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特開2022-105829無線給電装置および無線給電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022105829
(43)【公開日】2022-07-15
(54)【発明の名称】無線給電装置および無線給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20220708BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220708BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J7/00 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021000408
(22)【出願日】2021-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】大森 英樹
(72)【発明者】
【氏名】酒井 領太
(72)【発明者】
【氏名】岩永 太一
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503GB08
(57)【要約】
【課題】装置の構成が複雑で高価になるのを抑制しながら、スイッチング損失が小さい零電圧スイッチングを維持して、伝送される電力の大きさを変化させることが可能な無線給電装置を提供する。
【解決手段】この無線給電装置1は、直流電源Eに直列に接続された伝送コイルLおよびスイッチング素子SWと、共振コンデンサCと、互いに直列に接続された補助スイッチング素子SWおよび電圧制限コンデンサCと、伝送コイルLと共振コンデンサCとによる共振電圧に基づいて、スイッチング素子SWのターンオンの時期を制御するターンオン制御回路31と、共振電圧に基づいて、補助スイッチング素子SWのターンオンの時期を制御するターンオン制御回路32と、を含む。そして、スイッチング素子SWおよび補助スイッチング素子SWが、零電圧スイッチング動作を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1石式の無線給電装置であって、
受電ユニットに給電する給電ユニットと、
前記給電ユニットを制御する制御部と、を備え、
前記給電ユニットは、
直流電源に直列に接続された伝送コイルおよびスイッチング素子と、
前記伝送コイルと前記スイッチング素子とのうちの少なくとも一方に並列接続された共振コンデンサと、
前記伝送コイルまたは前記スイッチング素子に並列接続されるとともに、互いに直列に接続された補助スイッチング素子、および、前記伝送コイルと前記共振コンデンサとによる共振電圧を制限する電圧制限コンデンサと、を含み、
前記制御部は、
前記伝送コイルと前記共振コンデンサとによる前記共振電圧に基づいて、前記スイッチング素子のターンオンの時期を制御する第1ターンオン制御回路と、
前記スイッチング素子のゲート信号、または、前記伝送コイルと前記共振コンデンサとによる前記共振電圧に基づいて、前記補助スイッチング素子のターンオンの時期を制御する第2ターンオン制御回路と、を含み、
前記スイッチング素子および前記補助スイッチング素子が、零電圧スイッチング動作を行うように構成されている、無線給電装置。
【請求項2】
前記スイッチング素子の導通時間と、前記補助スイッチング素子の導通時間とは、前記伝送コイルから伝送される電力の周波数が所定の周波数範囲内となるように制御される、請求項1に記載の無線給電装置。
【請求項3】
前記周波数範囲は、80kHz以上90kHz以下である、請求項2に記載の無線給電装置。
【請求項4】
前記スイッチング素子の導通時間と前記補助スイッチング素子の導通時間との和が所定の時間範囲内となるように制御される、請求項1~3のいずれか1項に記載の無線給電装置。
【請求項5】
前記電圧制限コンデンサの容量は、前記共振コンデンサの容量よりも5倍以上大きい、請求項1~4のいずれか1項に記載の無線給電装置。
【請求項6】
前記給電ユニットは、前記伝送コイルと前記共振コンデンサとによる前記共振電圧を検出する第1共振電圧検出回路および第2共振電圧検出回路をさらに含み、
前記第1ターンオン制御回路は、前記第1共振電圧検出回路により検出された前記共振電圧に基づいて、前記スイッチング素子のターンオンの時期を制御し、
前記第2ターンオン制御回路は、前記第2共振電圧検出回路により検出された前記共振電圧に基づいて、前記補助スイッチング素子のターンオンの時期を制御する、請求項1~5のいずれか1項に記載の無線給電装置。
【請求項7】
前記給電ユニットは、前記伝送コイルと前記共振コンデンサとによる前記共振電圧を検出する共振電圧検出回路をさらに含み、
前記第1ターンオン制御回路は、前記共振電圧検出回路により検出された前記共振電圧に基づいて、前記スイッチング素子のゲート信号のターンオンの時期を制御し、
前記第2ターンオン制御回路は、前記スイッチング素子の前記ゲート信号に基づいて、前記補助スイッチング素子のターンオンの時期を制御する、請求項1~5のいずれか1項に記載の無線給電装置。
【請求項8】
1石式の無線給電システムであって、
給電ユニットと、
前記給電ユニットによって給電される受電ユニットと、
前記給電ユニットを制御する制御部と、を備え、
前記給電ユニットは、
直流電源に直列に接続された第1伝送コイルおよび第1スイッチング素子と、
前記第1伝送コイルと前記第1スイッチング素子とのうちの少なくとも一方に並列接続された第1共振コンデンサと、
前記第1伝送コイルまたは前記第1スイッチング素子に並列接続されるとともに、互いに直列に接続された第1補助スイッチング素子、および、前記第1伝送コイルと前記第1共振コンデンサとによる共振電圧を制限する第1電圧制限コンデンサと、を含み、
前記受電ユニットは、
第2伝送コイルと、
前記第2伝送コイルに並列にまたは直列に接続される第2共振コンデンサおよび整流回路と、
前記整流回路に接続される負荷と、を含み、
前記制御部は、
前記第1伝送コイルと前記第1共振コンデンサとによる共振電圧に基づいて、前記第1スイッチング素子のターンオンの時期を制御する第1ターンオン制御回路と、
前記第1スイッチング素子のゲート信号、または、前記第1伝送コイルと前記第1共振コンデンサとによる前記共振電圧に基づいて、前記第1補助スイッチング素子のターンオンの時期を制御する第2ターンオン制御回路と、を含み、
前記第1スイッチング素子および前記第1補助スイッチング素子が、零電圧スイッチング動作を行うように構成されている、無線給電システム。
【請求項9】
前記受電ユニットは、
前記整流回路として、互いに並列に接続されるスイッチング部と整流素子とを有する第2スイッチング素子をさらに含む、請求項8に記載の無線給電システム。
【請求項10】
前記受電ユニットは、
前記第2伝送コイルまたは前記第2スイッチング素子に並列に接続され、互いに直列に接続される第2補助スイッチング素子、および、前記第2伝送コイルと前記第2共振コンデンサとによる共振電圧を制限する第2電圧制限コンデンサをさらに含む、請求項9に記載の無線給電システム。
【請求項11】
前記第2電圧制限コンデンサの容量は、前記第2共振コンデンサの容量よりも5倍以上大きい、請求項10に記載の無線給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線給電装置および無線給電システムに関する(たとえば、特許文献1、特許文献2および非特許文献1参照)。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車などのように電動機によって走行する移動車両は、充電のために給電装置と移動車両とを電力ケーブルにより接続する必要があった。このため、充電を行うユーザの手間がかかるという不都合があった。
【0003】
この不都合を解消するために、上記特許文献1では、電力ケーブルを用いることなく、コイルによる磁界の結合を利用して給電を行う双方向非接触給電装置が開示されている。上記特許文献1では、双方向非接触給電装置は、他のコイルと磁界結合する自己のコイルと、自己のコイルに直列に接続されるコンデンサと、インバータとを備えている。インバータは、複数の半導体スイッチング素子をフルブリッジ接続することにより構成されている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、インバータが複数の半導体スイッチング素子から構成されているため、双方向非接触給電装置の構成が複雑化(大型化)するという不都合がある。この不都合を解消するために、上記特許文献2では、伝送コイルと、伝送コイルに直列に接続されたスイッチング素子と、伝送コイルに並列に接続された共振コンデンサとを備える1石式(Single-Ended)の無線給電装置が開示されている。上記特許文献2では、単一のスイッチング素子により装置が駆動されるので、無線給電装置の構成を簡略化することが可能である。また、上記特許文献2の1石式の無線給電装置では、伝送コイルと共振コンデンサとによる共振電圧が零の際に、スイッチング素子がターンオン(零電圧スイッチング動作)される。
【0005】
ここで、国際規格などにより伝送される電力の周波数が所定の周波数範囲とすることが求められる場合がある。また、ユーザにより、伝送される電力の大きさを可変にすることが望まれる場合がある。しかしながら、上記特許文献2に記載のような従来の1石式の無線給電装置において、伝送される電力の周波数を所定の周波数範囲にしながら、伝送される電力の大きさを変化させる場合、スイッチング素子のターンオンするタイミングを変化させる必要がある。このため、共振電圧が零でない状態でスイッチング素子がターンオンする場合があり、零電圧スイッチング動作ができない場合が生じるという不都合がある。
【0006】
この不都合を解消するために、上記非特許文献1では、インバータに供給される電圧を、DC-DCコンバータにより変更することにより、伝送される電力の周波数を所定の周波数範囲にしながら、伝送される電力の大きさを変化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6038386号公報
【特許文献2】特開2020-78232号公報
【非特許文献1】T. Takahashi and H. Omori,“A New Control Method of One-Switch Wireless V2H with a Combination of Resonant Selector and Voltage Changer”INTERNATIONAL CONFERENCE ON RENEWABLE ENERGY RESEARCH AND APPLICATIONS(ICRERA)2019.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記非特許文献1では、伝送される電力の周波数を所定の周波数範囲にしながら、伝送される電力の大きさを変化させるために、DC-DCコンバータが設けられている。DC-DCコンバータは、たとえば、スイッチング素子、チョークコイル、コンデンサおよびダイオードなどの比較的多くの素子により構成されている。このため、無線給電装置の構成が複雑で高価になるという問題点がある。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、装置の構成が複雑で高価になるのを抑制しながら、スイッチング損失が小さい零電圧スイッチングを維持して、伝送される電力の大きさを変化させることが可能な無線給電装置および無線給電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による無線給電装置は、1石式の無線給電装置であって、受電ユニットに給電する給電ユニットと、給電ユニットを制御する制御部と、を備え、給電ユニットは、直流電源に直列に接続された伝送コイルおよびスイッチング素子と、伝送コイルとスイッチング素子とのうちの少なくとも一方に並列接続された共振コンデンサと、伝送コイルまたはスイッチング素子に並列接続されるとともに、互いに直列に接続された補助スイッチング素子、および、伝送コイルと共振コンデンサとによる共振電圧を制限する電圧制限コンデンサと、を含み、制御部は、伝送コイルと共振コンデンサとによる共振電圧に基づいて、スイッチング素子のターンオンの時期を制御する第1ターンオン制御回路と、スイッチング素子のゲート信号、または、伝送コイルと共振コンデンサとによる共振電圧に基づいて、補助スイッチング素子のターンオンの時期を制御する第2ターンオン制御回路と、を含み、スイッチング素子および補助スイッチング素子が、零電圧スイッチング動作を行うように構成されている。
【0011】
この発明の第1の局面による無線給電装置では、上記のように、給電ユニットは、伝送コイルまたはスイッチング素子に並列接続されるとともに、互いに直列に接続された補助スイッチング素子、および、伝送コイルと共振コンデンサとによる共振電圧を制限する電圧制限コンデンサと、を含む。これにより、スイッチング素子の導通時間を変更することにより、伝送される電力の大きさを変化させた場合でも、補助スイッチング素子の導通時間を調整することにより、共振電圧が零になるタイミングを調整することができるので、スイッチング素子の零電圧スイッチング動作を維持することができる。また、給電ユニットに、補助スイッチング素子および電圧制限コンデンサを設けるだけで、スイッチング素子が零電圧スイッチング動作を行いながら、伝送される電力の大きさを変化させることができるので、給電ユニットに比較的多くの素子により構成されているDC-DCコンバータを設けて伝送される電力の大きさを変化させる場合と異なり、無線給電装置の構成が複雑になるのを抑制することができる。その結果、無線給電装置の構成が複雑で高価になるのを抑制しながら、スイッチング損失が小さい零電圧スイッチングを維持して、伝送される電力の大きさを変化させることができる。
【0012】
また、伝送される電力の大きさが変化される範囲内の全ておいて、零電圧スイッチング動作が行われるので、スイッチング素子に電圧が印加された状態でスイッチング素子がスイッチングされることに起因するスイッチング素子の発熱を抑制することができる。これにより、スイッチング素子を冷却する冷却機構の構成を簡略化(小型化)することができる。
【0013】
この発明の第2の局面による無線給電システムは、1石式の無線給電システムであって、給電ユニットと、給電ユニットによって給電される受電ユニットと、給電ユニットを制御する制御部と、を備え、給電ユニットは、直流電源に直列に接続された第1伝送コイルおよび第1スイッチング素子と、第1伝送コイルと第1スイッチング素子とのうちの少なくとも一方に並列接続された第1共振コンデンサと、第1伝送コイルまたは第1スイッチング素子に並列接続されるとともに、互いに直列に接続された第1補助スイッチング素子、および、第1伝送コイルと第1共振コンデンサとによる共振電圧を制限する第1電圧制限コンデンサと、を含み、受電ユニットは、第2伝送コイルと、第2伝送コイルに並列にまたは直列に接続される第2共振コンデンサおよび整流回路と、整流回路に接続される負荷と、を含み、制御部は、第1伝送コイルと第1共振コンデンサとによる共振電圧に基づいて、第1スイッチング素子のターンオンの時期を制御する第1ターンオン制御回路と、第1スイッチング素子のゲート信号、または、第1伝送コイルと第1共振コンデンサとによる共振電圧に基づいて、第1補助スイッチング素子のターンオンの時期を制御する第2ターンオン制御回路と、を含み、第1スイッチング素子および第1補助スイッチング素子が、零電圧スイッチング動作を行うように構成されている。
【0014】
この発明の第2の局面による無線給電システムでは、上記のように、給電ユニットは、第1伝送コイルまたは第1スイッチング素子に並列接続されるとともに、互いに直列に接続された第1補助スイッチング素子、および、第1伝送コイルと第1共振コンデンサとによる共振電圧を制限する第1電圧制限コンデンサと、を含む。これにより、第1スイッチング素子の導通時間を変更することにより、伝送される電力の大きさを変化させた場合でも、第1補助スイッチング素子の導通時間を調整することにより、共振電圧が零になるタイミングを調整することができるので、第1スイッチング素子の零電圧スイッチング動作を維持することができる。また、給電ユニットに、第1補助スイッチング素子および第1電圧制限コンデンサを設けるだけで、第1スイッチング素子が零電圧スイッチング動作を行いながら、伝送される電力の大きさを変化させることができるので、給電ユニットに比較的多くの素子により構成されているDC-DCコンバータを設けて伝送される電力の大きさを変化させる場合と異なり、無線給電システムの構成が複雑になるのを抑制することができる。その結果、無線給電システムの構成が複雑で高価になるのを抑制しながら、スイッチング損失が小さい零電圧スイッチングを維持して、伝送される電力の大きさを変化させることが可能な無線給電システムを提供することができる。
【0015】
また、伝送される電力の大きさが変化される範囲内の全ておいて、零電圧スイッチング動作が行われるので、スイッチング素子に電圧が印加された状態でスイッチング素子がスイッチングされることに起因するスイッチング素子の発熱を抑制することができる。これにより、スイッチング素子を冷却する冷却機構の構成を簡略化(小型化、低騒音化)することが可能な無線給電システムを提供することができる。
【0016】
また、第2局面の構成では、受電ユニットで第2伝送コイルと第2共振コンデンサとによる共振動作が行われるので、磁気結合における共振作用により伝送電力を増大することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記のように、装置の構成が複雑で高価になるのを抑制しながら、スイッチング損失が小さい零電圧スイッチングを維持して、伝送される電力の大きさを変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態による無線給電システム(無線給電装置)の構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態による整流回路の構成を示す回路図である。
図3】第1実施形態による負荷の構成を示す回路図である。
図4】第1実施形態による無線給電システムの制御のタイミングチャートを示す図である。
図5】第1実施形態による無線給電システムの、スイッチング素子の導通時間に対する、伝送される電力と周波数と補助スイッチング素子の導通時間との関係を示す図である。
図6】第2実施形態による無線給電システムの構成を示すブロック図である。
図7】第2実施形態による無線給電システムの制御のタイミングチャートを示す図である。
図8】第3実施形態による無線給電システムの構成を示すブロック図である。
図9】第4実施形態による無線給電システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
[第1実施形態]
(無線給電装置の動作)
図1図5を参照して、第1実施形態による無線給電システム100の構成について説明する。
【0021】
無線給電システム100は、1石式(Single-Ended)の無線給電システムである。無線給電システム100は、給電ユニット10と、給電ユニット10によって給電される受電ユニット20とを備えている。また、無線給電システム100は、給電ユニット10を制御する制御部30を備えている。なお、給電ユニット10および制御部30によって、無線給電装置1が構成されている。
【0022】
給電ユニット10は、直流電源Eに直列に接続された伝送コイルLおよびスイッチング素子SWを備えている。直流電源Eは、たとえば、家庭に設置された蓄電池である。なお、伝送コイルLおよびスイッチング素子SWは、それぞれ、特許請求の範囲の「第1伝送コイル」および「第1スイッチング素子」の一例である。
【0023】
スイッチング素子SWは、トランジスタQと、トランジスタQに逆並列に接続されたダイオードDとを含む。トランジスタQは、たとえば、N型のMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)である。また、トランジスタQは、MOSFET以外の自己ターンオフ型のスイッチング素子(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistorなど)から構成されていてもよい。
【0024】
また、給電ユニット10は、伝送コイルLとスイッチング素子SWとのうちの少なくとも一方(第1実施形態では、伝送コイルL)に並列接続された共振コンデンサCを備えている。共振コンデンサCは、たとえば、フィルムコンデンサから構成されている。なお、共振コンデンサCをセラミックコンデンサから構成してもよい。また、共振コンデンサCは、特許請求の範囲の「第1共振コンデンサ」の一例である。
【0025】
ここで、第1実施形態では、給電ユニット10は、伝送コイルLまたはスイッチング素子SW(第1実施形態では、伝送コイルL)に並列接続されるとともに、互いに直列に接続された補助スイッチング素子SW、および、伝送コイルLと共振コンデンサCとによる共振電圧を制限する電圧制限コンデンサCと、を備える。なお、電圧制限コンデンサCは、特許請求の範囲の「第1電圧制限コンデンサ」の一例である。また、補助スイッチング素子SWは、特許請求の範囲の「第1補助スイッチング素子」の一例である。
【0026】
補助スイッチング素子SWは、トランジスタQと、トランジスタQに逆並列に接続されたダイオードDとを含む。トランジスタQは、たとえば、N型のMOSFETである。また、トランジスタQは、MOSFET以外の自己ターンオフ型のスイッチング素子(IGBTなど)から構成されていてもよい。
【0027】
また、第1実施形態では、電圧制限コンデンサCの容量は、共振コンデンサCの容量よりも5倍以上大きい。たとえば、共振コンデンサCの容量は、0.1μFである。また、電圧制限コンデンサCの容量は、たとえば、0.5μF以上5μF以下である。経験則により、電圧制限コンデンサCの容量が共振コンデンサCの容量の5倍以上あればクランプ時に必要十分な電圧の安定性を得ることができる。
【0028】
また、給電ユニット10において、直流電源Eの正側と、電圧制限コンデンサCの正側と、共振コンデンサCの正側と、伝送コイルLの正側とが互いに電気的に接続されている。また、電圧制限コンデンサCの負側と、補助スイッチング素子SWのトランジスタQのドレイン(ダイオードDのカソード)とが互いに電気的に接続されている。補助スイッチング素子SWのトランジスタQのソース(ダイオードDのアノード)と、共振コンデンサCの負側と、伝送コイルLの負側と、スイッチング素子SWのトランジスタQのドレイン(ダイオードDのカソード)とが互いに電気的に接続されている。また、スイッチング素子SWのトランジスタQのソース(ダイオードDのアノード)と、直流電源Eの負側とが互いに電気的に接続されている。
【0029】
また、第1実施形態では、給電ユニット10は、給電ユニット10を制御する制御部30を備えている。制御部30は、ターンオン制御回路31とターンオン制御回路32とを含む。なお、ターンオン制御回路31およびターンオン制御回路32は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1ターンオン制御回路」および「第2ターンオン制御回路」の一例である。
【0030】
第1実施形態では、ターンオン制御回路31は、伝送コイルLと共振コンデンサCとによる共振電圧に基づいて、スイッチング素子SWのターンオンの時期を制御する。具体的には、ターンオン制御回路31は、共振電圧検出回路31aと、周期同期回路31bとを含む。共振電圧検出回路31aは、伝送コイルL(共振コンデンサC)の両端の電圧VLiを測定することにより、伝送コイルLと共振コンデンサCとによる共振電圧を検出する。周期同期回路31bは、共振電圧検出回路31aにより検出された共振電圧に基づいて、スイッチング素子SWのターンオンの時期を制御する。具体的には、周期同期回路31bは、スイッチング素子SWが零電圧スイッチング動作を行うように、共振電圧に同期して、スイッチング素子SWのターンオンを制御する。なお、共振電圧検出回路31aは、特許請求の範囲の「第1共振電圧検出回路」の一例である。
【0031】
また、第1実施形態では、ターンオン制御回路32は、伝送コイルLと共振コンデンサCとによる共振電圧に基づいて、補助スイッチング素子SWのターンオンの時期を制御する。具体的には、ターンオン制御回路32は、共振電圧検出回路32aと、周期同期回路32bとを含む。共振電圧検出回路32aは、伝送コイルL(共振コンデンサC)の両端の電圧VLiを測定することにより、伝送コイルLと共振コンデンサCとによる共振電圧を検出する。周期同期回路32bは、共振電圧検出回路32aにより検出された共振電圧に基づいて、補助スイッチング素子SWのターンオンの時期を制御する。具体的には、周期同期回路32bは、補助スイッチング素子SWが零電圧スイッチング動作を行うように、共振電圧に同期して、補助スイッチング素子SWのターンオンを制御する。なお、共振電圧検出回路32aは、特許請求の範囲の「第2共振電圧検出回路」の一例である。
【0032】
また、第1実施形態では、スイッチング素子SWの導通時間TONと、補助スイッチング素子SWの導通時間Tとは、伝送コイルLから伝送される電力の周波数が所定の周波数範囲内となるように制御される。第1実施形態では、周波数範囲は、80kHz以上90kHz以下である。
【0033】
また、第1実施形態では、スイッチング素子SWの導通時間TONと補助スイッチング素子SWの導通時間Tとの和が所定の時間範囲内となるように制御される。ここで、伝送される電力(交流)の1周期は、おおよそ、スイッチング素子SWの導通時間TONと、補助スイッチング素子SWの導通時間Tと、共振電圧が変化(増加または減少)する時間との和によって表される。また、共振電圧が変化する時間は、伝送コイルLのインダクタンスLと共振コンデンサCの容量Cとの積の1/2乗(√LC)で決まる値であり、略一定である。そこで、伝送される電力の1周期の逆数である周波数を80kHz以上90kHz以下にするように、スイッチング素子SWの導通時間TONと補助スイッチング素子SWの導通時間Tとの和が所定の時間範囲内となるように制御される。
【0034】
また、第1実施形態では、受電ユニット20は、伝送コイルLと、伝送コイルLに並列にまたは直列に(第1実施形態では、並列に)接続される共振コンデンサCおよび整流回路21(CR)と、整流回路21に接続される負荷22(Ld)とを含む。整流回路21は、たとえば、図2の(a)に示すように、1つのダイオードDにより構成される半波整流回路である。また、整流回路21は、たとえば、図2の(b)に示すように、4つのダイオードDにより構成される全波整流回路でもよい。また、整流回路21は、たとえば、図2の(c)に示すように、2つのダイオードDと、1つのコンデンサCにより構成される倍電圧整流回路でもよい。なお、伝送コイルLは、特許請求の範囲の「第2伝送コイル」の一例である。また、共振コンデンサCは、特許請求の範囲の「第2共振コンデンサ」の一例である。
【0035】
また、図3(a)に示すように、負荷22は、たとえば、抵抗Rである。また、負荷22は、図3(b)に示すように、抵抗RとコンデンサCとが並列に接続された回路でもよい。また、負荷22は、図3(c)に示すように、蓄電池Eでもよい。
【0036】
(無線給電装置の動作)
次に、図4を参照して、無線給電装置1の動作について説明する。図4(a)は、スイッチング素子SWの両端電圧VSWの波形である。図4(b)は、スイッチング素子SWを流れる電流iSWの波形である。図4(c)は、補助スイッチング素子SWを流れる電流iSWSの波形である。図4(d)は、補助スイッチング素子SWの両端電圧VSWSの波形である。図4(e)は、伝送コイルLを流れる電流iL1の波形である。図4(f)は、共振コンデンサCを流れる電流iC1の波形である。図4(g)は、伝送コイルLの両端電圧VL1の波形である。図4(h)は、補助スイッチング素子SWのゲート電圧Vgsの波形である。図4(i)は、スイッチング素子SWのゲート電圧Vの波形である。
【0037】
時刻tから時刻tまでの期間では、スイッチング素子SWおよび補助スイッチング素子SWが共にオフ状態である。スイッチング素子SWの両端電圧VSWは、伝送コイルLおよび共振コンデンサCの共振により徐々に増加する。また、共振コンデンサCに正方向の電流iC1が流れる。
【0038】
時刻tにおいて、補助スイッチング素子SWを構成するダイオードDが自動的に導通し、補助スイッチング素子SWが導通状態になる。これにより、補助スイッチング素子SWを流れる電流iSWSが負の方向に流れる。また、電圧制限コンデンサCの容量が、共振コンデンサCの容量よりも十分に大きいので、スイッチング素子SWの両端電圧VSW(伝送コイルLの両端電圧VL1)は、略一定になる(クランプされる)。
【0039】
また、時刻tから時刻tまでの期間において、共振電圧検出回路32aが伝送コイルLの両端電圧VL1のゼロクロス点(時刻t2)を検出すると、ゼロクロス点(時刻t2)に基づいて、時刻tにおいて、補助スイッチング素子SWのゲート電圧Vgsを、LレベルからHレベルに切り替えて、補助スイッチング素子SWを構成するトランジスタQを導通させる。つまり、周期同期回路32bは、補助スイッチング素子SWが零電圧スイッチング動作を行うように補助スイッチング素子SWをターンオンさせる。これにより、補助スイッチング素子SWを流れる電流iSWSが負から正に転流したときにスムーズに正方向の電流に切り替わる。
【0040】
なお、補助スイッチング素子SWを零電圧スイッチング動作させるために、時刻tにおいて補助スイッチング素子SWをターンオンさせてもよい。一方、時刻tは、負荷22の状態によってずれる可能性があるので、第1実施形態では、時刻tよりもから若干時間が経過した時刻tで補助スイッチング素子SWをターンオンさせている。
【0041】
また、補助スイッチング素子SWの導通時間Tの間では、補助スイッチング素子SWに流れる電流iSWSは、直線的に増加する。電流iSWSが負から正に転流すると、逆並列に接続されているダイオードDに流れていた電流がスムーズにトランジスタQに流れるので、補助スイッチング素子SWの導通状態は継続する。
【0042】
次に、時刻tにおいて、ターンオン制御回路32(周期同期回路32b)は、補助スイッチング素子SWのゲート電圧Vgsを、HレベルからLレベルに切り替えて、補助スイッチング素子SWを構成するトランジスタQをオフさせる。これにより、補助スイッチング素子SWがターンオフ状態となり、補助スイッチング素子SWの両端電圧VSWSが徐々に増加する。一方、スイッチング素子SWの両端電圧VSWは徐々に低下するとともに、伝送コイルLの両端電圧VL1(共振電圧)は、徐々に増加する。
【0043】
なお、補助スイッチング素子SWの導通時間Tは、スイッチング素子SWの導通時間TONに基づいて予め設定されている。具体的には、スイッチング素子SWの導通時間TONは、伝送コイルLから伝送される電力の大きさに対応させて予め設定される。また、上記のように共振電圧が変化する時間(一定でない時間)は、伝送コイルLのインダクタンスLと共振コンデンサCの容量Cとの積の1/2乗(√LC)で決まる値であり、略一定である。そして、伝送コイルLから伝送される電力の周波数が所定の周波数範囲(80kHz以上90kHz以下)内となるように、補助スイッチング素子SWの導通時間Tが予め設定される。
【0044】
スイッチング素子SWの両端電圧VSWが徐々に低下して、時刻tにおいて、スイッチング素子SWを構成するダイオードDが自動的に導通し、スイッチング素子SWが導通状態になる。これにより、スイッチング素子SWを流れる電流iSWが負の方向に流れる。
【0045】
また、伝送コイルLの両端電圧VL1(共振電圧)が徐々に増加し、共振電圧検出回路31aが伝送コイルLの両端電圧VL1のゼロクロス点(時刻t)を検出すると、ゼロクロス点(時刻t)に基づいて、時刻tにおいて、スイッチング素子SWのゲート電圧Vを、LレベルからHレベルに切り替えて、スイッチング素子SWを構成するトランジスタQを導通させる。つまり、周期同期回路31bは、スイッチング素子SWが零電圧スイッチング動作を行うようにスイッチング素子SWをターンオンさせる。これにより、スイッチング素子SWを流れる電流iSWが負から正に転流したときにスムーズに正方向の電流に切り替わる。
【0046】
なお、スイッチング素子SWを零電圧スイッチング動作させるために、時刻tにおいてスイッチング素子SWをターンオンさせてもよい。一方、時刻tは、負荷22の状態によってずれる可能性があるので、第1実施形態では、時刻tよりもから若干時間が経過した時刻tでスイッチング素子SWをターンオンさせている。
【0047】
また、スイッチング素子SWの導通時間TONの間では、スイッチング素子SWに流れる電流iSWは、直線的に増加する。電流iSWが負から正に転流すると、ダイオードDに流れていた電流がスムーズにトランジスタQに流れるので、スイッチング素子SWの導通状態は継続する。
【0048】
次に、時刻tにおいて、ターンオン制御回路31(周期同期回路31b)は、スイッチング素子SWのゲート電圧Vを、HレベルからLレベルに切り替えて、補助スイッチング素子SWを構成するトランジスタQをオフさせる。これにより、スイッチング素子SWがターンオフして、伝送コイルLに蓄えられていた電流iL1が共振コンデンサCに流れ込み、伝送コイルLと共振コンデンサCとが共振状態となる。つまり、伝送コイルLの両端電圧VL1(共振電圧)は、負の方向に徐々に増加する。また、スイッチング素子SWの両端電圧VSWは、正の方向に徐々に増加する。
【0049】
上記の動作により、時刻tから時刻tに亘って、伝送コイルLに正弦波状の電流iL1が流れることにより、給電ユニット10の伝送コイルLから受電ユニット20の伝送コイルLに電力が供給される。
【0050】
次に、図5を参照して、第1実施形態の無線給電装置1の動作特性について説明する。
【0051】
無線給電装置1では、スイッチング素子SWの導通時間TONの長さを大きくすることにより、伝送コイルLから伝送される電力(図5のP)が増加する。また、スイッチング素子SWの導通時間TONの長さを大きくするほど、補助スイッチング素子SWの導通時間Tの長さを小さくする。すなわち、導通時間TONと導通時間Tとの和が所定の時間範囲内(略一定値)となるように、導通時間TONの長さと導通時間Tの長さとを調整する。これにより、スイッチング素子SWと補助スイッチング素子SWとが共に零電圧スイッチング動作を行いながら、伝送コイルLから伝送される電力Pの周波数(図5のf)を略一定(80kHz以上90kHz以下の周波数範囲内)にした状態で、伝送される電力Pを増加(または減少)させることができる。また、伝送コイルLから伝送される電力を一定に維持して、導通時間TONの長さと導通時間Tの長さとを調整することにより、スイッチング素子SWと補助スイッチング素子SWとが共に零電圧スイッチング動作を行いながら、伝送コイルLから伝送される周波数を変化させることが可能になる。これにより、受電ユニット20の特性に合わせて給電ユニット10の動作周波数を調整することが可能になる。すなわち、受電ユニット20に対する給電ユニット10の互換性を向上させることが可能になる。また、動作周波数のピークをシフトすることで、輻射ノイズ対策の実施や、動作周波数を低下させることで無線給電装置からの発熱を低減することが可能になる。
【0052】
つまり、無線給電装置1は、スイッチング素子SWの導通時間TONと、補助スイッチング素子SWの導通時間Tとの2つの制御自由度を有する。このため、無線給電装置1は、伝送コイルLから伝送される電力の周波数と、伝送コイルLから伝送される電力の大きさとを独立して制御することが可能になる。
【0053】
[第1実施形態の効果]
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0054】
第1実施形態では、上記のように、給電ユニット10は、伝送コイルLまたはスイッチング素子SWに並列接続されるとともに、互いに直列に接続された補助スイッチング素子SW、および、伝送コイルLと共振コンデンサCとによる共振電圧を制限する電圧制限コンデンサCと、を含む。これにより、スイッチング素子SWの導通時間TONを変更することにより、伝送される電力の大きさを変化させた場合でも、補助スイッチング素子SWの導通時間Tを調整することにより、共振電圧が零になるタイミングを調整することができるので、スイッチング素子SWの零電圧スイッチング動作を維持することができる。また、給電ユニット10に、補助スイッチング素子SWおよび電圧制限コンデンサCを設けるだけで、スイッチング素子SWが零電圧スイッチング動作を行いながら、伝送される電力の大きさを変化させることができるので、給電ユニット10に比較的多くの素子により構成されているDC-DCコンバータを設けて伝送される電力の大きさを変化させる場合と異なり、無線給電装置1の構成が複雑になるのを抑制することができる。その結果、無線給電装置1の構成が複雑で高価になるのを抑制しながら、スイッチング損失が小さい零電圧スイッチングを維持して、伝送される電力の大きさを変化させることができる。
【0055】
また、伝送される電力の大きさが変化される範囲内の全ておいて、零電圧スイッチング動作が行われるので、スイッチング素子SWに電圧が印加された状態でスイッチング素子SWがスイッチングされることに起因するスイッチング素子SWの発熱を抑制することができる。これにより、スイッチング素子SWを冷却する冷却機構の構成を簡略化(小型化)することができる。
【0056】
また、第1実施形態では、上記のように、スイッチング素子SWの導通時間TONと、補助スイッチング素子SWの導通時間Tとは、伝送コイルLから伝送される電力の周波数が所定の周波数範囲内となるように制御される。これにより、伝送コイルLから伝送される電力の周波数を所定の周波数範囲内に制限しながら、スイッチング素子SWの導通時間TONと補助スイッチング素子SWの導通時間Tとを調整することにより、伝送される電力の大きさを変化させることができる。
【0057】
また、第1実施形態では、上記のように、周波数範囲は、80kHz以上90kHz以下である。これにより、電波法によって伝送される電力の周波数が80kHz以上90kHz以下に制限されている電気自動車用無線充電装置などに適用することができる。
【0058】
また、第1実施形態では、上記のように、スイッチング素子SWの導通時間TONと補助スイッチング素子SWの導通時間Tとの和が所定の時間範囲内となるように制御される。ここで、伝送される電力(交流)の1周期は、おおよそ、スイッチング素子SWの導通時間TONと、補助スイッチング素子SWの導通時間Tと、共振電圧が変化(増加、または、減少)する時間との和によって表され、共振電圧が変化する時間は、略一定であるので、スイッチング素子SWの導通時間TONと補助スイッチング素子SWの導通時間Tとの和が所定の時間範囲内となるように制御することによって、伝送される電力(交流)の周期(周波数)を略一定にすることができる。
【0059】
また、第1実施形態では、上記のように、電圧制限コンデンサCの容量は、共振コンデンサCの容量よりも5倍以上大きい。これにより、伝送コイルLと共振コンデンサCとによる共振電圧が上昇している場合に、補助スイッチング素子SWをオンさせることにより、共振電圧が容量の大きい電圧制限コンデンサCの電圧と略同じ電圧に固定(クランプ)される。その結果、スイッチング素子SWなどに比較的高い共振電圧のピーク電圧が印加されるのが抑制されるので、スイッチング素子SWなどに対して低耐圧の素子を選択することができる。
【0060】
また、第1実施形態では、上記のように、給電ユニット10は、伝送コイルLと共振コンデンサCとによる共振電圧を検出する共振電圧検出回路31aおよび共振電圧検出回路32aを含み、ターンオン制御回路31は、共振電圧検出回路31aにより検出された共振電圧に基づいて、スイッチング素子SWのターンオンの時期を制御し、ターンオン制御回路32は、共振電圧検出回路32aにより検出された共振電圧に基づいて、補助スイッチング素子SWのターンオンの時期を制御する。これにより、共振電圧検出回路31aおよび共振電圧検出回路32aにより共振電圧のゼロクロス点(共振電圧の大きさが零になる時点)を確実に検出することができるので、スイッチング素子SWおよび補助スイッチング素子SWが、共振電圧が零の状態で確実にターンオンする(確実に零電圧スイッチング動作を行う)ことができる。
【0061】
また、第1実施形態では、上記のように、受電ユニット20で伝送コイルLと共振コンデンサCとによる共振動作が行われるので、磁気結合における共振作用により伝送電力を増大することができる。
【0062】
[第2実施形態]
図6を参照して、第2実施形態による無線給電システム200の構成について説明する。無線給電システム200では、2つの共振電圧検出回路31aおよび共振電圧検出回路32aが設けられていた上記第1実施形態と異なり、制御部230に共振電圧検出回路231aが1つ設けられている。
【0063】
無線給電システム200では、上記第1実施形態と同様に、ターンオン制御回路231は、共振電圧検出回路231aにより検出された共振電圧に基づいて、スイッチング素子SWのターンオンの時期を制御する。そして、ターンオン制御回路232は、共振電圧検出回路231aにより検出された共振電圧に基づいてターンオンするスイッチング素子SWのゲート信号(ゲート電圧V)に基づいて、補助スイッチング素子SWのターンオンの時期を制御する。なお、ターンオン制御回路231およびターンオン制御回路232は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1ターンオン制御回路」および「第2ターンオン制御回路」の一例である。
【0064】
具体的には、図7に示すように、補助スイッチング素子SWがターンオフ状態となり、伝送コイルLの両端電圧VL1(共振電圧)が徐々に増加し、共振電圧検出回路231aが伝送コイルLの両端電圧VL1のゼロクロス点(時刻t11)を検出する。そして、共振電圧検出回路31aは、ゼロクロス点(時刻t11)に基づいて、時刻t12において、スイッチング素子SWのゲート電圧Vを、LレベルからHレベルに切り替える。そして、ターンオン制御回路232の周期同期回路232bは、スイッチング素子SWのゲート電圧VがHレベルからLレベルに切り替えられた時刻t13から、予め設定された時間経過後、時刻t14において、補助スイッチング素子SWのゲート電圧Vgsを、LレベルからHレベルに切り替える。これにより、補助スイッチング素子SWがターンオンされる。
【0065】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0066】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0067】
第2実施形態では、上記のように、給電ユニット10は、伝送コイルLと共振コンデンサCとによる共振電圧を検出する共振電圧検出回路231aを含み、ターンオン制御回路231は、共振電圧検出回路231aにより検出された共振電圧に基づいて、スイッチング素子SWのターンオンの時期を制御し、ターンオン制御回路232はスイッチング素子SWのゲート信号に基づいて、補助スイッチング素子SWのターンオンの時期を制御する。これにより、1つの共振電圧検出回路231aにより検出された共振電圧に基づいてスイッチング素子SWおよび補助スイッチング素子SWの両方のターンオンの時期を制御することができるので、無線給電装置1の構成を簡略化(小型化)することができる。
【0068】
[第3実施形態]
図8を参照して、第3実施形態による無線給電システム300の構成について説明する。無線給電システム300は、給電ユニット10と受電ユニット320との間で双方向に給電が可能な双方向無線給電システムである。
【0069】
無線給電システム300では、給電ユニット10の構成は、上記第1実施形態(または、第2実施形態)と同様である。
【0070】
ここで、第3実施形態では、受電ユニット320は、整流回路として、互いに並列に接続されるトランジスタQとダイオードDとを有するスイッチング素子SWを含む。なお、ダイオードDは、トランジスタQに逆並列に接続されている。トランジスタQは、たとえば、N型のMOSFETである。また、トランジスタQは、MOSFET以外の自己ターンオフ型のスイッチング素子(IGBTなど)から構成されていてもよい。また、スイッチング素子SWの電流容量は、スイッチング素子SWの電流容量と同等である。なお、トランジスタQは、特許請求の範囲の「スイッチング部」の一例である。また、ダイオードDは、特許請求の範囲の「整流素子」の一例である。また、スイッチング素子SWは、特許請求の範囲の「第2スイッチング素子」の一例である。
【0071】
受電ユニット320において、伝送コイルLの正側と、共振コンデンサCの正側と、負荷22の正側とが互いに電気的に接続されている。また、伝送コイルLの負側と、共振コンデンサCの負側と、トランジスタQのドレイン(ダイオードDのカソード)とが互いに電気的に接続されている。また、トランジスタQのソース(ダイオードDのアノード)と、負荷22の負側とが互いに電気的に接続されている。
【0072】
また、受電ユニット320には、図示しないターンオン制御回路が設けられている。そして、ターンオン制御回路が、伝送コイルLと共振コンデンサCとによる共振電圧に基づいて、スイッチング素子SWのターンオンの時期を制御することにより、スイッチング素子SWは、零電圧スイッチング動作を行うように構成されている。
【0073】
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態(または、第2実施形態)と同様である。
【0074】
[第3実施形態の効果]
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0075】
第3実施形態では、上記のように、受電ユニット320は、整流回路として、互いに並列に接続されるトランジスタQとダイオードDとを有するスイッチング素子SWを含む。これにより、スイッチング素子SWのオンオフを制御することにより、受電ユニット320から給電ユニット10に電力を伝送することができる。すなわち、無線給電システム300を双方無線給電システムとして構成することができる。
【0076】
[第4実施形態]
図9を参照して、第4実施形態による無線給電システム400の構成について説明する。無線給電システム400は、上記第3実施形態の無線給電システム300に対して、補助スイッチング素子SWS2と電圧制限コンデンサCSとが付加されている。また、無線給電システム400は、給電ユニット10と受電ユニット420との間で双方向に給電が可能な双方向無線給電システムである。なお、電圧制限コンデンサCS2は、特許請求の範囲の「第2電圧制限コンデンサ」の一例である。また、補助スイッチング素子SWS2は、特許請求の範囲の「第2補助スイッチング素子」の一例である。
【0077】
無線給電システム400では、給電ユニット10の構成は、上記第1~第3実施形態と同様である。
【0078】
ここで、第4実施形態では、受電ユニット420は、伝送コイルLまたはスイッチング素子SW(第4実施形態では、伝送コイルL)に並列に接続され、互いに直列に接続される補助スイッチング素子SWS2、および、伝送コイルLと共振コンデンサCとによる共振電圧を制限する電圧制限コンデンサCS2を含む。
【0079】
補助スイッチング素子SWS2は、トランジスタQS2と、トランジスタQS2に逆並列に接続されたダイオードDS2とを含む。トランジスタQS2は、たとえば、N型のMOSFETである。また、トランジスタQS2は、MOSFET以外の自己ターンオフ型のスイッチング素子(IGBTなど)から構成されていてもよい。
【0080】
また、第4実施形態では、電圧制限コンデンサCS2の容量は、共振コンデンサCの容量よりも5倍以上大きい。たとえば、共振コンデンサCの容量は、0.1μFである。また、電圧制限コンデンサCS2の容量は、たとえば、0.5μF以上5μF以下である。
【0081】
受電ユニット420において、伝送コイルLの正側と、共振コンデンサCの正側と、電圧制限コンデンサCS2の正側と、負荷22の正側とが互いに電気的に接続されている。また、電圧制限コンデンサCS2の負側と、補助スイッチング素子SWS2のトランジスタQS2のドレイン(ダイオードDS2のカソード)とが互いに電気的に接続されている。また、伝送コイルLの負側と、共振コンデンサCの負側と、補助スイッチング素子SWS2のトランジスタQS2のソース(ダイオードDS2のアノード)と、トランジスタQのドレイン(ダイオードDのカソード)とが互いに電気的に接続されている。また、トランジスタQのソース(ダイオードDのアノード)と、負荷22の負側とが互いに電気的に接続されている。
【0082】
また、受電ユニット420には、上記第1実施形態(または、第2実施形態)と同様に、図示しないターンオン制御回路31とターンオン制御回路32とが設けられている。そして、ターンオン制御回路31が、伝送コイルLと共振コンデンサCとによる共振電圧に基づいて、スイッチング素子SWのターンオンの時期を制御し、ターンオン制御回路32が、共振電圧に基づいて、補助スイッチング素子SWS2のターンオンの時期を制御することにより、スイッチング素子SWおよび補助スイッチング素子SWS2が、零電圧スイッチング動作を行う。
【0083】
なお、第4実施形態のその他の構成は、上記第1~第3実施形態と同様である。
【0084】
[第4実施形態の効果]
第4実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0085】
第4実施形態では、上記のように、受電ユニット420は、伝送コイルLまたはスイッチング素子SWに並列に接続され、互いに直列に接続される補助スイッチング素子SWS2、および、伝送コイルLと共振コンデンサCとによる共振電圧を制限する電圧制限コンデンサCS2を含む。これにより、受電ユニット420から給電ユニット10に電力を伝送する場合においても、スイッチング素子SWおよび補助スイッチング素子SWS2が零電圧スイッチング動作を行いながら、かつ、伝送される電力の周波数を所定の周波数範囲にしながら、伝送される電力の大きさを変化させることができる。
【0086】
また、第4実施形態では、上記のように、電圧制限コンデンサCS2の容量は、共振コンデンサCの容量よりも5倍以上大きい。これにより、伝送コイルLと共振コンデンサCとによる共振電圧が上昇している場合に、補助スイッチング素子SWS2をオンさせることにより、共振電圧が容量の大きい電圧制限コンデンサCS2の電圧に安定にクランプされる。その結果、スイッチング素子SWなどに比較的高い共振電圧のピーク電圧が印加されるのが抑制されるので、スイッチング素子SWなどに対して低耐圧の素子を選択することができる。
【0087】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0088】
たとえば、上記第1~第4実施形態では、共振コンデンサCが、伝送コイルLに並列に接続されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、共振コンデンサCが、スイッチング素子SWに並列に接続されていてもよい。また、複数の共振コンデンサCが、伝送コイルLとスイッチング素子SWとの両方に並列に接続されていてもよい。また、第4実施形態の共振コンデンサCについても同様に、共振コンデンサCがスイッチング素子SWに並列に接続されていてもよい。または、複数の共振コンデンサCが伝送コイルLとスイッチング素子SWとの両方に並列に接続されていてもよい。
【0089】
また、上記第1~第4実施形態では、スイッチング素子SWの導通時間TONと、補助スイッチング素子SWの導通時間Tとは、伝送コイルLから伝送される電力の周波数が80kHz以上90kHz以下の範囲内となるように制御される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、伝送される電力の周波数が80kHz以上90kHz以下の範囲とは異なる周波数範囲内となるように、導通時間TONと導通時間Tとが制御されていてもよい。また、伝送される電力の周波数が、80kHz以上90kHz以下の範囲よりも広範囲に変化するように、導通時間TONと導通時間Tとが制御されてもよい。また、第4実施形の受電ユニット420におけるスイッチング素子SWの導通時間TONと補助スイッチング素子SWS2の導通時間Tについても、スイッチング素子SWの導通時間TONと補助スイッチング素子SWの導通時間Tと同様に上記のように制御されてもよい。
【0090】
また、上記第1~第4実施形態では、電圧制限コンデンサCの容量が、共振コンデンサCの容量よりも5倍以上大きい例を示したが、本発明はこれに限られない。経験則として、電圧制限コンデンサCの容量が共振コンデンサCの容量の5倍以上あればクランプ時に必要十分な電圧安定性が得られるが、たとえば、許容される範囲でリプルを含んでもよければ、電圧制限コンデンサCの容量が共振コンデンサCの容量の5倍未満であってもよい。同様に、電圧制限コンデンサCS2の容量が共振コンデンサCの容量の5倍未満であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 無線給電装置
10 給電ユニット
20、320、420 受電ユニット
21、21a~21c 整流回路
22、22a~22c 負荷
30 制御部
31 ターンオン制御回路(第1ターンオン制御回路)
31a 共振電圧検出回路(第1共振電圧検出回路)
31b 共振電圧検出回路(第2共振電圧検出回路)
32 ターンオン制御回路(第2ターンオン制御回路)
100、200、300、400 無線給電システム
230 制御部
231 ターンオン制御回路(第1ターンオン制御回路)
231a 共振電圧検出回路
232 ターンオン制御回路(第2ターンオン制御回路)
共振コンデンサ(第1共振コンデンサ)
共振コンデンサ(第2共振コンデンサ)
電圧制限コンデンサ(第1電圧制限コンデンサ)
S2 電圧制限コンデンサ(第2電圧制限コンデンサ)
ダイオード(整流素子)
E 直流電源
伝送コイル(第1伝送コイル)
伝送コイル(第2伝送コイル)
SW スイッチング素子(第1スイッチング素子)
SW スイッチング素子(第2スイッチング素子)
SW 補助スイッチング素子(第1補助スイッチング素子)
SWS2 補助スイッチング素子(第2補助スイッチング素子)
ON (スイッチング素子の)導通時間
(補助スイッチング素子の)導通時間
トランジスタ(スイッチング部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9