(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103745
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】有機廃棄物燃焼処理システム及び有機廃棄物の処理方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/40 20220101AFI20220701BHJP
B09B 3/00 20220101ALI20220701BHJP
【FI】
B09B3/00 303H
B09B3/00 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218567
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】521001135
【氏名又は名称】株式会社エーワイ総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】阿部 正雄
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA01
4D004CA15
4D004CA24
4D004CB04
4D004CB27
4D004CB31
4D004CC01
4D004CC03
4D004DA02
4D004DA06
4D004DA10
(57)【要約】
【課題】廃棄物焼却の際にダイオキシンが発生してもこれを無害化させることができるとともに、廃棄物中に含まれる有機物を焼却処理によって最小限削減させるか消滅させることができる有機廃棄物燃焼処理システムを提供する。
【解決手段】投入する有機廃棄物に対して、これらを構成する各物質の沸点を超える温度まで上昇加熱させることで有機物を熱分解させてダイオキシン類以外の不燃性ガスである気体生成物及び炭素を主体とした固形残渣を生成する一次装置10と、一次装置10で生成された気体生成物を高温加熱下に滞留させて再度熱分解させることで、無害化(分解)させる二次装置20と、二次装置20で無害化処理された高温のガスを冷却水で急速冷却し、ダイオキシン類を含む有害物の再生成を抑制する三次装置30と、を備えるように構成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入する有機廃棄物に対して、これらを構成する各物質の沸点を超える温度まで上昇加熱させることで有機物を熱分解させてダイオキシン類以外の不燃性ガスである気体生成物及び炭素を主体とした固形残渣を生成する一次装置と、
前記一次装置で生成された気体生成物を高温加熱下に滞留させて再度熱分解させることで、無害化(分解)させる二次装置と、
二次装置で無害化処理された高温のガスを冷却水で急速冷却し、ダイオキシン類を含む有害物の再生成を抑制する三次装置と、を備え、
前記三次装置で利用された前記冷却水は、濾過器によって前記冷却水の混入物が除去された後に再利用されるとともに、前記混入物を前記一次装置へ還流させて再処理されるように構成したことを特徴とする(有機)廃棄物分解システム。
【請求項2】
有機廃棄物が燃焼反応を生じる酸素濃度(限界酸素濃度)未満の低酸素濃度状態を生成するとともに、オゾンを供給し、かつ、焼却すべき有機廃棄物の気化或いは昇華による固形物の消滅温度以下の環境条件を保持する熱分解室を設けた、一次装置を構成する熱分解装置と、
前記熱分解室で生成されたダイオキシンを高温環境下に晒して焼き切り、分解させて無害化させる焼成室を設けた、二次装置を構成する焼成装置と、
冷水が通水するらせん状の細管が設置され前記焼成室で発生する気化焼成物が送り込まれる冷却室と、この冷却室内から所定濃度以下となった前記気化焼成物を大気へ放出する放出口及び/又は前記熱分解室へ帰還させる帰還路とを設けた、三次装置を構成する冷却装置と、
を備えたことを特徴とする有機廃棄物燃焼処理システム。
【請求項3】
前記一次装置は、
中央上部に有機廃棄物を内部に投入する開口を設けた燃焼(熱分解)炉本体と、
前記燃焼(熱分解)炉本体内部の下部側若しくは底部側に設けた熱源と、
前記燃焼(熱分解)炉本体内部の前記有機廃棄物を均等に撹拌させる分散手段と、
前記燃焼(熱分解)炉本体にオゾンを供給するオゾン発生装置と、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の有機廃棄物燃焼処理システム。
【請求項4】
前記二次装置は、
僅かな隙間を隔てて対をなすとともに、複数回連続的に折曲げて形成することで連続的に連なる細幅状の流路を長く形成し、かつ、前記流路に臨む板内に電熱体が張り巡らされる、平板状の金属で構成する板状体を備え、
前記対をなす板状体は、前記隙間で構成した前記流路に沿って移動する前記気体生成物を、ダイオキシンの生成温度を上回る850℃~1000℃の温度範囲に保持して曝す滞留手段を構成する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の有機廃棄物燃焼処理システム。
【請求項5】
前記一次装置における前記酸素濃度は、14~17%の範囲内にあることを特徴とする請求項2に記載の有機廃棄物燃焼処理システム。
【請求項6】
前記一次装置と前記二次装置と前記三次装置とは、それぞれ別体に形成され、設置場所に応じて各装置の配置レイアウトを変更可能としたことを特徴とする請求項1乃至5に記載の有機廃棄物処理システム。
【請求項7】
有機廃棄物を内部に投入する開口を中央上部に設けた燃焼(熱分解)炉本体と、前記燃焼(熱分解)炉本体の底部に設けた熱源と、前記燃焼(熱分解)炉本体内部の前記有機廃棄物を均等に撹拌させる分散手段と、前記前記燃焼(熱分解)炉本体と連結され、オゾンを供給させるオゾン発生装置と、を備えた一次装置に、有機廃棄物を低酸素条件下で、かつ、投入し、前記有機廃棄物を構成する各物質の沸点を超える温度まで上昇加熱させることにより、有機物を熱分解させてダイオキシン類以外の不燃性ガスである気体生成物及び炭素を主体とした固形残渣を生成する第1工程と、
僅かな隙間を隔てて対をなすとともに、複数回連続的に折曲げて形成することで連続的に連なる細幅状の流路を長く形成し、かつ、前記流路に臨む板内に電熱体が張り巡らされる、平板状の金属で構成し、前記隙間で構成した前記流路に沿って移動する前記気体生成物を、ダイオキシンの生成温度を上回る850℃~1000℃の温度範囲に保持して曝す滞留手段を構成する板状体を備えた二次装置において、前記熱分解室で生成されたダイオキシンを高温環境下に晒して焼き切り、分解させて無害化させる第2工程と、
冷水が通水するらせん状の細管が設置され前記二次装置の焼成室で発生する気化焼成物が送り込まれる冷却室と、この冷却室内から所定濃度以下となった前記気化焼成物を大気へ放出する放出口及び/又は前記熱分解室へ帰還させる帰還路とを設け、前記第2工程で無害化処理された高温のガスを冷却水で急速冷却し、ダイオキシン類を含む有害物の再生成を抑制させる第3工程と、
を備えたことを特徴とする有機廃棄物の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機廃棄物燃焼処理システム及び有機廃棄物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の家庭や事業所等から排出される可燃性の廃棄物は、回収車両等で収集したものを焼却処理場に集めて、大量のごみを1か所にまとめて焼却処理することが一般的な処分方法である。また、その焼却処理により発生する燃え残りの焼却灰は、特に設置された専用の処理場などに埋め立てる等の処理をすることが多い。
【0003】
しかしながら、燃焼炉等を用いて被処理物を高温で燃焼させて焼却処理しようとする場合に、ダイオキシン等の有害ガスが発生しやすい。特に、小型の燃焼炉を用いて廃棄物等を焼却処分する場合には、全体に均一に燃焼されずに不完全燃焼状態となり易い。その結果として、悪臭や異臭、くすぶった煙などが多く発生することがあり、周囲に迷惑をかけるという問題もある。
【0004】
そこで、前述したような有害ガスが発生することや、悪臭や異臭が発生すること等の問題に対処させるために、適宜の処理手段により焼却処理を行うことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1においては、低温でごみを焼却処理する技術手段を用いることで、ダイオキシンのような有害ガスが発生することを防止できるものとされている。
【0005】
しかしながら、従来の小型の焼却炉では、内部に均一に空気を供給する作用が良好に行われずに、一部では高温で燃焼することがあったり、他の部分では低温で蒸し焼き状態となったりして、特に、ダイオキシンが発生されやすい。前述したような有害ガスが発生することの問題に対処させるために、蒸し焼き状態で低温処分する方法を用いようとする場合でも、無酸素燃焼等の燃焼方式は、容易に実現できないものである。実際に可燃性の廃棄物を無害化処理することは、例えば、燃焼に用いるガス体の供給機構と排気ガスの排出処理の方法との、そのいずれの方法も、比較的面倒な処理方式を用いて行われることが多い。このために、その装置の維持管理が容易には行われ難い等と考えられるものであり、解決を要する課題が多く残っている。
【0006】
そこで、可燃ごみをその燃焼部の中央部分で高温燃焼させ、その高温部分の周囲では、外側に至るほど低温で蒸し焼きにする状態と、その周囲の低温域では水分を蒸発させる処理とを行うような、熱(燃焼)処理する手段を用いて、燃焼効率を向上させ得るとともに、ダイオキシン等の有害ガス体が発生することを防止でき、小型の装置を用いて可燃ごみの処理を容易に行い得る装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-136249号公報
【特許文献2】特開2009-30877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この引用文献2に記載のものにあっては、ダイオキシン発生温度以下の低温下での燃焼廃棄であるのでその点では都合がよいが、廃棄対象である廃棄物が低温燃焼のために効果的に処理できずに多量の残渣が形成される虞が高い。そのため、廃棄物の焼却処理の点では問題が解決されず、焼却処理場としての体をなさないといった問題を孕んでいる。
【0009】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、廃棄物焼却の際にダイオキシンが発生してもこれを無害化させることができるとともに、廃棄物の効果的な処理によって特に廃棄物中に含まれる有機物を焼却処理によって最小限削減させるか消滅させることができ、焼却処理後の残渣も最小限に抑えることができる有機廃棄物燃焼処理システム及び有機廃棄物の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る有機廃棄物燃焼処理システムは、 投入する有機廃棄物に対して、これらを構成する各物質の沸点を超える温度まで上昇加熱させることで有機物を熱分解させてダイオキシン類以外の不燃性ガスである気体生成物及び炭素を主体とした固形残渣を生成する一次装置と、
前記一次装置で生成された気体生成物を高温加熱下に滞留させて再度熱分解させることで、無害化(分解)させる二次装置と、
二次装置で無害化処理された高温のガスを冷却水で急速冷却し、ダイオキシン類を含む有害物の再生成を抑制する三次装置と、を備え、
前記三次装置で利用された前記冷却水は、濾過器によって前記冷却水の混入物が除去された後に再利用されるとともに、前記混入物を前記一次装置へ還流させて再処理されるように構成したことを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係る有機廃棄物燃焼処理システムの他の態様は、有機廃棄物が燃焼反応を生じる酸素濃度(限界酸素濃度)未満の低酸素濃度状態を生成するとともに、オゾンを供給し、かつ、焼却すべき有機廃棄物の気化或いは昇華による固形物の消滅温度以下の環境条件を保持する熱分解室を設けた、一次装置を構成する熱分解装置と、
前記熱分解室で生成されたダイオキシンを高温環境下に晒して焼き切り、分解させて無害化させる焼成室を設けた、二次装置を構成する焼成装置と、
冷水が通水するらせん状の細管が設置され前記焼成室で発生する気化焼成物が送り込まれる冷却室と、この冷却室内から所定濃度以下となった前記気化焼成物を大気へ放出する放出口及び/又は前記熱分解室へ帰還させる帰還路とを設けた、三次装置を構成する冷却装置と、
を備えたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る有機廃棄物燃焼処理システムの他の態様は、前記一次装置は、
中央上部に有機廃棄物を内部に投入する開口を設けた燃焼(熱分解)炉本体と、
前記燃焼(熱分解)炉本体内部の下部側若しくは底部に設けた熱源と、
前記燃焼(熱分解)炉本体内部の前記有機廃棄物を均等に撹拌させる分散手段と、
前記燃焼(熱分解)炉本体にオゾンを供給するオゾン発生装置と、
を備えたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係る有機廃棄物燃焼処理システムは、前記二次装置が、僅かな隙間を隔てて対をなすとともに、複数回連続的に折曲げて形成することで連続的に連なる細幅状の流路を長く形成し、かつ、前記流路に臨む板内に電熱体が張り巡らされる、平板状の金属で構成する板状体を備え、前記対をなす板状体は、前記隙間で構成した前記流路に沿って移動する前記気体生成物を、ダイオキシンの生成温度を上回る850℃~1000℃の温度範囲に保持して曝す滞留手段を構成することを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係る有機廃棄物処理システムは、前記一次装置における前記酸素濃度は、14~17%の範囲内にあることを特徴とするものである。
【0015】
本発明に係る有機廃棄物処理システムは前記一次装置と前記二次装置と前記三次装置とは、それぞれ別体に形成され、設置場所に応じて各装置の配置レイアウトを変更可能としたことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る有機廃棄物の処理方法は、有機廃棄物を内部に投入する開口を中央上部に設けた燃焼(熱分解)炉本体と、前記燃焼(熱分解)炉本体の底部に設けた熱源と、前記燃焼(熱分解)炉本体内部の前記有機廃棄物を均等に撹拌させる分散手段と、前記前記燃焼(熱分解)炉本体と連結され、オゾンを供給させるオゾン発生装置と、を備えた一次装置に、有機廃棄物を低酸素条件下で、かつ、投入し、前記有機廃棄物を構成する各物質の沸点を超える温度まで上昇加熱させることにより、有機物を熱分解させてダイオキシン類以外の不燃性ガスである気体生成物及び炭素を主体とした固形残渣を生成する第1工程と、
僅かな隙間を隔てて対をなすとともに、複数回連続的に折曲げて形成することで連続的に連なる細幅状の流路を長く形成し、かつ、前記流路に臨む板内に電熱体が張り巡らされる、平板状の金属で構成し、前記隙間で構成した前記流路に沿って移動する前記気体生成物を、ダイオキシンの生成温度を上回る850℃~1000℃の温度範囲に保持して曝す滞留手段を構成する板状体を備えた二次装置において、前記熱分解室で生成されたダイオキシンを高温環境下に晒して焼き切り、分解させて無害化させる第2工程と、
冷水が通水するらせん状の細管が設置され前記二次装置の焼成室で発生する気化焼成物が送り込まれる冷却室と、この冷却室内から所定濃度以下となった前記気化焼成物を大気へ放出する放出口及び/又は前記熱分解室へ帰還させる帰還路とを設け、前記第2工程で無害化処理された高温のガスを冷却水で急速冷却し、ダイオキシン類を含む有害物の再生成を抑制させる第3工程と
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の有機廃棄物燃焼処理システムによれば、廃棄物焼却の際にダイオキシンが発生してもこれを無害化させることができるとともに、廃棄物の効果的な処理によって特に廃棄物中に含まれる有機物を焼却処理によって最小限まで削減させるか消滅させることができ、焼却処理後の残渣も最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る有機廃棄物燃焼処理システムの概略構成を示す正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る有機廃棄物燃焼処理システムの概略構成を示す平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る有機廃棄物燃焼処理システムの一次装置内の分散装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図4】(A)は本発明の実施形態に係る有機廃棄物燃焼処理システムの拡散籠を示す斜視図、(B)はその要部破断図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る有機廃棄物燃焼処理システムの二次装置内の熱分解室の概略構成を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る有機廃棄物燃焼処理システムの三次装置内の概略構成を示す原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の要旨は、投入する有機廃棄物に対して、これらを構成する各物質の沸点を超える温度まで上昇加熱させることで有機物を熱分解させてダイオキシン類以外の不燃性ガスである気体生成物及び炭素を主体とした固形残渣を生成する一次装置と、一次装置で生成された気体生成物を高温加熱下に滞留させて再度熱分解させることで、無害化(分解)させる二次装置と、二次装置で無害化処理された高温のガスを冷却水で急速冷却し、ダイオキシン類を含む有害物の再生成を抑制する三次装置と、を備え、三次装置で利用された冷却水は、濾過器によって記冷却水の混入物が除去された後に再利用されるとともに、前記混入物を前記一次装置へ還流させて再処理されるように構成したことを特徴とする。これにより、廃棄物焼却の際にダイオキシンが発生してもこれを無害化させることができるとともに、廃棄物の効果的な処理によって特に廃棄物中に含まれる有機物を焼却処理、具体的には熱分解によって最小限削減させるか消滅させることができ、焼却処理後の残渣も最小限に抑えることができる有機廃棄物燃焼処理システムの提供を図ろうとするものである。
【0020】
以下、本発明に係る有機廃棄物燃焼処理システムの実施形態について図面を参照しながら説明する。また、本説明中に用いる各図において、各装置の配置状態を明確にさせるため、互いに直交するXYZ3次元デカルト座標を用いてある。なお、この3次元座標では、右手系で表示するが、原点位置に関しては特に特定箇所に設定してはいない。
【0021】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1及び
図2は、本発明の第1の実施形態に係る有機廃棄物燃焼処理システム1を示す概略外観正面図及び概略外観平面図を示すものである。
本実施形態に係る有機廃棄物燃焼処理システム1は、概略構成として、1次装置10と、2次装置20と、3次装置30と、を備えており、1次装置10と2次装置20との間、及び2次装置20と3次装置30との間が連通している。なお、本実施形態では、各次装置で生成された気体生成物が元の装置側へ逆流するのを阻止するために、
図1および
図2には図示していないが、逆止弁などの逆流防止手段が、各装置間を連通する通気管P1及びP2(又は各装置の図示しない出口又は入口)に設置されている。また、本発明では、これ以外の態様として、差圧の関係で逆流しないように各次装置内を圧力制御・調整するような構成としてもよい(例えば、1次装置内圧>2次装置内圧>3次装置内圧)。
[有機廃棄物燃焼処理システムの構成]
【0022】
・一次装置について:
一次装置10は、投入する有機廃棄物に対して、これらを構成する各物質の沸点を超える温度まで上昇加熱させることで、有機物を熱分解させて、ダイオキシン類以外の不燃性ガスである気体生成物及び炭素を主体とした固形残渣を生成するものである。この一次装置10について、より具体的には、有機廃棄物が燃焼反応を生じる酸素濃度(限界酸素濃度)未満の低酸素濃度状態を生成するとともに、オゾン(O3)を供給し、かつ、焼却すべき有機廃棄物の気化或いは昇華による固形物の消滅温度以下の環境条件を保持する熱分解室を設けた、熱分解装置で一次装置(以下、一次装置10のことを「熱分解装置10」とよぶ)を構成する。また、この熱分解装置10は、上述したオゾンを供給させるために、オゾン発生装置40をそばに設置しており、供給管41を介して熱分解装置10内部へオゾンを供給させるように構成されている。なお、ここで、有機廃棄物とは、有機物を含んだ廃棄物のことを指すものであって、無機物、金属類を一切含まないという意味ではない。
【0023】
この熱分解装置10は、中央上部に有機廃棄物を内部に投入する開口11Aを設けた燃焼(熱分解)炉本体(以下、“炉本体11”とよぶ)と、この炉本体11内部の底部側に設けた熱源12と、炉本体11内部の有機廃棄物を均等に撹拌させる分散手段13と、炉本体11にオゾンを供給する上述したオゾン発生装置40と、を備えている。なお、この炉本体11には、熱源12とは別に、後述する拡散籠42の内部にさらに熱源装置14が設置されており、後述する温度を確実に確保できるようなっている。
【0024】
炉本体11は、略中空円筒形状或いは箱型形状のものであって、特に、内部が高温に晒されることがあることから、その高温に耐える耐熱性のある材料などで形成されている。また、開口11Aには、優位廃棄物を投入する場合のみ開口させるようにするため、普段、燃焼中には、蓋体11Bで閉じるとともに、高圧内部の圧力で破壊されたり、外へ飛び出したりしないようにするため、炉本体11と同様に堅牢な材料で形成され、図示外の固定手段で強固に固定できるように構成されている。
【0025】
熱源12は、外部から給電される電力で加熱されて放熱する各種の加熱手段が使用可能であり、本実施形態では発熱してジュール熱を放つ電熱棒などで構成されており、所定間隔で多数配設されている。
【0026】
分散手段13は、
図3に示すように、本実施形態の場合、耐熱金属で形成したものであって、例えば中央部が略円錐形状(若しくは四角錐形状などの多角錐形状)の中央体13Aと、この中心体13Aから放射状に延びるとともに終端部が炉本体11内壁面に取り付く放射体13Bと、からなる。しかも、なお、この分散手段を構成する各部材は、投入落下してくる有機廃棄物が係止することがないよう、平滑性の高い材料で形成されている。
【0027】
中央体13Aは、炉本体11内部の、開口11A直下に配置するように設置されている。中央体13Aは、このように略円錐形状(若しくは四角錐形状などの多角錐形状)とすることで、直上の開口11Aから投入される有機廃棄物を周辺に分散させる。これにより、投入する有機廃棄物が本体内部11の中央に集中して堆積するのを回避させるようになっている。
【0028】
放射状体13Bは、中央体13Aを支持するためのものであって、中央体13Aから多数本(少なくとも、2本または3本以上)周囲に伸びる断面略三角形状等のものからなる。各放射状体13Bもまた中央頂部が鋭角となるような形状のもので構成されており、開口部から投入される有機廃棄物がこの放射状体13Bに係止して堆積するのを回避するようになっている。
【0029】
熱源装置14は、本実施形態の場合、
図1に示すように、本体12Aが高熱に耐え得る耐熱性の金属又はセラミックスなどの適宜材質を用い、中空略円錐台形状(又は中空角錐台形状)に形成されており、上部及び底部が開口した構成となっている。そして、この本体12Aの外周面(図略)には、内部に電気が通電されて発熱する発熱体(図略)が設けられている。なお、この熱源12により加熱される炉本体11の内部では、熱的安定状態となったときの稼働温度は、熱源12が設置される炉本体12A内部の底部で、例えば安定した稼働状態時には850°C又はこれ以上に保持する。これにより、有機廃棄物を構成する各物質の沸点を超える温度まで上昇加熱させ、燃焼ではなく熱分解を発生させる。
【0030】
オゾン発生装置40は、投入された有機廃棄物が酸素結合による燃焼ではなく、熱分解を実現・促進させるためのもの、であって、本実施形態では供給管41を介して炉本体11内部の中央に配置した拡散籠42と連結・連通されている。このオゾン発生装置40は、生成されたオゾンを炉本体11へ供給することで、炉本体11内部の酸素濃度を相対的に低下させるようになっているが、炉本体11の内圧p1よりも高圧状態に加圧されており、炉本体11内で発生する各種ガスがオゾン発生装置40へ侵入するのを防止している。
【0031】
この拡散籠42は、
図4に示すように、酸素(O
2)が侵入する入口を構成するために上面及び側面の都合二面が開口42Aした略箱状のもので構成されており、壁面の内部にオゾン発生装置40から送り込まれるオゾン(O
3)を細かい穴43Aから噴出させるための配管43が多数配設されている。これにより、限界酸素濃度以下の酸素濃度雰囲気を実現させ、熱分解反応を確実に行うことができるようになる。なお、この拡散籠42は、炉本体11内部中央に設置するため、図示外の固定手段で吊り下げ状態に配置するようにしてもよいが、上述の分散手段13の各放射状体13Bのフラットな底部から図示外の頑丈かつ耐熱性のある複数本の釣下部材などで釣下させてもよい。
【0032】
本実施形態ではオゾン発生装置40により、熱分解を促進させることでダイオキシンの発生を抑制させるように構成したが、オゾンの替りに不活性ガスを供給させるようにしてもよい。なお、本実施形態での炉本体11内部の低酸素濃度としては、14%~17%に設定・保持してあるが、特に本発明ではこの濃度に限定されるものではなく、同様の効果があればそれでもかまわない。
【0033】
・二次装置について:
二次装置20は、一次装置10で熱分解されずに残ったダイオキシンを含む気体、或いは生成された各種の気体生成物(例えばNH4,NO2など)を取り込み、高温加熱下に滞留させて再度熱分解させることで、無害化(分解)させるものである。別言すると、この二次装置20は、一次装置10である熱分解室21を構成する炉本体11で生成されたダイオキシン、或いは生成された気体生成物中に含むダイオキシンを、高温環境下に晒して焼き切るためのものであり、再度、熱分解させて無害化させる焼成室を設けている。
【0034】
この燃焼室21は、本実施形態では、
図5に示すように、内部にX方向に沿って多数の板状体22が配設されている。この板状体22は、僅かな隙間を隔てて対をなすとともに、複数回連続的に九十九条に折曲げて形成することで、連続的に連なる細幅状の流路を長く形成してある。
【0035】
また、この板状体22は、平板状の金属で構成されており、流路に臨む板内に電熱体が張り巡らされる。なお、燃焼室21内の板状体22及び通気部材23の内部には、図示しない発熱体が埋設されている。この発熱体は、外部電源と電気的に接続されて通電されており、これにより発生するジュール熱で燃焼室21内の温度が、ダイオキシンの生成温度を上回る850-1000℃の高熱状態に維持されるようになっている。
【0036】
さらに、各板状体22の間の隙間を構成する各通路には、各種の気体生成物の流れを斜めに横断するようにして、多数の小孔を開口したパンチングメタルなどのメッシュ状の細かい通気孔部材23(例えば、ステンレス材SUS3016など)がジグザグ配置に形成され、通過する気体生成物中のダイオキシンに対する接触面積を高めている。
【0037】
この燃焼室21では、一次装置10で熱分解されずに残った気体、或いは生成された気体生成物が送り込まれると、多数設けた通路内を通過することにより高温加熱させ、再度熱分解させる。即ち、互いに対をなす板状体22は、上記隙間で構成した流路に沿って移動する気体生成物を、ダイオキシンの生成温度を上回る850℃~1000℃の温度範囲に保持して曝す滞留手段を構成する。そのため、特に、本発明では、通気部材の小孔を設けることで、各通路内を通過する上記気体の通路内での加熱に晒される時間をより長く稼ぐことができ、その分、熱分解時間を延長させることができる。
【0038】
この燃焼室21内での高温加熱に長時間晒されることよってダイオキシンは、再度熱分解されて無毒化(無害化)されるとともに、この無毒化された分解生成物は、次の3次装置30へ送り出される。
【0039】
・三次装置30について:
三次装置30は、二次装置20で無害化処理された高温のガスを冷却水で急速冷却し、ダイオキシン類を含む有害物の再生成を抑制・阻止するものである。
【0040】
本実施形態の三次装置30は、
図6に示すように、装置本体31(以下、冷却室31と呼ぶ)の壁面内又は内部に冷水を通水するらせん状の細管32が周囲に設置されている。この冷却室31には、二次装置20の焼成室21で発生する気化焼成物が送り込まれると、所定濃度以下となった気化焼成物をこの冷却室31内から大気へ放出する放出口33を設けてある。なお、本発明では、この冷却室31で無害化されて放出口33から放出される無害化ガスと、これ以外の残渣が液化され、冷却室31の底部に溜まって残る汚染物を含む液状の有害物(以下、“液状残渣物”とよぶ)と、が発生する場合もある。そこで、この後者が発生する場合に備え、この冷却室31の底部と一次装置10との間に図示外の帰還路を設けておいてもよい。このような構成とすれば、底部に残った残渣である有害物が混入した液体を一次装置10へ戻し、再度同じ処理を行うようにしてもよい。
【0041】
この三次装置30では、二次装置20で無害化処理された高温のガスを冷却水で急速冷却し、ダイオキシン類を含む各種の有害物の再生成を抑制させる。特に、ダイオキシンが再合成(denovo反応)する虞のない低温、即ち200℃未満に保持する。このとき、無害化されたガスは、法的な規制濃度以下であるものを上部の排気管32から廃棄させるとともに、液化された残渣は図示外の濾過機でろ過するなどの処理をする。
【0042】
即ち、図示外の濾過機でろ過されたのちの液体中に残留する有害物は、図示外の還流配管を経由して再度一次装置10へ還流・気化させて、最初からの処理を再度繰り返す。一方、冷却室31の底部に液化して滞留し蓄積した残渣である液状残渣物が混ざった液体は、図示外の濾過機に設けたフィルタ中に残留させることで選別する。そして、このフィルタに残留する混入物は、ある程度溜まったところで、フィルタごと取り出し、一次装置の炉本体11へ投入して再処理させるため、カセット式のフィルタを取り付けた濾過機で構成してある。
【0043】
他方、三次装置30で利用された冷却水は、終端側の細管32では一部水蒸気になっていることもあるが、この冷却水或いは水蒸気は、ポンプPを経由して再利用される。なお、冷却水が汚損されているような場合には、冷却水専用の濾過器34を細管32の流路の一部に設置し、これによって水蒸気中の混入物が除去された後の浄化させた冷却水を、再び細管32へ還流させるような構成としている。
【0044】
また、冷却水に対しても、この冷却水中に混入し、濾過機34に設けたフィルタ中に残留する混入物は、上記液化した有害物を残渣として含む液体用の濾過機と同様の構成として除去してもよい。即ち、ある程度混入物がフィルタ中に溜まったところで、そのフィルタごと取り出し、一次装置10の炉本体11へ投入して再処理させるため、カセット式のフィルタを取り付けた濾過機で構成してもよい。また、この三次装置30の内部で発生する水蒸気は、図示外のタービン側へ送り込んで、タービンによる発電への利用を行ってもよい。
【0045】
[作用および効果]
以上、説明してきたように、本実施形態によれば、一次装置10及び二次装置20によって有機廃棄物は、有機廃棄物中に含める無機物以外の有機物については、理論上皆無となる。従って、例えば産業廃棄物処理センターなどへの採用を行えば、有機廃棄物処理に伴うダイオキシンの発生を飛躍的に抑えることができ、地球環境の保全に資すことができるなど、著しい効果が得られ便宜である。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、オゾン発生装置の代替手段として、プラズマ発生装置、或いは電極間に交流電流を印加した際の空間放電での生成、その他、適宜手段が可能である。また、有機廃棄物を熱分館によって分解する際に、塩化ビニルなどの廃棄物に対しては、適宜薬剤を添加させておくことで、有害ガスなどの発生を抑えることができるので、上述した薬剤などを添加しておくのが好ましい。
【符号の説明】
【0047】
1 有機廃棄物燃焼処理システム
10 1次装置
11 燃焼(熱分解)炉本体(炉本体)
11A 開口
11B 蓋体
12 熱源
13 分散手段
13A 中央体
13B 放射体
14 熱源装置
20 2次装置
21 熱分解室
22 板状体
23 通気部材
30 3次装置
31 冷却室
32 細管
33 放出口
34 濾過器
42 拡散籠
42A 開口
43 配管
43A 穴
P1、P2 通気管