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特開2022-102764ボールペンチップ及びボールペンチップを具備するボールペンリフィル
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  • 特開-ボールペンチップ及びボールペンチップを具備するボールペンリフィル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022102764
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】ボールペンチップ及びボールペンチップを具備するボールペンリフィル
(51)【国際特許分類】
   B43K 1/08 20060101AFI20220630BHJP
   B43K 7/02 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
B43K1/08 120
B43K7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020217690
(22)【出願日】2020-12-25
(71)【出願人】
【識別番号】000134589
【氏名又は名称】株式会社トンボ鉛筆
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】林 龍之介
【テーマコード(参考)】
2C350
【Fターム(参考)】
2C350GA03
2C350HA10
(57)【要約】
【課題】製造時に弾発部材の飛び出しの可能性が低減されたボールペンチップ及びそのボールペンチップを具備するボールペンリフィルを提供する。
【解決手段】本発明のボールペンチップ1は、チップ本体12と、チップ本体12の先端部に保持された筆記ボール11と、チップ本体12の後端側からチップ軸線Aに沿って筆記ボール11に向かって延びるバック孔14と、バック孔14の内部に配置され、自然長の状態で隣り合う巻線が離間した第1有効巻線部24、及び、第1有効巻線部24よりも後端側に配置され、自然長の状態で隣り合う巻線が離間した第2有効巻線部26を有し、後端が押圧された状態で配置され、先端が筆記ボール11を押圧する弾発部材20と、を備え、第2有効巻線部26の付勢力である第2付勢力は、第1有効巻線部24の付勢力である第1付勢力よりも弱い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ本体と、
前記チップ本体の先端部に保持された筆記ボールと、
前記チップ本体の後端側からチップ軸線に沿って前記筆記ボールに向かって延びるバック孔と、
前記バック孔の内部に配置され、自然長の状態で隣り合う巻線が離間した第1有効巻線部、及び、前記第1有効巻線部よりも後端側に配置され、自然長の状態で隣り合う巻線が離間した第2有効巻線部を有し、後端が押圧された状態で配置され、先端が前記筆記ボールを押圧する弾発部材と、
を備え、
前記第2有効巻線部の付勢力である第2付勢力は、前記第1有効巻線部の付勢力である第1付勢力よりも弱い、
ボールペンチップ。
【請求項2】
前記第2有効巻線部は、前記後端が押圧された状態で、密着巻の状態となる、
請求項1に記載のボールペンチップ。
【請求項3】
前記チップ本体のチップ後端部がかしめられることにより、前記弾発部材の前記後端が押圧される、
請求項1または2に記載のボールペンチップ。
【請求項4】
前記第2有効巻線部は、前記第1有効巻線部より径が大きい、
請求項1から3のいずれか1項に記載のボールペンチップ。
【請求項5】
前記第2有効巻線部は、前記第1有効巻線部より前記隣り合う巻線のピッチが狭い、
請求項1から4のいずれか1項に記載のボールペンチップ。
【請求項6】
前記弾発部材は先端側から順に、小径部、先端側テーパ密着巻線部、前記第1有効巻線部、後端側テーパ密着巻線部、及び前記第2有効巻線部を有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のボールペンチップ。
【請求項7】
前記第1有効巻線部及び前記第2有効巻線部におけるピッチは、線径の200%未満である、
請求項1から6のいずれか1項に記載のボールペンチップ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のボールペンチップと、インク収容管とを具備する、
ボールペンレフィル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールペンチップ及びボールペンチップを具備するボールペンリフィルに関する。
【背景技術】
【0002】
ボールペンレフィルのペン先として用いられるボールペンチップは、先端に筆記ボールが配置され、筆記ボールからチップ後端部に向かって延びるバック孔が設けられている。ボールペンチップのバック孔内には、筆記ボールを押圧するための弾発部材が挿入されているものがある。
この弾発部材は、押圧力が加わっていない自然長の状態でバック孔に挿入され、弾発部材の一部はチップ後端部より突出している。その後、弾発部材は、ボールペンチップの後端壁に設けられたかしめ部や、ボールペンチップとインク収容管の間とを接続する継手部材等の係止部によって押圧されて圧縮状態で保持される。
自然長の状態で弾発部材の一部がチップ後端部より突出していると、押圧時に突出部がぐらつきやすく不安定となる。そこで、筆記ボールを付勢する付勢力は弾発部材の中央部に持たせ、後端側は密着巻とすることでグラつきを防止しているボールペンチップが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-251987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来技術は、弾発部材を後側から押圧したときのグラつきは防止されるが、弾発部材が押圧されたときに弾発部材の中央部が圧縮されるので、所定の大きさの弾発力が発生する。そして、その弾発力によって製造中に弾発部材が飛び出してしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、製造時に弾発部材の飛び出しの可能性が低減されたボールペンチップ及びこのボールペンチップを具備するボールペンリフィルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、チップ本体と、前記チップ本体の先端部に保持された筆記ボールと、前記チップ本体の後端側からチップ軸線に沿って前記筆記ボールに向かって延びるバック孔と、前記バック孔の内部に配置され、自然長の状態で隣り合う巻線が離間した第1有効巻線部、及び、前記第1有効巻線部よりも後端側に配置され、自然長の状態で隣り合う巻線が離間した第2有効巻線部を有し、後端が押圧された状態で配置され、先端が前記筆記ボールを押圧する弾発部材と、を備え、前記第2有効巻線部の付勢力である第2付勢力は、前記第1有効巻線部の付勢力である第1付勢力よりも弱いボールペンチップを提供する。
【0007】
前記第2有効巻線部は、前記後端が押圧された状態で、密着巻となることが好ましい。
【0008】
前記チップ本体の後端部がかしめられることにより、前記弾発部材の前記後端が押圧されることが好ましい。
【0009】
前記第2有効巻線部は、前記第1有効巻線部より径が大きいことが好ましい。
【0010】
前記第2有効巻線部は、前記第1有効巻線部より前記隣り合う巻線のピッチが狭いことが好ましい。
【0011】
前記弾発部材は先端側から順に、小径部、先端側テーパ密着巻線部、前記第1有効巻線部、後端側テーパ密着巻線部、及び前記第2有効巻線部を有することが好ましい。
【0012】
前記第1有効巻線部及び前記第2有効巻線部におけるピッチは、線径の200%未満であることが好ましい。
【0013】
また、上記課題を解決するために本発明は、上記ボールペンチップと、インク収容管とを具備する、ボールペンレフィルを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、製造時に弾発部材の飛び出しの可能性が低減されたボールペンチップ及びそのボールペンチップを具備するボールペンリフィルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ボールペンレフィル1Aのボールペンチップ1を含む先端部の断面図である。
図2】ボールペンチップ1の後端部がかしめられていない状態の断面図である。
図3】(a)から(d)はボールペンチップ1の製造方法を説明する図である。
図4】(a)から(f)はチップ本体12のバック孔14内に弾発部材20を後端側から挿入する工程と、チップ後端加工工程を説明する図である。
図5】弾発部材挿入ピン103の先端が弾発部材20の弾発部材後端部27の一部に当たった場合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は実施形態のボールペンレフィル1Aのボールペンチップ1を含む先端部の断面図である。ボールペンレフィル1Aは、ボールペンチップ1と、ボールペンチップ1のチップ軸線A方向(長手方向)の一方に設けられた継手4と、その継手4に連結されたインク収容管5とを備える。以下、ボールペンチップ1の筆記ボール11が配置されている側を先端側、逆側を後端側として説明する。
【0017】
(ボールペンチップ1)
ボールペンチップ1は、チップ本体12と、チップ本体12の先端側に一部が先端より突出した状態で回転自在に保持された筆記ボール11と、チップ本体12内に配置されて筆記ボール11を押圧する弾発部材20とを備える。
【0018】
チップ本体12は、例えば、ステンレス製のブランク材から製造されている。筆記ボール11は、例えば、タングステンカーバイド製である。ただし、チップ本体12の材料や筆記ボール11の材料はこれらに限定されるものではない。
【0019】
チップ本体12は、円筒形のチップ中央部12aと、チップ中央部12aの先端側に設けられ且つチップ中央部12aから徐々に外径が小さくなるチップ先端部12bと、チップ中央部12aよりも後端側に設けられ、チップ中央部12aよりも外径が小さい円筒形のチップ後端部12cとを備える。すなわち、ボールペンチップ1は、チップ先端部12bの外径が先端に向かうにつれて徐々に小さくなるいわゆるコーン形状を有する。
だたし、これに限定されず、ボールペンチップ1は、チップ先端部12bが、チップ中央部12aと比べて小径の一定径の円筒形である、いわゆるニードル形状を有していてもよい。
【0020】
チップ本体12の内部には、筆記ボール11を抱持するためのボール抱持室13と、チップ本体12の後端側から先端側に向かって延びるバック孔14とを有する。ボール抱持室13とバック孔14とは連通している。
ボール抱持室13の先端は内側にかしめられて、筆記ボール11は、先端がボール抱持室13の先端縁より突出した状態で、ボール抱持室13内に回転自在に抱持されている。
バック孔14は、先端側に向って段階的に径が小さくなっており、後端側にはかしめ部15が設けられている。
【0021】
(弾発部材20)
実施形態の弾発部材20は、コイルスプリングであって、バック孔14の内部に、中心軸がチップ軸線Aに沿うように配置されている。弾発部材20は、荷重と変位量の関係が線形でなく、すなわち、変位量によってバネ定数が変化する非線形バネである。
実施形態では、弾発部材20に用いる線材の材質はSUS304WPBであるが、これに限定されない。例えばピアノ線や樹脂バネであってもよい。
【0022】
図2はボールペンチップ1のチップ後端部12cがかしめられていない状態の断面図であり、弾発部材20が自然長の状態を示す。自然長の状態で、弾発部材20の後端側はボールペンチップ1のチップ後端部12cから突出している。
【0023】
弾発部材20は、先端側から順に、直線状に延びて筆記ボール11を押圧する先端延在部21と、密着巻の小径部22と、小径部22から徐々に径が拡大する先端側テーパ密着巻線部23と、隣り合う巻線が密着せずに離間した第1有効巻線部24と、第1有効巻線部24から徐々に径が拡大する後端側テーパ密着巻線部25と、隣り合う巻線が離間した第2有効巻線部26と、第2有効巻線部26から徐々に縮径され密着巻となった弾発部材後端部27を備える。弾発部材後端部27は後述するかしめ部15と当接する。実施形態では、第2有効巻線部26の付勢力である第2付勢力は、第1有効巻線部24の付勢力である第1付勢力よりも弱く設定される。
【0024】
弾発部材20は全体が同一材料で製造されて線径は同一であり、小径部22よりも第1有効巻線部24の径は大きく、第1有効巻線部24よりも第2有効巻線部26の径は大きい。また、第2有効巻線部26の隣り合う巻線のピッチP2は、第1有効巻線部24の隣り合う巻線のピッチP1より狭い。ゆえに第2有効巻線部26のバネ定数kは、第1有効巻線部24のバネ定数kより小さい。
また、第1有効巻線部24における、自然長でのピッチP1は、線径の140%以上、200%未満が好ましく、より好ましくは190%未満、さらに好ましくは180%未満である。
さらに、第2有効巻線部26における、自然長でのピッチP2は、線径の110%以上、150%未満が好ましく、より好ましくは140%未満、さらに好ましくは130%未満である。
【0025】
具体的には、例えば、弾発部材20の線径が0.120mmの場合、第1有効巻線部24のピッチP1は0.168mm以上、0.240mm未満に設定され、第2有効巻線部26のピッチP2は0.132mm以上、0.180mm未満に設定される。
【0026】
第2有効巻線部26は、図2に示す自然長で、約2/3がチップ後端部12cの内部に収納され、約1/3がチップ後端部12cより外側に突出している。ただしこれに限らず、自然長で、0.5mm以上がチップ後端部12cの内部に収納されていることが好ましい。
【0027】
弾発部材20が自然長の状態において、第2有効巻線部26の外径が、バック孔14の内径にガイドされて収納されることが好ましい。そのためには、第2有効巻線部26の外径は、第2有効巻線部26の収納される箇所におけるバック孔14の内径の80%以上、95%以下であることが好ましく、85%以上、95%以下であることがより好ましい。
このとき、第2有効巻線部26の外径は第2有効巻線部26の収納される箇所におけるバック孔14の内径に長手方向の一部がガイドされて収納されればよい。
【0028】
ボールペンチップ1のチップ後端部12cの一部がかしめられて、かしめ部15が形成されると、弾発部材20の弾発部材後端部27(弾発部材の後端)はかしめ部15により押さえられて、第2有効巻線部26は密着巻となる。このとき、第2有効巻線部26の隣り合う巻線のピッチP2´は密着巻の状態となるので、P2より狭くなり線材の径と略同一になり、第1有効巻線部24の隣り合う巻線のピッチP1´はかしめ前のP1より狭くなる。
【0029】
(ボールペンチップ1の製造方法)
次に、ボールペンチップ1の製造方法について説明する。図3はボールペンチップ1の製造方法を説明する図である。
ボールペンチップ1の製造方法において、まず、図3(a)に示すようなブランク材1aを用意する。ブランク材は、円柱形状である。
次に、図3(b)に示すように、ブランク材1aの外面を切削して、チップ中央部12aの後端側にチップ後端部12c、先端側に、先端に向かうにつれて外径が縮小するテーパ状のチップ先端部12bを形成する。
次いで、図3(c)に示すように、チップ後端部12cの後端面より、チップ軸線Aに沿って延び、且つ後端側から徐々に内径が小さくなるように多段のバック孔14を形成する。そして、チップ先端部12bの先端側にボール抱持室13を形成し、ボール抱持室13とバック孔14とを連通させる。
さらに、図3(d)に示すように、筆記ボール11をボール抱持室13に挿入し、チップ先端部12bを内側にかしめる。
【0030】
その後、チップ本体12のバック孔14内に弾発部材20を後端側から挿入する。図4は、チップ本体12のバック孔14内に弾発部材20を後端側から挿入する工程と、チップ後端加工工程を説明する図である。
【0031】
図4(a)は、チップ本体12のバック孔14に後端側から弾発部材20を挿入するときを示す。弾発部材挿入治具50が、ボールペンチップ1より後端側に配置され、チップ軸線Aに沿って移動可能に設けられている。また、弾発部材挿入治具50は、円筒状に形成されると共に、この弾発部材挿入治具50には貫通孔が設けられており、その貫通孔から負圧を発生することで弾発部材20を吸着保持可能な構成となっている。
弾発部材挿入治具50が、弾発部材20を吸着保持した状態で、先端側へ移動し、弾発部材20の一部がバック孔14内に挿入される。その後、弾発部材挿入治具50の負圧の発生を停止することで弾発部材20の吸着保持が解除され、自重により弾発部材20は先端延在部21が筆記ボール11に当接する位置まで挿入される。
【0032】
図4(b)は、チップ本体12のバック孔14に弾発部材20を挿入した状態を示す。このとき、弾発部材20の後端側は、チップ本体12の後端部12cより突出している。
【0033】
続いて、チップ後端加工装置100を用いてチップ本体12を後端側より押圧してかしめる。チップ後端加工装置100は、ベース部101と、3つのローラ102と、3つのローラ102の中心である装置軸線A1に沿って延びる弾発部材挿入ピン103とを備える。
【0034】
ローラ102は、装置軸線A1に対して垂直な回転軸を有し、ベース部101に対して相対回転可能である。そして装置軸線A1の方向から見た平面視において、3つのローラ102の稜線は、装置軸線A1を中心として互いに120度の間隔で径方向に延びている。
【0035】
弾発部材挿入ピン103は、ローラ102の間に配置された基端部104と、基端部104から先端側に延びる先端部105とを備える。先端部105の外周で作る先端径は、基端部104の外周で作る基端径より小さく、基端部104と先端部105との間には段部106が設けられている。段部106はローラ102の先端側の位置と略同位置に設けられている。
【0036】
先端部105の先端径は、弾発部材後端部27の内径より小さく、基端部104の基端径は、弾発部材後端部27の内径より大きい。
図4(c)に示すように、チップ本体12が固定された状態で、チップ本体12のチップ軸線Aと、チップ後端加工装置100の装置軸線A1とを一致させて、チップ後端加工装置100をボールペンチップ1に近づける。
そうすると、弾発部材挿入ピン103の先端は弾発部材20の内部に挿入される。
さらにチップ後端加工装置100がボールペンチップ1側に移動すると、図4(d)に示すように弾発部材挿入ピン103の段部106が弾発部材後端部27と当接する。
【0037】
弾発部材挿入ピン103がさらに先端側に移動すると、第2有効巻線部26は、弾発部材後端部27が段部106に押圧されてチップ本体12の内部に挿入されていく。
段部106はローラ102がチップ後端部12cの後端面と当接する箇所よりも先端側にあるので、弾発部材20が縮んで、段部106が弾発部材20を圧縮しながらバック孔14内まで侵入した後、ローラ102がバック孔14の外周に当接する。
【0038】
弾発部材後端部27がバック孔14内に入ると、バック孔14の外周の当接箇所は、3つのローラ102の外側から内側へ向かう回転によって、互いに近づく方向に押される。
そして、弾発部材20の全体がバック孔14内に挿入されている状態で、チップ後端部12cの後端面は、ローラ102の稜線に沿って湾曲しバック孔14の外周がかしめられてカシメ部15が形成される。
【0039】
チップ後端部12cの後端面にかしめ部15が形成されると、弾発部材20はかしめ部15により弾発部材後端部27(弾発部材の後端)が係止される。この状態でチップ後端加工装置100をボールペンチップ1から引き離すと、バネ挿入ピン103は、バック孔14から引き抜かれるが、チップ後端部12cの後端面は変形されているので、弾発部材20はバック孔14内に保持される。ボールペンチップ1は図4(f)のような形状となる。
【0040】
このとき、弾発部材後端部27(弾発部材の後端)が押圧され、弾発部材20は自然長より圧縮されているので、先端延在部21が筆記ボール11を押圧する。これにより、非使用時に筆記ボール11が先端側に押圧されているのでインクの乾燥、漏れ出しが防止される。
【0041】
ここで、図4(a)に示すように、弾発部材20は、ボールペンチップ1のバック孔14に、弾発部材挿入治具50によって、挿入される。このときに、弾発部材20の小径部22の先端側外径が、バック孔14の内壁の段差部に引っ掛かりながら挿入され、意図せず弾発部材20に押圧力がかかることがある。
そうした場合、例えば、実施形態と異なり、弾発部材が第2有効巻線部を備えずに、有効巻線部としては第1有効巻線部しか備えていない比較形態では、当初より第1有効巻線部が圧縮される。このとき、弾発部材に蓄えられるエネルギーE1は、第1有効巻線部のバネ定数をk、弾発部材の変位量をXとすると、E1=k/2となる。ここで、エネルギーE1が大きくなると、強い弾発力により弾発部材がバック孔の所定位置に挿入されず、外に飛び出す可能性がある。
【0042】
しかし、実施形態では、弾発部材20が非線形バネで、第2有効巻線部26のバネ定数kは、先端側の第1のバネ定数kよりも小さい。したがって、弾発部材20が圧縮されたときに、まず第2有効巻線部26が圧縮される。このときに弾発部材20に蓄えられるエネルギーE2はE2=k/2となる。したがって弾発部材20が圧縮された初期段階において弾発部材20に蓄えられるエネルギーE2は、比較形態と比べて小さい。ゆえに弾発力も小さく、弾発部材後端部27が、弾発部材挿入治具50の先端から外れ、弾発力により弾発部材20が外に飛び出す可能性が低くなる。
弾発部材挿入治具50による挿入時に、弾発部材20の第2有効巻線部26が軽い力で変形するため、弾発部材20がチップ軸線Aに沿って挿入されやすい状態となる。
実施形態においては、第1有効巻線部のバネ定数は、0.173(N/mm)であり、第2有効巻線部のバネ定数は、0.065(N/mm)である。
第2有効巻線部のバネ定数は、0.010(N/mm)以上0.150(N/mm)以下が好ましい。さらに好ましくは、0.010(N/mm)以上0.100(N/mm)以下である。このようなバネ定数とすることで、圧縮されたときに弾発部材20に蓄えられるエネルギーE2が小さく抑えられるため、製造時に弾発力により弾発部材20が外に飛び出す可能性を低くできる。
【0043】
また、図4(c)となるべきところ、例えば弾発部材後端部27が下方にわずかに下がっていたり、チップ本体12のチップ軸線Aと装置チップ軸線A1とがわずかにずれる場合がある。
この場合、弾発部材挿入ピン103の先端が、弾発部材後端部27の内部に挿入されずに、弾発部材後端部27に当たってしまう可能性がある。図5はこのような弾発部材挿入ピン103の先端が弾発部材20の弾発部材後端部27に当たった場合を説明する図である。
【0044】
図5の状態でさらにチップ後端加工装置100が前進すると、弾発部材挿入ピン103の先端が弾発部材後端部27を押圧して、弾発部材後端部27が不均一に押圧されていく。
【0045】
ここで、例えば、実施形態と異なり、弾発部材が第2有効巻線部を備えずに、有効巻線部としては第1有効巻線部しか備えていない比較形態の場合、当初より第1有効巻線部が圧縮される。
このとき、弾発部材に蓄えられるエネルギーE1は、第1有効巻線部のバネ定数をk、弾発部材の変位量をXとすると、E1=k/2となる。ここで、エネルギーE1が大きくなると、弾発部材後端部27が、弾発部材挿入ピンの先端から外れ、強い弾発力により弾発部材が外に飛び出す可能性がある。
【0046】
しかし、実施形態では、弾発部材20が非線形バネで、第2有効巻線部26のバネ定数kは、先端側の第1のバネ定数kよりも小さい。したがって、弾発部材20が圧縮されたときに、まず第2有効巻線部26が圧縮される。このときに弾発部材20に蓄えられるエネルギーE2はE2=k/2となる。したがって弾発部材20が圧縮された初期段階において弾発部材20に蓄えられるエネルギーE2は、比較形態と比べて小さい。ゆえに弾発力も小さく、弾発部材後端部27が、弾発部材挿入ピン103の先端から外れ、弾発力により弾発部材20が外に飛び出す可能性が低くなる。
【0047】
そして、実施形態では、弾発部材後端部27が、このように仮に不均一に弾発部材挿入ピン103に押されても、自然長の状態で第2有効巻線部26の約2/3がチップ後端部12cの内部に収納されているので、第2有効巻線部26はバック孔14の内壁によってガイドされる。
ゆえに、弾発部材20の押圧時において弾発部材20の湾曲が少ない。
そして第2有効巻線部26はバック孔14の内部に挿入されるに従い、さらにセンタリングされ、センタリングされた状態でチップ本体12のチップ後端部12cにかしめ部15が形成される。
【0048】
実施形態では、弾発部材20全体がバック孔14の内部に収納されてチップ本体12のチップ後端部12cにかしめ部15が形成された状態(弾発部材後端部27(弾発部材の後端)が押圧された状態)で、第2有効巻線部26は密着巻となり、さらに押圧が可能な有効巻線部は第1有効巻線部24のみになる。
したがって、この状態で弾発部材20は圧縮に関して線形バネと同等になる。ゆえに筆記時に筆記ボール11を押圧する弾発部材20の付勢力が一定となり、安定した書き心地を提供することができる。
【0049】
さらに、小径部22と第1有効巻線部24との間に先端側テーパ密着巻線部23が設けられ、第1有効巻線部24と第2有効巻線部26との間に後端側テーパ密着巻線部25が設けられているので、弾発部材20のバック孔14への挿入時、及び弾発部材20の圧縮時に、各部の接続部がバック孔14の内壁に引っかかる可能性を低減することができる。
【0050】
(変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、実施形態は例示的に示したものであり、本願発明の範囲がそれに限定されるものではない。
例えば、実施形態はボールペンチップ1のチップ後端部12cをかしめることにより弾発部材20をバック孔14内に圧縮状態で保持したが、これに限定されず、ボールペンチップのチップ後端部12cをかしめずに、弾発部材の後端を、継手やインク収容管に設けられた内壁により弾発部材を押圧する、いわゆるジョイントタイプのボールペンレフィルにも適用可能である。また、弾発部材20は、先端延在部12を有さない形状であってもよい。
【0051】
ボールペンレフィル1Aには、レフィルが交換できない、いわゆる使い切りタイプのボールペンも含まれる。
【0052】
実施形態の弾発部材20は、第1有効巻線部24、第2有効巻線部26はそれぞれ1か所に設けられていたが、複数個所に分けて設けてもよい。
【符号の説明】
【0053】
A チップ軸線
1 ボールペンチップ
1A ボールペンレフィル
11 筆記ボール
12 チップ本体
12a チップ中央部
12b チップ先端部
12c チップ後端部
13 ボール抱持室
14 バック孔
15 かしめ部
20 弾発部材
21 先端延在部
22 小径部
23 先端側テーパ密着巻線部
24 第1有効巻線部
25 後端側テーパ密着巻線部
26 第2有効巻線部
27 弾発部材後端部
100 チップ後端加工装置
101 ベース部
102 ローラ
103 弾発部材挿入ピン
104 基端部
105 先端部
106 段部
図1
図2
図3
図4
図5