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特開2022-107375熱硬化性樹脂組成物の製造方法、熱硬化性樹脂組成物、電子部品装置、及び電子部品装置の製造方法
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  • 特開-熱硬化性樹脂組成物の製造方法、熱硬化性樹脂組成物、電子部品装置、及び電子部品装置の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107375
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物の製造方法、熱硬化性樹脂組成物、電子部品装置、及び電子部品装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20220713BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220713BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/013
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002292
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】洪 昌勲
(72)【発明者】
【氏名】山浦 格
(72)【発明者】
【氏名】姜 東哲
(72)【発明者】
【氏名】中村 岳博
(72)【発明者】
【氏名】野澤 博
(72)【発明者】
【氏名】片桐 達也
【テーマコード(参考)】
4J002
4M109
【Fターム(参考)】
4J002AA021
4J002CD041
4J002CD051
4J002CD061
4J002DJ016
4J002FA086
4J002FD016
4J002GQ05
4M109AA01
4M109CA21
4M109CA22
4M109EA02
4M109EB02
4M109EB04
4M109EB06
4M109EB07
4M109EB08
4M109EB12
4M109EC20
(57)【要約】
【課題】低温硬化性の組成にも適用可能であり、良好な流動性及び硬化性を維持することができる熱硬化性樹脂組成物の製造方法、当該製造方法により得られる熱硬化性樹脂組成物、並びに当該熱硬化性樹脂組成物により封止された素子を備える電子部品装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂組成物の製造方法は、熱硬化性樹脂と無機充填材の混合物を混練機中で混練する一次混練と、前記一次混練の後の前記混合物の冷却と、前記冷却後の前記混合物に硬化促進剤を添加してさらに混練する二次混練と、を含み、前記二次混練の温度が、前記二次混練において前記硬化促進剤を添加した後の混合物の、示差走査熱量測定により測定されるオンセット温度より低い。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂と無機充填材の混合物を混練機中で混練する一次混練と、
前記一次混練の後の前記混合物の冷却と、
前記冷却後の前記混合物に硬化促進剤を添加してさらに混練する二次混練と、
を含み、
前記二次混練の温度が、前記二次混練において前記硬化促進剤を添加した後の混合物の、示差走査熱量測定により測定されるオンセット温度より低い、
熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記一次混練の温度が前記オンセット温度以上である、請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂の融点又は軟化点が前記オンセット温度以上である、請求項1又は請求項2に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記オンセット温度が120℃以下である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記二次混練の温度が120℃未満である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記一次混練の温度が120℃以上である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記熱硬化性樹脂の融点又は軟化点が120℃以上である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記一次混練及び前記二次混練からなる群より選択される少なくとも一方において、さらに硬化剤を添加することを含む、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記混練機が、
前記一次混練を行うための第1混練部と、
前記二次混練を行うための第2混練部と、
前記第1混練部及び前記第2混練部の間に配置される冷却部と、
を備える混練押出機である、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の製造方法により得られた熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の製造方法により得られた熱硬化性樹脂組成物により封止された素子を備える電子部品装置。
【請求項12】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の製造方法により得られた熱硬化性樹脂組成物により、素子を150℃以下で封止することを含む、電子部品装置の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱硬化性樹脂組成物の製造方法、熱硬化性樹脂組成物、電子部品装置、及び電子部品装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の封止用途等に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、一般的に、熱硬化性樹脂、無機充填材、添加剤等の各成分を混練機で溶融混練することによって製造される。溶融混練した組成物には、冷却後、用途に応じて粉砕、タブレット化等の処理が施される。
【0003】
半導体素子の封止材として例えばエポキシ樹脂組成物を用いる場合には、一般的に175℃程度で封止が行われる。一方、熱処理を高温で行うほど、樹脂組成物の膨張及び収縮により半導体装置に反りが発生したり、はんだの軟化により接合不良が発生したりしやすくなる。熱処理による半導体パッケージへの影響を最小限とするため、熱硬化性樹脂組成物の組成及び硬化方法の検討がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1では、成形温度の低温化及び半導体装置の反りの抑制を目的として、150℃でのICI粘度が0.1Pa・s以下である特定のナフチレンエーテル骨格含有エポキシ樹脂、イミダゾール化合物を含む硬化剤、及び無機充填材を含有する封止用エポキシ樹脂組成物が提案されている。この封止用エポキシ樹脂組成物は、成形温度が低くてもナフチレンエーテル骨格含有エポキシ樹脂が良好な流動性を有し、かつナフチレンエーテル骨格含有エポキシ樹脂とイミダゾール化合物との反応性が低温でも良好であるため、低温成形によっても成形性の悪化及び封止材のムラの発生が生じにくいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-089096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるように、半導体装置の封止における反り抑制などのため、熱硬化性樹脂組成物の低温硬化が望まれる場合がある一方、低温硬化によって良好な成形性を担保することは困難である。熱硬化性樹脂組成物の組成設計を低温硬化可能な組成とすると、組成物を十分に低粘度化させた状態で混練を行うことが困難であるため、成分の偏在が生じやすく、その結果、流動性が低下したり、硬化性が低下したりしやすいためである。
【0007】
特許文献1のエポキシ樹脂組成物によれば、低温硬化によっても良好な成形性が得られ、ムラの抑制が可能であることが記載されているが、成形性を担保しつつ低温硬化を可能とするためには、熱硬化性樹脂、硬化剤等の組成の許容幅が大幅に制限される。例えば、特許文献1には、融点の高い結晶性エポキシ樹脂を含有する組成物を用いて低温で封止材を形成すると、成形性が悪化し、また封止材の均一性が悪化して封止材にムラが生じやすくなることが記載されている。
【0008】
かかる事情に鑑み、本開示は、低温硬化性の組成にも適用可能であり、良好な流動性及び硬化性を維持することができる熱硬化性樹脂組成物の製造方法、当該製造方法により得られる熱硬化性樹脂組成物、並びに当該熱硬化性樹脂組成物により封止された素子を備える電子部品装置及びその製造方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
<1> 熱硬化性樹脂と無機充填材の混合物を混練機中で混練する一次混練と、
前記一次混練の後の前記混合物の冷却と、
前記冷却後の前記混合物に硬化促進剤を添加してさらに混練する二次混練と、
を含み、
前記二次混練の温度が、前記二次混練において前記硬化促進剤を添加した後の混合物の、示差走査熱量測定により測定されるオンセット温度より低い、
熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
<2> 前記一次混練の温度が前記オンセット温度以上である、<1>に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
<3> 前記熱硬化性樹脂の融点又は軟化点が前記オンセット温度以上である、<1>又は<2>に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
<4> 前記オンセット温度が120℃以下である、<1>~<3>のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
<5> 前記二次混練の温度が120℃未満である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
<6> 前記一次混練の温度が120℃以上である、<1>~<5>のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
<7> 前記熱硬化性樹脂の融点又は軟化点が120℃以上である、<1>~<6>のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
<8> 前記一次混練及び前記二次混練からなる群より選択される少なくとも一方において、さらに硬化剤を添加することを含む、<1>~<7>のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
<9> 前記混練機が、
前記一次混練を行うための第1混練部と、
前記二次混練を行うための第2混練部と、
前記第1混練部及び前記第2混練部の間に配置される冷却部と、
を備える混練押出機である、<1>~<8>のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
<10> <1>~<9>のいずれか1項に記載の製造方法により得られた熱硬化性樹脂組成物。
<11> <1>~<9>のいずれか1項に記載の製造方法により得られた熱硬化性樹脂組成物により封止された素子を備える電子部品装置。
<12> <1>~<9>のいずれか1項に記載の製造方法により得られた熱硬化性樹脂組成物により、素子を120℃以下で封止することを含む、電子部品装置の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、低温硬化性の組成にも適用可能であり、良好な流動性及び硬化性を維持することができる熱硬化性樹脂組成物の製造方法、当該製造方法により得られる熱硬化性樹脂組成物、並びに当該熱硬化性樹脂組成物により封止された素子を備える電子部品装置及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の製造方法の一態様に用いられる混練押出機の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
【0013】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において、固形、固体、液状、及び液体とは、25℃での性状をいう。
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0014】
≪熱硬化性樹脂組成物の製造方法≫
本開示の熱硬化性樹脂組成物の製造方法(以下、本開示の製造方法ともいう)は、熱硬化性樹脂と無機充填材の混合物を混練機中で混練する一次混練と、前記一次混練の後の前記混合物の冷却と、前記冷却後の前記混合物に硬化促進剤を添加してさらに混練する二次混練と、を含み、前記二次混練の温度が、前記二次混練において前記硬化促進剤を添加した後の混合物の、示差走査熱量測定(DSC)により測定されるオンセット温度より低い。本開示の製造方法によれば、一次混練の後、温度を低下させて二次混練において硬化促進剤を添加するため、組成物の硬化温度、例えばオンセット温度が従来より低温であっても、熱硬化性樹脂と無機充填材とを十分に混練することが可能である。その結果、成分の偏在、凝集体の発生等を抑制し、熱硬化性樹脂組成物の硬化性を担保することが可能である。
【0015】
本開示においてオンセット温度とは、DSCチャートの発熱ピークの微分値が最大となる点における接線と、DSCチャートの発熱ピークのベースラインと、の交点に相当する温度をいう。発熱ピークの微分値が最大となる点が複数存在する場合には、当該複数の点のうち最も低い温度側の点を採用する。
【0016】
混練方法としては、予め所望の温度に加熱してある混練機によって溶融混練する方法が挙げられる。混練機としては、例えば混練押出機が挙げられる。混練押出機としては、単軸混練押出機、二軸混練押出機、三軸混練押出機等のスクリュー押出機などが挙げられる。なかでも、成分の分散性及び分配性の観点から二軸混練押出機が好ましい。
【0017】
好ましい一態様において、前記混練機は、一次混練を行うための第1混練部と、二次混練を行うための第2混練部と、第1混練部及び第2混練部の間に配置される冷却部と、を備える混練押出機であってもよい。混練押出機では、各成分を混練しながら、モーターを用いて所定の方向へ混合物を押し出すことができる。本態様では、第1混練部で一次混練を経た混合物は、下流に押し出されて冷却部に移動する。冷却された混合物は、さらに下流に押し出されて第2混練部に移動し、二次混練が行われる。
【0018】
混練押出機には、主材の投入口と、当該主材の投入口とは別に設けられた投入口(サイドフィーダー)が設けられていることが好ましい。例えば、上述のように、第1混練部、第2混練部、及び冷却部を備える混練押出機を用いる場合、第1混練部に設けられる主材の投入口から第1混練のための成分を投入し、第2混練部に設けられるサイドフィーダーから硬化促進剤を添加することが好ましい。サイドフィーダーは第1混練部にも設けられていてもよい。この場合、一次混練において、熱硬化性樹脂組成物の成分をそれぞれ別個の投入口から同時に又は順次投入することが可能である。
なお、本開示において便宜的に「主材の投入口」「主材の投入口とは別に設けられた投入口(サイドフィーダー)」等の用語を用いることがあるが、これらの投入口から添加される成分の種類又は量に特に制限はない。すなわち、主材とは、熱硬化性樹脂組成物に含まれる成分のうち、任意の量の任意の成分を表す。また、これらの投入口の構造は特に制限されない。
【0019】
例えば、一態様において、第1混練部に設けられる主材の投入口から、熱硬化性樹脂と無機充填材の混合物、必要に応じて硬化剤、カップリング剤、その他の添加剤等の混合物を投入する。又は、第1混練部に設けられる主材の投入口から無機充填材を投入し、同様に第1混練部に設けられるサイドフィーダーから熱硬化性樹脂、及び必要に応じてその他の成分を投入する。一次混練後、第2混練部に移動した混合物に対して、第2混練部に設けられるサイドフィーダーから硬化促進剤が投入される。
【0020】
一次混練は、二次混練に比べて高せん断条件で行うことが好ましい。一般的に、高せん断条件で樹脂と無機充填材を混合すると、せん断発熱が発生するが、一次混練ではせん断発熱が生じても増粘しにくいため、高せん断条件で混練を行うことができ、これにより熱硬化性樹脂と無機充填材を十分に混練することができる。
【0021】
一態様において用いられる混練押出機の概略断面図を図1に示す。混練押出機10は、第1混練部A、第2混練部C、及び両者の間に配置される冷却部B、並びに第1混練部Aに設けられる主材の投入口1、及び第2混練部Cに設けられるサイドフィーダー2を備える。図1中、矢印は組成物の押出方向を表す。混練方法の具体例は上述の通りである。
以下、本開示の製造方法の各工程について説明する。
【0022】
〔一次混練〕
一次混練では、熱硬化性樹脂と無機充填材の混合物を混練機中で混練する。このとき、さらに硬化剤、カップリング剤、その他の添加剤等を必要に応じて混合してもよい。一次混練の各成分は、事前にミキサー等で混合した混合物として混練機に添加してもよく、それぞれ別個の投入口から添加してもよい。
【0023】
一次混練における増粘が進行しすぎずに、良好に混練が行える範囲で、一次混練において、硬化促進剤のうちの一部を添加してもよい。一次混練において硬化促進剤の一部を混合する場合には、当該混合する量は、最終的に添加する全硬化促進剤のうち、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。製造工程の簡便化の観点から、好ましくは、一次混練では熱硬化性樹脂及び無機充填材を、硬化促進剤を添加しない状態で混練する。
【0024】
一次混練において硬化促進剤の一部を添加する場合としては、例えば以下の態様が想定される。複数種類の硬化促進剤を併用する場合において、一次混練の混練温度(Tとする)と、硬化促進剤を添加した後の混合物のオンセット温度(Tとする)が、T<Tの関係を満たす硬化促進剤(硬化促進剤aとする)は、一次混練において添加する。一方、T≧Tの関係を満たす硬化促進剤(硬化促進剤bとする)は、二次混練において添加する。この場合、一次混練において硬化促進剤aを添加しても、一次混練の温度Tにおいて硬化反応がほとんど進行しないため、増粘を抑制しながら混練することが可能である。
【0025】
一次混練の温度は、用いる樹脂材料の溶融温度に応じて調節することが好ましい。一次混練の温度は、熱硬化性樹脂(複数種の熱硬化性樹脂を併用する場合には、融点又は軟化点が最も高い熱硬化性樹脂)の融点又は軟化点よりも高い温度であることが好ましい。例えば、一次混練の温度は熱硬化性樹脂(複数種の熱硬化性樹脂を併用する場合には、融点又は軟化点が最も高い熱硬化性樹脂)の融点又は軟化点よりも1℃~90℃高い温度であることが好ましく、1℃~70℃高い温度であることがより好ましく、1℃~50℃高い温度であることがさらに好ましい。かかる温度で混練を行うことにより、熱硬化性樹脂を十分に溶融させて流動性を維持することができるため、撹拌混合を良好に行うことができる。
【0026】
一態様において、一次混練の温度は、前記二次混練において前記硬化促進剤を添加した後の混合物の、示差走査熱量測定により測定されるオンセット温度以上であってもよい。かかる場合であっても、一次混練では硬化反応をほとんど進行させずに混練することができる。したがって、本開示の製造方法は、オンセット温度が低温となる硬化促進剤を用いる場合であっても、一次混練を当該オンセット温度以上で行うことが可能である点で特に有用である。当該オンセット温度は、例えば120℃以下であってもよく、110℃以下であってもよく、100℃以下であってもよく、90℃以下であってもよく、80℃以下であってもよく、70℃以下であってもよい。
【0027】
一態様において、一次混練の温度は、70℃以上であってもよく、80℃以上であってもよく、90℃以上であってもよく、100℃以上であってもよく、110℃以上であってもよく、120℃以上であってもよい。粘度上昇を抑制する観点からは、一次混練の温度は、200℃以下であってもよい。かかる観点から、一次混練の温度は、70℃~200℃であってもよく、80℃~200℃であってもよく、90℃~200℃であってもよく、100℃~200℃であってもよく、110℃~200℃であってもよく、120℃~200℃であってもよい。
【0028】
〔冷却〕
一次混練後、混合物は冷却される。冷却は特に制限されず、冷却装置により混練機全体を冷却してもよく、上述のように押出混練機に設けられた冷却部において冷却を行ってもよい。冷却温度は特に制限されず、混練性、増粘の抑制等の観点から、冷却装置又は冷却部の設定温度は30℃~80℃の範囲であることが好ましい。
【0029】
〔二次混練〕
二次混練では、冷却後の混合物に硬化促進剤を添加してさらに混練する。なお、二次混練において硬化剤と硬化促進剤の混合物を添加してもよい。硬化促進剤の添加量が樹脂成分に対して少量、例えば後述のように樹脂成分(すなわち熱硬化性樹脂と、必要に応じて添加される硬化剤の合計)100質量部に対して1質量部~30質量部程度であっても、二次混練において硬化促進剤を硬化剤との混合物として添加することによって、硬化促進剤の偏在を抑制することができ、硬化物としたときの良好な物性を担保しやすい傾向にある。また、硬化剤は一次混練で一部を添加し、残部を二次混練で硬化促進剤と混合して添加してもよい。
【0030】
二次混練において、硬化剤、硬化促進剤、及び無機充填材の一部(すなわち一次混練で混合した無機充填材の追加分)の混合物を添加してもよい。これにより、各成分の偏在をさらに抑制することができると考えられる。
【0031】
二次混練の温度は、一次混練の温度より低く、当該二次混練において硬化促進剤を添加した後の混合物の、示差走査熱量測定により測定されるオンセット温度より低い。これにより、二次混練において、硬化促進剤を含んだ組成物の増粘を抑制し、良好に混練することができる。二次混練の温度は、上記条件を満たす限り特に制限されず、例えば120℃未満であってもよく、110℃未満であってもよく、100℃未満であってもよく、90℃未満であってもよく、80℃未満であってもよく、70℃未満であってもよい。二次混練の温度は、混練性の観点からは、30℃以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましい。
【0032】
〔他の工程〕
本開示の製造方法は、一次混練と二次混練に加えて、任意のタイミングで他の工程を含んでいてもよい。例えば、熱硬化性樹脂、無機充填材、硬化促進剤以外の任意の成分を、当該熱硬化性樹脂、無機充填材、硬化促進剤のうち1以上の成分と同時又は異なる時点で添加し、混練してもよい。一次混練及び二次混練を経て得られた組成物を冷却及び粉砕し、固形の熱硬化性樹脂組成物を得てもよい。得られた固形の熱硬化性樹脂組成物を、打錠機によってタブレット化してもよい。
【0033】
以下、本開示の製造方法に用いられる各成分、すなわち熱硬化性樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
【0034】
<熱硬化性樹脂>
熱硬化性樹脂の種類は特に制限されず、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。本開示では、エポキシ基を含有するアクリル樹脂等の、熱可塑性と熱硬化性の両方の性質を示すものは「熱硬化性樹脂」に含めるものとする。熱硬化性樹脂は、常温常圧下(例えば、25℃、大気圧下)で固体であっても液体であってもよく、固体であることが好ましい。熱硬化性樹脂は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂として具体的には、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものであるノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等);上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂;上記フェノール化合物及びナフトール化合物と、アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものである共重合型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のジグリシジルエーテルであるジフェニルメタン型エポキシ樹脂;アルキル置換又は非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂;スチルベン系フェノール化合物のジグリシジルエーテルであるスチルベン型エポキシ樹脂;ビスフェノールS等のジグリシジルエーテルである硫黄原子含有型エポキシ樹脂;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の多価カルボン酸化合物のグリシジルエステルであるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;アニリン、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したものであるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノール化合物の共縮合樹脂をエポキシ化したものであるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;分子内のオレフィン結合をエポキシ化したものであるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,5-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるパラキシリレン変性エポキシ樹脂;メタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるメタキシリレン変性エポキシ樹脂;テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるテルペン変性エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルである多環芳香環変性エポキシ樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるナフタレン型エポキシ樹脂;ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるアラルキル型エポキシ樹脂;などが挙げられる。さらにはシリコーン樹脂のエポキシ化物、アクリル樹脂のエポキシ化物等もエポキシ樹脂として挙げられる。エポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、エポキシ樹脂のエポキシ当量(分子量/エポキシ基数)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性及び電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、100g/eq~1000g/eqであることが好ましく、150g/eq~500g/eqであることがより好ましい。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K 7236:2009に準じた方法で測定される値とする。
【0037】
熱硬化性樹脂が25℃で固体である場合、熱硬化性樹脂の融点又は軟化点は特に制限されない。耐ブロッキングの観点からは、熱硬化性樹脂の融点又は軟化点は、40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。混練による増粘を抑制する観点からは、熱硬化性樹脂の融点又は軟化点は、150℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることがさらに好ましい。
【0038】
一態様において、熱硬化性樹脂の融点又は軟化点は、二次混練において硬化促進剤を添加した後の混合物のオンセット温度以上であってもよい。本開示の製造方法によれば、硬化促進剤を添加した後の混合物のオンセット温度にかかわらず、熱硬化性樹脂を選択することが可能である。したがって、本開示の製造方法は、融点又は軟化点の比較的高い熱硬化性樹脂と、硬化温度が低温となる硬化促進剤と、を併用しても、十分な混練性、及びその結果としての良好な硬化性を得ることができる点で特に有用である。かかる観点から、一態様において、熱硬化性樹脂の融点又は軟化点は、100℃以上であってもよく、110℃以上であってもよく、120℃以上であってもよい。
【0039】
熱硬化性樹脂の含有率は、強度、流動性、耐熱性、成形性等の観点から、熱硬化性樹脂組成物の全質量に対して0.5質量%~50質量%であることが好ましく、2質量%~30質量%であることがより好ましく、2質量%~20質量%であることがさらに好ましい。
【0040】
<無機充填材>
無機充填材の材質は特に制限されない。無機充填材の材質として具体的には、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、マイカ等の無機材料が挙げられる。難燃効果を有する無機充填材を用いてもよい。難燃効果を有する無機充填材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、硼酸亜鉛などが挙げられる。無機充填材の中でも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカ等のシリカが好ましく、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましい。
【0041】
無機充填材の形状は特に制限されず、充填性及び金型摩耗性の点からは、球形が好ましい。
【0042】
無機充填材は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、「無機充填材を2種以上併用する」とは、例えば、同じ成分で平均粒子径が異なる無機充填材を2種類以上用いる場合、平均粒子径が同じで成分の異なる無機充填材を2種類以上用いる場合並びに平均粒子径及び種類の異なる無機充填材を2種類以上用いる場合が挙げられる。
【0043】
無機充填材の含有率は特に制限されない。熱硬化性樹脂組成物の硬化物の熱膨張係数、熱伝導率、弾性率等の特性をより向上させる観点からは、無機充填材の含有率は熱硬化性樹脂組成物全体の30体積%以上であることが好ましく、40体積%以上であることがより好ましく、50体積%以上であることがさらに好ましく、60体積%以上であることが特に好ましく、70体積%以上であることが極めて好ましい。熱硬化性樹脂組成物の流動性の向上、粘度の低下等の観点からは、無機充填材の含有率は熱硬化性樹脂組成物全体の99体積%以下であることが好ましく、98体積%以下であることが好ましく、97体積%以下であることがより好ましい。
また、例えば、熱硬化性樹脂組成物を圧縮成形用に用いる場合には、無機充填材の含有率は熱硬化性樹脂組成物全体の70体積%~99体積%としてもよく、80体積%~99体積%としてもよく、83体積%~99体積%としてもよく、85体積%~99体積%としてもよい。
【0044】
熱硬化性樹脂組成物の硬化物中の無機充填材の含有率は、次のようにして測定することができる。まず、硬化物の総質量を測定し、該硬化物を400℃で2時間、次いで700℃で3時間焼成し、樹脂成分等を蒸発させ、残存した無機充填材の質量を測定する。得られた各質量及びそれぞれの比重から体積を算出し、硬化物の総体積に対する無機充填材の体積の割合を得て、無機充填材の含有率とする。
【0045】
本開示の製造方法によれば、各成分の混合物の混練性を高めることができる傾向にある。そのため、従来の方法によれば粘度上昇による影響、例えば半導体パッケージにおけるワイヤ流れの発生の懸念から無機充填材の含有率を高められなかった組成であっても、本開示の製造方法によれば、無機充填材を高充填化することが可能となると考えられる。
【0046】
無機充填材が粒子状である場合、その平均粒子径は、特に制限されない。例えば、無機充填材全体の体積平均粒子径は、80μm以下であることが好ましく、50μm以下であってもよく、40μm以下であってもよく、30μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。また、無機充填材全体の体積平均粒子径は、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましく、0.3μm以上であることがさらに好ましい。無機充填材の体積平均粒子径が0.1μm以上であると、熱硬化性樹脂組成物の粘度の上昇がより抑制される傾向がある。無機充填材の体積平均粒子径が80μm以下であると、狭い隙間への充填性がより向上する傾向にある。無機充填材の体積平均粒子径は、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置により測定された体積基準の粒度分布において、小径側からの累積が50%となるときの粒子径(D50)として測定することができる。
【0047】
<硬化促進剤>
硬化促進剤の種類は、特に制限されず、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)等のジアザビシクロアルケン、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール等の環状アミジン化合物;前記環状アミジン化合物の誘導体;前記環状アミジン化合物又はその誘導体のフェノールノボラック塩;これらの化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;DBUのテトラフェニルボレート塩、DBNのテトラフェニルボレート塩、2-エチル-4-メチルイミダゾールのテトラフェニルボレート塩、N-メチルモルホリンのテトラフェニルボレート塩等の環状アミジニウム化合物;ピリジン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物;前記三級アミン化合物の誘導体;酢酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、リン酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、酢酸テトラエチルアンモニウム、安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム等のアンモニウム塩化合物;エチルホスフィン、フェニルホスフィン等の一級ホスフィン、ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の二級ホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p-トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の三級ホスフィンなどの、有機ホスフィン;前記有機ホスフィンと有機ボロン類との錯体等のホスフィン化合物;前記有機ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン、アントラキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;前記有機ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と4-ブロモフェノール、3-ブロモフェノール、2-ブロモフェノール、4-クロロフェノール、3-クロロフェノール、2-クロロフェノール、4-ヨウ化フェノール、3-ヨウ化フェノール、2-ヨウ化フェノール、4-ブロモ-2-メチルフェノール、4-ブロモ-3-メチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジメチルフェノール、4-ブロモ-3,5-ジメチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジ-t-ブチルフェノール、4-クロロ-1-ナフトール、1-ブロモ-2-ナフトール、6-ブロモ-2-ナフトール、4-ブロモ-4’-ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる、分子内分極を有する化合物;テトラフェニルホスホニウム等のテトラ置換ホスホニウム、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート等のテトラ置換ホスホニウムのテトラフェニルボレート塩、テトラ置換ホスホニウムとフェノール化合物との塩などの、テトラ置換ホスホニウム化合物;ホスホベタイン化合物;ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物などが挙げられる。硬化促進剤は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
例えば熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合に特に好適な硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンとキノン化合物との付加物等が挙げられる。
【0049】
また、例えば熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合において、低温硬化が可能な硬化促進剤としては、トリブチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンの付加物、ジメチルアミノピリジン、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0050】
硬化促進剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~15質量部であることがより好ましく、1質量部~10質量部であってもよく、1質量部~5質量部であってもよい。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して0.1質量部以上であると、短時間で良好に硬化する傾向にある。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して30質量部以下であると、硬化速度が速すぎず良好な成形品が得られる傾向にある。
【0051】
<硬化剤>
一次混練又は二次混練において、さらに硬化剤を添加してもよい。硬化剤は、一次混練を行う熱硬化性樹脂と硬化反応を生じる化合物であれば特に制限されず、自身が熱硬化性樹脂であってもよい。例えば、エポキシ樹脂と併用する硬化剤としては、フェノール硬化剤、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤等が挙げられる。硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。耐熱性向上の観点からは、硬化剤は、フェノール性水酸基を分子中に有する化合物(フェノール硬化剤ともいう)が好ましい。硬化剤は、常温常圧下(例えば、25℃、大気圧下)で固体であっても液体であってもよく、固体であることが好ましい。
【0052】
フェノール硬化剤として具体的には、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の多価フェノール化合物;フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル等と、から合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジシクロペンタジエンと、から共重合により合成されるジシクロペンタジエン型フェノール樹脂及びジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂;これら2種以上を共重合して得たフェノール樹脂などが挙げられる。フェノール硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
硬化剤の官能基当量(フェノール硬化剤の場合は水酸基当量、アミン硬化剤の場合は活性水素当量)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、硬化剤の官能基当量は70g/eq~1000g/eqであることが好ましく、80g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
【0054】
フェノール硬化剤の場合における水酸基当量は、JIS K0070:1992に準拠して測定された水酸基価に基づいて算出された値をいう。また、アミン硬化剤の場合における活性水素当量は、JIS K7237:1995に準拠して測定されたアミン価に基づいて算出された値をいう。
【0055】
硬化剤が固体である場合、その軟化点又は融点は、特に制限されない。硬化剤の軟化点又は融点は、例えば熱硬化性樹脂組成物を封止材用途で用いる場合の成形性と耐リフロー性の観点からは、40℃~180℃であることが好ましく、熱硬化性樹脂組成物の製造時における取扱い性の観点からは、50℃~130℃であることがより好ましい。
【0056】
硬化剤の融点又は軟化点は、エポキシ樹脂の融点又は軟化点と同様にして測定される値とする。
【0057】
熱硬化性樹脂と硬化剤の当量比、すなわち熱硬化性樹脂中の官能基数に対する硬化剤中の官能基数の比(硬化剤中の官能基数/熱硬化性樹脂中の官能基数)は、特に制限されない。それぞれの未反応分を少なく抑える関連からは、熱硬化性樹脂と硬化剤の当量比は0.5~2.0の範囲に設定されることが好ましく、0.6~1.3の範囲に設定されることがより好ましい。成形性の観点からは、熱硬化性樹脂と硬化剤の当量比は0.8~1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。
【0058】
<添加剤>
熱硬化性樹脂組成物は、上述の成分に加えて、カップリング剤、イオン交換体、離型剤、難燃剤、着色剤、応力緩和剤等の各種添加剤を含有してもよい。熱硬化性樹脂組成物は、以下に例示する添加剤以外にも必要に応じて当技術分野で一般的に用いられる各種添加剤を含有してもよい。
【0059】
(カップリング剤)
熱硬化性樹脂組成物は、樹脂成分と無機充填材との接着性を高めるために、カップリング剤を含んでもよい。カップリング剤としては、シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウム/ジルコニウム系化合物などの公知のカップリング剤が挙げられる。
【0060】
シラン系化合物としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、グリシドキシオクチルトリメトキシシラン及び、メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0061】
チタン系化合物としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等が挙げられる。
【0062】
熱硬化性樹脂組成物がカップリング剤を含む場合、カップリング剤の量は、無機充填材100質量部に対して0.05質量部~20質量部であることが好ましく、0.1質量部~15質量部であることがより好ましい。カップリング剤の量が無機充填材100質量部に対して0.05質量部以上であると、金属部材との接着性がより向上する傾向にある。カップリング剤の量が無機充填材100質量部に対して20質量部以下であると、成形性が向上する傾向にある。
【0063】
(イオン交換体)
熱硬化性樹脂組成物は、イオン交換体を含有してもよい。特に、熱硬化性樹脂組成物を封止用成形材料として用いる場合には、封止される素子を備える電子部品装置の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、イオン交換体を含有することが好ましい。イオン交換体は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハイドロタルサイト化合物、並びにマグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の含水酸化物等が挙げられる。イオン交換体は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、下記一般式(A)で表されるハイドロタルサイトが好ましい。
【0064】
Mg(1-X)Al(OH)(COX/2・mHO ……(A)
(0<X≦0.5、mは正の数)
【0065】
熱硬化性樹脂組成物がイオン交換体を含有する場合、その含有量は、ハロゲンイオン等のイオンを捕捉するのに十分な量であれば特に制限はない。例えば、樹脂成分100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~10質量部であることがより好ましい。
【0066】
(離型剤)
熱硬化性樹脂組成物は、成形時における金型との良好な離型性を得る観点から、離型剤を含有してもよい。離型剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックスなどが挙げられる。離型剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
熱硬化性樹脂組成物が離型剤を含有する場合、その量は樹脂成分100質量部に対して0.01質量部~10質量部が好ましく、0.1質量部~5質量部がより好ましい。離型剤の量が樹脂成分100質量部に対して0.01質量部以上であると、離型性が十分に得られる傾向にある。10質量部以下であると、より良好な接着性及び硬化性が得られる傾向にある。
【0068】
(難燃剤)
熱硬化性樹脂組成物は、難燃剤を含有してもよい。難燃剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハロゲン原子、アンチモン原子、窒素原子又はリン原子を含む有機又は無機の化合物、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
熱硬化性樹脂組成物が難燃剤を含有する場合、その量は、所望の難燃効果を得るのに十分な量であれば特に制限されない。例えば、樹脂成分100質量部に対して1質量部~30質量部であることが好ましく、2質量部~20質量部であることがより好ましい。
【0070】
(着色剤)
熱硬化性樹脂組成物は、着色剤をさらに含有してもよい。着色剤としてはカーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の公知の着色剤を挙げることができる。着色剤の含有量は目的等に応じて適宜選択できる。着色剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
(応力緩和剤)
熱硬化性樹脂組成物は、シリコーンオイル、シリコーンゴム粒子等の応力緩和剤を含有してもよい。応力緩和剤を含有することにより、熱硬化性樹脂組成物を封止材用途で使用する場合のパッケージの反り変形及びパッケージクラックの発生を低減させることができる。応力緩和剤としては、一般に使用されている公知の応力緩和剤(可とう剤)が挙げられる。具体的には、シリコーン系、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エラストマー、NR(天然ゴム)、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンパウダー等のゴム粒子、メタクリル酸メチル-スチレン-ブタジエン共重合体(MBS)、メタクリル酸メチル-シリコーン共重合体、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル共重合体等のコア-シェル構造を有するゴム粒子などが挙げられる。応力緩和剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
≪熱硬化性樹脂組成物≫
本開示の熱硬化性樹脂組成物は、上述の本開示の製造方法により得られる。熱硬化性樹脂組成物は、常温常圧下(例えば、25℃、大気圧下)において固体であっても液状であってもよく、固体であることが好ましい。熱硬化性樹脂組成物が固体である場合の形状は特に制限されず、粉状、粒状、タブレット状等が挙げられる。
【0073】
〔熱硬化性樹脂組成物の特性〕
(熱時硬度)
以下の方法で測定される熱硬化性樹脂組成物の硬化物の熱時硬度は、50以上であることが好ましく、60以上であることがより好ましく、70以上であることがさらに好ましい。
熱時硬度は以下のように測定する。熱硬化性樹脂組成物を、金型温度150℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で直径50mm×厚み3mmの円板に成形し、成形後直ちにショアD型硬度計(例えば、株式会社上島製作所製、HD-1120(タイプD))を用いて熱時硬度を測定する。
【0074】
(流動性)
EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、熱硬化性樹脂組成物を成形したときに得られる流動距離は、80cm以上であることが好ましく、100cm以上であることがより好ましく、120cm以上であることがさらに好ましい。当該流動距離の上限は特に制限されず、例えば300cm以下であってもよい。
成形条件は、トランスファー成形機により、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件とする。
【0075】
(溶融粘度)
175℃における熱硬化性樹脂組成物の最低溶融粘度は、成形性の観点からは、30Pa・s以下であることが好ましく、20Pa・s以下であることがより好ましく、10Pa・s以下であることがさらに好ましい。バリの抑制の観点からは、175℃における熱硬化性樹脂組成物の最低溶融粘度は、5Pa・s以上であることが好ましく、10Pa・s以上であることがより好ましく、20Pa・s以上であることがさらに好ましい。最低溶融粘度は、高化式フローテスター(例えば、株式会社島津製作所製)を用いて測定することができる。
【0076】
(ゲルタイム)
以下の方法で測定される熱硬化性樹脂組成物のゲルタイムは、増粘を抑制する観点からは、40秒以上であることが好ましく、50秒以上であることがより好ましく、60秒以上であることがさらに好ましい。硬化性の観点からは、当該ゲルタイムは、150秒以下であることが好ましく、120秒以下であることがより好ましく、100秒以下であることがさらに好ましい。
ゲルタイムの測定は次の方法で行う。熱硬化性樹脂組成物3gに対し、キュラストメータ(例えば、JSRトレーディング株式会社)を用いた測定を温度175℃で実施し、トルク曲線の立ち上がりまでの時間をゲルタイム(秒)とする。
【0077】
〔熱硬化性樹脂組成物の用途〕
本開示の熱硬化性樹脂組成物の用途は特に制限されず、例えば上記に例示したように電子部品装置の封止材として種々の実装技術に用いることができる。また、本開示の熱硬化性樹脂組成物は、各種モジュール用樹脂成形体、モーター用樹脂成形体、車載用樹脂成形体、電子回路用保護材用封止材等、熱硬化性樹脂組成物が良好な硬化性を有することが望ましい種々の用途に用いることができる。
【0078】
≪電子部品装置≫
本開示の電子部品装置は、上述の本開示の製造方法により得られた熱硬化性樹脂組成物により封止された素子を備える。すなわち、電子部品装置は、上述の本開示の製造方法により得られた熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含む。
【0079】
電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ、有機基板等の支持部材に、素子(半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子など)を搭載して得られた素子部を熱硬化性樹脂組成物で封止したものが挙げられる。
より具体的には、リードフレーム上に素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部とをワイヤボンディング、バンプ等で接続した後、熱硬化性樹脂組成物を用いてトランスファー成形等によって封止した構造を有するDIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC;テープキャリアにバンプで接続した素子を熱硬化性樹脂組成物で封止した構造を有するTCP(Tape Carrier Package);支持部材上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した素子を、熱硬化性樹脂組成物で封止した構造を有するCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール等;裏面に配線板接続用の端子を形成した支持部材の表面に素子を搭載し、バンプ又はワイヤボンディングにより素子と支持部材に形成された配線とを接続した後、熱硬化性樹脂組成物で素子を封止した構造を有するBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、MCP(Multi Chip Package)などが挙げられる。また、プリント配線板においても熱硬化性樹脂組成物を好適に使用することができる。
【0080】
熱硬化性樹脂組成物を用いて電子部品装置を封止する方法としては、低圧トランスファー成形法、インジェクション成形法、圧縮成形法等が挙げられる。
【0081】
素子の封止温度は特に制限されない。封止温度は、例えば一般的な封止温度である170℃~180℃で行ってもよい。また、本開示の熱硬化性樹脂組成物の製造方法によれば、低温硬化型の熱硬化性樹脂組成物を製造することも可能であるため、封止温度を170℃未満、160℃以下、150℃以下、140℃以下、130℃以下、120℃以下等の低温とすることも可能となる。
【0082】
≪電子部品装置の製造方法≫
一態様において、電子部品装置の製造方法は、上述の本開示の製造方法により得られた熱硬化性樹脂組成物により、素子を150℃以下で封止することを含む。本態様の電子部品装置の製造方法によれば、封止の際の熱処理における素子に対する影響を低減することができる。素子の封止温度は、140℃以下、130℃以下、120℃以下等としてもよい。
【実施例0083】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0084】
<熱硬化性樹脂組成物の作製>
まず、下記に示す各成分を準備した。
【0085】
(熱硬化性樹脂)
・エポキシ樹脂1:YL-6121(商品名、日本化薬株式会社、エポキシ当量170g/eq~180g/eq、軟化点53℃~63℃のアラルキル型エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂2:jER YX-4000H(商品名、三菱ケミカル株式会社、エポキシ当量180g/eq~192g/eq、融点105℃のビフェニル型エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂3:EPPN501HY(商品名、日本化薬株式会社、エポキシ当量163g/eq~175g/eq、軟化点57℃~63℃のトリフェニルメタン型エポキシ樹脂)
【0086】
(硬化剤)
・硬化剤1:MEHC-7851(商品名、明和化成株式会社、水酸基当量205g/eqのビフェニレンアラルキル型フェノール樹脂、軟化点60℃~70℃)
・硬化剤2:SN-485(商品名、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社、水酸基当量215g/eqのナフタレンアラルキル型フェノール樹脂、軟化点80℃~90℃)
【0087】
(無機充填材)
・無機充填材:平均粒子径 1.5μmの球状シリカフィラ(表面処理なし)
【0088】
(カップリング剤)
・カップリング剤:KBM-573(商品名、信越化学工業株式会社、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)
【0089】
(硬化促進剤)
・硬化促進剤:リン系硬化促進剤
【0090】
(他の添加剤)
・離型剤:ヘキストワックス(ヘキスト社)
・着色剤:カーボンブラック
【0091】
実施例1~5の熱硬化性樹脂組成物は以下の方法(「製造方法A」とする)で作製した。表1に示される主供給物成分及び副供給物成分を各々容器内で混合し、高速ミキサで粉砕及び撹拌した。混練機として、第1混練部と、第2混練部と、第1混練部及び第2混練部の間に配置される冷却部と、を備える二軸混練押出機を用いた。投入口から主供給物成分を第1混練部に供給し、表1の第一混練温度で約2分間溶融混練した。その後、副供給物成分を開口部から第2混練部に添加し、第1混練部から冷却部を経て押し出された混合物と合わせて表1の第二混練温度で約1分間溶融混練した。溶融物を10℃の冷水を循環したプレスロールで冷却し、シート状になったものを粉末状に粉砕することにより、粉末状の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0092】
比較例1~2の熱硬化性樹脂組成物は以下の方法(「製造方法B」とする)で作製した。表1に示される各成分すべてを容器中で混合し、高速ミキサで粉砕及び撹拌した。その後、表1の第一混練温度で約2分間溶融混練した。その後、第二混練温度で約1分間溶融混練した。溶融物を10℃の冷水を循環したプレスロールで冷却し、シート状になったものを粉末状に粉砕することにより、粉末状の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0093】
<熱硬化性樹脂組成物の評価>
作製された熱硬化性樹脂組成物を、以下に示す各種試験によって評価した。評価結果を表1に示す。なお、熱硬化性樹脂組成物の成形は、明記しない限りトランスファー成形機により、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で成形した。また、必要に応じて後硬化を175℃、6時間の条件で行った。
【0094】
〔スパイラルフロー〕
EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、熱硬化性樹脂組成物を上記条件で成形し、流動距離を求めた。
【0095】
〔溶融粘度〕
高化式フローテスター(株式会社島津製作所製)を用いて、175℃における熱硬化性樹脂組成物の最低溶融粘度を測定した。
【0096】
〔ゲルタイム〕
熱硬化性樹脂組成物3gに対し、JSRトレーディング株式会社のキュラストメータを用いた測定を温度175℃で実施し、トルク曲線の立ち上がりまでの時間をゲルタイム(秒)とした。
【0097】
〔熱時硬度〕
熱硬化性樹脂組成物を、金型温度150℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間120秒の条件で直径50mm×厚み3mmの円板に成形し、成形後直ちにショアD型硬度計(株式会社上島製作所製、HD-1120(タイプD))を用いて熱時硬度を測定した。
【0098】
〔無機充填材の凝集の有無〕
熱硬化性樹脂組成物を成形し、成形物の外観目視で観察し、無機充填材の凝集の有無を確認した。
【0099】
【表1】
【0100】
なお、実施例1~5、及び比較例1、2のいずれにおいても、熱硬化性樹脂組成物のオンセット温度は100℃以上140℃未満である。
【0101】
表1に示されるように、製造方法Aにより作製された実施例1~5の熱硬化性樹脂組成物では、流動性に優れ、ゲルタイムも良好であり、硬化物における無機充填材の凝集も観察されなかった。さらに、硬化物の熱時硬度も良好に維持されていた。
一方、比較例1では、硬化物において無機充填材の凝集が観察され、熱時硬度も低かった。これは、混練時の樹脂の溶融が不十分であり、混練が良好に行えなかったことが原因であると考えられる。
また、比較例2の熱硬化性樹脂組成物では、流動性及びゲルタイムに劣っていた。これは、硬化促進剤を添加した状態で140℃での混練を行ったため、反応が一部進行して組成物が増粘したためであると考えられる。
【0102】
これらの結果より、本開示の製造方法によれば、硬化促進剤を添加した後の組成物のオンセット温度が低い、すなわち低温硬化型の組成にも好適に適用することができ、流動性及び硬化性を良好に担保することができると考えられる。
【符号の説明】
【0103】
1 主材の投入口
2 サイドフィーダー
10 混練押出機
A 第1混練部
B 冷却部
C 第2混練部
図1