを伴う破壊が生じる第2具材と、長軸の長さとして規定されるサイズが0.5cm以上であり、咀嚼時において歯を押し付けた際に歯に沿って伸びるように変形する第3具材と、を含有することをその要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、第3具材によって持続する噛み応えを得ることができる。さらに、第1具材の食感及び第2具材の食感が加わることによって、咀嚼訓練用食品組成物を混ぜ合わせた食品の食感が単調になることを抑制できる。これによって、噛む動作を促すことができる。噛む動作を促すことによって、噛むために必要な筋肉を鍛えることができる。すなわち、咀嚼訓練を行うことができる。
【0012】
上記咀嚼訓練用食品組成物の一例では、前記第1具材は、乾燥オクラ、干し芋、干し筍、茎わかめ、乾燥ごぼう、乾燥菊芋及びきくらげから選ばれる少なくとも一種であり、前記第2具材は、アーモンド、くるみ、ピスタチオ及びアマランサスから選ばれる少なくとも一種であり、前記第3具材は、乾燥高菜、乾燥小松菜、乾燥大根葉、かんぴょう及びメンマから選ばれる少なくとも一種である。
【0013】
上記構成によれば、第1具材によって、食品の咀嚼を始めたときの第一印象となる食感が得られる。第2具材によって、アクセントとなる食感が得られる。第3具材によって、咀嚼を長く続けても持続する噛み応えが得られる。
【0014】
上記咀嚼訓練用食品組成物の一例では、前記第1具材の前記サイズは、1~2.5cmであり、前記第2具材の前記サイズは、0.1~1cmであり、前記第3具材の前記サイズは、0.5~1.5cmである。
【0015】
上記課題を解決するためのオーラルフレイル対策用食品組成物は、飯に混ぜ合わせて用いられるオーラルフレイル対策用食品組成物であって、長軸の長さとして規定されるサイズが1cm以上であり、咀嚼時において歯を噛み合わせた際に切断される第1具材と、長軸の長さとして規定されるサイズが前記第1具材のサイズ以下であり、咀嚼時において歯を押し付けた際に、弾け、裂け、又は割れを伴う破壊が生じる第2具材と、長軸の長さとして規定されるサイズが0.5cm以上であり、咀嚼時において歯を押し付けた際に歯に沿って伸びるように変形する第3具材と、を含有することをその要旨とする。
【0016】
上記構成によれば、噛む動作を促すことによって、噛むために必要な筋肉を鍛えることができる。すなわち、オーラルフレイル対策を行うことができる。
上記課題を解決するための口腔機能改善用食品組成物は、飯に混ぜ合わせて用いられる口腔機能改善用食品組成物であって、長軸の長さとして規定されるサイズが1cm以上であり、咀嚼時において歯を噛み合わせた際に切断される第1具材と、長軸の長さとして規定されるサイズが前記第1具材のサイズ以下であり、咀嚼時において歯を押し付けた際に、弾け、裂け、又は割れを伴う破壊が生じる第2具材と、長軸の長さとして規定されるサイズが0.5cm以上であり、咀嚼時において歯を押し付けた際に歯に沿って伸びるように変形する第3具材と、を含有することをその要旨とする。
【0017】
上記構成によれば、噛む動作を促すことによって、噛むために必要な筋肉を鍛えることができる。すなわち、口腔機能を改善することができる。
【発明の効果】
【0018】
本書に開示する咀嚼訓練用食品組成物、オーラルフレイル対策用食品組成物及び口腔機能改善用食品組成物によれば、食品を咀嚼する楽しさを与えることによって、当該食品を食する者に十分な咀嚼を促すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態である食品組成物を説明する。
本実施形態の食品組成物は、穀物を炊いた飯に混ぜ合わせて用いられる。食品組成物は、例えば、飯にふりかけた後に、混ぜ合わせてから食される。上記飯としては、例えば、米飯、炊き込みご飯、雑穀飯、麦飯が挙げられる。米飯としては、白米を炊いた白飯、玄米を炊いた玄米飯が挙げられる。飯は、白米と麦とを混ぜて炊いたもの等も含む。以下では、飯に食品組成物を混ぜ合わせた食品のことを「混ぜご飯」という。また、混ぜご飯を食する行動をとる者のことを「食事者」という。
【0020】
食品組成物は、種類の異なる第1具材、第2具材、及び第3具材を含有する。第1~第3具材は、混ぜご飯を食した食事者に対して、混ぜご飯を口に含み咀嚼してのみ込むまでの期間において印象を与える具材である。第1~第3具材の各具材は、それぞれ異なる印象を食事者に与える。口に含んだ混ぜご飯の咀嚼を開始してから、混ぜご飯をのみ込む動作が行われるまでの期間を一回の咀嚼期間とする。以下、食品組成物に含有される各具材について説明する。
【0021】
(第1具材)
第1具材は、咀嚼時において歯を噛み合わせた際に切断される具材である。第1具材は、咀嚼期間の初期、特に噛み始めの1~2噛み目において、噛んだ際の食感又は味に基づく強い第一印象を食事者に与え、咀嚼期間の中期以降では食事者に与える印象が弱まるという特徴を持つ。第1具材は、粉砕されることによって早期に食感が失われやすいという特徴も持つ。
【0022】
第1具材の食材としては、例えば、乾燥野菜、蓮根、茎わかめ、きくらげ、海苔、あおさ、こんにゃく、チーズ、ハム、ベーコンが挙げられる。乾燥野菜の具体例としては、乾燥オクラ、干し芋、干し筍、乾燥ごぼう、乾燥菊芋が挙げられる。食品組成物に含有される第1具材は、上述した具体例の一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
第1具材のサイズは、1cm以上が好ましい。第1具材のサイズは、例えば、3cm以下であり、好ましくは2.5cm以下である。なお、本書に記載する具材のサイズは、具材における長軸の長さ、即ち、具材の表面上の2点間を結ぶ線分の長さの最大値を表す。
【0024】
第1具材のサイズは、例えば、切断加工を行うことによって調整できる。第1具材の切断方法は特に限定されるものではない。第1具材の切断方法としては、さいの目切り、ザク切り、短冊切り、乱切り、輪切り等、食材の切断方法として公知の方法を適用できる。なお、採取された食材の大きさが上記サイズの範囲内であれば、切断加工等の加工を行わなくてもよい場合もある。
【0025】
第1具材の形状は特に限定されるものではない。第1具材の形状としては、例えば、角柱形状、円柱形状、不定形状が挙げられる。また、採取された食材の大きさが上記サイズの範囲内であれば、第1具材の形状は、採取された食材そのままの形状であってもよい。
【0026】
食品組成物における第1具材の含有量は、例えば、食品組成物100質量%に対して、10~60質量%であり、15~50質量%であることが好ましい。
また、食品組成物における第1具材の含有量は、例えば、当該食品組成物が混ぜ合わされる飯100質量部に対して、1~15質量部であり、3~12質量部であることが好ましい。第1具材の含有量は、第1具材による所望の食感を混ぜご飯を咀嚼することによって得られるように調整するとよい。
【0027】
(第2具材)
第2具材は、咀嚼時において第2具材に歯を押し付けた際には、弾け、裂け、又は割れを伴う破壊が生じる具材である。第2具材は、咀嚼期間の初期において、歯に時々当たる特徴的な食感を食事者に与える。この特徴的な食感によって、第2具材は、咀嚼のアクセントとなる特徴を持つ。なお、第2具材を噛んだ際の印象は、第1具材を噛み始めた際の印象よりも弱い。一方で、咀嚼期間の中期以降でも印象が残りやすい。
【0028】
第2具材の食材としては、例えば、ナッツ類、シード類、穀類のうちプチプチとした食感を得られる種類が挙げられる。ナッツ類の具体例としては、アーモンド、くるみ、ピスタチオが挙げられる。穀類のうちプチプチとした食感を得られる種類の具体例としては、キヌア、アマランサスが挙げられる。食品組成物に含有される第2具材は、上述した具体例の一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
第2具材のサイズは、第1具材のサイズ以下にされている。第2具材のサイズは、例えば、0.1cm以上であり、好ましくは0.5cm以上である。第2具材のサイズは、例えば、1cm以下が好ましい。第2具材のサイズは、例えば、米粒程度の大きさである。
【0030】
第2具材のサイズは、例えば、破砕加工を行うことによって調整できる。第2具材の加工方法は、特に限定されるものではなく、切断加工でもよい。なお、採取された食材の大きさが上記サイズの範囲内であれば、破砕加工等の加工を行わなくてよい場合もある。
【0031】
第2具材の形状は特に限定されるものではない。第2具材の形状としては、例えば、破砕加工によって得られる小さい欠片、粒状が挙げられる。また、採取された食材の大きさが上記サイズの範囲内であれば、第2具材の形状は、採取された食材そのままの形状であってもよい。
【0032】
食品組成物における第2具材の含有量は、例えば、食品組成物100質量%に対して、10~50質量%であり、20~40質量%であることが好ましい。また、食品組成物における第2具材に対する第1具材の質量比(第1具材/第2具材)は、例えば、0.2~6であり、好ましくは0.5~2.1である。
【0033】
また、食品組成物における第2具材の含有量は、例えば、当該食品組成物が混ぜ合わされる飯100質量部に対して、3~10質量部であり、5~8質量部であることが好ましい。第2具材の含有量は、第2具材による所望の食感を混ぜご飯を咀嚼することによって得られるように調整するとよい。
【0034】
(第3具材)
第3具材は、咀嚼時において第3具材に歯を押し付けた際に歯に沿って伸びるように変形する具材である。第3具材は、咀嚼期間において噛み応えが継続する特徴を持つ。第3具材を噛んだ際の印象は、第1具材又は第2具材を噛んだ際の印象よりも弱い。
【0035】
第3具材の食材としては、例えば、乾燥させた葉物、かんぴょう、メンマ、たくあん、切り干し大根、ゆで干し大根、凍りこんにゃく、きのこ、穀類のうち弾力のある食感を得られる種類が挙げられる。乾燥させた葉物の具体例としては、乾燥高菜、乾燥小松菜、乾燥ほうれん草、乾燥大根葉、乾燥白菜が挙げられる。きのこの具体例としては、椎茸、しめじ、えのき、なめ茸、エリンギが挙げられる。穀類のうち弾力のある食感を得られる種類の具体例としては、たかきびが挙げられる。食品組成物に含有される第3具材は、上述した具体例の一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
第3具材のサイズは、0.5cm以上が好ましい。第3具材のサイズは、例えば、3cm以下であり、好ましくは1.5cm以下である。なお、乾燥させた葉物及びかんぴょう等の乾燥具材に関しては、水戻し後の大きさが上記サイズとなるように調整されている。
【0037】
第3具材のサイズは、例えば、切断加工を行うことによって調整できる。第3具材の切断方法は特に限定されるものではなく、さいの目切り、ザク切り、短冊切り、乱切り、輪切り等の公知の食材の切断方法を適用できる。なお、採取された食材の大きさが上記サイズの範囲内であれば、切断加工等の加工を行わなくてよい場合もある。
【0038】
第3具材の形状は特に限定されるものではない。第3具材の形状としては、例えば、角柱形状、円柱形状、不定形状が挙げられる。また、採取された食材の大きさが上記サイズの範囲内であれば、第3具材の形状は、採取された食材そのままの形状であってもよい。
【0039】
第3具材として乾燥具材を用いる場合には、水戻しをすることなく飯に混ぜ合わせる構成を採用するとよい。乾燥具材の水戻しを飯の水分によって行うことで、乾燥具材の風味及び味を感じやすくすることができる。
【0040】
食品組成物における第3具材の含有量は、例えば、食品組成物100質量%に対して、20~70質量%であり、30~60質量%であることが好ましい。また、食品組成物における第3具材に対する第1具材の質量比(第1具材/第3具材)は、例えば、0.14~3であり、好ましくは0.4~1.4である。また、食品組成物における第3具材に対する第2具材の質量比(第2具材/第3具材)は、例えば、0.14~2.5であり、好ましくは0.4~1.1である。
【0041】
また、食品組成物における第3具材の含有量は、例えば、当該食品組成物が混ぜ合わされる飯100質量部に対して、5~20質量部であり、7~15質量部であることが好ましい。第3具材の含有量は、第3具材による所望の食感を混ぜご飯を咀嚼することによって得られるように調整するとよい。
【0042】
(その他成分)
食品組成物は、第1~第3具材以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、調味料、保存料、着色料等の飯に混ぜ合わせて用いられる公知の食品組成物に含有される成分、第1~第3具材以外のその他の具材が挙げられる。その他の成分としては、第1~第3具材の食感を損なわない成分を用いる。
【0043】
その他の具材としては、例えば、食品に香りを加える第4具材が挙げられる。第4具材の具体例としては、例えば、柚子ピール、レモンピール、パクチーが挙げられる。食品に香りを加えることによって、咀嚼する楽しさを増幅させることができる。
【0044】
本実施形態の作用について説明する。
本実施形態の食品組成物は、飯に混ぜ合わせて混ぜご飯として食される。混ぜご飯として食す際には、混ぜご飯を口に含む動作と、口に含まれた混ぜご飯を咀嚼してのみ込む動作とが繰り返される。口に含まれた混ぜご飯の咀嚼を開始してから、混ぜご飯をのみ込む動作が行われるまでの期間が一回の咀嚼期間になる。咀嚼期間では、歯を噛み合わせることによって、口に含まれた混ぜご飯に含まれる具材が細かく粉砕され、具材を噛んだ際の食感及び味に基づく印象が食事者に付与される。
【0045】
咀嚼期間においては、まず、咀嚼期間の初期、特に噛み始めの1~2噛み目にて第1具材が切断又は粉砕されることによって、第1具材の食感及び味に基づく印象が食事者に与えられる。第1具材は、1cm以上の大きいサイズであるため、咀嚼期間の初期に歯に当たりやすい。第1具材は、さらに、切断又は粉砕した際の食感及び味が口内の広範囲に付与されやすい。これによって、食事者に与える印象が強くなる。したがって、第1具材に基づく印象が混ぜご飯を咀嚼した際の第一印象になる。例えば、第1具材が乾燥オクラである場合には、噛んだ際のサクネロという食感に基づく印象が第一印象になる。第1具材が干し筍である場合には、噛んだ際のサクという食感に基づく印象が第一印象になる。第1具材が干し芋である場合には、噛んだ際のモニュという食感に基づく印象が第一印象になる。また、第1具材がチーズ又はハムである場合には、咀嚼することによって感じる味(コク)に基づく印象が第一印象になる。なお、第1具材によって得られる印象は、大きな具材を噛むという動作に起因する部分が大きい。このため、第1具材によって得られる印象は、咀嚼を繰り返すことによって弱くなる。第1具材によって得られる印象は、第1具材のサイズが小さくなる咀嚼期間の中期以降においては、持続することなく消えやすい。
【0046】
咀嚼期間において第1具材に基づく印象が弱まった後の咀嚼期間の中期以降においては、第2具材及び第3具材が粉砕される際の食感が相対的に強くなる。このため、第2具材及び第3具材の食感に基づく印象が食事者に付与されやすくなる。第2具材は、アクセントとなる食感を食事者に付与する。例えば、第2具材がナッツ類の場合には、カリという食感が得られる。第2具材がシード類の場合には、プチという食感が得られる。第2具材がキヌア又はアマランサスの場合には、プチという食感が得られる。第2具材によるアクセントとなる食感が付与されることによって、食事者は、咀嚼に飽きを感じ難くなる。第3具材は、噛むことによって細分化され難い具材であり、噛み応えのある食感を継続的に食事者に付与する。例えば、第3具材が乾燥させた葉物である場合には、モグモグ、シャキシャキ等の食感が得られる。第3具材がかんぴょうである場合には、クニという食感が得られる。第3具材がたかきびである場合には、ギシという食感が得られる。第3具材がメンマである場合には、コリという食感が得られる。第3具材の噛み応えが継続することによって、噛み続けることに対する抵抗感が小さくなる。これによって、咀嚼期間における噛む回数を多くすることができる。また、一回の咀嚼期間を長くすることもできる。なお、第3具材の食感は、第2具材の食感よりも持続する。
【0047】
このように、本実施形態の食品組成物は、一回の咀嚼期間において異なるタイミングで各具材の印象が食事者に付与されるように第1~3具材を組み合わせて用いている。これによって、食事者は、食品を噛むことの楽しさを感じやすくなる。そして、咀嚼に飽きを感じ難くなる。この結果として、食事者に対して噛む動作を促す効果が得られる。
【0048】
上記のように、本実施形態の食品組成物によれば、食事者に対して噛む動作を促すという効果が得られる。したがって、本実施形態の食品組成物は、咀嚼訓練用食品組成物、オーラルフレイル対策用食品組成物、又は、口腔機能改善用食品組成物として適用することができる。
【0049】
咀嚼訓練用食品組成物は、噛むために必要な筋力の維持又は向上を要する者を対象者とする食品である。咀嚼訓練用食品組成物は、対象者に噛む動作を促して、噛むために必要な筋肉を鍛えるという効果を得ることを目的とする。
【0050】
オーラルフレイル対策用食品組成物は、高齢者を対象者とする食品である。オーラルフレイル対策用食品組成物は、対象者に噛む動作を促して、噛むために必要な筋肉を鍛え、口腔機能の低下を抑制するという効果を得ることを目的とする。オーラルフレイル対策用食品組成物は、口腔機能の回復を促すという効果を得ることを目的とすることもできる。
【0051】
口腔機能改善用食品組成物は、小児を対象者とする食品である。口腔機能改善用食品組成物は、対象者に噛む動作を促して、噛むために必要な筋肉を鍛え、口腔機能の発達を促進させるという効果を得ることを目的とする。口腔機能改善用食品組成物は、口腔機能の獲得を促進させるという効果を得ることを目的とすることもできる。
【0052】
本実施形態の効果について説明する。
(1)食品組成物を混ぜ合わせた飯である混ぜご飯を咀嚼すると、第1具材、第2具材及び第3具材による食感が得られる。
【0053】
具体的には、第1具材によって咀嚼期間の初期に大きな印象を与えることができる。これによって、咀嚼を続けようという気にさせることができる。
また、第2具材によってアクセントとなる食感を与え、食感が単調になることを抑制できる。これによって、食品を噛む楽しさを与えることができる。すなわち、咀嚼に飽きが来ないようにさせることができる。
【0054】
さらに、第3具材によって咀嚼を長く続けても持続する噛み応えを与えることができる。すなわち、咀嚼期間における噛む回数を多くしたり、一回の咀嚼期間を長くしたりといった効果が得られる。
【0055】
こうした第1具材、第2具材及び第3具材の食感の組み合わせによって、食品を噛むことの楽しさを感じやすくなる。このため、咀嚼に飽きを感じ難くなる。これによって、噛む動作を促すことができる。
【0056】
(2)噛む動作を促すことによって、噛むために必要な筋肉を鍛えることができる。すなわち、咀嚼訓練を行うことができる。
(3)噛む動作を促すことによって、噛むために必要な筋肉を鍛えることができる。これによって、口腔機能の低下を抑制することができる。口腔機能が回復することも期待できる。すなわち、オーラルフレイルの対策とすることができる。また、オーラルフレイルの予防を行うこともできる。
【0057】
(4)噛む動作を促すことによって、噛むために必要な筋肉を鍛えることができる。これによって、口腔機能の発達を促進させたり口腔機能の獲得を促進させたりすることができる。すなわち、口腔機能を改善することができる。
【0058】
(5)噛む動作が促されることによって、食事者は、満腹感を適切な時期に得ることができる。これによって、食べ過ぎを抑制することができる。
【実施例0059】
食品組成物について、以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、食品組成物は、実施例欄に記載の構成に限定されるものではない。
〈具材の大きさの評価〉
具材の大きさが食感に与える影響を評価した。白飯50gに対して0.75gの具材を混ぜ合わせた。具材は、高菜、大根、ごぼう及び菊芋を用意した。各具材について、サイズを変更したサンプルを調製した。サイズの基準として、大サイズは、具材を2~3cmに切ったものである。小サイズは、具材を1~1.5cmに切ったものである。
【0060】
得られたサンプルを試食して官能評価を行った。結果を表1に示す。評価基準は、次の通りである。
◎:食感が持続する。さらに、風味がよい。
○:食感が持続する。
【0061】
【表1】
表1に示すように、高菜の場合には、小サイズのサンプルによって、持続する食感に加えて好ましい風味を得られた。大根、ごぼう及び菊芋の場合も同様に、小サイズのサンプルによって、持続する食感及び好ましい風味を得られた。菊芋の場合には、大サイズのサンプルによっても持続する食感及び好ましい風味を得られた。評価の結果、具材の切り方を変更することは食感に与える影響が大きいという傾向がみられた。
【0062】
〈具材の組み合わせによる評価〉
白飯100gに対して、第1具材、第2具材及び第3具材からなる食品組成物を混ぜ合わせ、食感を評価した。実施例1及び2は、表2に示す具材を含む。各実施例について説明する。
【0063】
【表2】
(実施例1)
第1具材として菊芋チップスを採用した。菊芋チップスは、薄く切った菊芋を乾燥させたものである。菊芋チップス4.4gを砕いて1~1.5cmにした。第2具材としてくるみを採用した。くるみ7.79gを砕いて1cmにした。第3具材として大根を採用した。大根は、ゆで干し大根である。ゆで干し大根10.53gを、水戻し後の大きさが0.5~1cmとなるように切った。乾燥具材であるゆで干し大根を白飯に混ぜ合わせると、白飯の水分によってゆで干し大根が水戻しされる。水戻し後の大きさが0.5~1cmとなるようにカットサイズを調整している。
【0064】
(実施例2)
第1具材としてごぼうを採用した。ごぼう10.4gを1cmに切った。第2具材としてピスタチオを採用した。ピスタチオ5.07gを砕いて0.5~1cmにした。第3具材として白菜を採用した。白菜7.65gを、水戻し後の大きさが1cmとなるように切った。乾燥具材である乾燥白菜を白飯に混ぜ合わせると、白飯の水分によって乾燥白菜が水戻しされる。水戻し後の大きさが1cmとなるようにカットサイズを調整している。
【0065】
(評価結果)
実施例1及び2について官能評価を行った。結果を表3に示す。評価基準は、次の通りである。
5:食感が非常に良い。
4:食感が良い。
3:食感がやや悪い。
【0066】
食感が良いとは、各具材で狙った食感が得られていることを含む。食感が悪いとは、噛み応えが少ないことを含む。食感が悪いとは、食感が持続しすぎてしつこさを与えることを含む。
【0067】
【表3】
表3に示すように、実施例1では、混ぜご飯を口に含み咀嚼を開始すると、咀嚼期間の初期において、菊芋チップスのシャリシャリした食感が得られた。菊芋チップスの食感は、咀嚼期間の初期において強く印象付けられた。菊芋チップスの食感は、咀嚼を続けていくと咀嚼期間の中期以降において徐々に弱くなった。咀嚼期間の中期以降では、くるみが歯に当たるカリという食感が相対的に大きくなった。くるみの食感は、咀嚼のアクセントとなった。ゆで干し大根の食感は、咀嚼を終えるまで残り、噛み応えが継続した。
【0068】
実施例2では、混ぜご飯を口に含み咀嚼を開始すると、咀嚼期間の初期において、ごぼうの食感が得られた。ごぼうの食感は、咀嚼期間の初期において強く印象付けられた。ごぼうの食感は、咀嚼を続けていくと咀嚼期間の中期以降において徐々に弱くなった。しかし、ごぼうの繊維が咀嚼を終えるまで残った。ごぼうの食感が残り続けることは、しつこさに繋がった。咀嚼期間の中期以降では、ピスタチオが歯に当たる食感が相対的に大きくなった。ピスタチオの食感は、咀嚼のアクセントとなった。白菜のシャキシャキした食感は、咀嚼を終えるまで残った。白菜の噛み応えは、咀嚼を終えるまで継続した。
【0069】
実施例1及び実施例2によって、好ましい食感が得られた。具体的には、食品の咀嚼を始めたときの第一印象、アクセントとなる食感による食品を噛む楽しさ、及び、咀嚼を長く続けても持続する噛み応えを得ることができた。各具材の食感のバランスがよかったのは、実施例1である。