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特開2022-107399酸化物固体電解質、電極合材、および全固体リチウムイオン電池
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  • 特開-酸化物固体電解質、電極合材、および全固体リチウムイオン電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022107399
(43)【公開日】2022-07-21
(54)【発明の名称】酸化物固体電解質、電極合材、および全固体リチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20220713BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220713BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20220713BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220713BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20220713BHJP
   H01B 1/08 20060101ALI20220713BHJP
   C01D 5/00 20060101ALI20220713BHJP
   C01D 7/00 20060101ALI20220713BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M10/0562
H01M10/052
H01B1/06 A
H01B1/08
C01D5/00 Z
C01D7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021002328
(22)【出願日】2021-01-08
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】永田 裕
(72)【発明者】
【氏名】秋本 順二
【テーマコード(参考)】
5G301
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5G301CA02
5G301CA16
5G301CD01
5H029AJ02
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AL16
5H029AM12
5H029DJ09
5H029EJ05
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ14
5H029HJ20
5H050AA02
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB20
5H050DA02
5H050DA03
5H050DA13
5H050EA12
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA14
5H050HA17
(57)【要約】
【課題】常温での良好な変形性を有し、かつ、導電率が高い酸化物固体電解質を提供する。
【解決手段】本開示の酸化物固体電解質は、硫酸リチウム(LiSO)と炭酸リチウム(LiCO)とを含む複合物であって、硫酸リチウムと炭酸リチウムとのモル比(LiSO:LiCO)が20:80~80:20であり、示差走査熱量測定で得られる曲線において、発熱ピークの位置が200℃以下であり、導電率が1.0×10-7S/cm以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸リチウム(LiSO)と炭酸リチウム(LiCO)とを含む複合物であって、
前記硫酸リチウムと前記炭酸リチウムとのモル比(LiSO:LiCO)が20:80~80:20であり、
示差走査熱量測定で得られる曲線において、発熱ピークの位置が200℃以下であり、
導電率が1.0×10-7S/cm以上である、酸化物固体電解質。
【請求項2】
塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、ホウ酸リチウム、リン酸リチウム、硝酸リチウム、ケイ酸リチウム、およびアルミン酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含む、請求項1に記載の酸化物固体電解質。
【請求項3】
請求項1または2に記載の酸化物固体電解質と、
電極活物質と、
導電材と、
を含み、
前記酸化物固体電解質と、前記電極活物質と、前記導電材と、の質量比(酸化物固体電解質:電極活物質:導電材)が20~80:20~80:0~30である、電極合材。
【請求項4】
請求項1または2に記載の酸化物固体電解質を含む、全固体リチウムイオン電池。
【請求項5】
前記酸化物固体電解質を含む固体電解質層を備える、請求項4に記載の全固体リチウムイオン電池。
【請求項6】
前記酸化物固体電解質を含む正極活物質層、または前記酸化物固体電解質を含む負極活物質層を備える、請求項4または5に記載の全固体リチウムイオン電池。
【請求項7】
前記正極活物質層が、前記酸化物固体電解質、正極活物質および正極導電材を含み、
前記酸化物固体電解質と、前記正極活物質と、前記正極導電材と、の質量比(酸化物固体電解質:正極活物質:正極導電材)が20~80:20~80:0~30である、請求項6に記載の全固体リチウムイオン電池。
【請求項8】
前記負極活物質層が、前記酸化物固体電解質、負極活物質および負極導電材を含み、
前記酸化物固体電解質と、前記負極活物質と、前記負極導電材と、の質量比(酸化物固体電解質:負極活物質:負極導電材)が20~80:20~80:0~30である、請求項6または7に記載の全固体リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物固体電解質、電極合材、および全固体リチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン2次電池は、エネルギー密度が高く、パソコン、携帯電話などの情報関連機器等に使用されている。近年、電気自動車またはハイブリッド自動車向けに高出力かつ高容量のリチウムイオン2次電池の開発が進められている。
【0003】
しかし、現在のリチウムイオン2次電池は、可燃性の有機電解液を用いているので、リチウムイオン2次電池が異常発熱した際に発火しやすいという問題がある。実際、携帯機器でリチウムイオン2次電池を原因とする発火事故が起こっており、安全性の改善が強く求められている。
【0004】
リチウムイオン2次電池の安全性を改善する技術としては、固体電解質を用いる技術がある。しかし、固体電解質を用いた全固体リチウムイオン2次電池の場合、負極合材層、固体電解質層、及び正極合材層がそれぞれ固体―固体接触となる。そのため、有機電解液を使用する従来のリチウムイオン2次電池と比較して、電子およびイオンの移動経路は著しく少なくなる。特に、導電率の高い酸化物固体電解質は、硬い粒子であり変形しにくいので、プレスなどをしても固体-固体間の良好な接触状態を得ることができない。そのため、導電率が高い酸化物固体電解質では、酸化物固体電解質間の電子またはイオンの伝導性が低い。よって、現在、固体電解質間の接触状態を改善することが求められている。
【0005】
固体電解質間の接触状態を改善する技術としては、特許文献1には、酸化物基準の質量%で、ZrO成分を2.6~52.0%含有するリチウムイオン伝導性無機物質を焼結する技術が開示されている。非特許文献1には、NASICON型の結晶構造を持つガラスセラミックスを焼結する技術が開示されている。非特許文献2には、LiBO-LiSOを熱プレスする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-246196号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】T. Kato, et al.,Effects of sintering temperature on interfacial structure and interfacial resistance for all-solid-state rechargeable lithium batteries. J. Power Source 325(2016)584-590
【非特許文献2】K. Nagao,et al., Highly Stable Li/Li3BO3-Li2SO4 Interface and Application to Bulk-Type All-Solid-State Lithium Metal Batteries. Appl. Energy Mater. 2(2019) 3042-3048
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1および非特許文献1の場合、高温で焼結させて粒子間の接触を改善しているが、固体電解質および電極活物質の高温での反応により、イオン電導性および充放電反応性が低下するという問題がある。加えて、特許文献1および非特許文献1の場合、高温での処理が必要となるので、設備費用およびランニングコストが高くなるという問題がある。また、非特許文献2の技術では、常温では良好な粒子間接触状態が形成できていない材料を熱プレスすることで、粒子間の接触状態を改善しているが、高温を必要とするため、設備費用およびランニングコストが高くなるという問題がある。そのため、非特許文献2に開示された固体電解質よりも常温において、より高い変形性を有する固体電解質が求められている。
【0009】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされた発明であり、常温での良好な変形性を有し、かつ、導電率が高い酸化物固体電解質を提供することを主目的とする。ここで、常温とは20℃~30℃をいう。また、「常温での良好な変形性」とは、例えば、常温、1GPaのプレスにおいて相対密度が95%以上となる変形性をいう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明の一態様に係る酸化物固体電解質は、硫酸リチウム(LiSO)と炭酸リチウム(LiCO)とを含む複合物であって、
前記硫酸リチウムと前記炭酸リチウムとのモル比(LiSO:LiCO)が20:80~80:20であり、
示差走査熱量測定で得られる曲線において、発熱ピークの位置が200℃以下であり、
導電率が1.0×10-7S/cm以上である。
(2)上記(1)に記載の酸化物固体電解質は、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、ホウ酸リチウム、リン酸リチウム、硝酸リチウム、ケイ酸リチウム、およびアルミン酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでもよい。
(3)本発明の一態様に係る電極合材は、
上記(1)または(2)に記載の酸化物固体電解質と、
電極活物質と、
導電材と、
を含み、
前記酸化物固体電解質と、前記電極活物質と、前記導電材と、の質量比(酸化物固体電解質:電極活物質:導電材)が20~80:20~80:0~30である。
(4)本発明の一態様に係る全固体リチウムイオン電池は、上記(1)または(2)に記載の酸化物固体電解質を含む。
(5)上記(4)に記載の全固体リチウムイオン電池は、前記酸化物固体電解質を含む固体電解質層を備えてもよい。
(6)上記(4)または(5)に記載の全固体リチウムイオン電池は、前記酸化物固体電解質を含む正極活物質層または前記酸化物固体電解質を含む負極活物質層を備えてもよい。
(7)上記(6)に記載の全固体リチウムイオン電池は、前記正極活物質層が、前記酸化物固体電解質、正極活物質および正極導電材を含み、
前記酸化物固体電解質と、前記正極活物質と、前記正極導電材と、の質量比(酸化物固体電解質:正極活物質:正極導電材)が20~80:20~80:0~30であってもよい。
(8)上記(6)または(7)に記載の全固体リチウムイオン電池は、前記負極活物質層が、前記酸化物固体電解質、負極活物質および負極導電材を含み、
前記酸化物固体電解質と、前記負極活物質と、前記負極導電材と、の質量比(酸化物固体電解質:負極活物質:負極導電材)が20~80:20~80:0~30であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示の上記態様によれば、常温での良好な変形性を有し、かつ、導電率が高い酸化物固体電解質、電極合材および全固体リチウムイオン電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施形態に係る全固体リチウムイオン電池の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<酸化物固体電解質>
本開示の酸化物固体電解質について、説明する。なお、以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。
【0014】
(硫酸リチウム(LiSO)と炭酸リチウム(LiCO)とを含む複合物)
本開示の酸化物固体電解質は、硫酸リチウム(LiSO)と、炭酸リチウム(LiCO)とを含む複合物である。ここで、複合物とは、硫酸リチウムと炭酸リチウムとを含む原料を、例えば、遊星ボールミルで混合し、複合化したものをいう。本開示の酸化物固体電解質は、硫酸リチウムと炭酸リチウムとを含むことで、良好な導電率および良好な変形性が得られる。
【0015】
(硫酸リチウムと前記炭酸リチウムとのモル比(LiSO:LiCO)が20:80~80:20)
本開示の酸化物固体電解質は、硫酸リチウム(LiSO)と炭酸リチウム(LiCO)とを含み、硫酸リチウムと炭酸リチウムとのモル比(LiSO:LiCO)が20:80~80:20である。硫酸リチウムと炭酸リチウムとのモル比が上記の範囲であれば、酸化物固体電解質は、常温での良好な変形性を有する。より好ましい硫酸リチウムと炭酸リチウムとのモル比は、30:70~70:30である。
【0016】
本開示の酸化物固体電解質において、硫酸リチウムおよび炭酸リチウムの合計含有量が、30質量%~100質量%であることが好ましい。硫酸リチウムおよび炭酸リチウムの合計含有量が上記の範囲であれば、常温でのより良好な変形性を得ることができるので好ましい。より好ましい硫酸リチウムおよび炭酸リチウムの合計含有量は、40質量%~100質量%である。
【0017】
(塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、ホウ酸リチウム、リン酸リチウム、硝酸リチウム、ケイ酸リチウム、およびアルミン酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1種)
本開示の酸化物固体電解質は、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、ホウ酸リチウム、リン酸リチウム、硝酸リチウム、ケイ酸リチウム、およびアルミン酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、ホウ酸リチウム、リン酸リチウム、硝酸リチウム、ケイ酸リチウム、およびアルミン酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含むことで、より高い導電率を得ることができるので好ましい。
【0018】
本開示の酸化物固体電解質における塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、ホウ酸リチウム、リン酸リチウム、硝酸リチウム、ケイ酸リチウム、およびアルミン酸リチウムの合計含有量は、0質量%~70質量%であることが好ましい。塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、ホウ酸リチウム、リン酸リチウム、硝酸リチウム、ケイ酸リチウム、およびアルミン酸リチウムの合計含有量が上記の範囲であれば、より良好な導電率を得ることができるので好ましい。より好ましい塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、ホウ酸リチウム、リン酸リチウム、硝酸リチウム、ケイ酸リチウム、およびアルミン酸リチウムの合計含有量は、0質量%~60質量%である。
【0019】
本開示の酸化物固体電解質の化学組成は、例えば、リチウムイオン2次電池の正極、固体電解質層、または負極の断面において、電解放出型透過電子顕微鏡(TEM)に搭載されたエネルギー分散型X線分光装置(EDX)とラマン分光法にて定量することができる。
【0020】
(示差走査熱量測定で得られる曲線において、発熱ピークの位置が200℃以下)
本開示の酸化物固体電解質は、示差走査熱量測定(DSC)測定において得られる曲線(DSC曲線)において、200℃以下の発熱ピークを有する。DSC曲線において、発熱ピークの位置が200℃以下であることで、酸化物固体電解質の良好な変形性が得られる。より好ましい発熱ピークの位置は、190℃以下である。発熱ピークの位置の下限は特に限定されないが、例えば、80℃以上としてもよい。なお、DSC曲線上に複数の発熱ピークがある場合は、最も発熱量の大きいピークの位置を発熱ピーク位置とする。
【0021】
本開示の酸化物固体電解質は、DSC曲線において得られる200℃以下の発熱ピークの発熱量が5J/g以上であることが好ましい。DSC曲線において得られる200℃以下の発熱ピークの発熱量が上記の範囲であれば、より高い変形性が得られるので好ましい。より好ましい発熱量は、10J/g以上である。さらに好ましい発熱量は15J/g以上である。発熱ピークの発熱量の上限は特に限定されてないが、例えば、500J/g以下としてもよい。
【0022】
本開示の酸化物固体電解質の発熱ピークは、例えば、以下の方法で測定することができる。不活性ガス(例えばAr)で満たされたグローブボックス中で酸化物固体電解質(約10mg)をAl密閉試料容器(日立ハイテクサイエンス社製 GCA-0017)に入れ、密閉する。密閉後の容器を示差走査熱量計(例えば、セイコーインスツルメンツ社製DSC6200)に設置し、温度範囲50℃~300℃、昇温速度10℃/分で測定を行うことで、酸化物固体電解質のDSC曲線を得ることができる。得られたDSC曲線から酸化物固体電解質の発熱ピークの位置と発熱量が得られる。ピーク位置および発熱量は例えば、示差走査熱量計DSC6200に付属するソフトウェアを用いて計算することができる。
【0023】
(導電率が1.0×10-7S/cm以上)
本開示の酸化物固体電解質の導電率は、1.0×10-7S/cm以上である。酸化物固体電解質の導電率が1.0×10-7S/cm未満の場合、全固体リチウムイオン電池の特性が低下する場合がある。より好ましい酸化物固体電解質の導電率は2.0×10-7S/cm以上である。さらに好ましい酸化物固体電解質の導電率は、4.0×10-7S/cm以上である。
【0024】
本開示の酸化物固体電解質の導電率は、例えば、以下の方法で測定することができる。
アルゴンガス雰囲気グローブボックス内にて、直径10mmの錠剤成形器(例えば、日本分光製)に直径10mmに打ち抜いたAl箔またはAu箔を入れ、その上から固体電解質粉末を入れ、均したのちにさらに直径10mmに打ち抜いたAl箔またはAu箔を入れ、常温で1GPa、30分間プレスすることで固体電解質測定用のペレットを得る。得られたペレットをフラットセル内に配置し、密閉することで導電率測定用セルとし、常温にて、インピーダンス測定装置(例えば、ソーラトロン社インピーダンスアナライザーA1260)にて印加電圧50mV、測定周波数1Hz~32MHzにて測定し、得られたナイキストプロットの半円弧の低周波端の抵抗値から導電率を算出することができる。
【0025】
(相対密度95%以上)
本開示の酸化物固体電解質は、常温での変形性に優れる。例えば、本開示の酸化物固体電解質を常温で1GPaでプレスした場合、下記の式(1)で表される相対密度が95%以上となる。より好ましくは、常温で1GPaでプレスした場合における相対密度が98%以上である。さらに好ましくは、常温で1GPaでプレスした場合における相対密度が99%以上である。
【0026】
【数1】
【0027】
本開示の酸化物固体電解質の相対密度は、以下の方法で測定することができる。アルゴンガス雰囲気グローブボックス内にて、直径10mmの錠剤成形器(例えば、日本分光製)に直径10mmに打ち抜いたAl箔またはAu箔を入れ、その上から固体電解質粉末を入れ、均した後にさらに直径10mmに打ち抜いたAl箔またはAu箔を入れ、常温で1GPa、30分間プレスすることで相対密度測定用のペレットを得る。得られたペレットの密度を上記(1)式のように、各原料の密度(g/cm)および質量(g)から計算される理論密度で除することで算出することができる。
【0028】
本開示の酸化物固体電解質の形状は特に限定されないが、例えば、粒状が好ましい。
【0029】
(酸化物固体電解質の製造方法)
本開示の酸化物固体電解質の製造方法は、特に限定されないが、例えば、固相合成法、乾式メカニカルミリング処理、湿式メカニカルミリング処理、溶融急冷法、ゾル・ゲル法等があげられる。本開示の酸化物固体電解質の製造方法としては、特に乾式メカニカルミリング処理が好ましい。例えば、酸化物固体電解質の原料をジルコニアボールとともに370rpmで60時間混合することで本開示の酸化物固体電解質が得られる。製造条件については、得られた酸化物固体電解質のDSC測定を行い、発熱ピークの位置および発熱量を確認することで、適宜調整することができる。
【0030】
<電極合材>
本開示の電極合材は、本開示の酸化物固体電解質、電極活物質および導電材を含む。電極合材について、以下、説明する。
【0031】
(活物質)
電極活物質は、リチウムイオン2次電池で使用されるものであれば特に限定されない。正極に用いる電極活物質(正極活物質)としては、リチウムイオンを可逆的に放出・吸蔵でき、電子輸送が行える材料であれば特に限定されない。正極活物質としては。例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウム鉄リン酸化物などのリチウム遷移金属酸化物、硫黄及びその放電生成物である硫化リチウム、多硫化リチウム等の硫黄系活物質等が挙げられる。正極活物質は、上記材料の1種単独で構成されてもよいし、2種以上で構成されてもよい。
【0032】
負極に用いる電極活物質(負極活物質)としては、リチウムイオンを可逆に放出・吸蔵でき、電子輸送が行える材料であれば特に限定されない。負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、樹脂炭、炭素繊維、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素質材料;スズ、スズ合金、シリコン、シリコン合金、ガリウム、ガリウム合金、インジウム、インジウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を主体とした合金系材料;ポリアセン、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性ポリマー;金属リチウム:リチウムチタン複合酸化物(例えばLiTi12)等が挙げられる。負極活物質は、上記材料の1種単独で構成されてもよいし、2種以上で構成されてもよい。
【0033】
(導電材)
導電材は一般的にリチウムイオン2次電池及び全固体型リチウムイオン2次電池に使用可能な導電助剤を用いることができる。正極に用いられる導電材(正極導電材)としては、例えば、アセチレンブラック、ケチェンブラック等のカーボンブラック;カーボンファイバー;気相法炭素繊維;黒鉛粉末;カーボンナノチューブ、活性炭等の炭素材料、を挙げることができる。導電材は、上記材料の1種単独で構成されてもよいし、2種以上で構成されてもよい。
【0034】
負極に用いられる導電材(負極導電材)としては、例えば、アセチレンブラック、ケチェンブラック等のカーボンブラック;カーボンファイバー;気相法炭素繊維;黒鉛粉末;カーボンナノチューブ、活性炭等の炭素材料、を挙げることができる。導電材は、上記材料の1種単独で構成されてもよいし、2種以上で構成されてもよい。
【0035】
本開示の酸化物固体電解質、電極活物質および導電材の質量合計を100としたときに、本開示の酸化物固体電解質と、電極活物質と、導電材と、の質量比(酸化物固体電解質:電極活物質:導電材)は、20~80:20~80:0~30である。本開示の酸化物固体電解質と、電極活物質と、導電材と、の質量比が、上記の範囲であれば、高い電池特性が得られる。なお、正極に本開示の酸化物固体電解質を用いる場合(正極合材)は、酸化物固体電解質:正極活物質:正極導電材の質量比は、20~80:20~80:0~30である。負極に本開示の酸化物固体電解質を用いる場合(負極合材)は、酸化物固体電解質:負極活物質:負極導電材の質量比は、20~80:20~80:0~30である。
【0036】
本開示の電極合材中の酸化物固体電解質の含有量は、20質量%~80質量%が好ましい。また、本開示の電極合材中の電極活物質の含有量は、20質量%~80質量%であることが好ましい。本開示の電極合材中の導電材の含有量は0質量%~30質量%であることが好ましい。より好ましい導電材の含有量は0質量%~25質量%である。本開示の電極合材中の酸化物固体電解質、電極活物質、および導電材の各含有量が上記の範囲であれば、良好な電池特性が得られる。なお、酸化物固体電解質、電極活物質、導電材およびその他の成分の合計で100質量%とする。その他の成分としては、バインダーなどが挙げられる。
【0037】
本開示の電極合材は、バインダーをさらに含有してもよい。バインダーとしては、特に限定されないが、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等を用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン-ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-パーフルオロメチルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸リチウム、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸リチウム等が挙げられる。これらのバインダーは、単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
本開示の電極合材におけるバインダーの含有量は0質量%~10質量%であることが好ましい。この範囲であれば、電極合材の導電性を維持しつつ、活物質などを保持できる。より好ましいバインダーの含有量は、0質量%~5質量%である。
【0039】
電極合材中の各成分比は、例えば、リチウムイオン2次電池の正極または負極の断面において、電解放出型透過電子顕微鏡(TEM)に搭載されたエネルギー分散型X線分光装置(EDX)とラマン分光法及び燃焼分解法にて定量することができる。
【0040】
(電極合材の製造方法)
本開示の電極合材の製造方法は、酸化物固体電解質、電極活物質および導電材が均一に混合されていれば、特に限定されない。本開示の電極合材の製造方法としては、例えば、乾式メカニカルミリング処理、湿式メカニカルミリング処理、溶融急冷法などが挙げられる。
【0041】
<全固体リチウムイオン電池>
次に、図1を参照し、本開示の一実施形態に係る全固体リチウムイオン電池100を説明する。全固体リチウムイオン電池100は、固体電解質層11、正極合材層12、負極合材層13、正極集電体14、負極集電体15を備える。全固体リチウムイオン電池100は、本開示の酸化物固体電解質を含む。即ち、全固体リチウムイオン電池100は、固体電解質層11、正極活物質層12、および正極活物質層12の少なくともいずれか1つの層に本開示の酸化物固体電解質を含む。以下、各部について説明する。
【0042】
(固体電解質層)
固体電解質層11は、正極活物質層12と負極活物質層13との間に形成される層である。固体電解質層11は、固体電解質を含有する。固体電解質層11に含有される固体電解質としては、本開示の酸化物固体電解質以外の固体電解質を用いてもよい。本開示の酸化物固体電解質以外の固体電解質としては、例えば、リチウムアルミニウムチタンリン酸化物(LATP)、リチウムアルミニウムゲルマニウムリン酸化物(LAGP)、リチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZ)などが挙げられる。これらの固体電解質は、1種単独または2種以上を混合してもよいし、また、本開示の酸化物固体電解質と組み合わせてもよい。なお、固体電解質層11の厚さについては適宜選択することができる。固体電解質層11の厚さは例えば200μm以下が好ましい。
【0043】
本開示の酸化物固体電解質以外の固体電解質のリチウムイオン伝導率は、1.0×10-5S/cm以上であるのが好ましく、より好ましくは1.0×10-4S/cm以上である。この範囲であれば、全固体リチウムイオン電池100の電池特性がより向上する。
【0044】
固体電解質層11は、バインダーをさらに含有してもよい。バインダーとしては、特に限定されないが、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等を用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE樹脂)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ化ビニリデン-ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン-パーフルオロメチルビニルエーテル-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸リチウム、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸リチウム等が挙げられる。これらのバインダーは、単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
本開示の固体電解質層11におけるバインダーの含有量は0質量%~10質量%であることが好ましい。この範囲であれば、電極合材の導電性を維持しつつ、固体電解質などを保持できる。より好ましいバインダーの含有量は、0質量%~5質量%である。
【0046】
(正極活物質層)
正極活物質層12は、正極集電体14上に形成される。正極活物質層12は、固体電解質、電極活物質および導電材を含む。以下、正極活物質層12について説明する。また、正極活物質層12の厚さについては適宜選択することができる。正極活物質層12の厚さとしては例えば、200μm以下が好ましい。
【0047】
(固体電解質)
正極活物質層12に含有される固体電解質としては、本開示の酸化物固体電解質を含有してもよいし、本開示の酸化物固体電解質以外の固体電解質を含有してもよい。本開示の酸化物固体電解質以外の固体電解質としては、例えば、リチウムアルミニウムチタンリン酸化物(LATP)、リチウムアルミニウムゲルマニウムリン酸化物(LAGP)、リチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZ)などが挙げられる。上記の本開示の酸化物固体電解質以外の固体電解質は、1種単独または2種以上を混合してもよいし、また、本開示の酸化物固体電解質と組み合わせてもよい。
【0048】
本開示の酸化物固体電解質以外の固体電解質のリチウムイオン伝導率は、1.0×10-5S/cm以上であるのが好ましく、より好ましくは1.0×10-4S/cm以上である。この範囲であれば、全固体リチウムイオン電池100の電池特性がより向上する。
【0049】
(正極活物質)
正極に用いる電極活物質(正極活物質)としては、リチウムイオンを可逆的に放出・吸蔵でき、電子輸送が行える材料であれば特に限定されない。正極活物質としては。例えば、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウム鉄リン酸化物などのリチウム遷移金属酸化物、硫黄及びその放電生成物である硫化リチウム、多硫化リチウム等の硫黄系活物質等が挙げられる。正極活物質は、上記材料の1種単独で構成されてもよいし、2種以上で構成されてもよい。
【0050】
(正極導電材)
正極導電材は一般的にリチウムイオン2次電池及び全固体型リチウムイオン2次電池に使用可能な導電助剤を用いることができる。正極導電材としては、例えば、アセチレンブラック、ケチェンブラック等のカーボンブラック;カーボンファイバー;気相法炭素繊維;黒鉛粉末;カーボンナノチューブ、活性炭等の炭素材料、を挙げることができる。導電材は、上記材料の1種単独で構成されてもよいし、2種以上で構成されてもよい。
【0051】
(酸化物固体電解質と、正極活物質と、正極導電材との質量比:20~80:20~80:0~30)
正極活物質層12に本開示の酸化物固体電解質が含有される場合、酸化物固体電解質、正極活物質、および正極導電材との質量合計を100としたときに、本開示の酸化物固体電解質と、正極活物質と、正極導電材と、の質量比(酸化物固体電解質:正極活物質:正極導電材)が、20~80:20~80:0~30であることが好ましい。本開示の酸化物固体電解質と、正極活物質と、正極導電材と、の質量比が、上記の範囲であれば、より高い電池特性が得られる。
【0052】
正極活物質層12中の酸化物固体電解質の含有量は、20質量%~80質量%であることが好ましい。また、正極活物質層12中の正極活物質の含有量は20質量%~80質量%であることが好ましい。正極活物質層12中の正極導電材の含有量は0質量%~30質量%であることが好ましい。より好ましい正極導電材の含有量は0質量%~25質量%である。正極活物質層12中の酸化物固体電解質、正極活物質、および正極導電材の含有量が上記の範囲であれば、より良好な電池特性が得られる。なお、酸化物固体電解質、正極活物質、正極導電材およびその他の成分の合計で100質量%とする。その他の成分としては、バインダーなどが挙げられる。
【0053】
正極活物質層12は、本開示の電極合材で用いたバインダーをさらに含有してもよい。
【0054】
(負極活物質層)
負極活物質層13は、負極集電体15上に形成される。負極活物質層13は、固体電解質、負極活物質および負極導電材を含む。以下、負極活物質層13について説明する。また、負極活物質層13の厚さについては適宜選択することができる。負極活物質層13の厚さとしては例えば、200μm以下が好ましい。
【0055】
(固体電解質)
負極活物質層13に含有される固体電解質としては、本開示の酸化物固体電解質を含有してもよいし、本開示の酸化物固体電解質以外の固体電解質を含有してもよい。本開示の酸化物固体電解質以外の固体電解質としては、例えば、リチウムアルミニウムチタンリン酸化物(LATP)、リチウムアルミニウムゲルマニウムリン酸化物(LAGP)、リチウムランタンジルコニウム酸化物(LLZ)などが挙げられる。上記の本開示の酸化物固体電解質以外の固体電解質は、1種単独または2種以上を混合してもよいし、また、本開示の酸化物固体電解質と組み合わせてもよい。
【0056】
本開示の酸化物固体電解質以外の固体電解質のリチウムイオン伝導率は、1.0×10-5S/cm以上であるのが好ましく、より好ましくは1.0×10-4S/cm以上である。この範囲であれば、全固体リチウムイオン電池100の電池特性がより向上する。
【0057】
(負極活物質)
負極活物質としては、リチウムイオンを可逆に放出・吸蔵でき、電子輸送が行える材料であれば特に限定されない。負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、樹脂炭、炭素繊維、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素質材料;スズ、スズ合金、シリコン、シリコン合金、ガリウム、ガリウム合金、インジウム、インジウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を主体とした合金系材料;ポリアセン、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性ポリマー;金属リチウム:リチウムチタン複合酸化物(例えばLiTi12)等が挙げられる。負極活物質は、上記材料の1種単独で構成されてもよいし、2種以上で構成されてもよい。
【0058】
(負極導電材)
負極導電材は一般的にリチウムイオン2次電池及び全固体型リチウムイオン2次電池に使用可能な導電助剤を用いることができる。正極導電材としては、例えば、アセチレンブラック、ケチェンブラック等のカーボンブラック;カーボンファイバー;気相法炭素繊維;黒鉛粉末;カーボンナノチューブ、活性炭等の炭素材料、を挙げることができる。導電材は、上記材料の1種単独で構成されてもよいし、2種以上で構成されてもよい。
【0059】
(酸化物固体電解質と、負極活物質と、負極導電材との質量比:20~80:20~80:0~30)
負極活物質層13に本開示の酸化物固体電解質が含有される場合、酸化物固体電解質、負極活物質、および負極導電材との質量合計を100としたときに、本開示の酸化物固体電解質と、負極活物質と、負極導電材と、の質量比(酸化物固体電解質:負極活物質:負極導電材)は、20~80:20~80:0~30である。本開示の酸化物固体電解質と、負極活物質と、負極導電材と、の質量比が、上記の範囲であれば、より高い電池特性が得られる。
【0060】
負極活物質層13中の酸化物固体電解質の含有量は、20質量%~80質量%であることが好ましい。また、負極活物質層13中の負極活物質の含有量は20質量%~80質量%であることが好ましい。負極活物質層13中の負極導電材の含有量は0質量%~30質量%であることが好ましい。より好ましい負極導電材の含有量は0質量%~25質量%である。負極活物質層13中の酸化物固体電解質、負極活物質、および負極導電材の含有量が上記の範囲であれば、より良好な電池特性が得られる。なお、酸化物固体電解質、負極活物質、負極導電材およびその他の成分の合計で100質量%とする。その他の成分としては、バインダーなどが挙げられる。
【0061】
負極活物質層13は、本開示の電極合材で用いたバインダーをさらに含有してもよい。
【0062】
(正極集電体)
正極集電体14は、正極活物質層12と接するように設けられる。正極集電体14があることで、正極活物質層12の電気を取り出しやすくなる。正極集電体14としては、公知の正極集電体を用いることができ、例えばAl、SUSなどが挙げられる。また、正極集電体14の厚さ、形状については適宜選択することができる。
【0063】
(負極集電体)
負極集電体15は、負極活物質層13と接するように設けられる。負極集電体15があることで、負極活物質層13の電気を取り出しやすくなる。負極集電体15としては、公知の負極集電体を用いることができ、例えばCuなどが挙げられる。なお、負極活物質層13の電子伝導性が高い場合は、負極集電体15は設けなくてもよい。また、負極集電体15の厚さ、形状については適宜選択することができる。
【0064】
全固体リチウムイオン電池100は、公知の方法で製造することができる。
【0065】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。なお、上記の実施形態では、正極集電体14を設けていたが、正極活物質層12の電子伝導性が高い場合は、正極集電体14は設けなくてもよい。また、上記の実施形態では、負極集電体15を設けていたが、負極活物質層13の電子伝導性が高い場合は、負極集電体15は設けなくてもよい。
【実施例0066】
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0067】
(実施例1)
硫酸リチウム(和光純薬社製)と炭酸リチウム(レアメタリック社製)をモル比で70:30となるように硫酸リチウム543mg、炭酸リチウム157mgを秤量した。遊星ボールミル(Frilsch社製Premium Line P-7)を用い、秤量した硫酸リチウムおよび炭酸リチウムを5mmのジルコニアボール約120gとともに80mlのポットに入れ、公転速度370rpmで60時間混合することにより、実施例1の酸化物固体電解質を得た。
【0068】
(実施例2)
硫酸リチウムと炭酸リチウムとをモル比が60:40となるように硫酸リチウム828mg、炭酸リチウム372mgを秤量した後、実施例1と同様の条件で混合し、実施例2の酸化物固体電解質を得た。
【0069】
(実施例3)
硫酸リチウムと炭酸リチウムとをモル比が50:50となるように硫酸リチウム359mg、炭酸リチウム241mgを秤量した後、実施例1と同様の条件で混合し、実施例3の酸化物固体電解質を得た。
【0070】
(実施例4)
硫酸リチウムと炭酸リチウムとをモル比40:60となるように硫酸リチウム299mg、炭酸リチウム301mgを秤量した後、実施例1と同様の条件で混合し、実施例4の酸化物固体電解質を得た。
【0071】
(実施例5)
硫酸リチウムと炭酸リチウムとをモル比30:70となるように硫酸リチウム273mg、炭酸リチウム427mgを秤量した後、実施例1と同様の条件で混合し、実施例5の酸化物固体電解質を得た。
【0072】
(実施例6)
硫酸リチウム、炭酸リチウム、およびヨウ化リチウム(シグマアルドリッチ社製)をモル比が54:36:10となるように硫酸リチウム717mg、炭酸リチウム321mg、ヨウ化リチウム162mgを秤量した後、実施例1と同様の条件で混合し、実施例6の酸化物固体電解質を得た。
【0073】
(実施例7)
硫酸リチウム、炭酸リチウム、およびヨウ化リチウムをモル比48:32:20となるように硫酸リチウム614mg、炭酸リチウム275mg、ヨウ化リチウム311mgを秤量した後、実施例1と同様の条件で混合し、実施例7の酸化物固体電解質を得た。
【0074】
(実施例8)
硫酸リチウム、炭酸リチウム、およびヨウ化リチウムをモル比42:28:30となるように硫酸リチウム518mg、炭酸リチウム232mg、ヨウ化リチウム450mgを秤量した後、実施例1と同様の条件で混合し、実施例8の酸化物固体電解質を得た。
【0075】
(実施例9)
硫酸リチウム、炭酸リチウム、およびヨウ化リチウムをモル比36:24:40となるように硫酸リチウム428mg、炭酸リチウム192mg、ヨウ化リチウム280mgを秤量した後、実施例1と同様の条件で混合し、実施例9の酸化物固体電解質を得た。
【0076】
(実施例10)
硫酸リチウム、炭酸リチウム、およびヨウ化リチウムをモル比30:20:50となるように硫酸リチウム345mg、炭酸リチウム155mg、ヨウ化リチウム700mgを秤量した後、実施例1と同様の条件で混合し、実施例10の酸化物固体電解質を得た。
【0077】
(実施例11)
硫酸リチウム、炭酸リチウム、および塩化リチウム(シグマアルドリッチ社製)をモル比48:32:20となるように硫酸リチウム746mg、炭酸リチウム334mg、塩化リチウム120mgを秤量した後、実施例1と同様の条件で混合し、実施例11の酸化物固体電解質を得た。
【0078】
(実施例12)
硫酸リチウム、炭酸リチウム、および塩化リチウムをモル比45:30:25となるように硫酸リチウム722mg、炭酸リチウム323mg、塩化リチウム155mgを秤量した後、実施例1と同様の条件で混合し、実施例12の酸化物固体電解質を得た。
【0079】
(実施例13)
硫酸リチウム、炭酸リチウム、および塩化リチウムをモル比42:28:30となるように硫酸リチウム696mg、炭酸リチウム312mg、塩化リチウム192mgを秤量した後、実施例1と同様の条件で混合し、実施例13の酸化物固体電解質を得た。
【0080】
(実施例14)
硫酸リチウム、炭酸リチウム、および塩化リチウムをモル比36:24:40となるように硫酸リチウム639mg、炭酸リチウム287mg、塩化リチウム274mgを秤量した後、実施例1と同様の条件で混合し、実施例14の酸化物固体電解質を得た。
【0081】
(実施例15)
硫酸リチウム、炭酸リチウム、および臭化リチウム(シグマアルドリッチ社製)をモル比48:32:20となるように硫酸リチウム338mg、炭酸リチウム151mg、臭化リチウム111mgを秤量した後、実施例1と同様の条件で混合し、実施例15の酸化物固体電解質を得た。
【0082】
(実施例16)
硫酸リチウム、炭酸リチウム、および臭化リチウムをモル比45:30:25となるように硫酸リチウム636mg、炭酸リチウム285mg、臭化リチウム279mgを秤量した後、実施例1と同様の条件で混合し、実施例16の酸化物固体電解質を得た。
【0083】
(実施例17)
硫酸リチウム、炭酸リチウム、臭化リチウムをモル比42:28:30となるように硫酸リチウム596mg、炭酸リチウム267mg、臭化リチウム336mgを秤量した後、実施例1と同様の条件で混合し、実施例17の酸化物固体電解質を得た。
【0084】
(実施例18)
硫酸リチウム、炭酸リチウム、および臭化リチウムをモル比36:24:40となるように硫酸リチウム258mg、炭酸リチウム116mg、臭化リチウム226mgを秤量した後、実施例1と同様の条件で混合し、実施例18の酸化物固体電解質を得た。
【0085】
(実施例19)
硫酸リチウム、炭酸リチウム、およびリン酸リチウム(シグマアルドリッチ社製)をモル比48:32:20となるように硫酸リチウム530mg、炭酸リチウム237mg、臭化リチウム233mgを秤量した後、実施例1と同様の条件で混合し、実施例19の酸化物固体電解質を得た。
【0086】
(実施例20)
硫酸リチウム、炭酸リチウム、および硝酸リチウム(シグマアルドリッチ社製)をモル比48:32:20となるように硫酸リチウム585mg、炭酸リチウム262mg、臭化リチウム153mgを秤量した後、実施例1と同様の条件で混合し、実施例20の酸化物固体電解質を得た。
【0087】
(比較例1)
ホウ酸リチウム(豊島製作所社製)と硫酸リチウムをモル比90:10となるようにホウ酸リチウム1040mg、硫酸リチウム160mgを秤量した後、実施例1と同様の条件で混合し、比較例1の固体電解質を得た。
【0088】
(比較例2)
比較例1の固体電解質をアルゴン雰囲気下で285℃、1時間熱処理することで比較例2の固体電解質を得た。
【0089】
(正極合材1)
正極活物質としてリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3、BASF戸田バッテリーマテリアルズ社製)60mgと実施例2の酸化物固体電解質40mgを秤量し、メノウ乳鉢で混合することで粉末状の正極合材1を得た。
【0090】
(正極合材2)
実施例2の酸化物固体電解質の代わりに実施例13の酸化物固体電解質を用いたこと以外、正極合材1と同様の方法で秤量、混合し、粉末状の正極合材2を得た。
【0091】
(正極合材3)
正極活物質として硫化リチウム(三津和化学社製)60mg、実施例13の酸化物固体電解質120mg、活性炭(MSC-30)20mgを秤量した。遊星ボールミル(Frilsch社製Premium Line P-7)を用い、5mmのジルコニアボール約40gとともに秤量した硫化リチウム、実施例13の酸化物固体電解質、活性炭を45mlのポットに入れ、公転速度370rpmで2時間混合することにより、粉末状の正極合材3を得た。
【0092】
(正極合材4)
実施例13の酸化物固体電解質の代わりに実施例16の酸化物固体電解質を用いたこと以外、正極合材3と同様の条件で秤量および混合をし、粉末状の正極合材4を得た。
【0093】
(正極合材5)
正極活物質として硫化リチウム60mg、実施例13の酸化物固体電解質60mg、活性炭(MSC-30)20mgを秤量した。遊星ボールミル(Frilsch社製Premium Line P-7)を用い、5mmのジルコニアボール約40gとともに秤量した硫化リチウム、実施例13の酸化物固体電解質、および活性炭を45mlのポット入れ、公転速度370rpmで2時間混合した。得られた粉体と、実施例13の固体電解質とを質量比が70:30となるように秤量し、乳鉢で混合することで粉末状の正極合材5を得た。
【0094】
(正極合材6)
実施例13の酸化物固体電解質の代わりに実施例16の酸化物固体電解質を用いたこと以外、正極合材5と同様の条件で秤量および混合をし、粉末状の正極合材6を得た。
【0095】
(比較正極合材1)
実施例2の酸化物固体電解質の代わりに、比較例2の固体電解質を用いたこと以外、正極合材1と同様の方法で秤量、混合し、比較正極合材1を得た。
【0096】
(比較正極合材2)
実施例2の固体電解質の代わりにリチウムアルミニウムゲルマニウムリン酸化物(LAGP、豊島製作所社製)を酸化物固体電解質として用いたこと以外、正極合材1と同様の方法で秤量、混合し、粉末状の比較正極合材2を得た。
【0097】
(比較正極合材3)
実施例2の固体電解質の代わりにリチウムアルミニウムチタンリン酸化物(LATP、豊島製作所社製)を酸化物固体電解質として用いたこと以外、正極合材1と同様の方法で秤量、混合し、粉末状の比較正極合材3を得た。
【0098】
(負極合材1)
負極活物質としてリチウムチタン酸化物(LiTi12(LTO)、石原産業社製)50mgと実施例2の酸化物固体電解質50mgを秤量し、メノウ乳鉢で混合することで粉末状の負極合材1を得た。
【0099】
(負極合材2)
実施例2の酸化物固体電解質の代わりに実施例8の酸化物固体電解質50mgを秤量した以外は、負極合材1と同様の条件でメノウ乳鉢で混合することで粉末状の負極合材2を得た。
【0100】
(負極合材3)
負極活物質としてグラファイト(和光純薬社製)50mgと実施例13の酸化物固体電解質50mgを秤量し、メノウ乳鉢で混合することで粉末状の負極合材3を得た。
【0101】
(負極合材4)
負極活物質としてケイ素(二コラ社製)50mgと実施例13の酸化物固体電解質50mgを秤量し、メノウ乳鉢で混合することで粉末状の負極合材4を得た。
【0102】
(負極合材5)
正極活物質の硫化リチウムの代わりに負極活物質としてケイ素を用いたこと以外、正極合材3と同様の方法で秤量、混合し、粉末状の負極合材5を得た。
【0103】
(負極合材6)
正極活物質の硫化リチウムの代わりに負極活物質としてケイ素を用いたこと以外、正極合材5と同様の方法で秤量、混合し、粉末状の負極合材6を得た。
【0104】
(電池作製方法-1)
アルゴンガス雰囲気グローブボックス内にて、直径10mmの錠剤成形器(日本分光)に直径10mmに打ち抜いたAl箔またはCu箔を入れ、その上から正極合材または負極合材を入れ、所定の圧力でプレスすることで正極を作製した。次に、直径15.5mmのSUS板上に得られた電極を置き、その上にリチウム塩を含有するポリエチレンオキサイド系高分子固体電解質膜を貼り付け、その上から対極としてφ12mmに打ち抜いたLi金属箔(厚み0.2mm)を正極と反対側に配置する。これを密閉することで評価用電池とした。なお、正極合材の評価ではすべてAl箔を用い、負極合材の評価ではLTOを含む場合をAl箔、グラファイト及びケイ素の場合、Cu箔を用いた。
【0105】
(電池作製方法-2)
アルゴンガス雰囲気グローブボックス内にて、セラミックス製の円筒管治具(内径10mmΦ、外径23mmΦ、高さ20mm)の下側から負極集電体としてSKD11製の円筒治具(10mmΦ、高さ10mm)を差し込み、セラミックス製の円筒管治具の上側から固体電解質(E)(5LiS-GeS-Pを510℃で8時間焼成した複合化物1と80LiS-20Pをボールミルにて500rpm、10時間処理した複合化物2を質量比90:10で混合した混合複合化物)80mgを入れた。さらに正極集電体としてSKD11製の円筒治具(10mmΦ、高さ15mm)をセラミックス製の円筒管治具の上側から差し込んで固体電解質(E)を挟み込み、80MPaの圧力で3分間プレスすることにより直径10mmΦ、厚さ約0.6mmの固体電解質層を形成した。次に、上側から差し込んだSKD11製の円筒治具(正極集電体)を一旦抜き取り、セラミックス製の円筒管内の固体電解質層の上に作製した正極合材または負極合材を入れ、再び上側からSKD11製の円筒治具(正極集電体)を差し込み、720MPaの圧力で3分間プレスすることで、直径10mmΦ、厚さ約0.1mmの正極層を形成した。次に、下側から差し込んだSKD11製の円筒治具(負極集電体)を抜き取り、負極として厚さ0.20mmのリチウムシート(本城金属社製)を穴あけポンチで直径8mmΦに打ち抜いたものと厚さ0.3mmのインジウムシート(フルウチ化学社製)を穴あけポンチで直径9mmΦに打ち抜いたものを重ねてセラミックス製の円筒管治具の下側から入れて、再び下側からSKD11製の円筒治具(負極集電体)を差し込み、80MPaの圧力で3分間プレスすることでリチウム-インジウム合金負極を形成した。以上のようにして、下側から順に、負極集電体、リチウム-インジウム合金負極層、固体電解質層、正極層、正極集電体が積層された全固体型リチウムイオン電池を作製した。これを密閉することで評価用電池とした。
【0106】
(フルセル1)
アルゴンガス雰囲気グローブボックス内にて、直径10mmの錠剤成形器(日本分光)に直径10mmに打ち抜いたAl箔を入れ、その上から正極合材1の粉末を入れ、400MPaプレスすることで正極層を形成し、その上に固体電解質粉末(比較例2の固体電解質と実施例3の固体電解質とを質量比75:25で乳鉢混合したもの)を入れ400MPaプレスし、さらにその上から負極合材2の粉末とAl箔を入れ、1GPaプレスすることで、正極層-固体電解質層-負極層の3層積層された全固リチウムイオン電池のフルセルを作製した。これを密閉することで評価用電池とした。
【0107】
(固体電解質の導電率測定)
Arガス雰囲気グローブボックス内にて、直径10mmの錠剤成形器(日本分光)に直径10mmに打ち抜いたAl箔またはAu箔を入れ、その上から固体電解質粉末(実施例1~20、比較例1、2)を入れ、均した後にさらに直径10mmに打ち抜いたAl箔またはAu箔を入れ、1GPaで30分間プレスすることで固体電解質測定用のペレットを得た。これを宝泉社製フラットセル内に配置し、密閉することで導電率測定用セルとした。次に、室温にて、インピーダンス測定装置(ソーラトロン社インピーダンスアナライザーA1260)にて印加電圧100mV、測定周波数1Hz~32MHzにて測定し、得られたナイキストプロットの半円弧の低周波端の抵抗値から導電率を算出した。表1に各固体電解質の導電率、相対密度をまとめた。
【0108】
(相対密度の算出方法)
1GPaプレスによって得られた固体電解質測定用のペレットの密度を、各原料の密度から計算される理論密度で除する上記(1)式によって算出した。ここで、各原料の密度(g/cm3)はそれぞれ、硫酸リチウム2.22、炭酸リチウム2.11、ヨウ化リチウム4.08、臭化リチウム3.46、塩化リチウム2.07、ホウ酸リチウム2.16、リン酸リチウム2.54、硝酸リチウム2.38として計算した。結果を表1に示す。相対密度95%以上を合格とした。
【0109】
(固体電解質の発熱ピーク温度)
Arガスで満たされたグローブボックス中で実施例1~20および比較例1、2の酸化物固体電解質(約10mg)をAl密閉試料容器(日立ハイテクサイエンス社製 GCA-0017)に入れ、密閉した。密閉後の容器を示差走査熱量計(例えば、セイコーインスツルメンツ社製DSC6200)に設置し、温度範囲50℃~300℃、昇温速度10℃/分で測定を行うことで、酸化物固体電解質のDSC曲線を得ることができる。得られたDSC曲線から酸化物固体電解質の発熱ピークの位置と発熱量が得られた。結果を表1に示す。
【0110】
(正極合材および負極合材の充放電特性評価)
上記正極合材1~6、比較正極合材1~3を用い、電池作製方法1または2にて作製した評価用電池を充放電装置(ACD-M01A、アスカ電子社製またはHJ1001SD8、北斗電工社製)にて定電流充放電し、電極活物質当たりの初回放電容量または初回充電容量を測定した。正極合材の結果を表2に示す。負極合材の評価の場合は、負極合材1~6を用い、電池作製方法1または2にて作製した評価用電池を用いた。負極合材の測定結果を表3に示す。ここで、充放電特性は正極については放電容量、負極については充電容量を用いた。負極合材5および6を用いた電池については、放電容量を2500mAh/gまでとした。
【0111】
(フルセルの充放電特性評価)
上記で作製したフルセルを充放電装置(ACD-M01A、アスカ電子社製またはHJ1001SD8、北斗電工社製)にて定電流充放電し、電極活物質当たりの初回放電容量または初回充電容量を測定した。フルセルの評価結果を表4に示す。ここで、充放電特性はフルセルについては放電容量を用いた。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
【表3】
【0115】
【表4】
【0116】
表1に示す通り、実施例1~20酸化物固体電解質は、LiSOとLiCOとを含み、LiSOとLiCOとのモル比が20:80~80:20であり、DSC曲線において、200℃以下の発熱ピークを有していたので、常温、1GPaプレスによって得られたペレットの相対密度が95%以上となった。また、実施例1~20酸化物固体電解質は、導電率が1.0×10-7S/cm以上であった。
【0117】
一方、比較例1および2の固体電解質は、DSC曲線において、200℃以下の発熱ピークがなかった。そのため、常温、1GPaプレスによって得られたペレットの相対密度が95%未満であり、常温での変形性が劣位であった。
【0118】
表2~4に示すように、実施例の酸化物固体電解質を用いた正極合材1~6は、比較正極合材1~3と比較して、優れた電池特性を有していた。また、同様に実施例の酸化物固体電解質を用いた負極合材およびフルセルも優れた電池特性を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本開示の酸化物固体電解質は全固体リチウムイオン電池の正極、負極、固体電解質層として使用することで、良好な電池特性を示す正極、負極、及び、固体電解質層、さらに、フルセルを常温プレスのみで作製することができる。非常に簡便な方法で電極やフルセルを形成できるため、本発明の酸化物固体電解質、及びそれを用いた電極合材は量産に適した材料であるので、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0120】
11 固体電解質層、12 正極活物質層、13 負極活物質層、14 正極集電体、15 負極集電体、100 全固体リチウムイオン電池
図1