(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103379
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20220630BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20220630BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220630BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20220630BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0567
H01M4/36 E
H01M4/36 A
H01M4/133
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082277
(22)【出願日】2022-05-19
(62)【分割の表示】P 2021070894の分割
【原出願日】2014-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2013067188
(32)【優先日】2013-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】320011605
【氏名又は名称】MUアイオニックソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】中澤 英司
(72)【発明者】
【氏名】大橋 洋一
(72)【発明者】
【氏名】古田土 稔
(57)【要約】
【課題】 非水系電解液二次電池において、耐久性能と容量、抵抗、出力特性等の性能につき、総合的な性能のバランスのよい電池を提供すること。
【解決手段】 金属イオンを吸蔵・放出しうる正極及び負極、非水系電解液を備える非水系電解液電池であって、該非水系電解液が電解質及び非水系溶媒とともに、
フルオロスルホン酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ジフルオロリン酸リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有し、かつ、
該負極がSi又はSi金属酸化物と黒鉛粒子とを含有する負極活物質を有することを特徴とする非水系電解液電池とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオンを吸蔵・放出しうる正極及び負極、非水系電解液を備える非水系電解液電池であって、該非水系電解液が電解質及び非水系溶媒とともに、
フルオロスルホン酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ジフルオロリン酸リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有し、かつ、
該負極がSi又はSi金属酸化物と黒鉛粒子とを含有する負極活物質を有することを特徴とする非水系電解液電池。
【請求項2】
前記Si又はSi金属酸化物と黒鉛粒子とを含有する負極活物質が、Si又はSi金属酸化物と黒鉛粒子の複合体である、請求項1に記載の非水系電解液電池。
【請求項3】
前記Si又はSi金属酸化物と黒鉛粒子との合計に対する、前記Si又はSi金属酸化物の含有量が0.1~25質量%である、請求項1又は2に記載の非水系電解液電池。
【請求項4】
前記Si又はSi金属酸化物と黒鉛粒子との合計に対する、前記Si又はSi金属酸化物の含有量が0.1~10質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の非水系電解液電池。
【請求項5】
前記フルオロスルホン酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ジフルオロリン酸リチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量が、非水系電解液の全量に対して0.01質量%以上10.0質量%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の非水系電解液電池。
【請求項6】
前記非水系電解液が、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素原子を有する環状カーボネート、酸無水物化合物、環状スルホン酸エステル化合物及びシアノ基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の非水系電解液電池。
【請求項7】
前記炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素原子を有する環状カーボネート、酸無水物化合物、環状スルホン酸エステル化合物及びシアノ基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量が非水系電解液の全量に対して0.001質量%以上10重量%以下である、請求項6に記載の非水系電解液電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、ノート型パーソナルコンピュータ等の携帯用電子機器の急速な進歩に伴い、その主電源やバックアップ電源に用いられる電池に対する高容量化への要求が高くなっており、ニッケル・カドミウム電池やニッケル・水素電池に比べてエネルギー密度の高いリチウムイオン二次電池等の非水系電解液電池が注目されている。
リチウムイオン二次電池の電解液としては、LiPF6、LiBF4、LiN(CF3SO2)2、LiCF3(CF2)3SO3等の電解質を、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の高誘電率溶媒と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の低粘度溶媒との混合溶媒に溶解させた非水系電解液が代表例として挙げられる。
【0003】
また、リチウムイオン二次電池の負極活物質としては主にリチウムイオンを吸蔵・放出することができる炭素質材料が用いられており、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素等が代表例として挙げられる。更に高容量化を目指してシリコンやスズ等を用いた金属又は合金系の負極も知られている。正極活物質としては主にリチウムイオンを吸蔵・放出することができる遷移金属複合酸化物が用いられており、遷移金属の代表例としてはコバルト、ニッケル、マンガン、鉄等が挙げられる。
【0004】
このようなリチウムイオン二次電池は、活性の高い正極と負極を使用しているため、電極と電解液との副反応により、充放電容量が低下することが知られており、電池特性を改良するために、非水溶媒や電解質について種々の検討がなされている。
特許文献1、2には、非水系電解液中にイソシアネート化合物を添加し、電池のサイクル特性を向上させる試みが成されている。
【0005】
特許文献3には、フルオロリン酸リチウム塩と添加した電解液を用いることにより、電池の高温保存特性を向上させる試みが成されている。
特許文献4には、フルオロスルホン酸リチウム塩を添加した電解液を用いることにより、電池の高温保存特性、入出力特性やインピーダンス特性が改善されることを報告している。
【0006】
特許文献5には、負極にSiとOとを構成元素に含む材料と黒鉛材料を負極活物質に用い、電解液にハロゲン化環状カーボネートやビニレンカーボネートを用いた電池を作成し、電池のサイクル特性を向上させる試みが成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】日本国特開2005-259641号公報
【特許文献2】日本国特開2006-164759号公報
【特許文献3】日本国特開平11-67270号公報
【特許文献4】日本国特開2011-187440号公報
【特許文献5】日本国特開2011-233245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年のリチウム非水系電解液二次電池の特性改善への要求はますます高まっており、高温保存特性、エネルギー密度、出力特性、寿命、高速充放電特性、低温特性等の全ての性能を高いレベルで併せ持つことが求められているが、未だに達成されていない。高温保存特性をはじめとする耐久性能と容量、抵抗、出力特性等の性能がトレードオフの関係になっており、総合的な性能のバランスが悪いという問題があった。
【0009】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。即ち、非水系電解液二次電池において、耐久性能と容量、抵抗、出力特性等の性能につき、総合的な性能のバランスのよい電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、金属イオンを吸蔵・放出しうる正極及び負極、非水系電解液を備える非水系電解液電池であって、該非水系電解液が電解質及び非水系溶媒とともに、フルオロスルホニル構造(-SO2F)を有する化合物、ジフルオロリン酸塩及びイソシアネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有し、かつ、負極がLiと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子を含有する負極活物質を有することを特徴とする非水系電解液電池を用いることで上記課題を解決できることを見出し、後述する本発明の完成に至った。
【0011】
本発明の要旨は、以下に示す通りである。
(a)金属イオンを吸蔵・放出しうる正極及び負極、非水系電解液を備える非水系電解液電池であって、該非水系電解液が、電解質及び非水系溶媒とともに、フルオロスルホニル構造(-SO2F)を有する化合物、ジフルオロリン酸塩及びイソシアネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有し、かつ、該負極がLiと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子とを含有する負極活物質を有することを特徴とする非水系電解液電池。
【0012】
(b)前記Liと合金化可能な金属粒子が、Si、Sn、As、Sb、Al、Zn及びWからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属又はその金属化合物である、(a)に記載の非水系電解液電池。
(c)前記Liと合金化可能な金属粒子が、Si又はSi金属酸化物である、(a)又は(b)に記載の非水系電解液電池。
【0013】
(d)前記Liと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子とを含有する負極活物質が、金属及び/又は金属化合物と黒鉛粒子との複合体である、(a)~(c)に記載の非水系電解液電池。
(e)前記Liと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子との合計に対する、前記Liと合金化可能な金属粒子の含有量が0.1~25質量%である、(a)~(d)に記載の非水系電解液電池。
(f)前記Liと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子との合計に対する、前記Liと合金化可能な金属粒子の含有量が0.1~20質量%である、(a)~(e)に記載の非水系電解液電池。
(g)前記Liと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子との合計に対する、前記Liと合金化可能な金属粒子の含有量が0.1~15質量%である、(a)~(f)に記載の非水系電解液電池。
(h)前記Liと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子との合計に対する、前記Liと合金化可能な金属粒子の含有量が0.1~10質量%である、(a)~(g)に記載の非水系電解液電池。
【0014】
(i)前記フルオロスルホニル構造(-SO
2F)を有する化合物が、フルオロスルホン酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、下記一般式(A):
【化1】
式(A)中、R
1は、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子1~10のアルキル基、アルケニル基若しくはアルキニル基であるか、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子6~20の芳香族炭化水素基であり、nは0~1の整数を示す
で示される化合物である、(a)~(h)に記載の非水系電解液電池。
(j)前記ジフルオロリン酸塩がジフルオロリン酸リチウムである、(a)~(i)に記載の非水系電解液電池。
(k)前記イソシアネート化合物が、炭化水素系ジイソシアネート化合物、下記一般式(C):
【化2】
式(C)中、R
2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子1~10のアルキル基、アルケニル基若しくはアルキニル基であるか、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子6~20の芳香族炭化水素基であるか、又はイソシアナト基若しくはハロゲン原子であり、nは0~1の整数を示す
で表される化合物である、(a)~(j)に記載の非水系電解液電池。
(l)前記フルオロスルホニル構造(-SO
2F)を有する化合物、ジフルオロリン酸塩及びイソシアネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が、非水系電解液の全量に対して0.01質量%以上10.0質量%以下である、(a)~(k)に記載の非水系電解液電池。
【0015】
(m)前記非水系電解液が、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素原子を有する環状カーボネート、酸無水物化合物、環状スルホン酸エステル化合物及びシアノ基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する、(a)~(l)に記載の非水系電解液電池。
(n)前記炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素原子を有する環状カーボネート、酸無水物化合物、環状スルホン酸エステル化合物及びシアノ基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量が非水系電解液の全量に対して0.001質量%以上10質量%以下である、(m)に記載の非水系電解液電池。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、リチウム非水系電解液二次電池に関して、耐久性と容量、抵抗、出力特性等の性能につき、総合的な性能のバランスのよい電池を提供することができる。具体的には、充放電サイクルを繰り返しても、容量低下が抑制され、電池膨れが小さい電池が提供される。
本発明の非水系電解液を用いて作製された非水系電解液二次電池、及び本発明の非水系電解液二次電池が、総合的な性能のバランスが良い二次電池となる作用・原理は明確ではないが、以下のように考えられる。ただし、本発明は、以下に記述する作用・原理に限定されるものではない。
【0017】
特許文献1~4に記載されている化合物は、電池の正極乃至は負極に作用することにより、電池の保存特性等を向上させることを報告しているが、実施は負極に黒鉛や金属リチウムを用いた場合の効果のみであり、Si、Sn及びPbやそれらの酸化物を用いた負極との効果については何ら明らかとされていない。
特許文献5には、負極にSiとOとを構成元素に含む材料と黒鉛材料を負極活物質に用い、電解液にハロゲン化環状カーボネートやビニレンカーボネートを用いた際の効果については明らかとされているが、特許文献1~4に記載される、イソシアネート化合物、フルオロスルホン酸塩、フルオロリン酸塩/ジフルオロリン酸塩化合物を用いた電解液との効果については何ら明らかとされていない。
【0018】
Si系活物質は現在使用されている炭素負極に比べて負極活物質質量・体積当たりの理論容量が非常に大きいことから次世代負極として注目を集めている。しかしながら、Si系活物質はリチウムイオンの吸蔵・放出に伴う体積変化が非常に大きく(100~300%)、それに伴い電極内の電子伝導のパス切れや、粒子の微粉化等といった合剤電極や活物質の劣化等の問題がある。充放電を繰り返し粒子が微粉化することにより、活性の高い新生面(ダングリングボンド)が露出する。この露出した表面と電解液が反応することにより、活物質表面の変質が起こり、活物質容量低下及び正極・負極の充電深度ズレが生じ、サイクル特性が悪いといった問題がある。この問題に対処すべく、本発明ではイソシアネート化合物、フルオロスルホニル構造(-SO2F)を有する化合物やジフルオロリン酸塩を電解液中に含有させる。例えば、イソシアネート化合物の場合、溶媒の分解物とイソシアナト基が反応することにより、分解物の分子量が増加し、電解液に不溶化することで皮膜を活物質表面に堆積させ電解液の還元分解反応を抑制する。またイソシアナト基は分極しているため、Si表面と反応することにより表面活性の低下や活物質の変質等が抑制される。また、フルオロスルホニル構造(-SO2F)を有する化合物は、フッ素原子がSO2基に結合しているため分極度が高く、フッ素原子の脱離性が高い。これにより電解液に不溶なフッ化リチウムを活物質表面に堆積させ、イソシアネート化合物と同様に電解液の還元分解反応を抑制する。また、脱離性の高いフッ素原子とSi表面が反応することにより、上述と同様に表面活性の低下や活物質の変質等が抑制される。ジフルオロリン酸塩化合物の効果もフルオロスルホニル構造(-SO2F)を有する化合物と同様である。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明では、金属イオンを吸蔵・放出しうる正極及び負極、非水系電解液を備える非水系電解液電池であって、該非水系電解液が電解質及び非水系溶媒とともに、フルオロスルホニル構造(-SO2F)を有する化合物、ジフルオロリン酸塩及びイソシアネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有し、かつ、該負極がLiと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子を含有する負極活物質を有する非水系電解液電池を用いる。その結果、高温保存特性のみならず、サイクルガス抑制、サイクル特性、レート特性、電池膨れ等の様々な特性を改善することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
また、ここで“重量%”、“重量ppm”及び“重量部”と“質量%”、“質量ppm”及び“質量部”とは、それぞれ同義である。また、単にppmと記載した場合は、“重量ppm”のことを示す。
【0021】
1.非水系電解液
1-1.本発明の非水系電解液
本発明の非水系電解液は電解質及び非水系溶媒とともに、フルオロスルホニル構造(-SO2F)を有する化合物、ジフルオロリン酸塩及びイソシアネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する。
【0022】
非水系電解液が、電解質及び非水系溶媒とともに、フルオロスルホニル構造(-SO2F)を有する化合物、ジフルオロリン酸塩及びイソシアネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することによって、この非水系電解液を用いた非水系電解液電池がサイクル特性の向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性を向上し、ガス発生量が少なくなり、電池の膨れを回避しやすい。
【0023】
ここで、非水系電解液電池の「電池膨れ」とは、電池の初期コンディショニングを行った後、初期の電池厚みと、高温サイクル試験(例えば100サイクル)後の電池の厚みとを比較することによって、初期の電池厚みよりも高温サイクル試験後の電池の厚みが厚くなっていれば、「電池膨れ」が発生したと評価できる。電池の膨れには、サイクルに伴う電極の厚み変化による膨れを含む。
【0024】
1-1-1.フルオロスルホニル構造(-SO2F)を有する化合物
フルオロスルホニル構造(-SO2F)を有する化合物は、フルオロスルホン酸塩、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、一般式(A)で表される化合物等に代表される。
【0025】
I.フルオロスルホン酸塩
本発明の非水系電解液は、電解質及び非水系溶媒とともに、フルオロスルホン酸塩を含有していてもよい。
フルオロスルホン酸塩は、一般式(D)で表される。
X1(FSO3)n (D)
式中、X1は、フルオロスルホン酸塩のカウンターカチオンを示し、nはカウンターカチオンの価数を示す。
フルオロスルホン酸塩のカウンターカチオンとしては特に限定はないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、及び、NR11R12R13R14(式中、R11~R14は、各々独立に、水素原子又は炭素原子1~12の有機基を表わす。)で表されるアンモニウム等が挙げられる。
【0026】
上記アンモニウムのR11~R14で表わされる炭素原子1~12の有機基としては特に限定はないが、例えば、水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環基等が挙げられる。中でもR11~R14として、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は窒素原子含有複素環基等が好ましい。
【0027】
フルオロスルホン酸塩の具体例としては、フルオロスルホン酸リチウム、フルオロスルホン酸ナトリウム、フルオロスルホン酸カリウム、フルオロスルホン酸ルビジウム、フルオロスルホン酸セシウム等が挙げられ、フルオロスルホン酸リチウムが好ましい。
フルオロスルホン酸塩は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、フルオロスルホン酸塩の配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下の濃度で含有させる。上記範囲内であれば、非水系電解液電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態や電池の膨れを回避しやすい。
【0028】
II.リチウムビス(フルオロスルホニルイミド)
【0029】
【0030】
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの配合量は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下の濃度で含有させる。
この範囲内であれば、非水系電解液電池が十分なサイクル特性の向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が向上し、ガス発生量が少なくなり、放電容量維持率が低下するといった事態や電池の膨れを回避しやすい。
【0031】
III.一般式(A)で表される化合物
【0032】
【0033】
式(A)中、R1は、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子1~10のアルキル基、アルケニル基若しくはアルキニル基であるか、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子6~20の芳香族炭化水素基であり、nは0~1の整数を示す。ハロゲン原子としては、好ましくはフッ素原子である。
【0034】
式(A)中、R1が炭素原子1~10のアルキル基である場合、アルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル等の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又はシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等が挙げられる。これらの基はフッ素原子で置換されていてもよい。
【0035】
式(A)中、R1がアルケニル基の場合、R1は炭素原子が2~6のアルケニル基であることが好ましい。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、1-プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基等が挙げられる。これらの基はフッ素原子で置換されていてもよく、フッ素置換されたビニル基、アリル基、メタリル基等が挙げられる。
【0036】
式(A)中、R1がアルキニル基の場合は、R1は炭素原子が2~6のアルキニル基であることが好ましい。アルキニル基の具体例としては、エチニル基、プロパルギル基、1-プロピニル基、ブチニル基、ヘキシニル基等が挙げられる。これらの基はフッ素原子で置換されていてもよく、フッ素置換されたエチニル基、プロパルギル基、1-プロピニル基等が挙げられる。
【0037】
式(A)中、R1がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子6~20の芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、トリル基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。これらの基はフッ素、トリフルオロメチル基等で置換されていてもよく、フッ素、トリフルオロメチル基等で置換されたフェニル基、トリル基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0038】
式(A)で表される化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。なお本発明は、以下に示した化合物に限定されるものではない。
【0039】
【0040】
中でも、式(A)中のR1は、フッ素置換されていてもよいメチル、エチル、ブチル基等の炭素原子1~8の直鎖アルキル基;フッ素、トリフルオロメチル基等で置換されていてもよいフェニル基、トリル基、ベンジル基;又はフッ素置換されていてもよいビニル基、アリル基、メタリル基、エチニル基、プロパルギル基がサイクル特性や電池膨れ等の特性の面から好ましく、さらに好ましくはフッ素置換されていてもよいメチル、エチル、ブチル基等の直鎖アルキル基である。また、nは0が特性向上の面から好ましい。
【0041】
式(A)で表される化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせで任意の比率で併用してもよい。また、非水系電解液中の式(A)で表される化合物の配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下の濃度で含有させる。上記範囲内であれば、非水系電解液電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態や、電池の膨れを回避しやすい。
【0042】
フルオロスルホニル構造(-SO2F)を有する化合物の中でも、好ましくはフルオロスルホン酸塩、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、さらに好ましくは、フルオロスルホン酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、特に好ましくは、フルオロスルホン酸リチウムである。
【0043】
1-1-2.ジフルオロリン酸塩
ジフルオロリン酸塩は、一般式(E)で表される。
X2(F2PO2)m (E)
式中、X2は、フルオロリン酸塩のカウンターカチオンを示し、mはカウンターカチオンの価数を示す。
ジフルオロリン酸塩のカウンターカチオンとしては特に限定はないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、及び、NR11R12R13R14(式中、R11~R14は、各々独立に、水素原子又は炭素原子1~12の有機基を表わす。)で表されるアンモニウム等が挙げられる。
【0044】
上記アンモニウムのR11~R14で表わされる炭素原子1~12の有機基としては特に限定はないが、例えば、水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基、置換基を有していてもよい窒素原子含有複素環基等が挙げられる。中でもR11~R14として、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又は窒素原子含有複素環基等が好ましい。
【0045】
ジフルオロリン酸塩の具体例としては、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸ナトリウム、ジフルオロリン酸カリウム等が挙げられ、ジフルオロリン酸リチウムが好ましい。
ジフルオロリン酸塩は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、ジフルオロリン酸塩の配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下の濃度で含有させる。上記範囲内であれば、非水系電解液電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすい。また、上記範囲内であれば、高温保存特性が向上し、ガス発生量が少なくなり、放電容量維持率の低下や電池膨れといった事態を回避しやすい。
【0046】
1-1-4.イソシアネート化合物
イソシアネート化合物としては、分子内にイソシアナト基を有している化合物であれば特にその種類は限定されない。
【0047】
I.炭化水素系モノイソシアネート化合物
【0048】
炭化水素系モノイソシアネート化合物の具体例としては、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、tert-ブチルイソシアネート、ペンチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、フロロフェニルイソシアネート等が挙げられる。
【0049】
II.炭化水素系ジイソシアネート化合物
【0050】
炭化水素系ジイソシアネート化合物の具体例としては、例えば、モノメチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,3-ジイソシアナトプロパン、1,4-ジイソシアナト-2-ブテン、1,4-ジイソシアナト-2-フルオロブタン、1,4-ジイソシアナト-2,3-ジフルオロブタン、1,5-ジイソシアナト-2-ペンテン、1,5-ジイソシアナト-2-メチルペンタン、1,6-ジイソシアナト-2-ヘキセン、1,6-ジイソシアナト-3-ヘキセン、1,6-ジイソシアナト-3-フルオロヘキサン、1,6-ジイソシアナト-3,4-ジフルオロヘキサン、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,2-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,2-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン-1,1’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,2’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-3,3’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,5-ジイルビス(メチルイソシアネート)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,6-ジイルビス(メチルイソシアネート)、ジイソシアン酸イソホロン、カルボニルジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトブタン-1,4-ジオン、1,5-ジイソシアナトペンタン-1,5-ジオン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート等が挙げられる。
【0051】
III.炭素-炭素不飽和結合を有するイソシアネート化合物
【0052】
炭素-炭素不飽和結合を有するイソシアネート化合物の具体例としては、例えば、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、エチニルイソシアネート、プロピニルイソシアネート等の炭素-炭素不飽和結合を有するモノイソシアネート化合物が挙げられる。
【0053】
IV.一般式(C)で表されるイソシアネート化合物
一般式(C)で表されるイソシアネート化合物は、-SO2-NCO構造を有する。
【0054】
【0055】
式(C)中、R2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子1~10のアルキル基、アルケニル基若しくはアルキニル基であるか、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子6~20の芳香族炭化水素基であるか、又はイソシアナト基、ハロゲンであり、nは0~1の整数を示す。
【0056】
式(C)中、R2が炭素原子1~10のアルキル基である場合、アルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基又はフッ素置換されたアルキル基、又は、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等が挙げられる。
【0057】
式(C)中、R2がアルケニル基の場合、R1は炭素原子が2~6のアルケニル基であることが好ましい。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、1-プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基又は、フッ素置換されたビニル基、アリル基、メタリル基等が挙げられる。
【0058】
式(C)中、R2がアルキニル基の場合は、R1は炭素原子が2~6のアルキニル基であることが好ましい。アルキニル基の具体例としては、エチニル基、プロパルギル基、1-プロピニル基、ブチニル基、ヘキシニル基、又は、フッ素置換されたエチニル基、プロパルギル基、1-プロピニル基等が挙げられる。
【0059】
式(C)中、R2がハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子6~20の芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、トリル基、ベンジル基、フェネチル基、又は、フッ素、トリフルオロメチル基等で置換されたフェニル基、トリル基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0060】
式(C)で表される化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。なお本発明は、以下に示した化合物に限定されるものではない。
【0061】
【0062】
これらのうち、イソプロピルイソシアネート、tert-ブチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、エチニルイソシアネート、プロピニルイソシアネート等の分岐及び/又は炭素-炭素不飽和結合を有するモノイソシアネート化合物;
モノメチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,5-ジイルビス(メチルイソシアネート)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,6-ジイルビス(メチルイソシアネート)、ジイソシアン酸イソホロン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート等の炭化水素系ジイソシアネート化合物;
一般式(C)で表されるイソシアネート化合物;
がサイクル特性・保存特性向上の点から好ましい。
【0063】
さらに好ましくは、イソプロピルイソシアネート、tert-ブチルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、アリルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、一般式(C)で表されるイソシアネート化合物は以下の構造で示す化合物が好ましい。
【化8】
【0064】
特に好ましくは、tert-ブチルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、トルエンスルホニルイソシアネート、ジイソシアナトスルホン、最も好ましくは、tert-ブチルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが電池特性のバランスが良く好ましい。また、炭化水素系ジイソシアネート化合物としては分岐鎖を有するイソシアネート化合物が好ましい。
【0065】
また、本発明に用いるイソシアネート化合物は、分子内に少なくとも2つのイソシアナト基を有する化合物から誘導される三量体化合物、もしくはそれに多価アルコールを付加した脂肪族ポリイソシアネートであってもよい。例えば、下記一般式(3-1)~(3-4)の基本構造で示されるビウレット、イソシアヌレート、アダクト、及び二官能のタイプの変性ポリイソシアネート等が例示できる(下記一般式(1-2-1)~(1-2-4)中、R及びR’はそれぞれ独立して任意の炭化水素基である)。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
本発明で用いる分子内に少なくとも2つのイソシアナト基を有する化合物は、ブロック剤でブロックして保存安定性を高めた、所謂ブロックイソシアネートも含まれる。ブロック剤には、アルコール類、フェノール類、有機アミン類、オキシム類、ラクタム類を挙げることができ、具体的には、n-ブタノール、フェノール、トリブチルアミン、ジエチルエタノールアミン、メチルエチルケトキシム、ε-カプロラクタム等を挙げることができる。
【0071】
分子内に少なくとも2つのイソシアナト基を有する化合物に基づく反応を促進し、より高い効果を得る目的で、ジブチルスズジラウレート等のような金属触媒や、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7のようなアミン系触媒等を併用することも好ましい。
さらに、イソシアナト基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0072】
本発明の非水系電解液全体に対するイソシアナト基を有する化合物の配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下、最も好ましくは0.5質量%以下の濃度で含有させる。
上記範囲を満たした場合は、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性、電池膨れ等の効果がより向上する。
【0073】
1-2.炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素原子を有する環状カーボネート、酸無水物化合物、環状スルホン酸エステル化合物
本発明の非水系電解液は、フルオロスルホニル構造(-SO2F)を有する化合物、ジフルオロリン酸塩及びイソシアネート化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の他に、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素原子を有する環状カーボネート、酸無水物化合物、環状スルホン酸エステル化合物及びシアノ基を有する化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに含有することが電池特性向上の点から好ましい。
【0074】
1-2-1.炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート
炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート(以下、「不飽和環状カーボネート」と記載する場合がある)としては、炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する環状カーボネートであれば、特に制限はなく、任意の不飽和カーボネートを用いることができる。なお、芳香環を有する環状カーボネートも、不飽和環状カーボネートに包含されることとする。
【0075】
不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート類、芳香環又は炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類、フェニルカーボネート類、ビニルカーボネート類、アリルカーボネート類、カテコールカーボネート類等が挙げられる。
ビニレンカーボネート類としては、
ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5-ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、4,5-ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、4,5-ジビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート、4,5-ジアリルビニレンカーボネート、4-フルオロビニレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルビニレンカーボネート、4-フルオロ-5-フェニルビニレンカーボネート、4-フルオロ-5-ビニルビニレンカーボネート、4-アリル-5-フルオロビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0076】
芳香環又は炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類の具体例としては、
ビニルエチレンカーボネート、4,5-ジビニルエチレンカーボネート、4-メチル-5-ビニルエチレンカーボネート、4-アリル-5-ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、4,5-ジエチニルエチレンカーボネート、4-メチル-5-エチニルエチレンカーボネート、4-ビニル-5-エチニルエチレンカーボネート、4-アリル-5-エチニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、4,5-ジフェニルエチレンカーボネート、4-フェニル-5-ビニルエチレンカーボネート、4-アリル-5-フェニルエチレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、4,5-ジアリルエチレンカーボネート、4-メチル-5-アリルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0077】
中でも、好ましい不飽和環状カーボネートとしては、
ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5-ジメチルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、4,5-ビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート、4,5-ジアリルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、4,5-ジビニルエチレンカーボネート、4-メチル-5-ビニルエチレンカーボネート、アリルエチレンカーボネート、4,5-ジアリルエチレンカーボネート、4-メチル-5-アリルエチレンカーボネート、4-アリル-5-ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、4,5-ジエチニルエチレンカーボネート、4-メチル-5-エチニルエチレンカーボネート、4-ビニル-5-エチニルエチレンカーボネートが挙げられる。
【0078】
また、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネートはさらに安定な界面保護被膜を形成するので、特に好ましい。
不飽和環状カーボネートの分子量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、好ましくは、80以上、250以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する不飽和環状カーボネートの溶解性を確保しやすく、本発明の効果が十分に発現されやすい。不飽和環状カーボネートの分子量は、より好ましくは85以上であり、また、より好ましくは150以下である。不飽和環状カーボネートの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
【0079】
不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、不飽和環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。この範囲内であれば、非水系電解液電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0080】
1-2-2.フッ素原子を有する環状カーボネート
フッ素原子を有する環状カーボネート化合物としては、炭素原子数2~6のアルキレン基を有する環状カーボネートのフッ素化物、及びその誘導体が挙げられ、例えばエチレンカーボネートのフッ素化物、及びその誘導体が挙げられる。エチレンカーボネートのフッ素化物の誘導体としては、例えば、アルキル基(例えば、炭素原子数1~4個のアルキル基)で置換されたエチレンカーボネートのフッ素化物が挙げられる。中でもフッ素原子を1~8個有するエチレンカーボネート、及びその誘導体が好ましい。
【0081】
具体的には、
モノフルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(ジフルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(トリフルオロメチル)-エチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-4-フルオロエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-5-フルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4,5-ジメチルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4,5-ジメチルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5,5-ジメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0082】
中でも、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート及び4,5-ジフルオロエチレンカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種が、高イオン伝導性を与え、かつ好適に界面保護被膜を形成する点でより好ましい。
フッ素原子を有する環状カーボネート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0083】
フッ素原子を有する環状カーボネート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。本発明の非水系電解液全体に対するハロゲン化環状カーボネートの配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。ただし、モノフルオロエチレンカーボネートは溶媒として用いてもよく、その場合は上記の含有量に限定されない。
【0084】
1-2-3.酸無水物化合物
酸無水物化合物としては、カルボン酸無水物、硫酸無水物、硝酸無水物、スルホン酸無水物、リン酸無水物、亜リン酸無水物であることや、環状酸無水物、鎖状酸無水物であること等の限定を受けず、酸無水物化合物であるならば特にその構造は限定されないものとする。
【0085】
酸無水物化合物の具体例としては、例えば、
無水マロン酸、無水琥珀酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、2、3-ジメチルマレイン酸無水物、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水フェニルマレイン酸、2、3-ジフェニルマレイン酸無水物、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸無水物、4,4‘-オキシジフタル酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、フェニルコハク酸無水物、2-フェニルグルタル酸無水物、アリルコハク酸無水物、2-ブテン-11-イルコハク酸無水物、(2-メチル-2-プロペニル)コハク酸無水物、テトラフルオロ琥珀酸無水物、ジアセチル-酒石酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、メタクリル酸無水物、アクリル酸無水物、クロトン酸無水物、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、ノナフルオロブタンスルホン酸無水物、無水酢酸等が挙げられる。
【0086】
これらのうち、
無水琥珀酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水フェニルマレイン酸、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、アリル琥珀酸無水物、無水酢酸、メタクリル酸無水物、アクリル酸無水物、メタンスルホン酸無水物が特に好ましい。
【0087】
酸無水物化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の非水系電解液全体に対する酸無水物化合物の配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以下である。
【0088】
上記範囲を満たした場合は、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等の効果がより向上する。
1-2-4.環状スルホン酸エステル化合物
環状スルホン酸エステル化合物としては、特にその種類は限定されない。
環状スルホン酸エステルの具体例としては、例えば、
1,3-プロパンスルトン、1-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、2-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、1-メチル-1,3-プロパンスルトン、2-メチル-1,3-プロパンスルトン、3-メチル-1,3-プロパンスルトン、1-プロペン-1,3-スルトン、2-プロペン-1,3-スルトン、1-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、2-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、3-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、1-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、2-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、3-フルオロ-2-プロペン-1,3-スルトン、1-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、2-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、3-メチル-1-プロペン-1,3-スルトン、1-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、2-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、3-メチル-2-プロペン-1,3-スルトン、1,4-ブタンスルトン、1-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、2-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、3-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、4-フルオロ-1,4-ブタンスルトン、1-メチル-1,4-ブタンスルトン、2-メチル-1,4-ブタンスルトン、3-メチル-1,4-ブタンスルトン、4-メチル-1,4-ブタンスルトン、1-ブテン-1,4-スルトン、2-ブテン-1,4-スルトン、3-ブテン-1,4-スルトン、1-フルオロ-1-ブテン-1,4-スルトン、2-フルオロ-1-ブテン-1,4-スルトン、3-フルオロ-1-ブテン-1,4-スルトン、4-フルオロ-1-ブテン-1,4-スルトン、1-フルオロ-2-ブテン-1,4-スルトン、2-フルオロ-2-ブテン-1,4-スルトン、3-フルオロ-2-ブテン-1,4-スルトン、4-フルオロ-2-ブテン-1,4-スルトン、1-フルオロ-3-ブテン-1,4-スルトン、2-フルオロ-3-ブテン-1,4-スルトン、3-フルオロ-3-ブテン-1,4-スルトン、4-フルオロ-3-ブテン-1,4-スルトン、1-メチル-1-ブテン-1,4-スルトン、2-メチル-1-ブテン-1,4-スルトン、3-メチル-1-ブテン-1,4-スルトン、4-メチル-1-ブテン-1,4-スルトン、1-メチル-2-ブテン-1,4-スルトン、2-メチル-2-ブテン-1,4-スルトン、3-メチル-2-ブテン-1,4-スルトン、4-メチル-2-ブテン-1,4-スルトン、1-メチル-3-ブテン-1,4-スルトン、2-メチル-3-ブテン-1,4-スルトン、3-メチル-3-ブテン-1,4-スルトン、4-メチル-3-ブテン-1,4-スルトン、1,5-ペンタンスルトン、1-フルオロ-1,5-ペンタンスルトン、2-フルオロ-1,5-ペンタンスルトン、3-フルオロ-1,5-ペンタンスルトン、4-フルオロ-1,5-ペンタンスルトン、5-フルオロ-1,5-ペンタンスルトン、1-メチル-1,5-ペンタンスルトン、2-メチル-1,5-ペンタンスルトン、3-メチル-1,5-ペンタンスルトン、4-メチル-1,5-ペンタンスルトン、5-メチル-1,5-ペンタンスルトン、1-ペンテン-1,5-スルトン、2-ペンテン-1,5-スルトン、3-ペンテン-1,5-スルトン、4-ペンテン-1,5-スルトン、1-フルオロ-1-ペンテン-1,5-スルトン、2-フルオロ-1-ペンテン-1,5-スルトン、3-フルオロ-1-ペンテン-1,5-スルトン、4-フルオロ-1-ペンテン-1,5-スルトン、5-フルオロ-1-ペンテン-1,5-スルトン、1-フルオロ-2-ペンテン-1,5-スルトン、2-フルオロ-2-ペンテン-1,5-スルトン、3-フルオロ-2-ペンテン-1,5-スルトン、4-フルオロ-2-ペンテン-1,5-スルトン、5-フルオロ-2-ペンテン-1,5-スルトン、1-フルオロ-3-ペンテン-1,5-スルトン、2-フルオロ-3-ペンテン-1,5-スルトン、3-フルオロ-3-ペンテン-1,5-スルトン、4-フルオロ-3-ペンテン-1,5-スルトン、5-フルオロ-3-ペンテン-1,5-スルトン、1-フルオロ-4-ペンテン-1,5-スルトン、2-フルオロ-4-ペンテン-1,5-スルトン、3-フルオロ-4-ペンテン-1,5-スルトン、4-フルオロ-4-ペンテン-1,5-スルトン、5-フルオロ-4-ペンテン-1,5-スルトン、1-メチル-1-ペンテン-1,5-スルトン、2-メチル-1-ペンテン-1,5-スルトン、3-メチル-1-ペンテン-1,5-スルトン、4-メチル-1-ペンテン-1,5-スルトン、5-メチル-1-ペンテン-1,5-スルトン、1-メチル-2-ペンテン-1,5-スルトン、2-メチル-2-ペンテン-1,5-スルトン、3-メチル-2-ペンテン-1,5-スルトン、4-メチル-2-ペンテン-1,5-スルトン、5-メチル-2-ペンテン-1,5-スルトン、1-メチル-3-ペンテン-1,5-スルトン、2-メチル-3-ペンテン-1,5-スルトン、3-メチル-3-ペンテン-1,5-スルトン、4-メチル-3-ペンテン-1,5-スルトン、5-メチル-3-ペンテン-1,5-スルトン、1-メチル-4-ペンテン-1,5-スルトン、2-メチル-4-ペンテン-1,5-スルトン、3-メチル-4-ペンテン-1,5-スルトン、4-メチル-4-ペンテン-1,5-スルトン、5-メチル-4-ペンテン-1,5-スルトン等のスルトン化合物;
メチレンスルフェート、エチレンスルフェート、プロピレンスルフェート等のスルフェート化合物;
メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネート等のジスルホネート化合物;
1,2,3-オキサチアゾリジン-2,2-ジオキシド、3-メチル-1,2,3-オキサチアゾリジン-2,2-ジオキシド、3H-1,2,3-オキサチアゾール-2,2-ジオキシド、5H-1,2,3-オキサチアゾール-2,2-ジオキシド、1,2,4-オキサチアゾリジン-2,2-ジオキシド、4-メチル-1,2,4-オキサチアゾリジン-2,2-ジオキシド、3H-1,2,4-オキサチアゾール-2,2-ジオキシド、5H-1,2,4-オキサチアゾール-2,2-ジオキシド、1,2,5-オキサチアゾリジン-2,2-ジオキシド、5-メチル-1,2,5-オキサチアゾリジン-2,2-ジオキシド、3H-1,2,5-オキサチアゾール-2,2-ジオキシド、5H-1,2,5-オキサチアゾール-2,2-ジオキシド、1,2,3-オキサチアジナン-2,2-ジオキシド、3-メチル-1,2,3-オキサチアジナン-2,2-ジオキシド、5,6-ジヒドロ-1,2,3-オキサチアジン-2,2-ジオキシド、1,2,4-オキサチアジナン-2,2-ジオキシド、4-メチル-1,2,4-オキサチアジナン-2,2-ジオキシド、5,6-ジヒドロ-1,2,4-オキサチアジン-2,2-ジオキシド、3,6-ジヒドロ-1,2,4-オキサチアジン-2,2-ジオキシド、3,4-ジヒドロ-1,2,4-オキサチアジン-2,2-ジオキシド、1,2,5-オキサチアジナン-2,2-ジオキシド、5-メチル-1,2,5-オキサチアジナン-2,2-ジオキシド、5,6-ジヒドロ-1,2,5-オキサチアジン-2,2-ジオキシド、3,6-ジヒドロ-1,2,5-オキサチアジン-2,2-ジオキシド、3,4-ジヒドロ-1,2,5-オキサチアジン-2,2-ジオキシド、1,2,6-オキサチアジナン-2,2-ジオキシド、6-メチル-1,2,6-オキサチアジナン-2,2-ジオキシド、5,6-ジヒドロ-1,2,6-オキサチアジン-2,2-ジオキシド、3,4-ジヒドロ-1,2,6-オキサチアジン-2,2-ジオキシド、5,6-ジヒドロ-1,2,6-オキサチアジン-2,2-ジオキシド等の含窒素化合物;
1,2,3-オキサチアホスラン-2,2-ジオキシド、3-メチル-1,2,3-オキサチアホスラン-2,2-ジオキシド、3-メチル-1,2,3-オキサチアホスラン-2,2,3-トリオキシド、3-メトキシ-1,2,3-オキサチアホスラン-2,2,3-トリオキシド、1,2,4-オキサチアホスラン-2,2-ジオキシド、4-メチル-1,2,4-オキサチアホスラン-2,2-ジオキシド、4-メチル-1,2,4-オキサチアホスラン-2,2,4-トリオキシド、4-メトキシ-1,2,4-オキサチアホスラン-2,2,4-トリオキシド、1,2,5-オキサチアホスラン-2,2-ジオキシド、5-メチル-1,2,5-オキサチアホスラン-2,2-ジオキシド、5-メチル-1,2,5-オキサチアホスラン-2,2,5-トリオキシド、5-メトキシ-1,2,5-オキサチアホスラン-2,2,5-トリオキシド、1,2,3-オキサチアホスフィナン-2,2-ジオキシド、3-メチル-1,2,3-オキサチアホスフィナン-2,2-ジオキシド、3-メチル-1,2,3-オキサチアホスフィナン-2,2,3-トリオキシド、3-メトキシ-1,2,3-オキサチアホスフィナン-2,2,3-トリオキシド、1,2,4-オキサチアホスフィナン-2,2-ジオキシド、4-メチル-1,2,4-オキサチアホスフィナン-2,2-ジオキシド、4-メチル-1,2,4-オキサチアホスフィナン-2,2,3-トリオキシド、4-メチル-1,5,2,4-ジオキサチアホスフィナン-2,4-ジオキシド、4-メトキシ-1,5,2,4-ジオキサチアホスフィナン-2,4-ジオキシド、3-メトキシ-1,2,4-オキサチアホスフィナン-2,2,3-トリオキシド、1,2,5-オキサチアホスフィナン-2,2-ジオキシド、5-メチル-1,2,5-オキサチアホスフィナン-2,2-ジオキシド、5-メチル-1,2,5-オキサチアホスフィナン-2,2,3-トリオキシド、5-メトキシ-1,2,5-オキサチアホスフィナン-2,2,3-トリオキシド、1,2,6-オキサチアホスフィナン-2,2-ジオキシド、6-メチル-1,2,6-オキサチアホスフィナン-2,2-ジオキシド、6-メチル-1,2,6-オキサチアホスフィナン-2,2,3-トリオキシド、6-メトキシ-1,2,6-オキサチアホスフィナン-2,2,3-トリオキシド等の含リン化合物;
これらのうち、1,3-プロパンスルトン、1-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、2-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、1-プロペン-1,3-スルトン、1-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、2-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、3-フルオロ-1-プロペン-1,3-スルトン、1,4-ブタンスルトン、メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネートが保存特性向上の点から好ましく、1,3-プロパンスルトン、1-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、2-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、3-フルオロ-1,3-プロパンスルトン、1-プロペン-1,3-スルトンがより好ましい。
【0089】
環状スルホン酸エステル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。本発明の非水系電解液全体に対する環状スルホン酸エステル化合物の配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。上記範囲を満たした場合は、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等の効果がより向上する。
【0090】
1-2-5.シアノ基を有する化合物
シアノ基を有する化合物としては、分子内にシアノ基を有している化合物であれば特にその種類は限定されない。
シアノ基を有する化合物の具体例としては、例えば、
アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、ラウロニトリル、2-メチルブチロニトリル、トリメチルアセトニトリル、ヘキサンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトノニトリル、3-メチルクロトノニトリル、2-メチル-2-ブテン二トリル、2-ペンテンニトリル、2-メチル-2-ペンテンニトリル、3-メチル-2-ペンテンニトリル、2-ヘキセンニトリル、フルオロアセトニトリル、ジフルオロアセトニトリル、トリフルオロアセトニトリル、2-フルオロプロピオニトリル、3-フルオロプロピオニトリル、2,2-ジフルオロプロピオニトリル、2,3-ジフルオロプロピオニトリル、3,3-ジフルオロプロピオニトリル、2,2,3-トリフルオロプロピオニトリル、3,3,3-トリフルオロプロピオニトリル、3,3’-オキシジプロピオニトリル、3,3’-チオジプロピオニトリル、1,2,3-プロパントリカルボニトリル、1,3,5-ペンタントリカルボニトリル、ペンタフルオロプロピオニトリル等のニトリル基を1つ有する化合物
マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、メチルマロノニトリル、エチルマロノニトリル、イソプロピルマロノニトリル、tert-ブチルマロノニトリル、メチルスクシノニトリル、2,2-ジメチルスクシノニトリル、2,3-ジメチルスクシノニトリル、2,3,3-トリメチルスクシノニトリル、2,2,3,3-テトラメチルスクシノニトリル、2,3-ジエチル-2,3-ジメチルスクシノニトリル、2,2-ジエチル-3,3-ジメチルスクシノニトリル、ビシクロヘキシル-1,1-ジカルボニトリル、ビシクロヘキシル-2,2-ジカルボニトリル、ビシクロヘキシル-3,3-ジカルボニトリル、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジカルボニトリル、2,3-ジイソブチル-2,3-ジメチルスクシノニトリル、2,2-ジイソブチル-3,3-ジメチルスクシノニトリル、2-メチルグルタロニトリル、2,3-ジメチルグルタロニトリル、2,4-ジメチルグルタロニトリル、2,2,3,3-テトラメチルグルタロニトリル、2,2,4,4-テトラメチルグルタロニトリル、2,2,3,4-テトラメチルグルタロニトリル、2,3,3,4-テトラメチルグルタロニトリル、マレオニトリル、フマロニトリル、1,4-ジシアノペンタン、2,6-ジシアノヘプタン、2,7-ジシアノオクタン、2,8-ジシアノノナン、1,6-ジシアノデカン、1,2-ジジアノベンゼン、1,3-ジシアノベンゼン、1,4-ジシアノベンゼン、3,3’-(エチレンジオキシ)ジプロピオニトリル、3,3’-(エチレンジチオ)ジプロピオニトリル、3,9-ビス(2-シアノエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のニトリル基を2つ有する化合物;
シクロヘキサントリカルボニトリル、トリスシアノエチルアミン、トリスシアノエトキシプロパン、トリシアノエチレン、ペンタントリカルボニトリル、プロパントリカルボニトリル、ヘプタントリカルボニトリル等のシアノ基を3つ有する化合物
等が挙げられる。
【0091】
これらのうち、ラウロニトリル、クロトノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、フマロニトリル、3,9-ビス(2-シアノエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが保存特性向上の点から好ましい。また、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、フマロニトリル、3,9-ビス(2-シアノエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のジニトリル化合物が特に好ましい。
【0092】
ニトリル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。本発明の非水系電解液全体に対するニトリル化合物の配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。上記範囲を満たした場合は、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等の効果がより向上する。
【0093】
1-3.電解質
<リチウム塩>
電解質としては、通常、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、この用途に用いることが知られているものであれば特に制限がなく、任意のものを用いることができ、具体的には以下のものが挙げられる。
【0094】
例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAlF4、LiSbF6、LiTaF6、LiWF7等の無機リチウム塩;
LiWOF5等のタングステン酸リチウム類;
HCO2Li、CH3CO2Li、CH2FCO2Li、CHF2CO2Li、CF3CO2Li、CF3CH2CO2Li、CF3CF2CO2Li、CF3CF2CF2CO2Li、CF3CF2CF2CF2CO2Li等のカルボン酸リチウム塩類;
FSO3Li、CH3SO3Li、CH2FSO3Li、CHF2SO3Li、CF3SO3Li、CF3CF2SO3Li、CF3CF2CF2SO3Li、CF3CF2CF2CF2SO3Li等のスルホン酸リチウム塩類;
【0095】
LiN(FCO)2、LiN(FCO)(FSO2)、LiN(FSO2)2、LiN(FSO2)(CF3SO2)、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)等のリチウムイミド塩類;
LiC(FSO2)3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3等のリチウムメチド塩類;
リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート等のリチウムオキサラトボレート塩類;
リチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、リチウムトリス(オキサラト)フォスフェート等のリチウムオキサラトフォスフェート塩類;
その他、LiPF4(CF3)2、LiPF4(C2F5)2、LiPF4(CF3SO2)2、LiPF4(C2F5SO2)2、LiBF3CF3、LiBF3C2F5、LiBF3C3F7、LiBF2(CF3)2、LiBF2(C2F5)2、LiBF2(CF3SO2)2、LiBF2(C2F5SO2)2等の含フッ素有機リチウム塩類;
等が挙げられる。
【0096】
中でも、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiTaF6、FSO3Li、CF3SO3Li、LiN(FSO2)2、LiN(FSO2)(CF3SO2)、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO2)3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、リチウムビスオキサラトボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート、リチウムジフルオロビスオキサラトフォスフェート、LiBF3CF3、LiBF3C2F5、LiPF3(CF3)3、LiPF3(C2F5)3等が出力特性やハイレート充放電特性、高温保存特性、サイクル特性等を向上させる効果がある点から特に好ましい。
【0097】
これらのリチウム塩は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合の好ましい一例は、LiPF6とLiBF4、LiPF6とLiN(FSO2)2や、LiPF6とFSO3Li等の併用であり、負荷特性やサイクル特性を向上させる効果がある。
この場合、非水系電解液全体100質量%に対するLiBF4或いはFSO3Liの濃度は配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液に対して、通常、0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、また、通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。
【0098】
また、他の一例は、無機リチウム塩と有機リチウム塩との併用であり、この両者の併用は、高温保存による劣化を抑制する効果がある。有機リチウム塩としては、CF3SO3Li、LiN(FSO2)2、LiN(FSO2)(CF3SO2)、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO2)3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、リチウムビスオキサラトボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート、リチウムジフルオロビスオキサラトフォスフェート、LiBF3CF3、LiBF3C2F5、LiPF3(CF3)3、LiPF3(C2F5)3等であるのが好ましい。この場合には、非水系電解液全体100質量%に対する有機リチウム塩の割合は、好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
【0099】
非水系電解液中のこれらのリチウム塩の濃度は、本発明の効果を損なわない限り、その含有量は特に制限されないが、電解液の電気伝導率を良好な範囲とし、良好な電池性能を確保する点から、非水系電解液中のリチウムの総モル濃度は、好ましくは0.3mol/L以上、より好ましくは0.4mol/L以上、さらに好ましくは0.5mol/L以上であり、また、好ましくは3mol/L以下、より好ましくは2.5mol/L以下、さらに好ましくは2.0mol/L以下である。
リチウムの総モル濃度が上記範囲内にあることにより、電解液の電気伝導率が十分となり、また、粘度上昇による電気伝導度の低下、それに起因する電池性能の低下を防ぐ。
【0100】
1-4.非水溶媒
本発明における非水溶媒について特に制限はなく、公知の有機溶媒を用いることが可能である。これらを例示すると、フッ素原子を有さない環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状及び鎖状カルボン酸エステル、エーテル化合物、スルホン系化合物等が挙げられる。
【0101】
<フッ素原子を有さない環状カーボネート>
フッ素原子を有さない環状カーボネートとしては、炭素原子2~4のアルキレン基を有する環状カーボネートが挙げられる。
炭素原子2~4のアルキレン基を有する、フッ素原子を有さない環状カーボネートの具体的な例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートが挙げられる。中でも、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から特に好ましい。
【0102】
フッ素原子を有さない環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
フッ素原子を有さない環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、1種を単独で用いる場合の配合量は、非水溶媒100体積%中、5体積%以上、より好ましくは10体積%以上である。この範囲とすることで、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液電池の大電流放電特性、負極に対する安定性、サイクル特性を良好な範囲としやすくなる。また、95体積%以下、より好ましくは90体積%以下、さらに好ましくは85体積%以下である。この範囲とすることで、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては非水系電解液電池の負荷特性を良好な範囲としやすくなる。
【0103】
<鎖状カーボネート>
鎖状カーボネートとしては、炭素原子3~7の鎖状カーボネートが好ましく、炭素原子3~7のジアルキルカーボネートがより好ましい。
鎖状カーボネートの具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n-プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルメチルカーボネート、イソブチルメチルカーボネート、t-ブチルメチルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート、n-ブチルエチルカーボネート、イソブチルエチルカーボネート、t-ブチルエチルカーボネート等が挙げられる。
【0104】
中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n-プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネートが好ましく、特に好ましくはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートである。
また、フッ素原子を有する鎖状カーボネート類(以下、「フッ素化鎖状カーボネート」と記載する場合がある)も好適に用いることができる。
【0105】
フッ素化鎖状カーボネートが有するフッ素原子の数は、1以上であれば特に制限されないが、通常6以下であり、好ましくは4以下である。フッ素化鎖状カーボネートが複数のフッ素原子を有する場合、それらは互いに同一の炭素に結合していてもよく、異なる炭素に結合していてもよい。
フッ素化鎖状カーボネートとしては、フッ素化ジメチルカーボネート及びその誘導体、フッ素化エチルメチルカーボネート及びその誘導体、フッ素化ジエチルカーボネート及びその誘導体等が挙げられる。
【0106】
フッ素化ジメチルカーボネート及びその誘導体としては、フルオロメチルメチルカーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロ)メチルカーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート等が挙げられる。
フッ素化エチルメチルカーボネート及びその誘導体としては、2-フルオロエチルメチルカーボネート、エチルフルオロメチルカーボネート、2,2-ジフルオロエチルメチルカーボネート、2-フルオロエチルフルオロメチルカーボネート、エチルジフルオロメチルカーボネート、2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネート、2,2-ジフルオロエチルフルオロメチルカーボネート、2-フルオロエチルジフルオロメチルカーボネート、エチルトリフルオロメチルカーボネート等が挙げられる。
【0107】
フッ素化ジエチルカーボネート及びその誘導体としては、エチル-(2-フルオロエチル)カーボネート、エチル-(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2-フルオロエチル)カーボネート、エチル-(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、2,2-ジフルオロエチル-2’-フルオロエチルカーボネート、ビス(2,2-ジフルオロエチル)カーボネート、2,2,2-トリフルオロエチル-2’-フルオロエチルカーボネート、2,2,2-トリフルオロエチル-2’,2’-ジフルオロエチルカーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。
【0108】
鎖状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
鎖状カーボネートの配合量は、非水溶媒100体積%中、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上である。このように下限を設定することにより、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては非水系電解液電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。また、鎖状カーボネートは、非水溶媒100体積%中、90体積%以下、より好ましくは85体積%以下、特に好ましくは80体積%以下であることが好ましい。このように上限を設定することにより、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。
【0109】
<環状カルボン酸エステル>
環状カルボン酸エステルとしては、炭素原子数が3~12のものが好ましい。
具体的には、ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン、ガンマカプロラクトン、イプシロンカプロラクトン等が挙げられる。中でも、ガンマブチロラクトンがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から特に好ましい。
【0110】
環状カルボン酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
環状カルボン酸エステルの配合量は、通常、非水溶媒100体積%中、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上である。この範囲であれば、非水系電解液の電気伝導率を改善し、非水系電解液電池の大電流放電特性を向上させやすくなる。また、環状カルボン酸エステルの配合量は、好ましくは50体積%以下、より好ましくは40体積%以下である。このように上限を設定することにより、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避し、負極抵抗の増大を抑制し、非水系電解液二次電池の大電流放電特性を良好な範囲としやすくなる。
【0111】
<鎖状カルボン酸エステル>
鎖状カルボン酸エステルとしては、炭素原子が3~7のものが好ましい。具体的には、
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸-t-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸-n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸-n-ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸-t-ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸-n-プロピル、酪酸イソプロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸-n-プロピル、イソ酪酸イソプロピル等が挙げられる。
【0112】
中でも、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸-n-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸-n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、酪酸エチル等が、粘度低下によるイオン伝導度の向上の点から好ましい。
鎖状カルボン酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0113】
鎖状カルボン酸エステルの配合量は、通常、非水溶媒100体積%中、好ましくは10体積%以上、より好ましくは15体積%以上である。このように下限を設定することで、非水系電解液の電気伝導率を改善し、非水系電解液電池の大電流放電特性を向上させやすくなる。また、鎖状カルボン酸エステルの配合量は、非水溶媒100体積%中、好ましくは60体積%以下、より好ましくは50体積%以下である。このように上限を設定することで、負極抵抗の増大を抑制し、非水系電解液電池の大電流放電特性、サイクル特性を良好な範囲としやすくなる。
【0114】
<エーテル系化合物>
エーテル系化合物としては、一部の水素がフッ素にて置換されていても良い炭素原子3~10の鎖状エーテル、及び炭素原子3~6の環状エーテルが好ましい。
炭素原子3~10の鎖状エーテルとしては、
ジエチルエーテル、ジ(2-フルオロエチル)エーテル、ジ(2,2-ジフルオロエチル)エーテル、ジ(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、エチル(2-フルオロエチル)エーテル、エチル(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、エチル(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)エーテル、(2-フルオロエチル)(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル、(2-フルオロエチル)(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)エーテル、エチル-n-プロピルエーテル、エチル(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、エチル(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、2-フルオロエチル-n-プロピルエーテル、(2-フルオロエチル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(2-フルオロエチル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2-フルオロエチル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2-フルオロエチル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、2,2,2-トリフルオロエチル-n-プロピルエーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,2-トリフルオロエチル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-n-プロピルエーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(1,1,2,2-テトラフルオロエチル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ-n-プロピルエーテル、(n-プロピル)(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(n-プロピル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(n-プロピル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(3-フルオロ-n-プロピル)エーテル、(3-フルオロ-n-プロピル)(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3-フルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3-フルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)エーテル、(2,2,3,3-テトラフルオロ-n-プロピル)(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-n-プロピル)エーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジメトキシメタン、メトキシエトキシメタン、メトキシ(2-フルオロエトキシ)メタン、メトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタンメトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジエトキシメタン、エトキシ(2-フルオロエトキシ)メタン、エトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタン、エトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(2-フルオロエトキシ)メタン、(2-フルオロエトキシ)(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタン、(2-フルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタンジ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)メタン、(2,2,2-トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)メタン、ジメトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メトキシ(2-フルオロエトキシ)エタン、メトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、メトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジエトキシエタン、エトキシ(2-フルオロエトキシ)エタン、エトキシ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、エトキシ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2-フルオロエトキシ)エタン、(2-フルオロエトキシ)(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、(2-フルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2,2,2-トリフルオロエトキシ)エタン、(2,2,2-トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ)エタン、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル
等が挙げられる。
【0115】
炭素原子3~6の環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、2-メチル-1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン等、及びこれらのフッ素化化合物が挙げられる。
中でも、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタン、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルが、リチウムイオンへの溶媒和能力が高く、イオン解離性を向上させる点で好ましく、特に好ましくは、粘性が低く、高いイオン伝導度を与えることから、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタンである。
【0116】
エーテル系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
エーテル系化合物の配合量は、通常、非水溶媒100体積%中、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上、また、好ましくは70体積%以下、より好ましくは60体積%以下、さらに好ましくは50体積%以下である。
【0117】
この範囲であれば、鎖状エーテルのリチウムイオン解離度の向上と粘度低下に由来するイオン伝導度の向上効果を確保しやすく、負極活物質が炭素質材料の場合、鎖状エーテルがリチウムイオンと共に共挿入されて容量が低下するといった事態を回避しやすい。
【0118】
<スルホン系化合物>
スルホン系化合物としては、炭素原子3~6の環状スルホン、及び炭素原子2~6の鎖状スルホンが好ましい。1分子中のスルホニル基の数は、1又は2であることが好ましい。
【0119】
炭素原子3~6の環状スルホンとしては、
モノスルホン化合物であるトリメチレンスルホン類、テトラメチレンスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類;
ジスルホン化合物であるトリメチレンジスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類等が挙げられる。
【0120】
中でも誘電率と粘性の観点から、テトラメチレンスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類がより好ましく、テトラメチレンスルホン類(スルホラン類)が特に好ましい。
スルホラン類としては、スルホラン及び/又はスルホラン誘導体(以下、スルホランも含めて「スルホラン類」と記載する場合がある)が好ましい。スルホラン誘導体としては、スルホラン環を構成する炭素原子上に結合した水素原子の1以上がフッ素原子やアルキル基で置換されたものが好ましい。
【0121】
中でも、2-メチルスルホラン、3-メチルスルホラン、2-フルオロスルホラン、3-フルオロスルホラン、2,2-ジフルオロスルホラン、2,3-ジフルオロスルホラン、2,4-ジフルオロスルホラン、2,5-ジフルオロスルホラン、3,4-ジフルオロスルホラン、2-フルオロ-3-メチルスルホラン、2-フルオロ-2-メチルスルホラン、3-フルオロ-3-メチルスルホラン、3-フルオロ-2-メチルスルホラン、4-フルオロ-3-メチルスルホラン、4-フルオロ-2-メチルスルホラン、5-フルオロ-3-メチルスルホラン、5-フルオロ-2-メチルスルホラン、2-フルオロメチルスルホラン、3-フルオロメチルスルホラン、2-ジフルオロメチルスルホラン、3-ジフルオロメチルスルホラン、2-トリフルオロメチルスルホラン、3-トリフルオロメチルスルホラン、2-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン、3-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン、4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン、5-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スルホラン等が、イオン伝導度が高く、入出力特性が高い点で好ましい。
【0122】
また、炭素原子2~6の鎖状スルホンとしては、
ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n-プロピルメチルスルホン、n-プロピルエチルスルホン、ジ-n-プロピルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、イソプロピルエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、n-ブチルメチルスルホン、n-ブチルエチルスルホン、t-ブチルメチルスルホン、t-ブチルエチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、パーフルオロエチルメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、ジ(トリフルオロエチル)スルホン、パーフルオロジエチルスルホン、フルオロメチル-n-プロピルスルホン、ジフルオロメチル-n-プロピルスルホン、トリフルオロメチル-n-プロピルスルホン、フルオロメチルイソプロピルスルホン、ジフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル-n-プロピルスルホン、トリフルオロエチルイソプロピルスルホン、ペンタフルオロエチル-n-プロピルスルホン、ペンタフルオロエチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル-n-ブチルスルホン、トリフルオロエチル-t-ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル-n-ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル-t-ブチルスルホン等が挙げられる。
【0123】
中でも、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n-プロピルメチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、n-ブチルメチルスルホン、t-ブチルメチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、トリフルオロメチル-n-プロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル-n-ブチルスルホン、トリフルオロエチル-t-ブチルスルホン、トリフルオロメチル-n-ブチルスルホン、トリフルオロメチル-t-ブチルスルホン等がイオン伝導度が高く、入出力特性が高い点で好ましい。
【0124】
スルホン系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
スルホン系化合物の配合量は、通常、非水溶媒100体積%中、好ましくは0.3体積%以上、より好ましくは1体積%以上、さらに好ましくは5体積%以上であり、また、好ましくは40体積%以下、より好ましくは35体積%以下、さらに好ましくは30体積%以下である。
【0125】
この範囲であれば、サイクル特性や保存特性等の耐久性の向上効果が得られやすく、また、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避することができ、非水系電解液電池の充放電を高電流密度で行う場合に、充放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0126】
<フッ素原子を有する環状カーボネートを非水溶媒として用いる場合>
本発明において、フッ素原子を有する環状カーボネートを非水溶媒として用いる場合は、フッ素原子を有する環状カーボネート以外の非水溶媒として、上記例示した非水溶媒の1種をフッ素原子を有する環状カーボネートと組み合わせて用いてもよく、2種以上をフッ素原子を有する環状カーボネートと組み合わせて併用しても良い。
【0127】
例えば、非水溶媒の好ましい組合せの一つとして、フッ素原子を有する環状カーボネートと鎖状カーボネートを主体とする組合せが挙げられる。中でも、非水溶媒に占めるフッ素原子を有する環状カーボネートと鎖状カーボネートとの合計が、好ましくは60体積%以上、より好ましくは80体積%以上、更に好ましくは90体積%以上であり、かつフッ素原子を有する環状カーボネートと鎖状カーボネートとの合計に対するフッ素原子を有する環状カーボネートの割合が3体積%以上、好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上であり、また通常60体積%以下、好ましくは50体積%以下、より好ましくは40体積%以下、さらに好ましくは35体積%以下、特に好ましくは30体積%以下、最も好ましくは20体積%以下である。
【0128】
これらの非水溶媒の組み合わせを用いると、これを用いて作製された電池のサイクル特性と高温保存特性(特に、高温保存後の残存容量及び高負荷放電容量)のバランスが良くなることがある。
例えば、フッ素原子を有する環状カーボネートと鎖状カーボネートの好ましい組み合わせの具体例としては、
モノフルオロエチレンカーボネートとジメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとジエチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート等が挙げられる。
【0129】
フッ素原子を有する環状カーボネートと鎖状カーボネートとの組み合わせの中で、鎖状カーボネートとして対称鎖状アルキルカーボネート類を含有するものが更に好ましく、特に、モノフルオロエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートといったモノフルオロエチレンカーボネートと対称鎖状カーボネート類と非対称鎖状カーボネート類を含有するものが、サイクル特性と大電流放電特性のバランスが良いので好ましい。中でも、対称鎖状カーボネート類がジメチルカーボネートであることが好ましく、又、鎖状カーボネートのアルキル基は炭素原子1~2が好ましい。
【0130】
これらのフッ素原子を有する環状カーボネートと鎖状カーボネート類との組み合わせに、更にフッ素原子を有さない環状カーボネートを加えた組み合わせも、好ましい組み合わせとして挙げられる。中でも、非水溶媒に占めるフッ素原子を有する環状カーボネートとフッ素原子を有さない環状カーボネートとの合計が、好ましくは10体積%以上、より好ましくは15体積%以上、さらに好ましくは20体積%以上であり、かつフッ素原子を有する環状カーボネートとフッ素原子を有さない環状カーボネートとの合計に対するフッ素原子を有する環状カーボネートの割合が1体積%以上、好ましくは3体積%以上、より好ましくは5体積%以上、さらに好ましくは10体積%以上、特に好ましくは20体積%以上であり、また、好ましくは95体積%以下、より好ましくは85体積%以下、さらに好ましくは75体積%以下、特に好ましくは60体積%以下のものである。
【0131】
この濃度範囲でフッ素原子を有さない環状カーボネートを含有すると、負極に安定な保護被膜を形成しつつ、電解液の電気伝導度を維持できる。
フッ素原子を有する環状カーボネートとフッ素原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネートの好ましい組み合わせの具体例としては、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジエチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート等が挙げられる。
【0132】
フッ素原子を有する環状カーボネートとフッ素原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネートとの組み合わせの中で、鎖状カーボネートとして非対称鎖状アルキルカーボネート類を含有するものがさらに好ましく、特に、
モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、モノフルオロエチレンカーボネートとエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート
といったモノフルオロエチレンカーボネートと非対称鎖状カーボネート類を含有するものが、サイクル特性と大電流放電特性のバランスが良いので好ましい。中でも、非対称鎖状カーボネート類がエチルメチルカーボネートであるのが好ましく、又、鎖状カーボネートのアルキル基は炭素原子1~2が好ましい。
【0133】
非水溶媒中にエチルメチルカーボネートを含有する場合は、全非水溶媒中に占めるエチルメチルカーボネートの割合が、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、さらに好ましくは25体積%以上、特に好ましくは30体積%以上であり、また、好ましくは95体積%以下、より好ましくは90体積%以下、さらに好ましくは85体積%以下、特に好ましくは80体積%以下となる範囲で含有させると、電池の負荷特性が向上することがある。
【0134】
上記フッ素原子を有する環状カーボネートと鎖状カーボネートを主体とする組合せにおいては、上記フッ素原子を有さない環状カーボネート以外にも、環状カルボン酸エステル類、鎖状カルボン酸エステル類、環状エーテル類、鎖状エーテル類、含硫黄有機溶媒、含燐有機溶媒、含フッ素芳香族溶媒等、他の溶媒を混合してもよい。
【0135】
<フッ素原子を有する環状カーボネートを助剤として用いる場合>
本発明において、フッ素原子を有する環状カーボネートを助剤として用いる場合は、フッ素原子を有する環状カーボネート以外の非水溶媒として、上記例示した非水溶媒1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0136】
例えば、非水溶媒の好ましい組合せの一つとして、フッ素原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネートを主体とする組合せが挙げられる。
中でも、非水溶媒に占めるフッ素原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネートとの合計が、好ましくは70体積%以上、より好ましくは80体積%以上、さらに好ましくは90体積%以上であり、かつ環状カーボネートと鎖状カーボネートとの合計に対するフッ素原子を有さない環状カーボネートの割合が好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上、さらに好ましくは15体積%以上であり、また、好ましくは50体積%以下、より好ましくは35体積%以下、さらに好ましくは30体積%以下、特に好ましくは25体積%以下である。
【0137】
これらの非水溶媒の組み合わせを用いると、これを用いて作製された電池のサイクル特性と高温保存特性(特に、高温保存後の残存容量及び高負荷放電容量)のバランスが良くなることがある。
例えば、フッ素原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネートの好ましい組み合わせの具体例としては、
エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネート等が挙げられる。
【0138】
フッ素原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネートとの組み合わせの中で、鎖状カーボネートとして非対称鎖状アルキルカーボネート類を含有するものがさらに好ましく、特に、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとジエチルカーボネートといったものがサイクル特性と大電流放電特性のバランスが良いので好ましい。
【0139】
中でも、非対称鎖状カーボネート類がエチルメチルカーボネートであるのが好ましく、又、鎖状カーボネートのアルキル基は炭素原子1~2が好ましい。
非水溶媒中にジメチルカーボネートを含有する場合は、全非水溶媒中に占めるジメチルカーボネートの割合が、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、さらに好ましくは25体積%以上、特に好ましくは30体積%以上であり、また、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下、さらに好ましくは75体積%以下、特に好ましくは、70体積%以下となる範囲で含有させると、電池の負荷特性が向上することがある。
【0140】
中でも、ジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを含有し、ジメチルカーボネートの含有割合をエチルメチルカーボネートの含有割合よりも多くすることにより、電解液の電気伝導度を維持できながら、高温保存後の電池特性が向上することがあり好ましい。
全非水溶媒中に占めるジメチルカーボネートのエチルメチルカーボネートに対する体積比(ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート)は、電解液の電気伝導度の向上と保存後の電池特性を向上させる点で、1.1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.5以上がさらに好ましい。上記体積比(ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート)は、低温での電池特性を向上の点で、40以下が好ましく、20以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、8以下が特に好ましい。
【0141】
上記フッ素原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネートを主体とする組合せにおいては、環状カルボン酸エステル類、鎖状カルボン酸エステル類、環状エーテル類、鎖状エーテル類、含硫黄有機溶媒、含燐有機溶媒、芳香族含フッ素溶媒等、他の溶媒を混合してもよい。
なお、本明細書において、非水溶媒の体積は25℃での測定値であるが、エチレンカーボネートのように25℃で固体のものは融点での測定値を用いる。
【0142】
1-5.助剤
本発明の非水系電解液電池において、上記で述べた物質以外に、目的に応じて適宜助剤を用いてもよい。助剤としては、以下に示される炭素原子12以下の芳香族化合物、フッ素化不飽和環状カーボネート、三重結合を有する化合物、その他の助剤、等が挙げられる。
【0143】
1-5-1.炭素原子12以下の芳香族化合物
炭素原子12以下の芳香族化合物としては、分子内の炭素原子が12以下である化合物であれば特にその種類は限定されない。
【0144】
炭素原子数12以下の芳香族化合物の具体例としては、例えば、
ビフェニル、アルキルビフェニル、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2-フルオロビフェニル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロベンゼン等の上記芳香族化合物の部分フッ素化物;
2,4-ジフルオロアニソール、2,5-ジフルオロアニソール、2,6-ジフルオロアニソール、3,5-ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物
等が挙げられる。中でも、
ビフェニル、アルキルビフェニル、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物が好ましい。
【0145】
これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合は、特に、シクロヘキシルベンゼンとt-ブチルベンゼン又はt-アミルベンゼンとの組み合わせ、ビフェニル、アルキルビフェニル、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン等の酸素を含有しない芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種と、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の含酸素芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種を併用するのが高温保存特性のバランスの点から好ましい。
【0146】
炭素原子12以下の芳香族化合物は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。過充電防止剤は、非水系電解液100質量%中、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下の濃度で含有させる。この範囲であれば、過充電防止剤の効果を十分に発現させやすく、また、高温保存特性等の電池の特性が低下するといった事態も回避しやすい。
【0147】
1-5-2.フッ素化不飽和環状カーボネート
フッ素化環状カーボネートとして、不飽和結合とフッ素原子とを有する環状カーボネート(以下、「フッ素化不飽和環状カーボネート」と記載する場合がある)を用いることも好ましい。フッ素化不飽和環状カーボネートが有するフッ素原子の数は1以上であれば、特に制限されない。中でもフッ素原子が通常6以下、好ましくは4以下であり、1又は2のものが最も好ましい。
【0148】
フッ素化不飽和環状カーボネートとしては、フッ素化ビニレンカーボネート誘導体、芳香環又は炭素-炭素二重結合を有する置換基で置換されたフッ素化エチレンカーボネート誘導体等が挙げられる。
フッ素化ビニレンカーボネート誘導体としては、4-フルオロビニレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルビニレンカーボネート、4-フルオロ-5-フェニルビニレンカーボネート、4-アリル-5-フルオロビニレンカーボネート、4-フルオロ-5-ビニルビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0149】
芳香環又は炭素-炭素二重結合を有する置換基で置換されたフッ素化エチレンカーボネート誘導体としては、
4-フルオロ-4-ビニルエチレンカーボネート、4-フルオロ-4-アリルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-ビニルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-アリルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-4-ビニルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-4-アリルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4-ビニルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4-アリルエチレンカーボネート、4-フルオロ-4,5-ジビニルエチレンカーボネート、4-フルオロ-4,5-ジアリルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4,5-ジビニルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4,5-ジアリルエチレンカーボネート、4-フルオロ-4-フェニルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-フェニルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5-フェニルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4-フェニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0150】
中でも、好ましいフッ素化不飽和環状カーボネートとしては、
4-フルオロビニレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルビニレンカーボネート、4-フルオロ-5-ビニルビニレンカーボネート、4-アリル-5-フルオロビニレンカーボネート、4-フルオロ-4-ビニルエチレンカーボネート、4-フルオロ-4-アリルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-ビニルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-アリルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-4-ビニルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-4-アリルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4-ビニルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4-アリルエチレンカーボネート、4-フルオロ-4,5-ジビニルエチレンカーボネート、4-フルオロ-4,5-ジアリルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4,5-ジビニルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4,5-ジアリルエチレンカーボネートが、安定な界面保護被膜を形成するので、より好適に用いられる。
【0151】
フッ素化不飽和環状カーボネートの分子量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、好ましくは、50以上であり、また、250以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対するフッ素化環状カーボネートの溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。
フッ素化不飽和環状カーボネートの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。分子量は、より好ましくは100以上であり、また、より好ましくは200以下である。
【0152】
フッ素化不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、フッ素化不飽和環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。
フッ素化不飽和環状カーボネートの配合量は、通常、非水系電解液100質量%中、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。
【0153】
この範囲内であれば、非水系電解液電池は十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、また、高温保存特性が低下し、ガス発生量が多くなり、放電容量維持率が低下するといった事態を回避しやすい。
【0154】
1-5-3.三重結合を有する化合物
三重結合を有する化合物としては、分子内に三重結合を1つ以上有している化合物であれば特にその種類は限定されない。
【0155】
三重結合を有する化合物の具体例としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
1-ペンチン、2-ペンチン、1-ヘキシン、2-ヘキシン、3-ヘキシン、1-ヘプチン、2-ヘプチン、3-ヘプチン、1-オクチン、2-オクチン、3-オクチン、4-オクチン、1-ノニン、2-ノニン、3-ノニン、4-ノニン、1-ドデシン、2-ドデシン、3-ドデシン、4-ドデシン、5-ドデシン、フェニルアセチレン、1-フェニル-1-プロピン、1-フェニル-2-プロピン、1-フェニル-1-ブチン、4-フェニル-1-ブチン、4-フェニル-1-ブチン、1-フェニル-1-ペンチン、5-フェニル-1-ペンチン、1-フェニル-1-ヘキシン、6-フェニル-1-ヘキシン、ジフェニルアセチレン、4-エチニルトルエン、ジシクロヘキシルアセチレン等の炭化水素化合物;
【0156】
2-プロピニルメチルカーボネート、2-プロピニルエチルカーボネート、2-プロピニルプロピルカーボネート、2-プロピニルブチルカーボネート、2-プロピニルフェニルカーボネート、2-プロピニルシクロヘキシルカーボネート、ジ-2-プロピニルカーボネート、1-メチル-2-プロピニルメチルカーボネート、1、1-ジメチル-2-プロピニルメチルカーボネート、2-ブチニルメチルカーボネート、3-ブチニルメチルカーボネート、2-ペンチニルメチルカーボネート、3-ペンチニルメチルカーボネート、4-ペンチニルメチルカーボネート、等のモノカーボネート;
2-ブチン-1,4-ジオール ジメチルジカーボネート、2-ブチン-1,4-ジオール ジエチルジカーボネート、2-ブチン-1,4-ジオール ジプロピルジカーボネート、2-ブチン-1,4-ジオール ジブチルジカーボネート、2-ブチン-1,4-ジオール ジフェニルジカーボネート、2-ブチン-1,4-ジオール ジシクロヘキシルジカーボネート等のジカーボネート;
【0157】
酢酸2-プロピニル、プロピオン酸2-プロピニル、酪酸2-プロピニル、安息香酸2-プロピニル、シクロヘキシルカルボン酸2-プロピニル、酢酸1、1-ジメチル-2-プロピニル、プロピオン酸1、1-ジメチル-2-プロピニル、酪酸1、1-ジメチル-2-プロピニル、安息香酸1、1-ジメチル-2-プロピニル、シクロヘキシルカルボン酸1、1-ジメチル-2-プロピニル、酢酸2-ブチニル、酢酸3-ブチニル、酢酸2-ペンチニル、酢酸3-ペンチニル、酢酸4-ペンチニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ビニル、アクリル酸2-プロペニル、アクリル酸2-ブテニル、アクリル酸3-ブテニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸2-プロペニル、メタクリル酸2-ブテニル、メタクリル酸3-ブテニル、2-プロピン酸メチル、2-プロピン酸エチル、2-プロピン酸プロピル、2-プロピン酸ビニル、2-プロピン酸2-プロペニル、2-プロピン酸2-ブテニル、2-プロピン酸3-ブテニル、2-ブチン酸メチル、2-ブチン酸エチル、2-ブチン酸プロピル、2-ブチン酸ビニル、2-ブチン酸2-プロペニル、2-ブチン酸2-ブテニル、2-ブチン酸3-ブテニル、3-ブチン酸メチル、3-ブチン酸エチル、3-ブチン酸プロピル、3-ブチン酸ビニル、3-ブチン酸2-プロペニル、3-ブチン酸2-ブテニル、3-ブチン酸3-ブテニル、2-ペンチン酸メチル、2-ペンチン酸エチル、2-ペンチン酸プロピル、2-ペンチン酸ビニル、2-ペンチン酸2-プロペニル、2-ペンチン酸2-ブテニル、2-ペンチン酸3-ブテニル、3-ペンチン酸メチル、3-ペンチン酸エチル、3-ペンチン酸プロピル、3-ペンチン酸ビニル、3-ペンチン酸2-プロペニル、3-ペンチン酸2-ブテニル、3-ペンチン酸3-ブテニル、4-ペンチン酸メチル、4-ペンチン酸エチル、4-ペンチン酸プロピル、4-ペンチン酸ビニル、4-ペンチン酸2-プロペニル、4-ペンチン酸2-ブテニル、4-ペンチン酸3-ブテニル等のモノカルボン酸エステル;
2-ブチン-1,4-ジオール ジアセテート、2-ブチン-1,4-ジオール ジプロピオネート、2-ブチン-1,4-ジオール ジブチレート、2-ブチン-1,4-ジオール ジベンゾエート、2-ブチン-1,4-ジオール ジシクロヘキサンカルボキシレート等のジカルボン酸エステル;
【0158】
シュウ酸メチル 2-プロピニル、シュウ酸エチル 2-プロピニル、シュウ酸プロピル 2-プロピニル、シュウ酸2-プロピニル ビニル、シュウ酸アリル 2-プロピニル、シュウ酸ジ-2-プロピニル、シュウ酸2-ブチニル メチル、シュウ酸2-ブチニル エチル、シュウ酸2-ブチニルプロピル、シュウ酸2-ブチニル ビニル、シュウ酸アリル 2-ブチニル、シュウ酸 ジ-2-ブチニル、シュウ酸3-ブチニル メチル、シュウ酸3-ブチニル エチル、シュウ酸3-ブチニルプロピル、シュウ酸3-ブチニル ビニル、シュウ酸アリル 3-ブチニル、シュウ酸ジ-3-ブチニル等のシュウ酸ジエステル;
【0159】
メチル(2-プロピニル)(ビニル)ホスフィンオキシド、ジビニル(2-プロピニル)ホスフィンオキシド、ジ(2-プロピニル)(ビニル)ホスフィンオキシド、ジ(2-プロペニル)2(-プロピニル)ホスフィンオキシド、ジ(2-プロピニル)(2-プロペニル)ホスフィンオキシド、ジ(3-ブテニル)(2-プロピニル)ホスフィンオキシド、及びジ(2-プロピニル)(3-ブテニル)ホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド;
【0160】
メチル(2-プロペニル)ホスフィン酸2-プロピニル、2-ブテニル(メチル)ホスフィン酸2-プロピニル、ジ(2-プロペニル)ホスフィン酸2-プロピニル、ジ(3-ブテニル)ホスフィン酸2-プロピニル、メチル(2-プロペニル)ホスフィン酸1,1-ジメチル-2-プロピニル、2-ブテニル(メチル)ホスフィン酸1,1-ジメチル-2-プロピニル、ジ(2-プロペニル)ホスフィン酸1,1-ジメチル-2-プロピニル、及びジ(3-ブテニル)ホスフィン酸1,1-ジメチル-2-プロピニル、メチル(2-プロピニル)ホスフィン酸2-プロペニル、メチル(2-プロピニル)ホスフィン酸3-ブテニル、ジ(2-プロピニル)ホスフィン酸2-プロペニル、ジ(2-プロピニル)ホスフィン酸3-ブテニル、2-プロピニル(2-プロペニル)ホスフィン酸2-プロペニル、及び2-プロピニル(2-プロペニル)ホスフィン酸3-ブテニル等のホスフィン酸エステル;
【0161】
2-プロペニルホスホン酸メチル 2-プロピニル、2-ブテニルホスホン酸メチル(2-プロピニル)、2-プロペニルホスホン酸(2-プロピニル)(2-プロペニル)、3-ブテニルホスホン酸(3-ブテニル)(2-プロピニル)、2-プロペニルホスホン酸(1,1-ジメチル-2-プロピニル)(メチル)、2-ブテニルホスホン酸(1,1-ジメチル-2-プロピニル)(メチル)、2-プロペニルホスホン酸(1,1-ジメチル-2-プロピニル)(2-プロペニル)、及び3-ブテニルホスホン酸(3-ブテニル)(1,1-ジメチル-2-プロピニル)、メチルホスホン酸(2-プロピニル)(2-プロペニル)、メチルホスホン酸(3-ブテニル)(2-プロピニル)、メチルホスホン酸(1,1-ジメチル-2-プロピニル)(2-プロペニル)、メチルホスホン酸(3-ブテニル)(1,1-ジメチル-2-プロピニル)、エチルホスホン酸(2-プロピニル)(2-プロペニル)、エチルホスホン酸(3-ブテニル)(2-プロピニル)、エチルホスホン酸(1,1-ジメチル-2-プロピニル)(2-プロペニル)、及びエチルホスホン酸(3-ブテニル)(1,1-ジメチル-2-プロピニル)等のホスホン酸エステル;
【0162】
リン酸(メチル)(2-プロペニル)(2-プロピニル)、リン酸(エチル)(2-プロペニル)(2-プロピニル)、リン酸(2-ブテニル)(メチル)(2-プロピニル)、リン酸(2-ブテニル)(エチル)(2-プロピニル)、リン酸(1,1-ジメチル-2-プロピニル)(メチル)(2-プロペニル)、リン酸(1,1-ジメチル-2-プロピニル)(エチル)(2-プロペニル)、リン酸(2-ブテニル)(1,1-ジメチル-2-プロピニル)(メチル)、及びリン酸(2-ブテニル)(エチル)(1,1-ジメチル-2-プロピニル)等のリン酸エステル;
これらのうち、アルキニルオキシ基を有する化合物は、電解液中でより安定に負極被膜を形成するため好ましい。
【0163】
さらに、
2-プロピニルメチルカーボネート、ジ-2-プロピニルカーボネート、2-ブチン-1,4-ジオール ジメチルジカーボネート、酢酸2-プロピニル、2-ブチン-1,4-ジオール ジアセテート、シュウ酸メチル 2-プロピニル、シュウ酸ジ-2-プロピニル
等の化合物が保存特性向上の点から特に好ましい。
【0164】
上記三重結合を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。本発明の非水系電解液全体に対する三重結合を有する化合物の配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下の濃度で含有させる。上記範囲を満たした場合は、出力特性、負荷特性、低温特性、サイクル特性、高温保存特性等の効果がより向上する。
【0165】
1-5-4.その他の助剤
その他の助剤としては、上記助剤以外の公知の助剤を用いることができる。その他の助剤としては、
エリスリタンカーボネート、スピロ-ビス-ジメチレンカーボネート、メトキシエチル-メチルカーボネート等のカーボネート化合物;
2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ジビニル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のスピロ化合物;
エチレンサルファイト、フルオロスルホン酸メチル、フルオロスルホン酸エチル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、ブスルファン、スルホレン、ジフェニルスルホン、N,N-ジメチルメタンスルホンアミド、N,N-ジエチルメタンスルホンアミド、ビニルスルホン酸メチル、ビニルスルホン酸エチル、ビニルスルホン酸アリル、ビニルスルホン酸プロパルギル、アリルスルホン酸メチル、アリルスルホン酸エチル、アリルスルホン酸アリル、アリルスルホン酸プロパルギル、1,2-ビス(ビニルスルホニロキシ)エタン
等の含硫黄化合物;
【0166】
1-メチル-2-ピロリジノン、1-メチル-2-ピペリドン、3-メチル-2-オキサゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン及びN-メチルスクシンイミド等の含窒素化合物;
亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、メチルホスホン酸ジメチル、エチルホスホン酸ジエチル、ビニルホスホン酸ジメチル、ビニルホスホン酸ジエチル、ジエチルホスホノ酢酸エチル、ジメチルホスフィン酸メチル、ジエチルホスフィン酸エチル、トリメチルホスフィンオキシド、トリエチルホスフィンオキシド
等の含燐化合物;
【0167】
ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物;
フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド等の含フッ素芳香族化合物;
等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの助剤を添加することにより、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させることができる。
【0168】
その他の助剤の配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。その他の助剤は、非水系電解液100質量%中、通常、0.01質量%以上であり、また、10質量%以下である。この範囲であれば、その他助剤の効果が十分に発現させやすく、高負荷放電特性等の電池の特性が低下するといった事態も回避しやすい。
その他の助剤の配合量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%、以上、さらに好ましくは0.5質量%、特に好ましくは1.0質量%であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%、特に好ましくは1質量%以下である。
【0169】
以上、上述の非水系電解液は、本発明に記載の非水系電解液電池の内部に存在するものも含まれる。
具体的には、リチウム塩や溶媒、助剤等の非水系電解液の構成要素を別途合成し、実質的に単離されたものから非水系電解液を調整し、下記に記載する方法にて別途組み立てた電池内に注液して得た非水系電解液電池内の非水系電解液である場合や、本発明の非水系電解液の構成要素を個別に電池内に入れておき、電池内にて混合させることにより本発明の非水系電解液と同じ組成を得る場合、更には、本発明の非水系電解液を構成する化合物を該非水系電解液電池内で発生させて、本発明の非水系電解液と同じ組成を得る場合も含まれるものとする。
【0170】
2.電池構成
本発明の非水系電解液電池は、非水系電解液電池の中でも二次電池用、例えばリチウム二次電池用の電解液として用いるのに好適である。以下、本発明の非水系電解液を用いた非水系電解液電池について説明する。
本発明の非水系電解液電池は、公知の構造を採ることができ、典型的には、イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵・放出可能な負極及び正極と、上記の本発明の非水系電解液とを備える。
【0171】
2-1.負極
以下に負極に使用される負極活物質について述べる。負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はない。具体例としては、炭素質材料、合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて併用してもよい。
【0172】
<負極活物質>
負極活物質としては、炭素質材料、合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。
炭素質材料としては、(1)天然黒鉛、(2)人造黒鉛、(3)非晶質炭素、(4)炭素被覆黒鉛、(5)黒鉛被覆黒鉛、(6)樹脂被覆黒鉛等が挙げられる。
【0173】
(1)天然黒鉛としては、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土壌黒鉛及び/又はこれらの黒鉛を原料に球形化や緻密化等の処理を施した黒鉛粒子等が挙げられる。これらの中でも、粒子の充填性や充放電レート特性の観点から、球形化処理を施した球状もしくは楕円体状の黒鉛が特に好ましい。
球形化処理に用いる装置としては、例えば、衝撃力を主体に粒子の相互作用も含めた圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を繰り返し粒子に与える装置を用いることができる。
具体的には、ケーシング内部に多数のブレードを設置したローターを有し、そのローターが高速回転することによって、内部に導入された炭素材に対して衝撃圧縮、摩擦、せん断力等の機械的作用を与え、球形化処理を行なう装置が好ましい。また、炭素材を循環させることによって機械的作用を繰り返して与える機構を有するものであるのが好ましい。
【0174】
例えば前述の装置を用いて球形化処理する場合は、回転するローターの周速度を30~100m/秒にするのが好ましく、40~100m/秒にするのがより好ましく、50~100m/秒にするのが更に好ましい。また、処理は、単に炭素質物を通過させるだけでも可能であるが、30秒以上装置内を循環又は滞留させて処理するのが好ましく、1分以上装置内を循環又は滞留させて処理するのがより好ましい。
【0175】
(2)人造黒鉛としては、コールタールピッチ、石炭系重質油、常圧残油、石油系重質油、芳香族炭化水素、窒素含有環状化合物、硫黄含有環状化合物、ポリフェニレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール、天然高分子、ポリフェニレンサイルファイド、ポリフェニレンオキシド、フルフリルアルコール樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂等の有機化合物を、通常2500℃以上、通常3200℃以下の範囲の温度で黒鉛化し、必要に応じて粉砕及び/又は分級して製造されたものが挙げられる。この際、ケイ素含有化合物やホウ素含有化合物等を黒鉛化触媒として用いることもできる。また、ピッチの熱処理過程で分離したメソカーボンマイクロビーズを黒鉛化して得た人造黒鉛が挙げられる。更に一次粒子からなる造粒粒子の人造黒鉛も挙げられる。例えば、メソカーボンマイクロビーズや、コークス等の黒鉛化可能な炭素質材料粉体とタール、ピッチ等の黒鉛化可能なバインダと黒鉛化触媒を混合し、黒鉛化し、必要に応じて粉砕することで得られる、扁平状の粒子を複数、配向面が非平行となるように集合又は結合した黒鉛粒子が挙げられる。
【0176】
(3)非晶質炭素としては、タール、ピッチ等の易黒鉛化性炭素前駆体を原料に用い、黒鉛化しない温度領域(400~2200℃の範囲)で1回以上熱処理した非晶質炭素粒子や、樹脂等の難黒鉛化性炭素前駆体を原料に用いて熱処理した非晶質炭素粒子が挙げられる。
(4)炭素被覆黒鉛としては、天然黒鉛及び/又は人造黒鉛と、タール、ピッチや樹脂等の有機化合物である炭素前駆体を混合し、400~2300℃の範囲で1回以上熱処理し得られる天然黒鉛及び/又は人造黒鉛を核黒鉛とし、非晶質炭素が核黒鉛を被覆している炭素黒鉛複合体が挙げられる。複合の形態は、表面全体又は一部を被覆しても、複数の一次粒子を前記炭素前駆体起源の炭素をバインダーとして複合させたものであってもよい。また、天然黒鉛及び/又は人造黒鉛にベンゼン、トルエン、メタン、プロパン、芳香族系の揮発分等の炭化水素系ガス等を高温で反応させ、黒鉛表面に炭素を堆積(CVD)させることでも炭素黒鉛複合体を得ることもできる。
【0177】
(5)黒鉛被覆黒鉛としては、天然黒鉛及び/又は人造黒鉛と、タール、ピッチや樹脂等の易黒鉛化性の有機化合物の炭素前駆体を混合し、2400~3200℃程度の範囲で1回以上熱処理し得られる天然黒鉛及び/又は人造黒鉛を核黒鉛とし、黒鉛化物が核黒鉛の表面全体又は一部を被覆している黒鉛被覆黒鉛が挙げられる。
(6)樹脂被覆黒鉛としては、天然黒鉛及び/又は人造黒鉛と、樹脂等を混合、400℃未満の温度で乾燥し得られる天然黒鉛及び/又は人造黒鉛を核黒鉛とし、樹脂等が核黒鉛を被覆している樹脂被覆黒鉛が挙げられる。
【0178】
また、(1)~(6)の炭素質材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記(2)~(5)に用いられるタール、ピッチや樹脂等の有機化合物としては、石炭系重質油、直流系重質油、分解系石油重質油、芳香族炭化水素、N環化合物、S環化合物、ポリフェニレン、有機合成高分子、天然高分子、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選ばれた炭化可能な有機化合物等が挙げられる。また、原料有機化合物は混合時の粘度を調整するため、低分子有機溶媒に溶解させて用いても良い。
【0179】
また、核黒鉛の原料となる天然黒鉛及び/又は人造黒鉛としては、球形化処理を施した天然黒鉛が好ましい。
負極活物質として用いられる合金系材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば、リチウム単体、リチウム合金を形成する単体金属及び合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、ケイ化物、硫化物若しくはリン化物等の化合物のいずれであってもよく、特に制限されない。リチウム合金を形成する単体金属及び合金としては、13族及び14族の金属・半金属元素(即ち炭素を除く)を含む材料であることが好ましく、より好ましくはアルミニウム、ケイ素及びスズの単体金属及びこれら原子を含む合金又は化合物である。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0180】
<炭素質材料の物性>
負極活物質として炭素質材料を用いる場合、以下の物性を有するものであることが望ましい。
(X線パラメータ)
炭素質材料の学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が、通常0.335nm以上であり、また、通常0.360nm以下であり、0.350nm以下が好ましく、0.345nm以下がさらに好ましい。また、学振法によるX線回折で求めた炭素質材料の結晶子サイズ(Lc)は、1.0nm以上であることが好ましく、中でも1.5nm以上であることがさらに好ましい。
【0181】
(体積基準平均粒径)
炭素質材料の体積基準平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)であり、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上がさらに好ましく、7μm以上が特に好ましく、また、通常100μm以下であり、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、25μm以下が特に好ましい。
【0182】
体積基準平均粒径が上記範囲を下回ると、不可逆容量が増大して、初期の電池容量の損失を招くことになる場合がある。また、上記範囲を上回ると、塗布により電極を作製する際に、不均一な塗面になりやすく、電池製作工程上望ましくない場合がある。
体積基準平均粒径の測定は、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約10mL)に炭素粉末を分散させて、レーザー回折・散乱式粒度分布計(例えば、堀場製作所社製LA-700)を用いて行なう。該測定で求められるメジアン径を、本発明の炭素質材料の体積基準平均粒径と定義する。
【0183】
(ラマンR値)
炭素質材料のラマンR値は、レーザーラマンスペクトル法を用いて測定した値であり、通常0.01以上であり、0.03以上が好ましく、0.1以上がさらに好ましく、また、通常1.5以下であり、1.2以下が好ましく、1以下がさらに好ましく、0.5以下が特に好ましい。
【0184】
ラマンR値が上記範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。即ち、充電受入性が低下する場合がある。また、集電体に塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向しやすくなり、負荷特性の低下を招く場合がある。
一方、上記範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、非水系電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
【0185】
ラマンスペクトルの測定は、ラマン分光器(例えば、日本分光社製ラマン分光器)を用いて、試料を測定セル内へ自然落下させて充填し、セル内のサンプル表面にアルゴンイオンレーザー光(若しくは半導体レーザー光)を照射しながら、セルをレーザー光と垂直な面内で回転させることにより行なう。得られるラマンスペクトルについて、1580cm-1付近のピークPAの強度IAと、1360cm-1付近のピークPBの強度IBとを測定し、その強度比R(R=IB/IA)を算出する。該測定で算出されるラマンR値を、本発明の炭素質材料のラマンR値と定義する。
【0186】
また、上記のラマン測定条件は、次の通りである。
・レーザー波長 :Arイオンレーザー514.5nm(半導体レーザー532nm)
・測定範囲 :1100cm-1~1730cm-1
・ラマンR値 :バックグラウンド処理、
・スムージング処理 :単純平均、コンボリューション5ポイント
【0187】
(BET比表面積)
炭素質材料のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値であり、通常0.1m2・g-1以上であり、0.7m2・g-1以上が好ましく、1.0m2・g-1以上がさらに好ましく、1.5m2・g-1以上が特に好ましく、また、通常100m2・g-1以下であり、25m2・g-1以下が好ましく、15m2・g-1以下がさらに好ましく、10m2・g-1以下が特に好ましい。
【0188】
BET比表面積の値がこの範囲を下回ると、負極材料として用いた場合の充電時にリチウムの受け入れ性が悪くなりやすく、リチウムが電極表面で析出しやすくなり、安定性が低下する可能性がある。一方、この範囲を上回ると、負極材料として用いた時に非水系電解液との反応性が増加し、ガス発生が多くなりやすく、好ましい電池が得られにくい場合がある。
BET法による比表面積の測定は、表面積計(例えば、大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて、試料に対して窒素流通下350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって行なう。
【0189】
(円形度)
炭素質材料の球形の程度として円形度を測定した場合、以下の範囲に収まることが好ましい。なお、円形度は、「円形度=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)」で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
炭素質材料の粒径が3~40μmの範囲にある粒子の円形度は1に近いほど望ましく、また、0.1以上が好ましく、中でも0.5以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、0.85以上がさらに好ましく、0.9以上が特に好ましい。高電流密度充放電特性は、円形度が大きいほど向上する。従って、円形度が上記範囲を下回ると、負極活物質の充填性が低下し、粒子間の抵抗が増大して、短時間高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
【0190】
円形度の測定は、フロー式粒子像分析装置(例えば、シスメックス社製FPIA)を用いて行う。試料約0.2gを、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約50mL)に分散させ、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、検出範囲を0.6~400μmに指定し、粒径が3~40μmの範囲の粒子について測定する。
【0191】
円形度を向上させる方法は、特に制限されないが、球形化処理を施して球形にしたものが、電極体にしたときの粒子間空隙の形状が整うので好ましい。球形化処理の例としては、せん断力、圧縮力を与えることによって機械的に球形に近づける方法、複数の微粒子をバインダーもしくは、粒子自身の有する付着力によって造粒する機械的・物理的処理方法等が挙げられる。
【0192】
(タップ密度)
炭素質材料のタップ密度は、通常0.1g・cm-3以上であり、0.5g・cm-3以上が好ましく、0.7g・cm-3以上がさらに好ましく、1g・cm-3以上が特に好ましく、また、2g・cm-3以下が好ましく、1.8g・cm-3以下がさらに好ましく、1.6g・cm-3以下が特に好ましい。タップ密度が、上記範囲を下回ると、負極として用いた場合に充填密度が上がり難く、高容量の電池を得ることができない場合がある。また、上記範囲を上回ると、電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎ、粒子間の導電性が確保され難くなり、好ましい電池特性が得られにくい場合がある。
【0193】
タップ密度の測定は、目開き300μmの篩を通過させて、20cm3のタッピングセルに試料を落下させてセルの上端面まで試料を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の体積と試料の質量からタップ密度を算出する。
【0194】
(配向比)
炭素質材料の配向比は、通常0.005以上であり、0.01以上が好ましく、0.015以上がさらに好ましく、また、通常0.67以下である。配向比が、上記範囲を下回ると、高密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の上限は、炭素質材料の配向比の理論上限値である。
配向比は、試料を加圧成型してからX線回折により測定する。試料0.47gを直径17mmの成型機に充填し58.8MN・m-2で圧縮して得た成型体を、粘土を用いて測定用試料ホルダーの面と同一面になるようにセットしてX線回折を測定する。得られた炭素の(110)回折と(004)回折のピーク強度から、(110)回折ピーク強度/(004)回折ピーク強度で表わされる比を算出する。
【0195】
X線回折測定条件は次の通りである。なお、「2θ」は回折角を示す。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット :
発散スリット=0.5度
受光スリット=0.15mm
散乱スリット=0.5度
・測定範囲及びステップ角度/計測時間:
(110)面:75度≦2θ≦80度 1度/60秒
(004)面:52度≦2θ≦57度 1度/60秒
【0196】
(アスペクト比(粉))
炭素質材料のアスペクト比は、通常1以上、また、通常10以下であり、8以下が好ましく、5以下がさらに好ましい。アスペクト比が、上記範囲を上回ると、極板化時にスジ引きや、均一な塗布面が得られず、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の下限は、炭素質材料のアスペクト比の理論下限値である。
【0197】
アスペクト比の測定は、炭素質材料の粒子を走査型電子顕微鏡で拡大観察して行う。厚さ50μm以下の金属の端面に固定した任意の50個の黒鉛粒子を選択し、それぞれについて試料が固定されているステージを回転、傾斜させて、3次元的に観察した時の炭素質材料粒子の最長となる径Aと、それと直交する最短となる径Bを測定し、A/Bの平均値を求める。
【0198】
(被覆率)
本発明の負極活物質は、炭素質物又は黒鉛質物で被覆されていでもよい。この中でも非晶質炭素質物で被覆されていることがリチウムイオンの受入性の点から好ましく、この被覆率は、通常0.5%以上30%以下、好ましくは1%以上25%以下、より好ましくは、2%以上20%以下である。この含有率が大きすぎると負極活物質の非晶質炭素部分が多くなり、電池を組んだ際の可逆容量が小さくなる傾向がある。含有率が小さすぎると、核となる黒鉛粒子に対して非晶質炭素部位が均一にコートされないとともに強固な造粒がなされず、焼成後に粉砕した際、粒径が小さくなりすぎる傾向がある。
なお、最終的に得られる負極活物質の有機化合物由来の炭化物の含有率(被覆率)は、負極活物質の量と、有機化合物の量及びJIS K 2270に準拠したミクロ法により測定される残炭率により、下記式で算出することができる。
式:有機化合物由来の炭化物の被覆率(%)=(有機化合物の質量×残炭率×100)/{負極活物質の質量+(有機化合物の質量×残炭率)}
【0199】
(内部間隙率)
負極活物質の内部間隙率は通常1%以上、好ましくは3%以上、より好ましく5%以上、更に好ましくは7%以上である。また通常50%未満、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下である。この内部間隙率が小さすぎると粒子内の液量が少なくなり、充放電特性が悪化する傾向があり、内部間隙率が大きすぎると、電極にした場合に粒子間間隙が少なく、電解液の拡散が不十分になる傾向がある。また、この空隙には、非晶質炭素や黒鉛質物、樹脂等、Liと合金化可能な金属粒子の膨張、収縮を緩衝するような物質が、空隙中に存在又は空隙がこられにより満たされていてもよい。
【0200】
<Liと合金化可能な金属粒子>
金属粒子が、Liと合金化可能な金属粒子であることを確認するための手法としては、X線回折による金属粒子相の同定、電子顕微鏡による粒子構造の観察及び元素分析、蛍光X線による元素分析等が挙げられる。
Liと合金化可能な金属粒子は、従来公知のいずれのものも使用可能であるが、容量とサイクル寿命の点から、金属粒子は、例えば、Fe、Co、Sb、Bi、Pb、Ni、Ag、Si、Sn、Al、Zr、Cr、P、S、V、Mn、Nb、Mo、Cu、Zn、Ge、In、Ti等からなる群から選ばれる金属又はその化合物であることが好ましい。また、2種以上の金属からなる合金を使用しても良く、金属粒子が、2種以上の金属元素により形成された合金粒子であってもよい。これらの中でも、Si、Sn、As、Sb、Al、Zn及びWからなる群から選ばれる金属又はその金属化合物が好ましい。
金属化合物として、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物等が挙げられる。また、2種以上の金属からなる合金を使用しても良い。
【0201】
Liと合金可能な金属粒子の中でも、Si又はSi金属化合物が好ましい。Si金属化合物は、Si金属酸化物であることが好ましい。Si又はSi金属化合物は、高容量化の点で、好ましい。本明細書では、Si又はSi金属化合物を総称してSi化合物と呼ぶ。Si化合物としては、具体的には、SiOx,SiNx,SiCx、SiZxOy(Z=C、N)等が挙げられる。Si化合物は、好ましくは、Si金属酸化物であり、Si金属酸化物は、一般式で表すとSiOxである。この一般式SiOxは、二酸化Si(SiO2)と金属Si(Si)とを原料として得られるが、そのxの値は通常0≦x<2である。SiOxは、黒鉛と比較して理論容量が大きく、更に非晶質SiあるいはナノサイズのSi結晶は、リチウムイオン等のアルカリイオンの出入りがしやすく、高容量を得ることが可能となる。
Si金属酸化物は、具体的には、SiOxと表されるものであり、xは0≦x<2であり、より好ましくは、0.2以上、1.8以下、更に好ましくは、0.4以上、1.6以下、特に好ましくは、0.6以上、1,4以下であり、X=0がとりわけ好ましい。この範囲であれば、高容量であると同時に、Liと酸素との結合による不可逆容量を低減させることが可能となる。
【0202】
・Liと合金化可能な金属粒子の平均粒子径(d50)
Liと合金化可能な金属粒子の平均粒子径(d50)は、サイクル寿命の観点から、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.3μm以上であり、通常10μm以下、好ましくは9μm以下、より好ましくは8μm以下である。平均粒子径(d50)が前記範囲内であると、充放電に伴う体積膨張が低減され、充放電容量を維持しつつ、良好なサイクル特性の得ることができる。
平均粒子径(d50)は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定方法等で求められる。
【0203】
・Liと合金化可能な金属粒子のBET法比表面積
Liと合金化可能な金属粒子のBET法により比表面積は通常0.5~60m2/g、1~40m2/gであることが好ましい。Liと合金化可能な金属粒子のBET法による比表面積が前記範囲内であると、電池の充放電効率及び放電容量が高く、高速充放電においてリチウムの出し入れが速く、レート特性に優れるので好ましい。
【0204】
・Liと合金化可能な金属粒子の含有酸素量
Liと合金化可能な金属粒子の含有酸素量は、特に制限はないが、通常0.01~8質量%、0.05~5質量%であることが好ましい。粒子内の酸素分布状態は、表面近傍に存在、粒子内部に存在、粒子内一様に存在していてもかまわないが、特に表面近傍に存在していることが好ましい。Liと合金化可能な金属粒子の含有酸素量が前記範囲内であると、SiとOの強い結合により、充放電に伴う体積膨張が抑制され、サイクル特性に優れるので好ましい。
【0205】
<Liと合金可能な金属粒子と黒鉛粒子とを含有する負極活物質>。
本発明でいうLiと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子を含有する負極活物質とは、Liと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子が互いに独立した粒子の状態で混合されている混合物でもよいし、Liと合金化可能な金属粒子が黒鉛粒子の表面又は内部に存在している複合体でもよい。本明細書において、複合体(複合粒子ともいう)とは、特に、Liと合金化可能な金属粒子及び炭素質物が含まれている粒子であれば特に制限はないが、好ましくは、Liと合金化可能な金属粒子及び炭素質物が物理的及び/又は化学的な結合によって一体化した粒子である。より好ましい形態としては、Liと合金化可能な金属粒子及び炭素質物が、少なくとも複合粒子表面及びバルク内部の何れにも存在する程度に各々の固体成分が粒子内で分散して存在している状態にあり、それらを物理的及び/又は化学的な結合によって一体化させるために、炭素質物が存在しているような形態である。更に具体的な好ましい形態は、Liと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子から少なくとも構成される複合材であって、黒鉛粒子、好ましくは、天然黒鉛が曲面を有する折り畳まれた構造を持つ粒子内に、該曲面を有する折り畳まれた構造内の間隙にLiと合金化可能な金属粒子が存在していることを特徴とする負極活物質である。また、間隙は空隙であってもよいし、非晶質炭素や黒鉛質物、樹脂等、Liと合金化可能な金属粒子の膨張、収縮を緩衝するような物質が、間隙中に存在していてもよい。
【0206】
・Liと合金化可能な金属粒子の含有割合
Liと合金化可能な金属粒子と黒鉛粒子の合計に対するLiと合金化可能な金属粒子の含有割合は、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは、2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上である。また、通常99質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15%以下、最も好ましくは10質量%以下である。この範囲であると、十分な容量を得ることが可能となる点で好ましい。
【0207】
合金系材料負極は、公知のいずれの方法を用いて製造することが可能である。具体的に、負極の製造方法としては、例えば、上述の負極活物質に結着剤や導電材等を加えたものをそのままロール成型してシート電極とする方法や、圧縮成形してペレット電極とする方法も挙げられるが、通常は負極用の集電体(以下「負極集電体」という場合がある。)上に塗布法、蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、上述の負極活物質を含有する薄膜層(負極活物質層)を形成する方法が用いられる。この場合、上述の負極活物質に結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー状とし、これを負極集電体に塗布、乾燥した後にプレスして高密度化することにより、負極集電体上に負極活物質層を形成する。
【0208】
負極集電体の材質としては、鋼、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス等が挙げられる。これらのうち、薄膜に加工し易いという点及びコストの点から、銅箔が好ましい。
負極集電体の厚さは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。負極集電体の厚さが厚過ぎると、電池全体の容量が低下し過ぎることがあり、逆に薄過ぎると取り扱いが困難になることがある。
【0209】
なお、表面に形成される負極活物質層との結着効果を向上させるため、これら負極集電体の表面は、予め粗面化処理しておくことが好ましい。表面の粗面化方法としては、ブラスト処理、粗面ロールによる圧延、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線等を備えたワイヤーブラシ等で集電体表面を研磨する機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法等が挙げられる。
【0210】
また、負極集電体の質量を低減させて電池の質量当たりのエネルギー密度を向上させるために、エキスパンドメタルやパンチングメタルのような穴あきタイプの負極集電体を使用することもできる。このタイプの負極集電体は、その開口率を変更することで、質量も白在に変更可能である。また、このタイプの負極集電体の両面に負極活物質層を形成させた場合、この穴を通してのリベット効果により、負極活物質層の剥離が更に起こり難くなる。しかし、開口率があまりに高くなった場合には、負極活物質層と負極集電体との接触面積が小さくなるため、かえって接着強度は低くなることがある。
【0211】
負極活物質層を形成するためのスラリーは、通常は負極材に対して結着剤、増粘剤等を加えて作製される。なお、本明細書における「負極材」とは、負極活物質と導電材とを合わせた材料を指すものとする。
負極材中における負極活物質の含有量は、通常70質量%以上、特に75質量%以上、また、通常97質量%以下、特に95質量%以下であることが好ましい。負極活物質の含有量が少な過ぎると、得られる負極を用いた二次電池の容量が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に導電剤の含有量が不足することにより、負極としての電気伝導性を確保しづらい傾向にある。なお、二以上の負極活物質を併用する場合には、負極活物質の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
【0212】
負極に用いられる導電材としては、銅やニッケル等の金属材料;黒鉛、カーボンブラック等の炭素材料等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。特に、導電材として炭素材料を用いると、炭素材料が活物質としても作用するため好ましい。負極材中における導電材の含有量は、通常3質量%以上、特に5質量%以上、また、通常30質量%以下、特に25質量%以下であることが好ましい。導電材の含有量が少な過ぎると導電性が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に負極活物質等の含有量が不足することにより、電池容量や強度が低下する傾向となる。なお、二以上の導電材を併用する場合には、導電材の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
【0213】
負極に用いられる結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安全な材料であれば、任意のものを使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン・ブタジエンゴム・イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。結着剤の含有量は、負極材100質量部に対して通常0.5質量部以上、特に1質量部以上、また、通常10質量部以下、特に8質量部以下であることが好ましい。結着剤の含有量が少な過ぎると得られる負極の強度が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に負極活物質等の含有量が不足することにより、電池容量や導電性が不足する傾向となる。なお、二以上の結着剤を併用する場合には、結着剤の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
【0214】
負極に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。増粘剤は必要に応じて使用すればよいが、使用する場合には、負極活物質層中における増粘剤の含有量が通常0.5質量%以上、5質量%以下の範囲で用いることが好ましい。
【0215】
負極活物質層を形成するためのスラリーは、上記負極活物質に、必要に応じて導電剤や結着剤、増粘剤を混合して、水系溶媒又は有機溶媒を分散媒として用いて調製される。水系溶媒としては、通常、水が用いられるが、これにエタノール等のアルコール類、N-メチルピロリドン等の環状アミド類等の有機溶媒を、水に対して30質量%以下の範囲で併用することもできる。また、有機溶媒としては、通常、N-メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類、アニソール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられ、中でも、N-メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類等が好ましい。なお、これらは何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0216】
得られたスラリーを上述の負極集電体上に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより、負極活物質層が形成される。塗布の手法は特に制限されず、それ自体既知の方法を用いることができる。乾燥の手法も特に制限されず、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等の公知の手法を用いることができる。
【0217】
<負極の構成と作製法>
電極の製造は、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のいずれの方法を用いることができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって形成することができる。
また、合金系材料を用いる場合には、蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、上述の負極活物質を含有する薄膜層(負極活物質層)を形成する方法も用いられる。
【0218】
(電極密度)
負極活物質を電極化した際の電極構造は特に制限されないが、集電体上に存在している負極活物質の密度は、1g・cm-3以上が好ましく、1.2g・cm-3以上がさらに好ましく、1.3g・cm-3以上が特に好ましく、また、2.2g・cm-3以下が好ましく、2.1g・cm-3以下がより好ましく、2.0g・cm-3以下がさらに好ましく、1.9g・cm-3以下が特に好ましい。集電体上に存在している負極活物質の密度が、上記範囲を上回ると、負極活物質粒子が破壊され、初期不可逆容量の増加や、集電体/負極活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下する場合がある。
【0219】
2-2.正極
<正極活物質>
以下に正極に使用される正極活物質(リチウム遷移金属系化合物)について述べる。
〈リチウム遷移金属系化合物〉
リチウム遷移金属系化合物とは、Liイオンを脱離、挿入することが可能な構造を有する化合物であり、例えば、硫化物やリン酸塩化合物、リチウム遷移金属複合酸化物等が挙げられる。硫化物としては、TiS2やMoS2等の二次元層状構造をもつ化合物や、一般式MexMo6S8(MeはPb,Ag,Cuをはじめとする各種遷移金属)で表される強固な三次元骨格構造を有するシュブレル化合物等が挙げられる。リン酸塩化合物としては、オリビン構造に属するものが挙げられ、一般的にはLiMePO4(Meは少なくとも1種以上の遷移金属)で表され、具体的にはLiFePO4、LiCoPO4、LiNiPO4、LiMnPO4等が挙げられる。リチウム遷移金属複合酸化物としては、三次元的拡散が可能なスピネル構造や、リチウムイオンの二次元的拡散を可能にする層状構造に属するものが挙げられる。スピネル構造を有するものは、一般的にLiMe2O4(Meは少なくとも1種以上の遷移金属)と表され、具体的にはLiMn2O4、LiCoMnO4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiCoVO4等が挙げられる。層状構造を有するものは、一般的にLiMeO2(Meは少なくとも1種以上の遷移金属)と表される。具体的にはLiCoO2、LiNiO2、LiNi1-xCoxO2、LiNi1-x-yCoxMnyO2、LiNi0.5Mn0.5O2、Li1.2Cr0.4Mn0.4O2、Li1.2Cr0.4Ti0.4O2、LiMnO2等が挙げられる。
【0220】
〈組成〉
また、リチウム含有遷移金属化合物は、例えば、下記組成式(F)又は(G)で示されるリチウム遷移金属系化合物であることが挙げられる。
1)下記組成式(F)で示されるリチウム遷移金属系化合物である場合
Li1+xMO2 …(F)
ただし、xは通常0以上、0.5以下である。Mは、Ni及びMn、或いは、Ni、Mn及びCoから構成される元素であり、Mn/Niモル比は通常0.1以上、5以下である。Ni/Mモル比は通常0以上、0.5以下である。Co/Mモル比は通常0以上、0.5以下である。なお、xで表されるLiのリッチ分は、遷移金属サイトMに置換している場合もある。
【0221】
なお、上記組成式(F)においては、酸素量の原子比は便宜上2と記載しているが、多少の不定比性があってもよい。また、上記組成式中のxは、リチウム遷移金属系化合物の製造段階での仕込み組成である。通常、市場に出回る電池は、電池を組み立てた後に、エージングを行っている。そのため、充放電に伴い、正極のLi量は欠損している場合がある。その場合、組成分析上、3Vまで放電した場合のxが-0.65以上、1以下に測定されることがある。
【0222】
また、リチウム遷移金属系化合物は、正極活物質の結晶性を高めるために酸素含有ガス雰囲気下で高温焼成を行って焼成されたものが電池特性に優れる。
さらに、組成式(F)で示されるリチウム遷移金属系化合物は、以下一般式(F’)のとおり、213層と呼ばれるLi2MO3との固溶体であってもよい。
αLi2MO3・(1-α)LiM’O2・・・(F’)
一般式中、αは、0<α<1を満たす数である。
【0223】
Mは、平均酸化数が4+である少なくとも1種の金属元素であり、具体的には、Mn、Zr、Ti、Ru、Re及びPtからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素である。
M’は、平均酸化数が3+である少なくとも1種の金属元素であり、好ましくは、V、Mn、Fe、Co及びNiからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であり、より好ましくは、Mn、Co及びNiからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素である。
【0224】
2)下記一般式(B)で表されるリチウム遷移金属系化合物である場合。
Li[LiaMbMn2-b-a]O4+δ・・・(G)
ただし、Mは、Ni、Cr、Fe、Co、Cu、Zr、Al及びMgから選ばれる遷移金属のうちの少なくとも1種から構成される元素である。
bの値は通常0.4以上、0.6以下である。
bの値がこの範囲であれば、リチウム遷移金属系化合物における単位質量当たりのエネルギー密度が高い。
【0225】
また、aの値は通常0以上、0.3以下である。また、上記組成式中のaは、リチウム遷移金属系化合物の製造段階での仕込み組成である。通常、市場に出回る電池は、電池を組み立てた後に、エージングを行っている。そのため、充放電に伴い、正極のLi量は欠損している場合がある。その場合、組成分析上、3Vまで放電した場合のaが-0.65以上、1以下に測定されることがある。
【0226】
aの値がこの範囲であれば、リチウム遷移金属系化合物における単位質量当たりのエネルギー密度を大きく損なわず、かつ、良好な負荷特性が得られる。
さらに、δの値は通常±0.5の範囲である。
δの値がこの範囲であれば、結晶構造としての安定性が高く、このリチウム遷移金属系化合物を用いて作製した電極を有する電池のサイクル特性や高温保存が良好である。
【0227】
ここでリチウム遷移金属系化合物の組成であるリチウムニッケルマンガン系複合酸化物におけるリチウム組成の化学的な意味について、以下により詳細に説明する。
上記リチウム遷移金属系化合物の組成式のa,bを求めるには、各遷移金属とリチウムを誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)で分析して、Li/Ni/Mnの比を求める事で計算される。
【0228】
構造的視点では、aに係るリチウムは、同じ遷移金属サイトに置換されて入っていると考えられる。ここで、aに係るリチウムによって、電荷中性の原理によりMとマンガンの平均価数が3.5価より大きくなる。
また、上記リチウム遷移金属系化合物は、フッ素置換されていてもよく、LiMn2O4-xF2xと表記される。
【0229】
〈ブレンド〉
上記の組成のリチウム遷移金属系化合物の具体例としては、例えば、Li1+xNi0.5Mn0.5O2、Li1+xNi0.85Co0.10Al0.05O2、Li1+xNi0.33Mn0.33Co0.33O2、Li1+xNi0.45Mn0.45Co0.1O2、Li1+xMn1.8Al0.2O4、Li1+xMn1.5Ni0.5O4等が挙げられる。これらのリチウム遷移金属系化合物は、1種を単独で用いてもよく、二種以上をブレンドして用いても良い。
【0230】
〈異元素導入〉
また、リチウム遷移金属系化合物は、異元素が導入されてもよい。異元素としては、B,Na,Mg,Al,K,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Sr,Y,Zr,Nb,Ru,Rh,Pd,Ag,In,Sb,Te,Ba,Ta,Mo,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,Pb,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Bi,N,F,S,Cl,Br,I,As,Ge,P,Pb,Sb,Si及びSnの何れか1種以上の中から選択される。これらの異元素は、リチウム遷移金属系化合物の結晶構造内に取り込まれていてもよく、あるいは、リチウム遷移金属系化合物の結晶構造内に取り込まれず、その粒子表面や結晶粒界等に単体もしくは化合物として偏在していてもよい。
【0231】
[リチウム二次電池用正極]
リチウム二次電池用正極は、上述のリチウム二次電池正極材料用リチウム遷移金属系化合物粉体及び結着剤を含有する正極活物質層を集電体上に形成してなるものである。
正極活物質層は、通常、正極材料と結着剤と更に必要に応じて用いられる導電材及び増粘剤等を、乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、或いはこれらの材料を液体媒体中に溶解又は分散させてスラリー状にして、正極集電体に塗布、乾燥することにより作成される。
【0232】
正極集電体の材質としては、通常、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料や、カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が用いられる。また、形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が、炭素材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成しても良い。
【0233】
正極集電体として薄膜を使用する場合、その厚さは任意であるが、通常1μm以上、100mm以下の範囲が好適である。上記範囲よりも薄いと、集電体として必要な強度が不足する可能性がある一方で、上記範囲よりも厚いと、取り扱い性が損なわれる可能性がある。
正極活物質層の製造に用いる結着剤としては、特に限定されず、塗布法の場合は、電極製造時に用いる液体媒体に対して安定な材料であれば良いが、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレンスチレンブロック共重合体及びその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子、シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子、アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0234】
正極活物質層中の結着剤の割合は、通常0.1質量%以上、80質量%以下である。結着剤の割合が低すぎると、正極活物質を十分保持できずに正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させてしまう可能性がある一方で、高すぎると、電池容量や導電性の低下につながる可能性がある。
正極活物質層には、通常、導電性を高めるために導電材を含有させる。その種類に特に制限はないが、具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料や、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素材料等を挙げることができる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。正極活物質層中の導電材の割合は、通常0.01質量%以上、50質量%以下である。導電材の割合が低すぎると導電性が不十分になることがあり、逆に高すぎると電池容量が低下することがある。
【0235】
スラリーを形成するための液体媒体としては、正極材料であるリチウム遷移金属系化合物粉体、結着剤、並びに必要に応じて使用される導電材及び増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いても良い。水系溶媒の例としては水、アルコール等が挙げられ、有機系溶媒の例としてはN-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジメチルエーテル、ジメチルアセタミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等を挙げることができる。特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤を加え、SBR等のラテックスを用いてスラリー化する。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0236】
正極活物質層中の正極材料としてのリチウム遷移金属系化合物粉体の含有割合は、通常10質量%以上、99.9質量%以下である。正極活物質層中のリチウム遷移金属系化合物粉体の割合が多すぎると正極の強度が不足する傾向にあり、少なすぎると容量の面で不十分となることがある。
また、正極活物質層の厚さは、通常10~200μm程度である。
【0237】
正極のプレス後の電極密度としては、通常、2.2g/cm3以上、4.2g/cm3以下である。
なお、塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。
かくして、リチウム二次電池用正極が調製できる。
【0238】
2-3.セパレータ
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この場合、本発明の非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
セパレータの材料や形状については特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。中でも、本発明の非水系電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔性シート又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
【0239】
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、芳香族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルター等を用いることができる。中でも好ましくはガラスフィルター、ポリオレフィンであり、さらに好ましくはポリオレフィンである。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0240】
セパレータの厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、5μm以上が好ましく、10μm以上がさらに好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下がさらに好ましい。セパレータが、上記範囲より薄過ぎると、絶縁性や機械的強度が低下する場合がある。また、上記範囲より厚過ぎると、レート特性等の電池性能が低下する場合があるばかりでなく、非水系電解液二次電池全体としてのエネルギー密度が低下する場合がある。
【0241】
さらに、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの空孔率は任意であるが、通常20%以上であり、35%以上が好ましく、45%以上がさらに好ましく、また、通常90%以下であり、85%以下が好ましく、75%以下がさらに好ましい。空孔率が、上記範囲より小さ過ぎると、膜抵抗が大きくなってレート特性が悪化する傾向がある。また、上記範囲より大き過ぎると、セパレータの機械的強度が低下し、絶縁性が低下する傾向にある。
【0242】
また、セパレータの平均孔径も任意であるが、通常0.5μm以下であり、0.2μm以下が好ましく、また、通常0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲を上回ると、短絡が生じ易くなる。また、上記範囲を下回ると、膜抵抗が大きくなりレート特性が低下する場合がある。
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物、窒化アルミや窒化ケイ素等の窒化物、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩が用いられ、粒子形状もしくは繊維形状のものが用いられる。
【0243】
形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状では、孔径が0.01~1μm、厚さが5~50μmのものが好適に用いられる。上記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製の結着材を用いて上記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、正極の両面に90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を、フッ素樹脂を結着材として多孔層を形成させることが挙げられる。
【0244】
セパレータの非電解液二次電池における特性を、ガーレ値で把握することができる。ガーレ値とは、フィルム厚さ方向の空気の通り抜け難さを示し、100mlの空気が該フィルムを通過するのに必要な秒数で表されるため、数値が小さい方が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方がフィルムの厚さ方向の連通性が良いことを意味し、その数値が大きい方がフィルムの厚さ方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とは、フィルム厚さ方向の孔のつながり度合いである。本発明のセパレータのガーレ値が低ければ、様々な用途に使用することが出来る。例えば非水系リチウム二次電池のセパレータとして使用した場合、ガーレ値が低いということは、リチウムイオンの移動が容易であることを意味し、電池性能に優れるため好ましい。セパレータのガーレ値は、任意ではあるが、好ましくは10~1000秒/100mlであり、より好ましくは15~800秒/100mlであり、更に好ましくは20~500秒/100mlである。ガーレ値が1000秒/100ml以下であれば、実質的には電気抵抗が低く、セパレータとしては好ましい。
【0245】
2-4.電池設計
<電極群>
電極群は、上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもののいずれでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する)は、通常40%以上であり、50%以上が好ましく、また、通常90%以下であり、80%以下が好ましい。
【0246】
電極群占有率が、上記範囲を下回ると、電池容量が小さくなる。また、上記範囲を上回ると空隙スペースが少なく、電池が高温になることによって部材が膨張したり電解質の液成分の蒸気圧が高くなったりして内部圧力が上昇し、電池としての充放電繰り返し性能や高温保存等の諸特性を低下させたり、さらには、内部圧力を外に逃がすガス放出弁が作動する場合がある。
【0247】
<外装ケース>
外装ケースの材質は用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に制限されない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
【0248】
金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、若しくは、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。上記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、上記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
【0249】
<保護素子>
保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等を使用することができる。上記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
【0250】
(外装体)
本発明の非水系電解液二次電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等を外装体(外装ケース)内に収納して構成される。この外装体に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り公知のものを任意に採用することができる。
外装ケースの材質は用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に限定されるものではない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金、ニッケル、チタン等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
【0251】
上記金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、又は、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。上記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、上記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
【0252】
また、外装ケースの形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等の何れであってもよい。
【実施例0253】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
本実施例に使用した化合物の略号を以下に示す。
フルオロスルホン酸リチウム;FSLi
ジフルオロリン酸リチウム;DFPLi
ヘキサメチレンジイソシアネート;HMDI
1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン;BIMCH
リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド;LiFSI
p-トルエンスルホニルイソシアネート;TSI
ジイソシアナトスルホン;DIS
フルオロスルホニルメタン;FSO2Me
エチルイソシアネート;EtNCO
イソプロピルイソシアネート;iso-PrNCO
tert-ブチルイソシアネート;tert-BuNCO
フルオロスルホン酸メチル;FSO3Me
ベンゼンスルホニルフルオリド;FSO2Ph
ベンジルスルホニルフルオリド;FSO2CH2Ph
1,3-プロパンスルトン:PS
無水マレイン酸:MAL
ビニレンカーボネート:VC
ビニルエチレンカーボネート:VEC
【0254】
<実施例1-1~1-7、比較例1-1>
[正極の作製]
正極活物質としてリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(NMC)85質量%と、導電材としてアセチレンブラック10質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量%とを、N-メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ21μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0255】
[負極の作製]
平均粒子径0.2μmのSi微粒子50gを平均粒径35μmの鱗片状黒鉛2000g中に分散させ、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所製)に投入し、ローター回転数7000rpm、180秒装置内を循環又は滞留させて処理し、Siと黒鉛粒子の複合体を得た。得られた複合体を、焼成後の被覆率が7.5%になるように炭素質物となる有機化合物としてコールタールピッチを混合し、2軸混練機により混練・分散させた。得られた分散物を、焼成炉に導入し、窒素雰囲気下1000℃、3時間焼成した。得られた焼成物は、更にハンマーミルで粉砕後、篩(45μm)を実施し、負極活物質を作製した。前記測定法で測定した、ケイ素元素の含有量(Si含有量)、平均粒径d50、タップ密度、比表面積はそれぞれ、2.0質量%、20μm、1.0g/cm3、7.2m2/gであった。
上記と同様の方法によって、表1に表される種々のSi含有量の負極活物質1~4を作製した。Si含有量は、Si微粒子と黒鉛粒子との合計(100質量%)に対するSi微粒子の分析結果による質量濃度(質量%)である。他の実施例において、Si含有量が、それぞれ2.0wt%、7.3wt%、12.5wt%、17.4wt%と表示されているものは、下記の表1の負極活物質1、2、3、4をそれぞれ使用したものである。
【0256】
【0257】
負極活物質を97.5質量部、増粘剤、バインダーとしてそれぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)1質量部、及び、スチレン-ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン-ブタジエンゴムの濃度50質量%)1.5質量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。
【0258】
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)、フルオロエチレンカーボネート(MFEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合物(体積容量比2:1:4:3)に、十分に乾燥させたLiPF6を1.2モル/L(非水系電解液中の濃度として)溶解させた(これを基準電解液1と呼ぶ)。基準電解液1全体に対して、下記表2に記載の割合で化合物(添加剤)を加えて電解液を調製した。ただし、比較例1-1は基準電解液1そのものである。
【0259】
[非水系電解液電池(ラミネート型)の製造]
上記の正極、負極、及びポリオレフィン製セパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層した。こうして得られた電池要素をアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、後述する電解液を注入した後で真空封止し、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0260】
<非水系電解液二次電池の評価>
[高温サイクル試験]
25℃の恒温槽中、ラミネート型セルの非水系電解液二次電池を0.05Cに相当する電流で4.0Vまで定電流充電した後(以下適宜、「CC充電」という)、0.05Cで2.75Vまで定電流放電(以下適宜、「CC放電」という)を行った。その後、0.2Cで4.1Vまで定電流―定電圧充電し(以下適宜「CC-CV充電」という)(0.05Cカット)、0.2Cで2.75VまでCC放電した。続いて0.2Cで4.2VまでCC-CVした後、0.2Cで2.75Vまで放電する操作を2回繰り返し、コンディショニングを行った。ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、例えば、0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
【0261】
コンディショニング後のセルを45℃の恒温槽中、0.5Cで4.2VまでCCCV充電した後、0.5Cの定電流で2.75Vまで放電する過程を1サイクルとして、100、及び、200サイクル実施した。
【0262】
100サイクル目の容量維持率を、以下のようにして算出した。
100サイクル目の容量維持率
=100サイクル目の容量/1サイクル目の容量×100
さらに、比較例1-1の基準電解液1そのものを用いた非水系電解液二次電池の100サイクル目の容量維持率を100とし、これに対する、実施例1-1~1-7の所定のSi含有量の負極活物質を有する各電池の100サイクル目の容量維持率の数値を求めた。表2に、これらの数値を示す。
表中、化合物(添加剤)の「%」は、非水系電解液100質量%中の化合物(添加剤)の質量%である。
【0263】
実施例1-1~1-7、比較例1-1において、負極活物質として、ケイ素粉末を用いて、以下のようにして電池を作製して、試験を行った。表中、Si含有量100質量%として表示する。
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、モノフルオロエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積容量比2:8)に、十分に乾燥させたLiPF6を1モル/L(非水系電解液中の濃度として)溶解させた(これを基準電解液1’「と呼ぶ)。基準電解液1’全体に対して、下記表2に記載の割合で化合物を加えて電解液を調製した。ただし、比較例1-1についてSi含有量100質量%と表示するものは基準電解液1’そのものを使用した例である。
【0264】
[正極の作製]
正極活物質としてリチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物(NMC)85質量%と、導電材としてアセチレンブラック10質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量%とを、N-メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ21μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0265】
[負極の作製]
負極活物質としてケイ素粉末、導電剤として黒鉛粉末、及びバインダーを混合し、これらにN-メチルピロリドン溶液を加え、ディスパーザーで混合してスラリー状とした。得られたスラリーを、負極集電体である厚さ20μmの銅箔上に均一に塗布して負極とし、活物質が幅30mm、長さ40mmとなるように切り出して負極とした。なお、この負極は摂氏60度で12時間減圧乾燥して用いた。
【0266】
[非水系電解液電池(ラミネート型)の製造]
上記の正極、負極、及びポリオレフィン製セパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層した。こうして得られた電池要素をアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、後述する電解液を注入した後で真空封止し、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0267】
<非水系電解液二次電池の評価>
[高温サイクル試験]
25℃の恒温槽中、コイン型セルの非水系電解液二次電池を0.05Cに相当する電流で4時間定電流充電した後(以下適宜、「CC充電」という)、0.2Cで4.0Vまで定電流-定電圧充電(以下適宜、「CC-CV充電」という)を行った。その後、0.2Cで2.75Vまで放電した。続いて0.2Cで4.0VまでCC-CVした後、0.2Cで2.75Vまで放電し、非水系電解液二次電池を安定させた。その後、0.2Cで4.2VまでCC-CV充電を行った後、0.2Cで2.75Vまで放電させ初期のコンディショニングを行った。
【0268】
コンディショニング後のセルを45℃の恒温槽中、0.5Cで4.2VまでCCCV充電した後、0.5Cの定電流で2.75Vまで放電する過程を1サイクルとして、200サイクル実施した。
【0269】
【0270】
200サイクル目の容量維持率は、以下のようにして算出した。
200サイクル目の容量維持率
=200サイクル目の容量/1サイクル目の容量×100
さらに、比較例1-1の基準電解液1又は基準電解液1’そのものを用いた非水系電解液二次電池の200サイクル目の容量維持率を100とし、これに対する、実施例1-1~1-7の所定のSi含有量の負極活物質を有する各電池の200サイクル目の容量維持率の数値を求めた。表3に、これらの数値を示す。
表中、化合物(添加剤)の「%」は、非水系電解液100質量%中の化合物(添加剤)の質量%である。
【0271】
【0272】
表2及び表3に示すように、非水系電解液に特定の化合物を添加していない非水系電解液二次電池(比較例1-1)の容量維持率100に対して、実施例1-1~1-7の非水系電解液二次電池の容量維持率の数値はすべて100の数値を超えていた。表2より、負極活物質中のSi含有量にかかわらず、サイクル特性が改善されることがわかる。
【0273】
<実施例2-1~2-14、比較例2-1>
[正極・負極の作製]
実施例1で作製した、正極・負極活物質を使用した。
【0274】
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、ECとDECとの混合物(体積容量比3:7)に、十分に乾燥させたLiPF6を1.0モル/L(非水系電解液中の濃度として)溶解させ、さらに、ビニレンカーボネート(VC)とフルオロエチレンカーボネートをそれぞれ2.0質量%添加した(これを基準電解液2と呼ぶ)。基準電解液2全体に対して、下記表4に記載の割合で化合物を加えて電解液を調製した。ただし、比較例2-1は基準電解液2そのものである。
【0275】
<非水系電解液二次電池の評価>
[高温サイクル試験]
25℃の恒温槽中、ラミネート型セルの非水系電解液二次電池を0.05Cに相当する電流で4.0Vまで定電流-定電圧充電を行った。その後、0.05Cで2.5Vまで放電した。続いて0.2Cで4.0VまでCC-CVした後、0.2Cで2.5Vまで放電し、非水系電解液二次電池を安定させた。その後、0.2Cで4.2VまでCC-CV充電を行った後、0.2Cで2.5Vまで放電させ初期のコンディショニングを行った。
【0276】
初期コンディショニング後のセルを45℃の恒温槽中、0.5Cで4.2VまでCC-CV充電した後、0.5Cの定電流で2.5Vまで放電する過程を1サイクルとして、100サイクル実施した。
【0277】
100サイクル目の容量維持率を、以下のようにして算出した。
100サイクル目の容量維持率
=100サイクル目の容量/1サイクル目の容量×100
さらに、比較例2-1の基準電解液2そのものを用いた非水系電解液二次電池の100サイクル目の容量維持率を100とし、これに対する、実施例2-1~2-14の所定のSi含有量の負極活物質を有する各電池の100サイクル目の容量維持率の数値を求めた。表4に、これらの数値を示す。
表中、化合物(添加剤)の「%」は、非水系電解液100質量%中の化合物(添加剤)の質量%である。
【0278】
【0279】
表4に示すように、非水系電解液に特定の化合物を添加していない非水系電解液二次電池(比較例2-1)の高温サイクル試験後の容量維持率100に対して、実施例2-1~2-14の非水系電解液二次電池の容量維持率の数値はすべて100の数値を超えていた。また、実施例2-1、2-4、2-5に示すとおり、負極活物質中のSi含有量に関わらず、サイクル特性が改善されることがわかる。
【0280】
<実施例3-1~3-7、比較例3-1>
[正極・負極の作製]
実施例1で作製した、正極・負極活物質を使用した。
【0281】
[非水系電解液の調製]
電解液は基準電解液1を使用した。基準電解液1全体に対して、下記表5に記載の割合で化合物を加えて電解液を調製した。ただし、比較例3-1は基準電解液1そのものである。
[非水系電解液電池(ラミネート型)の製造]
実施例1と同様にして、シート状の非水系電解液二次電池を製造した。
【0282】
なお、Si含有量100質量%との表示がある電池については、実施例1において、Si含有量100質量%との表示がある電池に関して記載された、電池の作成条件及び高温サイクル試験の条件で、電池を作製して、高温サイクル試験を行った。比較例3-1についてSi含有量100質量%と表示するものは基準電解液1’そのものを使用した例である。ただし、実施例3-5におけるSi含有量100%との表示がある電池の正極については、以下のようにして製造した正極を使用した。
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)94質量%と、導電材としてアセチレンブラック3質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)3質量%とを、N-メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ21μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0283】
<非水系電解液二次電池の評価>
[電池膨れ]
実施例1と同様の条件で初期コンディショニングを行った電池の厚みを測定したのち、実施例2と同様にして、高温サイクル試験(200サイクル)を行った。その後、初期コンディショニング後と同様に電池の厚み変化を測定し、サイクルに伴う電池の電極厚み変化を「電池膨れ」とした。評価を行った電池はサイクル中に発生したガスをセル内のガス貯めに貯めることができる。そのため、記載した「電極膨れ」とは、発生したガスによる膨れではなく、サイクルに伴う電極の厚み変化による膨れであることがわかる。
【0284】
表5中の数値は、比較例3-1の基準電解液1又は基準電解液1’そのものを用いた非水系電解液二次電池の高温サイクル試験(200サイクル)後の「電池膨れ」を100とし、比較例3-1の「電池膨れ」100に対する、実施例3-1~3-7の所定のSi含有量の負極活物質を有する各電池の「電池膨れ」の数値を求めた。表5中、化合物(添加剤)の「%」は、非水系電解液100質量%中の化合物(添加剤)の質量%を示す。
【0285】
【0286】
表5に示すように、非水系電解液に特定の化合物を添加していない非水系電解液二次電池(比較例3-1)の高温サイクル試験(200サイクル)後の「電池膨れ」100に対して、実施例3-1~3-7の非水系電解液二次電池は、「電池膨れ」はすべて100を下回っているか、若干上回るだけであり、負極活物質中のSi含有量に関わらず、サイクル特性が改善されるのがわかる。特に、Si含有量が7.3質量%、12.5質量%の場合、顕著な改善効果が見られた。
【0287】
<実施例4-1~4-14、比較例4-1>
[正極・負極の作製]
実施例1で作製した、正極・負極活物質を使用した。
【0288】
[非水系電解液の調製]
電解液は基準電解液2を使用した。基準電解液2全体に対して、下記表6に記載の割合で化合物を加えて電解液を調製した。ただし、比較例4-1は基準電解液2そのものである。
【0289】
<非水系電解液二次電池の評価>
[電池膨れ]
実施例2と同様の条件で初期コンディショニングを行った電池の厚みを測定したのち、実施例2と同様にして、高温サイクル試験(200サイクル)を行った。その後、初期コンディショニング後と同様に電池の厚み変化を測定し、サイクルに伴う電池の電極厚み変化を「電池膨れ」とした。表6中の数値は、比較例4-1の基準電解液2そのものを用いた非水系電解液二次電池の高温サイクル試験(200サイクル)後の「電池膨れ」を100とし、比較例4-1の「電池膨れ」100に対する、実施例4-1~4-14の所定のSi含有量の負極活物質を有する各電池の「電池膨れ」の数値である。表6中、化合物(添加剤)の「%」は、非水系電解液100質量%中の化合物(添加剤)の質量%を示す。
【0290】
【0291】
表6に示すように、非水系電解液に特定の化合物を添加していない非水系電解液二次電池(比較例4-1)の高温サイクル試験(200サイクル)後の「電池膨れ」100に対して、実施例4-1~4-14の非水系電解液二次電池の「電池膨れ」はすべて100を下回っており、サイクル特性が改善されることがわかる。
【0292】
<実施例5-1~5-5、比較例5-1~5-5>
[正極の作製]
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)97質量%と、導電材としてアセチレンブラック1.5質量%と、結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.5質量%とを、N-メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ21μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0293】
[負極の作製]
負極活物質(黒鉛:SiO=95:5;質量比)を97.5質量部、増粘剤、バインダーとしてそれぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)1質量部、及び、スチレン-ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン-ブタジエンゴムの濃度50質量%)1.5質量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ10μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。
【0294】
[非水系電解液の調製]
電解液は基準電解液1を使用した。基準電解液1全体に対して、下記表7に記載の割合で化合物を加えて電解液を調製した。ただし、比較例5-1は基準電解液1そのものである。
【0295】
[非水系電解液電池(ラミネート型)の製造]
上記の正極、負極、及びポリオレフィン製セパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層した。こうして得られた電池要素をアルミニウムラミネートフィルムで包み込み、後述する電解液を注入した後で真空封止し、シート状の非水系電解液二次電池を作製した。
【0296】
<非水系電解液二次電池の評価>
[高温サイクル試験]
25℃の恒温槽中、ラミネート型セルの非水系電解液二次電池を0.05Cに相当する電流で10時間定電流充電した後、0.2Cで2.75Vまで放電した。0.2Cで4.1VまでCC-CV充電を行い、0.2Cで2.75Vまで放電し、非水系電解液二次電池を安定させた。さらに、0.2Cで4.2VまでCC-CV充電を行った後、0.2Cで2.75Vまで放電し、初期コンディショニングを行った。その後、電池の厚みを測定したのち、0.5Cで4.2VまでCCCV充電した後、0.5Cの定電流で2.5Vまで放電する過程を1サイクルとして、45℃の恒温槽内で高温サイクル試験(200サイクル)を行った。
【0297】
200サイクル目の容量維持率を、以下のようにして算出した。
200サイクル目の容量維持率
=200サイクル目の容量/1サイクル目の容量×100
さらに、比較例5-1の基準電解液1そのものを用いた非水系電解液二次電池の200サイクル目の容量維持率を100とし、これに対する、実施例5-1~5-5の所定のSi含有量の負極活物質を有する各電池の200サイクル目の容量維持率の数値を求めた。表7に、これらの数値を示す。表中、化合物(添加剤)の「%」は、非水系電解液100質量%中の化合物(添加剤)の質量%である。
【0298】
[電池膨れ]
初期コンディショニング後と同様に200サイクル後の電池の厚み変化を測定し、サイクルに伴う電池の電極厚み変化を「電池膨れ」とした。表7中の数値は、比較例5-1の基準電解液1そのものを用いた非水系電解液二次電池の高温サイクル試験(200サイクル)後の「電池膨れ」を100とし、これに対する、実施例5-1~5-5の所定のSi含有量の負極活物質を有する各電池の「電池膨れ」の数値である。
【0299】
【0300】
表6に示すように、非水系電解液に特定の化合物を添加していない非水系電解液二次電池(比較例5-1)の高温サイクル試験後の容量維持率100に対して、実施例5-1~5-5の非水系電解液二次電池の容量維持率はすべて100の数値を超えていた。比較例5-1の電池の高温サイクル試験後の電池膨れ100に対して、実施例5-1~5-5の非水系電解液二次電池の電池膨れはすべて100を下回っており、改善効果が高いことがわかる。
本発明で規定する添加剤のみを添加した非水系電解液二次電池(比較例5-2~5-5)は、容量維持率の点で、いずれも実施例5-1~5-5の電池に劣り、電池膨れの改善も及ばず、比較例5-2ではむしろ悪化していることがわかる。
本発明の非水系電解液によれば、非水系電解液電池の高温保存時における容量劣化とサイクル特性を改善できる。そのため、非水系電解液二次電池が用いられる電子機器等のあらゆる分野において好適に利用できる。また、非水系電解液を用いるリチウムイオンキャパシタ等の電界コンデンサにおいても好適に利用できる。
本発明の非水系電解液及び非水系電解液二次電池の用途は特に限定されず、公知の各種の用途に用いることが可能である。その用途の具体例としては、ラップトップコンピュータ、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンタ、携帯オーディオプレーヤー、小型ビデオカメラ、液晶テレビ、ハンディクリーナー、トランシーバ、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、自動車、バイク、原動機付自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ等を挙げることができる。
前記Si又はSi金属酸化物と黒鉛粒子との合計に対する、前記Si又はSi金属酸化物の含有量が0.1~25質量%である、請求項1又は2に記載の非水系電解液電池。